説明

導電性インキ、導電回路および非接触型メディア

【課題】フレキソ印刷あるいはグラビア印刷により従来の半分程度の膜厚の印刷アンテナを高速で印刷する事を可能とし、十分な低体積抵抗値を実現でき、かつインキの安定性、流動性に優れた導電性インキ、および通常の印刷方法により形成される導電回路を具備し、大量生産性、コストダウン、省エネルギー化に寄与する非接触型メディアの提供。
【解決手段】導電性物質およびバインダー成分を含有する導電性インキにおいて、導電性物質がBET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を用い、炭化水素系溶剤に溶解させた塩素化ポリオレフィン樹脂を用いた導電性インキ、および基材上に前記導電性インキをグラビア印刷若しくは炭化水素系溶剤に耐性のあるフレキソ版を用いたフレキソ印刷により形成された導電回路と、該導体回路に導通された状態で実装されたICチップとを具備する非接触型メディア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性インキを用いて基材上に印刷または塗工して形成される印刷物に関し、さらに導電性インキを用いた導電回路および導電回路に導通された状態で実装されたICモジュールとを具備する非接触型メディアに関する。さらに、詳しくは、グラビア印刷若しくはフレキソ印刷により従来の半分程度の膜厚の印刷アンテナを高速で印刷する事を可能とするインキの安定性、流動性に優れ、十分な低体積抵抗値が得られる導電性インキおよびグラビア印刷並びにフレキソ印刷方法により形成される導電回路を具備し、大量生産性、コストダウン、省エネルギー化に寄与する非接触型メディアの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品あるいは電磁波シールド用の薄膜形成あるいは導電回路のパターニングは、一般的に、熱硬化型、熱可塑型の導電性インキなどによる回路あるいは回路パターンを印刷し、熱処理による焼結する方法、または銅張り基材からのエッチング法が知られている。
【0003】
焼結法の例として、特開2000−305260号公報には、感光性導電性ペーストとして、アルカリ可溶性ネガ型感光性樹脂組成物、光重合開始剤、金属粉末および金属超微粒子からなる感光性ペーストが開示されている。該公報では、感光性樹脂組成物をパターニングした後、電気炉やベルト炉等の焼成炉で有機成分を揮発させ、無機粉末を焼成させることにより導電性パターン膜を形成しており、その際の焼成の雰囲気は、大気中または窒素雰囲気あるいは水素雰囲気で、500℃以上であり、大型の設備が必要となる。
一方、エッチング法については、金属の表面や形状を、化学的あるいは電気化学的に溶解除去し、その表面処理を含めた広義の加工技術とすることである。エッチングはすなわち化学加工の一種であり、主に金属表面に希望のパターン形状を得るために行われるが、一般的に工程が煩雑であり、また後工程で廃液処理が必要であるため、問題が多い。また、エッチング法によって形成された導電回路は、アルミニウムや銅など金属のみで形成されたものであるため、折り曲げ等の物理的衝撃に対して弱いという問題がある。
【0004】
導電性インキは、電子部品の小型軽量化あるいは生産性の向上、低コスト化が期待でき、また基材に印刷あるいは塗工し、乾燥させることによって容易に導電性を付与できる。この乾燥、硬化工程では、基材や電子部品に高温を加えることなく、低温にて行うことが出来ることから、近年急速に需要が高まっている。
【0005】
熱硬化型導電性インキの内、バインダー成分としてガラスフリットなどの無機物質を用いている物は、基材に塗布または印刷後に高温で過熱する必要がある。加熱による硬化には、多大なエネルギー、時間、装置設置のための床の面積を必要とし、不経済であるばかりでなく、次に示すような大きな制約がある。
【0006】
すなわち、ガラスフリット等の無機物質をバインダーとする導電性インキは、通常800℃以上での焼成を必要とするため、合成樹脂系の基材には適用できない。一方、熱硬化性樹脂をバインダーとする導電性インキは、合成樹脂系の基材に対して適用可能であるが、導電性インキを硬化させる際の過熱によって基材が変形し、得られたプリント配線回路を用いた後工程の部品搭載に支障を来たすなどの大きな障害があった。
【0007】
また、熱可塑型の導電性インキとしては特公2974256公報にあるように、少なくとも1種の熱可塑性酢酸ビニル樹脂/塩化ビニル/ジカルボン酸多元重合体樹脂を用いた導電性インキが開示されているが、印刷方式はシルクスクリーンで9〜22mΩ/□の表面抵抗率を得るためには25μmの乾燥皮膜の膜厚が必要である。
【0008】
また、特開2005−56778号公報にあるように、厚さが1300オングストローム以下の銀粉を用いた導電性インキが開示されているが、回路を印刷する手段としてはシルクスクリーン印刷を用いており、10-5Ω・cmの比抵抗を得るためには6〜8μmのインキ乾燥膜厚が必要である。
一方、現在来たるべくユビキタス社会を実現する為に、各方面でICタグ、RFIDタグの実用化が検討されており、短期間で大量のICタグ、RFIDタグを製造するための手段として印刷によるアンテナ回路形成が実用化されつつある。しかしながら、従来の印刷アンテナはフラットシルクスクリーン印刷が主流であったため、印刷速度が1〜2m/分と非常に遅く生産性に乏しい。また、最近ではロータリーシルクスクリーン印刷により導電性インキを印刷する方法が特開2003−110225号公報、特開2005−259546公報に開示されているが、この方法で求められる最も重要な点である印刷速度については開示されていない。ロータリーシルクスクリーン印刷は、一般的にはフラットシルクスクリーン印刷の5倍から10倍の5〜20m/分の印刷速度が一般的である。また、フラットシルクスクリーン並びにロータリーシルクスクリーンでは最も細かいスクリーンメッシュを用いても、スクリーン紗厚が20μmであり、導電材料として高価な銀粉の使用量を減らすために、インキ乾燥皮膜の膜厚をそれ以下に薄くすること、例えば、5μm以下とすることが困難である。
【特許文献1】特開2000−305260号公報
【特許文献2】特公2974256号公報
【特許文献3】特開2005−56778号公報
【特許文献4】特開2003−110225号公報
【特許文献5】特開2005−259546公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の導電性インキを使用した印刷による導通回路の形成に於いては、フラットシルクスクリーン印刷、ロータリーシルクスクリーン印刷での実用化が行われていたが、フラットシルクスクリーン印刷では印刷速度が1〜2m/分、ロータリーシルクスクリーン印刷では5〜20m/分であり、現在来たるべくユビキタス社会を実現する為に、各方面でICタグ、RFIDタグの実用化が検討されており、短期間で大量のICタグ、RFIDタグを製造する事は困難である。更に、導電材料として高価な銀粉の使用量を減らすために、インキ乾燥皮膜の膜厚を薄くすること、例えば、5μm以下とすることが困難である。
本発明は50〜100m/分の印刷速度でグラビア若しくはフレキソ印刷を行い、インキの乾燥膜厚が1〜3μmで均一な塗膜を大量かつ短時間で生産することを可能とし、得られた導電回路の表面抵抗率が500mΩ/□である電気的性能も優れた導電性インキおよび非接触型メディアを提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、導電性物質としてBET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を使用し、さらに、このフレーク状金属粉が、導電性インキ中の固形分の75〜95重量%含有し、さらに、バインダー成分として炭化水素系溶剤を用いて溶解した塩素化ポリオレフィン樹脂を含有する導電性インキであり、さらに、グラビア印刷若しくは炭化水素系溶剤により膨潤しないフレキソ版を用いてフレキソ印刷を行うことにより課題を解決することができることを特徴とする。
更に詳しくは、本発明の導電性インキを用いてフレキソ印刷にて印刷を行う場合、従来のフレキソ版はアルコール系溶剤には耐性があるが、芳香族、脂肪族炭化水素系溶剤では版が膨潤してしまい、印刷できないといった制約があった。本発明は種々検討の結果、一部の水現像フレキソ版が芳香族および脂肪族系炭化水素系溶剤に膨潤せずにこの溶剤で溶解した樹脂を印刷に用いることができる事を見いだした。
また、金属粉は銀粉であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性インキは、バインダーとして用いた塩素化ポリオレフィン樹脂が、BET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉との濡れが良く、均一な分散状態が得られることと、塩素化ポリオレフィン樹脂を溶解している炭化水素系溶剤も金属粉をフレーク状に加工する時に添加して金属粉同士の凝集を抑制させる金属粉周囲に存在する滑剤と相溶性が良好であるために、得られたインキの流動性が向上した。このことで、高速でのグラビア印刷もしくはフレキソ印刷が可能になり、均一な薄膜の乾燥皮膜が得られることにより、非常に低い表面抵抗率が達成され、大量生産によるコストダウンにも貢献することができ、将来の低コストで新しい非接触型ICメディアの普及が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、実施の形態に基づいて更に詳しく説明するが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではない。
本発明に係わる導電性インキに用いるバインダー成分は塩素化ポリオレフィンからなる合成樹脂であり、更に詳しくは塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンの塩素含有率が60%以上の塩素化ポリオレフィンが好ましいが、塩素化含有率60%未満の塩素化ポリオレフィンを用いても良く、更に導電性物質がBET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を用いることで基材への密着性、屈曲性が良好であり、流動性が良好であることから印刷適性も優れ、尚かつ100℃以下の低温乾燥時における表面抵抗率が500mΩ/□以下の導電性が得られる。
【0013】
導電性インキには、導電物質として銀粉末を用いる事が好ましいが、必要に応じて他の導電性物質、例えば銀メッキ銅、銀−銅複合体、銀−銅合金、アモルファス銅等の金属、これらの金属で被覆した無機物粉末、酸化銀、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物等の金属酸化物、またはカーボンブラック、グラファイト等を含有させることができる。これらの導電性物質は、1種あるいは2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
本発明の導電性インキは塩素化ポリオレフィン樹脂の他に、別の有機樹脂を併用することができる。その他の有機樹脂としては、ポリエステル樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂、エポキシ変性ポリエステル樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル変性ポリエステルなどの各種変性ポリエステル樹脂、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド、ニトロセルロース、セルロース・アセテート・ブチレート(CAB)、セルロース・アセテート・プロピオネート(CAP)などの変性セルロース類などが挙げられる。
【0015】
本発明に係わる導電性インキに用いる塩素化ポリオレフィンは、n−ヘプタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、トルエン、キシレン、アルキルベンゼン等の芳香族炭化水素溶剤および石油系混合溶剤等に溶解するが、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤等を併用して使用することができ、1種あるいは2種類以上を混合して使用することもできる。
【0016】
エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸(イソ)アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸3−メトキシブチル等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等が挙げられる。また、グリコールエーテル系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、及びこれらモノエーテル類の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0017】
ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0018】
グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1─ブトキシエトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート等が挙げられる。
【0019】
アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノール、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。また、その他の液状媒体として、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネートが挙げられる。
【0020】
本発明の導電性インキを用いてフレキソ印刷にて印刷を行う場合に用いる芳香族、脂肪族炭化水素系溶剤で版が膨潤しないフレキソ版としては、東洋紡製プリンタイト版シリーズ等が挙げられるが、これに限定するもではない。
【0021】
最後に、本発明の導電性インキを用いて形成された導電回路と、該導体回路に導通された状態で実装されたICチップとを具備する非接触型メディアについて説明する。
本発明の導電性インキは、使用用途に応じて紙、プラスチック等の基材の片面または両面上に、フレキソ印刷、グラビア印刷の印刷方法を用いて印刷することで導電回路を形成させることができる。
【0022】
紙基材としては、コート紙、非コート紙、その他、合成紙、ポリエチレンコート紙、含浸紙、耐水加工紙、絶縁加工紙、伸縮加工紙等の各種加工紙が使用できるが、非接触メディアとして安定した抵抗値を得るためには、コート紙、加工紙が好ましい。コート紙の場合は、平滑度の高いものほど好ましい。
プラスチック基材としては、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリスチレン、ビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ナイロン、ポリイミド、ポリカーボネート等の通常のタグ、カードとして使用されるプラスチックからなる基材を使用することができる。
【0023】
本発明の導電性インキを用いることにより、通常の印刷方法によって導電回路が形成できるため、既存の設備を生かした設計が可能である。すなわち、絵柄等の非接触メディアの意匠性を高めるための通常の印刷を施した後に、そのまま導電回路を印刷、形成することが可能なため、従来、エッチング法や転写法で行っていた回路形成法と比較して、生産性、初期投資コスト、ランニングコストの点ではるかに優れている。
【0024】
導電回路を印刷、形成する前の行程において、基材との密着性を高める目的で、基材にアンカーコート剤や各種ワニスを塗工してもよい。また、導電回路印刷後に回路の保護を目的としてオーバープリントワニス、各種コーティング剤等を塗工してもよい。これらの各種ワニス、コーティング剤としては、通常の熱乾燥型、活性エネルギー線硬化型のいずれも使用できる。
また、導電回路上に接着剤を塗布し、そのまま絵柄等を印刷した紙基材やプラスチックフィルムを接着、または、プラスチックの溶融押出し等によりラミネートして非接触メディアを得ることもできる。勿論、あらかじめ粘着剤、接着剤が塗布された基材を使用することもできる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を表す。
[バインダー1]
日本製紙ケミカル製塩素化ポリオレフィン樹脂スーパークロンHP620(塩素含有率65〜69%、軟化温度約130℃)を60部、丸善石油化学製芳香族炭化水素溶剤スワゾール1000を40部丸底フラスコに投入し、70℃、3時間攪拌、溶解しバインダー1を得た。
[バインダー2]
日本製紙ケミカル製塩素化ポリオレフィン樹脂スーパークロンHP1200(塩素含有率65〜69%、軟化温度約130℃)(を60部、丸善石油化学製芳香族炭化水素溶剤スワゾール1000を40部丸底フラスコに投入し、70℃、3時間攪拌、溶解しバインダー2を得た。
[バインダー3]
日本製紙ケミカル製塩素化ポリオレフィン樹脂スーパークロンHP205(塩素含有率65〜69%、軟化温度約200℃)を60部、丸善石油化学製芳香族炭化水素溶剤スワゾール1000を40部丸底フラスコに投入し、70℃、3時間攪拌、溶解しバインダー3を得た。
[バインダー4]
日本製紙ケミカル製塩素化ポリオレフィン樹脂スーパークロン803MW(塩素含有率29.5%、軟化温度約80〜90℃)を60部、丸善石油化学製芳香族炭化水素溶剤スワゾール1000を40部丸底フラスコに投入し、70℃、3時間攪拌、溶解しバインダー4を得た。
[バインダー5]
荒川化学製ポリウレタンワニスKL−593(ポリウレタン樹脂、酢酸エチル、イソプロピルアルコール)をバインダー5とした。
[銀粉A]
福田金属箔粉工業製フレーク状銀シルコートAgC−A(BET比表面積0.8m3/g、タップ密度3.5g/cm3)を銀粉Aとした。
[銀粉B]
三井金属鉱業製フレーク状銀OK−6P(BET比表面積1.7「m3/g、タップ密度4.6g/cm3」を銀粉Bとした。
[銀粉C]
三井金属鉱業製球状銀TPS(BET比表面積1.9m3/g、タップ密度1.1g/cm3)を銀粉Cとした。
[銀粉D]
SINO−PLATINUM製フレーク状銀FAGL−1(BET比表面積5.6m3/g、タップ密度2.9g/cm3)を銀粉Dとした。

[実施例1〜5、比較例1〜3]
表1記載の配合比率にて銀粉、バインダー、溶剤をディスパーにて混合し導電性インキを調整し、グラビア印刷機にて版深40μmのグラビア版で、印刷速度70m/分、乾燥温度80℃の印刷条件で50mm×80mmのベタ図面を印刷した。
[実施例6〜10、比較例4〜6]
表2記載の配合比率と同じ配合のインキをフレキソ印刷機にてアニロックスロール200線/インチ、セル容量20cm3/m2のアニロックスロールと実施例6〜10および比較例5〜6はフレキソ版として炭化水素系溶剤に耐性がある東洋紡株式会社プリンタイトBF170Bを用い、比較例4はアルコール系溶剤に耐性があるデュポン株式会社製DPU版を用いて、印刷速度70m/分、乾燥温度80℃にて50mm×80mmのベタ図面を印刷した。
得られた印刷物の物性値を表2に記載した。
【0026】
得られた印刷物の表面抵抗率をダイアインスツルメント社製抵抗率計ロレスタ−GPを用いJISK 7149(導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法)にて測定し、膜厚は仙台ニコン製MH−15M型測定器を用いて測定した。
また、得られた印刷物の転移状態を比較するため、マクベス社製透過濃度計TD391にて透過濃度を測定した。ここで、透過濃度が高い程、抜けが少なく良好な印刷物である。
更に、得られた印刷物の表面状態について目視評価を行った。
印刷物表面状態 ○・・・・平滑であり良好
△・・・・中間
×・・・・凹凸が多く不良
[実施例1〜10]
BET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を用い、炭化水素系溶剤に溶解させた塩素化ポリオレフィン樹脂を用いた導電性インキをグラビア印刷することにより、非常に均一で連続性のある薄膜が得られ、表面抵抗率も2〜3μmの膜厚に対して100mΩ/□以下と非常に良好な導電性を示した。
また、同じ配合のインキを炭化水素系溶剤に耐性があるフレキソ版を用いてフレキソ印刷することで、非常に均一で連続性のある薄膜が得られ、表面抵抗率も2〜3μmの膜厚に対して100〜200mΩ/□以下と非常に良好な導電性を示した。
[比較例1、4]
BET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を用いたが、塩素化ポリオレフィン樹脂をバインダー成分として用いていない比較例3(グラビア印刷)比較例4(フレキソ印刷)では、何れも透過濃度が低く素抜けが多く、表面状態も劣っており、表面抵抗率が上昇した。
[比較例2、5]
BET比表面積0.5〜2.0m2/gであるが、タップ密度2〜5g/cmから外れる球状銀粉を用いた比較例2(グラビア印刷)、比較例5(フレキソ印刷)では何れも透過濃度が比較的高く、表面状態も良好であるが、銀粉同士の接点が少なく表面抵抗率が著しく上昇した。
[比較例3、6]
BET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cm以上フレーク状銀粉を用いた比較例3(グラビア印刷)比較例6(フレキソ印刷)はグラビア印刷、フレキソ印刷共にPET基材へのインキの転移が悪く、表面抵抗率が著しく上昇した。

【表1】


【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の導電性インキにより、従来の導電性インキの半分以下の膜厚で良好な導電性を短期間で大量に生産することが可能となり、貴金属であり高価な銀の消費を抑制し大量生産によるコストダウンに貢献することができ、将来、低コストで新しい非接触型ICメディアの普及が可能となる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質およびバインダー成分を含む導電性インキにおいて、導電性物質としてBET比表面積0.5〜2.0m2/g、タップ密度2〜5g/cmのフレーク状金属粉を使用し、さらにこのフレーク状金属粉が、導電性インキ中の固形分の75〜95重量%含有し、バインダー成分を塩素化ポリオレフィン樹脂とする事を特徴とする導電性インキ。
【請求項2】
バインダー成分を溶解する溶剤が炭化水素溶剤を使用する事を特徴とする請求項1記載の導電性インキ。
【請求項3】
基材上に、請求項1乃至請求項2何れか記載の導電性インキを用いてグラビア印刷若しくはフレキソ印刷により導電回路を印刷し、乾燥することによって、導電回路を形成させることを特徴とする導電回路の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項2何れか記載の導電性インキを炭化水素系溶剤で膨潤しないフレキソ版を用いて導電回路を形成させる事を特徴とする導電回路の製造方法。
【請求項5】
基材上に、請求項3乃至請求項4何れか記載の導電回路及びICチップを積載したことを特徴とする非接触型メディア。

【公開番号】特開2008−106121(P2008−106121A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289461(P2006−289461)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】