説明

少なくとも1つのエーテル基を有する化合物の製造方法

本発明は、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を有する化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物を調製するための方法であって、a1)グリセロールが触媒の存在下で水素化され、グリセロールが多くとも95%まで反応され、1,2−プロパンジオール相が得られる方法によって1,2−プロパンジオールを調製する工程と、a2)この1,2−プロパンジオール相を少なくとも1つの活性水素原子、少なくとも1つのエポキシド基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物と反応させる工程と、を含む方法、ならびに、この方法を用いて得ることができ、かつ少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、化学製品におけるこの化合物の使用、化学製品、エマルションを調製するための方法およびこの方法を使用して得ることができるエマルション、化粧品配合物および化粧品配合物を調製するための方法、プラスチック材料組成物およびその調製、掘削用組成物およびその調製に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基もしくは少なくとも1つのウレタン基またはこれらのうちの少なくとも2つを有する化合物を調製するための方法に関する。本発明はまた、この方法を用いて得ることができ、かつ少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、化学製品における当該化合物の使用、化学製品、エマルションを調製するための方法およびこの方法を使用して得ることができるエマルション、化粧品組成物およびこの化粧品組成物を調製するための方法、プラスチック材料組成物およびその調製、掘削用組成物およびその調製および1,2−プロパンジオール相の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば脂肪酸エステルなどの有機酸のエステルは、乳化剤、特に化粧品組成物中の乳化剤として頻繁に使用される。この場合、この乳化剤はエマルションの安定性を改善する働きをする。この場合、特に頻繁に、有機酸を1,2−プロパンジオールでエステル化することによって得られるエステルも使用される。この場合、使用される1,2−プロパンジオールの純度は重要な役割を果たし、少なくとも98重量%の純度を有する1,2−プロパンジオールが、従来から使用されている。
【0003】
1,2−プロパンジオールは、グリセロールの接触水素化、またはプロピレンオキシドの触媒的水和によってしばしば調製される。グリセロールの水素化による1,2−プロパンジオールの調製は何度か記載されているが、これまでのところ、工業的実施が確立されるところまでに到っていない。
【0004】
特許文献1は、グリセロールの水素化を開示する。この特許文献1の実施例1によると、1〜1.5体積%のグリセロールを含む水素のストリームが、ガラスビーズに結合された触媒の上を200〜210℃で通過する。この場合得られるのは液体であり、これは、この水素化の際に形成された水を除去した後、分留に供される。
【0005】
特許文献2は、ポリオキシ化合物の水素化を記載する。この場合、液体または固体のポリオキシ化合物は、水溶液または懸濁液中、触媒の存在下で水素で処理される。実施例1では、グリセロールおよびニッケル触媒が、ボンベ中、200〜240℃および100atm(約10.1MPa)の圧力で、水素で処理される。特許文献2に記載される方法は、使用されるグリセロールがほとんど完全に反応される不連続バッチプロセスである。
【0006】
特許文献3によれば、グリセロールの水素化は、20重量%までの水分含量を有するグリセロールが使用され、特定の触媒(40〜70% Co、10〜20% Mn、0〜10% Moおよび0〜10% Cuの含量を有する)が水素化に使用されるようにして実施される。特許文献3の教示によれば、使用されるグリセロールは完全に反応される。
【0007】
本願明細書中上記の文献から明らかなように、グリセロールからの1,2−プロパンジオールの調製において、すべての場合でグリセロールのほとんど完全な反応のための努力がなされている。さらに脱水素化の過程にわたって多くの副生成物が形成されるため、このようにして少なくとも98重量%の純度を有する1,2−プロパンジオールを得るために、脱水素化の際に得られる1,2−プロパンジオール相を、例えば蒸留によって精製することがさらに慣用的である。
【0008】
エステル、例えば脂肪酸エステルが、このようにして得られた1,2−プロパンジオールを用いて調製される場合、かかるエステルの特性はしばしば不都合である。乳化剤として使用される場合は特に、この種のエステルが有する安定化効果には満足できないことがしばしばである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第524101(C)号明細書
【特許文献2】独国特許第541362(C)号明細書
【特許文献3】米国特許第5,616,817号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、先行技術から生じる欠点を少なくとも部分的に克服するという目的に基づく。
【0011】
加えて、本発明は、できるだけ少ない工程で、エーテルまたはエステルを調製するために使用することができ、かつそのエーテルまたはエステルのアルコール成分が再生できる原料から、または再生できる原料から得ることができる未加工物質から調製できる方法を特定するという目的に基づく。加えて、この方法を使用して得ることができるエーテルまたはエステルは、従来のエーテルまたはエステルに対して有利な、そうでなければ少なくとも等しく良好な特性を有するべきである。乳化剤として使用される場合は特に、それらは従来の乳化剤と比べてより良好な安定性を可能にするべきである。
【0012】
本発明はまた、乳化剤として使用される場合に、当該技術分野で公知のエーテルまたはエステル化合物と比べて、エマルションの顕著により良好な安定化を可能にするエーテルまたはエステルを提供するという目的に基づく。
【0013】
さらに、本発明は、例えば化粧品組成物の基礎としての役割を果たすことができるエマルションであって、当該技術分野で公知のエマルションと比べて、より良好な安定性を特徴とするエマルションを提供するという目的に基づく。このエマルションはまた、当該技術分野で公知でありかつ乳化剤として1,2−プロパンジオールのエステルを含有するエマルションと比べてより良好な匂いの品質を特徴とするべきである。
【0014】
本発明はまた、1,2−プロパンジオールに基づき、かつ不快および/または強烈な匂いをも有せず、むしろせいぜい控えめな匂いを有し、好ましくは無臭であるべきであるエーテルまたはエステル化合物を提供するという目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願明細書中上記の目的の少なくとも1つを成し遂げることへの1つの寄与は、独立請求項、本発明に係るさらなる実施形態を表す独立請求項に従属する従属請求項の発明主題によって提供される。
【0016】
本願明細書中上記の目的を成し遂げることへの1つの寄与は、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基、少なくとも1つのウレタン基またはこれらのうちの少なくとも2つを有する化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物を調製するための方法であって、
a1)好ましくは不均一系触媒、特に好ましくは不均一系、銅含有触媒、最も好ましくは不均一系、銅−クロム含有触媒の存在下でグリセロールが好ましくは連続的に水素化され、グリセロールは多くとも95重量%まで、好ましくは多くとも90重量%まで、さらにより好ましくは多くとも85重量%まで、加えて好ましくは多くとも80重量%まで、加えてさらにより好ましくは多くとも75重量%まで、最も好ましくは多くとも70重量%まで反応され、1,2−プロパンジオール相が得られるプロセスによって1,2−プロパンジオールを調製する工程と、
a2)上記工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相を少なくとも1つの活性水素原子、少なくとも1つのエポキシド基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物と反応させる工程と
を含む方法によって提供される。
【0017】
さらに、好ましい実施形態によれば、工程a1)ではグリセロールは、少なくとも30重量%まで、好ましくは少なくとも40重量%まで、または少なくとも50重量%まで、さらに好ましくは少なくとも60重量%まで、または少なくとも65重量%まで、さらにより好ましくは少なくとも70重量%まで、最も好ましくは少なくとも80重量%まで反応され、そして1,2−プロパンジオール相が得られる。特に好ましくは、グリセロールは、工程a1)で50〜95重量%、または60〜95重量%、または70〜90重量%の範囲で反応される。
【0018】
本願明細書で使用される重量%は、信号の表面積を積分することによってガスクロマトグラフィ分析から得たものであり、試料として測定した組成物の総重量に対する値である。測定値を較正および点検するために、この重量%は、ガスクロマトグラフィによって測定した試料由来の個々の構成成分の蒸留および重量測定によって確認した。
【0019】
本発明に係る方法のさらなる構成では、低沸点物質もしくは水の分離または水および低沸点物質からの分離を行うことができる。この分離、または分離のこの組み合わせは、工程a1)における変更態様として、工程a1)の後、工程a2)の前、工程a2)において、もしくは工程a2)の後、またはこれらの変更態様のうちの少なくとも2つの組み合わせで行うことができる。低沸点物質の例としては、特に、1,2−プロパンジオールの沸点より下で沸騰する物質が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
少なくとも1つの活性水素原子を有する化合物は、この場合好ましくは、炭素とは異なる原子に結合した、好ましくは酸素原子、窒素原子または硫黄原子に、特に好ましくは酸素原子または窒素原子に、最も好ましくは酸素原子に結合した少なくとも1つの水素原子を有する化合物を意味する。少なくとも1つの活性酸素原子を有するこれらの化合物は、それゆえ、好ましくはOH基、COOH基、NH基、NRH基(式中、Rはさらなる有機残基、例えばアルキルまたはアルケニル基などである)またはSH基を有する。
【0021】
驚くべきことに、しかしながら有利なことに、例えばアルコール成分として1,2−プロパンジオールを有するエステル、ポリエーテル、エーテル、ポリエーテル、エステルポリエーテル、またはポリウレタンなどの化合物は、純粋な1,2−プロパンジオールではなくむしろグリセロールの単に部分的な水素化によって得られた1,2−プロパンジオール相がこれらの化合物を調製するために使用された場合でも、有利な特性を備えて得られ得るということが見出された。特に、この1,2−プロパンジオール相を使用した結果として得られたエステルは、特に純粋な1,2−プロパンジオールを使用した結果として得られた生成物と比べて、エマルションをはるかに長く安定化させることができる。
【0022】
本発明に係る方法の工程a1)では、グリセロールは、不均一系の、好ましくは銅含有触媒、特に好ましくは不均一系の銅およびクロム含有触媒の存在下で連続的に水素化され、グリセロールは、多くとも95%まで、好ましくは多くとも90%まで、さらにより好ましくは多くとも85%、加えて好ましくは多くとも80%、加えてさらにより好ましくは多くとも75%まで、最も好ましくは多くとも70%まで反応され、1,2−プロパンジオール相が得られる。
【0023】
この場合、使用されるグリセロールの重量による量に基づき20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満の有機溶媒の存在下で、この水素化が実施されることが特に好ましく、有機溶媒がまったく存在しない状態でこの方法を実施することが最も好ましい。多くの場合、この水素化は、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも2重量%の有機溶媒の存在下で実施される。
【0024】
触媒の例としては、工程a1)では、主成分として亜群IおよびVIIIからの金属、金属塩または金属酸化物などを含む完全接触体(Vollkontakt)および担体接触体(Traegerkontakt)が挙げられる。特性を改良するために、さらなる金属をドーパントとして添加することもできる。
【0025】
この場合、いくつか例を挙げるならば、当該金属塩の沈殿、含浸、イオン交換または固体状での反応を含む、様々な方法で上記触媒を製造することができる。
【0026】
使用される触媒は、それ自体は公知であり、例えば脂肪酸メチルエステルからの脂肪アルコールの調製において、または脂肪酸の硬化において使用される水素化触媒の形態であってよい。特に、しかしながら、活性構成成分として銅を有する触媒を使用して上記方法を実施することが提案され、Cuクロマイト、Cu酸化亜鉛、Cu酸化アルミニウムまたはCu二酸化ケイ素が特に好ましく、Cuクロマイト触媒が最も好ましい。
【0027】
本発明の状況で好ましく使用されるCuクロマイト触媒は、各場合とも酸化物触媒の質量に基づき35〜55重量%、好ましくは40〜50重量%の銅、35〜55重量%、好ましくは40〜50重量%のクロムを含み、任意にさらに酸化物の形態のアルカリ土類金属または遷移金属、特にバリウムおよびマンガンを含む。この場合、この触媒が当該酸化物触媒の質量に基づき1〜7重量%、特に1.5〜3重量%のバリウムを含む場合は、有益である。適切な触媒の一例として、およそ47重量%のCuO、46重量%のCr、4重量%のMnOおよび2重量%のBaOを含む触媒に触れておくことにする。この触媒およびそれを製造するための方法は、欧州特許出願公開第254189(A2)号明細書に記載されている。欧州特許出願公開第254189(A2)号明細書に含まれる開示はこれによって明示的に参照され、その中に提供される情報も、本願の一部を形成するはずである。しかしながら、本発明は、Cuクロマイト触媒に限定されない。他の触媒、例えばCu/ZnO触媒またはCu/Al触媒なども使用することができる。本発明に係る方法に適した触媒は、ズードケミー(Suedchemie) AG、ドイツ、およびエンゲルハード社(Engelhard Inc.)、米国から市販されている。
【0028】
この触媒は高表面積および多孔性を有し、従って技術的な応用例にとって特に重要な高い活性および選択性ならびに長期の使用期間をもたらすことがさらに好ましい。従って、この使用される触媒が20〜100m/g、好ましくは70〜80m/gの範囲の比表面積を有する場合が有利である。
【0029】
本発明に係る方法の工程a1)は、連続的におよび不連続的に実施することができ、連続的な手順が特に好ましい。不連続的な手順の場合には、所定量のグリセロールが反応器の中に入れられ、次いで必要とされる反応条件(圧力、温度など)下、触媒の存在下で水素と接触させることによって、脱水素される。この種の方法は、例えば、独国特許第541362(C)号明細書に記載されている。連続的な手順の場合には、蒸気状形態または液体形態で存在することができる水素およびグリセロールを含有するガス相が、触媒固定床にわたって好ましくは連続的に通される。この場合、上記手順は、希釈されたかまたは未希釈の水素が水素化のために使用され、運転は、好ましくは20〜300bar(2〜20MPa)、特に100〜250bar(10〜25MPa)、および150℃〜280℃、特に180〜220℃の範囲の温度で実施される。グリセロールに対する水素のモル比は好ましくは2〜500の範囲、特に好ましくは10〜350の範囲に設定され、過剰の水素が任意に循環される。これは、Hのmol/時間で測定される水素ガスの処理量が、グリセロールのmol/時間で測定されるグリセロール処理量よりも2〜500倍高いことを意味する。この反応比の最も好ましい範囲は30:1〜200:1である。
【0030】
本発明に係る方法の工程a1)は、脂肪酸メチルエステルの水素化によりまたはトリグリセリドから直接脂肪アルコールを調製するための慣用的な公知の反応器(好ましくは固定床反応器である)に類似の反応器で実施することができる。好ましくは、本発明に係る方法の工程a1)は、等温条件下で運転される管型反応器または多管固定床反応器で実施される。構成要素として熱交換プレートを有する反応器の使用も想定できる。管型反応器において、および熱交換プレートを有する反応器においてともに、上記触媒は触媒固定床充填物の形で導入することができ、または管または熱交換プレートの内側へのコーティングとして付着させることもできる。この場合、反応パラメータ、温度および圧力は、それぞれの触媒活性に応じて適合される。反応熱のほとんどは反応器の壁を介して(多管固定床反応器を使用する場合は、使用する反応管の壁を介して、および熱交換プレートを備える反応器を使用する場合はその熱交換プレートを介して)消散され、そのため実際に等温運転が可能である。当該反応器の冷却が空気を介してでは不可能な場合、この反応器は、任意に適切な冷媒を使用して冷却することができ、この冷媒は、多管固定床反応器が使用される場合はその反応管に沿って、熱交換プレートを備える反応器が使用される場合、その熱交換プレート内の流路を通って流れる。適切な冷媒としては、例えば水、熱伝導流体(マルロサーム(Marlotherm)(登録商標)など)または溶融塩が挙げられる。さらに液体グリセロールが触媒固定床にわたって水素に対して並流または向流として、トリクルベッド運転で通されるように、水素化が実施されることが特に好ましい。反応管を使用するさらなる実施形態では、グリセロールは、少なくとも部分的に逆混合を防止する措置の下で、0.1〜20h−1の範囲、好ましくは0.1〜5h−1の範囲、さらにより好ましくは0.2〜3h−1の範囲、さらに好ましくは0.3〜2h−1の範囲のLHSV(「液空間速度、Liquid Hourly Space Velocity」)(触媒体積1mあたりのグリセロールのm/hで表される)で反応管(1本または複数)中の触媒充填物に通される。少なくとも部分的に逆混合を防止するための措置の例としては、原理上、当業者に公知およびこの目的のために当業者には適切と思われるすべての措置が挙げられ、例として、反応器の運転の際の従来から広く行われている流れ条件に応じて通常選択される適切な管断面または管断面/長さ比が挙げられる。
【0031】
水素化のために使用される触媒の有利な構成に関するさらなる詳細は、とりわけ欧州特許出願公開第0334118号特許出願公開第号明細書から推測することができ、この特許文献の開示、特に当該反応器中での逆混合の回避、その反応器の有利な容積量およびその反応器の有利な表面量に関する開示は、参照によって本願明細書に援用したものとし、それらは本発明の開示の一部分を形成する。
【0032】
水素化反応器として単一の固定床反応器を使用することに加えて、少なくとも2つの相互連結された固定床反応器を使用することもでき、水素は、この場合、少なくとも2つの固定床反応器に連続して通され、その反応器から出てその後の反応器に入るガスで冷却されるものはない。この種の方法は、例えば欧州特許出願公開第0515485号明細書に記載されており、2つの相互連結された固定床反応器を使用する場合の水素化プロセスの正確な実施に関するこの特許文献の開示は、参照によって本願明細書に援用したものとし、それらは本発明の開示の一部分を形成する。
【0033】
本発明のさらなる構成では、水素化は、等温条件下で運転されず冷却器に連結された反応器を含む少なくとも1つの反応単位の中で実施することができる。この水素化は、少なくとも1または2以上、多くの場合2〜10の連続する反応単位の中で行うことができる。これらの反応単位は、ほとんど冷却されないかまたはまったく冷却されず、それゆえ非等温的に稼動し、多くの場合管または管の束として構成され、そして冷却領域へと続く少なくとも1つの反応器を有する。この冷却領域は、一般に知られており当業者にとって適切と思われる形態のもの、例えば管型またはプレート型の熱交換器であってよく、また当業者によく知られ当業者にとって適切と思われる任意の冷媒を用いて冷却されてよい。従って、冷媒の例としては、本願明細書中で上に記載したものが挙げられる。1つの具体的な構成では、この冷却は、水素および独国特許出願公開第19843798(A1)号明細書に記載されているものなどを含んでいてよい冷却ガスによって実施される。
【0034】
水素化のために使用されるグリセロールは水を含んでいてよい。しかしながら好ましくは、水分含量は、いずれの場合も水およびグリセロールの総重量に基づき、15重量%未満であるべきであり、特に好ましくは10重量%未満、さらに好ましくは5重量%未満、最も好ましくは2重量%未満であるべきである。無水グリセロールまたはごくわずかの水のみを含むグリセロールを使用することが望ましい場合もある。
【0035】
本発明に係る方法の工程a2)では、工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相は、少なくとも1つの活性水素原子、少なくとも1つのエポキシド基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を有する化合物との反応に供される。
【0036】
この少なくとも1つの活性水素原子を有する化合物は少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物であってよく、その結果、この化合物と1,2−プロパンジオール相との反応後に、少なくとも1つのエーテル基を有する化合物が得られる。少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物が1,2−プロパンジオール含に含まれる1,2−プロパンジオールとの反応に供されるモル比に依存して、ポリエーテル化合物も得ることができる。
【0037】
少なくとも1つの活性水素原子を有する化合物は少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物であってよく、そのため、この化合物と1,2−プロパンジオール相との反応後に、少なくとも1つのエステル基を有する化合物が得られる。この少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物が1,2−プロパンジオール相に含まれる1,2−プロパンジオールとの反応に供されるモル比に依存して、エステルポリエーテル化合物も得ることができる。
【0038】
少なくとも1つの活性水素原子を有する化合物は少なくとも1つのアミノ基を有する化合物であってもよく、そのため、この化合物と1,2−プロパンジオール相との反応後に、少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する化合物が得られる。少なくとも1つのアミノ基を有する化合物が1,2−プロパンジオール相に含まれる1,2−プロパンジオールとの反応に供されるモル比に依存して、アミノポリエーテル化合物も得ることができる。
【0039】
少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物が工程a2)で使用される場合、この化合物を1,2−プロパンジオール相と反応させることによってエーテルまたはポリエーテルも得ることもできる。
【0040】
少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物が工程a2)で使用される場合、この化合物を1,2−プロパンジオール相と反応させることによってウレタンまたはポリウレタンを得ることができる。
【0041】
工程a2)で少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物を使用することは、本発明によれば特に好ましい。この場合、この少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物は、モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸であってよく、モノカルボン酸およびジカルボン酸が特に好ましく、モノカルボン酸、特に脂肪酸が最も好ましい。さらに、この少なくとも1つのカルボン酸を有する化合物が1分子あたり5〜30個、特に好ましくは10〜25個、最も好ましくは15〜20個の炭素原子を有することが好ましい。これに関して、この少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物がC〜C30モノカルボン酸であることが特に好ましく、さらに好ましくはC10〜C25モノカルボン酸、最も好ましくはC15〜C20モノカルボン酸であり、上述のモノカルボン酸は、飽和モノカルボン酸(例えばカプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、魚油、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸またはセロチン酸など)、一価不飽和モノカルボン酸(例えばウンデシレン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エイコセン酸、セトレイン酸、エルカ酸またはネルボン酸)、または多価不飽和モノカルボン酸(例えばリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸またはセルボン酸など)である。
【0042】
上述の脂肪酸は、例えば植物油、硬化植物油、水産油脂および動物性油脂から得ることができる。好ましい植物油としては、トウモロコシ油、キャノーラ油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、高エルカ酸菜種油、部分硬化大豆油または完全硬化大豆油、部分硬化キャノーラ油または完全硬化キャノーラ油、部分硬化ヒマワリ油または完全硬化ヒマワリ油、菜種油、特に部分硬化高エルカ酸菜種油または完全硬化高エルカ酸菜種油、部分硬化綿実油または完全硬化綿実油、パーム油またはパームステアリンが挙げられる。
【0043】
ジカルボン酸の例としては、特にフタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸および無水マレイン酸からなる群から選択される化合物が挙げられ、これらのうちでアジピン酸、テレフタル酸またはアゼライン酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
【0044】
この少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物は、本発明に係る方法の工程a2)で、エステルを与えるために、酸成分として、アルコール成分としての1,2−プロパンジオールとの反応に供される。しかしながらこの場合、原理上は、単一のアルコール成分として1,2−プロパンジオールを使用するのではなく、むしろさらに少なくとも1つのさらなるアルコール成分を使用することも可能であり、その結果、少なくとも2つの異なるエステル基を有する化合物が得られる。この少なくとも1つのさらなるアルコール成分は、四価または多価アルコール(例えばジグリセロール、トリグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールまたはソルビトールなど)、または三価、二価または一価のアルコール(例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなど)、二価アルコール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサンなど)、メタノール、エタノール、1−プロパノールまたは2−プロパノールであってよい。少なくとも1つのさらなるアルコール成分が使用される限りにおいて、しかしながら、1,2−プロパンジオールおよびさらなるアルコール成分の総量のうちでこのさらなるアルコール成分によって形成される割合は、多くとも50重量%、特に好ましくは多くとも25重量%、さらに好ましくは多くとも10重量%および最も好ましくは多くとも5重量%であることが好ましい。
【0045】
本発明に係る方法の1つの特定の実施形態によれば、工程a1)で得られる1,2−プロパンジオール相は、脂肪酸エステルを得るために、脂肪酸との反応に供される。
【0046】
この場合、カルボン酸基:ヒドロキシル基のモル比が、1:1.2〜1:5の範囲、特に好ましくは1:1.5〜1:2の範囲、最も好ましくは1:1.7〜1:1.9の範囲であるような量で、少なくとも1つのカルボン酸基を含む化合物がアルコール成分との反応に供されることが好ましい。
【0047】
さらに、この脂肪酸は、エステル化触媒の存在下で上記アルコール成分との反応、すなわち1,2−プロパンジオール、または1,2−プロパンジオールおよび少なくとも1つのさらなるアルコールの混合物との反応に供されることが好ましい。使用されるエステル化触媒は、酸(例えば硫酸またはp−トルエンスルホン酸など)、または金属およびその化合物であってよい。例えばスズ、チタン、ジルコニウムが適切であり、これらは微粉化した金属として、または好都合にはその塩、酸化物または可溶性の有機化合物の形態で使用される。この金属触媒は、プロトン酸とは対象的に、一般に180℃を超える温度でのみその完全な活性を達成する高温触媒である。しかしながら、それらは、プロトン触媒反応よりも少ない副生成物(例えばオレフィンなど)しか与えないため、本発明によれば好ましい。本発明によれば特に好ましいエステル化触媒は、上記未加工物質と反応して二価のスズ化合物を与えることができる1以上の二価のスズ化合物またはスズ化合物または元素状のスズである。例えば、使用される触媒は、スズ、塩化スズ(II)、硫酸スズ(II)、スズ(II)アルコラートまたは有機酸のスズ(II)塩、特にモノカルボン酸およびジカルボン酸のスズ(II)塩であってよい。特に好ましいスズ触媒は、シュウ酸スズ(II)および安息香酸スズ(II)である。
【0048】
上記エステル化反応は、当業者に公知の方法を使用して実施することができる。この場合、反応の際に生成した水を反応混合物から除去することが特に有利である可能性がある。この水は反応混合物からの1,2−プロパンジオール相に由来し得るものであり、この水の除去は好ましくは蒸留によって、任意に、過剰の1,2−プロパンジオールを用いた蒸留によって実施される。当該エステル化反応を実施した後に反応しなかった1,2−プロパンジオールもその反応混合物から除去することができ、1,2−プロパンジオールのこの除去も、好ましくは蒸留によって実施される。さらに、このエステル化反応の終了後、特に未反応の1,2−プロパンジオールの分離後、反応混合物中に残存する触媒は、任意に塩基での処理後に、濾過または遠心分離によって分離することができる。
【0049】
さらに、当該エステル化反応を50〜300℃の範囲、特に好ましくは100〜250℃の範囲、最も好ましくは150〜200℃の範囲の温度で実施することが好ましい。最適温度は、使用されるアルコール(1種または複数種)、反応の進行、触媒の種類および触媒濃度に依存する。最適温度は、個々の場合について、試験を実施することによって容易に決定することができる。高い温度は反応速度を上昇させるが、二次的な反応(例えばアルコールの脱水(Wasserabspaltung)または着色した副生成物の生成など)を促進する。所望の温度または所望の温度範囲は、反応容器中の圧力(わずかに加圧、常圧または任意に減圧)によって設定することができる。
【0050】
本発明に係る方法の別の特定の実施形態によれば、工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相は、アルキド樹脂を得るために、ジカルボン酸またはトリカルボン酸および脂肪酸との反応に供される。
【0051】
アルキド樹脂は、(この樹脂の特性を変性するための)有機油または脂肪酸および任意にさらに、多価アルコール、特にグリセロールまたはペンタエリスリトールの添加を伴う、ジオール(本発明の場合は1,2−プロパンジオール)と多塩基酸との縮合によって得られる合成の、非常に疎水性のポリマーである。この場合、少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物が、好ましくはフタル酸無水物、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸および無水マレイン酸からなる群から選択される二塩基酸であることが特に好ましく、これらの中でアジピン酸、テレフタル酸またはアゼライン酸が好ましく、テレフタル酸特に好ましい。
【0052】
有機油の例としては、まず第1に植物および動物起源の油または油誘導体が挙げられ、これらはいずれの場合も個々にまたは混合物として使用される。動物起源の油または油誘導体の例としては、獣脂および特に分留によって獣脂から得られるオレイン酸が挙げられる。有機オレイン酸または脂肪酸の例としては、特に獣脂、キャノーラ油、菜種油、ヒマワリ油、パーム油(これは任意に硬化形態または半硬化形態で存在してもよい)、大豆油、アザミ油(thistle oil)、アマニ油、トールオイル、ヤシ油、パーム核油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、魚油およびキリ油が挙げられる。少なくとも100のヨウ素価を有する乾性油または半乾性油は特に好ましく、とりわけ大豆油およびトールオイルは好都合である。アルキド樹脂を調製するためおよび脂肪酸エステルを調製するための両方で使用される脂肪酸の例としては、特に大豆油、アザミ油、アマニ油、トールオイル、ヤシ油、パーム核油、ヒマシ油、脱水ヒマシ油、魚油およびキリ油の脂肪酸が挙げられる。これらの脂肪酸のうちで、少なくとも100のヨウ素価を有する乾性油または半乾性油の脂肪酸、とりわけ大豆油およびトールオイルの脂肪酸は、好ましい。
【0053】
アルキド樹脂の調製は、例えば国際公開第01/62823号パンフレットから推察することができ、アルキド樹脂の調製に関するこの特許文献の開示を参照によって本願明細書に援用したものとし、それらは本発明の開示の一部分を形成する。
【0054】
工程a2)での少なくとも1つのヒドロキシ基を有する化合物の使用も想定できる。この場合、少なくとも1つのヒドロキシ基を有する化合物は、モノオール、ジオール、トリオールまたは3つより多いOH基を有するアルコールであってよい。少なくとも1つのOH基を有する特に好ましい化合物は、しかしながら、例えばBouveault−Blanc反応においてナトリウムを用いた、または圧力下での水素化による脂肪酸エステルの還元によって得られた脂肪酸アルコールである。これに関して適切な脂肪アルコールは、例えばヘキサノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、ベヘニルアルコール、δ−9−cis−ヘキサデセノール、δ−9−オクタデセノール、trans−δ−9−オクタデセノール、cis−δ−11−オクタデセノールまたはオクタデカトリエノールである。
【0055】
脂肪アルコールおよび1,2−プロパンジオールからのエーテルの調製、特に1,2−プロパンジオールを用いた脂肪アルコールのポリプロポキシ化によるポリエーテルの調製は、好ましくはカルシウムおよびストロンチウムのヒドロキシド、アルコキシドまたはフェノキシド(欧州特許出願公開第0092256号明細書)、カルシウムアルコキシド(欧州特許出願公開第0091146号明細書)、水酸化バリウム(欧州特許第0115083号明細書)、塩基性マグネシウム化合物(例えばアルコキシド)(欧州特許出願公開第0082569号明細書)、マグネシウムおよびカルシウムの脂肪酸塩(欧州特許出願公開第0085167号明細書)、塩化アンチモン(V)(独国特許出願公開第2632953号明細書)、アルミニウムイソプロポキシド(Aluminiumisopropylat)/硫酸(欧州特許出願公開第0228121号明細書)、亜鉛、アルミニウムおよび他の金属含有オキソ化合物(欧州特許出願公開第0180266号明細書)またはアルミニウムアルコール/リン酸(米国特許第4,721,817号明細書)などの適切な触媒によっても実施される。ポリプロポキシ化脂肪アルコールの調製についてのより正確な情報も、とりわけ欧州特許出願公開第0361083号明細書から推察することができ、1,2−プロパンジオールおよび脂肪アルコールからのポリエーテルの調製に関するこれらの開示は参照によって本願明細書に援用したものとし、それらは本発明の開示の一部分を形成する。
【0056】
工程a2)で少なくとも1つのアミノ基を有する化合物を使用することも考えられる。この場合、少なくとも1つのアミノ基を有する化合物は、特に、例えばアンモニアでの処理および引き続く水素化によってトリグリセリドから得ることができる脂肪アミンであることができる。1,2−プロパンジオールを用いたアミンのプロポキシ化も、欧州特許出願公開第0361083号明細書に記載されている(これによってこの文献への参照がなされる)。
【0057】
工程a2)で少なくとも1つのエポキシド基を有する化合物が使用される場合、1,2−プロパンジオール相は、さらに高分子量を有する化合物(例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エチレンジグリシジルエーテル、プロピレンジグリシジルエーテル、ジエチレンジグリシジルエーテル、ジプロピレンジグリシジルエーテル、トリエチレンジグリシジルエーテル、トリプロピレンジグリシジルエーテル、テトラエチレンジグリシジルエーテル、テトラプロピレンジグリシジルエーテルまたはポリエチレンジグリシジルエーテルまたはポリプロピレンジグリシジルエーテルなど)と反応され、ここでもポリエーテルを得ることができる。
【0058】
少なくとも1つのエステル基を有する化合物が工程a2)で使用される場合、1,2−プロパンジオールとの反応はエステル交換反応を生じ、上述のモノ脂肪酸のエステルは好ましくは少なくとも1つのエステル基を有するエステルとして使用される。
【0059】
少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物が工程a2)で使用される場合、当該1,2−プロパンジオール相は、適切な触媒の存在下で、好ましくはジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、またはジフェニルメタンジイソシアンおよびポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物との反応に供される。ポリウレタンを調製するための適切な方法は、例えば独国特許出願公開第102004041299号明細書にあるものであり、ジオールおよびポリイソシアネートからのポリウレタンの調製に関するこの特許文献の開示は、参照によって本願明細書に援用したものとし、それらは本発明の開示の一部分を形成する。
【0060】
さらに好ましい実施形態によれば、工程a1)で得られたa1−1,2−プロパンジオール相は、各場合ともa1−1,2−プロパンジオール相の総量に基づき、0.01〜20重量%、または0.1〜15重量%、または1〜10重量%の範囲のグリセロール混入物を含み、工程a2)で使用されるa2−1,2−プロパンジオール相は、a1−1,2−プロパンジオール相の少なくとも70〜100重量%、または少なくとも75〜100重量%、または少なくとも80〜100重量%、または少なくとも70〜95重量%の、グリセロール混入物を含む。
【0061】
前述の内容によれば、工程a1)で得られたa1−1,2−プロパンジオール相は、実質的に中間体処理工程または精製工程なしにa2−1,2−プロパンジオール相として工程a2)で使用することができる。
【0062】
この場合、含まれる不純物のすべてを分離するためにこのa1−1,2−プロパンジオール含有相を熱的分離プロセスに供することは一般に必要ではない。しかしながら、例えば適切な真空を適用することによって、このグリセロール混入物の一部、またはさらなる混入物(例えばモノアルコールなど)の一部を除去することは可能である。場合によっては、工程a1)で得られたa1−1,2−プロパンジオール相は、a2−1,2−プロパンジオール相として使用するために、減圧下に置いた穏やかに加熱したワイヤ領域にわたって通してもよい。同様に、少なくとも固体(例えば触媒など)を分離することが有利であることは分かるであろう。これは、好ましくは非熱的分離プロセス(濾過、沈降または遠心分離など)を使用して実施される。
【0063】
さらに好ましい実施形態によれば、工程1a)で得られた1,2−プロパンジオール相中の1,2−プロパンジオールに対するグリセロールの比は、1:3〜1:8の範囲である。
【0064】
本発明に係る方法の特に好ましい実施形態によれば、工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相は、工程a2)での反応の前には精製されず、好ましくは少なくとも熱的分離プロセス(例えば蒸留または精留など)によっては精製されない。それゆえ、1,2−プロパンジオール相は、少なくとも1つの活性水素原子、少なくとも1つのエポキシド基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物との反応に直接供給される。しかしながら、当該1,2−プロパンジオール含有相から少なくとも固体(例えば触媒など)を分離することが有利であると判明し得る。この分離は、好ましくは非熱的分離プロセス、すなわち例えば濾過、沈降または遠心分離によって実施される。
【0065】
最初に述べた目的を成し遂げることへの寄与は、本願明細書中で上に記載した本発明に係る方法によって得ることができる、好ましくは得られた少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を有する化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物によってももたらされる。この場合、この化合物は、工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相を、脂肪酸、好ましくはモノ脂肪酸と反応させることによって得られたモノ脂肪酸エステルであることが特に好ましい。
【0066】
最初に述べた目的を成し遂げることへの寄与は、化学製品における上記の少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を有する化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物の使用によっても、もたらされる。化学製品の例としては、この場合、特に化粧品組成物または塗料が挙げられる。特に、乳化剤またはPVC押出し物用配合成分として少なくとも1つのエステル基を含む本発明に係る化合物を使用することは、最初に述べた目的を成し遂げることへの助けとなる。
【0067】
最初に述べた目的を成し遂げることへの寄与は、特に、上記の少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を有する化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物を含む化学製品によっても、もたらされる。
【0068】
これらの化学製品は、当該技術分野で公知でありかつ同様に未加工物質として1,2−プロパンジオールを使用して得られた化学的成分を含む製品と比べて、完全水素化または過剰な水素化から得られる製品と比べてはるかに低い臭気による汚染によって特徴付けられる。この化学製品が、エステル本発明に係るモノ脂肪酸を乳化剤として含むエマルションである場合、これらのエマルションは、従来のエマルションと比べてはるかに良好な保存安定性によって特徴付けられる。
【0069】
最初に述べた目的を成し遂げることへの寄与は、特に、エマルションを調製するための方法であって、エマルションを形成するために、水相および有機相が、本発明に係る少なくとも1つのエステル基を有する化合物の存在下で、好ましくは本発明に係るモノ脂肪酸エステルの存在下で互いに接触するようにされる方法によっても、もたらされる。
【0070】
有機相の例としては、この場合、原理上は、水と非混和性であるすべての有機溶媒が挙げられる。しかしながら、特に好ましい有機相は、合成油、植物油または動物油に基づく。油の例としては、この場合、室温で液体状態にある脂肪酸トリグリセリド、特に植物油(菜種油、ヒマワリ油、アザミ油、オリーブ油、アマニ油、カボチャ種子油、大麻油、からし油など)、または動物油(獣脂、魚油または牛脚油など)が挙げられ、これらは食品として使用されることは比較的稀である。しかしながら、それらは化学工業(例えば潤滑油、石鹸)または機械工学(潤滑剤)で使用される。合成油の例としてはシリコーン油が挙げられる。炭化水素ベースの有機相もまた、当該エマルションの中に含まれていてもよい。これらの例としては、特にパラフィンが挙げられる。
【0071】
さらに、本発明に係るエマルションは、油中水型または水中油型エマルションであってよい。
【0072】
本発明に係るエマルション中の少なくとも1つのエステル基を有する本発明に係る化合物の量、好ましくはエステル本発明に係るモノ脂肪酸エステルの量は、いずれの場合もエマルションの総重量に基づき好ましくは50〜0.1重量%の範囲、特に好ましくは20〜0.5重量%の範囲、最も好ましくは5〜1重量%の範囲である。この水相および有機相の体積比は、幅広く変動してよく、特に油中水型エマルションを得ようとしているかまたは水中油型エマルションを得ようとしているかどうかにも依存する。
【0073】
本発明に係るエマルションは、好ましくは、エマルションを調製するための当業者に公知の方法を使用して調製される。好ましくは、本発明に係るエマルションの個々の構成成分は、適切な均質化装置によって、例えば高速撹拌機、高圧ホノジナイザー、振盪機、振動ミキサー、超音波発生器、遠心乳化装置、コロイドミルまたはアトマイザーによって混合されて乳化される。
【0074】
最初に述べた目的を成し遂げることへの寄与は、本願明細書中上記の方法を使用して得られ得るエマルションによってさらに提供される。当該技術分野で公知のエマルションと比べて、このエマルションは、顕著により良好な保存安定性を特徴とする。
【0075】
別の構成では、本発明は、本発明に係るエマルションを含有する化粧品組成物に関する。本発明に係る化粧品組成物は、エマルションが本発明に係る方法によって調製され、少なくとも1つの化粧品構成成分と接触される方法によって得られる。化粧品構成成分の例としては、種々の化粧品製品(軟膏、ペースト、クリーム、ローション、パウダー、ワックスまたはジェルおよびシャンプー、石鹸、スクラブ洗顔料およびボディスクラブ(ボディ用スクラブ洗浄料)、日焼け防止薬または美顔料など)についての当業者に公知のすべての成分が挙げられる。多くの場合、これらエマルションの1種以上は、いずれの場合も化粧品組成物に基づき0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜15重量%の範囲、および特に好ましくは0.15〜5重量%の範囲の量で使用される。
【0076】
さらなる構成では、本発明は、本発明に係る少なくとも1つのエーテル基、本発明に係る少なくとも1つのエステル基、本発明に係る少なくとも1つのアミノ基または本発明に係る少なくとも1つのウレタン基を含む少なくとも1つのプラスチック材料および化合物、好ましくは本発明に係る少なくとも1つのエステル基を含む少なくとも1つのプラスチック材料および化合物を含有するプラスチック材料組成物に関する。多くの場合、これらの化合物の1種以上は、いずれの場合もプラスチック材料に基づき0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜15重量%の範囲、特に好ましくは0.15〜5重量%の範囲の量で使用される。本発明に対する寄与は、プラスチック材料組成物を調製するための方法であって、本発明に係る少なくとも1つのエーテル基、本発明に係る少なくとも1つのエステル基、本発明に係る少なくとも1つのアミノ基または本発明に係る少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは本発明に係る少なくとも1つのエステル基を含む化合物(これらは、いずれの場合も、本発明に係る方法を使用して調製される)が、少なくとも1つのプラスチック材料と接触される方法によっても提供される。プラスチック材料の例としては、原理上は、当業者によく知られたすべての材料が挙げられるが、熱可塑性ポリマーが好ましく、その加工性、特にその離型性(Entformbarkeit)および壁への付着性が改善され得る(Gaechter/Mueller、Kunststoff−Additive、Carl Hanser Verlag 1989)。これらの好ましい例はポリエステルおよびポリオレフィンである。好ましいポリエステルとしては、PET、PBT、PLAまたはPHBが挙げられる。好ましいポリオレフィンとしてはPE、PP、PVC、SANが挙げられ、PVCが特に好ましい。
【0077】
別の構成では、本発明は、少なくとも1つの液体の洗浄成分(Spuelkomponente)と、本発明に従って得ることができる少なくとも1つのエーテル基、本発明に従って得ることができる少なくとも1つのエステル基、本発明に従って得ることができる少なくとも1つのアミノ基、または本発明に従って得ることができる少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは本発明に従って得ることができる少なくとも1つのエステル基を含む化合物と、を含む掘削用組成物に関する。多くの場合、これら化合物の1種以上は、いずれの場合もその洗浄成分に基づき0.01〜15重量%の範囲、好ましくは0.1〜15重量%の範囲、特に好ましくは0.15〜5重量%の範囲の量で使用される。
【0078】
本発明のさらなる構成は、掘削用組成物を調製するための方法であって、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物、またはこれらのうちの少なくとも2つを含む化合物が本発明に係る方法を使用して調製され、少なくとも1つの液体の洗浄成分と接触される方法に関する。
【0079】
掘削用組成物の例としては、原則として当業者に公知のすべての組成物、特に岩石に穴をあけるための組成物、特に液体洗浄系、連続的な油ベースの掘削用流体および水ベースのO/Wエマルション系に基づく掘削用流体が挙げられる。
【0080】
岩石に穴をあけるためおよび岩石の掘削くずを持ち出すための液体洗浄系は、以下の3つの種類のうちの1つに当てはめることができる、わずかに増粘した流体系であることが知られている:純粋に水系の掘削用流体、一般にインバーテッドエマルジョンマッドとして公知のものとして使用される油ベースの掘削用流体系、および連続的な水相の中に不均一の微細に分散された油相を含む水ベースのO/Wエマルション。
【0081】
連続的な油をベースにした掘削用流体は、一般に3相または多相系、つまり:油、水および微粒子固体から構成される。この水相は、この場合、連続的な油相中に不均一な微細な分散物として分散される。複数の添加剤、特に乳化剤、脱水調整用添加剤(fluid−loss−Additive)、アルカリ予備、粘度調整剤などが加えられる。詳細に関しては、例えばP.A.BoydらによるJournal of Petroleum Technology、1985、137−142の「New Base Oil Used in Low−Toxicity Oil Muds」と題する刊行物およびR.B.BennettによるJournal of Petroleum Technology、1984、975−981の「New Drilling Fluid Technology−Mineral Oil Mud」ならびにこれらの文献で引用される文献を参照されたい。
【0082】
水ベースのO/Wエマルション系に基づく掘削用流体は、その使用特性の点で、純粋に水系の流体と油ベースのインバーテッド型の掘削用流体との間の中間的位置を占める。詳細な情報は、関連する専門家用の文献に見出すことができる。例えばGeorge R.GrayおよびH.C.H.Darleyによる教科書、表題「Composition in Properties of Oil Well Drilling Fluids」、第4版、1980/81、Gulf Publishing Company、ヒューストンおよびその中で引用されている数多くの専門家用の文献および特許文献、ならびに便覧であるAdam T.Bourgoyne,Jr.ら.による「Applied Drilling Engineering」、初版、Society of Petroleum Engineers、米国、テキサス州、リチャードソン(Richardson)を参照。
【0083】
最初に述べた目的を成し遂げることへのさらなる寄与は、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基またはこれらのうちの少なくとも2つを有する化合物を調製するための本発明に係る方法の工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相を、冷媒として、少なくとも1つのエステル基を含む化合物を調製するために、少なくとも1つのエーテル基を含む化合物を調製するために、少なくとも1つのアミノ基を含む化合物を調製するために、少なくとも1つのウレタン基を含む化合物を調製するために、熱移動媒体として、油圧油としてまたは油圧油の構成成分として、水相の凝固点を下げるために、着色剤(特に印刷用インキ)における溶剤または軟化剤として、好ましくは液体の洗濯用洗剤における溶剤または助剤として、動物用飼料の添加物として、食品およびタバコ製品用水分保持剤として、化粧品製品の配合成分として、ポンプ媒体もしくは潤滑剤またはその両方の添加剤もしくは基剤またはその両方として、あるいは防蝕剤の配合成分として使用することによってもたらされる。
【0084】
本発明は、このあと限定を意図しない実施例を参照して、より詳細に説明されるであろう。
【実施例】
【0085】
実施例1(1,2−プロパンジオール相の調製)
25mmの内径および1lの容積を有する2m長さの反応管を、米国特許第4,982,020号の実施例1に従って調製しかつ脂肪アルコールおよび1,2−プロパンジオールを形成するためのグリセリドの水素化に適した銅クロマイトの小塊(1/8インチ×1/8インチ(約3mm×約3mm))で満たした。まず、窒素中の1%水素を用いて活性化を実施し、引き続いてこのように調製した反応管の中で、200bar(20MPa)、225℃および0.25 l/hのグリセロール処理量で水素化を実施した。
【0086】
このグリセロールの反応率は、水素化の間に得られた水素化流出液のガスクロマトグラフィ分析によって測定した。構成成分の1,2−プロパンジオール、エチレングリコール、グリセロールおよび水に関して、この水素化流出液は、以下の組成(これはガスクロマトグラムの信号を積分することによって決定した)を有していた。:70重量%の1,2−プロパンジオール、0.6重量%のエチレングリコール、11.4重量%のグリセロールおよび18重量%の水。
【0087】
実施例2(モノ脂肪酸エステルの調製)
557.5g(2mol)の工業用オレイン酸(酸価201.2)を342.8gの、実施例1で得た1,2−プロパンジオール相(この1,2−プロパンジオール相に含まれるアルコールに基づき3.6mol)と混合した。0.25gのシュウ酸スズを加えた後、この混合物をN下でまず175℃まで加熱し、次いで3時間以内に反応温度を200℃まで上昇させた。合計4時間後、この反応を停止させた。
【0088】
次いでこの混合物を、135℃まで冷却し、最大19mbar(19hPa)の真空下で30分間蒸留することによって過剰の1,2−プロパンジオールを除去した。
【0089】
オレイン酸エステルAを得た。このエステルの生成物データは、表1から推察することができる。
【0090】
比較例1(モノ脂肪酸エステルの調製)
実施例2を繰り返したが、ここでは実施例1からの1,2−プロパンジオール相の代わりに274.0g(1,2−プロパンジオールに基づき3.6mol)の99% 1,2−プロパンジオール(BASFより入手)を使用した。
【0091】
オレイン酸エステルBを得た。このエステルの生成物データも、表1から推察することができる。
【0092】
【表1】

【0093】
実施例3(乳化剤としてのオレイン酸エステルAによるエマルションの調製)
実施例2から得たオレイン酸Aを使用して、水およびパラフィンのエマルション(エマルション1)および水およびオレイン酸Bのみのエマルション(エマルション2)を調製した。これらのエマルションを、25mlのメスシリンダー中で球付きのガラス棒によって調製し、乳化は、いずれの場合も1分間実施した。
【0094】
この場合、以下の量を使用した。
エマルション1:5mlのオレイン酸エステルA
10mlの水
5mlのパラフィン
エマルション2:5mlのオレイン酸エステルA
10mlの水
【0095】
エマルション1およびエマルション2の特性は、表2から推察することができる。
【0096】
比較例2(乳化剤としてのオレイン酸エステルBによるエマルションの調製)
オレイン酸エステルAの代わりにオレイン酸エステルBを使用して、実施例3を繰り返した。この場合、エマルション3(水、オレイン酸エステルおよびパラフィン)およびエマルション4(水およびオレイン酸)が得られ、これらの特性も、表2から推察することができる。
【0097】
【表2】

【0098】
表2から分かり得るように、本発明に係るオレイン酸エステルを用いて調製したエマルションは、顕著に改善された保存安定性を特徴とした。
【0099】
実施例4(乳化剤としてのオレイン酸エステルAによるさらなるエマルションの調製)
実施例2から得られたオレイン酸Aを使用して、水および大豆油のエマルション(エマルション5)を調製した。この目的のために、エステルおよび油を、乳化球(Emulgierkugel)を使用して試験管中で混合し、その後に水を少しずつ加えた。
【0100】
この場合、以下の量を使用した。
エマルション5:3.0gのオレイン酸エステルA
7.5gの大豆油
10.0gの水。
【0101】
比較例3(乳化剤としてのオレイン酸エステルBによるさらなるエマルションの調製)
オレイン酸エステルAの代わりにオレイン酸エステルBを使用して、実施例4を繰り返した。この場合、エマルション6が得られた。
【0102】
オレイン酸エステルBが試験条件下でほとんど乳化剤効果を示さなかった(2相への分離がすぐに生じた)のに対して、オレイン酸エステルAは顕著な乳化効果を有していた(クリーム状のエマルションが得られ、ゆっくりとした有機相の成長を示しただけであった)。
【0103】
実施例5〜7および比較例4〜6(添加剤としてのオレイン酸エステルAまたはBによるPVC配合物の調製)
以下のPVC配合物を調製した。
【0104】
【表3】

【0105】
硬度(ショア硬度Aとして測定した)を、このようにして得たPVC組成物から算出した。この場合、実施例5〜7で得た組成物は比較例4〜6で得た組成物と同じ硬度を有することが確かめられた。それゆえ、当該技術分野で公知のエステルと比べて単純化された方法(部分的なグリセロールの水素化の際に生成した1,2−プロパンジオール相の精製なし)を使用して得られた本発明に係るエステルは、まさに、複雑な方法(当該エステルを調製するために予め精製された1,2−プロパンジオールを使用する)を使用して得られる先行技術のエステルと同程度に、プラスチック材料組成物への添加剤として適切である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基もしくは少なくとも1つのウレタン基またはこれらのうちの少なくとも2つを有する化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物を調製するための方法であって、
a1)グリセロールが触媒の存在下で水素化され、グリセロールが多くとも95%まで反応され、1,2−プロパンジオール相が得られるプロセスによって1,2−プロパンジオールを調製する工程と、
a2)前記1,2−プロパンジオール相を少なくとも1つの活性水素原子、少なくとも1つのエポキシド基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのイソシアネート基を有する化合物と反応させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
少なくとも1つのエステル基を有する化合物を得るために、工程a2)において、工程a1)で得られた前記1,2−プロパンジオール相が、少なくとも1つのカルボン酸基を有する化合物との反応に供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不均一系の銅およびクロム含有触媒が工程a1)で使用される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不均一系銅クロマイト含有触媒が工程a1)で使用される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水素化が、工程a1)で、等温条件下で運転される管型反応器または多管固定床反応器中で実施される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記水素化が、等温条件下で運転されず、かつ冷却器に接続されている反応器を含む少なくとも1つの反応単位中で実施される、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程a1)で、液体グリセロールが触媒固定床にわたって水素に対して並流または向流として、トリクルベッド運転で液体流体の形で通されるように、前記水素化が実施される、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
グリセロールが、工程a1)において、規定された滞留時間の間、少なくとも部分的に逆混合を防止する措置の下で、前記反応器または前記反応管中の触媒充填物に通される、請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記水素化が、工程a1)で180〜220℃の範囲の温度で実施される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程a1)で使用される前記グリセロールの水分含量が2%未満である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
グリセロールが、工程a1)で多くとも90%まで反応に供される、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程a1)で得られた前記a1−1,2−プロパンジオール相が前記a1−1,2−プロパンジオール相の全量に基づき0.01〜20重量%の範囲のグリセロール混入物を含有し、
工程a2)で使用される前記a2−1,2−プロパンジオール相が、前記a1−1,2−プロパンジオール相の少なくとも70重量%の前記グリセロール混入物を含む、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
工程1a)で得られた前記1,2−プロパンジオール相中の1,2−プロパンジオールに対するグリセロールの比が1:3〜1:8の範囲である、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程a1)で得られた前記1,2−プロパンジオール相が工程a2)での反応の前に精製されない、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
工程a2)で使用されかつ少なくとも1つのカルボン酸基を含む前記化合物がC−C30モノカルボン酸である、請求項2から請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程a2)で使用されかつ少なくとも1つのカルボン酸基を含む前記化合物が脂肪酸である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記脂肪酸がオレイン酸である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物であって、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法を使用して得ることができる化合物。
【請求項19】
前記化合物が脂肪酸モノエステルである、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
化学製品における、請求項18または請求項19に記載の少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を有する化合物の使用。
【請求項21】
請求項18または請求項19に記載の少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物を含有する化学製品。
【請求項22】
前記化学製品が、エマルションであって、水相と、有機相と、乳化剤として請求項18または請求項19に記載の少なくとも1つのエステル基を含む化合物とを含み、前記水相が前記有機相中に乳化されているか、または前記有機相が前記水相の中に乳化されているかのいずれかであるエマルションである、請求項21に記載の化学製品。
【請求項23】
エマルションを形成するために、水相および有機相が、請求項18または請求項19に記載の少なくとも1つのエステル基を含む化合物の存在下で互いに接触される、エマルションを調製するための方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法を使用して得ることができるエマルション。
【請求項25】
請求項23に記載のエマルションを含む化粧品組成物。
【請求項26】
化粧品組成物を調製するための方法であって、請求項23に記載のエマルションが調製され、そして前記エマルションが少なくとも1つの化粧品構成成分と接触するようにされる、方法。
【請求項27】
少なくとも1つのプラスチック材料と、請求項18に記載の少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物とを含む、プラスチック材料組成物。
【請求項28】
プラスチック材料組成物を調製するための方法であって、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物が、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法を使用して調製され、少なくとも1つのプラスチック材料と接触するようにされる、方法。
【請求項29】
少なくとも1つの液体の洗浄成分と、請求項18に記載の少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物とを含む、掘削用組成物。
【請求項30】
掘削用組成物を調製するための方法であって、少なくとも1つのエーテル基、少なくとも1つのエステル基、少なくとも1つのアミノ基または少なくとも1つのウレタン基を含む化合物、好ましくは少なくとも1つのエステル基を含む化合物が、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法を使用して調製され、そして前記化合物が少なくとも1つの液体の洗浄成分と接触するようにされる、方法。
【請求項31】
冷媒としての、少なくとも1つのエステル基を含む化合物を調製するための、少なくとも1つのエーテル基を含む化合物を調製するための、少なくとも1つのアミノ基を含む化合物を調製するための、少なくとも1つのウレタン基を含む化合物を調製するための、熱移動媒体としての、油圧油としてまたは油圧油の構成成分としての、水相の凝固点を下げるための、着色剤(特に印刷用インキ)における溶剤または軟化剤としての、好ましくは液体の洗濯用洗剤における溶剤または助剤としての、動物用飼料の添加物としての、食品およびタバコ製品用水分保持剤としての、化粧品製品の配合成分としての、ポンプ媒体もしくは潤滑剤またはその両方の添加剤もしくは基剤またはその両方としての、あるいは防蝕剤の配合成分としての、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の方法の工程a1)で得られた1,2−プロパンジオール相の使用。
【請求項32】
乳化剤またはPVC押出し物用配合成分としての請求項16に記載の少なくとも1つのエステル基を含む化合物の使用。

【公表番号】特表2010−530366(P2010−530366A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511532(P2010−511532)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004667
【国際公開番号】WO2008/151785
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(509339049)エメリー オレオケミカルズ ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】