説明

屈折率変調構造及びLED素子

【課題】光の変調速度を向上させることのできる屈折率変調構造及びLED素子を提供する。
【解決手段】表面に凹部又は凸部が周期的に形成された材料を含むモスアイ構造体と、前記材料に電界を生じさせ、当該材料の屈折率を変化させる電界調整部と、を有し、モスアイ構造体の屈折率の変化を利用して回折の透過条件を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屈折率変調構造及びLED素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体による短波長のLED素子と蛍光体の組み合わせによる白色LEDが実用化され、白色LEDは今後の照明用光源として期待されている。白色LEDは、従来の照明光源である白熱電球や蛍光灯とは異なり、比較的高速での光の変調が可能であり、この特徴を生かした可視光通信への応用が見込まれている。照明装置からの1〜10Mbpsの可視光通信によって、インターネットをはじめとするオフィス、家庭内の情報通信網を構築することを目指した研究プロジェクトが国内外で活発に推進されている。
【0003】
また、この種の可視光通信用装置として、送信データに基づいて生成された駆動電流信号に基づいて青色光励起型白色LEDを駆動し、可視光信号を受信機に対して出力するものが提案されている。特許文献1には、この可視光通信用装置は、送信データの立ち上がり時に立ち上がりパルスを付加するとともに、送信データの立ち下がり時に立ち下がりパルスを付加して、多階調の駆動電流信号を生成する多階調駆動手段を備えると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−103979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在の光ファイバーなどによるブロードバンド通信は、1000Mbpsにも達しており、これと比較すると、従来のLEDや白熱電球の光の変調速度は十分とは言い難い。
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光の変調速度を向上させることのできる屈折率変調構造及びLED素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、表面に凹部又は凸部が周期的に形成された材料を含むモスアイ構造体と、前記材料に電界を生じさせ、当該材料の屈折率を変化させる電界調整部と、を有する屈折率変調構造が提供される。
【0008】
上記屈折率変調構造において、前記電界調整部は、前記モスアイ構造体の前記材料に電圧を印加する一対の屈折率変化用電極を有してもよい。
【0009】
上記屈折率変調構造において、前記モスアイ構造体の前記材料は、圧電性を有する等方性結晶であってもよい。
【0010】
また、本発明では、上記屈折率変調構造を備え、前記屈折率変化用電極の少なくとも一方は、アノード電極又はカソード電極であるLED素子が提供される。
【0011】
上記LED素子において、前記モスアイ構造体は、支持基板と発光層の間に介在してもよい。
【0012】
上記LED素子において、前記モスアイ構造体は、支持基板について発光層と反対側に設けられてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のLED素子によれば、光の変調速度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態を示すLED素子の模式断面図である。
【図2】図2は、異なる屈折率の界面における光の回折作用を示す説明図であり、(a)は界面にて反射する状態を示し、(b)は界面を透過する状態を示す。
【図3】図3は、III属窒化物半導体層からサファイア基板へ入射する光の回折作用を示す説明図である。
【図4】図4は、変形例を示すLED素子の拡大断面図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施形態を示す屈折率変調器の模式断面図である。
【図6】図6は、本発明の第3の実施形態を示すLED素子の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1から図3は本発明の第1の実施形態を示すものであり、図1はLED素子の模式断面図である。
【0016】
図1に示すように、LED素子100は、サファイア基板102上に、第1電極層104、モスアイ構造層106、第2電極層108、及び、III族窒化物半導体層からなる半導体積層部119がこの順で形成されたものである。本実施形態においては、モスアイ構造層106は、サファイア基板102と活性層114の間に介在している。半導体積層部119は、バッファ層110、n型GaN層112、多重量子井戸活性層114、電子ブロック層116、p型GaN層118を第2電極層108側からこの順に有している。p型GaN層118上にはp側電極120が形成されるとともに、n型GaN層112上にはn側電極124が形成されている。また、モスアイ構造層106には、屈折率変調用電極126が形成されている。このLED素子100は、フリップチップ型であり、サファイア基板102の裏面(図1中は上面)から主として光が取り出される。
【0017】
第1電極層104は、サファイア基板102の表面に全面的に形成される。本実施形態においては、第1電極層104は、AlNモル分率が0.2以下のn−AlGaN層からなる。尚、第1電極層104は、モスアイ構造層106よりもシート抵抗が小さい材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0018】
モスアイ構造層106は、第1電極層104上に形成され、半導体積層部119側へ突出する凸部107が周期的に形成される。本実施形態においては、各凸部107は、平面視にて、中心が正三角形の頂点の位置となるように、所定の周期で仮想の三角格子の交点に整列して形成される。各凸部107の周期は、半導体積層部119の多重量子井戸活性層114から発せられる光の光学波長より大きく、当該光のコヒーレント長より小さくなっている。尚、ここでいう周期とは、隣接する凸部107における深さのピーク位置の距離をいう。また、光学波長とは、実際の波長を屈折率で除した値を意味する。さらに、コヒーレント長とは、所定のスペクトル幅のフォトン群の個々の波長の違いによって、波の周期的振動が互いに打ち消され、可干渉性が消失するまでの距離に相当する。コヒーレント長lcは、光の波長をλ、当該光の半値幅をΔλとすると、おおよそlc=(λ/Δλ)の関係にある。ここで、各凸部107の周期は、多重量子井戸活性層114から発せられる光の光学波長の2倍より大きいことが好ましい。また、各凸部107の周期は、多重量子井戸活性層114から発せられる光のコヒーレント長の半分以下であることが好ましい。尚、第1電極層104上の一部領域には、後述する屈折率変調用電極126を設けるために、モスアイ構造層106が形成されていない。
【0019】
本実施形態においては、各凸部107の周期は、500nmである。活性層114から発せられる光の波長は450nmであり、III族窒化物半導体層の屈折率が2.4であることから、その光学波長は187.5nmである。また、活性層114から発せられる光の半値幅は63nmであることから、当該光のコヒーレント長は、3214nmである。すなわち、各凸部107の周期は、活性層114の光学波長の2倍より大きく、かつ、コヒーレント長の半分以下となっている。
【0020】
また、本実施形態においては、各凸部107は、円錐状に形成される。具体的に、各凸部107は、基端部の直径が200nmであり、深さは250nmとなっている。モスアイ構造層106の表面は、各凸部107の他は平坦となっており、半導体積層部119の横方向成長が助長されるようになっている。
【0021】
モスアイ構造体としてのモスアイ構造層106は、ポッケルス効果の大きい材料が好ましい。具体的には、圧電性を有することが好ましく、等方性結晶であることがより好ましい。モスアイ構造層106は、例えばSiO、AlN、LiNbO、ZnO、ITO等から形成することができ、本実施形態においてはAlNから形成される。各凸部107の形状は、円錐、多角錘等の形状とすることができる。本実施形態においては、周期的に配置される各凸部107により、光の回折作用を得ることができる。
【0022】
第2電極層108は、モスアイ構造層106の表面に沿って形成される。本実施形態においては、第2電極層108は、AlNモル分率が0.2以下のn−AlGaN層からなる。尚、第2極層108は、モスアイ構造層106よりもシート抵抗が小さい材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0023】
バッファ層110は、第2電極層108上に形成され、GaNで構成されている。本実施形態においては、バッファ層110は、後述するn型GaN層112等よりも低温にて成長されている。また、バッファ層110は、各凸部107に沿って周期的に形成される複数の錘状の凹部を第2電極層108側に有している。第1導電型層としてのn型GaN層112は、バッファ層110上に形成され、n−GaNで構成されている。発光層としての多重量子井戸活性層114は、n型GaN層112上に形成され、GalnN/GaNで構成され、電子及び正孔の再結合により青色光を発する。ここで、青色光とは、例えば、ピーク波長が430nm以上480nm以下の光をいうものとする。本実施形態においては、多重量子井戸活性層114の発光のピーク波長は450nmである。
【0024】
電子ブロック層116は、多重量子井戸活性層114上に形成され、p―AIGaNで構成されている。第2導電型層としてのp型GaN層118は、電子ブロック層116上に形成され、p−GaNで構成されている。第1電極層104からp型GaN層118までは、III族窒化物半導体のエピタキシャル成長により形成される。ここで、第2電極層108にモスアイ構造層106の凸部107に起因して凹凸が形成されているが、III族窒化物半導体の横方向成長による平坦化が図られる。尚、第1導電型層、活性層及び第2導電型層を少なくとも含み、第1導電型層及び第2導電型層に電圧が印加されると、電子及び正孔の再結合により活性層にて光が発せられるものであれば、半導体層の層構成は任意である。
【0025】
アノード電極としてのp側電極120は、p型GaN層118上に形成され、p側GaN層118側の面が反射面122をなしている。p側電極120は、多重量子井戸活性層114から発せられる光に対して高い反射率を有する。p側電極120は、活性層114から発せられる光に対して80%以上の反射率を有することが好ましい。本実施形態においては、p側電極120は、例えばAg系、Rh系の材料からなり、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等により形成される。
【0026】
カソード電極としてのn側電極124は、p型GaN層118からn型GaN層112をエッチングして、露出したn型GaN層112上に形成される。n側電極124は、例えばTi/Al/Ti/Auから構成され、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により形成される。
【0027】
屈折率変調用電極126は、p型GaN層118からモスアイ構造層106をエッチングして、露出した第1電極層104上に形成される。屈折率変調用電極126は、例えばTi/Al/Ti/Auから構成され、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により形成される。
【0028】
以上のように構成されたLED素子100は、p側電極120とn側電極124に順方向の電圧を印加すると、活性層114から青色光が発せられる。青色光のうち、p側電極120側へ向かう光は、反射面122にて反射してモスアイ構造層106側へ向かう。活性層114から発せられた青色光は、その殆どがモスアイ構造層106へ直接的又は間接的に入射する。
【0029】
ここで、図2(a)に示すように、ブラッグの回折条件から、モスアイ構造層106の界面にて光が反射する場合において、入射角θinに対して反射角θrefが満たすべき条件は、
d・n1・(sinθin−sinθref)=m・λ・・・(1)
である。ここで、n1は入射側の媒質の屈折率、λは入射する光の波長、mは整数である。本実施形態では、n1は、バッファ層110の屈折率となる。
【0030】
一方、図2(b)に示すように、ブラッグの回折条件から、モスアイ構造層106の界面にて光が透過する場合において、入射角θinに対して透過角θoutが満たすべき条件は、
d・(n1・sinθin−n2・sinθout)=m’・λ・・・(2)
である。ここで、n2は出射側の媒質の屈折率であり、m’は整数である。本実施形態では、n2は、モスアイ構造層106の屈折率となる。すなわち、モスアイ構造層106の屈折率が変化すると、光の透過条件が変化する。
【0031】
上記(1)式及び(2)式の回折条件を満たす反射角θref及び透過角θoutが存在するためには、各凸部107の周期は、素子内部の光学波長である(λ/n1)や(λ/n2)よりも大きくなければならない。一般的に知られているモスアイ構造は、周期が(λ/n1)や(λ/n2)よりも小さく設定されており、回折光は存在しない。そして、各凸部107の周期は、光が波としての性質を維持できるコヒーレント長より小さくなければならず、コヒーレント長の半分以下とすることが好ましい。コヒーレント長の半分以下とすることにより、回折による反射光及び透過光の強度を確保することができる。
【0032】
図3に示すように、LED素子100において活性層114から等方的に放出される光のうち、モスアイ構造層106へ入射角θinで入射する光は、上記(1)式を満たす反射角θrefで反射するとともに、上記(2)式を満たす透過角θoutで透過する。ここで、全反射臨界角以上の入射角θinでは、強い反射光強度となる。反射光は、p側電極120の反射面122にて反射して、再びモスアイ面102aへ入射するが先に入射したときの入射角θinと異なる入射角θinで入射するため、先の入射条件とは異なる透過特性となる。
【0033】
このように、活性層114から発せられる光の光学波長より大きく、当該光のコヒーレント長より小さい周期で凸部107が形成され、各凸部107が形成されたモスアイ構造層106の回折面にて反射した光を反射して回折面へ再入射させる反射面120と、を備えることにより、全反射臨界角を超える角度で入射する光についても回折作用を利用して素子外部へ光を取り出すことができる。
【0034】
そして、n側電極124と屈折率変調用電極126に電圧を印可して、モスアイ構造層106に電界を生じさせると、モスアイ構造層106の材料の屈折率が変化する。本実施形態においては、モスアイ構造層106は、圧電性を有することから、ポッケルス効果を利用して効率よく屈折率を変化させることができる。モスアイ構造層106の屈折率が変化すると、上記(2)式のn2が変化して回折の透過条件が変化する。これにより、LED素子100の発光時、屈折率変調用電極126の電位を変化させて、LED素子100から取り出される光量を変化させることができる。
【0035】
従って、モスアイ構造層106にて生じる電界に応じて光を変調させることができ、n側電極124及びp側電極126から注入される電子と正孔の量を調整して変調する従来の方式よりも、格段に変調速度を向上させることができる。
【0036】
また、モスアイ構造層106に電圧を印加するための一対の電極のうち、一方についてはn側電極124を利用するようにしたので、LED素子100に設けられる電極の数を少なくすることができる。尚、LED素子100の形態に応じて、n側電極124でなくp側電極120を利用してもよいことは勿論であるし、アノード電極及びカソード電極とは別個に屈折率変調用に一対の電極を設けても良い。
【0037】
また、モスアイ構造層106を、モスアイ構造層106よりもシート抵抗の小さな一対の層で挟むようにしたので、モスアイ構造層106に確実に電界を生じさせることができる。さらに、本実施形態においては、第1電極層104、モスアイ構造層106及び第2電極層108を、半導体積層部119と同じIII属窒化物半導体で構成したので、素子の作製が比較的容易である。
【0038】
尚、前記実施形態においては、p側電極120が反射面122をなすものを示したが、反射面122として機能しなかったり、反射面122が存在しない場合であっても、モスアイ構造層106に生じる電界により、LED素子100からの光取り出し量が変化する。要は、モスアイ構造層106と、モスアイ構造層106の材料に電界を生じさせて屈折率を変化させる電界調整部とを備えていればよい。
【0039】
また、前記実施形態においては、モスアイ構造層106をAlNから形成したものを示したが、例えば図4に示すように、n型GaN層106bとAlN層106aを交互に積層して形成してもよい。この場合、各AlN層106aに生じる電界が強くなるため、モスアイ構造層106の屈折率変化を大きくすることができる。尚、光の変調には、ポッケルス効果を利用してモスアイ構造層106の屈折率を変えることが好ましいが、ポッケルス効果より屈折率の変化量は小さいものの、カー効果を利用して屈折率を変えることもできる。
【0040】
また、前記実施形態においては、屈折率変調構造をLED素子100に設けたものを示したが、例えば図5に示すように、活性層114等を省略して屈折率変調器200とすることもできる。この屈折率変調器200は、屈折率変調器200を透過する光の変調を行うことができ、例えば、白熱電球等の発光体と組み合わせ使用することで、発光体から発せられる光の変調が可能となる。
【0041】
図6は本発明の第3の実施形態を示すものであり、図6はLED素子の模式断面図である。
【0042】
図6に示すように、LED素子300は、SiC基板302と、SiC基板302上に形成される半導体積層部319と、を備えている。半導体積層部319は、バッファ層310、n型GaN層312、多重量子井戸活性層314、電子ブロック層316、p型GaN層318をSiC基板302側からこの順に有している。p型GaN層318上にはp側電極320が形成されるとともに、n型GaN層312上にはn側電極324が形成されている。多重量子井戸活性層314から発せられる光が紫外光である点を除いては、半導体積層部319、p側電極320及びn側電極324は、第1の実施形態と同様の構成であるので、ここでは説明を省略する。
【0043】
このLED素子300は、フリップチップ型であり、SiC基板302の裏面(図5中は上面)から主として光が取り出される。SiC基板302の裏面には、モスアイ構造層306、電極層308がこの順に形成される。本実施形態においては、モスアイ構造層306は、SiC基板302について活性層314と反対側に設けられている。電極層308上には、屈折率変調用のパッド電極326が形成される。
【0044】
SiC基板302は、N及びBが添加された単結晶6H型SiCからなり、紫外光により励起されると、ドナー・アクセプタ・ペア発光により、電球色の可視光を発する。SiC基板302は、例えば、500nm〜650nmにピークを有する500nm〜750nmの波長の光を発する。本実施形態においては、SiC基板302は、ピーク波長が580nmの光を発するよう調整されている。SiC基板302におけるB及びNのドーピング濃度は、1015/cm〜1019/cmである。ここで、SiC基板302は、408nm以下の光により励起可能である。
【0045】
モスアイ構造層306は、SiC基板302の光取り出し面側に形成され、凸部307が周期的に形成される。本実施形態においては、モスアイ構造層306は、SiC基板302に直接設けられていることから、SiC基板302よりシート抵抗が小さな材料を選択する必要がある。また、モスアイ構造層306は、圧電体からなり、例えば、KTP(KTiOPO:potassium titanyl phosphate)、LiNbO、LiNbO等の可視光に対して透明な材料を用いることが好ましい。各凸部307の形状は、円錐、多角錘等の形状とすることができる。本実施形態においては、周期的に配置される各凸部307により、光の回折作用を得ることができる。
【0046】
本実施形態においては、各凸部307は、平面視にて、中心が正三角形の頂点の位置となるように、所定の周期で仮想の三角格子の交点に整列して形成される。各凸部307の周期は、SiC基板302から発せられる光の光学波長より大きく、当該光のコヒーレント長より小さくなっている。具体的に、各凸部307の周期は、SiC基板302から発せられる光の光学波長の2倍より大きく、かつ、コヒーレント長の半分以下となっている。
【0047】
また、モスアイ構造層306におけるSiC基板302の反対側の表面には、電極層308が全面的に設けられる。電極層308は、SiC基板302から発せられる光に対して透明であることが好ましく、例えばITO(Indium Tin Oxide)を用いることができる。尚、電極層308は、モスアイ構造層306よりもシート抵抗が小さい材料であれば、他の材料を用いてもよい。
【0048】
電極層308上には、屈折率調整用のパッド電極326が設けられる。パッド電極326は、例えばTi/Auから構成することができ、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等により形成される。
【0049】
以上のように構成されたLED素子300は、p側電極320とn側電極324に順方向の電圧を印加すると、活性層314から紫外光が発せられる。紫外光のうち、p側電極320側へ向かう光は、反射面322にて反射してSiC基板302へ向かう。活性層314から発せられた紫外光は、その殆どがSiC基板302へ直接的又は間接的に入射する。
【0050】
SiC基板302は、紫外光により励起されると、電球色の可視光を発する。そして、n側電極324と屈折率変調用電極としてのパッド326に電圧を印可して、モスアイ構造層306に電界を生じさせると、モスアイ構造層306の材料の屈折率が変化する。これにより、LED素子300の発光時、パッド326の電位を変化させて、LED素子300から取り出される光量を変化させることができる。従って、モスアイ構造層106にて生じる電界に応じて光を変調させることができ、n側電極324及びp側電極320から注入される電子と正孔の量を調整して変調する従来の方式よりも、格段に変調速度を向上させることができる。
【0051】
尚、第2の実施形態においては、SiC基板302をN及びBが添加された単結晶6H型SiCとして電球色を発するようにしたものを示したが、例えばAl、N及びBが添加された6H型SiCとして白色光を発するようにしたり、N及びBが添加された6H型SiCとN及びAlが添加された6H型SiCの2層構造として白色光を発するようにしてもよい。
【0052】
また、第1及び第2の実施形態においては、LED素子100,300がフリップチップ型であるものを示したが、フェイスアップ型としてもよいことは勿論である。また、モスアイ構造層106,306に周期的に凸部107,307が形成されたものを示したが、周期的に凹部を形成してもよい。また、例えば、凸部又は凹部を角柱状とし、所定の周期で仮想の正方格子の交点に整列して形成してもよい。さらに、凸部又は凹部を三角錐状、四角錐状のような多角錘状としてもよく、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
100 LED素子
102 サファイア基板
104 第1電極層
106 モスアイ構造層
107 凸部
108 第2電極層
110 バッファ層
112 n型GaN層
114 多重量子井戸活性層
116 電子ブロック層
118 p型GaN層
119 半導体積層部
120 p側電極
122 反射面
124 n側電極
126 屈折率変調用電極
200 LED素子
205 シード結晶層
206 モスアイ構造層
208 第2電極層
300 LED素子
302 SiC基板
306 モスアイ構造層
307 凸部
308 第2電極層
310 バッファ層
312 n型GaN層
314 多重量子井戸活性層
316 電子ブロック層
318 p型GaN層
320 p側電極
324 n側電極
326 パッド電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凹部又は凸部が周期的に形成された材料を含むモスアイ構造体と、
前記材料に電界を生じさせ、当該材料の屈折率を変化させる電界調整部と、を有する屈折率変調構造。
【請求項2】
前記電界調整部は、前記モスアイ構造体の前記材料に電圧を印加する一対の屈折率変化用電極を有する請求項1に記載の屈折率変調構造。
【請求項3】
前記モスアイ構造体の前記材料は、圧電性を有する等方性結晶である請求項2に記載の屈折率変調構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の屈折率変調構造を備え、
前記屈折率変化用電極の少なくとも一方は、アノード電極又はカソード電極であるLED素子。
【請求項5】
前記モスアイ構造体は、支持基板と発光層の間に介在する請求項4に記載のLED素子。
【請求項6】
前記モスアイ構造体は、支持基板について発光層と反対側に設けられる請求項4に記載のLED素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−252965(P2011−252965A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124956(P2010−124956)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【Fターム(参考)】