説明

導電性研磨パッドおよびその製造方法

【課題】研磨時のスクラッチを低減できる導電性研磨パッドおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】研磨パッド用の基材(A)に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)が付着してなる導電性部材(C)を有する導電性研磨パッド。研磨パッド用の基材(A)にアミノ基を2以上有する化合物(D)が付着してなる基材(A’)に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)が付着してなる導電性部材(C)を有する導電性研磨パッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性研磨パッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路(LSI)に代表される半導体デバイスは、高集積化・高速化のため、配線の微細化と多層化が進み、各層形成時の表面平坦性として分子〜原子レベルの平坦性が要求されるようになっている。
この多層配線構造を高い生産性を持って形成する上でキーとなっている技術が、ケミカルメカニカルポリッシング(以下CMPと記す。)と称される研磨(平坦化)技術である。すなわち、半導体のCMP技術とは、半導体製造工程で発生するウエハ上の材料(シリコン酸化物等の絶縁性薄膜や配線用の金属薄膜等)の不用な凹凸を、化学研磨剤や研磨パッド等による化学的作用、機械的研磨作用の併用により除去して平坦化する技術である。
【0003】
一方で、近年、層間絶縁膜(以下Low−k膜と記す。)のさらなる低誘電率化を達成するために、従来のシリコン酸化膜にカーボンをドープする方法、Low−k膜をポーラスにする方法等が検討されている。しかし、いずれの方法にしても、Low−k膜の機械的強度や化学的安定性が低下し、そのために、CMP工程において、配線材がLow−k膜から剥離してしまう等の問題が発生する。また、CMP工程においては、(銅)配線のスクラッチ(研磨による引っかき傷)も問題となっている。
このことから、CMP工程においては「低圧研磨」という要求が強く、配線のスクラッチ低減等とあわせて、CMP技術のさらなる高度化が急務となっている。
【0004】
「低圧研磨」を実現するために、現在、積極的に検討が進められているのが、電気化学的な作用を利用する方法、いわゆる電解研磨である。
一般に、現状のCMPでは、研磨速度(生産性に対応)が研摩圧力(研磨ヘッド(ウエハ)を定盤(定盤上に貼り付けられた研磨パッド)に押し付ける圧力)にほぼ比例するため、「低圧化」は生産性低下につながる。
電解研磨は、配線層(銅膜)において、銅膜に電圧を印加することにより銅をイオン化、電気化学的にエッチングする加工方法であり、その研摩速度は電圧によって制御され、研摩圧力にはほとんど依存しない。そのため、「低圧化」による生産性の低下を補い、生産性を向上させつつ、「低圧研摩」を行うことが可能となる。
電解研摩の方式としては、電解研摩のみを実施する方式や、電解研摩とCMPを同時に実施する方式等が提案されている。電解研摩のみを実施した場合では、配線材の除去はできても、平坦化はほとんど期待できないこと、電解研磨に加えてCMPを別工程で実施する場合には装置が大型化する等の問題があることから、電解研摩とCMPを同時に実施するエレクトロケミカルメカニカルポリッシング(以下ECMPと記す。)の実用化が期待されている。
【0005】
電解研摩では、ウエハ表面の銅配線材をアノードとして、何らかの方法でカソードを設け、何らかの方法でその間に直流電流を通電する必要がある。電解研摩では、装置の構造的な問題などから、CMP研摩装置の定盤(プラテン)をカソードとするケースが多い。この場合、主にウエハ表面の銅配線材(アノード)とプラテン(カソード)との間で、電解研磨のための電極間ギャップが形成されることになり、研摩パッドがその間に位置することになる。しかし、従来の研摩パッドは、通常、樹脂等の絶縁材料(通常1mm〜3mmの厚さを有する)で構成されているため、従来の研摩パッドでは電極間ギャップが大きすぎて、実用的に電解研摩を実施することはできない。
このため、例えば、絶縁体である研磨パッドに複数の貫通孔を設け、アノード(配線材)とカソード(プラテン)に接触するように電解液を満たして通電する方法(例えば、特許文献1)が提案されている。
また、研磨パッドそのものを導電化する試み(例えば、特許文献2)も成されている。研磨パッドそのものを導電化する方法としては、金属系の導電物質やカーボンブラック、導電性ポリマー等の導電物質を研磨パッド基材に物理的に混ぜ込む方法や、導電性繊維で研磨パッドを作製する方法が例示されている。
【特許文献1】特開2006−332526号公報
【特許文献2】特開2004−111940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、絶縁体である研磨パッドに複数の貫通孔を設けた場合、研磨面を平坦化する効果がほとんど期待できない。そのため、電解研磨とCMP(平坦化)を同時に実施することは困難である。
また、導電物質を研磨パッド基材に物理的に混ぜ込む方法の場合、CMP工程において、導電物質に起因して(銅)配線のスクラッチが生じやすい問題がある。また、研磨中に導電物質が脱落する場合もある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、研磨時のスクラッチを低減できる導電性研磨パッドおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第一の態様は、研磨パッド用の基材(A)に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)が付着してなる導電性部材(C)を有する導電性研磨パッドである。
本発明の第二の態様は、研磨パッド用の基材(A)にアミノ基を2以上有する化合物(D)が付着してなる基材(A’)に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)が付着してなる導電性部材(C)を有する導電性研磨パッドである。
本発明の第三の態様は、研磨パッド用の基材(A)を、アミノ基を2以上有する化合物(D)を含有する液に浸漬し、得られた基材(A’)を、導電性ポリマー(B)を含有する液に浸漬して導電性部材(C)を得る工程を有することを特徴とする導電性研磨パッドの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、研磨時のスクラッチを低減できる導電性研磨パッドおよびその製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
[研磨パッド用の基材(A)]
研磨パッド用の基材(A)としては、研磨パッドそのものであってもよく、その前駆体(研磨パッド基材用の原料等)であってもよい。
研磨パッド用の基材(A)として研磨パッドそのものを用いる場合、該研磨パッドとしては、従来公知のものを利用できる。
研磨パッドの形態としては特に制限はなく、たとえば不織布タイプ、プレートタイプ(発泡層を含まないタイプ)、発泡タイプ等が例示できる。特に、配線スクラッチ低減に効果的であることから、発泡タイプが好適である。
研磨パッドの前駆体としては、研磨パッド基材用の原料が挙げられ、その具体例としては、以下に記す研磨パッド用の基材(A)を構成する材料と同様の材料を例示することができる。
研磨パッド用の基材(A)を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエーテルエステル等のポリエステル;ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等のポリオール;該ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン等が例示できる。特に前記ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタンフォームが好適である。
研磨パッド用の基材(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、例示した樹脂以外の化合物を含有してもよい。
研磨パッド用の基材(A)は、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填材、滑剤、可塑剤、安定剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0010】
[基材(A’)]
基材(A’)は、前記研磨パッド用の基材(A)に、アミノ基を2以上有する化合物(D)が付着してなるものである。かかる基材(A’)は、化合物(D)を介して導電性ポリマー(B)が付着しやすい。
化合物(D)としては、ジアミノメタン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノヘキサン、ジアミノヘプタン、ジアミノオクタン、ジアミノノナン、ジアミノドデカン、ジアミノドデカン等のアルキルジアミン;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン等の芳香族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン;3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等を例示することができる。
【0011】
基材(A’)は、たとえば、化合物(D)を含有する液(以下、処理液(1)という。)に、研磨パッド用の基材(A)を浸漬することにより作製できる。
処理液(1)としては、化合物(D)が液体の場合は、該化合物(D)をそのまま用いてもよく、該化合物(D)を溶剤で希釈したものを用いてもよい。
化合物(D)が固体または粘稠液体の場合は、化合物(D)を溶剤に溶解させたものを処理液(1)として用いる。
該溶剤としては、水;水と、水に可溶な有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。有機溶媒が「水に可溶」であるとは、水と混合した際に均一な溶液を形成することを意味する。
水に可溶な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、エチルイソブチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル等のエチレングリコール類;プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のプロピレングリコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン等のピロリドン類等が挙げられる。これらは何れか一種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
処理液(1)の溶剤としては、水、または水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。
【0012】
処理液(1)の使用量は、浸漬させる基材(A)100質量部に対して、当該処理液(1)中の化合物(D)の量が1質量部以上となる量が好ましく、5質量部以上となる量がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。化合物(D)の量が1質量部以上であると、基材(A)に充分な量の化合物(D)が付着する。
また、処理液(1)の使用量は、浸漬させる基材(A)100質量部に対して、当該処理液(1)中の化合物(D)の量が10000質量部以下となる量が好ましく、5000質量部以下となる量がより好ましい。
処理液(1)中の化合物(D)の含有量は、処理液(1)の総質量(100質量%)に対し、1〜100質量%が好ましい。該範囲内であると、効率的に基材(A)に化合物(D)を付着させることができる。
【0013】
浸漬は室温で行ってもよく、浸漬と同時に加熱処理を行ってもよい。加熱処理を行うことによって、研磨パッド用の基材(A)への化合物(D)の付着を早めることができる。
加熱処理の温度、つまり浸漬温度は、20℃以上が好ましい。
浸漬温度の上限は、研磨パッド用の基材(A)の材料の種類に依存するため一概には決められず、該材料に応じて適宜決定すればよい。研磨パッド用の基材(A)が変形または変質が起こらない温度以下が好ましい。
【0014】
処理液(1)に研磨パッド用の基材(A)を浸漬する時間(浸漬時間)は、所望の導電レベル等により適宜調整すればよい。浸漬時間を調整することにより、研磨パッド用の基材(A)への化合物(D)の付着量を調整できる。研磨パッド用の基材(A)への化合物(D)の付着量を増やすほど、導電性ポリマー(B)の付着量を増やすことができる。
処理液(1)に基材(A)を浸漬する時間は、通常、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。また、処理液(1)に基材(A)を浸漬する時間は、300分以下が好ましく、120分以下がより好ましい。
【0015】
浸漬後、得られた基材(A’)の洗浄、乾燥等を行ってもよい。
乾燥温度、乾燥時間等の乾燥条件は、研磨パッド用の基材(A)の材料の種類に依存するため一概には決められず、該材料に応じて適宜決定すればよい。研磨パッド用の基材(A)が変形または変質が起こらない条件とすることが好ましい。
【0016】
上記のようにして作製された基材(A’)は、研磨パッド用の基材(A)と化合物(D)とが付着したものである。基材(A’)は、化合物(D)によって、導電性ポリマー(B)がより付着しやすくなっている。
【0017】
[スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)]
本発明に用いられる導電性ポリマー(B)は、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する。
本発明に用いられる導電性ポリマー(B)は、体積抵抗率が1000Ω・cm以下であることが好ましく、500Ω・cm以下であることがより好ましい。
導電性ポリマー(B)は、スルホン酸基(−SOH)、カルボキシ基(−COOH)を、それぞれ、イオンの状態(−SO、−COO)で有していてもよい。
【0018】
導電性ポリマー(B)が有するスルホン酸基および/またはカルボキシ基の量は、特に限定されない。導電性を考慮すると、導電性ポリマー(B)中、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する構成単位の割合(以下、スルホン酸基および/またはカルボン酸基の導入割合ということがある。)が、該前記導電性ポリマー(B)を構成する全構成単位に対し、20モル%以上であることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。該導入割合が20モル%以上であると、当該導電性ポリマー(B)の水等の溶剤への溶解性が良好となる。そのため、導電性ポリマー(B)を基材(A)に付着させやすくなり、得られる導電性研磨パッドが充分な導電性を発現出来るものとなる。
スルホン酸基および/またはカルボン酸基の導入割合は、たとえば当該ポリマーの合成に用いる全単量体のうち、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する単量体の割合を調節することにより調節できる。
また、導電性ポリマー(B)として市販のものを用いる場合は、イオンクロマトグラフィー、中和滴定等により該導入割合を確認することができる。
【0019】
導電性ポリマー(B)としては、下記式(1)〜(3)で表される構成単位からなる群から選択される少なくとも1種を有するポリマーが好ましい。
【0020】
【化1】

[式(1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OR10、−R10、ハロゲン原子、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R10は、炭素数1〜24のアルキル基であり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレンまたは炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜Rのうち少なくとも一つは、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。]
【0021】
【化2】

[式(2)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OR10、−R10、ハロゲン原子、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R10は、炭素数1〜24のアルキル基であり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレンまたは炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜Rのうち少なくとも一つは、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。]
【0022】
【化3】

[式(3)中、R〜R10は、各々独立に、水素原子、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−OR10、−R10、ハロゲン原子、−N(R12、−NHCOR12、−OH、−O、−SR12、−OR12、−OCOR12、−NO、−COOH、−R11COOH、−COOR12、−COR12、−CHOまたは−CNであり、R10は、炭素数1〜24のアルキル基であり、R11は、炭素数1〜24のアルキレン基、炭素数1〜24のアリーレンまたは炭素数1〜24のアラルキレン基であり、R12は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数1〜24のアリール基または炭素数1〜24のアラルキル基であり、R〜R10のうち少なくとも一つは、−SO、−SOH、−R11SO、−R11SOH、−COOHまたは−R11COOHである。]
【0023】
式(1)〜(3)中、R10としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基またはエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0024】
導電性ポリマー(B)中、式(1)〜(3)で表される構成単位の割合は、導電性ポリマー(B)を構成する全構成単位(100モル%)に対し、20〜100モル%が好ましい。
導電性ポリマー(B)は、式(1)〜(3)で表される繰り返し単位を10以上有することが好ましい。
導電性ポリマー(B)は、式(1)〜(3)で表される構成単位以外の他の構成単位を有していてもよい。該他の構成単位としては、式(1)〜(3)で表される構成単位を誘導する単量体と共重合可能な単量体から誘導されるものであればよく、特に限定されない。
【0025】
導電性ポリマー(B)の質量平均分子量は、5000〜1000000が好ましく、5000〜20000がより好ましい。導電性ポリマー(B)の質量平均分子量が5000以上であれば、導電性、成膜性および膜強度に優れる。導電性ポリマー(B)の質量平均分子量が1000000以下であれば、溶剤への溶解性に優れる。
また、導電性ポリマー(B)は、分子量分布が、1〜30であることが好ましく、1〜10であることがより好ましい。該分子量分布は、(質量平均分子量/数平均分子量)により求められる値である。
導電性ポリマー(B)の質量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される(ポリエチレングリコール換算)。
導電性ポリマー(B)は、従来公知の方法により合成してもよく、市販の導電性ポリマーのなかから、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有するものを適宜選択して用いてもよい。
【0026】
[導電性部材(C)]
導電性部材(C)は、前記研磨パッド用の基材(A)または基材(A’)に、導電性ポリマー(B)が付着したものである。
導電性部材(C)において、導電性ポリマー(B)の付着量は、所望の導電レベル等により適宜調整すればよい。好ましくは基材(A)または基材(A’)に対して0.01 〜20質量%であり、0.05〜20質量%がより好ましい。導電性ポリマー(B)の量が0.01質量%以上であると、導電性が充分に向上し、20質量%以下であると、導電性部材(C)の柔軟性が向上する。
【0027】
導電性部材(C)は、たとえば、導電性ポリマー(B)を含有する液(以下、処理液(2)という。)に、研磨パッド用の基材(A)または基材(A’)を浸漬することにより作製できる。
処理液(2)は、導電性ポリマー(B)を溶剤に溶解または分散させることにより調製できる。
該溶剤としては、水;水と、水に可溶な有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。水に可溶な有機溶媒としては、前記と同様のものが挙げられる。
処理液(2)の溶剤としては、水、または水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。
【0028】
処理液(2)の使用量は、浸漬させる基材(A)または基材(A’)100質量部に対して、当該処理液(2)中の導電性ポリマー(B)の量が0.01質量部以上となる量が好ましく、1質量部以上となる量がより好ましく、10質量部以上となる量がさらに好ましい。化合物(B)の量が0.01質量部以上であると、基材(A)または基材(A’)に充分な量の導電性ポリマー(B)が付着する。
また、処理液(2)の使用量は、浸漬させる基材(A)または基材(A’)100質量部に対して、当該処理液(2)中の導電性ポリマー(B)の量が200質量部以下となる量が好ましく、150質量部以下となる量がより好ましい。
処理液(2)中の導電性ポリマー(B)の含有量は、処理液(2)の総質量(100質量%)に対し、0.01〜20質量%が好ましい。導電性ポリマー(B)の含有量を該範囲とすることで、効率的に基材(A)または基材(A’)の導電性を向上させることができる。
【0029】
処理液(2)のpHは、基材(A)または基材(A’)を浸漬する前で、5.0以下が好ましく、3.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。処理液(2)のpHが3.0以下であると、得られる導電性研磨パッドの導電性が向上する。
pHの調整方法としては、例えば、水溶液中で酸性を呈する化合物を添加する方法が挙げられる。該化合物用としては、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸;酢酸、蟻酸等の有機カルボン酸;トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸が挙げられる。
処理液(2)には、必要に応じて、酸性染料による染色に用いられる添加剤(たとえば均染剤、無機塩等)を添加してもよい。
【0030】
浸漬は室温で行ってもよく、浸漬と同時に加熱処理を行ってもよい。加熱処理を行うことによって、基材(A)または基材(A’)への導電性ポリマー(B)の付着を早めることができる。
処理液(2)の温度、つまり浸漬温度は、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。処理液(2)の温度が30℃以上であると、導電性材料の耐水性が向上する。該温度が高いほど、得られる導電性研磨パッドからの導電性ポリマーの溶出が抑制され、耐久性に優れたものとなる。
また、処理液(2)の温度は、130℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましい。導電性ポリマー(B)の液の温度が130℃以下であれば、基材(A)の変形または変質を防止できる。
処理液(2)の加熱方法は、特に限定されず、従来公知の方法を利用できる。
処理液(2)に基材(A)または基材(A’)を浸漬する時間(浸漬時間)は、5分以上が好ましく、10分以上がより好ましく、60分以上がさらに好ましい。また、処理液(2)に基材(A)または基材(A’)を浸漬する時間は、300分以下が好ましく、120分以下がより好ましい。
【0031】
浸漬後、得られた導電性部材(C)の洗浄、乾燥等を行ってもよい。
乾燥温度、乾燥時間等の乾燥条件は、研磨パッド用の基材(A)の材料の種類に依存するため一概には決められず、該材料に応じて適宜決定すればよい。研磨パッド用の基材(A)が変形または変質が起こらない条件とすることが好ましい。
乾燥の方法に制限は無く、熱風乾燥機、ホットプレート、真空乾燥機等を例示することが出来る。
好ましい乾燥温度は、40〜180℃である。
【0032】
導電性部材(C)は、当該導電性部材(C)を水に浸漬させた際に、水中への溶出物が全く無いことが好ましい。
水中への溶出物の有無は、水の着色度合いを目視することにより、容易に確認できる。
【0033】
<導電性研磨パッド>
本発明の導電性研磨パッドは、上記導電性部材(C)を有する。
導電性研磨パッドにおいて、導電性部材(C)の含有量に制限は無いが、該導電性研磨パッドの総質量に対し、導電性部材(C)の割合が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。該割合の上限は、特に制限はなく、100質量%であってもよい。
【0034】
本発明の導電性研磨パッドは、さらに、必要に応じて、各種密着性向上剤、架橋剤、バインダーポリマーを有していてもよい。
密着性向上剤としては、たとえばシランカップリング剤が挙げられる。
架橋剤としては、たとえばエポキシ化合物、イソシアネート、メラミン、カルボジイミド、ジオール化合物等が挙げられる。
バインダーポリマーとしては、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系樹脂のエマルション、水、有機溶剤への溶解タイプの樹脂が用いられる。
導電性研磨パッドがこれらの成分を有するものである場合、該導電性研磨パッドは、たとえば前記導電性部材(C)の作製時に使用する処理液(2)中に、導電性ポリマー(B)とともに当該成分を含有させることにより得ることができる。
【0035】
本発明の導電性研磨パッドにおいては、さらに、前記研磨パッド用の基材(A)または基材(A’)に、導電性ポリマー(B)をバインダーとして、前記導電性ポリマー(B)以外の導電性化合物(E)が付着していることが好ましい。これにより、研磨パッド用の基材(A)の“物性”をほとんど損なうことなく、導電性研磨パッドの導電性をさらに向上させることができる。ここで、研磨パッド用の基材(A)の“物性”を損なわないとは、研磨時の配線スクラッチ発生度合いが、本発明における導電性研磨パッドを用いた場合と、本発明における導電性研磨パッドを用いない場合(導電化していない従来の研磨パッドを用いた場合)で差が無いことを意味する。
【0036】
導電性化合物(E)としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、従来公知の導電性化合物のなかから適宜選択すればよい。
本発明に好適な導電性化合物(E)としては、カーボンナノチューブ等を例示することができる。
【0037】
研磨パッド用の基材(A)に、導電性ポリマー(B)をバインダーとして導電性化合物(E)を付着させるための方法としては、たとえばカーボンナノチューブを例に挙げて説明すると、以下の工程1および2を有する方法を例示することができる。
(工程1):
まず、カーボンナノチューブと導電性ポリマー(B)を水等の溶剤に分散させて分散液を得る。
これにより、カーボンナノチューブに導電性ポリマー(B)が吸着し、導電性ポリマー(B)の界面活性剤的な効果によってカーボンナノチューブが水中でも安定に存在できるようになる。この際、カーボンナノチューブは、可能な限り小さく解砕することが望ましい。カーボンナノチューブは、単体では疎水性が強く、水中では凝集塊を形成するが、例えば、これに導電性ポリマー(B)を“必要量”添加し、湿式メディアミルや超音波乳化装置等によりカーボンナノチューブの凝集塊を解砕することにより、カーボンナノチューブがナノサイズで乳化された水溶液を得ることができる。これにより、導電物質を研磨パッド基材に物理液に混ぜ込んだ場合等において懸念される配線スクラッチの問題が解消できる。
ここで、導電性ポリマー(B)の“必要量”とは、解砕されたカーボンナノチューブが、その状態で水中に安定に存在するために必要な量であり、適宜、決定される。
カーボンナノチューブの量は、必要な導電レベルにより、適宜決定される(カーボンナノチューブの量が増えると、導電性がより高くなる)。
(工程2):
次に、工程1で得られたカーボンナノチューブの分散液を、既述した処理液(2)と同様に取り扱い、導電性部材(C)を作製する。
【0038】
<導電性研磨パッドの製造方法>
本発明の導電性研磨パッドの製造方法は、研磨パッド用の基材(A)を、アミノ基を2以上有する化合物(D)を含有する液に浸漬し、得られた基材(A’)を、導電性ポリマー(B)を含有する液に浸漬して導電性部材(C)を得る工程を有する。
【0039】
本発明の製造方法において、導電性部材(C)を得る工程は、具体的には、たとえば、下記工程(a)および(b)により実施できる。
工程(a):化合物(D)を含有する液に、研磨パッド用の基材(A)を浸漬し、基材(A’)を得る工程。
工程(b):導電性ポリマー(B)を含有する液に、研磨パッド用の基材(A)または基材(A’)を浸漬し、導電性部材(C)を得る工程。
【0040】
工程(a)は、前記本発明の導電性研磨パッドの基材(A’)の説明で挙げた基材(A’)の作製方法と同様にして実施できる。
また、工程(b)は、前記本発明の導電性研磨パッドの導電性部材(C)の説明で挙げた導電性部材(C)の作成方法において、処理液(2)に基材(A’)を浸漬する場合と同様にして実施できる。
上記工程により、基材(A’)と、該基材(A’)に付着した、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)とからなる導電性部材(C)が得られる。
【0041】
本発明の製造方法は、上記導電性部材(C)を得る工程以外の他の工程を有していてもよい。該他の工程としては、たとえば、研磨パッド用の基材(A)として研磨パッド基材用の原料を用いる場合、該原料に導電性ポリマー(B)を、既述の方法で付着させたのち、成形する工程を経て、導電性部材(C)を得ることができる。
【0042】
上記本発明の製造方法によれば、化合物(D)を介して導電性ポリマー(B)を付着させることにより、研磨パッド用の基材(A)の“物性”をほとんど損なうことなく、導電性研磨パッドを得ることができる。
また、本製造方法によれば、研磨パッド用の基材(A)を、化合物(D)を含有する液に浸漬し、ついで導電性ポリマー(B)の液に浸漬するだけであるため、導電性研磨パッドを低コストで、かつ簡便に製造することができる。
【0043】
研磨パッド用の基材(A)の“物性”をほとんど損なうことなく導電性研磨パッドを製造できる製造方法として、上述した製造方法以外に、前記研磨パッド用の基材(A)または基材(A’)に、導電性ポリマー(B)をバインダーとして、前記導電性ポリマー(B)以外の導電性化合物(E)を付着させる工程を有する製造方法が挙げられる。
該方法は、前記本発明の導電性研磨パッドの説明で挙げた「研磨パッド用の基材(A)に、導電性ポリマー(B)をバインダーとして導電性化合物(E)を付着させるための方法」と同様にして実施できる。
【0044】
本発明の導電性研磨パッドは、半導体製造のCMP工程等において、従来公知の研磨パッドと同様に使用できる。
本発明の導電性研磨パッドを用いる研磨方法の一例として、以下の方法が挙げられる。
(方法1):研磨剤スラリーを供給しながら、ウエハを研磨パッドに押付けて、該ウエハの表面を研磨(平坦化)する研磨(平坦化)方法。
(方法2):研磨剤スラリーまたは電解液を供給しながら、ウエハを研磨パッドに押付けて、該ウエハと該導電性研磨パッドとの間に電圧を印加して、電解作用を行わせながら該ウエハを研磨(平坦化)する研磨(平坦化)方法。
方法1は一般的なCMPであり、方法2はいわゆるECMPである。
これらの研磨方法において、研磨パッドとして本発明の導電性研磨パッドを用いることにより、現行のCMP研磨パッドや導電性研磨パッドを用いた場合と比較して同等以上の配線スクラッチ低減レベルを達成しながら、CMPまたはECMPを実施することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
ここで、物性測定及び評価方法を以下に示す。
(表面抵抗値)
研磨パッドを70℃で10分間乾燥させた後、ハイレスタUP MCP−HT450(ダイアインスツルメンツ社製)を用い、2探針法にて、表面抵抗値を測定した。
(体積抵抗値)
導電性ポリマー(B)0.1質量部を赤外線吸収スペクトル測定用の錠剤成形機にて錠剤に成形したのちに、ロレスタGP MCP−T610(ダイアインスツルメンツ社製)を用い、4探針法にて、体積抵抗値を測定した。
(スルホン酸基および/またはカルボン酸基の導入割合)
スルホン酸基の導入割合は、濃硝酸中に導電性ポリマー(B)を加えて加熱し、分解生成物中のイオウ元素の含有量をイオンクロマトグラフィーにて測定した。
カルボン酸基の導入割合は、中和滴定により測定した。
(分子量および分子量分布の測定)
導電性ポリマー(B)の分子量分布及び分子量を、水溶液用のGPCカラムを用いて、GPC(ポリスチレンスルホン酸換算)により測定した。
該GPCにおいて、カラムとしては水溶液用のものを2本(いずれも、東ソー社製「水系GPCカラムPWX3000XL」)連結して用いた。また、溶離液としては0.02Mの臭化リチウムの水/メタノール=7/3(体積比)の溶液を用いた。
【0046】
(CMP研磨試験方法(試験条件))
非加工物(ウエハ):直径8インチのシリコン基板に、厚さ1.5μmの銅膜を形成(メッキ)したウエハ。
CMPスラリー:Planerlite7101(フジミインコーポレーテッド社製)1kgあたり、30wt%濃度の過酸化水素水30gを添加したもの。
研磨装置:BC−15C(MAT社製)。
CMPスラリー供給速度:150ml/min。
ヘッドスピード:80rpm。
プラテンスピード:80rpm。
押し付け圧力:0.3MPa。
※ヘッド部の搖動あり。
【0047】
(スクラッチ性)
研磨パッドとして、各実施例および比較例で製造した導電性研磨パッド、および対照として、現行のCMP研磨パッドであるニッタ・ハース社製研磨パッド IC−1000(ポリウレタン系、直径:15インチ)をそれぞれ使用して上記CMP研磨試験を行い、試験後、銅メッキが施された側のウエハ表面状態を、光学顕微鏡(キーエンス社製マイクロスコープ VH−7000)により観察し、目視でのマイクロスクラッチ(細かい引っかき傷)を下記の判定基準で評価した。
◎:IC−1000使用後のウエハ表面状態と比較して、マイクロスクラッチの数に差が無い。
○:IC−1000使用後のウエハ表面状態と比較して、マイクロスクラッチの数がわずかに増加。
×:IC−1000使用後のウエハ表面状態と比較して、マイクロスクラッチの数が大幅に増加。
【0048】
また、実施例1〜23および比較例1〜3では、基材(A)および導電性ポリマー(B)としてそれぞれ以下のものを用いた。
[基材(A)]
・基材(A)−1:ニッタ・ハース社製研磨パッド IC−1000(ポリウレタン系、直径:15インチ)。
[導電性ポリマー(B)]
・導電性ポリマー(B)−1:以下の手順で合成したポリマー。
2−アミノアニソール−4−スルホン酸100molを25℃で4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に溶解し、該溶液を撹拌しながら、該溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100molを水溶液として滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに攪拌した。反応生成物を濾別、洗浄した後、乾燥し、導電性ポリマー(B)−1の粉末15kgを得た。
導電性ポリマー(B)−1の体積抵抗値は9.0Ω・cm、スルホン酸基の導入割合は100%、数平均分子量は3,100、質量平均分子量は18,000、分子量分布は6であった。
【0049】
・導電性ポリマー(B)−2:TAケミカル社製、エスペーサー100(スルホン酸基含有可溶性ポリチオフェン誘導体)。
導電性ポリマー(B)−2の体積抵抗値は1Ω・cm、スルホン酸基の導入割合は100%、数平均分子量は5,000、質量平均分子量は100,000、分子量分布は20であった。
【0050】
・導電性ポリマー(B)−3:TAケミカル社製、エスペーサー300(スルホン酸基含有可溶性ポリイソチアナフテン誘導体)。
導電性ポリマー(B)−3の体積抵抗値は1Ω・cm、スルホン酸基の導入割合は100%、数平均分子量は12,300、質量平均分子量は302,000、分子量分布は26であった。
【0051】
・導電性ポリマー(B)−4:以下の手順で合成したポリマー。
2−アミノアニソール−4−カルボン酸100mmolを25℃で4mol/Lのアンモニア水溶液に攪拌溶解し、該溶液を撹拌しながら、該溶液に、ペルオキソ二硫酸アンモニウム100mmolを水溶液として滴下した。滴下終了後、25℃で12時間更に攪拌した後に反応生成物を濾別、洗浄した後、乾燥し、導電性ポリマー(B)−4の粉末10gを得た。
導電性ポリマー(B)−4の体積抵抗値は100Ω・cm、カルボキシ基の導入割合は100%、数平均分子量は2,100、質量平均分子量は10,000、分子量分布は5であった。
【0052】
・導電性ポリマー(B)−5:「J. Chem.Soc.,Chem.Commun.,(1990),180」に従って合成したポリ(2−スルホ−1,4−イミノフェニレン))。
導電性ポリマー(B)−5の体積抵抗値は1000Ω・cm、スルホン酸基の導入割合は33%、数平均分子量は25,000、質量平均分子量は90,000、分子量分布は4であった。
【0053】
・導電性ポリマー(B)−6:公知の方法で合成したポリアニリン。
導電性ポリマー(B)−6の体積抵抗値は0.1Ω・cm、スルホン酸基の導入割合は0%、分子量については、ポリアニリンは水系溶媒には溶解しないため測定することができなかった。
【0054】
<製造例1〜5:導電性基材(A’)の製造>
表1に示す組成の処理液(1)に、基材(A)−1を、表1に示す浸漬条件にて浸漬し、導電性基材(A’)−1〜(A’)−5を得た。
【0055】
【表1】

【0056】
<実施例1〜14、比較例1、実施例15>
表2に示す組成の処理液(2)に、表2に示す導電性基材(A’)を、表2に示す浸漬温度にて、表2に示す浸漬時間、撹拌しながら浸漬して、熱風乾燥機内で80℃、30分間乾燥し、研磨パッド1〜16を得た。
なお、このとき、処理液(2)の使用量は、導電性基材(A’)100質量部に対して2000質量部とした。
得られた研磨パッド1〜16について表面抵抗値(初期の表面抵抗値)を測定した。その結果を表4に示す。
【0057】
<実施例16〜23>
表3に示す組成の処理液(2)に、基材(A)−1を、浸漬温度20〜25℃(室温)、浸漬時間1時間の浸漬条件で、撹拌しながら浸漬した。これを、表3に示す乾燥温度および乾燥時間で乾燥して研磨パッド(C)−17〜(C)−24を得た。
なお、このとき、処理液(2)の使用量は、基材(A)−1の100質量部に対して2000質量部とした。
得られた研磨パッド(C)−17〜(C)−24について表面抵抗値(初期の表面抵抗値)を測定した。その結果を表4に示す。
【0058】
<比較例2>
エラストランS 90A(熱可塑性ポリウレタンエラストマー、BASFポリウレタンエラストマーズ社製)100質量部に、カーボンブラック35質量部を均一分散させたものを射出成形することにより、厚み2mmの研磨パッド25を得た。
該研磨パッド25について表面抵抗値(初期の表面抵抗値)を測定した。その結果を表4に示す。
【0059】
得られた研磨パッド1〜25をそれぞれ用いて、前記CMP研磨試験方法により研磨試験を行い、試験後、各研磨パッドの表面抵抗値(研磨試験後の表面抵抗値)の測定およびスクラッチ性の評価を行った。その結果を表4に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
上記結果から明らかなように、実施例1〜23の研磨パッドは、初期、研磨試験後ともに表面抵抗値が1×1013Ωよりも小さく、良好な導電性を有することが確認できた。また、これらの研磨パッドは、研磨試験前後の表面抵抗値の変化も少なく、スクラッチ性も良好であった。
一方、導電性ポリマーとしてスルホン酸基および/またはカルボキシル基を有さないポリマーを用いた比較例1の研磨パッドは、表面抵抗値が1×1013Ωよりも大きかった。
また、導電物質を研磨パッド用の基材に物理的に混ぜ込むことにより導電化された比較例2の研磨パッドは、表面抵抗値は低いものの、現行のCMP研磨パッドである基材(A)−1を用いた場合よりもスクラッチ性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上、詳述したように、本発明の導電性研磨パッドは、導電物質を研磨パッド用の基材に物理的に混ぜ込むことにより導電化された研磨パッドと比較して、大幅に配線スクラッチを低減することができる。
従って、本発明の導電性研磨パッドは、半導体製造において、配線形成工程等において実施されるCMP用の研磨パッドとして有用であるだけでなく、さらには、必要に応じて通電することにより、ECMP(電解研磨とCMP研磨の複合)プロセスにおいて電解研磨とCMPを同時に実施するための研磨パッドとしても利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッド用の基材(A)に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)が付着してなる導電性部材(C)を有する導電性研磨パッド。
【請求項2】
研磨パッド用の基材(A)にアミノ基を2以上有する化合物(D)が付着してなる基材(A’)に、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する導電性ポリマー(B)が付着してなる導電性部材(C)を有する導電性研磨パッド。
【請求項3】
前記導電性ポリマー(B)中、スルホン酸基および/またはカルボキシ基を有する構成単位の割合が、該前記導電性ポリマー(B)を構成する全構成単位に対し、20モル%以上である請求項1または2に記載の導電性研磨パッド。
【請求項4】
研磨パッド用の基材(A)を、アミノ基を2以上有する化合物(D)を含有する液に浸漬し、得られた基材(A’)を、導電性ポリマー(B)を含有する液に浸漬して導電性部材(C)を得る工程を有することを特徴とする導電性研磨パッドの製造方法。

【公開番号】特開2009−131944(P2009−131944A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311723(P2007−311723)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】