説明

射出成形法

アイソ特異的なメタロセン触媒の存在下においてエチレンおよびプロピレンを共重合させて製造されるエチレン含量が5重量%以下のアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体をつくり;該エチレンプロピレン共重合体を加熱して熔融状態にし;48時間の基準において横方向および長手方向の収縮の差によって決定された成形後48時間における成形製品の均一収縮度が少なくとも85%になるのに効果的な量の造核剤を該共重合体に混入し;該熔融した共重合体を成形型のキャビティーの中に押出し;該共重合体を該成形型のキャビティーの内部に閉じ込めて冷却して該共重合体を該成形型の内部で固化させ;該成形製品を該成形型のキャビティーから回収する段階を含んで成ることを特徴とするアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体からつくられた成形製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体からつくられた成形品の製造法に関し、さらに詳細には成形後の変形に対する安定性が増加した該成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン単独重合体、およびエチレン・プロピレン共重合体を含むアイソタクティック・プロピレン重合体は、Ziegler Natta触媒またはアイソ特異性をもった(isospecific)メタロセン触媒のような触媒を存在させ、オレフィン単量体単位を重合させることによりつくられる。
【0003】
アイソタクティック・プロピレン重合体は成形品の製造に使用することができ、この場合ポリプロピレンを加熱し、次いで一つまたはそれ以上のダイス型またはノズルを通して成形型のキャビティーの中に押出し、キャビティーの中でポリプロピレンは長手方向(流れの方向と呼ぶ)および横方向(しばしば流れを横切る方向とも言う)の両方向に動く。アイソタクティック・ポリプロピレンの構造は、連続したプロピレン単量体単位の第3級炭素原子に結合したメチル基が重合体の主鎖の同じ側に存在することによって特徴付けられる。即ちメチル基がすべて重合鎖の上方または下方に存在することによって特徴付けられる。アイソタクティック・ポリプロピレンは下記の化学式によって例示することができる。
【0004】
【化1】

【0005】
立体規則性重合体、例えばアイソタクティックおよびシンジオタクティック・ポリプロピレンは、Fisherの投影式によって特徴付けることができる。Fisherの投影式を用いると、式(1)によって示されるアイソタクティック・ポリプロピレンの立体化学的な配列は下記のように記述される。
【0006】
【化2】

【0007】
この構造を記述する他の方法はNMRを使用する方法である。アイソタクティック・ペンタッドに対するBoveyのNMR命名法は....mmmmm....であり、それぞれのmは「メソ(meso)」ダイヤッドを表し、これは連続して存在するメチル基が重合鎖の面の同じ側にあることを表す。当業界に公知のように、重合鎖の構造の中にずれまたは反転があると、重合体のアイソタクティック性および結晶性が低下する。ランダムなエチレンプロピレン共重合体の場合、共重合体中に存在する比較的少量のエチレンが重合鎖全体に亙って不規則に分布し、プロピレンの反復単位の間にエチレン単位が不規則に入り込んでいる。
【0008】
ポリプロピレンの単独重合体または共重合体を使用する射出成形操作においては、熔融した重合体を成形型のキャビティーに導入する。熔融した重合体は所望の成分が生成するのに十分な時間の間キャビティーの中に保持される。冷却を行い、引き続いて成形型から部材を取り出すことを繰り返すのに必要な時間は、射出成形操作の製造効率における重要な因子である。
【0009】
成形されたプラスティックス成分を製造する際、成形型の内部で収縮が起こり、次いで成形型から堅い部材を取り出すと、最初に注型された成形型と最後に成形された製品との間で容積の差が生じる。射出成形された部材全体を通じて横方向(流れを横切る方向)および長手方向における収縮による寸法の変動は比較的均一である(非特許文献1)。もっと大きな異方性をもった収縮が起こると、射出成形の用途において反りの問題が生じる。収縮の特徴が等方性であるか異方性であるかにかかわらず、正確な寸法をもった最終用途の成形製品を得るためには、相対的な収縮を考慮しなければならない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】D.Rosata,Injection Molding Handbook,Chapman & Hall,New York,1995年発行。
【発明の概要】
【0011】
本発明に従えば、事実上比較的等方性をもった成形後の収縮を生じるアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体からつくられた成形製品の製造法が提供される。本発明を実施する場合、アイソ特異性をもったメタロセン触媒の存在下においてエチレンおよびプロピレンを共重合させることによりつくられるような、エチレン含量が5重量%以下のアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体をつくる。該エチレンプロピレン共重合体を加熱して熔融状態にし、該熔融した共重合体を成形型のキャビティーの中に押出して該成形型のキャビティーの形に一致した成形製品をつくる。該エチレンプロピレン共重合体を該成形型のキャビティーの内部に閉じ込め、該共重合体が該成形型の内部で固化するのに効果的な温度に冷却して固化した成形製品をつくる。次に該固化した成形製品を該成形型のキャビティーから回収する。該共重合体を成形型のキャビティーの中に押出す前に、造核剤を該共重合体に混入する。造核剤は、成形後48時間における該成形製品の均一収縮度が成形後48時間を基準とし横方向および長手方向の収縮の差によって少なくとも85%と決定されるのに効果的な量で使用される。
【0012】
本発明の一具体化例においては、共重合体はエチレン含量が3重量%以下、典型的には約2重量%である。造核剤は有機燐酸塩およびノルボルナンカルボン酸塩から成る群から選ばれることができる。特定の有機燐酸塩は有機燐酸ナトリウムであり、さらに特定的には2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウムである。本発明の他の具体化例においては、ノルボルナンカルボン酸塩はシス−エンド−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸ナトリウム塩である。
【0013】
本発明の他の態様においては、冷却過程中につくられるエチレンプロピレン共重合体製品は、同じ条件下ではあるが造核剤を混入しないで成形された対応するエチレンプロピレン共重合体よりも等方性の大きい収縮を示す。本発明のさらに他の具体化例においては、成形型の中でエチレンプロピレン共重合体を冷却する際、重合体の結晶化の速度は、造核剤が存在しない対応するエチレンプロピレン共重合体に対する重合体よりも大きな結晶化
の速度で進行する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施するのに使用できる例示的な射出成形機の模式図。
【図2】射出成形機の一機素の模式図の部材を取り去った側立面図。
【図3】種々の添加物系を混入したエチレンプロピレンランダム共重合体に対する長手方向および横方向の収縮を示す棒グラフ。
【図4】図3に例示した重合体系に対する成形後1時間および48時間の時点における長手方向の収縮を示す棒グラフ。
【図5】図3に例示した重合体系に対し成形後1時間および48時間してつくられた成形部材の横方向の収縮を示す棒グラフ。
【図6】図3に例示された重合体システムに対する曇り特性を示す棒グラフ。
【図7】Ziegler−Natta触媒系を用いて重合させてつくったエチレンプロピレン共重合体に対する長手方向および横方向の収縮の値を示す棒グラフ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は任意の適当な射出成形システムで実施することができる。図1は、可塑化注入ユニット12、所望の形の成形型キャビティーを有する成形区域14、およびクランプ区域16を具備した適当な射出成形システム10を具備している。さらに特定的には図1に示されているように、可塑化注入ユニット12は重合体のペレットがスクリュー可塑化ユニット19に供給されるホッパー18を備えている。可塑化ユニット19は図2にさらに詳細に示されており、内部でスクリュー22が回転している外側のシリンダー20を具備し、ホッパー18からペレット化された重合体材料を取り込む。スクリューはシリンダーの駆動区域24の下方で回転し、スクリューの先端において熔融物をスクリュー室26へと運ぶ。スクリューが回転するにつれて、スクリューの先端に生じる圧力によりスクリューは軸方向に滑りながら戻って行く。可塑化ユニットには多数の外部加熱用のバンド28が備えられ、これによって重合体材料を熔融するための熱が与えられる。加熱用バンドによって熱が供給されることに加えて、スクリューが回転すると重合体材料はノズルの方へ進んで行き、これによって重合体材料に剪断がかかって摩擦熱が生じ、さらに重合体材料の熔融が助けられる。可塑化段階が終了した後、スクリューは回転を停止し、油圧シリンダー24の中で油圧をかけるピストンとして機能する。前進するスクリューのために、熔融したプラスティックスはスクリュー室からノズル区域25を通って成形区域14へと進められる。クランプユニット16は成形区域14を閉じ、注入段階の際に注入圧力に耐えて閉じた状態を保ち、しかる後成形型を開いて射出成形された製品が成形型から取り出されるようにする。システム10はさらに適当な制御システムおよび焼き戻しシステム(図示せず)をそなえ、これは射出成形された塊を成形型の内部で冷却し、固化した後取り出すことができる。
【0016】
図1および2に例示したタイプの射出成形システムに対する典型的な操作手順は、内部スクリュー22を回転させて熔融した重合体をノズル25の直前にあるスクリュー室20に運ぶ工程段階を含んでいる。次にスクリューを軸方向に滑らせて戻し、可塑化段階の終りにおいてスクリューの回転を停止させる。次にクランプユニットを作動させて成形型の半分を閉じ、注入段階の始めにおいてスクリューを回転させずに前方へ動かし、熔融物をスクリュー室からノズル区域を通して成形区域14のキャビティーの中に注入する。成形型のキャビティー中の重合体がもとの熔融温度から冷却するにつれて、さらに余分の重合体の熔融物をキャビティーの中に送って冷却中の容積の収縮を相殺する。成形製品が十分に冷却された後、成形型を開き、仕上がった成形製品を型から取り出し、操作サイクルの次の段階を開始する。本発明を実施するのに任意の適当な射出成形システムを使用することができる。適当な射出成形システムの詳細な説明に対しては、Kawauchi等に対する米国特許第6,949,208号明細書およびNiewelsに対する米国特許第7,037,103号明細書を参照されたい。これらの特許は引用により全文が本明細書に包含される。
【0017】
本発明を実施するのに用いられるアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体は典型的には約120〜140℃またはそれよりも僅かに高い融点をもっているであろう。成形型のキャビティーの中に押出すのに適した熔融状態を与えるために、共重合体を押出す前に約60〜90℃だけ温度を上昇させることにより融点以上の温度、典型的には180〜230℃の範囲の温度に加熱する。次に、成形型のキャビティーの内部の熔融した重合体を共重合体の熱変形温度(HDT)よりも著しく低い温度、通常は80℃よりも低い温度に冷却して固化した成形製品をつくる。大部分の用途においては、成形製品をHDTよりも低いが室温、即ち約20〜25℃よりも高い値にし、その後で型を開いて成形製品を取り出すことが適当である。
【0018】
共重合体を成形型のキャビティーの中に押出す前の任意の時点において、適当な量の造核剤を共重合体の中に混入することができる。重合体のペレットを成形システムのホッパーに供給する際に、造核剤を重合体のペレットに加えることができる。別法として、重合体のペレット化を行う前に造核剤を重合体のフラッフ(fluff)に加えることができ、或いは重合体のマスターバッチをつくる際に混入することができる。造核剤は重合体に対し任意の量で、好ましくは0.005〜0.3重量%、さらに好ましくは0.025〜0.2重量%の範囲の量で加えることができる。造核剤は典型的には粒子の形、通常は微粉末の形をしている。
【実施例】
【0019】
本発明に関連して行われる実験においては、メタロセンを触媒としてエチレン含量が約2重量%のエチレンプロピレンのランダム共重合体から組成物をつくった。このランダム共重合体は、架橋したビス(2−メチル,4−フェニルインデニル)配位子構造からつくられたメタロセン配位子構造を用いるラセミ体のビスインデニル型のメタロセン触媒を存在させ、プロピレンとエチレンとを重合させてつくった。この実験に使用したエチレンプロピレン共重合体をつくるのに用いた特定の触媒系は、ジメチルシリルビス(2−メチル,4−フェニルインデニル)ジルコニウム二塩化物、およびメチルアルモキサンを含んで成る少なくとも1種の共触媒を含んで成っていた。
【0020】
この実験に使用した重合体は、熔融点が約136℃でメルトフローレートMFRが30g/10分の、メタロセンを触媒にしてつくったエチレンプロピレン共重合体であった。メルトフローレートMFRはASTM D1238条件Lに従って決定した。この条件では温度を230℃、荷重を2.16kgに設定し、結果を10分当たりのg数で報告する。重合体は、前記のラセミ体のジメチルシリルビス(2−メチル,4−フェニルインデニル)ジルコニウム二塩化物を使用してプロピレンをエチレンと共重合させてつくった。共触媒はアルミニウム対ジルコニウムの比Al:Zrが重量で約50:200になるような量でメチルアルモキセンを使用した。
【0021】
メタロセンを使ったランダム共重合体、略して「mRCP」を、ここでA〜Gと規定した7種の重合体システムに使用した。
【0022】
重合体Aは造核剤または対応する添加物を加えない重合体mRCPであった。
【0023】
重合体Bはタルク(珪酸マグネシウム水和物)を2000ppmの量で含む上記のmRCPであった。
【0024】
重合体Cは800ppmの量で安息香酸ナトリウムを含んでいた。
【0025】
重合体Dは1000ppmの量で有機燐酸塩を含んでいた。ここで使用された特定の有機燐酸塩はリチウムをベースにした塩、即ち1000ppmの量で使用された2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸リチウムであった。
【0026】
重合体Eもまた有機燐酸塩を含んでいた。この場合この塩は1000ppmで使用された2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウムであった。
【0027】
重合体Fは1900ppmのジベンジリデンソルビトールを含む前記のmRCPを用いた組成物であった。
【0028】
重合体Gはノルボルナンカルボン酸塩、およびシス−エンド−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸を含んでいた。この添加物は800ppmの量で存在させた。
【0029】
B〜Gの重合体系に使用された上記の添加物は市販品であり、ポリプロピレンの結晶化に使用することができる。これらの添加物を表1に掲げる。ここではその通常の商品名または商標名、化学名、および一般的な種別を示した。
【0030】
【表1】

【0031】
上記の重合体システムを射出成形し、流れの方向および流れを横切る方向の寸法がそれぞれ60mm、厚さが2mm(ISO 294)の板をつくった。次にこの板を成形型から取り出した後1時間および48時間の時点で、横方向(流れを横切る方向)および長手方向(流れの方向)の両方における収縮に関して特性を評価した。重合体システムA〜Gに対する収縮の結果を図3〜5に示す。これらは上記に重合体A〜Gと規定したそれぞれの重合体系に対する収縮率(%)を縦軸にプロットした棒グラフである。図3においては、示された収縮特性は48時間における収縮率であり、淡色の棒は長手方向の収縮を示し、暗色の棒は横方向の収縮を示す。
【0032】
図4においてプロットされた収縮特性は、成形後1時間および48時間の時点における長手方向の収縮であり、淡色の棒で1時間における収縮が示され、暗色の棒で48時間経た際の収縮が示されている。図5には横方向の即ち流れを横切る方向の収縮に対して同様な結果が示されており、淡色の棒で1時間における収縮が示され、暗色の棒で48時間経た際の収縮が示されている。
【0033】
成形製品に反りが生じる傾向に対する抵抗性を示す48時間の時点での収縮の均一性の重要な特徴は、図3のデータを調べることによって理解することができる。造核剤添加物3、即ち有機燐酸ナトリウムを混入した重合体E、および添加物4、即ちノルボルナンカルボン酸塩を混入した重合体Gの二つの重合体系は、成形後48時間した後横方向および長手方向の収縮の差が少なくとも85%であるという基準を満たしている。特定的に延べれば、重合体Eは均一収縮因子が約87%であり、重合体Gは均一収縮因子が90%に近い。残りの重合体システムはすべて85%より小さい均一収縮因子を示した。
【0034】
さらに他の実験結果では、上記の種々の造核剤を光学的性質に対する効果について評価した。この点に関しては、重合体A〜Fを成形して厚さが20〜80ミルの板にし、次いで曇りについて評価した。曇りの測定はASTM D1003に従い周囲温度において行った。結果は、厚さ20、40、60、および80ミルの板に対し、縦軸に曇りの%をプロットして示した。図6を調べればわかるように、重合体DおよびFは非常に良好な曇り特性を示した。重合体EおよびGも比較的良好な曇り特性を保持した。即ち好適な造核剤であるノルボルナンカルボン酸ナトリウムおよび有機燐酸ナトリウムを使用することにより、比較的良好な曇り特性を保持しつつ、反りの特性を所望のように減少させることができる。事実、それぞれの場合、好適な造核剤を混入した板は造核剤を含まない板よりも低い曇り特性を示した。
【0035】
さらに他の実験においては、Ziegler Natta触媒を用いて重合させることにより等方的な特徴をもつエチレンプロピレンランダム共重合体をつくった。重合に使用したZiegler Natta触媒は担持されたZiegler Natta触媒システムであり、アイソタクティック共重合体は約2.2重量%のエチレンを含んでいた。このZiegler Natta触媒を用いた共重合体を5種の重合体組成物で試験した。即ちその一つは造核剤を含まない重合体N0であり、4種の重合体Nl、N2、N3およびN4はそれぞれ造核剤、即ち造核剤3および4(メタロセンを用いて重合させた共重合体中で極めて効果的であった)および以前の実験において所望の均一収縮因子を得る上で比較的効果がなかった造核剤1および2、即ちタルクおよび安息香酸ナトリウムを含んでいた。
【0036】
図7においては上記の重合体系で得られた48時間後における長手方向のおよび横方向の収縮を縦軸にし、該重合体系中の種々の造核剤に対してプロットが行われている。これに加えて、重合体系の事実上の等方性の目安として、長手方向の収縮を横方向の収縮で割った比を縦軸にプロットし、透明な棒グラフで示した。この比の棒グラフが1に近づいていることは比較的高い均一収縮因子を与える重合体の特性を示しており、他方この値が低いことは次第に異方性が高くなっていることを示している。図7のデータを調べるとわかるように、種々の重合体システムの均一収縮因子に対する種々の造核剤の効果は、メタロセンを触媒としてつくられた共重合体を用いたものと正確に逆になっている。特定的に述べれば、造核剤3および4(それぞれ重合体N3およびN4中に含まれる)はメタロセンを触媒としてつくられた共重合体に対しては高い均一収縮因子を得るのに最も効果があったが、Ziegler Natta触媒を用いてつくられたポリプロピレンに対しては一般に最も悪い均一収縮因子を与える。造核剤1(タルク)および2(安息香酸ナトリウム)はメタロセンで重合させた共重合体には比較的効果がなかったが、この場合には最も効果的であることが証明された。両方とも造核剤3および4よりも効果が大きいことがわかった。
【0037】
本発明に使用されるエチレンプロピレン共重合体の重合に用いることができるメタロセン触媒は架橋したビスインデニルおよびビステトラヒドロインデニルメタロセンを含んでおり、これは高い立体特異性を示す機能をもっていることが知られている。これらのメタ
ロセンは置換基をもちまたはもたないことができ、ラセミ体であるか、或いはメソ異性体に比べてラセミ体を少なくとも実質的に高い含量で含んでいる。ビスインデニル(またはテトラヒドロインデニル)配位子は置換基をもちまたはもたないことができ、特に適したラセミ体のビスインデニル構造はインデニル基が4位において嵩張った置換基、例えばフェニルまたはt−ブチルによって置換され、2位においては嵩性が小さい置換基、例えばメチルまたはエチル基によって置換されているものである。アイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体をつくるのに用いることができる他のメタロセンには、立体的に剛性をもったシクロペンタジエニル−フルオレニル配位子構造を含み、シクロペンタジエニル−フルオレニル配位子構造に通常存在するような両方向性の対称性を除去するような方法で、シクロペンタジエニル−フルオレニル基の片方または両方に置換基をもっているものである。本発明方法に使用されるエチレンプロピレン共重合体を製造するのに用いることができる他のメタロセン触媒は、捩れ形の配座をもつビスフルオレニル配位子構造を含むメタロセンを含んでいる。この場合フルオレニル基(オクトヒドロフルオレニル基を含む)は架橋しており、二つのフルオレニル基は配位子構造を通る架橋した対称線の反対側に互いに独立に置換基をもち、両方向性の対称性が除去された捩れ形の配座を与えている。
【0038】
上記のタイプのメタロセン触媒をつくるのに用いられる遷移金属は通常元素の周期律表(新しい表記法のもの)の4族または5族の金属である。特に適した遷移金属はジルコニウム、ハフニウムおよびチタンである。アイソタクティック重合体を製造するのに効果的な架橋メタロセン触媒のこれ以上の説明については、米国特許第6,262,199号明細書および同第6,313,242号明細書を参照のこと。これらの特許は引用によりその全文が本明細書に包含される。
【0039】
以上本発明の特殊な具体化例の説明を行ったが、当業界の専門家にはその変形が示唆されており、このような変形はすべて特許請求の範囲に入ることを了解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アイソ特異的なメタロセン触媒の存在下においてエチレンおよびプロピレンを共重合させて製造されるエチレン含量が5重量%以下のアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体をつくり;
(b)該エチレンプロピレン共重合体を加熱して熔融状態にし;
(c)該熔融した共重合体を成形型のキャビティーの中に押出して該成形型のキャビティーの形に一致した成形製品をつくり;
(d)該エチレンプロピレン共重合体を該成形型のキャビティーの内部に閉じ込めて該共重合体が該成形型のキャビティーの内部で固化するのに効果的な温度に冷却して固化した成形製品をつくり;
(e)該固化した成形製品を該成形型のキャビティーから回収し;
(f)上記(c)項において該共重合体を押出す前に、成形後48時間において横方向および長手方向の収縮の差によって決定された成形後48時間の時点における該成形製品の均一収縮度が少なくとも85%になるのに効果的な量の造核剤を該共重合体に混入する段階を含んで成ることを特徴とするアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体からつくられた成形製品の製造方法。
【請求項2】
該共重合体はエチレン含量が3重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
該造核剤は有機燐酸塩およびノルボルナンカルボン酸の塩から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
該造核剤は有機燐酸ナトリウムであることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
該有機燐酸塩は2,2−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウムであることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項6】
該造核剤はノルボルナンカルボン酸の塩であることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項7】
該ノルボルナンカルボン酸の塩はシス−エンド−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸のナトリウム塩であることを特徴とする請求項6記載の方法。
【請求項8】
冷却する際に生じた該エチレンプロピレン共重合体製品は、同じ条件で成形されたが該共重合体中に造核剤を混入されなかった対応するエチレンプロピレン共重合体に比べ、等方性が大きい収縮を示すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
該成形型の内部で該エチレンプロピレン共重合体を冷却する際、重合体の結晶化の速度は、該造核剤が存在しない対応するエチレンプロピレン共重合体の重合体の結晶化の速度より速い速度で進行することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項10】
(a)アイソ特異的なメタロセン触媒の存在下においてエチレンおよびプロピレンを共重合させて製造されるエチレン含量が5重量%以下のアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体をつくり;
(b)該エチレンプロピレン共重合体を加熱して熔融状態にし;
(c)該熔融した共重合体を成形型のキャビティーの中に押出して該成形型のキャビティーの形に一致した成形製品をつくり;
(d)該エチレンプロピレン共重合体を該成形型のキャビティーの内部に閉じ込めて該共重合体が該成形型のキャビティーの内部で固化するのに効果的な温度に冷却して固化し
た成形製品をつくり;
(e)該固化した成形製品を該成形型のキャビティーから回収し;
(f)上記(c)項において該共重合体を押出す前に、有機燐酸塩およびノルボルナンカルボン酸塩から成る群から選ばれる造核剤を0.005〜0.3重量%の範囲の量で該共重合体に混入する段階を含んで成ることを特徴とするアイソタクティック・エチレンプロピレン共重合体からつくられた成形製品の製造方法。
【請求項11】
該造核剤は有機燐酸ナトリウムであることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
該有機燐酸ナトリウムは2,2−メチレン−ビス−(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウムであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
該造核剤はノルボルナンカルボン酸の塩であることを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項14】
該ノルボルナンカルボン酸の塩はシスーエンド−ビシクロ(2,2,1)ヘプタン−2,3−ジカルボン酸ナトリウム塩であることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
冷却する際に生じた該エチレンプロピレン共重合体製品は、同じ条件で成形されたが該共重合体中に造核剤を混入されなかった対応するエチレンプロピレン共重合体に比べ、等方性が大きい収縮を示すことを特徴とする請求項14記載の方法。
【請求項16】
該成形型の内部で該エチレンプロピレン共重合体を冷却する際、重合体の結晶化の速度は、該造核剤が存在しない対応するエチレンプロピレン共重合体の重合体の結晶化の速度より速い速度で進行することを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項17】
該共重合体はエチレン含量が3重量%以下であることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
該造核剤は成形後48時間における横方向および長手方向の収縮の差によって決定された成形後48時間における該成形製品の均一収縮度が少なくとも85%になるのに効果的であることを特徴とする請求項10記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−511546(P2010−511546A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540449(P2009−540449)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/086505
【国際公開番号】WO2008/070720
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(391024559)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (98)
【氏名又は名称原語表記】FINA TECHNOLOGY, INCORPORATED
【Fターム(参考)】