説明

導電性ペーストおよびそれを用いたセラミック電子部品の製造方法

【課題】電極とセラミックとの接合強度が大きく、セラミックの表面に信頼性に優れた外部電極を確実に形成することが可能な導電性ペーストおよびそれを用いたセラミック電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】導電性粉末と、ガラス粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストにおいて、ガラス粉末として、Bi23、B23、SiO2、Fe23、およびAg2Oを構成成分として含有し、構成成分の組成比を、B23、SiO2、およびBi23+Fe23+Ag2Oのモル%をそれぞれx、y、およびzで表わす、添付の図1に示す3成分組成図において、(x、y、z)がA(25、5、70)、B(55、5、40)、C(20、40、40)、D(10、40、50)、E(10、20、70)の各組成点を頂点とする多角形A、B、C、D、Eで囲まれた範囲内とし、かつ、Fe23の含有量aを、3≦a≦25モル%の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、導電性ペーストおよびそれを用いたセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
代表的なセラミック電子部品の一つに、図3に示すような、構造を有する表面実装型の積層セラミックコンデンサがある。
この積層セラミックコンデンサは、図3に示すように、誘電体層であるセラミック層53を介して複数の内部電極52a,52bが積層された積層セラミックコンデンサ素子51の両端面54a,54bに、内部電極52a,52bと導通するように外部電極55a,55bが配設された構造を有している。
【0003】
ところで、この積層セラミックコンデンサのような外部電極を備えた表面実装型のセラミック電子部品を製造するにあたって、外部電極を形成する場合、内部電極を備えた焼結セラミック素体、この例では積層セラミックコンデンサ素子の端面に導電性ペーストを塗布し、焼き付けることにより外部電極を形成する方法が一般に用いられている。
【0004】
そして、外部電極の焼結セラミック素体への接合強度を向上させたり、外部電極の緻密性を向上させたりする目的で、外部電極形成用材料である導電性ペーストに、ガラス成分を添加することが知られている(例えば特許文献1参照)。
なお、特許文献1の請求項5には、Bi23+B23+SiO2+Fe23などを含有するガラス組成物であって、詳しくは、以下に示すような組成を有するガラス組成物が示されている。
【0005】
すなわち、特許文献1には、モル%で0.7〜1.5%のMgO、6〜14%のBaO、1.5〜4.5%のAl23 、15〜42%のB23 、1.5〜4.5%のZrO2 、20〜30%のSiO2 、5〜70%のBi23 、2.5〜25%のZnO、0.2〜40%のCuO、1.7〜40%のCoO、1.7〜40%のFe23 、および10〜40%のMnOを含み、鉛およびカドミウムを含まないことを特徴とするガラス組成物が示されている。
【0006】
そして、このガラス組成物を、導電成分やバインダなどと配合することにより得られる導電性ペーストを用いることにより、良好なワイヤボンディングを行うことが可能になるとされている。
【0007】
しかしながら、近年、セラミック電子部品への特性向上への要求は厳しく、上記従来の導電性ペーストでは必ずしもその要求に応えられなくなっており、さらにセラミックへの接合性に優れた電極を形成することが可能な導電性ペーストが望まれるに至っている。
【特許文献1】特開平8−67533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記課題を解決するものであり、焼結セラミック素体の表面に塗布して焼き付けることにより形成される電極と焼結セラミック素体との接合強度が大きく、焼結セラミック素体の表面に信頼性に優れた外部電極を確実に形成することが可能な導電性ペーストおよびそれを用いたセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願発明においては以下の構成を採用している。
すなわち、本願請求項1の導電性ペーストの発明は、
導電性粉末と、ガラス粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストであって、
前記ガラス粉末が、構成成分として、Bi23、B23、SiO2、Fe23、およびAg2Oを含有し、
前記構成成分の組成比が、B23、SiO2、およびBi23+Fe23+Ag2Oのモル%をそれぞれx、y、およびzで表わす、添付の図1に示す3成分組成図において、(x、y、z)がA(25、5、70)、B(55、5、40)、C(20、40、40)、D(10、40、50)、E(10、20、70)の各組成点を頂点とする多角形A、B、C、D、Eで囲まれた範囲内にあり、かつ、
Fe23の含有量aが、3≦a≦25モル%の範囲内にあること
を特徴としている。
【0010】
また、請求項2の導電性ペーストは、請求項1の発明の構成において、前記Ag2Oの含有量bが3モル%以下であることを特徴としている。
【0011】
また、請求項3の導電性ペーストは、請求項1または2の発明の構成において、前記導電性粉末が、Ag粉末、Cu粉末、およびAgとCuの合金からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴としている。
【0012】
また、本願発明のセラミック電子部品の製造方法は、請求項4に記載されているように、
焼結セラミック素体を作製する工程と、
前記焼結セラミック素体の表面に請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペーストを塗布し、焼き付ける工程と
を備えていることを特徴としている。
【0013】
また、請求項5のセラミック電子部品の製造方法は、請求項4の発明の構成において、前記焼結セラミック素体が、セラミックグリーンシートを介して内部導体が積層された構造を有する積層体を焼成することにより作製されるものであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の導電性ペーストは、導電性粉末と、ガラス粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストにおいて、ガラス粉末として、Bi23、B23、SiO2、Fe23、およびAg2Oを構成成分として含有し、これらの構成成分の組成比が、B23、SiO2、およびBi23+Fe23+Ag2Oのモル%をそれぞれx、y、およびzで表わす、添付の図1に示す3成分組成図において、(x、y、z)がA(25、5、70)、B(55、5、40)、C(20、40、40)、D(10、40、50)、E(10、20、70)の各組成点を頂点とする多角形A、B、C、D、Eで囲まれた範囲内にあり、かつ、Fe23の含有量aが、3≦a≦25モル%の範囲内にあるようにしているので、塗布して焼き付けることにより、セラミックとの接合強度が大きく、信頼性に優れた外部電極をセラミックの表面に確実に形成することが可能な導電性ペーストを提供することが可能になる。
【0015】
すなわち、本願請求項1の発明の要件を満たす、B−Si−Bi−O系のガラス成分に、FeとAgとを所定の範囲で添加したガラスは、焼成時の結晶化が抑制されてガラスとしての化学的な安定性が向上し、めっき液による侵食を受け難くなるとともに、焼成時のガラスの粘度が低下して、セラミック素体に対する濡れ性が向上し、かつ、流動性の高くなったガラスがセラミック素体の粒子の細部にまで浸透し、いわゆるアンカー効果が向上するため、上記ガラスを含有する導電性ペーストを焼き付けて電極を形成した場合、さらには形成された電極にめっきを施した場合にも、セラミック素体への接合強度の大きい電極を形成することが可能になる。
なお、本願発明の導電性ペーストを用いることにより、上述の特許文献1に記載されたガラスを配合した導電性ペーストを用いた場合よりも、さらに焼結セラミック素体に対する接合強度の大きい外部電極を形成することが可能になる。
【0016】
なお、本願発明は、上述の構成成分を含有することを特徴としているが、意図せず含まれてしまう不可避不純物の混入や、形成される電極の焼結セラミック素体への接合強度を低下させない程度に配合される微量添加物の添加を排除するものではない。
また、本願請求項1の発明の導電性ペーストにおいては、Ag2Oを過剰に含有させると、焼き付け工程でAg2Oが析出してしまい、ガラスの構成成分として機能させることができなくなる。したがって、本願発明において、Ag2Oの含有量は、焼き付け工程で析出せず、ガラスの構成成分としてなりうる範囲までとすることが望ましい。
【0017】
また、請求項2の導電性ペーストのように、請求項1の発明の構成において、Ag2Oの含有量bを3モル%以下とした場合、焼き付け工程でAg2Oが析出してしまうことを防止し、Ag2Oをガラスの構成成分として有効に機能させることが可能になり、さらに特性に優れた導電性ペーストを得ることが可能になる。
【0018】
また、請求項3の導電性ペーストのように、請求項1または2の発明の構成において、前記導電性粉末として、導電性粉末が、Ag粉末、Cu粉末、およびAgとCuの合金の粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いるようにした場合、焼結セラミック素体との接合強度が大きく、しかも、導電性に優れた外部電極を形成することが可能な導電性ペーストを提供することが可能になる。
【0019】
また、請求項4のセラミック電子部品の製造方法は、焼結セラミック素体を作製する工程と、焼結セラミック素体の表面に請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペーストを塗布し、焼き付ける工程とを備えているので、焼結セラミック素体との接合強度が大きく、信頼性の高い外部電極を備えたセラミック電子部品を確実に製造することが可能になる。
【0020】
すなわち、本願発明のセラミック電子部品の製造方法に用いられる導電性ペーストは、塗布、焼き付け後に、焼結セラミック素体との接合強度の大きい電極を形成することが可能であることから、本願発明のセラミック電子部品の製造方法によれば、例えば、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品や、単板型コンデンサや内部導体を備えていないチップ型サーミスタなどの、非積層型の焼結セラミック素体の表面に信頼性の高い外部電極が形成された構造を有するセラミック電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【0021】
また、請求項5のセラミック電子部品の製造方法のように、請求項4の発明の構成において、焼結セラミック素体が、セラミックグリーンシートを介して内部導体が積層された構造を有する積層体を焼成することにより作製されるものである場合、すなわち、例えば、積層セラミックコンデンサを構成する焼結セラミック素体のように、内部導体とセラミック層との積層構造を有する焼結セラミック素体であるような場合に本願発明を適用することにより、焼結セラミック素体との接合強度が大きく、信頼性の高い外部電極を備えた積層型のセラミック電子部品を効率よくしかも確実に製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本願発明の実施例を示して、本願発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0023】
[1]導電性ペーストの作製
(1)まず、表1および表2に示すそれぞれの組成となるように、出発原料粉末であるH3BO3、SiO2、Bi23、Fe23およびAg2Oを調合し、SiO2製のるつぼに入れて1000〜1200℃で1h保持した。
そして、原料が完全に溶融したことを確認した上で炉から取り出し、純水中に投入してガラス化させた。得られた小粒状のガラスをボールミルで湿式粉砕して、表1および表2に示すそれぞれの組成のガラス粉末を得た。
【0024】
(2)また、導電性粉末として、粒径が1〜3μmのAg粉末、および粒径が0.5〜2μmのCu粉末を準備した。
【0025】
(3)次に、上述のようにして得られたガラス粉末と、導電性粉末すなわち、Ag粉末およびCu粉末と、メタクリル系樹脂を有機溶媒に溶解させた有機ビヒクルとを配合し、3本ロールミルで混練し、表1および表2の試料番号1〜35の導電性ペーストを得た。
ここで、Ag粉末またはCu粉末と、ガラス粉末との混合比率は、真体積で計測した体積比で4:1とした。
【0026】
[2]導電ペーストの塗布、焼き付け
(1)上述のようにして作製した導電性ペーストを、チタン酸バリウム系のセラミック基板上に直径3mmの円状図形となるようにスクリーン印刷した。
【0027】
(2)そして、導電性粉末としてAg粉末を用いた導電性ペーストは、大気中で、最高温度570℃、保持時間が600sとなるように設定したメッシュベルト炉を用いて焼成し、焼結膜とした。
また、導電性粉末としてCu粉末を用いた導電性ペーストは、酸素濃度が30ppmとなるように制御されたN2ガス中で、最高温度600℃、保持時間が600sとなるように設定したメッシュベルト炉を用いて焼成し、焼結膜とした。
【0028】
(3)次に、周知の湿式めっき方法により、上述の焼結膜上にNiめっき、Snめっきの順でめっき処理を施した。めっき浴は一般的な酸性浴を使用した。
【0029】
(4)それから、上述のようにしてチタン酸バリウム系のセラミック基板上に形成した電極に、一般的にPbを含まないはんだとして用いられるSn−Ag−Cu系はんだを用いて直径0.6mmのリード線をはんだ付けした。このとき、はんだ付け条件は、はんだ盛り量を0.05gとし、余熱(120℃)を5分、本加熱(300℃)を5秒とした。
【0030】
(5)そして、上述のようにしてセラミック基板上の電極に接合したリード線を、1.67mm/sの定速で引張り、電極がセラミック基板から剥離したときの引張荷重から、電極とセラミック基板との接合強度を求めた。得られた結果を試料番号と対応させて表1および表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
表1および表2に示すように、本願発明の範囲内にある試料番号2〜4、7、8、10、12、13、15、16、19〜22、24〜31、33、34のガラス粉末を用いた導電性ペーストを用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度を30N以上にまで高くできることが確認された。
【0034】
一方、本願発明の要件を備えていないガラス粉末を用いた導電性ペーストについては、以下に説明するような結果が得られた。
【0035】
まず、図1に示した3成分組成図において、多角形A、B、C、D、Eの頂点AとBを結ぶ線分ABの外側、すなわち、表1の試料番号1および5に示すように、SiO2が5モル%未満のガラス粉末を用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が30N未満となることが確認された。
【0036】
また、図1に示した3成分組成図において、多角形A、B、C、D、Eの頂点BとCを結ぶ線分BCの外側、すなわち、表1の試料番号6および9に示すように、Bi23+Fe23+Ag2Oが40モル%未満のガラス粉末を用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が30N未満となることが確認された。
【0037】
また、図1に示した3成分組成図において、多角形A、B、C、D、Eの頂点CとDを結ぶ線分CDの外側、すなわち、表1の試料番号9および11に示すように、SiO2が40モル%を超えるガラス粉末を用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が30N未満となることが確認された。
【0038】
また、図1に示した3成分組成図において、多角形A、B、C、D、Eの頂点DとEを結ぶ線分DEの外側、すなわち、表1の試料番号11および14に示すように、B23が10モル%未満のガラス粉末を用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が30N未満となることが確認された。
【0039】
また、図1に示した3成分組成図において、多角形A、B、C、D、Eの頂点EとAを結ぶ線分EAの外側、すなわち、表1の試料番号1および14に示すように、Bi23+Fe23+Ag2Oが70モル%を超えるガラス粉末を用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が30N未満となることが確認された。
【0040】
また、表1の試料番号17、18、および表2の試料番号23、32に示すように、Fe23の含有量aが3モル%未満、または25モル%を超えるガラス粉末を用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が30N未満となることが確認された。
【0041】
また、表2の試料番号35に示すように、Ag2Oの含有量bを0モル%とした、すなわち、Ag2Oを含有させていないガラスを用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度が低下することが確認された。
【0042】
これに対し、表1の試料番号2〜4,7,8,10,12,13,15,16,19,20、表2の試料番号21,22,24,26〜31,33に示すように、Ag2Oの含有量bを1モル%としたガラスを用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度を30N以上にまで高くできることが確認された。
【0043】
さらに、表2の試料番号25、34に示すように、Ag2Oの含有量bを3モル%としたガラスを用いた場合には、電極とセラミック基板との接合強度がより向上することが確認された、
したがって、電極とセラミック基板の接合を強固にする見地からは、Ag2Oの含有量bを、0モル%を超えて3モル%までの範囲とすることが好ましい。
【0044】
上述のように、本願発明の要件を満たす導電性ペーストを用いた場合に、セラミック基板への電極の接合強度を向上させることが可能になるのは、B−Si−Bi−O系のガラス成分に、FeとAgとを所定の範囲で添加したガラスは、焼成時の結晶化が抑制されてガラスとしての化学的な安定性が向上し、めっき液による侵食を受け難くなるとともに、焼成時のガラスの粘度が低下して、セラミック素体に対する濡れ性が向上し、かつ、流動性の高くなったガラスがセラミック素体の粒子の細部にまで浸透して、いわゆるアンカー効果が向上することによるものと考えられる。
【0045】
すなわち、本願発明によれば、組成にPbを含まないガラス粉末を用いながら、湿式めっき処理後においても、セラミック素体との接合強度が大きい外部電極を形成することが可能な導電性ペーストを得ることが可能になり、環境に対する負荷を低減させつつ、工業的に安定して信頼性の高いセラミック電子部品を供給することが可能になる。
【0046】
なお、上記表1および表2に示した導電性ペーストのうちの、本願発明の要件を備えた導電性ペーストを塗布して、焼き付けることにより外部電極を形成した、図2に示すような構造、すなわち、誘電体層であるセラミック層3を介して複数の内部電極2a,2bが積層された積層セラミックコンデンサ素子1の両端面4a,4bに、内部電極2a,2bと導通するように外部電極5a,5bが配設された構造を有する積層セラミックコンデンサ10を製造した。
そして、この外部電極5a,5bの、焼結セラミック素体である積層セラミックコンデンサ素子1への接合強度を調べたところ、実用上必要とされる接合強度を有する外部電極5a,5bが形成されていることが確認された。
【0047】
なお、本願発明は、図2に示すような構造を有する積層セラミックコンデンサに限らず、単板型コンデンサや内部導体を備えていないチップ型サーミスタなどの、非積層型で、内部導体を備えていないセラミック電子部品に外部電極を形成する場合にも広く適用することが可能である。
【0048】
また、上記実施例では、導電性ペーストを構成する導電性粉末として、Ag粉末およびCu粉末を用いた場合を例にとって説明したが、本願発明は、上記実施例に限定されるものではなく、AgとCuの合金の粉末を導電成分として用いることも可能である。
【0049】
また、上記実施例では、Ag粉末またはCu粉末と、ガラス粉末の混合比率を、真体積で計測した体積比で4:1としたが、導電成分とガラス粉末の混合比率はこれに限定されるものではない。ただし、導電性を損なうことなく、セラミック素子への十分な接合強度を確保する見地からは、導電成分とガラス粉末の混合比率を、10:1〜3:1の範囲とすることが望ましい。
【0050】
本願発明はさらにその他の点においても上記実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述のように、本願発明によれば、焼結セラミック素体の表面に、焼結セラミック素体との接合強度が高い信頼性の高い外部電極を確実に形成することが可能になる。
したがって、本願発明は、焼結セラミック素体の表面に外部電極を備えた構造を有する種々のセラミック電子部品およびその製造に関する技術分野に広く適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本願発明の実施例1の導電性ペーストに用いられているガラス粉末の組成比を示す3成分組成図である。
【図2】本願発明の実施例1の導電性ペーストを用いて外部電極を形成したセラミック電子部品を示す図である。
【図3】従来の導電性ペーストを用いて外部電極を形成したセラミック電子部品を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1 積層セラミックコンデンサ素子
2a,2b 内部電極
3 セラミック層
4a,4b 積層セラミックコンデンサ素子の端面
5a,5b 外部電極
10 積層セラミックコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末と、ガラス粉末と、有機ビヒクルとを含有する導電性ペーストであって、
前記ガラス粉末が、構成成分として、Bi23、B23、SiO2、Fe23、およびAg2Oを含有し、
前記構成成分の組成比が、B23、SiO2、およびBi23+Fe23+Ag2Oのモル%をそれぞれx、y、およびzで表わす、添付の図1に示す3成分組成図において、(x、y、z)がA(25、5、70)、B(55、5、40)、C(20、40、40)、D(10、40、50)、E(10、20、70)の各組成点を頂点とする多角形A、B、C、D、Eで囲まれた範囲内にあり、かつ、
Fe23の含有量aが、3≦a≦25モル%の範囲内にあること
を特徴とする、導電性ペースト。
【請求項2】
前記Ag2Oの含有量bが3モル%以下であることを特徴とする、請求項1記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性粉末が、Ag粉末、Cu粉末、およびAgとCuの合金の粉末からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2記載の導電性ペースト。
【請求項4】
焼結セラミック素体を作製する工程と、
前記焼結セラミック素体の表面に請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ペーストを塗布し、焼き付ける工程と
を備えていることを特徴とする、セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記焼結セラミック素体が、セラミックグリーンシートを介して内部導体が積層された構造を有する積層体を焼成することにより作製されるものであることを特徴とする、請求項4記載のセラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−87661(P2007−87661A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−272656(P2005−272656)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】