説明

導電シート及びその製造方法

【課題】主に各種電子機器の操作用のタッチパネル等に用いられる導電シート、及びその製造方法に関し、視認性に優れ、製作が容易で安価なものを提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム状の基材11上面の、合成樹脂12A内に銀12Bを分散した導電層12の所定箇所に、水に合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムまたは塩化第二鉄、塩化第二銅を分散した溶液を塗布し、加熱乾燥して塩化銀12Cが分散された絶縁部13を設け、略帯状の導電パターン14を形成することによって、印刷等の簡易な方法で導電パターン14を形成することができるため、製作が容易で安価なものを得ることができると共に、導電パターン14と絶縁部13の屈折率が同じで、目視では見分けがつかないため、タッチパネルを形成し、これを機器の液晶表示素子等の前面に装着した際、背面の表示素子の良好な視認性を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作用のタッチパネル等に用いられる導電シート、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やカーナビ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、液晶等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の液晶表示素子等に表示された文字や記号、絵柄等の視認や選択を行い、指や専用ペン等でタッチパネルに触れ操作することによって、機器の様々な機能の切換えを行うものが増えており、視認性に優れ安価なものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルに用いられる導電シートについて、図5及び図6を用いて説明する。
【0004】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表している。
【0005】
図5は従来の導電シートの断面図であり、同図において、1はポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート等のフィルム状で光透過性の基材、2は酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の導電パターンで、基材1の上面に複数の導電パターン2が帯状に形成されて、導電シート3が構成されている。
【0006】
また、このような導電シート3は、図6(a)の断面図に示すように、スパッタ法等によって基材1の上面全面に形成された導電層4の所定箇所を、合成樹脂5によって覆ってマスキングし、図6(b)に示すように、酸化鉄等の溶液でエッチングして不要な箇所の導電層4を除去した後、合成樹脂5を剥離し洗浄して、帯状の複数の導電パターン2が形成された導電シート3が製作される。
【0007】
そして、以上のような導電シート3が上下に2枚重ね合わされて、例えば静電式のタッチパネル(図示せず)が形成されると共に、これが電子機器の液晶表示素子等の前面に装着され、複数の導電パターン2が機器の電子回路に接続されて、機器の様々な機能の切換え作用に用いられる。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−236988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の導電シートにおいては、基材1の上面全面に形成された導電層4をマスキングした後エッチングし、不要な箇所の導電層4を除去して帯状の複数の導電パターン2を形成しているため、製作に時間を要し、高価なものになるという課題があった。
【0010】
また、導電層4を除去した箇所と導電パターン2が形成された箇所では、光の屈折率が異なるため、タッチパネルを形成し、これを機器の液晶表示素子等の前面に装着した際、導電パターン2が見えてしまい、背面の表示素子の表示が見づらくなってしまうという課題もあった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、視認性に優れ、製作も容易で安価な導電シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0013】
本発明の請求項1に記載の発明は、フィルム状の基材上面の合成樹脂内に銀を分散した導電層の所定箇所に、塩化銀が分散された絶縁部を設け、略帯状の導電パターンを形成した導電シートを構成したものであり、印刷等の簡易な方法で絶縁部を形成して、導電パターンを形成することができるため、容易に製作が可能で、安価な導電シートを得ることができると共に、導電パターンと絶縁部の屈折率が同じで、目視では見分けがつかないため、タッチパネルを形成し、これを機器の液晶表示素子等の前面に装着した際、背面の表示素子の良好な視認性を得ることができるという作用を有する。
【0014】
請求項2に記載の発明は、導電層上面の所定箇所に、水に合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムまたは塩化第二鉄、塩化第二銅を分散した溶液を塗布し、絶縁部を形成して請求項1記載の導電シートを製作するものであり、印刷等によって容易に導電パターンを形成できるため、製作が容易で安価な導電シートを実現することができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明によれば、製作が容易で安価な導電シート、及びその製造方法を実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図4を用いて説明する。
【0017】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表わしている。
【0018】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による導電シートの断面図、図2は同斜視図であり、同図において、11はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、ポリイミド等のフィルム状で光透過性の基材で、この上面全面には合成樹脂12A内に針状の銀12Bが分散された導電層12が形成されている。
【0019】
そして、この導電層12の所定箇所には、銀12Bが絶縁性の塩化銀12Cとなった絶縁部13が設けられ、基材11の上面に複数の導電パターン14が略帯状に形成されて、導電シート15が構成されている。
【0020】
また、このような導電シート15は、基材11の上面全面に形成された導電層12の所定箇所に、水に溶剤であるN−メチルピロリドン、水溶性で光透過性の合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムまたは塩化第二鉄、塩化第二銅、必要に応じ消泡剤やレベリング剤等を分散した溶液を、スクリーン印刷やインクジェット印刷等で塗布し、70℃以上で加熱乾燥して、絶縁部13が形成される。
【0021】
つまり、図3(a)の断面図に示すように、導電層12上面外周や所定箇所に、例えば、水58重量%前後にポリビニルアルコール8重量%前後を混合し、80℃で加温して撹拌溶解した後、これにN−メチルピロリドン28重量%、ペンチルアルコール6重量%、塩化アンモニウム0.5重量%前後を添加分散した溶液をスクリーン印刷して、コーティング層16を形成する。
【0022】
そして、この後、これを120℃で5分間加熱乾燥することによって、図3(b)に示すように、コーティング層16下方の導電層12内の銀12Bが、絶縁性の塩化銀12Cとなって絶縁部13が形成され、基材11の上面に複数の導電パターン14が略帯状に形成された導電シート15が製作される。
【0023】
すなわち、基材11も絶縁部13も導電パターン14もいずれも光透過性で、屈折率が同じであるため、目視では見分けがつかないが、電気的には基材11上面に絶縁部13によって絶縁された、略帯状の複数の導電パターン14が形成された構成となっている。
【0024】
なお、絶縁部13上面のコーティング層16は光透過性で殆んど目立たないため、そのままにしておいてもよいが、温水で洗浄して除去するか、或いはこの上面に、水にポリビニルアルコール12重量%前後、ペンチルアルコール2重量%前後を分散した溶液をスクリーン印刷し乾燥して、合成樹脂製の保護層を形成すれば、より光の反射等が少なく透光性に優れたものとすることができる。
【0025】
さらに、上記のようなポリビニルアルコール等の合成樹脂に代えて、水60重量%前後に糊であるデンプン20重量%前後を分散し、これにN−メチルピロリドン20重量%、塩化アンモニウム0.5重量%前後を添加した溶液を用い、これをスクリーン印刷してコーティング層16を形成すれば、加熱乾燥によって絶縁部13や導電パターン14を形成した後、温水洗浄等によってコーティング層16を比較的簡単に除去することができる。
【0026】
つまり、基材11上面の合成樹脂12A内に銀12Bを分散した導電層12の所定箇所に、水に合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムを分散した溶液を塗布し、加熱乾燥して塩化銀12Cが分散された絶縁部13を設けることによって、スクリーン印刷等の簡易な方法で、略帯状の複数の導電パターン14が形成された導電シート15を得ることができるようになっている。
【0027】
なお、以上の説明では、水に合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムを分散した溶液によって、絶縁部13を形成する方法について説明したが、塩化アンモニウムに代えて、塩化第二鉄または塩化第二銅を用いても、同様の絶縁部13を形成することが可能である。
【0028】
また、図4は以上のような導電シート15を用いたタッチパネルの断面図であり、同図において、複数の導電パターン14が所定間隔で配列された導電シート15の上面に、複数の導電パターン18が所定間隔で、導電パターン14とは直交方向に配列された導電シート19が重ね合わされると共に、導電シート19上面にはフィルム状で光透過性の保護シート20が貼付されて、例えば静電式のタッチパネルが構成されている。
【0029】
そして、このようなタッチパネルが液晶表示素子(図示せず)等の前面に載置されて電子機器に装着されると共に、複数の導電パターン14や18が機器の電子回路(図示せず)に接続されて、機器の様々な機能の切換えに使用される。
【0030】
つまり、電子回路から複数の導電パターン14や18に順次電圧が印加された状態で、保護シート20上面のある箇所に指を触れて操作すると、この指に蓄積された電荷の一部が導電し、この箇所の導電パターン14と18の容量が変化することによって、電子回路が操作箇所を検出し、この操作位置に応じて機器の様々な機能の切換えが行なわれるようになっている。
【0031】
また、このタッチパネルを通して背面の液晶表示素子等に表示された文字や記号、絵柄等の視認や選択を行う際、導電シート15や19の複数の導電パターン14や18と絶縁部13等は屈折率が同じで、目視では見分けがつかないため、背面の液晶表示素子等の表示が見易く、良好な視認性でタッチパネルの操作を行うことが可能なように構成されている。
【0032】
このように本実施の形態によれば、フィルム状の基材11上面の、合成樹脂12A内に銀12Bを分散した導電層12の所定箇所に、水に合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムまたは塩化第二鉄、塩化第二銅を分散した溶液を塗布し、加熱乾燥して塩化銀12Cが分散された絶縁部13を設け、略帯状の導電パターン14を形成することによって、印刷等の簡易な方法で導電パターン14を形成することができるため、製作が容易で安価な導電シート15、及びその製造方法を得ることができると共に、導電パターン14と絶縁部13の屈折率が同じで、目視では見分けがつかないため、タッチパネルを形成し、これを機器の液晶表示素子等の前面に装着した際、背面の表示素子の良好な視認性を得ることができるものである。
【0033】
なお、以上の説明では、所定幅の複数の導電パターン14を所定間隔で配列した構成について説明したが、矩形が連結された形状の導電パターンや、数本が接続されたり折曲されたりした形状の導電パターン等、様々な形状の導電パターンにおいても本発明の実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明による導電シート及びその製造方法は、視認性に優れ、製作が容易で安価なものを実現することができるという有利な効果を有し、各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルや配線基板用部品として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態による導電シートの断面図
【図2】同斜視図
【図3】同断面図
【図4】同タッチパネルの断面図
【図5】従来の導電シートの断面図
【図6】同断面図
【符号の説明】
【0036】
11 基材
12 導電層
12A 合成樹脂
12B 銀
12C 塩化銀
13 絶縁部
14、18 導電パターン
15、19 導電シート
16 コーティング層
20 保護シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の基材と、この上面の合成樹脂内に銀を分散した導電層からなり、上記導電層の所定箇所に塩化銀が分散された絶縁部を設け、略帯状の導電パターンを形成した導電シート。
【請求項2】
導電層上面の所定箇所に、水に合成樹脂または糊と、塩化アンモニウムまたは塩化第二鉄、塩化第二銅を分散した溶液を塗布して、絶縁部を形成する請求項1記載の導電シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−290354(P2008−290354A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138589(P2007−138589)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】