説明

導電性ローラ

【課題】連続引き抜き加工により形成した丸棒素材を芯金として用いる弾性ローラにおいて、弾性層の周面の振れを大幅に小さくすることのできる弾性ローラの製造方法、および、弾性層の周面の振れを30μm 以下にすることのできる弾性ローラを提供する。
【解決手段】芯金3の丸棒素材部分1の長さ方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の所定長さの両端部を機械加工して円形断面の軸端部を形成してなる芯金と、この芯金の周囲に弾性層を形成してなる弾性ローラ、およびその製造方法に関し、特に、弾性層の振れを小さくすることのできるものに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の電子写真方式を用いた画像形成装置においては、画像形成の各工程で、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、帯電ローラ、クリーニングローラ、中間転写ローラ、ベルト駆動ローラ等、芯金の周囲に弾性層を形成してなる弾性ローラが用いられている。そして、これらの弾性ローラに用いられる芯金として、金属製筒体をバフ研磨したものが開示されており(例えば、特許文献1参照。)、このように、精度の高い弾性ローラを形成するためには、高精度の芯金が必要であるが、一方、コスト低減の面からは好ましくないため、丸棒素材の、高い精度を要求される両端部だけを機械加工することが行われている。
【特許文献1】特開2004−9227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような丸棒素材を芯金として用い弾性ローラは、その弾性層の周面における振れが大きいためにスペックアウトとなる場合があり、その改善が急がれていた。具体的な許容される振れの大きさとしては、30μmが示されている。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、丸棒素材を芯金として用いる弾性ローラにおいて、弾性層の周面の振れを大幅に小さくすることのできる弾性ローラの製造方法、および、具体的には、弾性層の周面の振れを30μm 以下にすることのできる弾性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>は、連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の所定長さの両端部を機械加工して円形断面の軸端部を形成してなる芯金と、この芯金の周囲に弾性層を形成してなる弾性ローラにおいて、前記芯金の丸棒素材部分の長さ方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下としてなる弾性ローラである。
【0006】
<2>は、<1>において、前記軸端部の周面における振れを15μm以下としてなる弾性ローラである。
【0007】
<3>は、<1>もしくは<2>の弾性ローラを製造する方法において、前記連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の所定長さに加工されたものから、軸方向うねりが所定の値以下のものだけを選別し、選別された丸棒素材の周面を把持して両端部を機械加工して軸端部を形成し、次いで、両軸端部の周面を把持して弾性層の周面を研磨する弾性ローラの製造方法である。
【0008】
<4>は、<3>において、前記所定の値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下とする弾性ローラの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
<1>によれば、前記芯金の丸棒素材部分の軸方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)6μm以下としたので、丸棒素材の表面性状を均一化することができ、このことが、この周面を把持して行われる軸端部の外周面の精度を高め、そして、この軸端部の周面を把持して行われる弾性層の外周面の研磨精度を向上させ、その結果、弾性層の振れを30μm以下に抑えることができ、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0010】
<2>によれば、前記軸端部の周面における振れを15μm以下としたので、この軸端部の周面の表面性状を均一化することができ、その結果、この軸端部の周面を把持して行われる弾性層の外周面の研磨精度を向上させ、弾性層の振れを一層確実に30μm以下に抑えることができ、製品の歩留まりを向上させることができる。
【0011】
<3>によれば、前記連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の所定長さに加工されたものについて、軸方向うねりが所定の値以下のものだけを選別し、選別された丸棒素材の周面を把持して両端部を機械加工して軸端部を形成し、次いで、両軸端部の周面を把持して弾性層の周面を研磨するので、丸棒素材の表面性状を均一化することができ、このことが、この周面を把持して行われる軸端部の外周面の精度を高め、そして、この軸端部の周面を把持して行われる弾性層の外周面の研磨精度を向上させ、弾性層の振れを小さくすることができる。
【0012】
<4>によれば、軸方向うねりが、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下のものだけを選別して用いるので、上記に説明したことにより、弾性層の振れを30μm以下に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のに係る実施形態について、図に基づいて説明する。図1は、本発明に係る実施形態の弾性ローラを示す断面図であり、弾性ローラ10は、芯金3の周囲にゴムやポリウレタン等よりなる弾性層4を形成してなる。そして、芯金3は、連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の両端部を機械加工して形成され、丸棒素材の周面11を有する芯金本体部1と、丸棒素材を機械加工して形成された両方の軸端部2とよりなる。
【0014】
そして、この弾性ローラの精度は、弾性層4の周面における振れが30μm以下であり、そのため、丸棒素材の周面11における長さ方向うねりがWCMで6μm以下とし、好ましくは、軸端部2の周面12における振れを15μm以下とするものである。
【0015】
図2は、所定長さに切断された丸棒素材を示す側面図であり、芯金3の材料として、鋼材をダイスから外径d0となるように引き抜き、精度を高めるためこれを連続的にロール矯正機で矯正したあと所定長さlに裁断した丸棒素材20を準備する。次に、図3に示すように、丸棒素材20の周面をチャック21で把持して丸棒素材20の一方の端部を旋盤等により機械加工して、d0より小さい外径d1の軸端部2を形成し、同様にして、他方の端部にも軸端部を形成する。
【0016】
次に、上記の用にして形成された芯金3を、図4に示すように、筒状の金型22の中に配置したあと、金型22の両端をキャップ23で閉止してキャビティ29を形成し、このキャビティ29の中に注入口26から弾性層材料を注入し、これを硬化されて未研磨の弾性層を形成する。
【0017】
このあと、未研磨の弾性層が周囲に形成された芯金3を取り出し、図5に示すように、芯金3の両方の軸端部2をチャック24で把持して、芯金3を回転させながら、幅広砥石25を回転させて弾性層4Rの周面を研削することにより、所定の外径d2を有する弾性層4を形成し、弾性ローラを完成させる。
【0018】
上記の工程において、本発明は、軸端部2を形成するに先立って、丸棒素材20の周面11を検査し、軸方向うねりにおけるWCM(ろ波最大うねり))が所定の値以下であるか否かをチェックし、このチェックで合格したものだけを次の、軸端部2を形成する工程に移す点に特徴があり、このことによって、軸端部2の振れを小さくすることができ、その結果、軸端部2の周面12を把持して行われる弾性層4の研磨において、弾性層の外径の振れを大幅に抑制することができる。
【0019】
具体的には、本発明の弾性ローラは、弾性層4の外周面14における振れを30μm以下に収めるため、丸棒素材20の軸方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下とするものであり、このことによって、弾性層の周面14における振れが30μmを越えてスペックアウトとなることによる不良率を大幅に低減することができる。そして、この場合、弾性層の振れに直接影響を与える軸端部2の周面12における振れを15μm以下とするのが好ましい。
【0020】
本発明は、丸棒素材を形成する際、前記ロール矯正機で矯正を行う工程において、丸棒素材の表面に軸方向のうねりを多少なりとも発生し、このうねりが大きい場合と小さい場合とで、弾性層の振れの大きさが異なることを発明者が見出したことによってなされたものであり、発明者による詳細な調査の結果、より具体的には、弾性層の振れを30μm以下とするためには、丸棒素材20における軸方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下とすることが必須であることが判ったものである。
【0021】
ここで、周方向のうねりとは、JIS B0610で定義されるものであり、測定方法もそれに従うものとする。また、振れとは、回転体をその中心軸線の周りに回したとき
その周面の最大半径と最小半径との差である。
【実施例】
【0022】
図1に示した構造の、芯金3の周囲に弾性層4を形成した非磁性現像ローラに関し、1ロットを500本として、1ロット中すべてのローラについて、芯金の本体部の長さ方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下としたロットを実施例として、1ロット中すべてのローラについて、芯金の本体部の長さ方向うねりの値が、Wcm(最大3波最大うねり)で6μmを越えるものとしたロットを比較例として、これらのロットについて、弾性層の平均振れを測定するとともに、振れが30μm以下のものを合格とする判定基準における不良率を計算し、それらのロット同士を比較した。表1にその結果を示す。
【0023】
なお、実験に供した現像ローラは、芯金本体部1の外径d0が8.0mm、軸端部2の外径d1は6.0mm、芯金3の全長lは330mm、弾性層4の研磨後の外径d2は20mmであった。なお、表1において、最大値、最小値、平均値は、各ロットにおけるそれぞれのローラについての測定値を統計処理した際の最大値、最小値、平均値を表す。
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る弾性ローラを示す断面図である。
【図2】丸棒素材を示す正面図である。
【図3】加工途中の芯金を示す正面図である。
【図4】金型内に配置した芯金を示す部分断面図である。
【図5】研磨途中の弾性ローラの断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 芯金本体部
2 軸端部
3 芯金
4、4R 弾性層
6a〜6d 支持部材
9 フランジ部
11 丸棒素材の周面
12 軸端の周面
14 弾性層の外周面
20 丸棒素材
21 チャック
22 金型
23 キャップ
24 チャック
25 幅広砥石
26 注入口
29 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の所定長さの両端部を機械加工して円形断面の軸端部を形成してなる芯金と、この芯金の周囲に弾性層を形成してなる弾性ローラにおいて、
前記芯金の丸棒素材部分の長さ方向うねりの値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下としてなる弾性ローラ。
【請求項2】
前記軸端部の周面における振れを15μm以下としてなる請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
請求項1もしくは2のいずれかに記載の弾性ローラを製造する方法において、
前記連続引き抜き加工により形成した丸棒素材の所定長さに加工されたものから、軸方向うねりが所定の値以下のものだけを選別し、選別された丸棒素材の周面を把持して両端部を機械加工して軸端部を形成し、次いで、両軸端部の周面を把持して弾性層の周面を研磨する弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記所定の値を、WCM(ろ波最大うねり)で6μm以下とする請求項3に記載の弾性ローラの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−287152(P2008−287152A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134037(P2007−134037)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】