説明

導電性粘着シート及びそれを備えた電磁波シールド材、プリント配線板

【課題】充分な粘着性及び導電性を安定して有するものとする。
【解決手段】シート状に形成された粘着性物質2と当該粘着性物質2に分散された導電性粒子4とを有する組成物で構成される導電性接着剤層3を有している。導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質2の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲である。導電性粒子4の含有量が導電性接着剤層3全体の15〜25重量%の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ、通信機器、ビデオカメラ等の電子機器において主に用いられる導電性粘着シート及びそれを備えた電磁波シールド材、プリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の電子機器においては、導電性粘着シートが電磁波ノイズを遮蔽する用途や配線の機能を代替する用途として用いられる場合がある。導電性粘着シートは、導電性粒子を分散した粘着性物質をシート状に形成した導電性接着剤層を有し、シート表面における粘着性を確保しながら一方面と他方面とを導電状態にしている。そして、従来においては、導電性接着剤層における良好な導電状態と粘着性とを実現するため、導電性粒子の長径が導電性接着剤層の厚みの1倍以上2倍未満にする構成が開示されている(特許文献1等)。
【0003】
また、導電性粘着層を、アクリル系粘着剤、導電性粒子及びトリアゾール系化合物が含有されてなるものにすることで、導電性の経時的な低下を極めて小さいものにする導電性粘着シートが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−222346号公報
【特許文献2】特公平8−30175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように、導電性粒子の長径を導電性接着剤層の厚みの1倍以上2倍未満の構成にした場合であっても、シートの全体や一部において所望の充分な粘着性を安定して確保することは困難である。即ち、樹脂の種類や粘度等の製造条件、気温や湿度等の製造環境によっては、充分な粘着性を得られないロットが出現したり、充分な粘着性と不充分な粘着性との混在したシートとなる場合がある。そして、不充分な粘着性の導電性粘着シートを用いた場合は、近年における電子機器の小型化や薄型化の進展に伴って要求される充分な導電性と粘着性が、安定して得られないことが大きな問題になりつつある。
【0006】
また、上記特許文献2のように、導電性粘着層を、アクリル系粘着剤、導電性粒子及びトリアゾール系化合物が含有されてなるものにした場合、粘着力性が高いため、回路基板等の被貼付部材に接触させた導電性粘着シートを当該被貼付部材から剥離することが困難である。このため、導電性粘着シートを被貼付部材に仮止めをして、位置決めを行なうことができなかった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、充分な粘着性及び導電性を安定して有し、被貼付部材への仮止めが可能な導電性粘着シート及びそれを備えた電磁波シールド材、プリント配線板を提供する。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の導電性粘着シートは、シート状に形成された粘着性物質と当該粘着性物質に分散された導電性粒子とを有する組成物で構成される導電性接着剤層を有しており、前記導電性粒子の平均粒子径に対して前記粘着性物質の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲である第1条件と、前記導電性粒子の含有量が前記導電性接着剤層全体の15〜25重量%の範囲である第2条件とを満たすように形成されていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、導電性粒子の平均粒子径に対して粘着性物質の厚みの平均値(樹脂厚比)が0.8倍〜1.4倍の範囲である第1条件と、前記導電性粒子の含有量が前記導電性接着剤層全体の15〜25重量%の範囲である第2条件とを満すように形成されることによって、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。
【0010】
また、本発明の導電性粘着シートにおいては、前記粘着性物質から外部に露出された前記導電性粒子により除かれた前記粘着性物質の粘着性露出面積における全面積に対する単位面積当りにおける割合の平均値が97.5%〜99.0%の範囲であり、前記粘着性物質から外部に露出した前記導電性粒子の露出高さの平均値が15μm以下であってもよい。上記の構成によれば、粘着性物質の粘着性露出面積と、粘着性物質から外部に露出した導電性粒子の露出高さとの関係が設定される結果、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。
【0011】
また、本発明の導電性粘着シートにおいては、導電性粒子の円形度の平均値が0.8以上であってもよい。この構成によれば、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。ここで、『円形度』とは、導電性粒子の像と同じ投影面積を持つ円の周囲長を、導電性粒子の投影像周囲長で除した値のことをいう。
【0012】
また、本発明における前記導電性粒子は、粒子表面に凹凸部を有していてもよい。この構成によれば、さらに、導電性粒子の粒子表面と被貼付部材との導電性露出面積の単位面積あたりの接触面積が凹凸部により拡大するため、導電性を向上させることができる。
【0013】
また、本発明における前記導電性粒子は、金属材料により形成されていてもよい。この構成によれば、さらに、導電率の高い金属材料により導電性粒子が形成されているため、導電性を向上させることができる。
【0014】
また、本発明における前記導電性粒子は、AgコートCu粉、又はAgコートNi粉であってもよい。この構成によれば、さらに、安価な材料により導電性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明における前記粘着性物質は、熱可塑性エラストマ系樹脂であってもよい。この構成によれば、導電性の経時変化を抑制することができ、且つ、外部に露出された導電性粒子により粘着性物質の露出面積が小さくなるため、導電性粘着シートを被貼付部材に仮止めすることができる所望の粘着性を安定して得ることができる。
【0016】
また、本発明における前記粘着性物質は、アクリル系樹脂であってもよい。この構成によれば、様々な材料の被貼付部材と粘着が可能であるとともに、導電性の経時変化を抑制することができ、且つ、外部に露出された導電性粒子により粘着性物質の露出面積が小さくなるため、導電性粘着シートを被貼付部材に仮止めすることができる所望の粘着性を安定して得ることができる。
【0017】
また、本発明における前記粘着性物質に粘着性付与剤を添加してもよい。この構成によれば、粘着性付与剤の添加により、粘着性物質のガラス転移温度(Tg)は、室温付近に上げられるため、導電性粘着シート1の強度を高めることができる。
【0018】
また、本発明の電磁波シールド材は、上述に記載の導電性粘着シートと、前記導電性粘着シートの一方面に位置された金属層とを有する。
【0019】
上記の構成によれば、金属層が電波を吸収することが可能になるため、導電性粘着シートは、電磁波シールド効果の機能を有することになる。
【0020】
また、本発明におけるプリント配線板は、上述に記載の導電性粘着シートと、前記導電性粘着シートの一方面に位置された金属層と、前記導電性粘着シートの他方面に位置され、プリント回路を含む基板とを有する。
【0021】
上記の構成によれば、安定した所望の粘着力により高精度に位置決めされた状態でプリント配線板が形成されているため、信頼性の高いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】導電性粘着シートの説明図である。
【図2】導電性粘着シートの投影図に関する説明図であり、(a)は投影面についての説明図、(b)は導電性粘着シートの投影面積についての説明図である。
【図3】導電性粘着シートの撓みの状態を示す説明図である。
【図4】従来の導電性粘着シートの撓みの状態を示す説明図である。
【図5】支持間隔についての説明図である。
【図6】導電性粘着シートの説明図である。
【図7】導電性粒子のSEM画像であり、(a)は倍率が100倍、(b)は倍率が500倍、(c)は倍率が1000倍のSEM画像である。
【図8】電磁波シールド材の模式断面を示す斜視図であり、(a)は導電性粘着シートのみで構成される電磁波シールド材、(b)は導電性粘着シートの一方向に金属層を有する電磁波シールド材である。
【図9】プリント配線板の模式断面を示す説明図である。
【図10】導電性試験の測定方法の説明図である。
【図11】導電性粒子の露出高さの測定方法の説明図である。
【図12】実施例1〜9、比較例1〜3における導電性粒子の含有量と、粘着性物質の厚みにおける導電性粒子の平均粒子径に対する比率と、導電性との関係を示すグラフである。
【図13】実施例1〜9、比較例1〜3における導電性粒子の含有量と、樹脂厚比と、粘着性との関係を示すグラフである。
【図14】実施例1〜9、比較例1〜3における導電性粒子の含有量と、樹脂厚比と、粘着性露出面積比との関係を示すグラフである。
【図15】実施例1〜9、比較例1〜3における導電性粒子の含有量と、樹脂厚比と、粉体露出面積比との関係を示すグラフである。
【図16】実施例1〜9における導電性粒子の含有量と、樹脂厚比と、導電性粒子の露出高さを示すグラフである。
【図17】実施例5と比較例5における剥離試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態に係る導電性粘着シート及びそれを備えた電磁波シールド材、プリント配線板について図1乃至図17に基づいて説明する。
【0024】
(全体構成)
図1に示すように、本発明の導電性粘着シート1は、粘着性物質2に導電性粒子4が分散された導電性接着剤層3が形成されており、その導電性接着剤層3の一方面と他方面とに貼設された離型シート6・7を有している。
【0025】
導電性粘着シート1は、粘着性物質2から外部に露出された導電性粒子4により除かれた粘着性物質2の粘着性露出面積と、粘着性物質2から外部に露出した導電性粒子4の露出高さH0との関係が、所望の導電性を確保しつつ、所望の粘着性(タック性)を安定して有するように設定されている
【0026】
これにより、導電性粘着シート1を回路基板等の被貼付部材5に接触させると、所望の粘着性(タック性)を有した導電性接着剤層3が被貼付部材5に付着するため、被貼付部材5の所定位置に位置決めした状態に維持させることができる。これにより、例えば、導電性粘着シート1を被貼付部材5の所定位置に位置決めした後、両者を加圧して接着するという一連の接着処理を行う際に、導電性粘着シート1が被貼付部材5に付着して位置決め状態を維持するため、所定位置に高精度に接着することができると共に、導電性粘着シート1を位置ずれさせないようにするための特別の器具や操作が不要であるため、容易に接着を行うことができる。
【0027】
ここで、粘着性物質2の粘着性露出面積と、導電性粒子4の露出高さH0との関係に着目して導電性粘着シート1を構成すれば、所望の導電性を確保しつつ、所望の粘着性を安定して有することができる理由について説明する。
【0028】
粘着性は、金属シートやプリント基板等の粘着対象とされる被貼付部材5の材質や表面状態、粘着性物質2自体の粘着性等を含む粘着条件と、粘着性物質2と被貼付部材5との接触面積や接触圧等の接触条件とに基づいて予想される最小から最大の粘着性の範囲から選択される。導電性は、導電性粒子4自体の導電性や被貼付部材5の導電性等を含む導電条件と、導電性粒子4と被貼付部材5との接触面積や接触圧等の接触条件とに基づいて予想される最小から最大の導電性の範囲から選択される。
【0029】
粘着性と導電性との関係において、粘着条件と導電条件と接触圧とが固定されているとすると、接触条件中の接触面積が変動係数となる。例えば、接続抵抗(電気抵抗)に作用する接触面積(以下、導電性接触面積)が増大すれば、接続抵抗は比例的に減少し、導電性接触面積が減少すれば、接続抵抗は比例的に増大する。また、粘着性に作用する接触面積(以下、粘着性接触面積)が増大すれば、粘着性は比例的に増大し、粘着性接触面積が減少すれば、粘着性は比例的に減少する。
【0030】
導電性接触面積は、外部に露出した導電性粒子4と被貼付部材5との接触面積であり、外部に露出した導電性粒子4の投影面積(以下、導電性投影面積4a)が増大すれば、比例的に増大する。粘着性接触面積は、外部に露出した粘着性物質2と被貼付部材5との接触面積であり、粘着性物質2の投影面積である粘着性露出面積2aが増大すれば、比例的に増大する。なお、投影面積とは、図2に示すように、導電性粘着剤層3の上面と投影面100(図2(A)参照)を平行にして投影した面積である。そして、図2(B)に示すように、導電性接着剤層3の投影面積(以下、接着剤層投影面積3a)は、導電性投影面積4aと粘着性露出面積2aとを加算した面積である。従って、粘着性露出面積2aの増大に比例して増大する粘着性と、導電性投影面積4aの増大に比例して減少する接続抵抗とは、接着剤層投影面積3aにおいて相反する関係にある。これにより、粘着性を増大させるのに従って接続抵抗が増大するため、粘着性と導電性との両者を所望の良好な状態とするための最適条件が存在する。
【0031】
さらに、粘着性接触面積は、導電性粒子4の露出高さH0により制限を受けている。即ち、図3に示すように、被貼付部材5が導電性粘着シート1に対して所定圧力で均等に押圧されながら接合された場合を想定すると、被貼付部材5は、粘着性物質2から露出した導電性粒子4の頂部により支持された状態になる。これにより、被貼付部材5は、支持間において撓みを発生させる。
【0032】
被貼付部材5の各撓みは、2つの導電性粒子4の頂部の平均間隔で2点支持された状態であるとすると、この平均間隔である支持間隔Lと被貼付部材5の所定圧力の等分布荷重Pと被貼付部材5の曲げ剛性EIとの関係によって、最大撓みHが5PL/384EIとなる。ここで、『E』は、ヤング率(縦弾性係数)である。被貼付部材5として一般的に用いる金属材料(ヤング率)としては、例えば、アルミ合金(E:69GPa)、黄銅や青銅(E: 103-124GPa)、チタン(Ti) (E: 105-120GPa)、銅(Cu) (E: 110-130GPa)、錬鉄や鋼(E:190-210GPa)、ニッケル(Ni) (E: 199-222GPa)がある。また、『I』は、断面2次モーメントである。そして、最大撓みHが導電性粒子4の露出高さH0以上であれば、粘着性物質2と被貼付部材5とが接触し、粘着性接触面積が最大撓みHの増大に伴って比例的に増大する。
【0033】
一方、図4に示すように、最大撓みHが導電性粒子4の露出高さH0未満であれば、粘着性物質2と被貼付部材5とが非接触となる。図4は、支持間隔Lよりも短い支持間隔Laであることを除いて、同じ条件で被貼付部材5を支持した状態を示している。このことから、等分布荷重P等の支持条件が同一であれば、支持間隔Lの4乗に比例した最大撓みHとなり、粘着性接触面積が支持間隔L(最大撓みH)の増大に伴って比例的に増大する。
【0034】
ここで、図5に示すように、導電性粘着剤層3において、導電性粒子4が粘着性物質2に均等に分散されているとすると、支持間隔Lは、導電性粘着剤層3全体における導電性粒子4の含有量と負の相関関係にある。すなわち、導電性粘着剤層3全体における導電性粒子4の含有量が増加すれば、支持間隔Lは短くなり、導電性粒子4の含有量が減少すれば、支持間隔Lは長くなる。
【0035】
またさらに、導電性粒子4の側面同士が互いに接触状態で均等に分散されているとすると、支持間隔Lは、導電性粒子4の支持間隔L方向の粒子径に正比例する関係にある。
【0036】
この結果、粘着性物質2の粘着性接触面積と、粘着性接触面積に影響する導電性粒子4の露出高さH0及び導電性粘着剤層3全体における導電性粒子4の含有量との関係において、所望の導電性を確保しつつ所望の粘着性を安定して有する導電性粘着シート1を得ることができる設定条件が存在することが分かる。
【0037】
(設定条件)
次に、粘着性物質2の粘着性接触面積と、粘着性接触面積に影響する導電性粒子4の露出高さH0及び導電性粘着剤層3全体における導電性粒子4の含有量との設定条件等を具体的に説明する。
【0038】
第1の設定条件は、導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質2の厚みの平均値(樹脂厚比)が0.8倍〜1.4倍の範囲である第1条件と、導電性粒子4の含有量が前記導電性接着剤層3全体の15〜25重量%の範囲である第2条件とを満すものである。
【0039】
尚、導電性粒子4の平均粒子径に対して導電性接着剤層3の厚みの平均値(樹脂厚比)は、好ましくは0.86倍〜1.375倍の範囲である。また、導電性粒子4の含有量は、好ましくは前記導電性接着剤層3全体の20〜25重量%の範囲である。
【0040】
第1の設定条件は、後述のように、一般的な金属材料を被貼付部材5として用いた場合における実験結果に基づいて定量的に特定したものである。第1の設定条件によれば、図1及び図3に示すように、最大撓みHが露出高さH0以上となり、粘着性物質2と被貼付部材5との接触面積を余裕度の大きなものとすることができるため、製造環境や製造条件に多少の変化が生じた場合でも、所望の粘着性を安定して確保することができる。この結果、導電性粒子4と被貼付部材5との接触による所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。なお、上記のように所望の導電性を確保しつつ所望の粘着性を安定して得るために、導電性粒子4の平均粒子径を粘着性物質2の厚みに対して、0.7倍〜1.25倍の範囲であることを第1の設定条件の第1の条件としてもよい。
【0041】
第2の設定条件は、粘着性物質2から外部に露出された導電性粒子4により除かれた粘着性物質2の粘着性露出面積2aにおける接着剤層投影面積3a(全面積)に対する単位面積当りの割合の平均値(以下、粘着性物質露出面積比)が97.5%〜99.0%の範囲であり、粘着性物質2から外部に露出した導電性粒子4の露出高さの平均値が15μm以下である。なお、粘着性物質露出面積比が97.5%〜99.0%の範囲であるということは、換言すれば、導電性投影面積4aにおける接着剤層投影面積3aに対する単位面積当りの割合の平均値(以下、粉体露出面積比)が1.0%〜2.5%の範囲である。
【0042】
尚、粘着性物質露出面積比は、好ましくは97.5%〜98.5%の範囲である。また、導電性粒子4の露出高さH0の平均値は、好ましくは10μm以下である。
【0043】
第2の設定条件においても、第1の設定条件の場合と同様に、最大撓みHが露出高さH0以上となり、粘着性物質2と被貼付部材5との接触面積を余裕度の大きなものとすることができるため、製造環境や製造条件に多少の変化が生じた場合でも、所望の粘着性を安定して確保することができる。この結果、導電性粒子4と被貼付部材5との接触による所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。
【0044】
第3の設定条件は、導電性粒子4の円形度の平均値が0.8以上である。
【0045】
第3の設定条件は、後述のように、一般的な金属材料を被貼付部材5として用いた場合における実験結果に基づいて、定量的に特定したものである。第3の設定条件によれば、導電性粒子4の支持間隔Lを所定値以上にすることができるため、所望の粘着性を安定して確保することができる。この結果、導電性粒子4と被貼付部材5との接触による所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。
【0046】
上記のような設定条件の場合には、図5に示すように、導電性粒子4が導電性接着剤層3に対して横たわった状態、即ち、導電性粒子4の短径が導電性接着剤層3の層面に対して直交した状態になっても、大部分の導電性粒子4が粘着性物質2から外部に露出することになる。さらに、図3に示すように、導電性粒子4が導電性接着剤層3に対して立ち上がった状態、即ち、導電性粒子4の長径が導電性接着剤層3の層面に対して直交した状態になった場合でも、平均短径に対応する導電性粒子4による被貼付部材5の支持間隔を所定値以上にすることができる。
【0047】
これにより、図1に示すように、導電性粒子4の向きが粘着性物質2内において不特定であっても、導電性粒子4と被貼付部材5との導電性接触面積が確保されると共に、被貼付部材5と粘着性物質2との粘着性接触面積が確保されることになる。この結果、導電性粘着シート1は、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることになる。
【0048】
(導電性接着剤層3)
導電性粘着シート1に含まれる導電性接着剤層3は、図1に示すように、導電性接着剤により形成されている。導電性接着剤は、導電性粒子4と粘着性物質2(アクリル系樹脂等)との混合体として形成されている。即ち、導電性接着剤層3は、アクリル系樹脂等の粘着性物質2に導電性粒子4を分散させたものである。導電性接着剤の電気的な接続は、粘着性物質2内の導電性粒子4が連続的及び機械的に接触することにより実現され、粘着性物質2の接着力により保持される。
【0049】
導電性接着剤は、等方導電性及び異方導電性の何れかの接着剤により形成されている。等方導電性接着剤は、従来のはんだと同様の電気的性質を有している。従って、等方導電性接着剤で導電性接着剤層3が形成された場合には、厚み方向及び幅方向、長手方向からなる三次元の全方向に電気的な導電状態を導電性接着剤層3において確保可能な導電性粘着シート1とすることができる。一方、異方導電性接着剤で導電性接着剤層3が形成された場合には、厚み方向からなる二次元の方向にだけ電気的な導電状態を導電性接着剤層3において確保可能な導電性粘着シート1とすることができる。
【0050】
尚、導電性接着剤層3は、軟磁性材料を主成分とする導電性粒子4と粘着性物質2とを混合した導電性接着剤により形成されていてもよい。この場合には、導電性粒子4が高い磁化を発揮することにより周波数の高い電磁波に対しても透磁率の低下を抑制することから、電波を吸収することが可能になる。これにより、導電性粘着シート1は、電磁シールド効果の機能に加えて、電波吸収の機能を有することになる。
【0051】
(粘着性物質2)
導電性接着剤層3に含まれる粘着性物質2は、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、熱可塑性エラストマ系樹脂、ゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。具体的には、日本カーバイト社製のKP−1581、KP−1104、KP−2074、及びSZ−6153、日本合成社製のXI−0002、及びN−3330、東亞合成社製のUVA2109、UVA2109BQ、及びUVA−E305、ビッグテクノス社製のAR−2172−M3、クラレ社製の1114、及び2140E、カネカ社製のF800KSが挙げられる。なお、粘着性物質2は、上記樹脂の単体でも混合体でもよい。
【0052】
また、粘着性物質2は、粘着性付与剤をさらに含んでいてもよい。粘着性付与剤としては、脂肪酸炭化水素樹脂、C5/C9混合樹脂、ロジン、ロジン誘導体、特殊樹脂、テルペン樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、熱反応性樹脂等のタッキファイヤーが挙げられる。具体的には、荒川化学工業社製のKE100、KE310、及びKE359が挙げられる。
【0053】
尚、粘着性物質2は、アクリル系樹脂に粘着性付与剤を添加したものが好ましい。この理由は、粘着性物質2のガラス転移温度(Tg)を室温付近に上げることにより、導電性粘着シート1の強度を高めることができるからである。
【0054】
また、導電性接着剤層3は、上述のように、導電性粒子4の平均粒子径に対して導電性接着剤層3の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲に設定されている。
【0055】
(導電性粒子4)
導電性接着剤層3に含まれる導電性粒子4は、金属材料により一部又は全部が形成されている。例えば、導電性粒子4は、銅粉、銀粉、ニッケル粉、銀コ−ト銅粉(AgコートCu粉)、金コート銅粉、銀コートニッケル粉(AgコートNi粉)、金コートニッケル粉があり、これら金属粉は、水アトマイズ法、カーボニル法等により作製することができる。また、上記以外にも、金属粉に樹脂を被覆した粒子、樹脂に金属粉を被覆した粒子を用いることもできる。尚、導電性粒子4は、AgコートCu粉、又はAgコートNi粉であることが好ましい。この理由は、安価な材料により導電性の向上した導電性粒子4を得ることができるからである。
【0056】
導電性粒子4は、上述のように、円形度の平均値が0.8以上に設定されている。なお、導電性粘着剤層3の厚みが予め設定されている場合は、導電性粒子4の平均粒子径は導電性粘着剤層の厚みの0.7倍〜1.25倍の範囲に設定されている。
【0057】
また、導電性粒子4は、導電性粒子4の短径の平均値が導電性接着剤層3の厚みの1.5倍を超えるものがないことが好ましい。この理由は、導電性粒子4間における被貼付部材5と粘着性物質2との接触を高い信頼性で実現できるからである。
【0058】
また、導電性粒子4は、図6に示すように、粒子表面に凹部4a及び凸部4bからなる凹凸部4a・4bを有していてもよい。尚、凹部4aは、少なくとも2個の凸部4b・4b間に位置する谷部を意味する。換言すれば、頂部を有する部位が凸部4bであり、底部を有する部位が凹部4aである。
【0059】
上記の凹凸部4a・4bは、後述のカーボニル法や水アトマイズ法等により形成される。
【0060】
図7は、導電性粒子4を走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy、以下SEM)で撮影したSEM画像であり、図7(a)は倍率が100倍、図7(b)は倍率が500倍、図7(c)は倍率が1000倍のSEM画像である。図7(c)のSEM画像から明らかなように、導電性粒子4の表面に凹凸部4a・4bが形成されていることが確認された。
【0061】
(離型シート6・7)
上記のようにして粘着性物質2と導電性粒子4とで形成された導電性接着剤層3は、離型シート6及び離型シート7により挟持されている。即ち、導電性粘着シート1は、導電性接着剤層3、離型シート6、及び離型シート7を有している。
【0062】
離型シート6及び離型シート7は、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート等のベースフィルム上に、シリコン系、非シリコン系の離型剤を塗布したものを使用することができる。尚、離型シート6、及び離型シート7の厚みは特に限定されるものではなく、適宜使い易さを考慮して決定される。
【0063】
また、離型シート6及び離型シート7は、色分けされていたり、透明度が異なる態様にされていることが好ましい。この場合には、導電性粘着シート1の一面(表面)や他面(裏面)を容易に判別することができるため、作業性を向上させることができる。
【0064】
(電磁波シールド材)
また、図8に示すように、導電性粘着シート1は、電磁波シールド材10の構成部材として用いられていてもよい。図8(a)に示すように電磁波シールド材10a(10)は、導電性粘着シート1のみで構成される電磁波シールドである。また、図8(b)に示す電磁波シールド10b(10)は、導電性粘着剤層3と、導電性粘着剤層3の一方側に位置された金属層8と、電磁波シールド材10の一方側及び他方側にそれぞれ位置された離型シート6・7とを有している電磁波シールド材である。
【0065】
尚、電磁波シールド材10bは、導電性接着剤層3と金属層8とだけで構成されていてもよいし、導電性接着剤層3と金属層8とが交互に積層された複数段の構成にされていてもよい。さらに、電磁波シールド材10bは、金属層8及び導電性接着剤層3を任意に組み合わせた構成にされていてもよい。また、電磁波シールド材10bは、金属層8の一方側に位置された絶縁層を有していてもよく、絶縁層が離型シート6、及び/又は離型シート7の代わりにされていてもよい。
【0066】
上記の構成によれば、導電性接着剤層3を回路基板等の被貼付部材5に接触させると、所望の粘着性(タック性)を有した導電性接着剤層3が被貼付部材5に付着するため、電磁波シールド材10を被貼付部材5の所定位置に位置決めした状態に維持させることができる。これにより、例えば、電磁波シールド材10を被貼付部材5の所定位置に位置決めした後、両者を加圧して接着するという一連の接着処理を行う際に、電磁波シールド材10が被貼付部材5に付着して位置決め状態を維持するため、所定位置に高精度に接着することができると共に、電磁波シールド材10を位置ずれさせないようにするための特別の器具や操作が不要であるため、容易に接着を行うことができる。
【0067】
(金属層8)
電磁波シールド材10bの金属層8について詳細に説明する。これらの金属層8を形成する金属材料としては、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料の何れか、または2つ以上を含む合金などを挙げることができる。また、金属層8の金属材料及び厚みは、求められる電磁シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて適宜選択すればよいが、厚さにおいては、0.1μm〜8μm程度の厚さとすればよい。尚、金属層8の形成方法としては、電解メッキ法、無電解メッキ法、スパッタリング法、電子ビーム蒸着法、真空蒸着法、CVD法、メタルオーガニックなどがある。また、金属層8は、金属箔であってもよい。
【0068】
尚、金属層8は、シールド材表面に沿って蛇腹構造となるように形成されていてもよい。具体的には、導電性粘着シート1は、シールド材表面に沿った一方向(長手方向等)に対して波型形状に上下する蛇腹構造の金属層8を有していてもよいし、シールド材表面に沿った交差する2方向、好ましくは直交する2方向(長手方向や幅方向等)に対してそれぞれ波型形状に上下する蛇腹構造の金属層8を有していてもよい。
【0069】
上記の構成によれば、蛇腹構造の金属層8は、シールド材表面に対して蛇腹部分により伸縮自在となっている。従って、電磁波シールド材10が屈曲等されることによって、金属層8に対して伸び方向や縮み方向に応力が発生した場合であっても、蛇腹構造の金属層8においては伸縮により応力が緩和される。これにより、電磁波シールド材10bは、蛇腹構造の金属層8における金属疲労が軽減されることによって、電磁シールド効果の低下や消失を一層長期間に亘って防止することができる。
【0070】
尚、蛇腹構造の形成方法としては、金属層8が形成される基部となる導電性接着剤層3の表面の算術平均粗さを0.5〜5.0μmとし、この表面粗さを利用して金属層8を蛇腹構造にする方法がある。また、蛇腹構造の他の形成方法としては、平滑な基部(導電性接着剤層3)に対して多数の鱗片状金属粒子を堆積させることにより金属層8を形成する方法がある。鱗片状金属粒子の平均粒子径は1μm〜100μm、厚さは0.1μm〜8μmであるが、厚さが8μmを超えるものは、金属層8が厚すぎることになり、所望する厚さのフィルムを得ることができなくなってしまうので、好ましくない。
【0071】
また、鱗片状金属粒子の材料としては、ニッケル、銅、銀、錫、金、パラジウム、アルミニウム、クロム、チタン、亜鉛、及び、これらの材料の何れか、または2つ以上を含む合金などが挙げられるが、求められる電磁シールド効果及び繰り返し屈曲・摺動耐性に応じて1種以上の材料が適宜選択される。なお、このような鱗片状金属粒子が堆積した金属層8においては、所定温度以上の加熱下での加圧により、鱗片状金属粒子間において間隙部分が形成されるとともに金属間結合も生じ、電気的に連続した層とすることができる。
【0072】
また、金属層8は、孔又は空隙を複数有する多孔質(ポーラス)のものを用いてもよい。孔を複数有する多孔質の金属層8である場合においては、孔の径が0.1μm〜10μmであり、空隙を複数有する多孔質の金属層8である場合においては、空隙のサイズが0.1μm〜10μm、空隙率が1〜50%のものである。なお、空隙率が50%を超えると、導電性がかなり低下してしまう。
【0073】
(導電性粒子4の製造方法)
導電性粒子4の製造工程は、各種粒径の金属粉末を製造する造粒工程と、造粒工程で製造された金属粉末を乾燥させる乾燥工程と、上限値以上の短径を有する金属粉末を取り除く第1篩工程と、下限値以下の短径を有する金属粉末を取り除く第2篩工程とを有している。
【0074】
まず、造粒工程においては、導電性粒子4の組成となる溶融金属を、高圧水に噴射することで該溶融金属を飛散させて粉末化する水アトマイズ法により金属粉末を作製する。なお、金属粉末が図1の導電性粒子4の条件に近い状態で製造される運転設定値(ノズルの開度や水流量等)は、数値計算や経験則、試行錯誤等により求められる。この結果、粒子径のばらつきが少なく、円形度の平均値が0.8以上である金属粉末が製造される。本実施形態において、金属粉末は水アトマイズ法により作製されているが、これに限定されるものではなく、例えば、ガスアトマイズ法やカーボニル法により金属粉末を作製してもよい。なお、導電性粒子4の粒子表面に凹凸部4a・4bを形成させる場合は、水アトマイズ法、又はカーボニル法により金属粉末を作製することが好ましい。
【0075】
乾燥工程において、金属粉末は充分に乾燥される。
【0076】
次に、導電性粒子4の粒子径の上限値に相当する『メッシュ』や『目開き』を有する第1の篩が準備され、乾燥工程において乾燥された金属粉末が当該第1の篩に投入され、上限値以下の粒子径を有する金属粉末のみが取り出される。
【0077】
この後、導電性粒子4の粒子径の下限値に相当する『メッシュ』や『目開き』を有する第2の篩が準備され、第1篩工程で取り出された金属粉末が第2の篩に投入され、下限値未満の粒子径を有する金属粉末のみが取り除かれ、本発明における導電性粒子4とされる。
【0078】
(導電性粘着シート1の製造方法)
次に、導電性粘着シート1の製造方法について説明する。
【0079】
まず、上記のようにして製造された導電性粒子4を、この導電性粒子4の含有量が導電性接着剤層3の全体の15〜25重量%の範囲となるように、粘着性物質2に混合及び混練し、粘着性物質2に導電性粒子4を均等に分散させる。そして、離型シート7上に、導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質2の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲となるように導電性接着剤層3を塗布させ、乾燥させる。次に、離型シート7が貼設されていない面に、離型シート6をラミネートさせて、巻き取る。次に、使用する際に、適宜の大きさにスリットさせ、図1の導電性粘着シート1とされる。
【0080】
(導電性粘着シート1の使用方法)
次に、図1の導電性粘着シート1及び導電性粘着シート1を有した電磁波シールド材10の使用方法について説明する。尚、本実施形態においては、導電性粘着シート1を用いて電磁波シールド材10を製造し、この電磁波シールド材10を用いて間接的に導電性粘着シート1を電磁波シールド材10の製造に適用する場合について説明するが、電磁波シールド材10を直接的にプリント配線板の製造に使用してもよい。
【0081】
先ず、導電性粘着シート1の一方面に、電解メッキ法等の層形成方法により金属層8が形成される。そして、離型シート6・7が導電性粘着シート1と金属層8とを挟持するように貼設される。これにより、図8(b)に示すように、導電性接着剤層3と金属層8とが積層された電磁波シールド材10bが形成される。
【0082】
上記のようにして形成された電磁波シールド材10bは、図9に示すように、回路基板66(基体フィルム)に対して電磁シールドを行う際に使用される。
【0083】
ここで、回路基板66は、ベースフィルム63と、ベースフィルム63上に形成されたプリント回路64(信号回路64a及びグランド回路64b)と、少なくとも一部(非絶縁部)64cを除いてプリント回路64上に形成された絶縁フィルム65とを備えている。
【0084】
ベースフィルム63および絶縁フィルム65は、いずれもエンジニアリングプラスチックからなる。例えば、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンツイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂が挙げられる。あまり耐熱性を要求されない場合は、安価なポリエステルフィルムが好ましく、難燃性が要求される場合においては、ポリフェニレンサルファイドフィルム、さらに耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが好ましい。
【0085】
また、ベースフィルム63とプリント回路64との接合は、接着剤によって接着してもよいし、接着剤を用いない、所謂、無接着剤型銅張積層板と同様に接合してもよい。また、絶縁フィルム65は、可撓性絶縁フィルムを接着剤により貼り合わせてもよいし、感光性絶縁樹脂の塗工、乾燥、露光、現像、熱処理などの一連の手法によって形成してもよい。また、更には、回路基板66は、ベースフィルムの一方の面にのみプリント回路を有する片面型プリント配線板、ベースフィルムの両面にプリント回路を有する両面型プリント配線板、この様なプリント配線板が複数層積層された多層型プリント配線板、多層部品搭載部とケーブル部を有するフレクスボード(登録商標)や、多層部を構成する部材を硬質なものとしたフレックスリジッド基板、或いは、テープキャリアパッケージの為のTABテープ等を適宜採用して実施することができる。
【0086】
上記のようなプリント配線板110は、回路パターンが形成された回路基板66と、回路基板66に接着された電磁波シールド材10(導電性粘着シート1)とを有した構成となる。これにより、プリント配線板110は、電磁波シールド材10中の金属層8により回路基板66の回路信号が安定化されている。さらに、プリント配線板110は、電磁波シールド材10により電磁シールド効果を有し、且つ、物理的に保護されたものとなる。
【0087】
尚、導電性粘着シート1及び電磁波シールド材10は、FPC、COF(チップオンフレキ)、RF(フレックスプリント板)、多層フレキシブル基板、リジット基板などに利用できるが、必ずしもこれらに限られない。
【実施例】
【0088】
実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、粘着性、導電性、粒子径、円形度、粘着性物質露出面積比、導電性粒子の露出高さ、信頼性試験、剥離試験は、以下のように測定した。
【0089】
(粘着力試験)
本発明の粘着力(粘着性)は、粘着テープ・粘着シート試験方法(JIS Z 0237)に準拠して測定した。
【0090】
(導電性試験)
本発明の導電性(電気抵抗値)は、図10に示す測定方法により行なった。まず、導電性粘着剤層3の一方面を、被貼付部材であるSnメッキCu箔5aの一端に貼り合わせた。次に、導電性粘着剤層3の他方面を、被貼付部材であるNiメッキSUS304(5b)の一端に貼り合わせ、2kgゴムローラーにて圧着させた後、1時間放置した。その後、mΩHi tester(HIOKI社製)を用いて、NiメッキSUS304(5b)と、SnメッキCu箔(5a)との間の接続抵抗値(電気抵抗値)を測定した。
【0091】
(粒子径・円形度測定)
本発明の導電性粒子4の粒子径、及び円形度は、フロー式粒子像分析装置であるFPIA3000(シスメックス社製)を用いて測定した。具体的には、対物レンズは標準対物レンズ(10倍)を用い、明視野の光学システムで、LPF測定モード(低倍率撮影モード)5倍にて、10000個の導電性粒子4を計測し、導電性粒子4の粒子径、長径、短径、及び円形度を求めた。なお粒子径は、導電性粒子4の投影面積と同じ投影面積を持つ円を想定し、その円の直径(円相当径)を粒子径とした。円形度は、円相当径の円の周囲長を、導電性粒子4の投影像の周囲長で除した値である。また、平均粒子径は、各粒子の粒子径を足し合わせ、全粒子数で除して算出した値であり、円形度の平均値(平均円形度)は、各粒子の円形度を足し合わせ、全粒子数で除して算出した値である。
【0092】
(粘着性物質露出面積比、粉体露出面積比の測定)
本発明の粘着性物質露出面積比、粉体露出面積比は、以下の方法により測定した。まず、CCD(Charge Coupled Device)カメラを用いて、導電性粘着剤層3の表面を撮影し、導電性粘着剤層3の投影画像を取得した。次に、取得した画像を画像処理することで、粘着性露出面積2a、導電性投影露出面積4a、粘着性露出面積2aと導電性投影露出面積4aとを加算した接着剤層投影面積3aを算出した。そして、粘着性物質露出面積比、及び粉体露出面積比を算出した。
【0093】
(導電性粒子4の露出高さ測定)
本発明の導電性粒子4の露出高さは、レーザ走査型顕微鏡を用いて測定した。具体的に図11を用いて説明する。
【0094】
測定には、図11(a)に示すように、導電性粘着剤層3の一方面を、離型シートであるPETセパレータ7aが貼設され、導電性粘着剤層3の他方面を、離型シートである紙セパレータ6aが貼設された導電性粘着シート1を用いた。
【0095】
まず、図11(b)に示すように、紙セパレータ6aを、導電性粘着剤層3から剥離した。次に、図11(c)に示すように、レーザ走査型顕微鏡の測定を容易にするため、紙セパレータ6aが剥離された導電性粘着剤層3の面を白金蒸着し、白金蒸着層20を形成した。白金蒸着は、AUTO FINE COATER (JEOL社製、JFC-1600)を用い、30mAのスパッタリング電流で300秒間の条件下で行なった。
【0096】
その後、図11(d)に示すように、白金蒸着された導電性粘着剤層3の面を、レーザ走査型顕微鏡(KEYENCE社製、VK−8510)を用いて走査し、試料表面の高さ情報を取得し導電性粒子4の露出高さを算出した。なお、導電性粒子の露出高さは、基準値と導電性粒子4の頂点との距離とした。ここで基準値とは、図11(d)に示すように、取得した試料表面の高さ情報を基に、粘着性物質2に相当する、試料表面の高さが最も低い箇所の値である。また、導電性粒子4の頂点とは、試料表面において、基準値から最も距離が離れている箇所である。
【0097】
(信頼性試験)
被貼付部材5である金属板を導電性粘着剤層3の両面に付着させた導電性粘着シートを、以下の二つの環境下にそれぞれおいた。その後、導電性及び粘着性を、それぞれの環境下においた導電性粘着シート毎に測定した。
環境1:温度85℃、1000時間
環境2:温度60℃、湿度95%RH、1000時間
【0098】
(剥離試験)
導電性粘着剤層3を被貼付部材(SUS、金、銅、PI)に挟みこみ、2kgゴムローラーにて1往復圧着させた後、180°剥離を行なった。
【0099】
(製造方法)
以下、実施例、及び比較例の試料の製造方法について説明する。
導電性粒子は、上述の導電性粒子の製造方法等によって作製された各種の形状及び所定の粒子径(短径、長径)を有する金属粉末を使用した。実施例、及び比較例各々における導電性粒子の種類、短径の平均値、長径の平均値、平均円形度、製造方法を表1に示す。なお、全ての実施例、及び比較例において、粒子表面に凹凸部が形成されている導電性粒子を使用した。
【0100】
【表1】

【0101】
実施例、及び比較例の粘着性物質は、表2に示す組成比で混合したものを使用した。
【0102】
【表2】

【0103】
上記のようにして製造された導電性粒子4を、導電性粒子4の含有量が導電性接着剤層3全体の15〜25重量%の範囲となるように粘着性物質2に混練し、導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質2の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲に設定された導電性接着剤層3からなる導電性粘着シート1を準備した。そして、これらの導電性粘着シート1を実施例1〜11の試料とした。また、本発明との比較をするために、導電性粒子の含有量が導電性接着剤層全体の30重量%に設定された比較例1〜3、導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質の厚みの平均値が2.38倍である比較例4、他社製品である比較例5の試料を用意した。
【0104】
次に、導電性粘着シートを金属板(SnメッキCu、NiメッキSUS304)で挟みこみ、2kgゴムローラーにて圧着させた。そして、粘着力(粘着性)を測定すると共に、金属板間における電気抵抗値(導電性)を各試料について測定した。実施例1〜9、及び比較例1〜3の測定結果を表3、及び図12、13に示す。なお、実施例1〜9、及び比較例1〜3の導電性粒子は、AgコートNi粉である。
【0105】
【表3】

【0106】
表3、及び図12、図13から以下のことが判明した。
即ち、本発明の導電性粘着シート1を用いた場合、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られるのに対して、導電性粒子の含有量が導電性接着剤層全体の15〜25重量%の範囲外にある導電性粘着シートでは、粘着性が得られず、これにより所望の導電性を確保できないことが判る。
【0107】
また、本発明の導電性粘着シート1において、電気抵抗値(接続抵抗値)が50mΩ/25mm以下の高い導電性を確保しつつ、粘着力が8N/25mm以上の高い粘着性を得ることができる好ましい設定条件(図12、13の図中の円で囲んだプロット点)があることが判る。即ち、導電性粒子4の含有量が導電性接着剤層3全体の20〜25重量%の範囲であり、導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質2の厚みの平均値が1.25倍である設定条件と、導電性粒子4の含有量が導電性接着剤層3全体の25重量%であり、導電性粒子4の平均粒子径に対して粘着性物質2の厚みの平均値が1.25〜1.375倍である設定条件である。
【0108】
次に、実施例1〜9、比較例1〜3の試料の導電性粘着シートにおける粘着性物質露出面積比、及び粉体露出面積比の測定結果、及び導電性、粘着性の測定結果を表4、図14、及び図15に示す。なお、導電性粘着シートの使用に耐える範囲は、粘着力が3N/25mm以上、且つ電気抵抗が100mΩ/25mm以下であり、好ましくは粘着力が8N/25mm以上、且つ電気抵抗が50mΩ/25mm以下である。
【0109】
【表4】

【0110】
表4、図14、及び図15から以下のことが判明した。
即ち、本発明の導電性粘着シート1を用いた場合、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られるのに対して、粘着性物質露出面積比が97.5%〜99.0%の範囲外(粉体露出面積比が1.0%〜2.5%の範囲外)にある導電性粘着シートでは、粘着性が得られず、これにより所望の導電性を確保できないことが判る。
【0111】
また、本発明の導電性粘着シート1において、電気抵抗が50mΩ/25mm以下の高い導電性を確保しつつ、粘着力が8N/25mm以上の高い粘着性を得ることができる好ましい設定条件(図14、図15の図中の円で囲んだプロット点)があることが判る。即ち、粘着性物質露出面積比が97.5%〜98.5%の範囲、換言すれば粉体露出面積比が1.5%〜2.5%の範囲である。
【0112】
次に、実施例1〜9の試料の導電性粘着シート1における導電性粒子4の露出高さ、導電性、及び粘着性の測定結果、並びに信頼性試験結果を表5、図16に示す。なお、表中の信頼性試験結果の表示は、以下の基準によった。
○:条件Aを満たし、且つ、環境1及び環境2の環境下に置いた後に、粘着力が3N/25mm以上、電気抵抗が1Ω/25mm以下が確保されていること。
△:条件Aを満たし、且つ、環境1及び環境2の環境下に置いた後に、粘着力が3N/25mm以上、電気抵抗が1Ω/25mm以下が確保されていないこと。
なお、上記の条件Aとは、環境1及び環境2の環境下に置く前において、粘着力が3N/25mm以上、電気抵抗が100mΩ/25mm以下が確保されていることをいう。
【0113】
【表5】

【0114】
表5、及び図16から以下のことが判明した。
即ち、導電性粒子4の露出高さが15μm以下の導電性粘着シート1では、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られることが判る。また、導電性粒子4の露出高さが10μm以下の導電性粘着シート1(図16の図中の円で囲んだプロット点)では、良好な信頼性を示すことが判る。
【0115】
次に、実施例10〜11、比較例4の試料の導電性粘着シートにおける導電性粒子の導電性、及び粘着性の測定結果を表6に示す。なお、実施例10〜11、及び比較例4の導電性粒子は、AgコートCu粉である。
【0116】
【表6】

【0117】
表6から以下のことが判明した。
即ち、導電性粒子4の円形度の平均値が0.80以上である本発明の導電性粘着シート1を用いた場合、所望の導電性を確保しつつ、使用する種類の粘着性物質から予想される所望の粘着性が安定して得られるのに対して、導電性粒子の平均粒子径に対して粘着性物質の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲外にある導電性粘着シートでは、電気抵抗が高く、所望の導電性を確保できないことが判る。
【0118】
次に、実施例5、比較例5の試料の導電性粘着シートにおいて、SUS、金、銅、PIをそれぞれ被貼付部材とした際の剥離試験結果を表7、及び図17に示す。
【0119】
【表7】

【0120】
表7、及び図17から以下のことが判明した。
即ち、本発明の導電性粘着シート1は、様々な被貼付部材に対して他社製品である比較例5に対して同等、もしくは良好な粘着力を示すことが判る。例えば、被貼付部材が銅の場合、本発明の導電性粘着シート1は、比較例5の導電性粘着シートに対して約2倍の粘着力を有していることが判る。
【0121】
尚、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0122】
1 導電性粘着シート
2 粘着性物質
3 導電性接着剤層
4 導電性粒子
5 被貼付部材
6 離型シート
7 離型シート
8 金属層
10 電磁波シールド材
110 プリント配線板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状に形成された粘着性物質と当該粘着性物質に分散された導電性粒子とを有する組成物で構成される導電性接着剤層を有しており、
前記導電性粒子の平均粒子径に対して前記粘着性物質の厚みの平均値が0.8倍〜1.4倍の範囲である第1条件と、
前記導電性粒子の含有量が前記導電性接着剤層全体の15〜25重量%の範囲である第2条件とを満たすように形成されていることを特徴とする導電性粘着シート。
【請求項2】
前記粘着性物質から外部に露出された前記導電性粒子により除かれた前記粘着性物質の粘着性露出面積における全面積に対する単位面積当り割合の平均値が97.5%〜99.0%の範囲であり、前記粘着性物質から外部に露出された前記導電性粒子の露出高さの平均値が15μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性粘着シート。
【請求項3】
前記導電性粒子の円形度の平均値が0.8以上であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の導電性粘着シート。
【請求項4】
前記導電性粒子は、粒子表面に凹凸部を有することを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項5】
前記導電性粒子は、金属材料により形成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項6】
前記導電性粒子は、AgコートCu粉、又はAgコートNi粉であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項7】
前記粘着性物質は、熱可塑性エラストマ樹脂であることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項8】
前記粘着性物質は、アクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項9】
前記粘着性物質に粘着性付与剤を添加していることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の導電性粘着シート。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1項に記載の導電性粘着シートと、
前記導電性粘着シートの一方面に位置された金属層と
を有することを特徴とする電磁波シールド材。
【請求項11】
請求項1ないし10の何れか1項に記載の導電性粘着シートと、
前記導電性粘着シートの一方面に位置された金属層と
前記導電性粘着シートの他方面に位置され、プリント回路を含む基板と、
を有することを特徴とするプリント配線板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−168518(P2010−168518A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14773(P2009−14773)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(503346913)タツタ システム・エレクトロニクス株式会社 (31)
【Fターム(参考)】