説明

導電性ゴムローラの製造方法および電子写真装置用ローラ

【課題】発泡体ゴム層を形成するチューブ内外径の縦横比及びセル径分布がより均一で硬度や抵抗のムラが抑制された導電性ゴムローラを製造可能な方法、これら優れた特性を持つ電子写真装置用ローラを提供する。
【解決手段】導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、エピクロルヒドリンゴム及びアクリロニトリルブタジエンゴムの少なくとも一方とp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを含む発泡体ゴム層形成用材料をマイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって加熱して加硫する加硫工程を有し、前記炉内部を通過する時間が0.5〜2.0分間で前記炉排出時の前記材料の温度が100〜250℃になるように前記材料を昇温し、この間の発生ガスを2.0〜20.0ml/gとする。基層部がこの方法で製造された導電性ゴムローラである電子写真装置用ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター、静電記録装置等の画像形成装置において使用することのできる導電性ゴムローラの製造方法に関する。また、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させて画像を形成する電子写真装置に用いられる転写ローラ等の電子写真装置用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の画像形成装置の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。特には、発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラが用いられている。従来これらのゴムローラの製造方法として高圧蒸気による加硫缶加硫(特許文献1)、筒型等による金型加硫(特許文献2)、マイクロ波照射によるUHF(マイクロ波加硫装置)加硫(特許文献3)を行う方法が知られている。
【0003】
しかし、例えば加硫缶加硫は発泡体のセルが不均一になりやすく所望のセルを表面に出す為に比較的多量の研磨を行わなくてはならず、金型加硫においては段取りに時間が掛かり且つ、金型洗浄を行う必要がある為、量を数多く作るのには好適とは言えなかった。
【0004】
UHF加硫では段取りが良く、セルも均一にしやすいが、ゴムが軟化した時にチューブが潰れてしまい、チューブ内外径の縦横比が不均一となってしまうことがあった。更にこのチューブの発泡状態が不均一であることが、周方向の硬度や抵抗ムラの原因となっていた。
【0005】
一方、これからの複写機やプリンターに使用される導電性ゴムローラでは、発泡体のセル径やチューブ内外径の縦横比がより均一で、周方向の硬度や抵抗のムラが抑制されることが望まれ、更には段取り性や生産性の良い製造方法が求められている。
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開平11−201140号公報
【特許文献3】特開2002−221859号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、発泡体ゴム層を形成するチューブ内外径の縦横比及びセル径分布がより均一で、且つ硬度や抵抗のムラが抑制された導電性ゴムローラを得ることのできる導電性ゴムローラの製造方法を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、セル径分布の均一性に優れ、且つ硬度や抵抗のムラが抑えられた電子写真装置用ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
エピクロルヒドリンゴムおよびアクリロニトリルブタジエンゴムの少なくとも一方とp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含む発泡体ゴム層形成用材料を、マイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって加熱して加硫する加硫工程を有し、
該加硫工程において、該発泡体形成用ゴム材料を、マイクロ波加硫炉内部を通過する時間が0.5分間以上2.0分間以下で、マイクロ波加硫炉排出時の該発泡体形成用ゴム材料の温度が100℃以上250℃以下になるように昇温し、かつこの間に発生するガスの量を2.0ml/g以上20.0ml/g以下とする
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法が提供される。
【0009】
本発明により、基層部が、上記方法により製造された導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真装置用ローラが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、発泡体ゴム層を形成するチューブ内外径の縦横比及びセル径分布がより均一で、且つ硬度や抵抗のムラが抑制された導電性ゴムローラを得ることのできる導電性ゴムローラの製造方法が提供される。
【0011】
本発明により、セル径分布の均一性に優れ、且つ硬度や抵抗のムラが抑えられた電子写真装置用ローラが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
導電性芯材上に発泡体ゴム層を形成するための発泡体ゴム層形成用材料は、ゴム主成分として少なくともアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、又はその混合物を含む。発泡体ゴム層形成用材料は、更に発泡剤としてp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを含む。また、発泡体ゴム層形成用材料にカーボンブラック等の導電材、炭酸カルシウム等の充填材、他の助剤や硫黄、有機過酸化物、トリアジン、ポリアミン等の加硫剤、チウラム系、チアゾール系、グアニジン系、スルフェンアミド系、ジチオカルバミン酸塩系、チオウレア系、またはその数種の混合物の加硫促進剤などを混合することができる。
【0013】
アクリロニトリルブタジエンゴムは特に限定されるのもではないが、中高ニトリルから低ニトリルのものが好ましく、低ニトリルのものがより好ましい。
【0014】
エピクロルヒドリンゴムは、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体などのなかから適宜選択して使用することができる。抵抗調整が容易であり、硫黄加硫が可能であることから、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が好適である。
【0015】
発泡体ゴム層形成用材料は上記材料を適宜選択して混合すればよく、好ましくは低ニトリルアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を主成分とし、カーボンブラック等の充填剤、硫黄、加硫促進剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、他の助剤などを混合したものである。
【0016】
発泡剤としてアゾジカルボンアミドを用いると、アゾジカルボンアミドの分解生成物としてアンモニアやシアン酸等の物質が生成し、これらの分解生成物が材料中でイオン導電材として作用したり、材料中の極性を変化させたりする場合がある。その結果、経時でローラ抵抗値が上昇してしまう場合があり、特に高温高湿環境(例えば32.5℃、相対湿度80%)におけるローラ抵抗値の上昇が大きい場合がある。その他の発泡剤としては、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンや炭酸水素ナトリウムが挙げられる。N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンは分解時に有害なホルムアルデヒドが発生することがあり、またそのもの自体が変異原性を疑われている。炭酸水素ナトリウムは均一な発泡を得難く、ローラ抵抗値の環境変動を悪化させる場合がある。従って、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを発泡剤として用いることが望ましい。
【0017】
また、発泡体ゴム層形成用材料の昇温速度が速いと発泡ムラが生じやすくなり、この発泡ムラに起因するローラの硬度ムラ、抵抗ムラ等が生じやすくなり、昇温速度が遅いとチューブが縦方向に変形しやすくなり、ローラに加工するのが困難となる。このため発泡体ゴム層形成用材料がマイクロ波加硫炉内を通過する時間を0.5分間以上2.0分間以下とし、マイクロ波加硫炉排出時の発泡体ゴム層形成用材料の温度が100℃以上250℃以下になるように昇温する。
【0018】
また、ガス発生量が少なすぎると充分な発泡体を得ることができないため、所望のローラ硬度を得ることが困難になるという問題や、発泡ムラが生じやすくなるという問題が生じやすくなる。ガス発生量が多すぎると発泡体ゴム層の強度が不十分となってしまい、研磨する際の加工性が低下してしまうという問題や、発泡ムラが生じやすくなるという問題が生じやすくなる。よって、上記昇温の間に発生するガスの量を2.0ml/g以上20.0ml/g以下とする。なおガスの体積は25℃、0.10MPa基準とする。
【0019】
上記加熱の後に、発泡体ゴム層形成用材料を、熱風炉を用いて1分以上5分以下の間、発泡体ゴム層形成用材料を150℃以上250℃以下に加熱する熱風炉加熱工程を行うことが好ましい。マイクロ波加硫炉内での加硫、発泡反応を完結させたり、余分な発泡剤の分解性生物等を除去することが好ましく、これらの観点から150℃以上が好ましい。また、ゴム材料の劣化による導電性ゴムローラの電気的、機械的特性低下を優れて抑制する観点から、250℃以下が好ましい。
【0020】
前記熱風炉加熱工程において、ガス炉を熱源として加熱することが好ましい。なぜならガス炉は一般的な電気ヒーターを熱源とする熱風炉よりも装置立ち上げ時の昇温が速く、炉内の温度の均一性に優れているためである。
【0021】
ここで、ガス炉はガス(例えばプロパンガス)を燃焼させる際に発生する熱を熱源としており、例えば、フッ素樹脂でコーティングされた搬送コロで発泡体ゴム層形成用材料を搬送するようになっている。
【0022】
以下、本発明の形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0023】
図1に本発明により製造することのできる導電性ゴムローラの一形態を示す。この導電性ゴムローラは、導電性芯材61の外周面に発泡体ゴム層62を有する。導電性芯材としては、導電性ゴムローラに用いられる公知の導電性芯材を用いることができ、例えば円筒状の金属(芯金)を用いることができる。
【0024】
図2に、本発明の導電性ゴムローラの製造方法により製造された導電性ゴムローラを画像形成装置に利用した一例を示す。同図に示す画像形成装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザプリンタであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す画像形成装置には、転写ローラを有する転写装置が装着されている。本発明の導電性ゴムローラの製造方法により製造された導電性ローラは、この転写ローラとして用いられている。
【0025】
同図に示す画像形成装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/秒で回転駆動される。
【0026】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、例えば−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vlは例えば−150V)が形成される。
【0027】
現像装置4にはトナー5が収容されている。上記静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0028】
一方、給紙部Pから給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアス印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置によって除去される。クリーニング装置は残留トナーを除去するクリーニングブレード8と、除去されたトナーを収容する廃トナー容器9を有する。
【0029】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として画像形成装置本体外部に排出される。
【0030】
転写ローラ6は、円筒状導電性芯材61の外周面に発泡体ゴム層62を有する。
【0031】
本発明の導電性ゴムローラは、基層部が、本発明の導電性ゴムローラの製造方法により製造されたものである。必要に応じてコーティング層、或いはチューブ被覆層などの層を表層として設けることも可能である。
【0032】
本発明の導電性ゴムローラは、電子写真装置用ローラとして、特には転写ローラなどに好適に利用することができる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〕
図3に示す構成を有する、マイクロ波を用いた連続加硫による導電性ゴムローラの製造装置を用いた。この装置は、全長13mで、押出機11、マイクロ波加硫装置(UHF)12、熱風加硫装置(HAV)13、引取機14、定尺切断機15で構成される押出し加硫装置である。
【0035】
マイクロ波加硫装置(UHF)12は、テフロンでコーティングされたメッシュのベルト、又はテフロン樹脂を被服したコロで上記押出機11より押出されたゴムチューブを搬送し、熱風加硫装置(HAV)13はテフロン樹脂を被服したコロで搬送を行っている。マイクロ波加硫装置(UHF)12と熱風加硫装置(HAV)13間は、テフロン樹脂を被服したコロで連結されている。
【0036】
各装置12、13、14の長さは順に、4m、6m、1mとなっている。マイクロ波加硫装置(UHF)12と熱風加硫装置(HAV)13間、及び熱風加硫装置(HAV)13と引取機14間はいずれも0.1〜1.0mとなるように設定されている。
【0037】
発泡体ゴム層形成用材料に使用した資材は以下の通りである。
アクリロニトリルブタジエンゴム[商品名:ニポールDN401LL。日本ゼオン(株)製]。
エピクロルヒドリンゴム[商品名:ゼクロン3106。日本ゼオン(株)製]。
p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド[商品名:ネオセルボンN#1000S。永和化成工業(株)製]。
【0038】
アクリロニトリルブタジエンゴム80質量部、エピクロルヒドリンゴム20質量部、およびp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド6質量部を、バンバリーミキサーを用い混練した。なお、混練のために、バンバリーミキサー以外にもニーダー等の密閉式混練機を用いることができる。
【0039】
混練の後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形した。
【0040】
上記リボン状に成形した発泡体ゴム層形成用材料を、上記マイクロ波を用いた連続加硫による電性ゴムローラ製造装置の押出機11に投入し、チューブ状に押し出した。
【0041】
押出機11よりチューブ状に成形され押出されたゴムチューブは、押出機11より押し出された直後にマイクロ波加硫装置(UHF)12内に搬送される。ここでマイクロ波照射と加熱空気によって、発泡体ゴム層形成用材料は、マイクロ波加硫炉内の通過時間が0.5〜2.0分間で、マイクロ波加硫炉排出時の発泡体ゴム層形成用材料の温度が100〜250℃になるように昇温され、この時のガス発生量が2.0〜20.0ml/gになるように加熱される。これによって発泡体ゴム層形成用材料は、加硫、発泡される。本例では、表1に示すように、マイクロ波(出力1.0kW)を0.5分間照射してゴムチューブを加熱した。ゴムチューブの温度は100℃となった。
【0042】
つづいて、このゴムチューブを熱風加硫装置(HAV)13の熱風炉内に搬送し、ここで加硫を完了させ、チューブ状の導電性ゴム成形物を作成した。熱風炉による処理は必要に応じて行えばよく、例えば1〜5分間で150〜250℃加熱を行うことができる。本実施例では、熱風炉における加熱は2.3分間で200℃とした。
【0043】
この後、ゴムチューブが巻引取機14より排出された直後に、ゴムチューブを定尺切断機15により所望の寸法に切断し、チューブ状の導電性ゴム成形物(発泡体ゴム成形物)を作成した。
【0044】
ホットメルト接着剤を所望の領域に塗布した直径4〜10mmの導電性芯材を、上記のようにして得たチューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラ状の成形体を得た。導電性芯材と導電性ゴム成形物との接着のために、ホットメルト接着剤の他にも加硫接着剤を用いることもできる。
【0045】
この成形体を、研磨砥石(商品名:PTといし、GC80 HH 23 V4PO、(株)テイケン社製)を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度500RPM、送り速度500m/分で外径(直径)が15mmになるように研磨し、導電性ゴムローラ(導電性発泡ゴムローラ)を作成した。
【0046】
得られた導電性ゴムローラについて、下に示すようにしてチューブ内外径の縦横比、硬度ムラ、電気抵抗ムラ、セル(発泡セル)径分布を評価した。また、マイクロ波照射の際のゴムチューブの温度の測定方法(マイクロ波照射時ゴム温度の測定方法)、ガス発生量の測定方法も下に示す。これらの結果を表1に示す。
【0047】
(マイクロ波照射時ゴム温度の測定方法)
蛍光温度計(アンリツ社製、商品名:蛍光式光ファイバー温度計FL−2000)を使い、押出機より押し出された未加硫のゴムチューブ内部に蛍光温度計の検知部を差し込み、マイクロ波加硫装置(UHF)の炉内に未加硫のゴムチューブと共に搬送し、その時の温度を測定する。
【0048】
(ガス発生量の測定方法)
ガストレーサー(永和化成工業社製、商品名:ガストレーサー250)を使い、使用する未加硫ゴム(マイクロ波加熱前の発泡体ゴム層形成用材料)の任意の量を試験管内に入れ、試験管ごとオイルバス中に浸漬する。オイルバスの温度を30℃付近から300℃付近まで昇温し、ガスの発生量を読み取る。
【0049】
(チューブ内外径の縦横比測定方法)
チューブを任意の場所で切断し、その断面を投影機(ニコン社製、商品名:プロファイルプロジェクターV−12B)にて、内外径各々の最大部(a)と最小部(b)を測定し、その比(a/b)を測定した。このときa/bが1に近いことが好ましい。
【0050】
(硬度ムラの測定方法)
硬度計(アスカーC型、4.9N荷重)を使い、導電性ローラの長手方向に任意の場所の硬度を周方向に90°毎4箇所測定し、その最大値と最小値の差を表した。差は0が好ましい。
【0051】
(ローラの電気抵抗ムラの測定方法)
導電性ゴムローラをN/N(23℃、相対湿度55%)環境下において48時間放置した。その後、導電性ゴムローラの軸体(導電性芯材)に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにし、外径30mmのステンレス製のドラムに圧着し、回転させた状態で、軸体とステンレスドラムとの間に2kVの電圧を印加して電気抵抗を測定した。この時の抵抗値の最大値を最小値で除した値を電気抵抗ムラとした。電気抵抗ムラは1.2以下が好ましい。
【0052】
(セル径分布の確認方法)
チューブを任意の場所で切断し、その断面をビデオマイクロ(キーエンス社製、商品名:デジタルマイクロスコープVH−8000)にて確認し、外径側のセル径と内径側のセル径の大きさの違いを確認した。このとき外径側のセル径と内径側のセル径に差が無いことが好ましい。外径側のセル径と内径側のセル径のうち、小さい方のセル径の値を大きい方のセル径の値で割った値が0.7以上のものを○、0.7〜0.5のものを△、0.5以下のものを×とした。
【0053】
〔実施例2〜5〕
マイクロ波照射時間(加熱時間)、マイクロ波出力をそれぞれ表1に示すように変更し、マイクロ波照射時ゴム温度およびガス発生量を表1に示すようにした。これ以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例1〜8〕
マイクロ波照射時間、マイクロ波出力をそれぞれ表2に示すように変更し、マイクロ波照射時ゴム温度およびガス発生量を表2に示すようにした。これ以外は実施例1と同様にして導電性ゴムローラを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0055】
実施例1は0.5分間でゴム温度が100℃に昇温しており、この時のガス発生量を2.1ml/gとしている。チューブ縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラ、セル径分布ともに良好な結果を得ることができた。
【0056】
実施例2ではゴム材料を2.0分間で250℃に昇温し、ガス発生量が19.7ml/gであるため、チューブ縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラ、セル径分布ともに良好な値を得ることができた。
【0057】
実施例3では1.5分間でゴム材料を200℃に昇温し、その時のガス発生量が15.7ml/gとなっており、良好な結果を得ることができた。
【0058】
実施例4ではゴム材料を2.0分間で100℃まで昇温し、ガス発生量が11.6ml/gとした。チューブ径の縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラ、セル径分布ともに良好な結果を得ることができた。
【0059】
実施例5では、ゴム材料を1.0分間で250℃まで昇温し、ガス発生量を14.9ml/gとしているため、チューブ径の縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラ、セル径分布ともに良好な値となった。
【0060】
比較例1〜3はゴム温度が80℃まで昇温した場合である。これらの場合はゴム材料の昇温が不十分であり、縦方向にチューブが著しく変形してしまったためローラに加工することが不可能であり、セル径分布も不均一であった。
【0061】
比較例4では0.5分間で200℃までゴム材料を昇温しているが、ガス発生量が1.9ml/gと少ないためにチューブ縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラともに大きな値となってしまい、セル径分布もやや不均一であった。
【0062】
比較例5はマイクロ波照射時間が2.5分と長いためチューブ縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラが大きく、セル径分布もやや不均一であった。
【0063】
比較例6〜8はゴム温度を270℃まで昇温した場合であるが、ゴム温度が高いためにチューブ縦横比、硬度ムラ、抵抗ムラが大きく、セル径分布も不均一であった。
【0064】
このように、比較例の場合にはチューブ内外径の縦横比、セル径分布、周方向の硬度ムラ、周方向の抵抗ムラが実施例よりも大きくなる。
【0065】
この結果から、本発明によれば、チューブ内外径の縦横比が1に限りなく近く、またセル径分布が均一になることがわかる。更に周方向の硬度ムラも小さく、周方向の抵抗ムラも1.2以下になることがわかる。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明により得られる導電性ゴムローラの一形態を示す模式図である。
【図2】本発明により得られる導電性ゴムローラを用いた画像形成装置(電子写真装置)の例を示す模式的断面図である。
【図3】本発明の導電性ゴムローラの製造方法に用いることのできる加硫成形装置の例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0069】
1…感光ドラム
2…帯電ローラ
3…レーザ光
4…現像装置
5…トナー
6…転写ローラ
7…転写材
8…クリーニングブレード
9…廃トナー容器
10…定着装置
61…導電性芯材
62…発泡体ゴム層
11…押出機
12…マイクロ波加硫装置(UHF)
13…熱風加硫装置(HAV)
14…引取機
15…定尺切断機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上に発泡体ゴム層を有する導電性ゴムローラの製造方法において、
エピクロルヒドリンゴムおよびアクリロニトリルブタジエンゴムの少なくとも一方とp,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとを含む発泡体ゴム層形成用材料を、マイクロ波加硫炉を用いてマイクロ波照射及び加熱空気によって加熱して加硫する加硫工程を有し、
該加硫工程において、該発泡体形成用ゴム材料を、マイクロ波加硫炉内部を通過する時間が0.5分間以上2.0分間以下で、マイクロ波加硫炉排出時の該発泡体形成用ゴム材料の温度が100℃以上250℃以下になるように昇温し、かつこの間に発生するガスの量を2.0ml/g以上20.0ml/g以下とする
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
前記工程の後に、発泡体ゴム層形成用材料を、熱風炉を用いて1分以上5分以下の間、150℃以上250℃以下に加熱する熱風炉加熱工程を有する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記熱風炉加熱工程において、ガス炉を熱源として加熱する請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
基層部が、請求項1から3の何れか一項記載の方法により製造された導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真装置用ローラ。
【請求項5】
転写ローラである請求項4に記載の電子写真装置用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−90237(P2008−90237A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274158(P2006−274158)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】