説明

導電性樹脂組成物及びこれを用いた導電性塗料並びに導電性接着剤

【課題】導電性、耐熱性、耐水性、基材との密着性及び熱伝導性に優れる導電性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】レゾール型フェノール樹脂(A)と、ポリビニルアセタール樹脂(B)とからなる樹脂成分と、アスペクト比が10〜15,000であるカーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とからなる炭素成分とを含む導電性樹脂組成物であって、前記樹脂成分中のポリビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5〜30質量%であり、前記樹脂成分100質量部に対してカーボンナノチューブ(C)を20〜70質量部、カーボンブラック(D)を1〜15質量部それぞれ配合することを特徴とする導電性樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性樹脂組成物及びこの導電性樹脂組成物を含む導電性塗料並びに導電性接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品の軽量化、環境への配慮、及び製造コスト抑制の観点から、導電性樹脂組成物を使用した導電性塗料、及び導電性接着剤等が増加している。前記導電性塗料は、例えば、基材フィルムに対してスクリーン印刷され、キーボードやスイッチ等を構成するメンブレン回路として広く用いられている。また、前記導電性接着剤は、ハンダの代替品として用いられている。このような用途に用いられる導電性樹脂組成物は、例えば、溶剤に対し、バインダー又はマトリックス材料としての樹脂を溶解させてワニスとし、このワニスに対して、導電性材料を分散させることにより製造される。
【0003】
前記導電性樹脂組成物においては、導電性を付与するためのフィラー(導電性材料)として、金、銀、白金、パラジウム等の金属が用いられているが、導電性材料として金属を用いた場合には、高湿条件下でのデンドライトの発生による信頼性の低下、金属表面の酸化による導電性の低下、及び製造コストの上昇という問題が生じる。
【0004】
このような問題を解決することを目的として、炭素系導電性材料を用いた導電性樹脂組成物の研究が行われている。
例えば、特許文献1には、気相成長炭素繊維と、カーボンブラックと、熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂とを含有する導電性組成物が記載されている。
また、特許文献2には、特定の構造を有する気相法炭素繊維と、黒鉛質粒子及び/又は非晶質炭素粒子とを含む導電性組成物用炭素質材料を、樹脂成分に配合した導電性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−122785号公報
【特許文献2】特開2004−221071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1,2に記載される導電性樹脂組成物は、酸化や腐食に対して安定であり、また、金属系導電性材料を用いる場合に比べてコストを低く抑えることが可能である。しかしながら、炭素系導電性材料は熱硬化性樹脂への分散性、及び分散後の安定性が低いため、これを用いた導電性樹脂組成物は、導電性、耐熱性、耐水性、基材との密着性、及び熱伝導性が低下する傾向があり、改善が望まれている。
本発明は、上記問題点に鑑み、導電性、耐熱性、耐水性、基材との密着性、及び熱伝導性に優れる導電性樹脂組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記導電性樹脂組成物を含む導電性塗料及び導電性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、レゾール型フェノール樹脂と、ポリビニルアセタール樹脂とからなる樹脂成分に対して、特定のアスペクト比を有する繊維状炭素であるカーボンナノチューブと、粉末状炭素であるカーボンブラックとからなる炭素成分とを特定の割合で配合することにより、導電性、耐熱性、耐水性、基材との密着性、及び熱伝導性の全てに優れる樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0008】
[1] レゾール型フェノール樹脂(A)と、ポリビニルアセタール樹脂(B)とからなる樹脂成分と、アスペクト比が10〜15,000であるカーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とからなる炭素成分とを含む導電性樹脂組成物であって、前記樹脂成分中のポリビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5〜30質量%であり、前記樹脂成分100質量部に対してカーボンナノチューブ(C)を20〜70質量部、カーボンブラック(D)を1〜15質量部それぞれ配合することを特徴とする導電性樹脂組成物。
[2] レゾール型フェノール樹脂(A)は、重量平均分子量が1,000〜15,000であり、メチロール基当量が148〜344g/eqであり、ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重量平均分子量が30,000〜500,000であり、水酸基当量が90〜120g/eqである、[1]に記載の導電性樹脂組成物。
[3] ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基に対するレゾール型フェノール樹脂(A)のメチロール基のモル比(メチロール基/水酸基)が0.75/1〜15/1である、[1]又は[2]に記載の導電性樹脂組成物。
[4] カーボンナノチューブ(C)の平均繊維径が、0.5〜500nmである、[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
[5] 樹脂成分100質量部に対して炭素成分を25〜70質量部配合する、[1]〜[4]のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
[6] カーボンナノチューブ(C)が、黒鉛化触媒による熱処理を行ったものである、[1]〜[5]のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
[7] [1]〜[6]のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を含むことを特徴とする導電性塗料。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を含むことを特徴とする導電性接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導電性、耐熱性、耐水性、基材との密着性及び熱伝導性に優れる導電性樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、前記特性を備える導電性塗料及び導電性接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[導電性樹脂組成物]
本発明の導電性樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)と、ポリビニルアセタール樹脂(B)とからなる樹脂成分と、アスペクト比が10〜15,000であるカーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とからなる炭素成分とを含む導電性樹脂組成物であって、前記樹脂成分中のポリビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5〜30質量%であり、前記樹脂成分100質量部に対してカーボンナノチューブ(C)を20〜70質量部、カーボンブラック(D)を1〜15質量部それぞれ配合することを特徴とする導電性樹脂組成物である。
【0011】
<樹脂成分>
本発明における樹脂成分は、熱硬化性樹脂であるレゾール型フェノール樹脂(A)と、熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂(B)とからなる。
【0012】
(レゾール型フェノール樹脂(A))
レゾール型フェノール樹脂(A)としては、フィラーである炭素成分の分散安定性、塗料や接着剤として用いる際の塗布性、反応性、及び硬化収縮性の観点から、重量平均分子量が1,000〜15,000であるものが好ましく、3,000〜10,000であるものがより好ましく、5,000〜8,000であるものが更に好ましい。また、同様の観点から、メチロール基当量が148〜344g/eqであるものが好ましく、170〜310g/eqであるものがより好ましく、194〜270g/eqであるものが更に好ましい。
【0013】
このようなレゾール型フェノール樹脂(A)は、フェノール類とアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下、所定の温度で加熱反応させた後、常圧濃縮や真空濃縮を行い、取り出すことにより得ることができる。なお、本発明において用いるレゾール型フェノール樹脂(A)は、メチロール基を有しているため、この樹脂を加熱することにより架橋、硬化させることができる。
【0014】
レゾール型フェノール樹脂(A)の合成に用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、各種アルキルフェノール(例えば、各種ブチルフェノール、各種クレゾール、各種キシレノール)、各種フェニルフェノール、各種メトキシフェノール、1,3−ジヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、及びビスフェノールF等を挙げることができ、これらの中ではフェノールが好ましい。ここで、「各種」とは、各種構造異性体を意味する。
【0015】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド、及びベンズアルデヒド等を挙げることができ、これらの中では、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが好ましい。
前記フェノール類、アルデヒド類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
アルデヒド類とフェノール類とを反応させる際のアルデヒド類とフェノール類とのモル比(アルデヒド/フェノール)は、0.6/1〜3.0/1が好ましく、1.1/1〜2.5/1がより好ましい。
【0016】
レゾール型フェノール樹脂(A)の合成に用いる塩基性触媒としては、金属水酸化物、金属酸化物、金属塩及びアミン系化合物等を用いることができる。
金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、及び水酸化マグネシウム等を用いることができる。
金属酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム、及び酸化カリウム等を挙げることができる。
金属塩としては、酢酸亜鉛、及び酢酸鉛等を挙げることができる。
アミン系化合物としては、トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジメチルエタノールアミン、及びアンモニア等を挙げることができる。
本発明においては、アミン系化合物を塩基性触媒として用いて合成したレゾール型フェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0017】
本発明においては、レゾール型フェノール樹脂(A)として、分子内にカルボキシル基及び/又はグリシジル基を有する変性レゾール型フェノール樹脂を用いてもよい。変性方法としては、特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、レゾール型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基やメチロール基の一部に、カルボキシル基含有化合物及び/又はグリシジル基含有化合物を反応させて変性する方法を挙げることができる。
レゾール型フェノール樹脂(A)の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「ショウノール BKS−3823A」、住友ベークライト株式会社製「スミライトレジンPR」等を挙げることができる。
【0018】
(ポリビニルアセタール樹脂(B))
ポリビニルアセタール樹脂(B)としては、フィラーである炭素成分の分散安定性、塗料や接着剤として用いる際の塗布性の観点から、重量平均分子量が30,000〜500,000であるものが好ましく、50,000〜300,000であるものがより好ましく、70,000〜200,000であるものが更に好ましい。また、同様の観点から、水酸基当量が90〜120g/eqであるものが好ましく、100〜120g/eqであるものがより好ましく、105〜115g/eqであるものが更に好ましい。
【0019】
ポリビニルアセタール樹脂(B)は、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒド化合物でホルマール化することにより得ることができる。ホルマール化反応に用いるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、及びブチルアルデヒド等を挙げることができ、これらの中では、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒドが好ましい。すなわち、本発明において好ましいポリビニルアセタール樹脂(B)は、ポリビニルアルコール樹脂をアセトアルデヒドでホルマール化したポリビニルアセタール樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂をブチルアルデヒドでホルマール化したポリビニルブチラール樹脂である。なお、ポリビニルアセタール樹脂(B)の原料となるポリビニルアルコール樹脂においては、その一部にアセチル基が残存していてもよいが、アセチル基が残存している場合、アセチル基の残存率は5mol%以下であることが好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂(B)の市販品としては、例えば、電気化学工業株式会社製「デンカブチラール#3000」、積水化学工業株式会社製「エスレックB」等を挙げることができる。
前記ポリビニルアセタール樹脂(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
(レゾール型フェノール樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)との混合比)
前記レゾール型フェノール樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とは、樹脂成分中のポリビニルアセタール樹脂(B)の含有割合が5〜30質量%となるように混合する。樹脂成分中のポリビニルアセタール樹脂(B)の含有割合が5質量%未満では、導電性樹脂組成物の粘度が低くなるためフィラーの分散安定性が低下する。前記含有割合が30質量%を超えると導電性樹脂組成物の耐熱性が低下する。この含有割合は、6〜27質量%がより好ましく、7〜23質量%が更に好ましい。
また、前記ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基に対する前記レゾール型フェノール樹脂(A)のメチロール基のモル比(メチロール基/水酸基)は、0.75/1〜15/1が好ましく、1/1〜10/1がより好ましく、1/1〜6/1が更に好ましい。メチロール基と水酸基とのモル比が上記範囲内であれば、樹脂成分に対して炭素成分が分散しやすく、また、分散後の安定性も高くなる。
【0021】
<炭素成分>
本発明における炭素成分は、カーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とからなる。
【0022】
(カーボンナノチューブ(C))
本発明においては、繊維状炭素であるカーボンナノチューブ(C)として、アスペクト比(繊維径に対する繊維長さの比)が10〜15,000であるカーボンナノチューブ(C)を用いる。このカーボンナノチューブ(C)のアスペクト比が10未満であると、マトリックス内での導電パスが形成されにくくなり、導電性を向上させることが難しくなる。また、前記アスペクト比が15,000を超えると、繊維同士の凝集力が強くなり、樹脂成分に対する分散性が低下する。このカーボンナノチューブ(C)のアスペクト比は、20〜1,000がより好ましく、30〜500が更に好ましい。
カーボンナノチューブ(C)の平均繊維径としては、0.5〜500nmが好ましく、5〜300nmがより好ましく、10〜180nmが更に好ましい。平均繊維径が前記範囲内であれば、樹脂成分に対してカーボンナノチューブ(C)が分散しやすくなり、優れた導電性を備える導電性樹脂組成物を得ることができる。
なお、平均繊維径を求める方法に特に制限はないが、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)によりカーボンナノチューブのサンプルを無作為に100〜1,000個選択し、各サンプルの繊維径を測定し、平均を算出することにより求めることができる。アスペクト比についても同様に、走査型電子顕微鏡(SEM)により、カーボンナノチューブのサンプルを100〜1,000個選択して平均繊維径及び平均繊維長さを算出し、これらの値から計算により求めることができる。
【0023】
本発明においては、前記樹脂成分100質量部に対して、カーボンナノチューブ(C)を20〜70質量部配合する。カーボンナノチューブ(C)の配合量が20質量部未満の場合、十分な導電性を得ることができず、また、配合量が70質量部を超える場合、導電性樹脂組成物の粘度が高くるためフィラーの分散性が低下する。このカーボンナノチューブ(C)の配合量は、20〜65質量部がより好ましく、25〜60質量部が更に好ましい。
【0024】
本発明において用いるカーボンナノチューブ(C)としては、化学的気相成長法(CVD法)やアーク放電法等によって生成され、炭素原子が六角形状に規則正しく並んだグラフェンシートが円筒形に丸まったものが好ましい。
なお、本明細書においては、グラフェンシートの筒が一重であり、直径が1〜数nm、長さが1〜数μm程度であるものを単層カーボンナノチューブと称し、グラフェンシートの筒が同心状に何重も重なっており、直径が数nm〜百数十nmであるものを多層カーボンナノチューブと称す。また、グラフェンシートが略円錐状に丸まったものをカーボンナノホーンと称し、単層カーボンナノホーン及び多層カーボンナノホーンがある。本発明においては、これらをカーボンナノチューブと総称する。
【0025】
本発明において用いるカーボンナノチューブ(C)としては、気相成長法で作製された気相成長炭素繊維が好ましく、直線状の繊維形態を有し、屈曲指数の平均値が5〜15の剛直な繊維であることがより好ましい。屈曲指数は、気相成長炭素繊維の剛直性を示すものであって、顕微鏡等で撮影した多数の気相成長炭素繊維の屈曲していない直線部分の長さ(Lx)と直径(D)とからLx/Dで定義される。したがって、屈曲指数が小さい気相成長炭素繊維は短い間隔で折れ曲がることを示し、屈曲指数が大きい気相成長炭素繊維は直線部分が長く、屈曲していないことを示す。
また、炭素六角網面のグラファイトの1枚面(グラフェンシート)を巻いて筒状にした形状を有する多層カーボンナノチューブの中でも、屈曲部分の少ない剛直なマルチウォール気相成長炭素繊維を用いることが好ましい。
【0026】
このような性質を備えるカーボンナノチューブの製造方法としては、特に制限はなく、アーク放電法、気相成長法、レーザー・アブレーション法等を挙げることができ、これらの中では、気相成長法が好ましい。気相成長法は、ベンゼンやトルエン等の炭化水素を気相で熱分解し、気相成長炭素繊維を合成するもので、より具体的には、流動触媒法やゼオライト担持触媒法等が例示できる。気相成長炭素繊維は、例えばベンゼン、トルエン、天然ガス等の有機化合物を原料に、フェロセン等の遷移金属触媒の存在下で、水素ガスとともに800〜1,300℃程度で熱分解反応させることによって得ることができる。
なお、本発明に用いることができるカーボンナノチューブ(C)の市販品としては、例えば、昭和電工株式会社製「VGCF」、「VGNT」(登録商標)等を挙げることができる。
本発明においては、カーボンナノチューブの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0027】
前記方法により製造したカーボンナノチューブは、処理を行わずにそのまま樹脂成分に分散させてもよく、また、処理を行った後、樹脂成分に分散させてもよい。処理の方法としては、不活性ガス雰囲気下、低温度(800〜1,500℃)で処理する方法、又は不活性ガス雰囲気下、高温度(2,000〜3,000℃)で処理する方法を挙げることができるが、導電性樹脂組成物の導電性を向上させる観点から、高温度(2,000〜3,000℃)で処理を行う方法が好ましい。
前記カーボンナノチューブ(C)に対しては、樹脂への濡れ性、及び樹脂への分散性を向上させる観点から、硝酸、硫酸、塩酸又はこれらの混合酸等による酸処理を行ってもよく、空気存在下での熱処理による表面酸化処理を行ってもよい。
【0028】
本発明においては、導電性を向上させることを目的として、黒鉛化触媒の存在下、熱処理を行いカーボンナノチューブの結晶性(黒鉛化度)を向上させてもよい。黒鉛化触媒による熱処理の方法としては、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、2,000〜3,300℃でカーボンナノチューブに黒鉛化触媒を作用させる方法を挙げることができる。
【0029】
黒鉛化触媒としては、例えば、ホウ素、ホウ素酸化物(例えば、B22、B23、B43、B45等)、ホウ素オキソ酸(例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等)及びその塩、ホウ素炭化物(例えば、B4C、B6C等)、窒化ホウ素(BN)、その他のホウ素化合物を使用することができ、この中では、B4C、B6C等のホウ素炭化物、元素状ホウ素が好ましい。これらの黒鉛化触媒は、カーボンナノチューブに直接添加又は混合してもよく、黒鉛化触媒とカーボンナノチューブとを直接接触させずに、黒鉛化触媒を加熱して発生させた蒸気をカーボンナノチューブと接触させてもよい。
黒鉛化触媒の添加量は、カーボンナノチューブ100質量部に対して1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましく、1〜8質量部が更に好ましい。
【0030】
(カーボンブラック(D))
本発明においては、粉末状炭素として、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック等のカーボンブラックを用いる。この中では、導電性の観点から、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましく、アセチレンブラック、ケッチェンブラックがより好ましく、ケッチェンブラックが更に好ましい。
前記オイルファーネスブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社「ダイヤブラック」、東海カーボン株式会社製「シースト」等を挙げることができる。
また、アセチレンブラックの市販品としては、例えば、電気化学工業株式会社製「デンカブラック」を挙げることができる。
さらに、ケッチェンブラックの市販品としては、例えば、ライオン株式会社製「ECP 600JD」を挙げることができる。
【0031】
本発明においては、樹脂成分100質量部に対して前記カーボンブラック(D)を1〜15質量部配合する。カーボンブラック(D)の配合量が1質量部未満である場合、十分な導電性を備える導電性樹脂組成物を得ることができず、また、配合量が15質量部を超える場合、導電性樹脂組成物の粘度が高くなるため、フィラーを均一に分散させることが難しくなる。樹脂成分に対するカーボンブラック(D)の配合量は、2〜12質量部がより好ましい。
【0032】
カーボンブラック(D)は、処理を行わずにそのまま樹脂成分に分散させてもよく、また、処理を行った後、樹脂成分に分散させてもよい。処理の方法としては、カーボンナノチューブ(C)の処理方法と同様に、不活性ガス雰囲気下、低温度(800〜1,500℃)で処理する方法、又は不活性ガス雰囲気下、高温度(2,000〜3,000℃)で処理する方法を挙げることができるが、導電性樹脂組成物の導電性を向上させる観点から、高温度(2,000〜3,000℃)で処理を行うことが好ましい。
前記カーボンブラック(D)に対しては、樹脂への濡れ性、及び樹脂への分散性を向上させる観点から、硝酸、硫酸、塩酸又はこれらの混合酸等による酸処理や、空気存在下での熱処理による表面酸化処理を行ってもよい。
また、導電性向上、及び塗膜強度向上の観点から、前記黒鉛化触媒の存在下、2,000〜3,000℃で熱処理を行ってもよい。
【0033】
前記カーボンブラックは、予め粉砕等により粒度を調整してもよい。カーボンブラックの粉砕には、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ケージミル)や各種ボールミル(転動ミル、振動ミル、遊星ミル)、撹拌ミル(ビーズミル、アトライター、流通管型ミル、アニュラーミル)等が使用できる。また、微粉砕機のスクリーンミル、ターボミル、スーパーミクロンミル、ジェットミルでも条件を選定することによって使用可能である。
カーボンブラックの平均粒径は5nm〜100μmが好ましく、10nm〜50μmがより好ましく、50nm〜10μmが更に好ましい。平均粒径が前記範囲内であれば、樹脂成分に対してカーボンブラック(D)が分散しやすくなり、優れた導電性を備える導電性樹脂組成物を得ることができる。
平均粒径の測定方法に特に制限はなく、公知の方法により測定することができる。例えば、粒度分布計、粒径測定装置などの装置を用いて光散乱法、レーザードップラー法等により測定することができる。
【0034】
(樹脂成分と炭素成分との配合比)
前記樹脂成分100質量部に対する前記炭素成分の配合量は、25〜70質量部が好ましく、30〜65質量部がより好ましく、35〜60質量部が更に好ましい。前記樹脂成分に対する前記炭素成分の配合量が前記範囲内であれば、導電性樹脂組成物の導電性をより一層向上させることができ、また、導電性塗料等の粘度が高くなりすぎないため、フィラーを十分に分散させることができる。
【0035】
<その他の成分>
本発明の導電性樹脂組成物は、前記樹脂成分、炭素成分の他に、必要に応じて、カップリング剤、レベリング剤、分散剤、レオロジーコントロール剤、消泡剤、酸化防止剤、及び可塑剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
また、後述の導電性塗料、及び導電性接着剤の製造に使用する溶剤を含有してもよい。さらに、本発明の目的を害しない範囲で、前記樹脂成分に含まれるレゾール型フェノール樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とは異なる樹脂をその他の樹脂として用いてもよい。その他の樹脂を配合する場合、前記樹脂成分100質量部に対して15質量部以下が好ましい。また、前記炭素成分に含まれるカーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とは異なる炭素化合物をその他の炭素成分として用いてもよい。その他の炭素成分を配合する場合、樹脂成分100質量部に対して10質量部以下が好ましい。
【0036】
<導電性樹脂組成物の製造方法>
本発明の導電性樹脂組成物は、レゾール型フェノール樹脂(A)とポリビニルアセタール樹脂(B)とからなる樹脂成分と、カーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とからなる炭素成分とを所定の混合比で混合し、さらに、必要に応じてその他の成分を加え、これらを混合することにより製造することができる。混合に際しては公知の混合装置を使用することができる。各成分の配合順序に制限はない。
【0037】
[導電性塗料、導電性接着剤]
本発明の導電性塗料及び導電性接着剤は、前記本発明の導電性樹脂組成物を含むものであり、例えば、本発明の導電性樹脂組成物と溶剤と添加剤とを混合することにより製造することができる。
導電性塗料及び導電性接着剤の製造に用いる溶剤としては、一般的な溶剤を用いることができ、例えば、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、グリコールエーテル、グリコールエステル、及びテルペン化合物等を用いることができる。
これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の導電性塗料、導電性接着剤は、必要に応じて添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、可塑剤、乾燥調整剤、及び界面活性剤等を挙げることができる。
【0038】
導電性塗料及び導電性接着剤は、通常の塗料、接着剤と同様の方法で製造することができる。例えば、高速撹拌機を使用して樹脂成分を溶剤に溶解させてワニスを製造し、大ロットの場合には、前記ワニスと炭素成分とを配合してタンクミキサーでプレミキシングを行い、これをサンドミルで連続的に練肉して粘度を調整することにより製造することができる。また、小ロットの場合には、例えば、アトライターに炭素成分と前記ワニスとを直接に仕込んで練肉し、粘度の調整をすることにより製造することができる。なお、前記サンドミルやアトライターの代わりにボールミルや3本ロールを使用することもできる。
【0039】
導電性塗料及び導電性接着剤の基材への塗布方法としては、スクリーン印刷法、ディスペンサー法、ディッピング法、転写法、アプリケーター法、ハケ塗り法及びスプレー法がある。また、基板や電子素子に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、及び転写法がある。前記各塗布方法に応じて、導電性樹脂組成物と溶剤との比率を変化させ、導電性塗料及び導電性接着剤の粘度等を調整することが好ましい。
【0040】
本発明の導電性塗料及び導電性接着剤は、家電用、産業用、車両用、通信情報用、航空船舶用、宇宙・兵器用、時計・写真用、及び玩具用等の印刷配線電気回路等に好適に用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0042】
実施例、及び比較例で使用した材料は以下のとおりである。なお、各材料の物性は以下の方法により測定した。
(重量平均分子量)
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定を行った。測定装置としては、昭和電工株式会社製「Shodex GPC System−21(カラム:KF−802,KF−803、KF−805)」を用いた。測定条件は、カラム温度を40℃、溶出液をテトラヒドロフラン、溶出速度を1ml/分とした。重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算分子量(Mw)で表示した。
【0043】
(メチロール基当量)
フェノール500g、ベンゼン250ml、及びp−トルエンスルホン酸15gをそれぞれ分留管をセットしたフラスコ内に入れ、沸騰するまで加熱し、フラスコ内の水分を除去し、次いで冷却した。このフラスコ内に、低温で乾燥させることにより含有溶媒を除去した測定試料20gを投入し、フラスコを加熱して内容物を沸騰させ、これにより生成した水の量を計量し、水量を下記式に代入することによりメチロール基当量を算出した。なお、式中の「測定試料中の水分(重量%)」は、カールフィッシャー滴定法により測定することができる。
メチロール基当量(g/eq)=18×100/[生成した水量(ml)×100/20−測定試料中の水分(重量%)]
【0044】
(水酸基当量)
JIS K 0070に準拠して測定した。
(エポキシ当量)
JIS K 7236に準拠して測定した。
【0045】
<熱硬化性樹脂>
(a−1)レゾール型フェノール樹脂
昭和電工株式会社製「ショウノール BKS−3823A」
重量平均分子量 :6,500
メチロール基当量:258g/eq
(a−2)4,4’−メチレンビス[N,N−ビス(オキシラニルメチル)アニリン]
大連斉化化工有限公司社製「DTP−777」
分子量 :370
エポキシ当量:110g/eq
(a−3)ビスフェノール型エポキシ樹脂
三菱化学株式会社製「JER 1004」
重量平均分子量:5,200
エポキシ当量 :920g/eq
(a−4)ノボラック型フェノール樹脂
昭和電工株式会社製「ショウノール BRG−556」
重量平均分子量:1,200
水酸基当量 :108g/eq
【0046】
<熱可塑性樹脂>
(b−1)ポリビニルアセタール樹脂
電気化学工業株式会社製ポリビニルブチラール
「デンカブチラール #3000」
重量平均分子量:130,000
水酸基当量 :109g/eq
(b−2)フェノキシ樹脂
新日鉄化学株式会社製「YP−50S」
重量平均分子量:55,000
水酸基当量 :300g/eq
【0047】
<繊維状炭素>
(c−1)気相成長炭素繊維(多層カーボンナノチューブ)
昭和電工株式会社製「VGCF」
平均繊維径 :150nm
平均繊維長 :8μm
アスペクト比:53
(c−2)以下の手順で製造した黒鉛化処理気相成長炭素繊維
未処理の気相成長炭素繊維(c−1)を1,300℃で熱処理したものを原料とし、黒鉛化触媒(B4C)を気相成長炭素繊維100質量部に対し4質量部添加してアブソリュートミル(大阪ケミカル株式会社製)で1分間(回転数15,000r/min)混合した。混合物を黒鉛製のるつぼに入れ、抵抗加熱型触媒添加黒鉛化炉(株式会社倉田技研製)を用いて30分間黒鉛化処理を行った。
(c−3)ミルドカーボンファイバー
東レ株式会社製「MLD−30」
平均繊維径:7μm
平均繊維長:30μm
アスペクト比:4.3
【0048】
<粉末状炭素>
(d−1)ケッチェンブラック
ライオン株式会社製「ECP 600JD」
粒度:目開き75μmパス 100%
:目開き44μmパス 99.8%
一次粒子径:34.0nm
(d−2)人造黒鉛微粉末
昭和電工株式会社製「UF−G10」
粒子径:5μm
【0049】
<銀粉>
(e−1)銀粉
福田金属箔分工業株式会社製「Agc−A」
【0050】
<溶剤>
(f−1)ブチルセルソルブ
日本乳化剤株式会社製「ブチルグリコール」
(f−2)メタノール:
和光純薬工業株式会社製「メタノール」
【0051】
<硬化触媒>
(g−1)2−エチル−4−メチルイミダゾール
四国化成工業株式会社製「2E4MZ」
【0052】
[実施例1〜8、比較例1〜15]
各実施例及び比較例で用いた試料は、以下の方法により作製した。
すなわち、表1〜3に記載の組成に従い、混合物の合計重量が30gになるように各原料を混合し、混合物を自転・公転ミキサー「あわとり練太郎ARE−310」(株式会社シンキー製)を用いて2,000r/min(自転・公転)で30秒間撹拌した後、2,200r/min(公転)で30秒間撹拌した。この撹拌操作を4回実施し、得られた導電性樹脂組成物をガラス板上に膜厚が100μmとなるように塗布し、80℃で30分間加熱乾燥処理を行った後、さらに、180℃で30分間加熱して硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜の物性を下記方法により測定した。
なお、表1〜3における組成は「質量部」で示してあり、(b)成分の含有割合は「質量%」で示してある。メチロール基/水酸基の比は「モル比」で示してある。
【0053】
(導電性試験)
「ロレスタ−EP」(MCP−T360:株式会社ダイアインスツルメンツ製)、及びASPプローブを用いて4端針法により測定した。なお、この試験においては、比抵抗値が10.0×10-2Ω・cm以下である場合を合格とする。
(密着性試験)
硬化塗膜の表面に、碁盤目状に切れ目を入れ、1mm2の切れ目領域を100個設けた。この100個の切れ目領域上にセロハンテープを貼り付けた後、セロハンテープを引き剥がし、セロハンテープに付着せず基材から剥がれなかった切れ目領域の数を計測した。なお、この試験においては、基材から剥がれなかった切れ目領域の数が95個以上である場合を合格とする。
【0054】
(接着性試験)
幅14mm×長さ28mm×厚み9mmの銅/銅(C100P)基材を2枚用意し、接着面をそれぞれ#240研磨処理(JIS R6010によるP240まで研磨して仕上げたもの)を行った。2枚の基材について、それぞれ膜厚が100μmになるように導電性樹脂組成物を塗布し、80℃60分間乾燥させ、2枚の基材の塗布面を重ねるように張り合わせ、2kg/cm2の加重をかけて180℃で30分間接着を行った。この貼り合わせた2枚の銅基材をCAVER PRESS MODEL−Cにより圧縮せん断強度を測定した。なお、この試験においては、圧縮せん断強度が25MPa以上である場合を合格とする。
(熱伝導性試験)
導電性樹脂組成物をテトラフロロエチレンシート上に厚さが200μmになるように塗布し、80℃で60分間加熱乾燥させて溶剤を除去し、次いで、テトラフロロエチレンシートから剥がすことにより、導電性樹脂組成物の乾燥物を得た。さらに、この乾燥物を10mm×200mm×2mmの平板用金型内に入れ、180℃で30分間加熱加圧硬化することにより厚さ2mmの成形板を作製した。この成形板を京都電子工業株式会社製、ホットディスク法熱物性測定装置「TPS−2500s」を用いて熱伝導率の測定を行った。なお、この試験においては、熱伝導率が8.0W/k・m以上である場合を合格とする。
【0055】
(耐熱性試験)
200℃雰囲気下において、前記接着性試験と同様の方法で圧縮せん断強度の測定を行い、5MPa以上の強度を有しているもの合格(P)とし、そうでないものを不合格(F)とした。
(耐水性試験)
ガラス板上に膜厚が100μmとなるように導電性樹脂組成物を塗布し、80℃で30分間加熱乾燥処理を行った後、さらに、180℃で30分間加熱して硬化塗膜を得た。この硬化塗膜を100℃の蒸留水に96時間浸漬し、変色、変形(膨れ、剥離等)、及び溶出物の有無を確認し、変色、変形(膨れ、剥離等)及び溶出物がないものを合格(P)とし、そうでないものを不合格(F)とした。
【0056】
(塗膜外観試験)
硬化後の塗膜の外観を目視にて観察した。クラック、ス、膨れ、剥がれ等が生じていないものを合格(P)とし、そうでないものを不合格(F)とした。
(総合評価)
前記導電性試験、密着性試験、接着性試験、熱伝導性試験、耐熱性試験、耐水性試験、及び塗膜外観試験の全てにおいて合格基準を満たしたものを(P)、そうでないものを(F)として評価した。
各測定結果を表1〜3に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
<考察>
実施例1〜8の導電性樹脂組成物は、比抵抗値が10×10-2Ω・cm以下であり、圧縮せん断強度が30MPa以上であることから、優れた導電性、及び優れた基材との密着性を有していることがわかる。また、実施例1〜8に導電性樹脂組成物は、信頼性試験としての耐熱性試験、耐水性試験、塗膜外観試験においても不具合は見られなかった。
【0061】
比較例1では、樹脂成分中の熱可塑性樹脂の量が4.5質量%と少なく、炭素成分の分散が不十分であったため、抵抗値が高くなると共に、硬化後の塗膜にス、クラックが生じたものと考えられる。
比較例2では、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂を用いたため、抵抗値が高くなると共に、硬化後の塗膜にス、クラックが生じたものと考えられる。
比較例3では、ポリビニルアセタール樹脂の配合量が多いため、耐熱性が低下したものと考えられる。
【0062】
比較例4では、熱硬化性樹脂として、4官能エポキシ樹脂(a−2)とノボラック型フェノール樹脂(a−4)とを用いたため、炭素成分の分散が不十分になり、抵抗値が高くなると共に、硬化後の塗膜にス、クラックが生じたものと考えられる。
比較例5では、熱硬化性樹脂として、高分子量ビスフェノール型エポキシ樹脂(a−3)とノボラック型フェノール樹脂(a−4)とを用いたため、炭素成分の分散が不十分となり、抵抗値が高くなると共に、耐熱性が低下したものと考えられる。
比較例6では、レゾール型フェノール樹脂を使用せず、ポリビニルアセタール樹脂だけを用いたため、耐熱性、耐水性が低下したものと考えられる。
また、比較例7では、レゾール型フェノール樹脂及びポリビニルアセタール樹脂を使用せず、フェノキシ樹脂を用いたため、耐熱性及び耐水性が低いものであったと考えられる。
【0063】
比較例8では、粉末状炭素を使用していないため、抵抗値が2.1×10-1Ω・cmと高い。また、比較例9では、繊維状炭素を使用していないため、抵抗値が1.4×10-0Ω・cmと高い。
比較例10では、繊維状炭素の配合量が少ないため、抵抗値が4.4×10-1Ω・cmと高い値を示した。
比較例11,12では、粉末状炭素の配合量が多いため、導電性樹脂組成物の粘度が高くなり、塗布による塗膜の形成が困難であった。
【0064】
比較例13では、繊維状炭素としてアスペクト比が4.3であるミルドファイバーを使用したため、抵抗値が1.0×10-0Ω・cmと高くなった。
比較例14では、粉末状炭素として人造黒鉛粉末を用いたため、抵抗値が1.8×10-1Ω・cmと高くなった。
比較例15では、導電性材料として、炭素系導電性材料ではなく、金属系導電性材料(銀粉)を用いたため、耐水試験後に変色・膨れ・溶出が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の導電性樹脂組成物は、導電性、耐熱性、耐水性、基材との密着性及び熱伝導性に優れるため、導電性塗料、導電性接着剤として好適に用いることができる。また、本発明の導電性塗料及び導電性接着剤は、集積回路、電子部品、光学部品や各種制御部品等の工業製品、配線材料や各機器との接続材料、各種機器の帯電防止材料、電磁波シールド、静電塗装等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾール型フェノール樹脂(A)と、ポリビニルアセタール樹脂(B)とからなる樹脂成分と、アスペクト比が10〜15,000であるカーボンナノチューブ(C)とカーボンブラック(D)とからなる炭素成分とを含む導電性樹脂組成物であって、
前記樹脂成分中のポリビニルアセタール樹脂(B)の含有量が5〜30質量%であり、前記樹脂成分100質量部に対してカーボンナノチューブ(C)を20〜70質量部、カーボンブラック(D)を1〜15質量部それぞれ配合することを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
レゾール型フェノール樹脂(A)は、重量平均分子量が1,000〜15,000であり、メチロール基当量が148〜344g/eqであり、ポリビニルアセタール樹脂(B)は、重量平均分子量が30,000〜500,000であり、水酸基当量が90〜120g/eqである、請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基に対するレゾール型フェノール樹脂(A)のメチロール基のモル比(メチロール基/水酸基)が0.75/1〜15/1である、請求項1又は2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
カーボンナノチューブ(C)の平均繊維径が、0.5〜500nmである、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂成分100質量部に対して炭素成分を25〜70質量部配合する、請求項1〜4のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項6】
カーボンナノチューブ(C)が、黒鉛化触媒による熱処理を行ったものである、請求項1〜5のいずれかに記載の導電性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を含むことを特徴とする導電性塗料。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電性樹脂組成物を含むことを特徴とする導電性接着剤。

【公開番号】特開2012−149161(P2012−149161A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8577(P2011−8577)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度経済産業省「戦略的基盤技術高度化支援事業(耐熱導電性接着剤の開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】