説明

導電パターン形成基板およびその製造方法、入力装置

【課題】複数のパターンユニットに分けてレーザ光を照射して絶縁パターンが形成されているにもかかわらず、目的の絶縁が確保されている導電パターン形成基板を提供する。
【解決手段】本発明の導電パターン形成基板は、透明絶縁基板と、該透明導電板の片面に設けられた透明導電膜とを備え、前記透明導電膜には、絶縁ラインにより構成された絶縁パターンが、所定の導電パターンが設けられるように形成されている導電パターン形成基板であって、前記絶縁パターンは、複数のパターンユニットによって構成され、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ライン同士が、絶縁性を有する絶縁ライン中継部を介して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル等に使用される導電パターン形成基板およびその製造方法に関する。また、導電パターン形成基板を用いた入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルにおいては、液晶ディスプレイ等の画像表示装置の前面に、指等の接触位置を検出する透明な電極シートが備えられている。電極シートとしては、透明絶縁基板および透明導電膜を有し、該透明導電膜に導電パターンが形成された導電パターン形成基板が用いられている。通常、導電パターンは、透明導電膜に絶縁パターンを形成することによって設けられている。
絶縁パターンの形成方法としては、例えば、特許文献1に、ITO透明導電膜にパルス状レーザを照射する方法が開示されている。また、特許文献1には、パルス状レーザ光の照射を、透明導電膜の表面に形成された銀ペーストからなる配線パターンの周囲に絶縁用のスリットを形成する場合にも適用できることが記載されている。
特許文献2,3には、バインダ樹脂中に導電性繊維を含む透明導電膜にレーザ光を照射して絶縁部とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−010987号公報
【特許文献2】特開2010−140859号公報
【特許文献3】特開2010−044968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、レーザ光の照射によって透明導電膜に絶縁パターンを形成する方法では、一回でパターン形成できる面積が大きくないため、大面積の領域に絶縁パターンを形成する場合には、複数のパターンユニットに分割し、各パターンユニット毎にレーザ光を照射して絶縁パターンを形成する必要がある。このように複数のパターンユニットに分けて絶縁パターンを形成する場合には、目的の絶縁パターンを得るために、各パターンユニットの絶縁ラインの端部同士が接続するように絶縁パターンを形成する必要がある。しかし、タッチパネル等に使用される導電パターンを得るための絶縁パターンのライン太さは20〜100μmと細いため、複数のパターンユニットに分けてレーザ光を照射して絶縁パターンを形成する方法では、各パターンユニットの絶縁ラインの端部同士を正確に接続することが困難であった。そのため、目的とする絶縁を確保できないことがあり、得られた導電パターン形成基板をタッチパネル等の入力装置に用いた際には、正確に作動しないことがあった。
そこで、本発明は、複数のパターンユニットに分けてレーザ光を照射して絶縁パターンが形成されているにもかかわらず、目的の絶縁が確保されている導電パターン形成基板およびその製造方法を提供することを目的とする。また、導電パターン形成基板を用いた入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下の態様を有する。
[1]透明絶縁基板と、該透明導電板の片面に設けられた透明導電膜とを備え、前記透明導電膜には、絶縁ラインにより構成された絶縁パターンが、所定の導電パターンが設けられるように形成されている導電パターン形成基板であって、前記絶縁パターンは、複数のパターンユニットによって構成され、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ライン同士が、絶縁性を有する絶縁ライン中継部を介して接続されていることを特徴とする導電パターン形成基板。
[2]前記透明導電膜が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された金属ナノワイヤとを含む層であり、前記絶縁ラインは、金属ナノワイヤの少なくとも一部が除去されて空隙が形成されていることを特徴とする[1]に記載の導電パターン形成基板。
[3]前記絶縁ライン中継部は、該絶縁ライン中継部によって接続される両方の絶縁ラインよりも幅広の形状にされていることを特徴とする[1]または[2]に記載の導電パターン形成基板。
[4]前記絶縁ライン中継部は、該絶縁ライン中継部によって接続される両方の絶縁ラインが交差しているものであることを特徴とする[3]に記載の導電パターン形成基板。
[5]前記絶縁ライン中継部は、該絶縁ライン中継部によって接続される少なくとも一方の絶縁ラインの端部が重なっているものであることを特徴とする[3]に記載の導電パターン形成基板。
[6]前記絶縁ラインおよび前記絶縁ライン中継部は、透明導電膜へのレーザ光照射によって形成されていることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板。
[7][1]〜[6]のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板と、該導電パターン形成基板の導電パターンに電気的に接続された検出手段とを備えることを特徴とする入力装置。
[8]透明絶縁基板の片面に設けられた透明導電膜にレーザ光を照射して、絶縁ラインにより構成された絶縁パターンを、所定の導電パターンが設けられるように形成する導電パターン形成基板の製造方法であって、前記絶縁パターンの形成では、複数のパターンユニットを、互いに隣接するパターンユニットの一部が重なるように形成すると共に、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ラインの端部同士を接続する絶縁性の絶縁ライン中継部を設けることを特徴とする導電パターン形成基板の製造方法。
[9]前記透明導電膜が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された金属ナノワイヤとを含む層であり、前記絶縁ラインは、金属ナノワイヤの少なくとも一部が除去されて空隙が形成されていることを特徴とする[8]に記載の導電パターン形成基板の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の導電パターン形成基板は、複数のパターンユニットに分けてレーザ光を照射して絶縁パターンが形成されているにもかかわらず、目的の絶縁が確保されている。
本発明の導電パターン形成基板の製造方法によれば、複数のパターンユニットに分けてレーザ光を照射して絶縁パターンを形成するにもかかわらず、目的の絶縁を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の導電パターン形成基板の一実施形態を示す上面図である。
【図2】図1のI−I’断面図である。
【図3】図1に示す導電パターン形成基板における絶縁ライン中継部の一例を示す上面図である。
【図4】図1に示す導電パターン形成基板における絶縁ライン中継部の一例を示す上面図である。
【図5】図1に示す導電パターン形成基板における絶縁ライン中継部の一例を示す上面図である。
【図6】絶縁ラインの走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の導電パターン形成基板の製造方法の一実施形態で使用する製造装置の模式図である。
【図8】レーザ光照射装置の一例を示す側面図である。
【図9】本発明の導電パターン形成基板の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図10】本発明の導電パターン形成基板の製造方法の他の実施形態を説明する図である。
【図11】透明導電膜の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<導電パターン形成基板>
本発明の導電パターン形成基板の一実施形態について説明する。
本実施形態の導電パターン形成基板は、図1,2に示すように、透明絶縁基板11と、透明絶縁基板11の片面に設けられた透明導電膜12を備える。また、透明導電膜12には、絶縁ラインBにより構成された絶縁パターン13が、所定の導電パターンが設けられるように形成されている。本実施形態における導電パターンは、複数列の導電部12a,12a・・・を有するパターンである。
なお、本発明において、「透明」とは、50%以上の光線透過率を有するものを指す。透明絶縁基板11と透明導電膜12とからなる導電パターン形成基板10は透明である。
【0009】
本実施形態の導電パターン形成基板10は、例えば、透明アンテナ、透明電磁波シールド、静電容量方式或いはメンブレン式の透明タッチパネルなどの透明入力装置のように、透明部分に配線パターンを形成する製品に適用することができる。また、この導電パターン形成基板10は、自動車のハンドル等に付随する静電容量入力装置など、3次元成型品、或いは3次元の加飾成型品の表面に設けられる静電容量センサ等に必要な電極を形成する目的で用いることができる。
【0010】
透明絶縁基板11としては、透明で絶縁性を有するとともに、後述するレーザ光の照射に対して外観変化の生じにくいものを用いることが好ましい。具体的には、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)を代表とするポリエステル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)などの絶縁性材料が挙げられる。なお、本発明において、「絶縁性」とは、電気抵抗値が1MΩ、好ましくは10MΩ以上のことである。
透明絶縁基板11の形状としては、板状のもの、可撓性を有するフィルム状のもの、立体的(3次元)に成形された成形品等を用いることができる。
【0011】
透明導電膜12は、透明絶縁材料と、該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含んでいる。
透明絶縁材料としては、透明な熱可塑性樹脂(ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン)、熱や活性エネルギ線(紫外線、電子線)で硬化した透明な硬化性樹脂(メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂)の硬化物が挙げられる。
透明絶縁材料は、透明絶縁基板11と互いに同一材料又は同一系統の樹脂材料からなることが好ましい。例えば、透明絶縁基板11がポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、透明絶縁材料にはポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0012】
各導電性繊維は、透明絶縁基板11の面方向に沿って2次元状に互いに異なる向きに不規則に配置されているとともに、その少なくとも一部以上が互いに重なり合う(接触し合う)程度に密集して、互いに電気的に接続されている。これにより、導電ネットワークを構成している。
【0013】
導電性繊維としては、銅、白金、金、銀、ニッケル等からなる金属ナノワイヤや金属ナノチューブが挙げられる。導電性繊維は、例えばその直径が0.3〜100nm、長さが1〜100μmに形成されている。
また、導電性繊維として、シリコンナノワイヤやシリコンナノチューブ、金属酸化物ナノチューブ、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリル等を用いることもできる。
上記導電性繊維の中でも、透明導電膜12を容易に形成できると共に、後述するレーザ光の照射によって容易に絶縁部を形成できる点で、金属ナノワイヤが好ましく、銀を主成分とする金属ナノワイヤ(銀ナノワイヤ)がより好ましい。
【0014】
本実施形態における絶縁パターン13は、4つのパターンユニット(第1のパターンユニット13a、第2のパターンユニット13b、第3のパターンユニット13c、第4のパターンユニット13d)によって構成されている。ただし、互いに隣接するパターンユニットは一部が重なっている。
【0015】
また、絶縁パターン13においては、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ラインB同士が、絶縁性を有する絶縁ライン中継部15を介して接続されている。絶縁ライン中継部15は、互いに隣接するパターンユニットの一方に絶縁ラインBと共に形成されている。
絶縁ライン中継部15は、絶縁ラインBの接続の確実性が高くなることから、絶縁ライン中継部15によって接続される両方の絶縁ラインBよりも幅広の形状にされていることが好ましい。ここで、絶縁ラインBよりも幅広の形状とは、絶縁ラインBに直交する方向の最大長さが両方の絶縁ラインBの太さよりも長いことを意味する。
絶縁ラインBに直交する方向の最大長さが両方の絶縁ラインBの太さよりも長い絶縁ライン中継部15の具体例として、図3に示すような、両方のパターンユニットの絶縁ラインB,Bが共に垂直に交わる直線状の絶縁ライン中継部15aが挙げられる。また、図4に示すような、両方のパターンユニットの絶縁ラインB,Bの太さよりも直径が大きい円形体であって、一方のパターンユニットの絶縁ラインBに連続して設けられ、他方のパターンユニットの絶縁ラインBが重ねられた絶縁ライン中継部15bが挙げられる。また、図5に示すような、両方のパターンユニットの絶縁ラインB,Bの太さよりも直径が大きい環状体であって、一方のパターンユニットの絶縁ラインBに連続して設けられ、他方のパターンユニットの絶縁ラインBが重ねられた絶縁ライン中継部15cが挙げられる。
【0016】
本実施形態において、絶縁ラインBおよび絶縁ライン中継部15は、導電性繊維が除去されて透明絶縁材料からなる部分である。図6に示すように、透明絶縁材料12b内の、導電性繊維が存在していた部分は空隙12cになっているため、導電性繊維による導電ネットワークが断絶しており、電気的に絶縁状態になっている。また、絶縁ラインBおよび絶縁ライン中継部15は、導電性繊維を含む導電部と外観(色、透明性)がほぼ同一であるため、視認不能である。
【0017】
<導電パターン形成基板の製造方法>
本実施形態の導電パターン形成基板の製造方法は、透明絶縁基板の片面に設けられた透明導電膜にレーザ光を照射して導電パターンを得る方法である。
また、本実施形態の製造方法は、図7に示すように、ロールから繰り出した導電性基板Aにレーザ光Lを照射して導電パターンを形成し、得られた導電パターン形成基板10を巻き取る方法である。すなわち、ロール・トゥ・ロールの方式により導電パターン形成基板10を製造する方法である。
【0018】
本実施形態の製造方法では、2次元ネットワーク状に分散された導電性繊維を含む透明導電膜にレーザ光を照射することで、導電性繊維を蒸発、除去して空隙を形成することができる。これにより、レーザ光照射部分では導電ネットワークを断絶できるため、絶縁性を得ることができる。しかも、導電性繊維が2次元ネットワークであり、深さ方向のネットワークを有していないため、絶縁化の際に、断絶させる導電ネットワークが少なく、効率的に絶縁パターンを形成できる。
【0019】
なお、以下の説明において、レーザ光照射前の、透明絶縁基板と該透明絶縁基板の片面に設けられた透明導電膜とを有する積層体のことを、導電性基板という。ここで、透明導電膜は、透明絶縁材料と、透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された導電性繊維とを含む層である。透明絶縁材料および導電性繊維は上述したものが使用される。
【0020】
本製造方法では、図7に示す製造装置100が使用される。製造装置100は、ロール状の導電性基板Aを繰り出す繰出装置30と、繰り出された導電性基板Aにレーザ光Lを照射するレーザ光照射装置40と、レーザ光Lの照射によって得られた導電パターン形成基板10を巻き取る巻取装置50とを備える。
本実施形態で使用する製造装置100では、レーザ光照射装置40を2個備え、これらは、導電性基板の幅方向(図7の奥行き方向)に並列に配置されている。2つのレーザ光照射装置40を用いることで、2つのパターンユニットを同時に形成できるようになっている。
【0021】
レーザ光照射装置40は、図8に示すように、レーザ光Lを発生させるレーザ光発生手段41と、レーザ光Lを集光する集光手段である凸レンズ等の集光レンズ42と、透明絶縁基板11および透明導電膜aからなる導電性基板Aが載置されるステージ43とを備えている。ステージ43は、その上に配置された導電性基板Aを真空吸着して固定できるようになっている。
このレーザ光照射装置40では、レーザ光発生手段41から集光レンズ42を介して透明導電膜aにレーザ光Lを照射する。
レーザ光Lの照射による導電パターンの形成では、露光、現像、エッチング等が不要であるため、簡便である。
【0022】
レーザ光発生手段41が発生するレーザ光Lは、YAGやYVO等のパルス状レーザ光、炭酸ガスレーザ等の連続発振レーザ光が挙げられる。中でも、簡便であることから、YAGやYVO等の波長1064nmもしくはその2次高調波を使用した532nmのパルス状レーザ光が好ましい。パルス状レーザ光においては、パルス幅が300n秒以下が好ましく、70n秒以下がより好ましい。
【0023】
集光レンズ42の焦点Fは、通常、透明導電層aの表面毎に設定されるが、導電性基板Aに凹凸などが形成されている場合や広い面積にレーザ光を照射する場合には、透明導電層aから離れた位置に設定されていることが好ましい。詳しくは、集光レンズ42は、透明導電層aと集光レンズ42との間にレーザ光Lの焦点Fが位置するように配置される。すなわち、集光レンズ42(レーザ光L)の焦点Fを、透明導電層aと集光レンズ42との間に形成している。これにより、透明絶縁基板11に当たるレーザ光Lのスポット径は、透明導電層aに当たるレーザ光Lのスポット径より大きくなる。これにより、透明導電層aにおいてはレーザ光Lのエネルギ密度を確保して絶縁ラインBを確実に形成しつつ、透明絶縁基板11においてはレーザ光Lのエネルギ密度を低減させ、さらに焦点Fと透明導電層aの距離が変化しても集光スポットSのエネルギ密度の変動を抑制することで、透明絶縁基板11の損傷を防止できる。
【0024】
集光レンズ42としては、低い開口数(NA<0.1)のものが好ましい。すなわち、集光レンズ42の開口数がNA<0.1とされることにより、レーザ光Lの照射条件設定が容易となり、特にレーザ光Lの焦点Fが透明導電膜aと集光レンズ42との間に位置することによる、該焦点Fにおける空気のプラズマ化に伴うエネルギ損失とレーザ光Lの拡散を防止することができる。
【0025】
絶縁パターンの形成では、まず、繰出装置30と巻取装置50を用いることによって導電性基板Aを移動させ、絶縁パターンを形成していない導電性基板Aをステージ43の上面に供給する。その際、透明導電膜を透明絶縁基板より上に位置させる。また、ステージ43によって、導電性基板Aを真空吸着して固定する。
次いで、各レーザ光照射装置40の各レーザ光発生手段41よりレーザ光Lを出射させ、レーザ光Lを集光レンズ42により集光すると共に、ガルバノミラーを用いることによって走査しながら、透明導電膜に照射する。
レーザ光の照射によって、レーザ光照射前には透明導電膜に含まれていた導電性繊維が除去され、導電性繊維の存在した部分が空隙となる。そのため、レーザ光を走査しながら照射した部分を絶縁ラインとすることができる。
【0026】
透明導電膜aに照射するレーザ光Lは、例えば、パルス幅が1〜100n秒のレーザ(YAGレーザ又はYVOレーザ)では、エネルギ密度1×1011〜7×1013W/m、単位面積あたりの照射エネルギは1×10〜1×10J/mが好ましく、1×10〜3×10J/mがより好ましい。
すなわち、エネルギ密度・照射エネルギが上記数値範囲よりも小さな値に設定された場合、絶縁ラインの絶縁が不十分になるおそれがある。また、上記数値範囲よりも大きな値に設定された場合、加工痕が目立つようになり、タッチパネルや電磁波シールドなどの用途では不適当となる。
【0027】
また、これらの値は、加工エリアにおけるレーザ光の出力値を、加工エリアの集光スポット面積で除することにより定義されており、簡便には、出力はレーザ発振機からの出力値に光学系の損失係数を掛けることで求められる。
また、スポット径面積Sは、下記式により定義される。
S=S×D/FL
:レンズで集光されるレーザのビーム面積
FL:レンズの焦点距離
D:透明導電膜aの表面(上面)と焦点との距離
【0028】
なお、前述した焦点Fは、レンズ等の集光手段42で、収差が十分に小さい場合を例に説明したが、例えば、焦点距離の短い球面レンズや、保護ガラスなどの収差が大きくなる要素が存在する場合には、前記焦点Fは、集光点のエネルギ密度が最も高くなる位置と定義される。
【0029】
ここで、距離Dは、通常のレーザ加工機では、焦点距離FLの0.2〜3%の範囲内に設定される。好ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.5〜2%の範囲内に設定される。さらに望ましくは、距離Dは、焦点距離FLの0.7〜1.5%の範囲内に設定される。距離Dが上記数値範囲に設定されることにより、絶縁ラインにおける導電性繊維の除去(空隙の形成)が確実に行えるとともに電気的に高い信頼性を有する絶縁パターンを形成でき、かつ、透明絶縁基板11の損傷に起因する加工痕を確実に防止できる。
【0030】
本製造方法における絶縁パターンの形成では、2つのレーザ光照射装置40を用いて、同時にレーザ光を照射して2つのパターンユニットを同時に形成する。具体的には、一方のレーザ光照射装置40によって第1のパターンユニット13aを形成すると同時に、他方のレーザ光照射装置40によって第2のパターンユニット13bを形成する。また、レーザ光の照射によって、第1のパターンユニット13aの絶縁ラインBの端部と第2のパターンユニット13bの絶縁ラインBの端部同士を接続する絶縁ライン中継部15を、第1のパターンユニット13aの第2のパターンユニット13bに重なる部分に形成する。
【0031】
次いで、再び、繰出装置30と巻取装置50を用いることによって導電性基板Aを移動させる。その際の移動量は、第1のパターンユニット13aおよび第2のパターンユニット13bの下流側の部分がステージ43上に残る移動量とする。移動量は、ステージ43上に取り付けたカメラ60によって、導電性基板Aに形成された第1のパターンユニット13aおよび第2のパターンユニット13bを観察し、予め設定された所定の部分(例えば、位置決めマーク等)が目標の位置に到達したときに移動を停止することにより、決定することができる。
【0032】
次いで、一方のレーザ光照射装置40によって第3のパターンユニット13cを形成すると同時に、他方のレーザ光照射装置40によって第4のパターンユニット13dを形成する。また、レーザ光の照射によって、第3のパターンユニット13cの絶縁ラインBの端部と第4のパターンユニット13dの絶縁ラインBの端部同士を接続する絶縁ライン中継部15を、第3のパターンユニット13cの第4のパターンユニット13dに重なる部分に形成する。また、第1のパターンユニット13aの絶縁ラインBの端部と第3のパターンユニット13cの絶縁ラインBの端部同士を接続する絶縁ライン中継部15を、第3のパターンユニット13cの第1のパターンユニット13aに重なる部分に形成する。また、第2のパターンユニット13bの絶縁ラインBの端部と第4のパターンユニット13dの絶縁ラインBの端部同士を接続する絶縁ライン中継部15を、第4のパターンユニット13dの第2のパターンユニット13bに重なる部分に形成する。
このように、4つのパターンユニットを形成すると共に各パターンユニットの絶縁ラインを接続することによって、絶縁パターンを得ることができる。
本実施形態の製造方法では、導電性基板Aの移動と絶縁パターンの形成を繰り返して、ロール状の導電性基板Aに連続的に絶縁パターンを形成する。
【0033】
以上説明した実施形態では、複数のパターンユニットに分けてレーザ光を照射した際に、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ライン同士を、これらの端部が正確に重なるように形成しなくても、絶縁ライン中継部を介して接続できるため、目的の絶縁を確実に確保できる。
【0034】
<入力装置>
本発明の入力装置は、本発明の導電パターン形成基板と、該導電パターン形成基板に電気的に接続された検出手段とを備える。検出手段としては、例えば、インターフェース回路を備えるものが挙げられる。
入力装置において、導電パターン形成基板は、タッチパネル等の入力装置の電極シートとして使用することができる。
例えば、2枚の上記導電パターン形成基板を所定形状に切り出したものを電極シートとし、これらを、スペーサを介して導電パターンが互いに対向するように積層することで、抵抗膜式タッチパネルの入力部材とすることができる。
また、2枚の上記導電パターン形成基板を所定形状に切り出したものを電極シートとし、これらを導電パターン同士が接触しないように積層することで、静電容量式タッチパネルの入力部材とすることができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。
例えば、上記実施形態の導電パターン形成基板の製造方法では、2個のレーザ光照射装置を導電性基板の幅方向に並列に配置し、2つのパターンユニットを同時に形成したが、導電性基板の幅方向と平行に移動可能な1個のレーザ光照射装置を用い、1つのパターンユニット毎に形成してもよい。
また、本発明では、導電パターン形成基板の製造方法において、上記実施形態のようなロール・トゥ・ロールの方法を適用しなくてもよい。すなわち、図9,10に示すように、枚葉状の導電性基板Aをステージ43上に固定し、レーザ光Lを照射して絶縁パターンを形成する方法であってもよい。この場合、図9に示すように、複数個(図示例は2個)のレーザ光照射装置40,40を用いて複数のパターンユニットを同時に形成してもよいし、図10に示すように、1個のレーザ光照射装置40を用いて複数のパターンユニットを順次形成してもよい。レーザ光照射装置が1個である場合には、レーザ光照射装置40を水平方向に移動可能にすることで、複数のパターンユニットを順次形成できる。
また、ガルバノミラーを用いてレーザ光を走査しなくてもよく、例えば、ステージをXY方向に移動させることによって、レーザ光を走査してもよい。
また、導電パターン形成基板の透明導電膜は、透明絶縁材料に導電性繊維を含むものでなくても、導電性高分子の膜であってもよいし、ワイヤグリッドを含むものであってもよい。
【実施例】
【0036】
[製造例1]
厚さ75μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS10 #75、東レ株式会社製)に、Cambrios社のOhm(商品名)インク(線径50nm程度、長さ15μm程度の銀繊維を含む混合液)を塗布し、乾燥した後、紫外線硬化性のポリエステル樹脂インクを上塗りして、乾燥・紫外線処理を施した。これにより、PETフィルム上に銀繊維からなる導電性の2次元ネットワークを有する透明導電膜aを形成して、導電性基板を得た。
上記透明導電膜aの表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、透明絶縁材料12b内に、銀繊維12dからなる導電性の2次元ネットワークを有していることを確認した(図11参照)。
【0037】
[実施例1]
レーザ光照射装置として、ガルバノミラーを備えたYVO基本波のレーザ加工機(キーエンス社製、MD−V9920)を使用した。
製造例1の導電性基板Aを厚さ5mmのポリアセタール製ステージの上に載置し、下記照射条件でレーザ光を照射した。
焦点から導電性基板Aまでの距離:0mm
出力:30%
移動速度:600mm/秒
発振周波数:100kHz
また、レーザ光は、図1に示すような、4つのパターンユニット13a,13b,13c,13dを有し、各パターンユニットの絶縁ラインB,B同士が絶縁ライン中継部を介して接続する絶縁パターン13を形成するように照射した。
上記のレーザ光の照射により、絶縁パターン13の絶縁ラインBが導電部12aと同じ色合いおよび透明度で視認不能になっている導電パターン形成基板10を得た。
この導電パターン形成基板10においては、隣接する導電部12a,12a同士の電気抵抗は10MΩ以上であり、絶縁状態になっていた。なお、絶縁ラインを走査型電子顕微鏡により観察したところ、透明絶縁材料内に含まれていた銀繊維の一部が蒸発し、銀繊維が存在していた部分が空隙になって、銀繊維の2次元ネットワークが消失していた。
上記の導電パターン形成基板10は2枚作製した。
【0038】
次いで、得られた導電パターン形成基板の一方に対し、スクリーン印刷とインキの乾燥により、室温硬化型エポキシ樹脂からなる直径60μmのドットスペーサを設けた。
上記のようにして得た導電パターン形成基板を切り出して、導電パターン形成基板を得た。次いで、ドットスペーサを設けた導電パターン形成基板と、ドットスペーサを設けなかった導電パターン形成基板とを、導電パターンが互いに対向するように配置し、その状態で両面粘着テープにより固定して、タッチパネルを得た。得られたタッチパネルは操作通りに作動した。
【0039】
[比較例1]
絶縁ライン中継部を設けなかったこと以外は実施例1と同様にして導電パターン形成基板を得た。その導電パターン形成基板を用いて、実施例1と同様にタッチパネルを作製し、そのタッチパネルを操作したところ、操作通りに作動しなかった。
【符号の説明】
【0040】
10 導電パターン形成基板
11 透明絶縁基板
12 透明導電膜
12a 導電部
12b 透明絶縁材料
12c 空隙
13 絶縁パターン
13a 第1のパターンユニット
13b 第2のパターンユニット
13c 第3のパターンユニット
13d 第4のパターンユニット
15,15a,15b,15c 絶縁ライン中継部
30 繰出装置
40 レーザ光照射装置
41 レーザ光発生手段
43 ステージ
50 巻取装置
100 製造装置
a 透明導電膜
A 導電性基板
B,B,B 絶縁ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明絶縁基板と、該透明導電板の片面に設けられた透明導電膜とを備え、前記透明導電膜には、絶縁ラインにより構成された絶縁パターンが、所定の導電パターンが設けられるように形成されている導電パターン形成基板であって、
前記絶縁パターンは、複数のパターンユニットによって構成され、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ライン同士が、絶縁性を有する絶縁ライン中継部を介して接続されていることを特徴とする導電パターン形成基板。
【請求項2】
前記透明導電膜が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された金属ナノワイヤとを含む層であり、前記絶縁ラインは、金属ナノワイヤの少なくとも一部が除去されて空隙が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導電パターン形成基板。
【請求項3】
前記絶縁ライン中継部は、該絶縁ライン中継部によって接続される両方の絶縁ラインよりも幅広の形状にされていることを特徴とする請求項1または2に記載の導電パターン形成基板。
【請求項4】
前記絶縁ライン中継部は、該絶縁ライン中継部によって接続される両方の絶縁ラインが交差しているものであることを特徴とする請求項3に記載の導電パターン形成基板。
【請求項5】
前記絶縁ライン中継部は、該絶縁ライン中継部によって接続される少なくとも一方の絶縁ラインの端部が重なっているものであることを特徴とする請求項3に記載の導電パターン形成基板。
【請求項6】
前記絶縁ラインおよび前記絶縁ライン中継部は、透明導電膜へのレーザ光照射によって形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電パターン形成基板と、該導電パターン形成基板の導電パターンに電気的に接続された検出手段とを備えることを特徴とする入力装置。
【請求項8】
透明絶縁基板の片面に設けられた透明導電膜にレーザ光を照射して、絶縁ラインにより構成された絶縁パターンを、所定の導電パターンが設けられるように形成する導電パターン形成基板の製造方法であって、
前記絶縁パターンの形成では、複数のパターンユニットを、互いに隣接するパターンユニットの一部が重なるように形成すると共に、互いに隣接するパターンユニットの絶縁ラインの端部同士を接続する絶縁性の絶縁ライン中継部を設けることを特徴とする導電パターン形成基板の製造方法。
【請求項9】
前記透明導電膜が、透明絶縁材料と該透明絶縁材料内に2次元ネットワーク状に配置された金属ナノワイヤとを含む層であり、前記絶縁ラインは、金属ナノワイヤの少なくとも一部が除去されて空隙が形成されていることを特徴とする請求項8に記載の導電パターン形成基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図6】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−169081(P2012−169081A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27568(P2011−27568)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】