説明

射出装置およびその射出制御方法

【課題】射出充填時に圧縮性が高い成形材料は、1ショット毎に成形品の形状や重量がばらつく場合がある。
【解決手段】成形材料を金型に射出充填する射出装置およびその射出制御方法であって、充填工程で、射出軸を充填開始位置から充填終了位置まで前進させた後、射出室内に残った成形材料の圧力値が所定の条件を満たすまで射出軸を充填終了位置に保持させ、条件を満たしたらその保持を解除すると共にその充填工程を終了する際に、所定の条件を、圧力値が予め設定された値になった場合にのみその保持を解除するか、または、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみその保持を解除するか、又は、圧力値が予め設定された値になった場合もしくは圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合の少なくともどちらかを満たす場合にその保持を解除するか、のうちの少なくとも1つを条件とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂や金属などの成形材料を金型内のキャビティ空間に射出充填して成形品を得るプラスチック射出成形機やゴム射出成形機や金属射出成形機などの射出装置およびその射出制御方法に関して、特に射出充填される際の、溶融状態または液状態または溶湯状態の成形材料が圧力に対して圧縮性が大きい場合でも、キャビティ空間に安定して正確な量の成形材料を射出充填するための射出装置およびその射出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に射出成形機は、型締装置と射出装置を備えて、その型締装置で金型装置の開閉や締め付けを行い、その射出装置で成形材料を金型装置内のキャビティ空間に射出して充填を行う。成形材料にも、熱可塑性樹脂材料や熱硬化性樹脂材料や金属材料などがある。
【0003】
例えば、熱可塑性樹脂材料を射出成形する射出成形機に備える射出装置は、1本のインラインスクリュで樹脂材料の可塑化溶融とその溶融樹脂の射出充填とを行うインラインスクリュ式射出装置と、可塑化スクリュで樹脂材料の可塑化溶融を行い、その溶融樹脂を射出プランジャで射出充填を行うスクリュプリプラ式射出装置に大別される。本明細書中においてはインラインスクリュ及び射出プランジャをまとめて「射出軸」という。なお、スクリュプリプラ式射出装置は、逆流防止用のチェックリングを射出軸に備えている必要がないので、そのリングの閉まり遅れによる溶融樹脂の計量のバラツキがなく、計量精度が良いとされる。
【0004】
そのような射出装置は、射出シリンダと、その射出シリンダ内に進退自在に備えられる射出軸と、その射出シリンダ前部に射出ノズルが備えられて、その射出シリンダのシリンダ孔内と、その射出軸の先端面とで形成される空間からなる射出室が形成される。それで、その射出装置では、溶融樹脂を、計量工程で射出軸を後退させるようにして射出室内に計量しながら貯留し、そのあと射出工程で射出軸を前進させて押し出すようにして、射出ノズルから金型内のキャビティ空間に向けて射出する。
【0005】
その射出工程は、一般的に充填工程と保圧工程に分けられる。通常、充填工程では、充填速度、つまりは射出軸の前進速度が優先されて制御された状態で、溶融樹脂を金型内のキャビティ空間に向けて充填する。そのあとの保圧工程では、保持圧力、つまりは射出軸が溶融樹脂に付与する圧力が優先されて制御された状態で、その金型内に充填された溶融樹脂の冷却にともなう熱収縮分も含め、金型内で不足している分の溶融樹脂が充填される。さらに、保圧工程ではキャビティ空間に隣接する金型内のゲート部分の溶融樹脂が固化するまでキャビティ空間内の溶融樹脂に圧力を付与して逆流を防止する。ここで、充填工程と保圧工程の間の切り換えを「VP切り換え」という。そのVP切り換えの時期は、射出軸の位置や充填工程の経過時間や射出圧力の大きさなどによって規定される。例えば、特許文献1(特開平07−232356)のように、充填工程での充填率、つまりは、充填工程で溶融樹脂を金型内に充填する比率が、0.85から0.98となるように設定されるなど、適宜設定される。これは、例えば、VP切り換えを射出軸の位置で規定した場合などで、溶融樹脂の計量のばらつきに起因して、充填工程での充填量がばらついて、過充填によるバリや金型破損が発生するのを防止するためである。最終的に射出工程が完了する時点での射出プランジャの位置は、射出プランジャの前進限位置に対して最終クッション量の距離だけ後退方向に離れた位置、つまりは、射出室内に溶融樹脂が僅かに残留する位置になるようにする。
【0006】
また、VP切り換えに関して、特許文献2(特公平07−102594)では、充填工程のあと、VP切り換え位置相当の位置で射出軸を所定時間だけ前進も後進もしないように停止させる位置決め制御を行い、そのあと保圧工程に移行するまたは保圧工程を行わずに射出工程を終了するようにした技術が開示されている。これにより、射出軸がVP切り換え位置をオーバーランすることを防止するとともに、樹脂充填量のばらつきや成形品のバリや金型装置の破損などを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−232356号公報
【特許文献2】特公平07−102594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術において、液状態や溶融状態など、充填される際の状態で圧縮性が高い成形材料、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマのような成形材料などでは、なおも成形を行う毎に成形品の形状およびその重量のバラツキを引き起こす場合がある。
【0009】
特許文献1に開示されているように、一般的な射出成形機では、射出ノズルの射出孔の方が射出室を形成する射出シリンダのシリンダ孔に比べて、孔径つまりは流路断面積が小さく絞られた形となっている。また、そのような射出成形機では、射出工程において、速度制御による充填工程で射出軸がVP切換位置に到達したら、すぐさま圧力制御による保圧工程を開始するように制御される。
【0010】
まず、充填工程での射出室内の成形材料(以下、代表して溶融樹脂)は、射出軸の前進によって射出室内で圧縮されるとともに、射出孔を介して金型内のキャビティ空間に流入していく。特に、圧縮性の高い溶融樹脂では、充填工程の完了時点、ここで言う射出軸がVP切換位置に到達した時点において、キャビティ空間に充填されるべき溶融樹脂が、射出室内で体積が圧縮された状態で残留する傾向が大きい。すなわち、充填工程の完了時点で、キャビティ空間に充填されるべき溶融樹脂が、まだキャビティ空間に充填されていないことを意味する。これは、計量工程に比べて充填工程の方が、射出室内の溶融樹脂に作用する圧力がはるかに大きいからである。さらに充填工程では、一般的に、射出軸の前進速度および前進位置を優先して制御するため、射出軸がVP切換位置に到達した時点での射出室内の溶融樹脂の圧力、つまりは圧縮状態が成形サイクル毎にばらつくことがある。
【0011】
つぎに、その状態からすぐに保圧工程を開始すると、一般的に、射出軸が溶湯樹脂を押す保持圧力を優先して制御し、射出軸の位置つまりは充填量については制御しないため、充填工程時の圧縮に要した圧力よりも保持圧力が大きいと、射出室内に残留する圧縮された状態の溶融樹脂が、その圧縮された状態のままキャビティ空間に充填されることになって、結果的に計量した溶融樹脂以上の量が充填されることになり、過充填となってしまう。そのため、成形品には、残留歪みが発生して、形状を変形させるため、成形品の品質を低化させる。
【0012】
また、充填工程時の圧縮に要した圧力よりも保持圧力が小さいと、射出室内に圧縮された状態で残留した溶融樹脂が、その圧縮を開放してキャビティ空間に充填されるのと同時に、射出軸を押しさげるように後退させながら圧縮を開放するため、キャビティ空間に充填されるべき溶融樹脂の充填量が不足してしまう。そのため、成形品が完全に成形できていないショート状態となってしまう。
【0013】
また、充填工程時の圧縮に要した圧力と保持圧力が等しいと、射出室内に圧縮された状態で残留した溶融樹脂が、その圧縮を開放するようにキャビティ空間に充填されるが、それにともない射出室内の圧力が低下して、保持圧力の方が大きくなるので、保持圧力によってキャビティ空間に充填された溶融樹脂自体が保持圧力で圧縮されるため、結果的に過充填となってしまう。
【0014】
特許文献2では、圧縮性の大きい溶融樹脂を射出充填することまでは記載されてはいないが、充填工程の直後に射出軸を位置決め制御でVP切換位置相当の所定位置に設定時間だけ停止させることで、その設定時間の間だけ、充填工程で圧縮された状態で射出室内に残留した溶融樹脂を、容積を固定した射出室内からキャビティ空間に向かって、唯一の出口となる射出孔を通して、その圧縮を開放するように流入させることもできる。しかし、充填工程では、一般的に射出軸の前進速度および前進位置を優先して制御されるため、射出軸が所定位置に到達した時点での射出室内の溶融樹脂の圧力、つまりは圧縮状態が成形サイクル毎にばらつくことがある。したがって、射出軸を設定時間だけ停止させる制御では、その時間内において、射出室内の圧縮された溶融樹脂が開放され、キャビティに充填される量にもばらつきを生じることになる。
【0015】
上記の問題に鑑みて、本発明の目的は、成形材料を金型内のキャビティ空間に射出充填して成形品を得る各種射出成形機の射出装置およびその射出制御方法に関して、特に射出充填される際の、溶融状態または液状態または溶湯状態の成形材料が圧力に対して圧縮性が大きい場合でも、キャビティ空間に安定して正確な量の成形材料を射出充填するための射出成形機の射出装置およびその射出制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の射出装置の射出制御方法では、射出シリンダ内の射出室内に供給され貯められた成形材料を、その射出室内を少なくとも進退する射出軸によって金型内のキャビティ空間に射出充填する射出工程であって、前記射出工程が、少なくとも充填工程を含み、前記充填工程で、前記射出軸を充填開始位置から充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持させ、その条件を満たしたらその保持を解除するとともにその充填工程を終了するように制御される射出装置の射出制御方法であって、前記所定の条件として、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合にのみ前記保持を解除するか、または、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみその保持を解除するか、または、その圧力値が予め設定された圧力値になった場合もしくはその圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合の少なくともどちらかを満たす場合にその保持を解除するか、のうちの少なくとも1つを条件とする。
【0017】
また、本発明の射出装置の射出制御方法では、前記所定の条件として、前記射出軸の前記充填終了位置での保持を開始してから、予め設定された時間になるまでは、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合にのみ前記保持を解除し、その予め設定された時間を越えてからは、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみ前記保持を解除するのを条件とすると良い。
【0018】
また、本発明の射出装置の射出制御方法では、前記射出室内から前記キャビティ空間内までの前記成形材料の流路に対して、そのキャビティ内にその成形材料を充填するために少なくともその充填の間はその流路を開くとともに、その充填を完了したあとそのキャビティ内から射出室内にその成形材料を逆流させないために少なくともその逆流防止の間はその流路を閉じるようにするシャットオフバルブをその流路に備えて、前記射出工程が、前記充填工程のみからなり、その充填工程で、前記射出軸を前記充填開始位置から前記充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が前記所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持させ、その条件を満たしたら開いていた前記シャットオフバルブを閉じたあと、その射出軸の位置保持を解除するとともにその充填工程を終了するように制御されると良い。
【0019】
また、本発明の射出装置の射出制御方法が、スクリュプリプラ式射出装置に適用されると良い。
【0020】
また、本発明の射出装置では、射出シリンダと、前記射出シリンダ内に形成された射出室と、前記射出室内を少なくとも進退する射出軸と、前記射出軸を駆動する駆動部と、前記射出室内に供給され貯められた成形材料の圧力を検出する圧力検出部と、前記射出軸が進退した位置を検出する位置検出部と、前記射出軸によって前記射出室内の前記成形材料を金型内のキャビティ空間に射出充填する射出工程を行うために前記駆動部を制御する射出制御部を含み、前記射出工程が、充填工程を含み、前記充填工程で、前記射出軸を充填開始位置から充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持して、その条件を満たしたらその保持を解除するとともにその充填工程を終了するように前記射出制御部で制御される射出装置であって、前記所定の条件として、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合にのみ前記保持を解除するか、または、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみその保持を解除するか、または、その圧力値が予め設定された圧力値になった場合もしくはその圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合の少なくともどちらかを満たす場合にその保持を解除するか、のうちの少なくとも1つの条件を備える前記射出制御部によって制御される。
【0021】
また、本発明の射出装置では、前記所定の条件として、前記射出軸の前記充填終了位置での保持を開始してから、予め設定された時間になるまでは、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合のみ前記保持を解除し、その予め設定された時間を越えてからは、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合のみ前記保持を解除する条件を備える前記射出制御部によって制御されると良い。
【0022】
また、本発明の射出装置では、前記射出室内から前記キャビティ空間内までの前記成形材料の流路に対して、そのキャビティ内にその成形材料を充填するために少なくともその充填の間はその流路を開くとともに、その充填を完了したあとそのキャビティ内から射出室内にその成形材料を逆流させないために少なくともその逆流防止の間はその流路を閉じるようにするシャットオフバルブをその流路に備えて、前記射出工程が、前記充填工程のみからなり、前記充填工程で、前記射出軸を前記充填開始位置から前記充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が前記所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持させ、その条件を満たしたら開いていたシャットオフバルブを閉じるとともにその充填工程を終了するように前記射出制御部によって制御されると良い。
【0023】
また、本発明の射出装置が、スクリュプリプラ式射出装置に適用されると良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の射出装置またはその射出制御方法によれば、充填工程で射出軸を充填終了位置まで前進させたあと、射出室内の成形材料の圧力値が所定の条件を満たすまで、その射出軸をその充填終了位置に保持させることで、金型のキャビティ空間に充填されるべき成形材料を、その圧縮状態を開放するようにして、射出室からキャビティ空間に射出ノズルを介して流動させることができる。その際に、射出軸の位置保持の解除を射出室内の成形材料の圧力変化に基づき行うので、射出軸の位置保持を開始する時点では、成形サイクル毎に射出室内の圧力状態がばらつくような場合でも、その位置保持を解除して充填工程を完了する時点では、射出室内やキャビティ空間内の成形材料の圧力状態をすべての成形サイクルでばらつくことなく均一にできる。特に、圧縮性の高い成形材料であっても、最終的にキャビティ空間に実際に充填される成形材料の充填量を、過不足なく正確に充填できることはもちろん、すべての成形サイクルでばらつくことなく均一にできる。さらに、射出室内の圧力値が予め設定された圧力値になった場合に射出軸の位置保持を解除することで、任意の圧力値をその条件とできる。また、射出室内の圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合に射出軸の位置保持を解除することで、圧縮の開放による成形材料の射出室からキャビティ空間への流動が終了した時点でその位置保持を解除することができるとともに、必ず略一定値に収束することから確実にその解除を実行することができる。
【0025】
また、本発明の射出装置またはその射出制御方法によれば、射出室内の圧力が予め設定した圧力値にならない場合にも、予め設定した時間を過ぎると、射出室内の圧力値が時間に対する変動が小さく略一定値になったら、射出軸の位置保持を解除するようにすることで、確実にその解除を実行できるので、制御異常を回避することができる。
【0026】
また、本発明の射出装置またはその射出制御方法によれば、射出軸を位置に関係なく圧力で制御する保圧工程を行わないようにすることで、射出軸を速度で制御する充填工程での充填開始位置から充填終了位置までの距離で決まる1回の成形サイクル分の充填量をさらに過不足なく正確に、そして、すべての成形サイクルでさらに均一にできる。また、射出室からキャビティ空間までの成形材料の流路にシャットオフバルブを備えることで、金型内のキャビティ空間から材料が射出室側に逆流するのを防止するとともに、キャビティ空間の手前の成形材料の流路(例えば、金型内の一般的にゲート部と称される部分)の成形材料が固化するまでの間に、次成形サイクルのための成形材料の計量を行うなど、成形サイクル時間を短縮することができる
【0027】
また、本発明の射出装置またはその射出制御方法によれば、計量精度の高いスクリュプリプラ式射出成形機に採用されることで、さらに、最終的にキャビティ空間に実際に充填される成形材料の充填量を、過不足なく正確に充填できることはもちろん、すべての成形サイクルでばらつくことなく均一にできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施例を示す概略図であって、(a)図が計量工程を完了し充填工程を開始する時点を、(b)図が充填工程で射出プランジャが前進して充填終了位置に到達した時点を、(c)図が充填工程で射出プランジャを充填終了位置に保持することで射出室内の溶融樹脂が圧縮状態を開放するようにキャビティ空間に向かって充填される状態を、図(d)が射出室内の溶融樹脂の圧力が所定の条件を満たして射出プランジャの位置保持が解除されて充填工程が完了した状態を、(e)図がつぎに保圧工程を行った状態を、それぞれ示す概略図である。
【図2】本発明の別の実施例を示す概略図であって、(a)図が計量工程を完了し充填工程を開始する手前の時点を、(b)図がシャットオフバルブが開いた状態であるとともに充填工程で射出プランジャが前進して充填終了位置に到達した時点を、(c)図が充填工程で射出プランジャを充填終了位置に保持することで射出室内の溶融樹脂が圧縮状態を開放するようにキャビティ空間に向かって充填される状態を、(d)図が射出室内の溶融樹脂の圧力が所定の条件を満たしてシャットオフバルブを閉じたあと射出プランジャの位置保持が解除されて充填工程が完了した状態を、それぞれ示す概略図である。
【図3】本発明が採用されるスクリュプリプラ式射出装置の全体の概略を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の射出装置およびその射出制御方法が、スクリュプリプラ式射出装置に採用された際の実施例に基づき、図1ないし図3とともに説明される。
【0030】
最初に射出装置の従来公知の部分が、熱可塑性樹脂材料を射出成形するスクリュプリプラ式射出装置を一例にして、図3に示す概略図によって簡単に説明される。その射出装置1では、樹脂材料を可塑化して溶融する可塑化ユニット2と、その溶融樹脂を金型10内のキャビティ空間11に向かって射出充填する射出ユニット3とが別設されており、それらが溶融樹脂の連通路4aを有する連結部材4で接続されている。なお、型締装置に金型装置10が搭載されるが、その型締装置は図示省略される。
【0031】
可塑化ユニット2は、可塑化シリンダ20と、可塑化シリンダ20内の可塑化スクリュ21と、可塑化スクリュ21を回転させる回転駆動装置22と、可塑化スクリュ21を僅かに進退させる逆止駆動装置23とを有する。符号7は、可塑化シリンダ20の後端側から樹脂材料を供給するためのホッパである。
【0032】
射出ユニット3は、射出シリンダ30と、射出シリンダ30の射出シリンダ孔30a内の射出プランジャ31と、射出プランジャ31を進退させる射出駆動装置34と、射出シリンダ30の前端にノズルアダプタ32を介して取り付けられる射出ノズル33とを有する。ノズルシリンダ32の射出シリンダ30側端面には、射出プランジャ31の先端面31aと略等しい形状の前壁32bが形成されている。その前壁32bと射出シリンダ30のシリンダ孔30aと射出プランジャ31の先端面31aとで囲まれた空間として射出室35が形成される。そして、射出室35には、連結部材4の連通路4aを介して可塑化シリンダ20内と連通する連通路32aや射出ノズル33の先端にまで連通する射出孔33aが開口している。符号36は、射出プランジャ31と射出駆動装置34の駆動ロッドを連結するカップリングである。
【0033】
各種駆動装置は、油圧式または空圧式または電動式などで適宜構成される。可塑化シリンダ20、射出シリンダ30、ノズルシリンダ32、連結部材4、射出ノズル32などの外周には、図示省略されるバンドヒータ等の温調装置が適宜設けられている。なお、射出プランジャ31を駆動する射出駆動装置34がモータなどの電動式であれば、その射出プランジャ31の位置を制御し易い。また、そのモータに回転を規制するブレーキ機構を備えていれば、容易に射出プランジャ31を所定位置に保持できる。
【0034】
制御装置6では、各種駆動装置や各種温調装置などの動作をそれぞれ制御する。例えば、制御装置6の射出制御部6aでは、射出プランジャ31が移動した位置や速度を逐次検出するための位置センサおよび射出プランジャ31が射出室35内の溶融樹脂に与える圧力を逐次検出するための圧力センサの実際の検出値を読み込み、それら検出値と予め設定された成形条件などとを比較しながら、予め設定された成形条件や動作手順に従って動作するように指令を出して射出駆動装置34を制御する。位置センサとしては、図3に示すようなリニアスケール61を用いても良いし、射出駆動装置34がモータであればロータリエンコーダで検出した回転数から算出するようにしても良い。また、圧力センサとしては、図3に示すように射出プランジャ31後端と射出駆動装置34の駆動ロッド前端との間にロードセル62を用いても良いし、射出駆動装置34が油圧シリンダであれば射出プランジャ31を前進させる側の油室の圧力を検出するようにしても良いし、射出駆動装置34がモータであれば電流計測器やトルク計測器で検出したモータの入力電流や回転トルクから算出するようにしても良い。
【0035】
そのようなスクリュプリプラ式射出装置1では、まず、計量工程として、ホッパ7から供給された樹脂材料が、可塑化スクリュ21の回転による剪断発熱とバンドヒータによる加熱によって可塑化溶融されながら、可塑化スクリュ21の回転によって連通路4a、32aを通して射出室35内に向けて押し出されるとともに、その溶融樹脂が、射出プランジャ31を後退させることによって所定の背圧を受けながら、射出プランジャ31が後退した距離によって計量される。このとき、逆止駆動装置23は、押し出す溶融樹脂に作用する背圧により可塑化スクリュ21の後退を許容して、可塑化シリンダ20側の連通路4aの開口を開く。つぎに、射出工程の充填工程として、射出プランジャ31が速度制御によって前進して、その溶融樹脂を、射出ノズル33から金型10内のキャビティ空間11に向かって充填する。なお、その充填の前には、逆止駆動装置23が可塑化スクリュ21を前進させて、可塑化シリンダ20側の連通路4aの開口を閉塞して逆流防止が行われている。また、その逆流防止は、可塑化スクリュ21を後退させて可塑化シリンダ20側の連通路4aを閉じる構成としても良いし、連通路4a、32aの途中にロータリバルブなどを備えてその連通路4a、32aを閉じる構成としても良い。
【0036】
ここからは、本発明特有の射出装置およびその射出制御方法が実施例をもとに説明される。
【0037】
図1と図2で示されるように、本発明の射出装置の射出制御部6aでは、充填工程として、射出プランジャ31を充填開始位置Xsから充填終了位置Xeまで前進させたあと、射出室35内に残った溶融樹脂の圧縮状態(圧力P)が所定の条件を満たすまで、射出プランジャ31をその充填終了位置Xeに保持して、その位置保持が解除されたならその充填工程を終了するように制御される。
【0038】
ここで、充填開始位置Xsとは、計量工程において、射出プランジャ31の前進限位置から最終クッション量の分だけ後退方向に離れた位置Xc(計量開始位置)を基準にして、予め設定された充填量となるまで射出プランジャ31を後退させた計量完了位置Xfに相当する。また、充填終了位置Xeとは、保圧工程を行う場合には、VP切換位置Xvpに相当し(図1)、保圧工程を行わない場合には、最終クッション量の位置Xcに相当する(図2)。ちなみに、射出プランジャ31の前進限とは、射出室35の前壁32bに射出プランジャ31が当接する位置、もしくはそれらが当接することなくその間に僅かに溶融樹脂が存在する距離だけ離れた位置であっても良い。また、射出プランジャ31を充填開始位置Xsから充填終了位置Xeまで前進させる充填工程の制御は、従来公知の一段や多段や波形などによって予め設定された各種成形条件によって制御されれば良い。また、保圧を行う場合の保圧工程の制御も、同様に従来公知の一段や多段や波形などによって予め設定された各種成形条件によって制御されれば良い。
【0039】
例えば、ゴムや熱可塑性エラストマのような溶融状態で圧縮性の大きい溶融樹脂を射出充填する場合について、保圧工程を行う場合(図1)と保圧工程を行わない場合(図2)の実施例で説明される。
【0040】
まずは、図1(a)と図2(a)に示すように、計量工程で成形に必要な量の溶融樹脂を計量するため、可塑化ユニット2から射出室35内に供給される溶融樹脂によって、射出プランジャ31が最終クッション量の位置Xcから計量完了位置Xf(充填開始位置Xs)まで押しさげるように後退させられる。このとき、射出室35内の溶融樹脂の圧縮状態(圧力Pa)は、可塑化スクリュ21の回転速度や回転トルクと射出プランジャ31の背圧とによって決まるが、通常、充填工程中に発生する圧縮状態(後述される圧力Pb)に比べれば小さい(圧力Pa<圧力Pb)。
【0041】
つぎに、図1(b)と図2(b)に示すように、充填工程で射出プランジャ31を充填開始位置Xs(計量完了位置Xf)から充填終了位置Xeまで速度制御で前進させるとともに充填終了位置Xeで停止させる。この停止直後の射出室35内には、特に圧縮性が大きい溶融樹脂の場合などで、金型10内のキャビティ空間11に充填されるべき溶融樹脂の一部が、射出プランジャ31の前進動作によって発生する大きな射出圧力を受けて圧縮された状態(圧力Pb)で残留している。なぜなら、その溶融樹脂は、射出室35よりも流路断面積の小さい射出ノズル33の射出孔33aを通ってキャビティ空間11に充填されるので、特に圧縮性の大きい溶融樹脂などで、射出ノズル33を通るよりも先に、充填工程時の大きな射出圧力を受けて圧力Pbで圧縮されて、一時的に充填されずに射出室35内に残留する。そのため、キャビティ空間11には、未だ溶融樹脂が完全に充填されていない状態となる。
【0042】
つぎに、図1(c)と図2(c)に示すように、充填工程で射出プランジャ31が充填終了位置Xeに位置制御で保持される。その保持を開始した直後は、射出室35内の溶融樹脂の圧力Pc(=圧力Pb)がキャビティ空間11内の溶融樹脂の圧力よりも大きい。そのため、射出室35内に圧縮された状態で残留している溶融樹脂は、その圧縮から開放されるように、射出室35内から射出ノズル33を通ってキャビティ空間11内まで流動して、その圧力Pcが徐々に緩和されていく(圧力Pc<圧力Pb)。
【0043】
それで、図1(d)と図2(d)に示すように、充填工程で射出室35内の容積を保持するように射出プランジャ31が充填完了位置Xeに保持されている間に、射出室35内に残留する溶融樹脂の圧力Pcが後述される所定の条件を満たした場合、つまり、金型10内に充填されるべき溶融樹脂が、射出室35内から金型10内に流動したときの射出室内35の溶融樹脂の圧縮状態(圧力Pc=圧力Pd)となったら、射出プランジャ31の位置保持を解除して、充填工程を完了する。
【0044】
その射出プランジャ31が充填終了位置Xeに保持されている状態を解除する条件には、つぎのような条件がある。
【0045】
例えば、その条件の1つとして、射出室35内に残留した溶融樹脂の圧力値Pcについて、その圧力値Pcが予め設定された圧力値Pkになった場合に射出プランジャ31の位置保持を解除するようにしても良い。その条件の基準となる予め設定された圧力値Pkは、例えば、その設定圧力値Pkを適宜変更しながらテスト成形を繰り返して、良品が成形できたときの圧力値Pc(=圧力値Pd)をその予め設定された圧力値Pkとして設定するようにしても良い。
【0046】
また、その条件の1つとして、射出室内に残留した溶融樹脂の圧力値Pcについて、その圧力値Pcが時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合に射出プランジャ31の位置保持を解除するようにしても良い。例えば、射出室35内に残留した溶融樹脂の圧力値Pcを予め設定したサンプリング間隔Δtで検出しながら、今回の検出圧力値Pc1と前回の検出圧力値Pc2との差ΔPc1(=(Pc1−Pc2)の絶対値)および今回と前々回の検出圧力値Pc3との差ΔPc2(=(Pc1−Pc3)の絶対値)をそれぞれ求めて、それら圧力の差ΔPc1、ΔPc2が予め設定された圧力の差Δpkより小さいかどうかを判定して、小さいとの判定が連続して予め設定した回数発生したら、射出室35内の圧力Pcの変動が小さくなって略一定値に収束したとみなす等、各種判定方法を適宜用いて圧力値Pcが略一定値に収束したことを検知して、射出プランジャ31の位置保持を解除するようにしても良い。この条件の場合には、射出室35内に残留した溶融樹脂の圧力値Pcが収束した時点、つまりは、射出室35内の溶融樹脂の圧力値と金型10のキャビティ空間11内の溶融樹脂の圧力値が略等しくなった時点を検出して、その時点で射出プランジャ31の位置保持を解除することを可能にする。また、この条件は、その射出室35内の圧力値Pcが、必ずある圧力値に収束することから、必ず射出プランジャ31の位置保持を解除することができるので、制御異常を回避する手段にもなる。
【0047】
また、その条件の1つとして、前述の2つの条件のどちらか一方のみを使用することの他に、前述の2つの条件を組み合わせて使用しても良い。具体的には、例えば、射出室35内に残留した溶融樹脂の圧力値Pcについて、その圧力値Pcが予め設定された圧力値Pkになった場合またはその圧力値Pcが時間に対する圧力の変動が小さくなって略一定値になった場合の、どちらか一方またはそれら両方を満たす場合に射出プランジャ31の位置保持を解除するようにしても良い。さらに具体的には、例えば、射出プランジャ31の位置保持を開始してから時系列的に同時に併用するように前述の2つの条件を使用しても良いし、あるいは、その時系列に沿って、前述の2つの条件やそれらを同時に併用する前述の条件などを順次切り換えるように、例えば、射出プランジャ31の位置保持を開始してから、予め設定された時間Tkになるまでは、その圧力値Pcが予め設定された圧力値Pkになった場合にのみ射出プランジャ31の位置保持を解除し、その予め設定された時間Tkを越えてからは、その圧力値Pcが時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみ射出プランジャ31の位置保持を解除するようにしても良い。
【0048】
そのような条件は、記憶手段(図示省略)に少なくとも1つが記憶され、複数の条件が記憶されていれば、条件選択手段(図示省略)によって、オペレータが任意に条件を選択できるようになっていると良い。
【0049】
上記のように射出プランジャ31の位置保持を解除して、充填工程を完了したあとは、図1(e)に示すように、次工程として保圧工程に移行しても良い。また、図2に示すように保圧工程を行わないで、射出工程を終了しても良い。
【0050】
図2で示すように、保圧工程を行わない場合には、射出シリンダ30内の射出室35から金型10内のキャビティ空間11までの樹脂流路、例えば、射出孔33aなどにシャットオフバルブ12を備えるとなお良い。なぜなら、保圧工程を行わない場合には、キャビティ空間11の手前に設けられた金型10内の樹脂流路の部分(一般的にゲート部と称される部分)が冷えて固化する前に、射出プランジャ31の位置保持が解除されてしまうと、溶融樹脂が射出室35方向に逆流する恐れがあるからである。それで、保圧工程を行わない場合には、遅くとも射出プランジャ31の前進によって、充填を開始する前には、例えば、図2(b)で示すように、充填工程で充填開始位置Xs(計量完了位置Xf)から射出プランジャ31を前進させる動作の前に、シャットオフバルブ12を開いた状態にして樹脂流路を開いておき、前述のような所定の条件を満たしたなら、図2(d)に示すように、シャットオフバルブ12を閉じた状態にして樹脂流路を閉じたあと、射出プランジャ31の位置保持を解除するとともに充填工程を終了し、射出工程を終了して次工程に移行するように制御されると良い。
【0051】
シャットオフバルブ12は、例えば、射出ノズル33に設けても良いし、金型10内のスプル部やランナ部やゲート部のように射出ノズル33から射出された溶融樹脂をキャビティ空間11まで流動させる樹脂流路に設けても良い。また、そのシャットオフバルブ12は、ロータリバルブやニードルバルブなど、各種バルブを適宜使用することができ、そのバルブ12の駆動も電動式や油圧式や空圧式などの駆動機構を適宜使用して、射出制御部6aによって制御されると良い。
【0052】
なお、特に保圧工程を行わない場合において、1回の成形サイクルで金型10内に充填される溶融樹脂の量は、最大で充填工程時の射出プランジャ31の前進距離、つまり、充填開始位置Xsから充填終了位置Xeまでの前進距離に基づく溶融樹脂の体積となる。そのため、計量される充填量は、金型10の外壁に開口する樹脂注入口からキャビティ空間11の中までの体積と略等しい体積、あるいは、前記樹脂注入口からキャビティ空間11の中までの体積に溶融樹脂の冷却固化による熱収縮する体積分を加えた体積とされると良い。したがって、射出プランジャ31を充填終了位置Xeに保持した状態で、射出室35内からキャビティ空間11への溶融樹脂の流入が止まった際の射出室35内の溶融樹脂の圧力は、金型10の前記樹脂注入口からキャビティ空間11の中までの体積に対して、計量される充填量の方が略等しい又は小さい場合には計量時の射出室35内の圧力Paあるいは圧力ゼロとなり、計量される充填量の方が大きい場合には計量時の射出室35内の圧力Paより大きい圧力となる。
【0053】
本発明の射出装置またはその射出制御方法は、熱可塑性樹脂材料を成形するスクリュプリプラ式射出装置に限定されることなく、もちろん、その他の樹脂材料や金属材料などの各種成形材料を射出成形する各種方式の射出装置、例えば、インラインスクリュ式射出装置などにも適用することが可能である。また、本発明の射出装置またはその射出制御方法は、成形材料を溶融または混合または融解しながら送り出す供給部と、その供給部から送られてくる成形材料を射出軸の後退により計量しながら貯留したあとその射出軸の前進により金型内に向けて射出する射出部とに別設された射出装置にも適用可能である。
【0054】
また、本発明の射出装置またはその射出制御方法では、射出プランジャ31を充填開始位置Xsから充填終了位置Xeまでを速度制御によって制御すれば、その間の充填時間のバラツキを小さくできるが、射出プランジャ31を充填開始位置Xsから充填終了位置Xeまでを圧力制御によって行う場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 射出装置
2 可塑化ユニット
3 射出ユニット
6 制御装置
6a 射出制御部
10 金型
11 キャビティ空間
12 シャットオフバルブ
30 射出シリンダ
31 射出プランジャ
33 射出ノズル
34 射出駆動装置
35 射出室
61 位置センサ
62 圧力センサ
Xc 最終クッション量の位置(計量開始位置)
Xf 計量完了位置
Xs 充填開始位置
Xe 充填終了位置
Xvp VP切換位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出シリンダ内の射出室内に供給され貯められた成形材料を、その射出室内を少なくとも進退する射出軸によって金型内のキャビティ空間に射出充填する射出工程であって、
前記射出工程が、少なくとも充填工程を含み、
前記充填工程で、前記射出軸を充填開始位置から充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持させ、その条件を満たしたらその保持を解除するとともにその充填工程を終了するように制御される射出装置の射出制御方法であって、
前記所定の条件として、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合にのみ前記保持を解除するか、または、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみその保持を解除するか、または、その圧力値が予め設定された圧力値になった場合もしくはその圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合の少なくともどちらかを満たす場合にその保持を解除するか、のうちの少なくとも1つを条件とすることを特徴とする射出装置の射出制御方法。
【請求項2】
前記所定の条件として、前記射出軸の前記充填終了位置での保持を開始してから、予め設定された時間になるまでは、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合にのみ前記保持を解除し、その予め設定された時間を越えてからは、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみ前記保持を解除するのを条件とすることを特徴とする請求項1記載の射出装置の射出制御方法。
【請求項3】
前記射出室内から前記キャビティ空間内までの前記成形材料の流路に対して、そのキャビティ内にその成形材料を充填するために少なくともその充填の間はその流路を開くとともに、その充填を完了したあとそのキャビティ内から射出室内にその成形材料を逆流させないために少なくともその逆流防止の間はその流路を閉じるようにするシャットオフバルブをその流路に備えて、
前記射出工程が、前記充填工程のみからなり、
その充填工程で、前記射出軸を前記充填開始位置から前記充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が前記所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持させ、その条件を満たしたら開いていた前記シャットオフバルブを閉じたあと、その射出軸の位置保持を解除するとともにその充填工程を終了するように制御されることを特徴とする請求項1または2記載の射出装置の射出制御方法。
【請求項4】
前記請求項1から3のいずれかに記載の射出装置の射出制御方法が、スクリュプリプラ式射出装置に適用されることを特徴とする射出装置の射出制御方法。
【請求項5】
射出シリンダと、前記射出シリンダ内に形成された射出室と、前記射出室内を少なくとも進退する射出軸と、前記射出軸を駆動する駆動部と、前記射出室内に供給され貯められた成形材料の圧力を検出する圧力検出部と、前記射出軸が進退した位置を検出する位置検出部と、前記射出軸によって前記射出室内の前記成形材料を金型内のキャビティ空間に射出充填する射出工程を行うために前記駆動部を制御する射出制御部を含み、
前記射出工程が、充填工程を含み、
前記充填工程で、前記射出軸を充填開始位置から充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持して、その条件を満たしたらその保持を解除するとともにその充填工程を終了するように前記射出制御部で制御される射出装置であって、
前記所定の条件として、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合にのみ前記保持を解除するか、または、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合にのみその保持を解除するか、または、その圧力値が予め設定された圧力値になった場合もしくはその圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合の少なくともどちらかを満たす場合にその保持を解除するか、のうちの少なくとも1つの条件を備える前記射出制御部によって制御されることを特徴とする射出装置。
【請求項6】
前記所定の条件として、前記射出軸の前記充填終了位置での保持を開始してから、予め設定された時間になるまでは、前記圧力値が予め設定された圧力値になった場合のみ前記保持を解除し、その予め設定された時間を越えてからは、その圧力値が時間に対する圧力変動が小さくなって略一定値になった場合のみ前記保持を解除する条件を備える前記射出制御部によって制御されることを特徴とする請求項5記載の射出装置。
【請求項7】
前記射出室内から前記キャビティ空間内までの前記成形材料の流路に対して、そのキャビティ内にその成形材料を充填するために少なくともその充填の間はその流路を開くとともに、その充填を完了したあとそのキャビティ内から射出室内にその成形材料を逆流させないために少なくともその逆流防止の間はその流路を閉じるようにするシャットオフバルブをその流路に備えて、
前記射出工程が、前記充填工程のみからなり、
前記充填工程で、前記射出軸を前記充填開始位置から前記充填終了位置まで前進させたあと、前記射出室内に残った成形材料の圧力値が前記所定の条件を満たすまでその射出軸をその充填終了位置に保持させ、その条件を満たしたら開いていたシャットオフバルブを閉じるとともにその充填工程を終了するように前記射出制御部によって制御されることを特徴とする請求項5または6記載の射出装置。
【請求項8】
前記請求項5から7のいずれかに記載の射出装置が、スクリュプリプラ式射出装置に適用されることを特徴とする射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−52622(P2013−52622A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193227(P2011−193227)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000132725)株式会社ソディック (197)
【Fターム(参考)】