説明

導電性粒子の現像方法

【課題】
カーボン粒子や金属粒子等の導電粒子の表面を絶縁被膜等の処理することなく、低抵抗の状態で静電潜像の現像を行う方法を提供する。
【解決手段】
導電粒子の分散及び搬送には磁性または非磁性のキャリアを用い磁性ローラーにて搬送し、現像ローラと像担持体は非接触で間隔距離を設け、電界で飛翔させて現像を行う。これらのカーボン粒子又は金属粒子は導電性で有るために高い電界によって電極やキャリアから電荷を得て、あいは電荷を放出して、帯電・飛翔する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電印刷法や電子写真法の現像に関わり、特に導電性粒子によって現像する方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
1938年にカールソンによって発明された電子写真法はその解像性と出力速度の速さによって全世界に広がり、改良を重ねて今日に至っている。静電潜像を現像する現像剤はトナーと称され、種々の改良工夫がなされてきた事が複写機やプリンターの世界で大きな発展をしてきた要因ともいえる。
【0003】
一般のトナーは顔料と樹脂の混合の粒子であり、乾式の場合はキャリアまたは現像スリーブとの摩擦帯電を利用し、液体の場合は溶媒和を利用して帯電させ静電潜像を現像するのが一般的である。トナーは帯電した電荷を保持し、静電像坦持体の近くまで搬送され、電界によって該像坦持体に付着現像される。さらに転写を要する系では、像坦持体上でもトナーは帯電を維持し、転写部でトナーとは反対極性の電界で被転写体に転写する。
【0004】
これら一連の動作を成り立たせるためには少なくともトナーの表面は帯電を維持するためにほぼ絶縁体でなければならない。近年電子写真法の解像性と出力速度の速さ及びデジタルデータから直接ハード出力が得られる利点を利用して、デジタルデータから直接配線基板等を製作したいという要求があり、導電性のトナーを現像できるように種々の工夫がなされてきている。
【0005】
例えば特許例として、以下のものがある。
【特許文献1】特開昭59−18961号公報
【特許文献2】特開昭59−02682号公報
【特許文献3】特開昭60−137886号公報
【特許文献4】特開昭60−16090号公報
【特許文献5】特開平11−19682号公報これらの特許例では、導電性粒子の周囲に絶縁性樹脂で被覆した金属トナーを利用する方法が開示されている。これらは金属粒子に薄い絶縁被膜を施すことによって、あたかも絶縁性のトナーと同等の振る舞いを起こさせることによって電子写真法で現像・転写を行うことを目指しているものである。静電印刷法や電子写真法において、導電トナーや金属トナーと称するものはすべてこの類であり、単純な導電性粒子や金属ではない。
【0006】
導電材料に絶縁被膜を施すということは、静電印刷法あるいは電子写真法にとって取り扱い易い方法であるが、導電材料を利用する目的からは非常にやっかいなものになる。導電性の目的はそこに電流を流すという大目的があり、いかに絶縁被膜材料の工夫がされたとしても、結果的には電気抵抗の高い電極あるいは配線とならざるを得ない。その為、絶縁被膜を高温で飛ばしてしまうというような限られた用途にしか使われていないのが現状である。
【0007】
導通性の改善のために、特開昭58−57783号公報、及び特開平07−254768号公報ではメッキ開始の基材となるバナジュームを通常の絶縁トナーの表面に含ませ、パターン化・定着した後にその上にメッキして導電パターンを形成する方法が提案されている。しかしメッキ法では別の行程が付加され、デジタルデータから直接配線基板を製作することからは外れてしまい、メリットも半減してしまう。また導電材料に何ら不純物を含ませたくないといった要求もあり、導電材料そのものを扱いたいという要求が高まっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子写真法や静電印刷法で処理を施さない導電性材料そのものが取り扱えない理由は、静電法のトナーに要求される特性にことごとく反するからである。
【0009】
トナーはまず、1個1個の粒子に分散していなければならない。像坦持体近くまで搬送されなければならない。搬送される際に飛散してはならない。静電潜像を破壊してはならない。確実に目的の極性に帯電し、目的潜像以外の部分には付着してはならない。等々の要求がなされる。
【0010】
通常のトナーはほぼ絶縁体であり、接触帯電等で帯電すれば自然とお互いに反発力が働き1個1個の粒子に分散する。また、帯電することによってキャリアと称する搬送材料に静電的に付着し自由に搬送され、動的に振り回されても飛散することは少ない。さらに像坦持体に接触しても絶縁体であであれば潜像を壊すことは無く、静電的に引き合うところだけに付着し、逆極性部分には付着しない。このようにトナーはいかに1個1個の粒子が均一に確実に目的極性に帯電するか工夫されているのである。
【0011】
しかし、導電材料であると、1個1個の粒子に分散して帯電させることが難しいことや、帯電を維持することが難しく、そのため搬送で飛散すること、潜像に接触すれば導体であるために潜像が壊されてしまうことになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述のように導電材料が現像剤として成り立つためには、分散、搬送、帯電、潜像の非破壊をいかにして行うかを工夫することであり、本発明はカーボンや、金属粒子を特別な処理をせず、そのまま現像できる方法を提供するものである。
【0013】
本発明の基本的方法を図1に従って説明する。導電性粒子1はキャリア2とパドル5の回転によってによって混合分散される。磁性ロールは導電性非磁性のスリーブ3と磁性集合体4で構成され、該キャリア2は導電粒子1を抱え込んで磁性集合体4の磁力によりスリーブ3に取り付く。
【0014】
スリーブ3は回転しており厚み規制板6によって適正な厚みとなって像坦持体近くに搬送される。像坦持体は導電性基材11と絶縁性被膜あるいは感光体10で構成され静電潜像が作られている。スリーブ3に現像バイアス電源7から電圧を供給しすると導電性粒子1はスリーブ3又はキャリア2から電荷を得て像坦持体10に飛翔し、静電潜像を現像する。導電粒子の新規供給はホッパー9からパドル5が回転する撹拌部分へ適宜供給される。キャリアは導電粒子がカーボン、銅、アルミ等の非磁性材料の場合は、フェライトまたは鉄粒子等の磁性材料を使用し、導電粒子が鉄、ニッケル等の磁性材料の場合はガラス粒子又は樹脂粒子、セラミック粒子等の非磁性材料を使用する。
【0015】
導電性粒子1はスリーブ3又はキャリア2から電荷を得て像坦持体10に飛翔するため、効率よく飛翔するためにはキャリアは導電性であることが望ましい。図1は磁性キャリアの例を示している。図1の構成は一見通常のマグロール現像器の構成に似ているが、それぞれの働いている機能が異なる。導電粒子はキャリアとの撹拌で帯電するわけではなく、微粒子に分散させられる効果を持つ(分散)。また、キャリア2が磁性材料である場合は磁性集合体4によってスリーブ3に引き寄せられて搬送される際に導電粒子はキャリアとの帯電吸着で搬送される訳ではなく、メカニカルにキャリアに抱え込まれて搬送され、キャリア2が非磁性材料である場合は導電粒子自身が磁性体であり、磁性集合体4によってスリーブ3に引き寄せられて搬送される。(搬送)。
【0016】
最も像坦持体に接近した時点で、像坦持体に接触させず、導電粒子1は現像バイアス電源7の電圧と潜像との間の電界により飛翔させて現像する。飛翔する際に導電粒子1はスリーブ3又はキャリア2から電荷を得る(帯電)。
【0017】
非接触であることによって潜像を破壊することは無くなる(潜像の非破壊)。
【0018】
現像バイアス電源の電圧は、像坦持体10のバックグラウンドには飛翔せず、信号潜像には飛翔する電界が選択される。適正な現像バイアス電圧は、潜像あるいはバックグラウンドの電圧と、導電性非磁性のスリーブ3と像坦持体10との間隔距離、及び導電性粒子1の質量や粒径などにより異なる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の方法を用いれば、何ら処理を施さない低抵抗の導電粒子であっても、像担持体上に高解像、高コントラストで現像することが可能となり、10の2乗Ω・cm以下のカーボン粒子又は金属粒子は導電性で有る故に高い電界によって電極やキャリアから電荷を得て、あいは電荷を放出して、帯電・飛翔する。潜像の電位によって低い電界になっている部分は電荷を得ることも放出することも出来ず、飛翔することは出来ない。結果、バックグラウンドに導電粒子は付着せず、コントラストの高い現像ができる。
【実施例1】
【0020】
像坦持体10のバックグラウンドがプラス700V、信号電位がプラス100V、平均粒径7μの金属銅粒子で間隔約3mmを飛翔させる場合、現像バイアス電圧はプラス800V程度を印加する事により十分なコントラストを得るのは難しいが、判別可能な現像であった。この場合、金属銅粒子は100V程度の電界では飛翔せず、700V程度の電界でプラスに帯電して飛翔していることになる。
【0021】
また、像坦持体10のバックグラウンドがプラス0V、信号電位が600V、平均粒径7μの金属銅粒子で間隔約3mmを飛翔させる場合、現像バイアス電圧はマイナス200V程度を印加する事により前述と同等の電界差を与えることが出来、判別可能な現像である。この場合金属銅粒子はマイナスに帯電して飛翔している。
【0022】
使用した金属銅粒子は粒子間の接触抵抗もあるが、1.0Ω・cmを示す。このように導電粒子の帯電極性は供給する現像バイアス電圧の極性によって自由にコントロール出来る。また、現像バイアス電源7の電圧は直流のみでも良いが、交流成分を重畳させるとより飛翔効果が上がる。導電粒子1は電界によりキャリア2あるいはスリーブ3から電荷注入を受けるか、又は接触面で反対極性の電荷を放出して帯電飛翔し潜像部分のみに付着する事になる(帯電)。
【0023】
スリーブ3上のキャリア2の奥に存在する導電粒子1は飛翔しにくく、現像効率が上がりにくい。その場合には磁性ロールの磁性集合体4をスリーブ3とは反対方向に回転させると、鉄粒2子はスリーブ3上で転がり、奥の導電粒子1が表面に浮き出て飛翔し易くなり、現像効率を上げることが出来る。また、導電粒子と混合し搬送する材料は帯電を生じない方が良いため、表面を導電処理することは現像状態を安定させることに役立つ。
【0024】
システムのプロセス速度が速い場合は現像剤の供給を多くするためにスリーブ3も早い回転速度が要求される。しかし、スリーブ3の回転が速すぎると、電界により電荷を得て帯電する前に、遠心力によって導電粒子が飛散し、帯電していないため非画像部に付着してカブリを生じる場合がある。その為スリーブ3の回転速度には制限があり、飛翔する導電粒子1の量も限界がでてくる。図1の構成は低速システムに適合する。
【実施例2】
【0025】
本発明の高速対応方法を図2に示す。像坦持体10と導電性非磁性のスリーブ3と磁性集合体4で構成される磁性ローラの中間に現像ローラ12及びスクレーパー13を追加し、それぞれが接触しないように構成したものである。ただし、現像バイアス電源7は現像ローラ12に接続され該磁性ローラの導電性非磁性のスリーブ3には補助電源8が接続される。
【0026】
現像バイアス電源7は図1での説明と同様に像坦持体10の潜像の極性と電位に従って決定され、補助電源8は現像バイアス電源7との間で導電粒子1が飛翔できる電界を与える。例えば像坦持体10のバックグラウンドがプラス700V、信号電位がプラス100V、平均粒径7μの導電性カーボンは10の2乗Ω・cmを示したが、間隔約3mmを飛翔させる場合、現像バイアス電圧はプラス800V程度を印加するとすれば、補助電源8は0Vあるいはマイナス100Vまたはプラス1500Vを与えることによって、導電性カーボンは現像ローラ12の全面に飛翔付着し、さらに現像ローラ12から像坦持体10の潜像部に飛翔して十分コントラストのある現像が出来た。図2に示す方法の利点はスリーブ3の回転速度を上げることが出来ることにある。
【0027】
スリーブ3の回転速度を上げることによって導電粒子が遠心力によって飛散して帯電せずに現像ローラ12に付着したとしても、現像ローラ12から像坦持体10に飛翔するときには現像バイアス電源7の供給電圧によって電荷を得、帯電して飛翔するからである。このことによって導電性カーボンのような飛散しやすい場合であっても高速プロセスで現像すべき導電粒子の量を確保でき、十分コントラストのある現像が出来る。上記実施例の印加電圧や距離等の諸条件は代表例であって、導電粒子の材質、粒径、比重等などによって適正条件が異なり、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の基本構成の説明図
【図2】本発明の発展させた構成の説明図
【符号の説明】
【0029】
1・・・・・導電粒子
2・・・・・キャリア
3・・・・・導電性非磁性のスリーブ
4・・・・・磁性集合体
5・・・・・パドル
6・・・・・規制ブレード
7・・・・・現像バイアス電源
8・・・・・補助電源
9・・・・・トナーホッパー
10・・・・像担持体
11・・・・導電基材
12・・・・現像ローラ
13・・・・スクレーパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電像坦持体と現像器を具備する装置において、現像剤が導電材料からなる粒子であり、該現像剤は該像坦持体と非接触であり、電界によって飛翔させ現像する事を特徴とする現像方法
【請求項2】
該現像剤の抵抗値が10の2乗Ω・cm以下のカーボン粒子又は金属粒子である事を特徴とする請求項1に記載の現像方法
【請求項3】
該現像剤が非磁性である場合はフェライト粒子又は鉄粒子等の磁性材料と混合し、磁性集合体を内包した導電性非磁性スリーブによって該像坦持体近傍まで搬送し現像する請求項1に記載の現像方法
【請求項4】
該現像剤が非磁性である場合はフェライト粒子又は鉄粒子等の磁性材料と混合し、磁性集合体を内包した導電性非磁性スリーブから非接触にて電界によって飛翔させて導電性非磁性ロールに付着させ、さらに該導電性非磁性ロールから非接触状態にある静電像坦持体に電界によって飛翔させて現像する事を特徴とする請求項1に記載の現像方法
【請求項5】
該フェライト粒子又は鉄粒子などの磁性材料の表面に樹脂皮膜を施さないことを特徴とする請求項1、2及び3に記載の現像方法
【請求項6】
該現像剤が磁性である場合はガラス粒子又は樹脂粒子、セラミック粒子等の非磁性材料と混合し、磁性集合体を内包した導電性非磁性スリーブによって該像坦持体近傍まで搬送し現像する請求項1に記載の現像方法
【請求項7】
該現像剤が非磁性である場合はガラス粒子又は樹脂粒子、セラミック粒子等の非磁性材料と混合し、磁性集合体を内包した導電性非磁性スリーブから非接触にて電界によって飛翔させて導電性非磁性ロールに付着させ、さらに該導電性非磁性ロールから非接触状態にある静電像坦持体に電界によって飛翔させて現像する事を特徴とする請求項1に記載の現像方法
【請求項8】
該現像剤と混合する該フェライト粒子、ガラス粒子又は樹脂粒子、セラミック粒子等の絶縁材料または半導体材料の表面に導電性皮膜を施すことを特徴とする請求項1、2及び3に記載の現像方法
【請求項9】
該現像剤を飛翔させるために印加する電圧が直流電圧と周波数500Hz〜10KHzの正弦波電圧又は矩形波電圧との重畳電圧であることを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の現像方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−33626(P2007−33626A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−214192(P2005−214192)
【出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(594003274)株式会社アフィット (11)
【Fターム(参考)】