説明

射出成形機及び射出成形方法

【課題】簡単なゲート処理、多数個取りが可能で、残留応力が無く、製品の高さ寸法精度や同芯精度が高い高精度の樹脂製光学レンズ等を得る。
【解決手段】射出成形機のキャビティ6内にパンチ部材7を突入させ、パンチ部材の内側7aとパンチ部材内を摺動する排出兼用成形ピン11の製品成形形状部11aと金型側製品成形形状部2aとで製品5とし、同時に、または前後して、パンチ部材を突入させ、金型側製品成形形状部の最外部2bの円筒40とパンチ部材のテーパー穴53とを嵌合させ自動調芯を行い、筒穴51と円筒40とを嵌合させ、製品とカス部6aとに分離する。また、排出兼用成形ピンとパンチ部材とは独立して駆動可能とし、パンチ部材をサーボアクチュエータ9のロッド9aに連結しフィードバック制御させる。さらに、排出兼用成形ピンも同様に変位させてパンチ部材の内側の射出充填部材を圧縮成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックの射出成形機および射出成形方法に関し、特に射出成形中に、金型内に理想的な状態で光学レンズ、プリズム、反射鏡等の光学部品、小型精密歯車等の精密機械部品等を成形するための射出成形機及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、量産が簡単な射出成形によって光学レンズ、プリズム、反射鏡等の光学部品あるいは小型歯車等の精密機械部品等が成形量産されている。しかし、従来の射出成形機では高い成形精度のものが得られず、射出成形で得られる製品の品質は中級あるいは低級のものに限られている。このため、射出成形機において高精度の成形品を得るための種々の提案がなされている。例えば特許文献1においては、固定金型または可動金型に板状キャビティと板状キャビティに樹脂を注入するゲート部を設け、可動金型には板状キャビティに突入可能にされ突入方向に振動可能な第1のパンチを設ける。さらに、固定金型には板状キャビティを挟んで第1のパンチと対抗して第1のパンチと従動/同期可能な第2のパンチを設ける。そして、少なくともパンチの一方の突入面には成形品表面に転写されるべく製品部の成形形状部を設け、射出成形工程中にパンチを振動させながら製品部の圧縮・加圧・打ち抜き等を行うようにしている。即ち、板状キャビティをパンチ表面に成形形状部を設けた一組のパンチで挟み、一方のパンチを振動させながらパンチ間に挟まれた板状キャビティを圧縮、加圧して製品形状に成形し、成形後、両パンチを同期させて板状キャビティから光学部品を打ち抜くようにしている。これにより、ゲート処理や取扱が簡単で、多数個取りがし易く量産に適し、さらに、成形型の転写精度が高く、内部歪やゲート近傍の残留応力の影響の無い、プラスチック製の光学レンズや小型精密機械部品等を得られることが開示されている。
【0003】
一方、特許文献2においては、可動金型内にスリーブ状のパンチ部材を設け、該スリーブ状パンチ部材内を摺動可能にされた排出兼用成形ピンを設け、固定金型にはパンチ部材に対応した位置にパンチ部材と嵌合部を形成可能にされた嵌合凸部または嵌合凹部を設け、パンチをキャビティに突入させ穴加工を行った後、パンチと嵌合部とを当接させて嵌合部でカスと穴部を切り離して、カスを排出ピンで吐き出すようにしている。これにより、射出成形工程中に射出成形品の穴加工を行うにあたって、一の穴に対し一のパンチ部材によって穴加工を行い、かつ、成形品穴部にスキン層等の樹脂残りが無く、カスの排出が易く、後工程が不要でかつ横穴加工も可能な射出成形機が開示されている。
【特許文献1】特開平7−100878号公報
【特許文献2】特開平7−100879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1においては、板状キャビティを二本のパンチにより挟み込んで、両パンチを別々に制御しているため、両パンチ間の距離の精度を高精度に保つことが困難であり、製品の高さにバラツキが出るという問題があった。また、左右両パンチが金型内を移動できるようにするので、同芯精度に限界があり、製品の芯ずれが発生する等の問題があった。一方、特許文献2においては、穴加工に関するものであって、穴加工と同時に排出されるものは製品でなくカスであり、何らその活用については示唆も開示もされていない。
【0005】
本発明の課題はかかる問題点に鑑みて、従来のように、ゲート処理や取扱が簡単で、多数個取りがし易く量産に適し、成形型の転写精度が高く、内部歪やゲート近傍の残留応力の影響の無いものとすると共に、さらに、製品の高さ寸法精度や同芯精度が高い高精度のプラスチック製の光学レンズや小型精密機械部品等を得られる射出成型機及び射出成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、特許文献2においては、穴加工にあたって排出されるカスについて着目したところ、製品としての可能性を見いだした。即ち、特許文献2においてはパンチとの嵌合部は穴径及びパンチ径や形状により決定されるが、排出ピン側を成形形状にして、排出ピン側の回りに嵌合部を形成すれば、カスとしてでなく製品としてキャビティから取り出せることを知得した。このように製品とカスとは表裏の関係にあって、カスを製品形状とすることが可能であることを知得した。
【0007】
この知得により、本発明においては、固定金型と可動金型とを有する射出成形機において、可動金型又は固定金型に設けられキャビティ内に突入可能にされたスリーブ状のパンチ部材と、該パンチ部材内に摺動可能に設けられ、前記パンチ部材が取付けられた側の金型側に設けられ、かつ先端に製品成形形状部を有した排出兼用成形ピンと、前記キャビティの一部を挟んで前記製品成形形状部に対向する側の金型に設けられた金型側製品成形形状部と、を有し、前記金型側製品成形形状部は、最外部に先端が円筒にされた円筒状嵌合部を有し、前記パンチ部材の先端内径部の先端がテーパー穴とされ、前記テーパー穴の内方に筒穴が形成された筒穴状嵌合部が設けられ、前記パンチ部材の金型側製品成形形状部方向への移動に伴って、前記円筒状嵌合部と、前記筒穴状嵌合部のテーパー穴とが嵌合、自動調芯され、さらに前記円筒状嵌合部の円筒と前記筒穴状嵌合部の筒穴とが嵌合するようにされている射出成形機を提供することにより前述した課題を解決した。
【0008】
即ち、本射出成形機によれば、金型側製品成形形状部は金型に直接又は間接に固定して設けられ、排出兼用成形ピン側のみがパンチ部材に摺動可能に保持されるので、同芯精度が向上する。また、高さ方向の精度は排出兼用成形ピンと金型側製品成形形状部との距離のみで決定される。排出兼用成形ピンと金型側製品成形形状部は、互いに機械的な位置決めも容易であり、高精度の位置決めが可能である。さらに、スリーブ状のパンチ部材をキャビティに突入することにより、射出される充填部材(プラスチック)をパンチ部材と、排出兼用成形ピンと、金型側製品成形形状部とにより製品を成形、又は成形しながら、さらに、パンチ部材の筒穴状嵌合部のテーパー穴と、円筒状嵌合部とを嵌合させることにより自動調芯させる。これにより、両製品成形形状部の同芯精度が向上する。さらに、円筒状嵌合部の円筒と筒穴状嵌合部の筒穴とを嵌合、即ち嵌合部での剪断により、嵌合部で射出充填部材をパンチ部材内側と外側とに分断し、製品とパンチ部材の外側をカスとして分離することができる。
【0009】
なお、排出兼用成形ピンは前述した特許文献2に記載のように、エジェクタプレートに一端を固定し、可動金型に設けられたパンチ部材を駆動するアクチュエータ等のロッドおよびパンチ部材を貫通するように設ければ、製品とパンチ部材外側のキャビティ部分の分離後、金型を開くことにより、排出兼用成形ピンの排出作用によりパンチ部材側に付着した製品が自動排出される。また、排出兼用成形ピンをパンチ部材と独立して駆動可能とすれば、排出兼用成形ピンと金型側製品成形形状部との距離を適宜に制御できる。従って、単なる射出成形による成形ばかりでなく、金型側製品成形形状部と排出兼用成形ピンとの間で圧縮成形等が可能となり、転写精度のよい、均質な成形品を得ることができ、成形条件等も容易に制御できるものとなり、精度が高く均質さを要求されるレンズにも適用できるものとなった。また、パンチ部材突入時に排出成形ピンを後退させパンチ部材の突入をスムースにしたり、型開き後の製品の排出を行わせることができる。
【0010】
また、排出兼用成形ピンはサーボアクチュエータのロッドに連結されフィードバック制御された射出成形機とすれば、圧縮成形等においては、圧縮速度、位置等の制御は重要であり、さらに振動を与えることにより、高精度の成形ができ、より高品質のレンズ等の成形品を提供することができる。また、パンチ部材も同様に、サーボアクチュエータ等のロッドに連結しフィードバック制御するようにし、適宜振動を加えたり、速度、位置制御をできるようにしてもよい。
【0011】
かかる射出成形機により製品を得るために、請求項2に記載の発明においては、請求項1に記載の射出成形機において、射出充填中、又は射出充填後のゲートシールが完了した後に、又は保圧過程中に、又は/及び保圧完了後冷却中に、前記パンチ部材を強制的に変位させキャビティ内に突入させ、さらに少なくとも射出充填後のゲートシールが完了した後に前記パンチ部材の前記筒穴状嵌合部のテーパー穴と、前記円筒状嵌合部とを嵌合させ、自動調芯させ、さらに、前記円筒状嵌合部の円筒と前記筒穴状嵌合部の筒穴とを嵌合させ、前記嵌合部で前記射出充填部材を前記パンチ部材内側と外側とに分断し、前記パンチ部材内側の射出充填部材を成形部品として取出すようにした射出成形方法とした。
【0012】
即ち、少なくとも射出充填後のゲートシールが完了前までは、パンチ部材と、排出兼用成形ピンと、金型側製品成形形状部で作られる製品となる空間に射出充填部材をスムースに流入させる。好ましくは、射出充填がほぼ完了するまで、パンチ部材を突入させないで、製品を形成する空間に確実に樹脂等を充填させるのが好ましい。さらに、ゲートシール完了後にパンチ部材のテーパー穴と、円筒状嵌合部とを嵌合させ、自動調芯させ、さらに、円筒状嵌合部の円筒と筒穴状嵌合部の筒穴とを嵌合させ、パンチ部材内側の充填部材を製品とし、パンチ部材外側をカスとして分離する。
【0013】
さらに、請求項3に記載の発明においては、前記排出兼用成形ピンを射出充填後のゲートシールが完了した後に、又は保圧過程中に、又は保圧完了後冷却中に、又は分断後に前記排出兼用成形ピンを変位させて前記パンチ部材内側の射出充填部材を圧縮成形する射出成形方法を提供する。
【0014】
即ち、少なくとも射出充填後のゲートシールが完了した後に、又は分断後に排出兼用成形ピンを変位させることによりパンチ部材内側の射出充填部材を圧縮成形できる。さらに、請求項4に記載の発明においては、排出兼用成形ピンの変位時に、排出兼用成形ピンに微小振動を与え、この振動エネルギーによって前記パンチ部材内側の射出充填部材を軟化し、又は固化を制御し充分軟化させるようにしているので、圧縮がスムースに行われる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明においては、前記パンチ部材の変位時に、前記パンチ部材に微小振動を与え、この振動エネルギーによって前記キャビティに充填された射出充填部材のパンチ部材近傍部を軟化し、又は固化を制御し充分軟化させるようにした。これにより、パンチ部材の変位がスムースになり、樹脂が均質化、安定化する。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、パンチ部材(内側)、金型側製品成形形状部、排出兼用成形ピンとで製品を成形し、さらに、パンチ部材のテーパー穴と金型側製品成形形状部の円筒状嵌合部とで自動調芯するので、同芯がよく高精度の位置決めが可能で、さらに、嵌合部での剪断により、製品とパンチ部材の外側をカスとして分離できるので、内部歪やゲート近傍の残留応力の影響の無い高精度のプラスチック製の光学レンズや小型精密機械部品等を得られるものとなった。また、特許文献1と同様、複雑なゲートやランナーを設ける必要がなく、ランナー部をそのままゲート部としてもよく、ランナー配列の問題もないので、ゲート設計、樹脂流れの設計が容易になることに加え、特に本発明においては、固定金型側の設計が容易となり、金型設計、加工が簡単になった。また、高密度の製品配置が可能であり、パンチ部材、排出兼用成形ピン、金型側製品成形形状部、嵌合縁部を一組とし、複数組配設できるので、一度の射出工程で大量の製品を成形でき、多数個取りがし易く量産に適したものとなった。
【0017】
また、請求項2に記載の発明においては、ゲートシールが完了前までは、製品となる空間に射出充填部材をスムースに流入させ、ゲートシール完了後にテーパー穴と、円筒状嵌合部の円筒とを嵌合させ、自動調芯させるので、製品の同芯度が非常に高くでき、高精度のレンズ等を得ることができる。また、パンチ部材内側の充填部材を製品とし、パンチ部材外側をカスとして分離するので、フロー跡(ウエルドライン)のないものとなる。さらに、請求項3に記載の発明においては、排出兼用成形ピンを変位させ製品を圧縮成形し、さらに、請求項4に記載の発明においては、排出兼用成形ピンに微小振動を与え、軟化させ、圧縮をスムースに行うので、形状を転写し、極めて均質で内部歪もなく転写精度の高い成形品を得ることができ、さらには、高品質のレンズを提供するものとなった。また、請求項5に記載の発明においては、パンチ部材に微小振動を与え、樹脂等を軟化させ、変位をスムースにさせ、樹脂の均質化、安定化を図るので製品への悪影響がないものとなった。
【0018】
なお、前述した特許文献1と同様、キャビティを板状のキャビティとすれば、排出兼用成形ピンと金型側製品成形形状部間を含め樹脂等の充填部材の流れがスムース、また、均一となり、均質な製品を得られ、金型設計も特許文献1のものより容易となり、製作もし易い。また、パンチ部材と、排出兼用成形ピンと、金型側製品成形形状部と、嵌合縁部とをキャビティに樹脂を注入するゲート部とは離れた位置に設ければ、ゲート部の残留歪等の影響がないきわめて良好な製品を得ることができ、高精度、高品質のプラスチック製品を提供する。
【0019】
また、パンチ部材を強制的に変位させた後、分断前に、さらにパンチ部材に微小振動を与えながらパンチ部材内側の射出充填部材の成形面に少なくとも短時間だけ当接させることにより、成形面の面粗さや精度が向上することができることはいうまでもない。また、製品部分を射出成形中に金型内で分離するようにできるので、改めてゲート分離等の処理は不要となる。また、後工程での取り出し、検査等が簡単に行え、取扱が簡単になり、通常の射出成形と同様のラインで製作することも可能である。また、従来と同様の射出時間中に製品の成形、分離、切断が可能で、成形サイクルも短く、高い射出圧力や高精度の金型温度調整も不要となることはいうまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1は本発明の第一の実施の形態を示す1個取りの場合の射出成形機の金型の要部断面図、図2は射出充填中、又は射出充填後の製品成形部近傍の部分断面図、図3は製品分断時の製品成形部近傍の部分拡大断面図である。製品は中央部に円盤状の鍔を有する両側に凸状の半球が設けられた凸レンズである。図1,2において、金型は、固定金型2と可動金型1とを含み、両金型2,1の当接面に、ランナー部3、ゲート部18、板状キャビティ6が形成されており、可動金型1内にキャビティ内に突入可能にされたスリーブ状のパンチ部材7が摺動可能に組み込まれている。8はスプルで、ランナー部3は板状キャビティ6とスプル8とを連結する。なお、ゲート部18は板状キヤビティ6の樹脂流入口部分を示すものでランナー部3の単なる延長部であってもよい。
【0021】
パンチ部材7は、油圧サーボシリンダ9によって微小振動、又はゆるやかな往復動がプログラム制御選択できるようにされている。微小振動、又はゆるやかな往復動を与えるサーボバルブ12の代わりに高速応答比例弁や圧電アクチュエーターを使用してもよい。シリンダ9は可動金型1外に設けてもよい。キャビティ6に成形された樹脂を排出させるための排出ピン10、スプル排出ピン16はエジェクタープレート15に一端を固定され、可動金型1を貫通している。
【0022】
特に本第一の実施の形態においては、パンチ部材内7aに排出兼用成形ピン11が摺動可能に設けられている。排出兼用成形ピン11の先端には製品成形形状部11aが設けられ、キャビティ6に開口し、反対側は、油圧サーボシリンダ9のロッド9aを貫通してエジェクタープレート15に固定されている。キャビティ6の一部を挟んで製品成形形状部11aに対向して固定金型2に金型側製品成形形状部2aが設けられている。図2に示すように、原位置では、パンチ部材7の端面7cと排出兼用成形ピン11の製品成形形状部11aとはほぼ面位置である。金型側製品成形形状部2aは固定金型面2cより突出している。金型側製品成形形状部2aの最外部2bに先端が円筒40とされた円筒状嵌合部2dが設けられている。
【0023】
図2に示すように、パンチ部材7の内側7aの先端内径部の先端がテーパー穴53とされ、内方に筒穴51が形成された筒穴状嵌合部50が設けられている。金型側製品成形形状部2aの円筒40、テーパー穴53と筒穴51はそれぞれ隣接しても離隔していてもよいが、少なくともテーパー面(テーパー穴)の最小径(筒穴51)より円筒40の外径は小さくされている。図3に示すように、パンチ部材7の金型側製品成形形状部2a方向への移動に伴って、円筒40と、テーパー穴53とが嵌合、自動調芯される。
【0024】
さらにパンチ部材7が移動すると円筒状嵌合部2dの円筒40と筒穴状嵌合部50の筒穴51とが嵌合するようにされている。円筒40と筒穴51とが嵌合した状態で、パンチ部材7の内側7aが製品5の鍔の外周面5bになるように配置し、鍔を含むレンズ(製品)の上下方向の形状を排出兼用成形ピンの製品成形形状部11a、端面7cと金型側製品成形形状部2a、最外面2bとで成形し、鍔の外周面をパンチ部材7の内側7aで成形することにより製品を成形するようにされている。
【0025】
次に、第一の実施の形態の作用について述べると、図1において、流入溶解樹脂14は、図示しない射出成形機シリンダからスプル8、ランナー部3、ゲート部18を通って排出兼用成形ピン11の製品成形形状部11a、金型側製品成形形状部2a及び外周部2dを含む板状キャビティ6内に導入される。射出、保圧時、スリーブ状のパンチ部材7は、図1、図2に示すような位置に油圧サーボシリンダ9により保持されている。流入溶解樹脂14が板状キャビティ6に射出充填中、又は射出充填後に、又は保圧過程中に、又は保圧完了後冷却中にパンチ部材7を図1、2で見て左右に振動を加えながら強制的に右方へ移動させると、振動エネルギーによってパンチ部材7と製品部5との界面の樹脂は発熱軟化、又は固化が抑制されパンチ部材の移動が容易になる。発熱軟化温度は130〜140℃といわれており、射出工程中の板状キャビティ6と製品部5との温度差が小さいので、流動し易く、型冷却時等の局部的な収縮も小さく、樹脂板の成形品は極めて均質となる。
【0026】
パンチ部材7をさらに突入させ、図3に示すように、金型側製品成形形状部2aの円筒40と、パンチ部材のテーパー穴53とが嵌合、自動調芯される。さらに、パンチ部材を移動させ、円筒40と筒穴51とを嵌合させる。これにより、パンチ部材の内側7a、排出兼用成形ピン11の製品成形形状部11a、端面7c、金型側製品成形形状部2a、最外面2b、内側7aとで製品5が形成され、さらに嵌合部で剪断され、製品部5とパンチ部材7の外側のカス部6aとに分断される。製品固化後型を開き、可動金型1側に付着した製品5を排出兼用成形ピン11で排出し、また、カス6a、スプル8を排出ピン10、スプル排出ピン16で押し出し、可動金型より分離する。さらに、図3で、油圧サーボシリンダ9によりパンチ7を微小振動させながら、切断された鍔の外側5bの面(製品部側面)に短時間だけパンチ部材の内側7aを当接させた状態でこすらせることにより、さらに鍔の外側5bの面を綺麗にすることができる。このパンチ部材7の振動は緩やかな往復運動を短時間与えるものであってもよい。
【0027】
これにより、樹脂流れを容易にし、材質を均質化でき、さらには、排出兼用成形ピン11と金型側製品成形形状部側2aとの高さ、同芯度を高精度に制御できるので、高品質のレンズ等の樹脂を成形できる。なお、パンチ部材7は振動させながらキャビティ6へ突入させるのが好ましいが、パンチ部材のスリーブの肉厚が薄ければ振動なしでもキャビティ6への突入、嵌合(自動調芯、分離)が可能である。また、テーパー面、テーパー穴のテーパー角度や長さ、金型とパンチ部材7、パンチ部材と排出兼用成型ピン11の隙間は、自動調芯しやすいように適宜選択される。また、円筒状嵌合部2dの円筒40と筒穴状嵌合部50の筒穴51とは嵌合により剪断作用が可能な寸法にされることはいうまでもない。
【0028】
図4,5に示すものは第二の実施の形態であり、第一の実施の形態のものに対し、鍔の外周部の最外部2bのさらに外側の外周面部2cの周りに凹部2eを形成するようにしたものである。これにより、第二の実施の形態と同様な品質を確保でき、さらには、板状キャビティ6のカス部(製品部を除く部分)の量を少なくできる利点がある。その他については第一の実施の形態と同様であるので、第一の実施の形態と同符号を付し説明を省略する。
【0029】
次に本発明の第三の実施の形態について図面を参照して説明すると、図6は本発明の第三の実施の形態を示す1個取りの場合の射出成形機の金型の要部断面図である。成形する製品は前述した第一乃至第二の実施の形態の場合と同じである。また、前述したと同様な部分については同符号を付し説明の一部を省略する。前述した第一、第二の実施の形態においては、排出兼用成形ピン11はエジェクタープレート15に固定され、樹脂充填時から製品成形時まで固定位置である。これに対し、第三の実施の形態においては、パンチ部材7内を排出兼用成形ピン11が移動できるようにしたものである。図6に示すように、サーボシリンダ9で駆動可能にされたパンチ部材内7aに排出兼用成形ピン11が摺動可能に設けられている。第一の実施の形態と同様に、排出兼用成形ピン11の先端には製品成形形状部11aが設けられ、キャビティ6に開口している。特に、第三の実施の形態においては、反対側は、油圧サーボシリンダ9のロッド9aを貫通して、さらに油圧シリンダ21のロッド21aに接続されている。油圧シリンダ21には押しつけ圧力を制御する減圧弁22及び切替弁23が接続され、油圧源24により図でみて左右に移動、振動可能にされている。なお、油圧シリンダ21等に代えて、サーボシリンダ、圧電アクチュエータ等を使用してもよいことはいうまでもない。符号25は油タンクである。
【0030】
第三の実施の形態においては、排出兼用成形ピン11を任意に振動を与えたり移動できるので、排出兼用成形ピンを変位させ製品5を圧縮成形し、さらには、排出兼用成形ピンに微小振動を与え、軟化させ、スムースな圧縮成形ができ、形状を転写し、極めて均質で内部歪もない転写精度の高い成形品とすることができる。なお、製品5の排出は油圧シリンダ21を操作させても、エジェクター15により操作させてもよい。
【0031】
次に本発明の第四の実施の形態について図面を参照して説明すると、図7は本発明の第四の実施の形態を示す多数個取りの場合の射出成形機の金型の要部断面図、図8は製品5が除かれたカス部6aの平面図である。成形する製品は前述した第一乃至第三の実施の形態の場合と同じである。また、前述したと同様な部分については同符号を付し説明の一部を省略する。図7,8に示すように、前述した第一乃至第三の実施の形態においては、製品は1個取りであったのに対し、第四の実施の形態においては、多数個取りとしたものである。
【0032】
本実施の形態においては、パンチ部材7、排出兼用成形ピン11、金型側製品成形形状部8を一組として3×4=12個配置されている。12個のパンチ部材7の後端はプレート26を介してサーボシリンダ9のロッド9aに固定されている。また、排出兼用成形ピン11はプレート26を貫通して図示しない排出用プレートを介してエジェクタープレート15に固定されている。これにより、第一の実施例において複数個の製品5(レンズ)を一度の射出成形で得られるものとなった。なお、第三の実施の形態と同様に、排出兼用成形ピン11を独立して駆動できるようにして、圧縮、振動圧縮成形しても良いことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す1個取りの場合の射出成形機の金型の要部断面図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態を示す射出充填中、又は射出充填後の製品成形部近傍の部分断面図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態を示す製品分断時の製品成形部近傍の部分拡大断面図である。
【図4】本発明の第二の実施の形態を示す射出充填中、又は射出充填後の製品成形部近傍の部分断面図である。
【図5】本発明の第二の実施の形態を示す製品分断時の製品成形部近傍の部分断面図である。
【図6】本発明の第三の実施の形態を示す1個取りの場合の射出成形機の金型の要部断面図である。
【図7】本発明の第四の実施の形態を示す多数個取りの場合の射出成形機の金型の要部断面図である。
【図8】本発明の第四の実施の形態を示す製品が除かれたカス部の平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 可動金型
2 固定金型
2a 金型側製品成形形状部
2b 最外部
2d 円筒状嵌合部
5 成形部品(製品)
6 キャビティ
7 パンチ部材
7a パンチ部材の内側
7b パンチ部材の先端部
9 サーボアクチュエータ(サーボシリンダ)
9a ロッド
11 排出兼用成形ピン
11a 製品成形形状部
14 射出充填部材(樹脂)
40 円筒
50 筒穴状嵌合部
51 筒穴
53 テーパー穴



【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型とを有する射出成形機において、可動金型又は固定金型に設けられキャビティ内に突入可能にされたスリーブ状のパンチ部材と、該パンチ部材内に摺動可能に設けられ、前記パンチ部材が取付けられた側の金型側に設けられ、かつ先端に製品成形形状部を有した排出兼用成形ピンと、前記キャビティの一部を挟んで前記製品成形形状部に対向する側の金型に設けられた金型側製品成形形状部と、を有し、前記金型側製品成形形状部は、最外部に先端が円筒にされた円筒状嵌合部を有し、前記パンチ部材の先端内径部の先端がテーパー穴とされ、前記テーパー穴の内方に筒穴が形成された筒穴状嵌合部が設けられ、前記パンチ部材の金型側製品成形形状部方向への移動に伴って、前記円筒状嵌合部と、前記筒穴状嵌合部のテーパー穴とが嵌合、自動調芯され、さらに前記円筒状嵌合部の円筒と前記筒穴状嵌合部の筒穴とが嵌合するようにされていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、射出充填中、又は射出充填後のゲートシールが完了した後に、又は保圧過程中に、又は/及び保圧完了後冷却中に、前記パンチ部材を強制的に変位させキャビティ内に突入させ、さらに少なくとも射出充填後のゲートシールが完了した後に前記パンチ部材の前記筒穴状嵌合部のテーパー穴と、前記円筒状嵌合部とを嵌合させ、自動調芯させ、さらに、前記円筒状嵌合部の円筒と前記筒穴状嵌合部の筒穴とを嵌合させ、前記嵌合部で前記射出充填部材を前記パンチ部材内側と外側とに分断し、前記パンチ部材内側の射出充填部材を成形部品として取出すようにしたことを特徴とする射出成形方法。
【請求項3】
前記排出兼用成形ピンを射出充填後のゲートシールが完了した後に、又は保圧過程中に、又は保圧完了後冷却中に、又は分断後に前記排出兼用成形ピンを変位させて前記パンチ部材内側の射出充填部材を圧縮成形することを特徴とする請求項2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
排出兼用成形ピンの変位時に、排出兼用成形ピンに微小振動を与え、この振動エネルギーによって前記パンチ部材内側の射出充填部材を軟化し、又は固化を制御し充分軟化させることを特徴とする請求項3に記載の射出成形方法。
【請求項5】
前記パンチ部材の変位時に、前記パンチ部材に微小振動を与え、この振動エネルギーによって前記キャビティに充填された射出充填部材のパンチ部材近傍部を軟化し、又は固化を制御し充分軟化させることを特徴とする請求項2又は3又は4に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−142572(P2006−142572A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333359(P2004−333359)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)
【Fターム(参考)】