説明

導体張積層板、印刷配線板及び多層配線板

【課題】特に高周波帯での伝送損失を良好に低減することができ、耐熱性に優れ、しかも、層間の剥離を十分に抑制するプリント配線板を製造することができる導体張積層板を提供する。
【解決手段】上記目的を達成するため、本発明は、絶縁層2と、該絶縁層2に対向して配置された導体層6と、絶縁層2及び導体層6に挟まれた接着層4とを備え、接着層4は、(A)成分;多官能エポキシ樹脂と、(B)成分;多官能フェノール樹脂と、(C)成分;ポリアミド樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物からなるものである導体張積層板1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体張積層板、印刷配線板及び多層配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器やその基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワーク関連電子機器、あるいは大型コンピュータ等では、大容量の情報を低損失かつ高速で伝送・処理することが要求されている。かかる要求に対応するため、上述のような装置に搭載されるプリント配線板では、扱う電気信号の高周波数化が進んでいる。しかしながら、電気信号は、高周波になるほど減衰しやすくなる性質を有することから、高周波の電気信号を扱うプリント配線板には、従来以上に伝送損失を低くすることが求められる。
【0003】
低伝送損失のプリント配線板を得るため、従来、プリント配線板の基板材料として、比誘電率や誘電正接が低いフッ素系樹脂を含む熱可塑性樹脂材料が使用されてきた。しかし、このフッ素系樹脂は、一般的に溶融粘度が高く、流動性が低いため、プレス成形時に高温高圧条件を設定する必要がある等、必ずしも成形が容易ではない。また、上述したような通信機器等に使用されるプリント配線板用材料としては、加工性に加え、寸法安定性や、金属めっきとの接着性が不十分であるという欠点も有していた。
【0004】
そこで、熱可塑性樹脂材料に代えて、比誘電率及び誘電正接が低い熱硬化性樹脂組成物を用いることが試みられている。上述した電子機器等の誘電体材料の原料に用いられる熱硬化性樹脂組成物としては、例えば、以下のようなものが知られている。すなわち、特許文献1〜3には、トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートを含有する樹脂組成物が開示されている。また、特許文献1、2、4及び5には、ポリブタジエンを含有する樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献6には、アリル基等のラジカル架橋性の官能基を付与された熱硬化性ポリフェニレンエーテルと、上記トリアリルシアヌレートやトリアリルイソシアヌレートとを含有する樹脂組成物が開示されている。そして、これらの特許文献には、概して、上記の熱硬化性樹脂組成物が硬化後に極性基を多く有しないため、低伝送損失化が可能となることが示されている。
【0005】
また、プリント配線板においては、絶縁層とその上に設けられる導電層との接着性が高いことが望ましい。絶縁層と導電層との接着性が低いと、使用時に両者の剥離が生じる等の不都合が生じやすくなる。プリント配線板は、絶縁層上に導体箔が積層された金属張積層板の導体箔を加工することによって形成されることが多いが、絶縁層と導電層との優れた接着性を得るためには、この金属張積層板における絶縁層と導体箔との接着性が高いことも重要である。
【0006】
このような観点から、プリプレグシートを、エポキシ、マレイン酸、カルボン酸等で変性されたポリブタジエンでコーティング処理した銅箔とともに積層成形した金属張積層板が知られている(特許文献7、8参照)。また、絶縁層と導体層との間にエポキシ化合物やポリアミドイミド化合物を含む層を介在させたプリント配線板等も知られている(特許文献9,10参照)。さらには、エチレン−プロピレンエラストマー等の接着促進エラストマー層を銅箔と絶縁層との間に配置する方法も提案されている(特許文献11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−69746号公報
【特許文献2】特公平7−47689号公報
【特許文献3】特開2002−265777号公報
【特許文献4】特公昭58−21925号公報
【特許文献5】特開平10−117052号公報
【特許文献6】特公平6−92533号公報
【特許文献7】特開昭54−74883号公報
【特許文献8】特開昭55−86744号公報
【特許文献9】特開2005−167172号公報
【特許文献10】特開2005−167173号公報
【特許文献11】特開2005−502192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年では、上述したような電子機器等に対して、電気信号の更なる高周波化への対応が求められている。しかしながら、例えば上記特許文献1〜6に記載されているような低誘電率、低誘電正接の樹脂を誘電体材料に用いて、絶縁層(誘電層)における電気信号の低伝送損失化を図るだけでは、そのような高周波に十分に対応することが困難となってきている。電気信号の伝送損失は、絶縁層に起因する損失(誘電体損失)と、導電層に起因する損失(導体損失)との両方に原因がある。近年の高周波化への対応においては、従来のような誘電体材料の改良によって誘電体損失を低減するだけでなく、導体損失をも低減することが必要となっている。
【0009】
特に、近年実用化されている大部分のプリント配線板(多層配線板)においては、導電層である信号層とグランド層との間に配置される絶縁層の厚みが200μm以下と薄くなっている。そのため、絶縁層の材料に、ある程度低い誘電率や誘電正接を有する樹脂を採用した場合、この配線板全体の伝送損失としては、誘電体損失よりもむしろ導体損失の方が支配的となる。
【0010】
ここで、導体損失の低減を図る方法としては、導電層における絶縁層と接着する側の面(粗化処理面、以下、「M面」という。)の表面凹凸が小さい金属箔を用いる方法が挙げられる。具体的には、M面の表面粗さ(十点平均粗さ;Rz)が4μm以下である金属箔(このような金属箔を、以下、「低粗化箔」という。)を備える金属張積層板を用いることが考えられる。
【0011】
そこで、上記の知見に基づいて、本発明者らは、まず、特許文献1〜6に記載されたような、ビニル基やアリル基等の重合によって硬化する低誘電率及び低誘電正接の樹脂と、上述した低粗化箔とを併用して得られたプリント配線板を作製して詳細に検討を行った。その結果、このようなプリント配線板は、絶縁層の極性が低く、しかも金属箔のM面の凹凸に起因するアンカー効果が低いために、絶縁層及び導電層間の接着力(接合力)が弱く、これらの層間で容易に剥離が生じることが確認された。特に、かかる剥離は、プリント配線板を加熱した際(特に吸湿後に加熱した際)に顕著となる傾向にあった。このように、上述の樹脂を誘電体材料に用いた場合、導体損失を低減するために低粗化箔を採用すると、絶縁層と導電層との接着性を十分に確保するのが困難となることが判明した。
【0012】
また、特許文献7、8に記載された手段を応用し、絶縁層とM面のRzが4μm以下である低粗化銅箔とを、変性されたポリブタジエンを介して貼り合わせ、プリント配線板を作製した。その結果、十分に高い銅箔引き剥がし強さが得られず、また、耐熱性(特に吸湿時の耐熱性)の低下も生じることが判明した。
【0013】
さらに、特許文献9、10に記載された手段を応用して、M面のRzが4μm以下の低粗化銅箔の表面上に、厚みが0.1〜5μmのポリアミドイミド樹脂を予め設けた接着層付き銅箔を用いてプリント配線板を作製した。この場合は、高い銅箔引き剥がし強さが得られることが確認された。しかしながら、かかるプリント配線板では、金属箔のM面の凹凸に起因するアンカー効果が低くなる。そのために、ポリアミドイミド樹脂と絶縁層との間の接着力が(接合力)が弱くなり、例えば加熱した際(特に吸湿後に加熱した際)等に、これらの層間で容易に剥離が生じるようになることが判明した。
【0014】
また、特許文献11に記載された手段を応用して、M面のRzが4μm以下の低粗化銅箔の表面上に、厚みが3〜15μmのスチレン−ブタジエンエラストマー等のエラストマーを含有する接着促進エラストマー層を予め設けた接着層付き銅箔を用いてプリント配線板を作製した。この場合、高い銅箔引き剥がし強さを示すが、金属箔のM面の凹凸に起因するアンカー効果が低下する。その結果、接着促進エラストマー層を介した絶縁層間の接着力が(接合力)が弱くなり、加熱した際にそれらの層間で容易に剥離が生じることが判明した。
【0015】
そこで、本発明はこのような事情にかんがみてなされたものであり、特に高周波帯での伝送損失を良好に低減することができ、耐熱性に優れ、しかも、層間の剥離を十分に抑制するプリント配線板を製造することができる導体張積層板を提供することを目的とする。本発明はまた、このような導体張積層板を用いて得られる印刷配線板及び多層配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、本発明は、絶縁層と、該絶縁層に対向して配置された導体層と、絶縁層及び導体層に挟まれた接着層とを備え、接着層は、(A)成分;多官能エポキシ樹脂と、(B)成分;多官能フェノール樹脂と、(C)成分;ポリアミド樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物からなるものである導体張積層板を提供する。なお、接着層は硬化前後のいずれも「接着層」という場合がある。そこで、本明細書において、本発明の導体張積層板における接着層が硬化する前の接着層を「硬化前接着層」とし、硬化後の「接着層」と区別することとする。
【0017】
本発明の導体張積層板における接着層は、上記(A)〜(C)成分を含む硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。この硬化物は、硬化により多官能エポキシ樹脂及び多官能フェノール樹脂の硬化物、並びにポリアミドイミドを含むものとなるため、低粗化箔や低誘電率等の特性を有する絶縁層に対する接着性に極めて優れるものとなる。さらに、この硬化物は、上記3成分の硬化物であることから、優れた耐熱性も有する。
【0018】
したがって、このような導体張積層板を用いて後述するように印刷配線板(プリント配線板)や多層配線板の製造を行った場合、絶縁層と導体層(導体箔)とが、本発明の導体張積層板における接着層を介して強く接着されるようになり、これらの剥離を大幅に防止できるようになる。また、接着層が有する低誘電率及び低誘電正接の特性により、大幅な低伝送損失化も可能となる。さらに、耐熱性に優れる接着層に起因して、全体としても優れた耐熱性が得られるようになる。なお、本明細書において、導体張積層板や印刷配線板(プリント配線板)等の基板材料である絶縁層を「絶縁層」又は「絶縁樹脂層」として、導体張積層板における「接着層」と区別することとする。
【0019】
上記本発明の導体張積層板において、硬化して接着層となる硬化性樹脂組成物における(A)成分及び(B)成分は、これらの混合物の硬化後のガラス転移温度が150℃以上であることが好ましい。このような条件を満たすことで、接着層の耐熱性が更に良好となり、本発明の導体張積層板を用いて得られたプリント配線板も、実用的な温度範囲で優れた耐熱性を有するようになる。なお、このガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7121−1987に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0020】
硬化性樹脂組成物において、(A)成分である多官能エポキシ樹脂は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含有すると好ましい。
【0021】
また、(B)成分である多官能フェノール樹脂は、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、及び、ノボラック型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能フェノール樹脂を含有すると好ましい。
【0022】
これらの多官能エポキシ樹脂又は多官能フェノール樹脂は、本発明におけるこれら以外の成分と組み合わされることによって、接着層に優れた接着性や耐熱性を付与することができる。
【0023】
さらに、(C)成分であるポリアミドイミドは、飽和炭化水素からなる構造単位を含むものであると好ましい。ポリアミドイミドとして飽和炭化水素からなる構造単位を含むものを用いると、接着層による導体層や絶縁層等への接着性が良好となるのに加え、特に吸湿時においても良好な接着性が維持されるようになる。その結果、本発明の導体張積層板を用いて得られたプリント配線板等は、たとえ吸湿後であっても層間の剥離を極めて生じ難いという特性を有するものとなる。
【0024】
硬化して接着層となる硬化性樹脂組成物においては、(C)成分の配合割合が、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して10〜400質量部であると好ましい。(C)成分の配合割合がこのような範囲であると、良好な接着性が得られるようになるほか、接着層の靭性や耐熱性、耐薬品性等が特に向上する傾向にある。
【0025】
また、導体張積層板における接着層が0.1〜10μmの厚さを有していることが好ましい。このような厚さを有する接着層によれば、十分な導体層との接着性が得られるほか、誘電体損失の低減を良好に図れるようになる。
【0026】
さらに、導体層における接着層側の面の十点平均粗さ(Rz)が4μm以下であると好適である。M面の表面粗さが4μm以下であると、この導体層から形成した導電層による導体損失が小さくなり、本発明の導体張積層板を用いて得られたプリント配線板は、誘電体損失だけでなく導体損失も良好に低減されたものとなる。ここで、十点平均粗さ(Rz)とは、JIS B0601−1994に定義された十点平均粗さをいうものとする。
【0027】
本発明の導体張積層板において、絶縁層は、絶縁性樹脂と、該絶縁性樹脂中に配された基材とから構成され、その基材として、ガラス、紙材及び有機高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料からなる繊維の織布又は不織布を備えるものであると好ましい。これにより、更に確実に伝送損失の低減、耐熱性の向上及び層間の剥離抑制を成し遂げることが可能となる。
【0028】
また、絶縁層は、絶縁性樹脂としてエチレン性不飽和結合を有する樹脂を含有するものであることが好ましい。より具体的には、絶縁性樹脂は、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有すると好ましい。これらの樹脂は、低誘電率かつ低誘電正接であるため、誘電体損失を大幅に低減することができる。
【0029】
あるいは、絶縁性樹脂は、ポリフェニレンエーテル及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有すると好ましい。これらの樹脂も、低誘電率かつ低誘電正接であるため、誘電体損失を大幅に低減することができる。
【0030】
絶縁層は、1GHzで4.0以下の比誘電率を有していると好適である。このような条件を満たす絶縁層によれば、誘電体損失を大幅に低減できるようになる。その結果、この導体張積層板から得られる配線板は、伝送損失が極めて少ないものとなる。
【0031】
本発明の導体張積層板は、導体箔上に接着層の硬化前の層を備える接着層付き導体箔における硬化前の層上に、絶縁性樹脂と該絶縁性樹脂中に配された基材とを含む膜を積層して積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧して得られるものであると好ましい。このようにして得られた導体張積層板は、接着層と導体層との接着性が特に良好なものとなる。
【0032】
さらに、本発明による印刷配線板は、プリント配線板としての適用が可能なものであり、本発明の導体張積層板における導体箔を、所定の回路パターンを有するように加工して得られたものである。かかる印刷配線板は、低粗化箔を用いた場合であっても、導体箔からなる回路パターンと絶縁樹脂層との剥離が極めて生じ難いほか、接着層が優れた耐熱性を有することから、全体としても優れた耐熱性を有するようになる。
【0033】
さらにまた、本発明は、上記本発明の印刷配線板を備えることで、層間の剥離を生じ難く、しかも、高耐熱性を有する多層配線板を提供することができる。すなわち、本発明の多層配線板は、少なくとも一層の印刷配線板を有するコア基板と、このコア基板の少なくとも片面上に配置され、少なくとも一層の印刷配線板を有する外層配線板とを備える多層配線板であって、コア基板における印刷配線板のうちの少なくとも一層は、本発明の印刷配線板であることを特徴とする。
【0034】
なお、上述したような電子機器に適用される高周波対応の印刷配線板においては、低伝送損失化とともに、良好なインピーダンス制御も求められる。それを実現するためには、印刷配線板の製造時において、導電層の良好なパターン幅を形成するための精度向上が重要となる。ここで、ロープロファイル箔のような表面粗さの小さい導体箔を用いる場合は、導体パターン形成の際の精度向上や、更なるファインパターン化に有利となる傾向にある。
【0035】
このような状況下、上記本発明の導体張積層板によれば、低粗化箔を用い、且つ、絶縁層に低誘電率及び低誘電正接を有する絶縁性樹脂材料を用いた場合であっても、絶縁層と導体層との間の十分な接着性が得られるようになる。したがって、本発明の導体張積層板を用いて作製される印刷配線板等によれば、低伝送損失化だけでなく、良好なインピーダンス制御も実現可能となる。
【0036】
本発明の導体張積層板により、上記のような優れた接着性が得られるようになる要因については、現在のところ詳細には明らかでないが、本発明者らは次のように推測している。例えば、導体層として低粗化箔を用いる場合は、かかる低粗化箔の絶縁層等に対する接着性が低下する以外に、この低粗化箔を備える導体張積層板を用いて多層化を行った場合であっても層間の剥離が生じやすくなることがある。すなわち、絶縁樹脂層の両面にM面のRzが4μm以下である低粗化箔が積層された導体張積層板の導体層を除去した後、その面上にプリプレグ及び導体箔を順に重ねることにより多層積層板、更には印刷配線板を作製する場合、低粗化箔によって内層の絶縁樹脂層に転写される粗さも小さいものとなる。
【0037】
このようにして得られた多層積層板においては、導体箔として一般の銅箔(Rzが6μm以上)を用いた場合と比較して、絶縁樹脂層とプリプレグとの間のアンカー効果も小さくなるため、これによって、絶縁樹脂層とプリプレグとの間の接着力(結合力)が小さくなる。そのため、結果として、プリプレグの表面に配置された導体箔が絶縁樹脂層から剥離しやすくなる。特に、このような傾向は、加熱(特に吸湿後に加熱)を行った場合に顕著である。
【0038】
かかる場合、接着層を介して導体層と絶縁樹脂層とを積層した導体張積層板を用いることで、上記のような接着力の低下を低減することができる。すなわち、この導体張積層板を用いて多層積層板を形成する場合、絶縁樹脂層とプリプレグとの間には接着層が介在することとなるため、これによって両層の接着性がある程度改善される。
【0039】
しかしながら、この場合、接着層にポリアミドイミドのみ、又は、ポリアミドイミドとエポキシ樹脂とを組み合わせた樹脂材料を適用した場合等は、プリント配線板として適用するのに耐熱性が不十分となる。これは、これらの樹脂材料が、良好な接着性を示すことができるものの、水との水素結合等を生じ易いため吸湿後の耐熱性がそれほど良好ではないことに起因していると考えられる。
【0040】
これに対し、本発明の導体張積層板においては、硬化前接着層に含まれる(A)及び(B)成分が、硬化後の耐熱性(特に吸湿後の耐熱性)に優れるものである。したがって、かかる導体張積層板を用いて得られた多層積層板や印刷配線板は、全体として優れた耐熱性を有するようになる。また、(A)及び(B)成分は、絶縁樹脂層や導体層に対する接着性にも優れていることから、(C)成分であるポリアミドイミドの添加量を少なくしても、接着層は十分な接着性を維持し得る。そして、通常、ポリアミドイミドは接着層の耐熱性を低下させる傾向にあることから、本発明の導体張積層板によれば、ポリアミドイミドの添加量を必要最小限とすることによっても、一層の耐熱性の向上が図られることになる。
【0041】
したがって、本発明の導体張積層板を用いて得られた印刷配線板や多層配線板等は、導電層(回路パターン)と絶縁層との間に特定の接着層を有するため、接着面が平滑な導電層、及び、誘電体損失が少ない絶縁層を備える場合であっても、導電層と絶縁層との接着性が良好であり、しかも耐熱性にも優れるものとなる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、高周波帯での伝送損失を良好に低減することができ、しかも、層間の剥離が十分に生じ難いプリント配線板を製造することができる導体張積層板を提供することが可能となる。また、このような導体張積層板を用いて得られる金属張積層板、印刷配線板及び多層配線板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】好適な実施形態の導体張積層板の断面構造を模式的に示す図である。
【図2】実施形態の配線板の断面構造を示す模式図である。
【図3】実施形態の多層配線板の断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0045】
[導体張積層板]
まず、好適な実施形態に係る導体張積層板について説明する。図1は、好適な実施形態の導体張積層板を示す部分断面図である。図1に示す導体張積層板1は、絶縁層2、接着層4及び導体層6をこの順に積層した構造を有している。
【0046】
(絶縁層)
導体張積層板1における絶縁層6は、例えば、公知のプリプレグを所定の枚数貼り合わせた後、加熱及び/又は加圧して得られるものが採用される。プリプレグとしては、調製された樹脂ワニスを、ガラス、紙材及び有機高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の材料からなる繊維の織布又は不織布に含浸させて公知の方法により作製されたものを用いることができる。ガラスからなる繊維(ガラス繊維)としては、Eガラス、Sガラス、NEガラス、Dガラス、Qガラスが例示でき、有機高分子化合物からなる繊維(有機繊維)としては、アラミド、フッ素系樹脂、ポリエステル、液晶性高分子等が例示できる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0047】
樹脂ワニスに含まれる樹脂としては、絶縁性を有する樹脂(絶縁性樹脂)が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する樹脂がより好ましい。このような絶縁性樹脂としては、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート、エチレン性不飽和結合を含む構造単位を有する不飽和基含有ポリフェニレンエーテル、並びにマレイミド化合物等が挙げられる。これらの絶縁性樹脂は、比誘電率及び誘電正接が低いことから、導体張積層板1から得られる配線板の伝送損失を低減することができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
また、絶縁性樹脂は、ポリフェニレンエーテル及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましく、特に、熱可塑性エラストマーとしては、飽和型の熱可塑性エラストマーが好ましい。これらの樹脂は、低誘電率かつ低誘電正接であるため、誘電体損失を大幅に低減することができる。
【0049】
絶縁性樹脂としてのマレイミド化合物(ポリマレイミド)は、主鎖にマレイミド骨格を有する樹脂であってもよく、側鎖及び/又は末端にマレイミド基を有する樹脂であってもよい。ただし、上述の絶縁性樹脂の架橋助剤にマレイミド化合物を用いたものであることが好ましい。これにより導体張積層板1から得られる配線板の伝送損失を低減するだけでなく、硬化性が向上するため、樹脂の熱膨張率や耐熱性がより良好になる。
【0050】
絶縁層6の比誘電率は、1GHzで4.0以下であると好ましい。このような条件を満たす絶縁層6によれば、誘電体損失を大幅に低減できるようになる。その結果、この導体張積層板から得られるプリント配線板は、伝送損失が極めて少ないものとなる。
【0051】
(導体層)
導体層6としては、従来プリント配線板等の導電層に適用されるものであれば特に限定されず、例えば金属箔から構成されるものが採用される。より具体的には、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等を適用することができる。なかでも、電界銅箔又は圧延銅箔が好ましい。また、導体層6として金属箔を適用する場合、その防錆性、耐薬品性、耐熱性等を向上させる観点から、ニッケル、錫、亜鉛、クロム、モリブデン、コバルト等によるバリアー層形成処理が施されていると好ましい。また、絶縁層との接着性を向上させる観点からは、表面粗化処理やシランカップリング剤による処理等の表面処理が施されていると好ましい。
【0052】
これらの表面処理のうち、表面粗化処理に関しては、導体層6の接着層4と接する側のM面における表面粗さ(Rz)が好ましくは4μm以下、より好ましくは3μm以下となるように粗化処理が施されていると好ましい。これにより、高周波伝送特性を更に向上できる傾向にある。また、シランカップルリング剤処理に用いるシランカップルリング剤としては、特に限定されないが、エポキシシラン、アミノシラン、カチオニックシラン、ビニルシラン、アクリロキシシラン、メタクロイロキシシラン、ウレイドシラン、メルカプトシラン、スルフィドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。
【0053】
導体層6は、1種の金属材料からなる単層構造であってもよく、複数の金属材料からなる単層構造であってもよく、更には異なる材質の金属層を複数積層した積層構造であってもよい。また、導体層6の厚さは特に限定されない。導体層6に適用される金属箔は、例えば、銅箔であるF2−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=2.0μm)、F0−WS(古河サーキットフォイル社製、商品名、Rz=1.2μm)、3EC−VLP(三井金属社製、商品名、Rz=3.0μm)等が商業的に入手可能であり、好適である。
【0054】
(接着層)
導体張積層板1における接着層4は、(A)成分;多官能エポキシ樹脂、(B)成分;多官能フェノール樹脂、及び、(C)成分;ポリアミドイミドを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層である。この接着層4の厚さは、0.1〜10μmであると好ましい。この厚さが0.1μm未満であると、十分な導体層(導体箔)等の引き剥がし強さを得るのが困難となる傾向にある。一方、10μmを超えると、金属張積層板1による高周波伝送特性が低下する傾向にある。以下、硬化して接着層4となる硬化性樹脂組成物の各成分について説明する。
【0055】
まず、(A)成分について説明する。
【0056】
(A)成分である多官能エポキシ樹脂は、一つの分子内に複数のエポキシ基を有する化合物であり、エポキシ基同士の反応によって複数の分子が結合可能な状態にある化合物である。このような(A)成分としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)成分としては、これらのうち1種を単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0057】
なかでも、(A)成分としては、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂又はフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。(A)成分としてこれらの多官能エポキシ樹脂を含むことで、硬化後に接着層4による優れた接着性及び電気特性が得られやすくなる。
【0058】
次に、(B)成分について説明する。
【0059】
(B)成分である多官能フェノール化合物は、1つの分子内に複数のフェノール性水酸基を有する化合物であり、(A)成分である多官能エポキシ樹脂の硬化剤として機能する。このような(B)成分としては、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂の共重合型樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。(B)成分としては、これらの化合物を単独で含有していてもよく、2種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0060】
上述の(A)成分及び(B)成分は、それらを混合して得られた混合物の硬化後のガラス転移温度が150℃以上となるように選択されると好ましい。(A)成分と(B)成分との混合物の硬化物がこのような条件を満たすことで、接着層4の耐熱性が更に良好となり、導体張積層板を用いて得られたプリント配線板も、実用的な温度範囲で優れた耐熱性を有するようになる。
【0061】
次に、(C)成分について説明する。
【0062】
(C)成分であるポリアミドイミドは、アミド構造及びイミド構造を含む繰り返し単位を有するポリマーである。本実施形態における(C)成分は、20000〜300000の重量平均分子量(以下、「Mw」と示す)を有していることが好ましい。ここで、Mwには、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定を行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値を適用することができる。
【0063】
(C)成分のMwが20000未満であると、この(C)成分を含む硬化性樹脂組成物を用いて得られた導体張積層板1、さらにはその導体張積層板1を用いて得られたプリント配線板において、接着層と導体層(導体箔)との接着性が不都合に低下する傾向にある。特に、この傾向は、導体層の厚さを薄くした場合にさらに顕著となる。一方、Mwが300000を超えても、ポリアミドイミドの流動性が悪くなるため、接着層と導体層との接着性が低下する傾向にある。この傾向も同様に、導体層の厚さが薄くなると顕著である。
【0064】
(C)成分は、その分子中に飽和炭化水素からなる構造単位を含むことが好ましい。(C)成分が飽和炭化水素を含むことで、接着層による導体層等への接着性が良好となる。また、(C)成分の耐湿性が向上するため、吸湿後の接着層による接着性も良好に維持されるようになる。その結果、本実施形態の導体張積層板1を用いて得られるプリント配線板等の耐湿耐熱性が向上する。(C)成分は、飽和炭化水素からなる構造単位を主鎖に有している特に好ましい。
【0065】
この飽和炭化水素からなる構造単位は、飽和脂環式炭化水素基であると特に好ましい。飽和脂環式炭化水素基を有する場合、接着層による吸湿時の接着性が特に良好となるほか、この接着層が高いTgを有するようになり、これを備えるプリント配線板等の耐熱性が更に向上する。そして、上述したような効果は、特に、(C)成分のMwが5万以上である場合に安定して得られる傾向にある。
【0066】
また、(C)成分は、その主鎖にシロキサン構造を含むとより好ましい。シロキサン構造とは、所定の置換基を有するケイ素原子と酸素原子とが交互に繰り返し結合された構造単位である。(C)成分が主鎖にシロキサン構造を含むことで、接着層4の弾性率や可撓性等の特性が向上し、得られるプリント配線板等の耐久性を向上させることができるほか、硬化性樹脂組成物の乾燥効率が良好となって接着層4を形成し易くなる傾向にある。
【0067】
(C)成分であるポリアミドイミドとしては、例えば、無水トリメリット酸と芳香族ジイソシアネートとの反応による、いわゆるイソシアネート法で合成されるポリアミドイミドが挙げられる。このイソシアネート法の具体例としては、芳香族トリカルボン酸無水物とエーテル結合を有するジアミン化合物とをジアミン化合物過剰存在下で反応させた後、これにジイソシアネートを反応させる方法(例えば、特許2897186号公報に記載の方法)、芳香族ジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させる方法(例えば、特開平04−182466号公報に記載の方法)等が挙げられる。
【0068】
また、主鎖にシロキサン構造を含む(C)成分も、イソシアネート法にしたがって合成することができる。具体的な合成方法としては、例えば、芳香族トリカルボン酸無水物、芳香族ジイソシアネート及びシロキサンジアミン化合物を重縮合させる方法(例えば、特開平05−009254号公報に記載の方法)、芳香族ジカルボン酸又は芳香族トリカルボン酸とシロキサンジアミン化合物とを重縮合させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)、芳香族環を3つ以上有するジアミン化合物及びシロキサンジアミンを含む混合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるジイミドジカルボン酸を含む混合物を、芳香族ジイソシアネートと反応させる方法(例えば、特開平06−116517号公報に記載の方法)等が挙げられる。硬化して接着層4となる本実施形態の硬化性樹脂組成物によれば、これらの公知の方法で合成される(C)成分を用いても、十分に高い金属箔引き剥がし強さが得られる。
【0069】
以下、(C)成分として好適な、飽和炭化水素からなる構造単位(特に飽和脂環式炭化水素基)を主鎖に有するポリアミドイミドの製造方法の例について詳細に説明する。
【0070】
このようなポリアミドイミドは、例えば、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸を、酸ハロゲン化物に誘導した後、または縮合剤を用いて、ジアミン化合物と反応させることにより得ることができる。あるいは、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と無水トリメリット酸とを反応させて得られるイミド基含有ジカルボン酸に、ジイソシアネートを反応させることによっても得ることができる。なお、飽和脂環式炭化水素基を有するポリアミドは、これらの方法において、飽和炭化水素基として飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物を用いることによって得ることができる。
【0071】
飽和炭化水素基を有するジアミン化合物としては、具体的には、下記一般式(1a)又は(1b)で表される化合物が挙げられる。
【化1】


ここで、式(1a)及び(1b)中、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合又は下記式(2a)又は(2b)で表される2価の基を示し、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。
【0072】
【化2】


ただし、式(2a)中、Lは、ハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【0073】
上記式(1a)や(1b)で表されるような、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物としては、具体的には、以下に示すような化合物が例示できる。すなわち、例えば、2、2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]プロパン、ビス[4−(3−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]スルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]メタン、4、4’−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ジシクロヘキシル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]エーテル、ビス[4−(4−アミノシクロヘキシルオキシ)シクロヘキシル]ケトン、1、3−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノシクロヘキシルオキシ)ベンゼン、2、2’−ジメチルビシクロヘキシル−4、4’−ジアミン、2、2’−ビス(トリフルオロメチル)ジシクロヘキシル−4、4’−ジアミン、2、6、2’、6’−テトラメチル−4、4’−ジアミン、5、5’−ジメチル−2、2’−スルフォニルジシクロヘキシル−4、4’−ジアミン、3、3’−ジヒドロキシジシクロヘキシル−4、4’−ジアミン、(4、4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4、4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルスルホン、(4、4’−ジアミノシクロヘキシル)ケトン、(3、3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4、4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(4、4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(3、3’−ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、(4、4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン、(3、3’―ジアミノ)ジシクロヘキシルエーテル、2、2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン等が例示できる。ジアミン化合物は、これらの化合物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本実施形態のポリアミドイミドの製造においては、後述するように、他のジアミン化合物、すなわち飽和炭化水素基を有していないジアミン化合物を併用してもよい。
【0074】
飽和炭化水素基を有するジアミン化合物は、例えば、飽和炭化水素基に対応する構造の芳香環を有する芳香族ジアミン化合物に対し、その芳香環を水素還元することによって容易に得ることができる。このような芳香族ジアミン化合物としては、例えば、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(以下、「BAPP」と表記する。)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2、2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4、4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1、3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1、4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2、2’−ジメチルビフェニル−4、4’−ジアミン、2、2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4、4’−ジアミン、2、6、2’、6’−テトラメチル−4、4’−ジアミン、5、5’−ジメチル−2、2’−スルフォニルビフェニル−4、4’−ジアミン、3、3’−ジヒドロキシビフェニル−4、4’−ジアミン、(4、4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4、4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4、4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3、3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4、4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4、4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3、3’−ジアミノ)ジフェニルエーテル等を例示できる。
【0075】
芳香族ジアミン化合物の水素還元は、芳香環の一般的な還元方法によって行うことができる。この還元方法としては、例えば、ラネーニッケル触媒や酸化白金触媒(D.Varechら, Tetrahedron Letter, 26, 61(1985); R.H.Bakerら, J.Am.Chem.Soc.,69, 1250 (1947))、ロジウム−酸化アルミニウム触媒( J.C.Sircarら, J.Org.Chem., 30, 3206(1965); A.I.Meyersら,Organic Synthesis CollectiveVolume VI, 371(1988); A. W.Burgstahler,OrganicSynthesis Collective Volume V, 591(1973); A. J.Briggs, Synthesis, 1988, 66)、酸化ロジウム−酸化白金触媒(S.Nishimura, Bull. Chem. Soc. Jpn., 34, 32 (1961); E.J.Coreyら, J.Am.Chem.Soc. 101, 1608(1979))、チャコール担持ロジウム触媒(K.Chebaaneら, Bull. Soc.Chim. Fr., 1975、 244)、水素化ホウ素ナトリウム−塩化ロジウム系触媒( P. G. Gassmanら, Organic SynthesisCollective Volume VI, 581 (1988); P. G. Gassmanら, Organic SynthesisCollectiveVolume VI, 601 (1988))等の触媒の存在下での水素還元等が挙げられる。
【0076】
(C)成分であるポリアミドイミドが、上述のような飽和炭化水素基を有するジアミン化合物を用いて得られたものである場合、ポリアミドイミドの主鎖には飽和炭化水素からなる構造単位が含まれるようになる。このようなポリアミドイミドは、かかる飽和炭化水素からなる構造単位に起因して、耐吸水性又は撥水性が従来のポリアミドイミドと比較して極めて高いものとなる。そして、飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドを含む硬化性樹脂組成物の硬化物を接着層4に用いた導体張積層板1によれば、例えば芳香環を有するポリアミドイミドを含む樹脂組成物を用いた場合と比べて、金属張積層板を製造した場合に、その吸湿時における導体層(導体箔)と絶縁層等との間の接着性の低下を大幅に抑制することが可能となる。なお、このような効果は、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物として、脂環式飽和炭化水素基を有するジアミン化合物を用いた場合に、特に顕著に得られる。
【0077】
(C)成分であるポリアミドイミドは、その製造段階で、脂環式飽和炭化水素基を有するジアミン化合物以外のジアミン化合物を更に添加してもよい。こうすれば、得られるポリアミドイミド中に、飽和炭化水素からなる構造以外の構造単位が導入され、更に所望とする特性が得られやすくなる。
【0078】
飽和炭化水素基を有するジアミン化合物以外のジアミン化合物としては、まず、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化3】


ここで式(3)中、Lはメチレン基、スルホニル基、オキソ基、カルボニル基又は単結合を示し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基を示し、kは1〜50の整数を示す。
【0079】
上記式(3)で表されるジアミン化合物において、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は、置換基を有していてもよいフェニル基であると好ましい。このフェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子等を例示できる。一般式(3)で表されるジアミン化合物においては、低弾性率及び高Tgを両立する観点から、Lがオキシ基であると特に好ましい。このようなジアミン化合物としては、具体的には、ジェファーミンD−400、ジェファーミンD−2000(以上、サンテクノケミカル社製、商品名)等を例示できる。
【0080】
また、飽和炭化水素基を有するジアミンと組み合わせるジアミン化合物としては、芳香環を有する芳香族ジアミンも好適である。芳香族ジアミンとしては、芳香環に2つのアミノ基が直接結合している化合物や、2つ以上の芳香環が直接又は特定の基を介して結合しており、これらの芳香環のうちの少なくとも2つにそれぞれアミノ基が結合している化合物が挙げられ、このような構造を有する限り、特に制限されない。
【0081】
芳香族ジアミン化合物としては、例えば、下記一般式(4a)又は(4b)で表される化合物が好ましい。
【化4】

【0082】
式(4a)及び(4b)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基、単結合、或いは、下記式(5a)又は(5b)で表される2価の基を示し、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基又はカルボニル基を示し、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、メトキシ基、ハロゲン置換されていてもよいメチル基を示す。また、下記式(5a)中、Lはハロゲン置換されていてもよい炭素数1〜3の2価の脂肪族炭化水素基、スルホニル基、オキシ基、カルボニル基又は単結合を示す。
【化5】

【0083】
芳香族ジアミンとしては、具体的には、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4’−ジアミン、2,6、2’,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミン、5,5’−ジメチル−2,2’−スルフォニルビフェニル−4,4’−ジアミン、3,3’−ジヒドロキシビフェニル−4,4’−ジアミン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルスルホン、(4,4’−ジアミノ)ベンゾフェノン、(3,3’―ジアミノ)ベンゾフェノン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン、(4,4’−ジアミノ)ジフェニルエーテル、(3,3’―ジアミノ)ジフェニルエーテル等が挙げられる。芳香族ジアミン化合物は、上述した化合物のうちの1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
これらの芳香族ジアミンを併用することで、ポリアミドイミド中には飽和炭化水素からなる構造単位に加え、芳香環構造が導入されることになる。このようなポリアミドイミドを含む硬化性樹脂組成物は、その硬化物(接着層4)のTgを更に向上させることができ、これらの耐熱性を一層良好にすることができる。
【0085】
さらに、飽和炭化水素基を有するジアミン化合物と併用するジアミン化合物としては、下記一般式(6)で表されるシロキサンジアミンが好適である。
【化6】

【0086】
式(6)中、R13、R14、R15、R16、R17及びR18(以下、「R13〜R18」のように表記する。)は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又は置換基を有していてもよいフェニル基であると好ましい。フェニル基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。また、R19及びR20は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基又は置換基を有していてもよいアリーレン基が好ましい。このアリーレン基としては、置換基を有していてもよいフェニレン基又は置換基を有していてもよいナフタレン基が好ましい。さらに、このアリーレン基に結合していてもよい置換基としては、炭素数1〜3のアルキル基又はハロゲン原子が好ましい。さらに、式(6)中、a及びbはそれぞれ1〜15の整数である。
【0087】
このようなシロキサンジアミンとしては、特に、R13〜R18がメチル基である化合物、すなわち、ジメチルシロキサンの両末端にアミノ基が結合した構造を有するものが特に好ましい。なお、シロキサンジアミンとしては、1種の化合物を単独で用いてもよく、2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
上記一般式(6)で表されるシロキサンジアミンとしては、具体的には、シリコーンオイルX−22−161AS(アミン当量450)、X−22−161A(アミン当量840)、X−22−161B(アミン当量1500)、X−22−9409(アミン当量700)、X−22−1660B−3(アミン当量2200)(以上、信越化学工業社製、商品名)、BY16−853(アミン当量650)、BY16−853B(アミン当量2200)、(以上、東レダウコーニングシリコーン社製、商品名)等として商業的に入手可能であるものが好適である。
【0089】
ジアミン化合物として上述したシロキサンジアミンを併用することで、(C)成分であるポリアミドイミドは、主鎖にシロキサン構造を有するものとなる。そして、このようなシロキサン構造を有するポリアミドイミドを含む硬化性樹脂組成物は、可撓性に優れ、しかも高温条件での膨れ等を極めて発生し難い硬化物を形成することができ、本実施形態の導体張積層板1を用いて得られたプリント配線板等の耐久性及び耐熱性を更に向上することができる。
【0090】
飽和炭化水素からなる構造単位を有するポリアミドイミドの製造においては、まず、ジアミン化合物として、少なくとも飽和炭化水素基を有するジアミン化合物を含むジアミン化合物を準備する。次いで、これらのジアミン化合物と、無水トリメリット酸とを反応させる。この際、ジアミン化合物の有するアミノ基と、無水トリメリット酸の有するカルボキシル基又は無水カルボキシル基との間で反応が生じて、アミド基が生成する。かかる反応においては、特に、ジアミン化合物のアミノ基と、無水トリメリット酸の無水カルボキシル基との反応を生じさせることが好ましい。
【0091】
この反応は、ジアミン化合物と、無水トリメリット酸とを非プロトン性極性溶媒に溶解又は分散させ、70〜100℃で行うことが好ましい。非プロトン性極性溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等が例示できる。なかでも、NMPが特に好ましい。これらの非プロトン性極性溶媒は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
非プロトン性極性溶媒は、この非プロトン性極性溶媒、ジアミン化合物及び無水トリメリット酸の合計質量に対して、固形分が10〜70質量%となる量であると好ましく、20〜60質量%となる量であるとより好ましい。この溶液中の固形分が10質量%未満となる場合、溶媒の使用量が多過ぎ、工業的に不利となる傾向にある。一方、70質量%を超えると、無水トリメリット酸の溶解性が低下し、充分な反応を行うことが困難となる傾向にある。
【0093】
次に、上記の反応後の溶液中に、水と共沸可能な芳香族炭化水素を添加し、150〜200℃で更に反応させる。これにより、隣り合うカルボキシル基とアミド基との間で脱水閉環反応が生じ、その結果、イミド基含有ジカルボン酸が得られる。ここで、水と共沸可能な芳香族炭化水素としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等を例示できる。なかでも、トルエンが好ましい。芳香族炭化水素は、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して、10〜50質量部に相当する量を添加することが好ましい。この芳香族炭化水素の添加量が、非プロトン性極性溶媒100質量部に対して10質量部未満である場合、水の除去効果が不十分となる傾向にあるほか、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少するおそれがある。一方、50質量部を超えるようにすると、溶液における反応温度が低下してしまい、イミド基含有ジカルボン酸の生成量が減少する傾向にある。
【0094】
この脱水閉環反応中には、水とともに溶液中の芳香族炭化水素も留出することにより、反応溶液中の芳香族炭化水素量が上述の好適な範囲よりも少なくなる場合がある。そこで、例えば、コック付きの水分定量受器に水と芳香族炭化水素とを留出させ、芳香族炭化水素を分離した後に反応溶液中に戻す等の操作を行うことにより、反応溶液中の芳香族炭化水素量を一定割合に保つようにしてもよい。なお、脱水閉環反応の終了後には、溶液の温度を150〜200℃程度に保持して水と共沸可能な芳香族炭化水素を除去することが好ましい。
【0095】
ここまでの反応で得られるイミド基含有ジカルボン酸は、例えば、下記一般式(7)で表される構造を有するものとなる。
【化7】

【0096】
式(7)中、Lは、上記一般式(1a)、(1b)、(3)、(4a)、(4b)又は(6)で表されるジアミン化合物のアミノ基を除いた残基を示す。イミド基含有ジカルボン酸としては、原料として用いたジアミン化合物に対応する構造のLを有する各種の化合物が得られる。
【0097】
このようにして得られたイミド基含有ジカルボン酸を用いてポリアミドイミドを合成する方法としては以下のような方法が挙げられる。すなわち、まず、第1の方法としては、上述したようなイミド基含有ジカルボン酸を酸ハロゲン化物に誘導した後、上述したようなジアミン化合物と共重合させる方法が挙げられる。
【0098】
イミド基含有ジカルボン酸は、塩化チオニルや三塩化リン、五塩化リン、ジクロロメチルメチルエーテルとの反応によって容易に酸ハロゲン化物に誘導される。そして、こうして得られたイミド基含有ジカルボン酸のハロゲン化物は、室温又は加熱条件下で、容易にジアミン化合物と共重合することができる。
【0099】
第2の方法としては、イミド基含有ジカルボン酸を、縮合剤の存在下、上述したようなジアミン化合物と共重合させて製造する方法が挙げられる。かかる反応において、縮合剤としては、アミド結合を形成する一般的な縮合剤を用いることができる。なかでも、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド又はN−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミドを単独で用いるか、或いは、これらをN−ヒドロキシスクシンイミド又は1−ヒドロキシベンゾトリアゾールと併用することが好ましい。
【0100】
第3の方法としては、イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとを反応させる方法が挙げられる。かかる反応を経由する場合は、イミド基含有ジカルボン酸の原料であるジアミン化合物及び無水トリメリット酸と、ジイソシアネートとの比は、次のように設定することが好ましい。すなわち、(ジアミン化合物:無水トリメリット酸:ジイソシアネート)が、モル比で1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.5)の範囲となるようにすることが好ましく、1.0:(2.0〜2.2):(1.0〜1.3)の範囲となるようにすることがより好ましい。このようなモル比に調整することによって、より高分子量でフィルム形成に有利なポリアミドイミドを得ることが可能となる。
【0101】
第3の方法で用いるジイソシアネートとしては、下記一般式(8)で表される化合物を例示できる。
【化8】

【0102】
式(8)中、Lは1つ以上の芳香環を有する2価の有機基又は2価の脂肪族炭化水素基である。特に、下記式(9a)で表される基、下記式(9b)で表される基、トリレン基、ナフチレン基、ヘキサメチレン基及び2、2、4−トリメチルヘキサメチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることが好ましい。
【化9】

【0103】
上記一般式(8)で表されるジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート又は芳香族ジイソシアネートが挙げられ、芳香族ジイソシアネートが好ましく、両者を併用することが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、2,4−トリレンダイマー等が例示できる。なかでも、MDIが特に好ましい。芳香族ジイソシアネートとしてMDIを用いることにより、得られるポリアミドイミドの可撓性を向上させ、さらに結晶性を低減することができる。その結果、ポリアミドイミドのフィルム形成性を向上させることができる。一方、脂肪族ジイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を例示できる。
【0104】
芳香族ジイソシアネートと脂肪族ジイソシアネートとを併用する場合は、脂肪族ジイソシアネートを芳香族ジイソシアネート100モル部に対して5〜10モル部程度添加することが好ましい。これにより、得られるポリアミドイミドの耐熱性を更に向上させることができる。
【0105】
第3の方法における、イミド基含有ジカルボン酸とジイソシアネートとの反応は、イミド基含有ジカルボン酸を含む溶液中にジイソシアネートを添加し、反応温度130〜200℃で反応させることにより行うことができる。また、かかる反応は、塩基性触媒を用いて行ってもよい。この場合は、反応温度を70〜180℃とすることが好ましく、120〜150℃とすることがより好ましい。塩基性触媒の存在下でこの反応を行うと、塩基性触媒の不在下で反応を行う場合に比べて、より低い温度で反応を進行させることが可能となるため、高温条件下におけるジイソシアネート同士の反応といった副反応の進行を抑制することができる。その結果、より高分子量のポリアミドイミド化合物を得ることが可能となる。
【0106】
塩基性触媒としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリ(2−エチルへキシル)アミン、トリオクチルアミン等のトリアルキルアミンが例示できる。なかでも、トリエチルアミンは、上述の反応を促進できる好適な塩基性触媒であり、しかも反応後の系内からの除去が容易であることから特に好ましい。
【0107】
上述した各種の方法によって得られるポリアミドイミドとしては、例えば、下記一般式(10)で表される構造単位を有するものが挙げられる。なお、下記式(10)中、L及びLは、上述のL及びLと同義である。
【化10】

【0108】
好適な実施形態における硬化性樹脂組成物は、上述したような(A)〜(C)成分を含有するものである。そして、このような硬化性樹脂組成物において、(A)〜(C)成分は、以下に示すような条件を満たす配合割合で含まれていることが好ましい。
【0109】
まず、硬化性樹脂組成物中の(B)成分の配合割合は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜200質量部であると好ましく、10〜150質量部であるとより好ましい。(B)成分の配合割合が0.5質量部未満であると、導体張積層板1やこれを用いて得られるプリント配線板において、接着層の靭性や導体層(導体箔)との接着性が低下する傾向にある。一方、200質量部を超えると、接着層4の熱硬化性が低下するほか、接着層と絶縁樹脂層等との反応性が低下するため、導体張積層板1や後述するようなプリント配線板を形成した場合に、接着層そのものや、接着層と絶縁樹脂層等との界面近傍の耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。
【0110】
また、(C)成分の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.5〜500質量部とすることが好ましく、1〜400質量部とすることがより好ましく、10〜400質量部とすることが更に好ましい。この(C)成分の配合割合が0.5質量部未満であると、導体張積層板1やこれを用いて得られるプリント配線板等において、接着層の靭性や、その導体層(導体箔)との接着性が低下する傾向にある。また、500質量部を超えると、接着層そのものや、接着層と絶縁樹脂層との界面近傍の耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。
【0111】
硬化して接着層4となる硬化性樹脂組成物は、上述した(A)〜(C)成分以外に、必要に応じて所望の成分を更に含んでいてもよい。(A)〜(C)成分以外の成分としては、まず、(A)成分である多官能エポキシ樹脂と、(B)成分である多官能フェノール樹脂との反応を促進する触媒機能を有する硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤としては、特に制限されないが、例えば、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化促進剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
硬化性樹脂組成物中の硬化促進剤の配合割合は、(A)成分の配合割合に応じて決定することが好ましい。具体的には、(A)成分100質量部に対して、0.05〜10質量部とすることが好ましい。この範囲内で硬化促進剤を配合すると、(A)成分と(B)成分との良好な反応速度が得られ、しかも、硬化して接着層4となる硬化性樹脂組成物が反応性及び硬化性に一層優れるようになる。その結果、接着層4が、一層優れた耐薬品性、耐熱性や耐湿耐熱性を有するようになる。
【0113】
さらに、硬化性樹脂組成物は、所望の特性に応じて、架橋ゴム粒子、難燃剤、充填剤、カップリング剤等の各種添加剤を、プリント配線板等を形成した際の接着層4による耐熱性、接着性、耐吸湿性等の特性を悪化させない程度に含んでいてもよい。
【0114】
叙述の架橋ゴム粒子としては、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子から選択される少なくとも1種が好適である。
【0115】
ここで、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子とは、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合させ、しかも共重合する段階で部分的に架橋させて、粒子状にしたものである。また、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子は、上記の共重合において、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を併せて共重合することにより得られるものである。さらに、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子は、乳化重合でブタジエン粒子を重合させ、さらにアクリル酸エステルやアクリル酸等のモノマーを添加して重合を続ける二段階の重合方法で得られるものである。これらの架橋ゴム粒子の大きさは、一次平均粒子径で、50nm〜1μmであると好ましい。架橋ゴム粒子としては、上述したものを単独で添加してもよく、2種以上を組み合せて添加してもよい。
【0116】
このような架橋ゴム粒子として、より具体的には、例えば、カルボン酸変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子としては、日本合成ゴム株式会社製のXER−91が挙げられる。また、ブタジエンゴム−アクリル樹脂のコアシェル粒子は呉羽化学工業株式会社製のEXL−2655や武田薬品工業株式会社のAC−3832が挙げられる。
【0117】
硬化性樹脂組成物において、架橋ゴム粒子の配合割合は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して0.5〜100質量部の範囲とすると好ましく、1〜50質量部とするとより好ましい。架橋ゴム粒子の配合割合が0.5質量部未満であると、導体張積層板1やこれを用いて得られるプリント配線板において、接着層の靭性や、この接着層と導体層(導体箔)との接着性が低下する傾向にある。一方、100質量部を超えると、接着層そのものや、接着層と絶縁樹脂層との界面近傍の耐熱性、耐薬品性及び破壊強度が低下する傾向にある。なお、架橋ゴム粒子として複数種類の成分を含む場合は、それらの合計が上述した配合割合を満たすようにすることが好ましい。
【0118】
難燃剤としては、特に限定されないが、臭素系、リン系、金属水酸化物等の難燃剤が好適である。より具体的には、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化エポキシ樹脂、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモトルエン、エチレンビス(ペンタブロモフェニル)、エチレンビステトラブロモフタルイミド、1、2−ジブロモ−4−(1、2−ジブロモエチル)シクロヘキサン、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、2、4、6−トリス(トリブロモフェノキシ)−1、3、5−トリアジン等の臭素化添加型難燃剤、トリブロモフェニルマレイミド、トリブロモフェニルアクリレート、トリブロモフェニルメタクリレート、テトラブロモビスフェノールA型ジメタクリレート、ペンタブロモベンジルアクリレート、臭素化スチレン等の不飽和二重結合を含有する臭素化反応型難燃剤等が挙げられる。
【0119】
また、リン系難燃剤しては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジルジ−2、6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族系リン酸エステル、フェニルホスホン酸ジビニル、フェニルホスホン酸ジアリル、フェニルホスホン酸ビス(1−ブテニル)等のホスホン酸エステル、ジフェニルホスフィン酸フェニル、ジフェニルホスフィン酸メチル、9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド誘導体等のホスフィン酸エステル、ビス(2−アリルフェノキシ)ホスファゼン、ジクレジルホスファゼン等のホスファゼン化合物、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸アンモニウム、赤リン等のリン系難燃剤を例示できる。さらに、金属水酸化物難燃剤としては水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等が例示される。これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
難燃剤を添加する場合、その配合割合は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、5〜150質量部とすることが好ましく、5〜80質量部とすることがより好ましく、5〜60質量部とすることが更に好ましい。難燃剤の配合割合が5質量部未満であると、硬化前接着層や接着層4の耐燃性が不十分となる傾向にある。一方、100質量部を超えると接着層4の耐熱性が低下する傾向にある。
【0121】
また、添加剤である充填剤としては、特に限定されないが、無機充填剤が好適である。無機充填剤としては、例えば、アルミナ、酸化チタン、マイカ、シリカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0122】
これらの充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、充填剤の形状、粒径については特に制限はないが、粒径が0.01〜50μmであると好ましく、0.1〜15μmであるとより好ましい。硬化性樹脂組成物における充填剤の配合割合は、例えば、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、1〜1000質量部であると好ましく、1〜800質量部であるとより好ましい。
【0123】
さらに、カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。シラン系カップリング剤としては、炭素官能性シランが例示できる。具体的には、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピル(メチル)ジメトキシシラン、2−(2,3−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン;3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン等のアミノ基含有シラン;3−(トリメトキシリル)プロピルテトラメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性シラン;ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シラン;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリル基含有シラン;3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト基含有シラン等が挙げられる。一方、チタネート系カップリング剤としては、例えば、チタンプロポキシド、チタンブトキシド等のチタン酸アルキルエステルが挙げられる。これらのカップリング剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
硬化性樹脂組成物におけるカップリング剤の配合割合は、特に限定されないが、(A)成分及び(B)成分の合計量100質量部に対して、0.05〜20質量部であると好ましく、0.1〜10質量部であるとより好ましい。
【0125】
そして、上述した各成分を含む硬化性樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及びその他の添加成分を、公知の方法で配合し、混合することによって調製することができる。
【0126】
[導体張積層板の製造方法]
次に、上記導体張積層板1の製造方法について説明する。
【0127】
まず、上述した硬化性樹脂組成物を調製し、これをそのまま、又は、これを溶媒に溶解又は分散させたワニスを、上述したような導体箔のM面に塗布した後、乾燥等して硬化前接着層とする。こうして、導体層6となる導体箔と、硬化して接着層4となる硬化前接着層とを積層してなる接着層付き導体箔が得られる。この際、硬化性樹脂組成物は半硬化(Bステージ化)させてもよい。
【0128】
硬化性樹脂組成物やそのワニスの塗布は、公知の方法で行うことができ、例えば、キスコーター、ロールコーター、コンマコーター等を用いて行うことができる。また、乾燥は、加熱乾燥炉中等で、例えば70〜250℃、好ましくは100〜200℃の温度で、1〜30分間、好ましくは3〜15分間処理する方法により実施することができる。硬化性樹脂組成物を溶解等するために溶媒を使用した場合は、乾燥温度は、溶媒の揮発可能な温度以上とすることが好ましい。
【0129】
硬化性樹脂組成物をワニス化する場合に用いる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、ブトキシエチルアセテート、酢酸エチル等のエステル類、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の含窒素類等の溶媒が挙げられる。ワニス化に際しては、溶媒は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0130】
これらの溶媒のうち、含窒素類及びケトン類を併用する場合、これらの配合割合は、含窒素類100質量部に対して、ケトン類が1〜500質量部となるようにすると好ましく、3〜300質量部となるようにするとより好ましく、5〜250質量部となるようにすると更に好ましい。
【0131】
また、硬化性樹脂組成物をワニス化する際には、ワニス中の固形分(不揮発分)濃度が5〜80質量%となるように溶媒量を調節することが好ましい。接着層付き導体箔を製造する場合、溶媒量を適度に調節することによって、上述したような好ましい膜厚を有する硬化前接着層が得られるように、固形分濃度やワニス粘度を調整することが容易となる。
【0132】
また、上述の接着層付き導体膜の準備と同時に、絶縁層2を形成するためのプリプレグを準備する。プリプレグとしては、上述の絶縁性樹脂を、ガラス繊維、有機繊維等の強化繊維に含浸させ、例えば、樹脂を半硬化させる等の公知の方法により作製されたものが挙げられる。
【0133】
次に、このプリプレグを複数枚重ねて絶縁性樹脂膜を形成する。そして、この絶縁性樹脂膜の片面に、上記接着層付き導体箔を硬化前接着層が絶縁樹脂膜に接するようにして重ねる。その後、これらを加熱及び/又は加圧することにより、導体張積層板1が得られる。この加熱・加圧により、絶縁性樹脂膜における絶縁性を有する樹脂が硬化するとともに、硬化前接着層を構成している硬化性樹脂組成物が硬化する。その結果、絶縁性樹脂膜から絶縁層2が形成され、硬化前接着層から接着層4が形成される。
【0134】
加熱は、150〜250℃の温度で行うことが好ましく、加圧は、0.5〜10.0MPaの圧力で行うことが好ましく、加熱及び加圧時間は0.5〜10時間とすることが好ましい。この加熱及び加圧は、例えば真空プレスを用いることにより同時に行うことができる。これにより、硬化前接着層及び絶縁性樹脂膜の硬化が十分に進行するようになり、接着層4による導体層6及び絶縁層2間の接着性に優れ、しかも、耐薬品性、耐熱性及び耐湿耐熱性に優れた導体張積層板1が得られる。
【0135】
[印刷配線板]
次に、本発明の好適な実施形態に係る印刷配線板について、図2を参照して説明する。図2は、好適な実施形態に係る印刷配線板を示す断面図である。
【0136】
印刷配線板10は、絶縁層12と、接着層14と、回路パターン16とをこの順に備える構成を有している。絶縁層12、接着層14及び回路パターン16はそれぞれ導体張積層板1における絶縁層2、接着層4及び導体層6と同様の材料から構成されるものである。このような構成を有する配線板10は、例えば、上述した導体張積層板1における導体層6を、公知のエッチング方法を適用することにより、所望の回路パターンに加工することによって製造することができる。
【0137】
[多層配線板]
次に、本発明の好適な実施形態の多層配線板について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の多層配線板の断面構造を示す模式図である。
【0138】
多層配線板20は、絶縁層22、接着層24、内層回路パターン26、層間絶縁層28及び外層回路パターン30をこの順に有する一組の配線板が、絶縁層22同士が向き合うようにして張り合わされた構造を有している。かかる多層配線板20においては、内層回路パターン26と、外層回路パターン30とが、層間絶縁層28に設けられたビアホール32によって接続されている。また、一組の配線板における内層回路パターン26同士は、スルーホール34によって接続されている。
【0139】
多層配線板20において、絶縁層22、接着層24及び内層回路パターン26は、それぞれ印刷配線板10における絶縁層12、接着層24及び回路パターン16と同様の材料から構成されている。すなわち、多層配線板20は、上述した印刷配線板10をコア基板40として備えている。また、層間絶縁層28としては、公知の絶縁性を有する樹脂材料(例えば、印刷配線板10における絶縁層12に含まれる樹脂材料)からなる層、又は、この絶縁性の樹脂材料中に所定の強化基材が配されたプリプレグからなる層が挙げられる。
【0140】
さらに、外層回路パターン30は、内層回路パターン26と同様の導電材料からなるものである。さらにまた、ビアホール32及びスルーホール34は、絶縁層22、接着層24、層間絶縁層28等に設けられた空孔に、所定の導電材料を充填して形成されたものである。このビアホール32又はスルーホール34によって、内層回路パターン26と外層回路パターン30、又は、内層回路パターン26同士が、所定の部位において導通されている。
【0141】
このような構成を有する多層配線板20は、次に示すような方法により製造可能である。すなわち、まず、コア基板40となるべき一組の印刷配線板10を準備し、絶縁層22同士が向き合うように重ねる。これに、必要に応じて穴あけ、金属めっき等を施して、スルーホール34を形成する。次いで、印刷配線板10における回路パターン16(内層回路パターン26)上に、層間絶縁層28を構成すべきプリプレグ等を所定の枚数重ねる。
【0142】
それから、プリプレグに対して、所望の位置に穴あけした後、導電材料を充填するなどしてビアホール32を形成する。その後、プリプレグ上に内層回路パターン26と同様の金属箔を積層し、これらを加熱加圧することによって、圧着させる。そして、最外層の金属箔を、公知のエッチング方法等により所望の回路パターンとなるように加工し外層回路パターン30を形成して、多層配線板20を得る。
【0143】
なお、本発明の多層配線板は、少なくともコア基板40として本発明の配線板を有していれば、上述した実施形態に限られない。例えば、層間絶縁層28と外層回路パターン30との間には、接着層24と同様の接着層が形成されていてもよい。これにより、層間絶縁層24と外層回路パターン30とが、この接着層を介して強固に接着されるようになるため、多層配線板20は、内層回路パターン26のみならず、外層回路パターン30の剥離も極めて生じ難いものとなる。
【0144】
このように、層間絶縁層28と外層回路パターン30との間に接着層を有する構成の多層配線板は、例えば、上述したように層間絶縁層28と外層回路パターン30とを順次形成する以外に、コア基板40上に、配線板10の製造に用いた樹脂付き金属箔を積層することによっても得ることができる。また、このような多層配線板20は、コア基板40上に、これと同一又は異なる回路パターン16を備える配線板10を積層することによっても製造可能である。
【0145】
さらに、多層配線板20は、図示の積層数に限られず、所望の積層数を有するものとすることができる。このような多層配線板20は、コア基板40の両側に、所望の積層数に応じて、層間絶縁層28及び外層回路パターン30を交互に積層するか、または、配線板10を所望の層数となるように積層することによって製造することができる。
【0146】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0147】
例えば、本発明の別の実施形態において、導体張積層板は上述の好適な実施形態に限定されず、例えば、一対の導体層間に、絶縁層と接着層とが一体化されてなる層が挟まれた構成を有していてもよい。このような導体張積層板であっても、高周波帯での伝送損失を十分に抑制し得るプリント配線板を作製するのに有利であり、しかも、絶縁層と導体層との間の接着性が十分に優れたものとなる。
【実施例】
【0148】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0149】
[ポリアミドイミドの合成]
(合成例1)
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)45mmol、シロキサンジアミン化合物Bとして反応性シリコーンオイル(X−22−161−B、信越化学工業社製、アミン当量:1500、商品名)5mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)85gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0150】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて、反応溶液中のトルエンを除去した。
【0151】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)60mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して、合成例1のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液の重量平均分子量(Mw)をゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、34000であった。
(合成例2)
【0152】
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)10mmol、飽和脂環式炭化水素基を有するジアミン化合物Aとして(4,4’−ジアミノ)ジシクロヘキシルメタン(ワンダミンHM(WHM)、新日本理化社製、商品名)40mmol、無水トリメリット酸(TMA)105mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)150gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0153】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて、反応溶液中のトルエンを除去した。
【0154】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)180mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して、合成例2のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、84000であった。
(合成例3)
【0155】
まず、ディーンスターク還流冷却器、温度計、撹拌器を備えた1Lのセパラブルフラスコに、飽和脂肪族炭化水素基を有するジアミン化合物CとしてジェファーミンD−2000(サンテクノケミカル社製、商品名)30mmol、芳香族ジアミン化合物Dとして(4,4’−ジアミノ)ジフェニルメタン(DDM)120mmol、無水トリメリット酸(TMA)315mmol、非プロトン性極性溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを入れ、フラスコ内の温度を80℃に設定して30分間撹拌した。
【0156】
撹拌終了後、水と共沸可能な芳香族炭化水素としてトルエン100mLを更に添加し、フラスコ内の温度を160℃に昇温して約2時間還流した。水分定量受器に理論量の水が貯留され、水の留出が見られなくなっていることを確認した後、水分定量受器中の水を除去しながら、フラスコ内の温度を190℃まで上昇させて、反応溶液中のトルエンを除去した。
【0157】
フラスコ内の溶液を室温まで戻した後、ジイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)180mmolを添加し、フラスコ内の温度を190℃に上昇させて2時間反応させた後、NMPで希釈して、合成例3のポリアミドイミドのNMP溶液(固形分濃度30質量%)を得た。このNMP溶液のMwをゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したところ、74000であった。
【0158】
[接着層用樹脂ワニス(硬化性樹脂組成物)の調製]
(調製例1)
(A)成分であるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−500、東都化成社製、商品名)5.0gに、(B)成分であるノボラック型フェノール樹脂(MEH7500、明和化成社製、商品名)3.1g、及び、(C)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液18gを配合した。更にそこに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン28g及びメチルエチルケトン13gを配合して、調製例1の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0159】
なお、YDCN−500とMEH7500に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、190℃であった。ここで、ガラス転移温度Tgは、JIS−K7121−1987に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値である。
【0160】
(調製例2)
(A)成分であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂(N−770、大日本インキ化学工業社製、商品名)5.0gに、(B)成分であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA−1165、大日本インキ化学工業社製、商品名)3.9g、(C)成分である合成例2で得られたポリアミドイミドのNMP溶液55gを配合した。更にそこに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン39g及びメチルエチルケトン20gを配合して、調製例2の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0161】
なお、N−770とKA−1165に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、190℃であった。
【0162】
(調製例3)
(A)成分であるビフェニル構造を有するノボラック型エポキシ樹脂(NC−3000H、日本化薬社製、商品名)5.0gに、(B)成分であるビスフェノールAノボラック樹脂(YLH129、ジャパンエポキシレジン社製、商品名)2.0g、及び、(C)成分である合成例3で得られたポリアミドイミドのNMP溶液38gを配合した。更にそこに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン35g及びメチルエチルケトン13gを配合して、調製例3の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0163】
なお、NC−3000HとYLH−129に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、170℃であった。
【0164】
(調製例4)
(A)成分であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(DER−331L、ダウケミカル日本社製、商品名)5.0gに、(B)成分であるクレゾールノボラック型フェノール樹脂(KA−1163、大日本インキ化学工業社製、商品名)3.2g、(C)成分である合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液50gを配合した。更にそこに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.025gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン46g及びメチルエチルケトン15gを配合して、調製例4の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約20質量%)を調製した。
【0165】
なお、DER−331LとKA−1163に2E4MZを添加した樹脂を硬化して得られた樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、135℃であった。
【0166】
(比較調製例1)
合成例1で得られたポリアミドイミドのNMP溶液50gにN−メチル−2−ピロリドン50gを配合して、比較調製例1の接着用樹脂ワニス(固形分濃度約15質量%)を調製した。
【0167】
(比較調製例2)
合成例2で得られたポリアミドイミドのNMP溶液50gにクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(YDCN−500、東都化成社製、商品名)8.8gを配合した。更にそこに、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ、四国化成工業社製、商品名)0.088gを添加した後、N−メチル−2−ピロリドン101g及びメチルエチルケトン34gを配合して、比較調製例2の接着層用樹脂ワニス(固形分濃度約15質量%)を調製した。
【0168】
[絶縁樹脂層(絶縁層)用プリプレグの作製]
(作製例1)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gとポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPOノリルPKN4752、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)120gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。
【0169】
次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)80gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.0gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
【0170】
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合が50質量%である作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
【0171】
(作製例2)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン333gとポリフェニレンエーテル樹脂(ザイロンS202A、旭化成ケミカルズ社製、商品名)26.5gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内に1,2−ポリブタジエン(B−3000、日本曹達社製、商品名)100g、架橋助剤としてN−フェニルマレイミド15.9gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)3.0gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
【0172】
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例2の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
【0173】
(作製例3)
まず、冷却管、温度計、攪拌器を備えた10Lのセパラブルフラスコ内に、テトラヒドロフラン(THF)5000mL、ポリフェニレンエーテル樹脂(ノリルPPO646−111、日本ジーイープラスチックス社製、商品名)100gを入れ、フラスコ内の温度を60℃に加熱しながら攪拌溶解した。これを室温に戻した後、窒素気流下でn−ブチルリチウム(1.55mol/L、ヘキサン溶液)540mLを添加し、1時間撹拌した。更に、臭化アリル100gを添加して30分間撹拌した後、適量のメタノールを配合し、沈殿したポリマーを単離してアリル化ポリフェニレンエーテルを得た。
【0174】
次に、冷却管、温度計、攪拌器を備えた2Lのセパラブルフラスコ内に、トルエン400gと上述のアリル化ポリフェニレンエーテル100gを入れ、フラスコ内の温度を90℃に加熱しながら攪拌溶解した。次に、撹拌しながらフラスコ内にトリアリルイソシアヌレート(TAIC、日本化成社製、商品名)100gを添加し、溶解又は均一分散したことを確認後、室温まで冷却した。次いで、ラジカル重合開始剤としてα,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(パーブチルP、日本油脂社製、商品名)2.5gを添加した後、更にトルエン70gを配合して、固形分濃度約30質量%の絶縁樹脂層用ワニスを得た。
【0175】
得られた絶縁樹脂層用ワニスを、厚さ0.1mmのガラス繊維(Eガラス、日東紡績社製)に含浸した後、120℃で5分間加熱乾燥して、樹脂含有割合50質量%の作製例3の絶縁樹脂層用プリプレグを得た。
【0176】
(接着層付き金属箔の作製)
調製例1〜4及び比較調製例1、2で得られた接着層用樹脂ワニスを、厚さ12μmの電解銅箔(F0−WS−12、ロープロファイル銅箔、古河サーキットフォイル社製)のM面(表面粗さ(Rz)=0.8μm)にそれぞれ自然流延塗布した後、150℃で5分間乾燥させて、それぞれ接着層付き導体箔を作製した。乾燥後の硬化前接着層の厚さはいずれも3μmであった。
【0177】
[実施例1〜4、比較例1、2]
(両面銅張積層板の作製)
作製例1〜3のいずれかの絶縁樹脂層用プリプレグ4枚を重ねてなる基材の両主面に、上記接着層付き導体箔のいずれかを、それぞれの接着層が接するように被着させて積層体を得た。その後、積層体を200℃、3.0MPa、70分のプレス条件で積層方向の加熱加圧により成形して、実施例1〜4、比較例1、2の両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)をそれぞれ作製した。各実施例又は比較例における接着層用樹脂ワニスと絶縁樹脂層用プリプレグとの組み合わせは、表1に示す通りとした。
【0178】
【表1】

【0179】
また、作製例1の絶縁樹脂層用プリプレグ4枚を重ねてなる基材の両主面に、接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔A(F0−WS−12、古河電気工業社製、商品名、Rz=0.8μm)、あるいは、接着層を設けていない厚さ18μmの電解銅箔B(GTS−12、一般銅箔、古河電気工業社製、M面のRz=8μm、商品名)を、M面が基材の主面に接するように被着させて積層体を得た。その後、積層体を200℃、3.0MPa、70分のプレス条件で積層方向の加熱加圧により成形して、比較例3、4の両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)を作製した。これらのうち電解銅箔Aを用いた方を比較例3、電解銅箔Bを用いた方を比較例4の両面銅張積層板(厚さ:0.55mm)とした。
【0180】
(多層基板の作製)
まず、上記と同様に、実施例1〜4及び比較例1〜4の両面銅張積層板を形成し、これらの銅箔部分を完全にエッチングにより除去した。その後、銅張積層板の作製時に使用した絶縁樹脂層用プリプレグと同一のプリプレグを、銅箔除去後の両面銅張積層板の両面に1枚ずつ配置し、その外側に接着層を設けていない厚さ12μmの電解銅箔(GTS−12、一般銅箔、古河電気工業社製、M面のRz=8μm、商品名)を、そのM面が接するように被着させた後、200℃、3.0MPa、70分のプレス条件で積層方向の加熱加圧により成形して、多層基板を作製した。
【0181】
[銅張積層板における銅箔引き剥がし強さの測定]
実施例1〜4、比較例1〜4で得られた両面銅張積層板を、その銅箔が線幅5mmの回路形状を有するように不要な銅箔部分をエッチングにより除去する処理を行い、2.5cm×10cmの平面形状を有する積層板サンプルを作製した。こうして作製したサンプルを、常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧、100%RH)中で5時間保持した後、銅箔引き剥がし強さ(単位:kN/m)を、以下の条件で測定した。得られた結果を表1に示す。
・試験方法:90℃方向引張試験
・引張速度:50mm/分
・測定装置:島津製作所製オートグラフAG−100C
【0182】
なお、この銅箔引き剥がし強さについて、表中「−」で示したものは、PCT中で保持した後に、すでに銅箔が剥離していたため、銅箔引き剥がし強さを測定できなかったことを意味する。
【0183】
[銅張積層板及び多層基板のはんだ耐熱性の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜4で得られた両面銅張積層板及び多層基板を、それぞれ50mm角に切断した後、両面銅張積層板は、片側の銅箔を所定形状にエッチングし、また多層基板は外層の銅箔をエッチングにより完全に除去した後に、その常態及びプレッシャークッカーテスト(PCT)用装置(条件:121℃、2.2気圧)中に所定時間(1〜5時間)保持した。その後、これらを、260℃の溶融はんだに20秒間浸漬して、この処理後の両面銅張積層板及び多層基板各3枚の外観を目視で調べた。得られた結果を表1に示す。なお、表中の数字は、はんだ浸漬後の銅張積層板3枚のうち、絶縁層及び銅箔(導電層)間に膨れやミーズリングの発生が認められなかったものの枚数を意味する。この数が多いほど、はんだ耐熱性に優れていることを意味する。
【0184】
[銅張積層板の伝送損失の評価]
実施例1〜4及び比較例1〜4の両面銅張積層板の伝送損失(単位:dB/m)を、ベクトル型ネットワークアナライザを用いたトリプレート線路共振器法により測定した。なお、測定条件はライン幅:0.6mm、上下グランド導体間絶縁層距離:1.04mm、ライン長:200mm、特性インピーダンス:約50Ω、周波数:3GHz、測定温度:25℃とした。得られた結果を表1に示す。
【符号の説明】
【0185】
1…導体張積層板、2…絶縁層、4…接着層、6…導体層、10…配線板、12…絶縁層、14…接着層、16…回路パターン、20…多層配線板、22…絶縁層、24…接着層、26…内層回路パターン、28…層間絶縁層、30…外層回路パターン、32…ビアホール、34…スルーホール、40…コア基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、該絶縁層に対向して配置された導体層と、前記絶縁層及び前記導体層に挟まれた接着層と、を備え、
前記接着層は、
(A)成分;多官能エポキシ樹脂と、
(B)成分;多官能フェノール樹脂と、
(C)成分;ポリアミド樹脂と、を含む樹脂組成物の硬化物からなるものである、導体張積層板。
【請求項2】
前記(A)成分及び前記(B)成分は、これらの混合物の硬化後のガラス転移温度が150℃以上となるものである、請求項1記載の導体張積層板。
【請求項3】
前記(A)成分が、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、ビフェニル−アラルキレン骨格含有エポキシ樹脂、フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、低級アルキル基置換フェノールサリチルアルデヒドノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、多官能グリシジルアミン型エポキシ樹脂及び多官能脂環式エポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能エポキシ樹脂を含有する、請求項1又は2記載の導体張積層板。
【請求項4】
前記(B)成分が、アラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、サリチルアルデヒド型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型樹脂、及び、ノボラック型フェノール樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の多官能フェノール樹脂を含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項5】
前記(C)成分が、飽和炭化水素からなる構造単位を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項6】
前記(C)成分の配合割合が、前記(A)成分及び前記(B)成分の合計100質量部に対して10〜400質量部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項7】
前記接着層が0.1〜10μmの厚さを有している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項8】
前記導体層における前記接着層側の面の十点平均粗さ(Rz)が4μm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項9】
前記絶縁層は、絶縁性樹脂と、該絶縁性樹脂中に配された基材とから構成され、
前記基材として、ガラス、紙材及び有機高分子化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の材料からなる繊維の織布又は不織布を備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項10】
前記絶縁層は、前記絶縁性樹脂として、エチレン性不飽和結合を有する樹脂を含有する、請求項9記載の導体張積層板。
【請求項11】
前記絶縁性樹脂は、ポリブタジエン、ポリトリアリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート、不飽和基含有ポリフェニレンエーテル及びマレイミド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する、請求項9又は10記載の導体張積層板。
【請求項12】
前記絶縁性樹脂は、ポリフェニレンエーテル及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含有する、請求項9〜11のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項13】
前記絶縁層は、1GHzで4.0以下の比誘電率を有している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項14】
導体箔上に前記接着層の硬化前の層を備える接着層付き導体箔における前記硬化前の層上に、前記絶縁性樹脂と該絶縁性樹脂中に配された基材とを含む膜を積層して積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧して得られる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の導体張積層板。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の導体張積層板における前記導体箔を、所定の回路パターンを有するように加工して得られる、印刷配線板。
【請求項16】
少なくとも一層の印刷配線板を有するコア基板と、該コア基板の少なくとも片面上に配置され、少なくとも一層の印刷配線板を有する外層配線板と、を備える多層配線板であって、
前記コア基板における印刷配線板のうちの少なくとも一層は、請求項15記載の印刷配線板である、多層配線板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−140010(P2012−140010A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−23352(P2012−23352)
【出願日】平成24年2月6日(2012.2.6)
【分割の表示】特願2007−88894(P2007−88894)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】