説明

小型炭化炉

【課題】 従来のごみ炭化装置は、飽和水蒸気と過熱水蒸気の製造装置と、炭化炉が別々の構造であるために装置が大型化し、設備費が高くなる欠点をもつ。
【解決手段】 飽和水蒸気と過熱水蒸気の製造装置と、炭化炉が一体になった小型炭化炉を提供する。
すなわち、炭化炉の炉体天井を貫通して縦方向に火炎筒を立設し、この火炎筒の中に、飽和水蒸気と過熱水蒸気を製造するボイラー管を配置し、火炎筒の下端はバーナーの炎の噴射口と連結する。過熱水蒸気のボイラー管は下位に、飽和水蒸気ボイラー管は上位に配置した構造として生成した過熱水蒸気を炉内に吹き込む構造を採用する。炉内で熱分解して生成した燃焼ガスは、火炎筒の下部に設けた熱分解ガス吸入口から吸い込み、空気と混合して燃焼させて、飽和水蒸気ボイラー管を加熱する燃料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ごみや汚泥等の有機物の炭化装置に係り、更に詳しくは、家庭や、町の店先に置けるような携帯できる小型の炭化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生ごみや汚泥等の有機物を、過熱水蒸気を利用して炭化することは既に公知である。
過熱水蒸気を使用するためには、先ず過熱水蒸気を作らなければならない。
過熱水蒸気の製造は、先ず水を沸騰させて飽和水蒸気を製造し、できた飽和水蒸気を過熱して過熱水蒸気とする必要がある。
特許文献1に開示されているように、従来の装置は、飽和水蒸気の製造装置と、水蒸気の過熱装置と、過熱水蒸気を吹き込む炭化炉が別々の構造であり、装置が大型化し、設備費が極めて高くなる欠点がある。
炭化はごみの減容化に極めて有効である。また併せて無害安全にそのまま埋め立てに利用、あるいは土壌改良剤として有効に利用できる利点もある。小型の炭化装置を街角、コンビニ等の店先に配置することで、ごみを現地で直接減容、炭化できる可能性もある。
【0003】
【特許文献1】特開2000−63848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型で持ちはこびでき、街角、コンビニ等の店先に配置することが可能な有機物の炭化装置を提供することである。
【問題を解決するための手段】
【0005】
炭化炉に関する上記問題点は、下記構成の本発明炭化炉によって解決することができる。
すなわち、本発明炭化炉の構造は、
1.有機物の投入口を有する密閉された炉体の天井を貫通して縦方向に火炎筒を立設し、この火炎筒の下端はバーナーの炎の噴射口と連結すると共に、火炎筒の上端に排ガス排出口を設け、この火炎筒の内部、下の位置に、過熱水蒸気生成用のスーパーヒーターのボイラー管を縦方向に配置し、スーパーヒーターの出口側は、密閉された炉体の中に過熱水蒸気を噴射させる噴射ノズルと連結させる。
火炎筒の内部、スーパーヒーターの上の位置には、飽和水蒸気生成用のボイラー管を縦方向に配置して、ボイラー管の入り口側は給水口と、出口側はスーパーヒーターのボイラー管の入り口側と連結し、かつ火炎筒の少なくとも飽和水蒸気生成用のボイラー管よりも下の位置に、炉体の中で分解生成された有機物の熱分解ガス吸入口を設け、かつ、このスーパーヒーターのボイラー管と飽和水蒸気生成用のボイラー管の間に、空気の吹込口を開口させてなることを特徴とする。
上記構成において、
2.炭化炉炉体の底部には逆V型で、揺動する火格子を設けてなることを特徴ともしている。
【発明の効果】
【0006】
1. 炭化炉と飽和蒸気生成装置、過熱水蒸気生成装置が一体になった小型で持ちはこび出来、ごみを現地で直接炭化できる。
2. 燃料コストが極めて安く、省エネ性に極めて優れている。
3. 家庭ごみ、産業廃棄物、あらゆる有機物の炭化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明炭化炉の構造とその作用機能を図面で説明する。
第1図は、本発明実施例の正面断面図である。図2は、側面断面図である。
図3は、図1、図2に示した小型炭化炉の、火炎筒部分を拡大した図である。
図4は、図1、図2に示した小型炭化炉の、燃焼室部分を拡大した図である。
【0008】
炭化炉1の炉体は内面に断熱材2を貼り付けた構造からなり、投入口3の蓋を開けて炭化する有機物を投入する。
投入する有機物は、生ごみ、残飯、野菜屑、食品屑、汚泥、廃プラスチック、ビール、焼酎の絞り粕等、日常生活で排出される有機質のごみ類、および有機10 質産業廃棄物等、全ての有機質廃棄物を投入して炭化することができる。
【0009】
火炎筒4は、炭化炉1の炉体の天井を貫通して立設されている。
火炎筒4は耐熱鋼で作られたパイプで、下端はバーナー炎の噴出し口と連結されており、上端は排ガス排出口となっている。
火炎筒内部の下の位置には、過熱水蒸気生成用のスーパーヒーターのボイラー管が縦方向に配置されている。
過熱水蒸気生成用スーパーヒーターのボイラー管の上には、飽和水蒸気生成用のボイラー管が縦方向に配置されている。
スーパーヒーターボイラー管の出口側は、密閉された炉体の中に過熱水蒸気を噴射させる噴射ノズルに連結されている。
スーパーヒーターボイラー管の入り口側は、飽和水蒸気生成用のボイラー管の出口側と連結されている。飽和水蒸気生成用ボイラー管の入り口側は、給水パイプと連結されている。
スーパーヒーターボイラー管と飽和水蒸気生成用のボイラー管の間には、空気の吹込み口が開口している。
【0010】
而して、その作用機能を説明すると、先ず上昇するバーナー火炎は、スーパ25ーヒーターボイラー管を概ね750℃程度まで加熱して、飽和水蒸気生成用のボイラー管から流れ込んだ飽和水蒸気を過熱水蒸気に変える。
過熱水蒸気に変えられた蒸気は、過熱水蒸気噴射ノズルから炭化炉内に噴射される。これにより炉内は概ね400〜500℃程度の温度に加熱される。
【0011】
炉内は無酸素状態の過熱水蒸気雰囲気であるために、炉内に投入された有機物は、燃焼することなく、水分及び揮発性の非有機質成分、有機質成分は共に蒸発、一部の有機物は熱分解されてガスとなる。非熱分解成分は炭化されて、固形の炭化物となる。
【0012】
炭化炉内のガスの成分は、これら水分、揮発性の非有機質成分、有機質成分及び有機物の熱分解ガスからなり、極めて燃焼性に富むガスである。
【0013】
スーパーヒーターボイラー管と飽和水蒸気生成用のボイラー管の間には、空気の吹込み口が開口しており、送風機から送られた空気が吹き込まれる。これによって空気吹込み口の下側の火炎筒は、負圧になる。
第3図火炎筒の拡大図に示したように、スーパーヒーターのボイラー管が配置された付近の火炎筒には、炭化炉内のガスを吸入する穴が開いており、負圧になった火炎筒内には、この穴から炭化炉内のガスが吸引されることとなる。
【0014】
第4図燃焼室の拡大図に示したように、吸引されて上に上昇した炭化炉内のガスは吹き込まれた空気と混合され、そして上昇した火炎によって着火されて燃焼する。飽和水蒸気生成用ボイラー管が収納されている火炎筒部分は、炭化炉内のガスの燃焼室となる。
燃焼室の中で、飽和水蒸気生成用ボイラー管は概ね750〜800℃程度まで加熱され、給水パイプから供給された水はここで飽和水蒸気となる。
燃焼を終えたガスは、排ガス排出口から外に排出される。
【0015】
炉底には細長い逆V型の火格子が上下多段に吊るされており、炭化炉運転中は左右に揺動する。揺動する機構は図示していないが、手動、自動、いずれの機構でもかまわない。本発明の火格子は逆V型に折れ曲がっているために、平板型の火格子に比べて表面積が大きく、流動物も滴下中に気体化する。また床は常に左右に揺動しているので、火格子に被炭化物が引っかかって棚を作ることを防止できるのが特徴である。
投入されて、未蒸発の水分を含む有機物は、火格子の上に溜まり、上の火格子から下の火格子に順次落下する途中で全ての水分が蒸発し、炭化物となり火格子の下に落下する。
火格子の下の床は、スライドして引出せる箱型になっており、炭化物が適当に溜まった所で引き出して、中の炭化物を外に排出し、豆炭燃料、土壌改良剤、活性炭などに再利用する。
【実施例1】
【0016】
実施例によって本発明を説明する。
炭化炉の構造:第1図の構造(厚さ4.5mmの鉄板の溶接構造)
内面に、厚さ100mmの断熱材を貼り付け。
炉体部寸法:幅1850×奥行き1000×高さ1850mm(車載で持ち運び可)
炉内内容積 :0.48m
バーナーは灯油バーナーを使用。
灯油の使用量:5リットル/時間
炉内温度:バーナー加熱部750℃で、約10分で過熱水蒸気が発生し、炉内温度は450℃に到達した。
ごみの種類:弁当の残飯、弁当容器、家庭用廃プラスチック容器、野菜屑、銀紙、アルミ箔。
ごみの量 :コンビニのごみ袋8袋。概ね0.3m程度の容積。
ごみ袋を炭化炉に投入して約1時間で炭化が完了。
コンビニのごみ袋8袋は体積が1/50の炭になった。残渣は、未燃焼の銀紙、アルミ屑が少々。炭は、土壌改良剤、床下調湿材として利用することができた。また排ガスは無色、無臭であった。
【産業上の利用可能性】
【0017】
以上詳記した様に、本発明小型炭化炉は、車で持ち運び可能であるので、有機質廃棄物であれば、いかなるものでも、現地で簡単、簡便、迅速に、かつ悪臭を発生させることも無く、炭化、減容化でき、ごみ収集コスト、ごみ処理費用の低減、大型のごみ処理施設の建設を不用とするものであり、廃棄物処理分野で多大の貢献をなすものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明小型炭化炉の、実施の一形態の正面断面図である。
【図2】図2は本発明小型炭化炉の、実施の一形態の側面断面図である。
【図3】図3は、図1、図2に示した小型炭化炉の、火炎筒部分を拡大した図である。
【図4】図4は、図1、図2に示した小型炭化炉の、燃焼室部分を拡大した図である。
【図5】図5は、火格子の作用機能を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物の投入口を有する密閉された炉体の天井を貫通して縦方向に火炎筒を立設し、該火炎筒の下端はバーナーの炎の噴射口と連結すると共に、火炎筒の上端に排ガス排出口を設け、該火炎筒の内部、下の位置に、過熱水蒸気生成用のスーパーヒーターのボイラー管を縦方向に配置し、該スーパーヒーターの出口側は、密閉された炉体の中に過熱水蒸気を噴射させる噴射ノズルと連結させ、該火炎筒の内部、該スーパーヒーターの上の位置には、飽和水蒸気生成用のボイラー管を縦方向に配置して、該ボイラー管の入り口側は給水口と、出口側は該スーパーヒーターのボイラー管の入り口側と連結し、かつ該火炎筒の少なくとも飽和水蒸気生成用のボイラー管よりも下の位置に、炉体の中で生成されたガス吸入口を設け、かつ、該スーパーヒーターのボイラー管と飽和水蒸気生成用のボイラー管の間に、空気の吹込口を開口させてなることを特徴とする小型炭化炉。
【請求項2】
上記炭化炉炉体の底部には逆V型で、揺動する火格子を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の小型炭化炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−63524(P2007−63524A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290476(P2005−290476)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(306011964)株式会社 アイティボックス (8)
【Fターム(参考)】