説明

屋内の検出に基づいて無線端末の位置を推定するための検索エリア削減

【課題】 無線端末向けの位置固有の支援データを生成する目的で、非GPS導出の技術を使用して、Assisted GPS機能を備える無線端末の位置を推定する方法を提供すること。
【解決手段】 無線端末は、支援データを使用して、1つ又は複数のGPS信号を取得及び処理し、無線端末の位置の証明となる情報を導出する。GPSで導出された位置情報は、次いで、非GPS導出の位置と組み合わせられて、GPS又は非GPSどちらかのみで導出するよりも良好な無線端末の位置の推定を形成する。このGPS導出技術と非GPS技術の組み合わせは、無線端末が1つ又は2つのGPS信号しか取得することができない場合に特に有用である。その理由は、2つのみのGPS信号だけで無線端末の位置を求めることは可能でないためである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、一般には通信に関し、より詳細には、無線端末の位置を推定し、その位置の推定を、位置に基づくアプリケーションで使用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]図1は、従来技術による無線通信システム100の主要構成要素の図である。無線通信システム100は、無線端末101、基地局102−1、102−2、102−3、無線交換局111、支援サーバ112、位置クライアント113、及びGPS(全地球測位システム)衛星群121を備える。無線通信システム100は、よく知られた方式で、地理的領域120の全域に無線通信サービスを提供する。
【0003】
[0003]有線の通信と比べた無線通信の主要な利点は、ユーザに与えられる可動性である。一方、無線通信の主要な不都合点は、ユーザが移動することができるために、関係者がユーザの位置を容易に特定できない場合があることである。
【0004】
[0004]そのような関係者には、無線端末のユーザと遠隔地の相手の両方が含まれる。無線端末のユーザが自身の位置を知りたい理由には様々ある。例えば、遠隔にいる相手に自分のいる場所を知らせたい場合や、ナビゲーションについての助言を求めたいがある。
【0005】
[0005]また、遠隔地にいる相手がユーザの位置を知りたい理由には様々ある。例えば、無線端末からE9−1−1番への緊急通話を受けた者が、無線端末のある場所に救急サービスの車両を派遣することができるように、無線端末の位置を知りたい場合がある。
【0006】
[0006]従来技術には、無線端末の位置を推定する多くの技術が存在する。
【0007】
[0007]1つの技術によると、無線端末の位置は、その無線端末があるセルの中心又はセクタの重心として推定される。この技術は、無線端末や無線通信システムに追加的なハードウェアの追加を必要としない点で有利であり、したがって、この第1の技術は、旧来のシステムで低費用で実施することができる。しかし、この第1の技術は、(現在のセルラシステムでは)数キロメートル内までしか正確ではなく、したがって、より高い精度が要求される用途(例えば救急サービスの派遣等)には一般には許容できない
【0008】
[0008]第2の技術によると、無線端末から送信された信号の到着角度を三角法で求める、又は到着時間を双曲線測位で求めることにより、無線端末の位置が推定される。この技術は、数百メートル内までの精度を達成することができ、旧来の無線端末に使用できる点で有利である。しかし、この第2の技術の不利点は、一般には通信システムの基地局にハードウェアを追加する必要があり、それに法外な費用を要する場合があることである。
【0009】
[0009]第3の技術によると、無線端末の位置は、無線端末に内蔵された例えばGPS(全地球測位システム)受信機等の無線ナビゲーション装置によって推定される。この技術は、通例数十メートル内まで正確であるが、屋内や、密度の高い森林、ビルの谷間ではあまり安定して機能しない点で不都合である。さらに、この第3の技術の精度は、マルチパス反射によって著しく低下する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010]したがって、第1の技術よりも高い精度で、且つ第2及び第3の技術の費用と短所の一部を伴わずに、無線端末の位置を推定する技術が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011]本発明は、従来技術の無線端末の位置推定技術に伴う費用と制限の一部を伴わずに、無線端末の位置を推定することができるシステムの構築と使用を可能にする。
【0012】
[0012]本発明は、地勢、受信機、送信機の位置、及び他の要因に依存する電磁信号特性があるという認識に基づく。例えば、特定の無線局が第1の位置では強く受信され、第2の位置では弱く受信されることが分かっており、未知の位置にある所与の無線端末がその無線局を弱く受信している場合、その無線端末は第1の位置よりも第2の位置にある可能性が高いことになる。
【0013】
[0013]「強く」と「弱く」を定量化し、この原理を複数の特性と複数の信号に拡張することにより、本発明は、より高い精度で無線端末の位置を推定することができる。
【0014】
[0014]例示的実施形態は、(a)無線端末によって処理される第1の信号の第1の特徴の測定値を受信するステップと、(b)その無線端末が屋内にあるか否かを推定するステップと、(c)無線端末が屋内にあると推定される場合、無線端末の複数の可能な位置のうち屋外である各位置を存在しない位置と指定し、無線端末が屋外にあると推定される場合、無線端末の複数の可能な位置のうち屋内である各位置を存在しない位置と指定するステップと、(d)複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、第1の信号の第1の特徴の測定値を、第1の信号の第1の特徴の予測値と比較することに基づいて、無線端末の位置を推定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】[0015]従来技術の無線通信システムの一部のマップを示す図である。
【図2】[0016]本発明の例示的実施形態による無線通信システム200の主要構成要素を示す図である。
【図3】[0017]例示的実施形態による、図2に示す位置特定サーバ214の主要構成要素のブロック図である。
【図4】[0018]本発明の例示的実施形態により行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図5】[0019]図4のプロセス401、即ち位置特性データベース313の構築で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図6a】[0020]地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6b】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6c】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6d】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6e】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6f】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6g】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6h】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6i】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6j】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6k】地理的領域、及び複数の位置への地理的領域の分解を示す図である。
【図6L】[0021]地理的領域220を64個の矩形の位置に区分する代替の区分を示す図である。
【図6m】[0022]図6c〜6eで区分された地理的領域220の隣接グラフの図式表現の図である。
【図6n】[0023]図6h〜6kで区分された幹線道路の交差点の隣接グラフの図式表現を示す図である。
【図7】[0024]図4のプロセス402、即ち特性補正データベース313へのデータの取り込みの一部として行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図8a】[0025]例示的な歪み曲線及び補正曲線を示す図である。
【図8b】例示的な歪み曲線及び補正曲線を示す図である。
【図8c】例示的な歪み曲線及び補正曲線を示す図である。
【図9】[0026](図4の)プロセス403、即ち位置特性データベース313の維持管理で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図10】[0027]図7のプロセス701、即ち無線端末201の位置の推定で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図11a】[0028]図9のプロセス901、即ち時点H〜Hに無線端末201によって受信される、又は無線端末201に送信される1つ又は複数の信号の特性に基づいて無線端末201の位置の確率分布を生成する際に行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図11b】[0029]図11aのプロセス1104、即ち検索エリア削減の第1段階で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図11c】[0030]図11aのプロセス1105、即ち検索エリア削減の第2段階で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図11d】[0031]図11aのプロセス1106、即ち各時点H〜Hにおける無線端末201の確率分布を生成する際に行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図12】[0032]図9のプロセス902、即ちGPSで得られた情報(例えばGPS衛星群221からの情報)に基づいて無線端末201の位置の確率分布を生成する際に行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図13】[0033]図9のプロセス903、即ち無線端末201の位置についての非GPSベースの確率分布とGPSベースの確率分布を組み合わせる際に行われる主要プロセスのフローチャートである。
【図14】[0034]非GPSベースの時点H〜Hと、GPSベースの時点G〜Gを組み合わせて合成時点J〜Jにする第1の例を示す図である。
【図15】[0035]非GPSベースの時点H〜Hと、GPSベースの時点G〜Gを組み合わせて合成時点J〜Jにする第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0036]本願のために、以下の用語及びその変化形を次のように定義する。
・用語「位置」は、一次元の点、二次元の面積、又は三次元の体積と定義する。
・用語「滞在確率」は、カレンダー時刻Tに位置bにある無線端末Wが、環境条件Nの場合に、時刻T+Δtに位置bにある確率P(b,T,N,W)の推定と定義する。
・用語「移動確率」は、カレンダー時刻Tに位置bにある無線端末Wが、環境条件Nの場合に、時刻T+Δtに近隣の位置cにある確率P(b,T,N,W,c)の推定と定義する。
・用語「環境条件N」は、1つ又は複数の環境の物理的様相を含むものと定義され、これらに限定されないが、天候、天文学的条件、大気条件、無線トラフィックの量及び密度、車両トラフィックの量及び密度、道路及び歩道の構築等を含む。
・用語「カレンダー時刻T」は、1つ又は複数の単位(例えば、秒、分、時間、時刻、日にち、曜日、月、年の月、年等)で表された時間と定義される。
【0017】
[0037]概要−図2は、本発明の例示的実施形態による無線通信システム200の主要構成要素の図である。無線通信システム200は、図のように相互に関係付けられた、無線端末201、基地局202−1、202−2、202−3、無線交換局211、支援サーバ212、位置クライアント213、位置特定サーバ214、及びGPS衛星群221を備える。例示的実施形態は、よく知られた方式で地理的領域220の全域に無線通信サービスを提供し、地理的領域220内の無線端末201の位置を推定し、その推定を、位置を利用する用途で使用する。
【0018】
[0038]例示的実施形態によると、無線通信サービスは、一般には「UMTS」と呼ばれるUniversal Mobile Telecommunications Systemに従って、無線端末201に提供される。ただし、本開示を読めば、当業者には、1つ又は複数の周波数帯を利用する1つ又は複数の他のエアインタフェース標準(例えばGlobal System Mobile(GSM)、CDMA−2000、IS−136 TDMA、IS−95 CDMA、3G Wideband CDMA、IEEE 802.11 WiFi、802.16 WiMax、Bluetooth等)に従って動作する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0019】
[0039]無線端末201は、UMTSへの準拠、及び、下記で説明し、添付図面に説明するプロセスを行うために必要なハードウェア及びソフトウェアを備える。限定ではなく、例として、無線端末201は以下を行うことが可能である。
i.1つ又は複数の電磁信号の1つ又は複数の特性の測定と、位置特定サーバ214への測定結果の報告、及び
ii.1つ又は複数の信号の送信と、位置特定サーバ214へのそれら信号の伝送パラメータの報告、及び
iii.無線端末がGPS測距信号を取得及び処理するのを支援するための支援サーバ212からのGPS支援データの受信。
無線端末201は、移動することが可能であり、地理的領域220内の任意の位置にあることができる。無線通信システム200は1つのみの無線端末を備えるが、当業者には、本開示を読めば、任意数の無線端末を備える本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0020】
[0040]基地局202−1、202−2、202−3は、よく知られた方式で無線を介して無線交換局211及び無線端末201と通信する。当業者にはよく知られるように、基地局は、通常、アクセスポイント、ノード、ネットインタフェース等の各種代替名称でも呼ばれる。代替実施形態は3つの基地局を備えるが、当業者には、本開示を読めば、任意数の基地局を備える本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0021】
[0041]本発明の例示的実施形態によると、基地局202−1、202−2、202−3は、地上にあり、移動せず、地理的領域220内にある。当業者には、本開示を読めば、基地局が地表に対して移動しているか否かに関係なく、また地理的領域220内にあるか否かに関係なく、基地局の一部又はすべてが空中、海洋、又は宇宙にある、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0022】
[0042]無線交換局211は、下記及び添付図面で説明するように、無線端末201への通信サービスの提供、及び位置特定サーバ214との間の情報の流れを調整するスイッチを備える。当業者にはよく知られるように、無線交換局は、一般には、モバイル交換局、移動電話交換局、ルータ等の他の名称でも呼ばれる。
【0023】
[0043]例示的実施形態は1つの無線交換局を備えるが、当業者には、本開示を読めば、任意数の無線交換局を備える本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。例えば、無線端末が2つ以上の無線交換局と対話することができる場合、それらの無線交換局は、当該無線端末の位置の推定に有用な情報を交換し、共有することができる。例えば、無線交換局は、IS−41プロトコルメッセージであるHandoffMeasurementRequest及びHandoffMeasurementReueqest2を使用して、互いから信号強度の測定値を得ることができる。2つ以上の無線交換局を使用することは、無線交換局によってサービスされる地理的範囲が狭い場合(例えばローカルエリアネットワーク等)、或いは複数の無線交換局が1つの共通のエリアにサービスを提供する場合に特に一般的である。
【0024】
[0044]例示的実施形態によると、無線端末201にサービスを提供するすべての基地局は、無線交換局211に関連付けられる。当業者には、本開示を読めば、任意数の基地局が任意数の無線交換局に関連付けられる本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0025】
[0045]支援サーバ212は、下記及び添付図面で説明するプロセスを行うことが可能なハードウェア及びソフトウェアを備える。一般に、支援サーバ212は、無線端末201のためのGPS支援データを生成して、無線端末201がGPS衛星群221からGPS測距信号を取得及び処理するのを支援する。例示的実施形態によると、支援サーバ212は位置特定サーバ214とは別個の物理的エンティティであるが、当業者には、本開示を読めば、支援サーバ212と位置特定サーバ214がハードウェア、ソフトウェア、又はその両方を共有する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0026】
[0046]位置クライアント213は、下記及び添付図面で説明するように、位置特定サーバ214から提供される無線端末201の位置の推定を、位置を利用する用途で使用するハードウェア及びソフトウェアを備える。
【0027】
[0047]位置特定サーバ214は、下記及び添付図面で説明するように、無線端末201の位置の1つ又は複数の推定を生成するハードウェア及びソフトウェアを備える。当業者には、本開示を読めば、位置特定サーバ214を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、図2では位置特定サーバ214は無線交換局211とは物理的に別個のものとして図示しているが、当業者には、本開示を読めば、位置特定サーバ214が無線交換局211と完全又は部分的に統合された本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0028】
[0048]例示的実施形態によると、位置特定サーバ214は、ローカルエリアネットワークを介して、無線交換局211、支援サーバ212、及び位置クライアント213と通信するが、当業者には、本開示を読めば、位置特定サーバ214が、例えばインターネット、PSTN(公衆交換電話網)等の異なるネットワークを介してそれらエンティティの1つ又は複数と通信する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0029】
[0049]例示的実施形態によると、無線交換局211、支援サーバ212、位置クライアント213、及び位置特定サーバ214は、地理的領域220の外側にある。当業者には、本開示を読めば、無線交換局211、支援サーバ212、位置クライアント213、及び位置特定サーバ214の一部又はすべてが代わりに地理的領域220の中にある本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0030】
[0050]位置特定サーバ214−図3は、例示的実施形態による位置特定サーバ214の主要構成要素のブロック図である。位置特定サーバ214は、図のように相互に接続された、プロセッサ301、メモリ302、及びローカルエリアネットワーク送受信機303を備える。
【0031】
[0051]プロセッサ301は、下記及び添付図面で詳細に説明するように、オペレーティングシステム311及びアプリケーションソフトウェア312の実行と、位置特性データベース313及び特性補正データベース314へのデータの取り込み、修正、使用、及び管理とを行うことが可能な汎用プロセッサである。当業者には、プロセッサ301を作成し、使用する方法が明らかであろう。
【0032】
[0052]メモリ302は、以下を格納する不揮発性メモリである。
i.オペレーティングシステム311
ii.アプリケーションソフトウェア312
iii.位置特性データベース313、及び
iv.特性補正データベース314。
当業者には、メモリ302を作成し、使用する方法が明らかであろう。
【0033】
[0053]送受信機303は、位置特定サーバ214が、無線交換局211、支援サーバ212、位置クライアント213との間で情報を送受信することを可能にする。また、送受信機303は、位置特定サーバ214が、無線交換局211を介して無線端末201及び基地局202−1〜202−3との間で情報を送受信することも可能にする。当業者には、送受信機303を作成し、使用する方法が明らかであろう。
【0034】
[0054]例示的実施形態の動作−図4は、本発明の例示的実施形態により行われる主要プロセスのフローチャートである。
【0035】
[0055]プロセス401により、位置特性データベース313が構築される。本願のために、「位置特性データベース」は、複数の位置各々を、その位置にある無線端末に関連付けられた1つ又は複数の予想される特性に対応付けたデータベースと定義する。位置特性データベース313の構築の詳細については、下記及び添付図面で説明する。
【0036】
[0056]プロセス402により、特性補正データベース314が構築される。本願のために、「特性補正データベース」は、系統的な測定誤差を補償するために特性の測定をどのように調整できるかを示すデータベースと定義する。特性補正データベース314の構築の詳細については、下記及び添付図面で説明する。
【0037】
[0057]プロセス403により、位置特性データベース401、特性補正データベース402、及び、無線端末201の位置に応じて変化する各種特性に基づいて、無線端末201の位置が推定される。プロセス403の詳細については、下記及び添付図面で説明する。
【0038】
[0058]プロセス404により、これに限定されないが、E9−1−1サービス等の位置を利用する用途で、無線端末201の位置の推定が使用される。プロセス404の詳細は、下記及び添付図面で説明する。
【0039】
[0059]プロセス405により、位置特性データベース313及び特性補正データベース314が、それぞれの内容が正確で、最新で、完全であるように維持管理される。例示的実施形態の有効性は、位置特性データベース313及び特性補正データベース314の内容の正確さ、最新性、及び完全性に基づき、またそれらによって制限されるので、プロセス405は有利である。プロセス405の詳細については下記及び添付図面で説明する。
【0040】
[0060]位置特性データベース313の構築−図5は、プロセス401、即ち位置特性データベース313の構築で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【0041】
[0061]プロセス501で、地理的領域220がB(T,N)個の位置に区分され、B(T,N)は2以上の正の整数であり、B(T,N)は、カレンダー時刻Tと環境条件Nに応じて変化する。当業者には、本開示を読めば、地理的領域220が区分される位置の数が静的である本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、当業者には、本開示を読めば、地理的領域220が区分される位置の数がカレンダー時刻Tにも環境条件Nにも依存しない本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0042】
[0062]無線周波スペクトル及び個々の信号の特性の一部は、地理的領域220内の異なる位置で異なる。同様に、無線周波スペクトル及び無線端末201から送信される個々の信号の特性の一部は、無線端末201がある位置が異なると、基地局202−1、202−2、202−3において変化する。さらに、無線通信システム200の一部の特性(例えばハンドオフ状態等)は、無線端末201がある位置が異なると変化する。
【0043】
[0063]無線端末201が特定の位置にある時、無線端末201の位置と共に変化する特性の値は、その位置の「フィンガープリント」又は「署名」を表し、この値により、位置特定サーバ214は無線端末201の位置を推定することができる。例えば、通常の条件下で、無線端末201が第1の位置にある時に特性が第1の値の集合を有し、無線端末201が第2の位置にある時には第2の値の集合を有するとする。そして、無線端末201が未知の位置にあり、その未知の位置における特性が第2の値の集合と一致するとき、無線端末201は第2の位置にある可能性がより高いことになる。
【0044】
[0064]人間の指紋と手書きの署名は一般に絶対的に固有と考えられるが、各位置に関連付けられた特性の組み合わせは、地理的領域220内で絶対的に固有でない可能性もある。しかし、例示的実施形態の有効性は、複数の位置間における特性の値の差が増大するにつれて高まる。当業者には、本開示を読めば、各位置に関連付けられた特性の値を、その他の位置に関連付けられた特性の値と区別できる可能性を増すために、どのように位置及び特性を選択すべきかが明らかになろう。
【0045】
[0065]各位置は、以下によって記述される。
i.一意の識別子b
ii.その次元(例えば一次元、二次元、三次元、四次元等)
iii.その範囲(例えば地点、面積、体積等)を定義する座標(例えば緯度、経度、高度等)。この座標は、静的であっても、或いは、カレンダー時刻T若しくは環境条件N、又はカレンダー時刻Tと環境条件Nの両方に応じて変化してもよい。
iv.環境条件Nでカレンダー時刻Tに無線端末Wが位置bにある時の各特性Qの予想値E(b,T,N,W,Q)。
v.その近隣にある位置の識別、及び
vi.滞在確率P(b,T,N,W)及び移動確率P(b,T,N,W,c)。
【0046】
[0066]例示的実施形態によると、各位置の識別子は、任意に選択された正の整数である。当業者には、本開示を読めば、一部又はすべての位置の識別子が任意に選択されるのでない本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、当業者には、本開示を読めば、一部又はすべての位置の識別子が正の整数でない本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0047】
[0067]例示的実施形態によると、各位置の範囲は、三次元であり、(i)1つ又は複数の三次元座標及びその境界線を定義する幾何学的識別子、(ii)その位置の重心にあたる三次元座標、及び、(iii)カレンダー時刻Tと環境条件Nに応じてどのように範囲が変化するかの記述、によって記述される。当業者には、本開示を読めば、一部又はすべての位置の範囲が一次元又は二次元である本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、当業者には、本開示を読めば、一部又はすべての位置の範囲がカレンダー時刻T又は環境条件Nの関数ではない本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0048】
[0068]例示的実施形態によると、2つ以上の位置の範囲は、ゼロ個、1つ、2つ、3つ以上、又はすべての緯度及び経度地点で重複することが可能である(例えば下記で説明するように立体交差の高架交差路と下側路、複数階の建物の異なる階等)。
【0049】
[0069]例示的実施形態によると、各位置の境界線は、少なくとも部分的に、
i.地理的領域220の自然及び人工的な物理属性(例えば建物、歩道、道路、トンネル、橋、丘、壁、水、崖、河川等)
ii.地理的領域220を管理する法規(例えば人及び車両の位置及び移動に関する法令等)
iii.地理的領域220内の個人及び人々のグループ及び車両の位置及び移動に関する理論的予測と経験データ
iv.位置特定サーバ214で行われる推定の要求精度、及び
v.地理的領域220内の人及び車両の位置及び移動のパターン
vi.カレンダー時刻T、及び
vii.環境条件N
に基づき、以下の考慮事項を条件とする。
【0050】
[0070]第1に、無線端末201の位置を特定できる精度は、可能性としては位置のサイズが小さくなるにつれて高くなる。しかし、すべての位置が同じサイズである必要はなく、より高い精度を必要とするエリアは、より小さなサイズに区分することができ、一方、それほど高い精度を必要としないエリアは、より大きなサイズに区分することができる。
【0051】
[0071]
【0052】
[0072]第2に、下記で図10に基づいて説明するように、地理的領域220内の位置の数が増すと、位置特定サーバ214の計算負荷も増大する。
【0053】
[0073]第3に、近隣の位置のサイズが小さくなると、それらの位置内の特性の予想値が同じになるか、又は非常に近くなる可能性が増し、これは、無線端末201がある位置に存在する時と他の位置に存在する時とで、位置特定サーバ214が正確に判定する能力を妨げる可能性がある。
【0054】
[0074]これらの考慮事項を念頭に置き、当業者には、本開示を読めば、地理的領域220を任意のサイズ、形状、及び配置の任意数の位置に区分する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、当業者には、本開示を読めば、位置のサイズ及び形状が同じである本発明の実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0055】
[0075]図6aは、地理的領域220の等角投影図であり、図6bは地理的領域220の地図である。地理的領域220は、噴水601、公園602、4階建てのビル603、2階建てのビル604、様々な通り、歩道、及び他のものを備え、それらは下記で説明し、図6c〜6eに図示するように、28個の位置に区分されている。例示的実施形態では地理的領域220はおよそ4つの矩形の区画からなるが、当業者には、任意のサイズ、配置、及び複雑度の地理的領域を用いる本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0056】
[0076]例示的実施形態によると、図6cに示すように、8つの道路交差点が位置1〜8に区分される。例示的実施形態によると、図6dに示すように、ビル603及び604の周囲まで延びる道路区域とそれに隣接する歩道は、位置9〜19に区分される。例示的実施形態によると、噴水601は、位置20に区分され、公園602は位置25に区分され、ビル604の各階は位置21、22、23、24の1つに分類され、ビル603の各階は、位置27及び28の1つとして分類される。ただし、当業者には、本開示を読めば、地理的領域220を任意のサイズ及び形状の任意数の位置に区分する方法が明らかになろう。
【0057】
[0077]本発明の代替実施形態によると、4車線に区分された2つの幹線道路のクローバー型の交差点を含む地理的領域が51個の位置に区分される。図6fは、その交差点の等角投影図であり、図6gは、その交差点の地図を示す。例示的実施形態によると、図6hに示すように、植え込みと中央分離帯が15個の位置に区分され、4つのランプ(ramp)は図6iに示すように4つの位置に区分され、内側即ち「追い越し」車線は図6jに示すように8つの位置に区分され、外側即ち「走行」車線は、図6kに示すように8つの位置に区分されている。
【0058】
[0078]図6Lは、地理的領域220を64個の矩形の位置に区分した代替の区分を示す。
【0059】
[0079]プロセス502により、以下の特性についての予想値E(b,T,N,W,Q)が、各位置に関連付けられる。
i.無線端末201がその位置にある時に、すべての送信元(例えば基地局202−1、202−2、202−3、商用テレビ、商用ラジオ、ナビゲーション、地上ベースの航空制御等)から無線端末201で受信可能なすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想経路損失、
ii.無線端末201がその位置にある時に、基地局202−1、202−2、202−3で受信可能な無線端末201から送信されるすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想経路損失、
iii.カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた、無線端末201がその位置にある時にすべての送信元から無線端末201で受信可能なすべての信号の予想受信信号強度、
iv.無線端末201がその位置にある時に基地局202−1、202−2、202−3で受信可能な無線端末201から送信されるすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想受信信号強度、
v.無線端末201がその位置にある時にすべての送信元から無線端末201で受信可能なすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想受信信号対妨害比(例えばEb/No等)、
vi.無線端末201がその位置にある時に基地局202−1、202−2、202−3で受信可能な無線端末201から送信されるすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想受信信号対妨害比、
vii.無線端末201がその位置にある時にすべての送信元から無線端末201で受信可能なすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じたマルチパス成分の各対の予想受信時間差(例えば1対のマルチパス成分についての1つの時間差、3つのマルチパス成分についての時間差の対等)、
viii.無線端末201がその位置にある時に基地局202−1、202−2、202−3で受信可能な無線端末201から送信されるすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じたマルチパス成分の各対の予想受信時間差(例えば1対のマルチパス成分についての1つの時間差、3つのマルチパス成分についての時間差の対等)、
ix.無線端末201がその位置にある時にすべての送信元から無線端末201で受信可能なすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想受信遅延拡散(例えばRMS遅延拡散、過剰遅延拡散、平均過剰遅延拡散等)、
x.無線端末201がその位置にある時に基地局202−1、202−2、202−3で受信可能な無線端末201から送信されるすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた予想受信遅延拡散(例えばRMS遅延拡散、過剰遅延拡散、平均過剰遅延拡散等)、
xi.無線端末201がその位置にある時にすべての送信元から無線端末201で受信可能なすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた2つ以上のマルチパス成分の予想受信相対到着時間(よく知られた方式でレーキ受信機によって求めることができる)、
xii.無線端末201がその位置にある時に基地局202−1、202−2、202−3で受信可能な無線端末201から送信されるすべての信号の、カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた2つ以上のマルチパス成分の予想受信相対到着時間、
xiii.カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた、基地局202−1、202−2、202−3を通じて無線端末201から送信される信号及び無線端末201で受信可能な信号すべての予想往復時間、
xiv.カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた、無線端末201を通じて基地局202−1、202−2、202−3によって送信される信号及び受信可能な信号すべての予想往復時間、
xv.カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた、その位置に通信サービスを提供する基地局の識別、
xvi.カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた、その位置に通信サービスを提供する隣接基地局の識別、及び
xvii.カレンダー時刻T及び環境条件Nに応じた、無線端末201がその位置にある時の無線端末201及び無線通信システム200のハンドオーバー状態(例えば、ソフト、ソフター(softer)、1x、2x等)。
【0060】
[0080]本発明の例示的実施形態によると、無線端末201から送信されるすべての信号は、基地局202−1〜202−3と通信するためであり、無線端末201によって受信されるすべての信号は、
・無線端末201と通信するために基地局202−1〜202−3によって送信される信号、
・テレビ信号、
・ラジオ信号、
・航空信号、及び
・ナビゲーション信号
である。
当業者には、本開示を読めば、異なる信号を使用する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0061】
[0081]例示的実施形態によると、これら特性の予想値は、
i.複数の理論及び経験的な無線周波伝搬モデルと、
ii.よく知られた方式による地理的領域220内の特性の複数の経験的測定値と
の組み合わせを通じて求められる。特性の経験的測定値は、下記で説明するように、位置特性データベース313に記憶され、更新される。
【0062】
[0082]本発明の例示的実施形態によると、各位置bは、それに隣接する位置(即ち、無線端末201が1回の時間ステップΔt内に位置bから無理なく移動することができる位置)の識別によって記述される。例示的実施形態によると、2つの位置は、少なくとも2つの共通の地点を有する時且つその時に限り、「隣接する」とみなされる。ただし、当業者には、本開示を読めば、2つの位置がゼロ個の共通地点又は1つの共通地点を有する場合に2つの位置を隣接するとみなす、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0063】
[0083]隣接グラフ−例示的実施形態によると、どの位置同士が隣接するかを示すデータ構造が作成される。このデータ構造は、「隣接グラフ」と呼ばれ、位置特性データベース313に疎行列形式で記憶される。図6mは、地理的領域220を構成する28個の位置についての隣接グラフの図式表現を示し、図6nは、図6f〜図6kの幹線道路の交差点を構成する51個の位置についての隣接グラフの図式表現を示す。
【0064】
[0084]下記及び添付図面で詳細に説明するように、隣接グラフは、無線端末201の移動の時間的分析で使用される。当業者には、本開示を読めば、地理的領域220の任意の区分についての隣接グラフを作成する方法が明らかになろう。
【0065】
[0085]例示的実施形態によると、すべてのbについての滞在確率P(b,T,N,W)及び移動確率P(b,T,N,W,c)は、以下を考慮に入れた無線端末Wの移動のモデルに基づいて生成される。
i.隣接グラフのトポロジ、
ii.カレンダー時刻T、
iii.環境条件N、
iv.無線端末及び無線端末を携行するエンティティの位置及び移動に影響を与える自然の、及び人工的な物理的属性(例えば建物、歩道、道路、トンネル、橋、丘、壁、水、崖、河川等)、
v.無線端末及び無線端末を携行するエンティティの位置及び移動に影響する法規(例えば一方通行の道路等)、及び
vi.すべての無線端末の移動についての過去のデータ、及び
vii.無線端末Wの移動についての過去のデータ。
当業者には、本開示を読めば、i、ii、iii、iv、v、vi、及びviiの任意のサブコンビネーションを使用して各位置bの滞在確率と移動確率を生成する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0066】
[0086]位置bに関連付けられた移動確率P(b,T,N,W,c)は、等方性とも非等方性とも考えることができる。本願のために、「等方移動確率」は、移動の方向の一様尤度を反映した確率と定義され、「非等方移動確率」は、移動の方向の非一様尤度を反映した確率と定義される。例えば、二次元の正六角形格子として配置された位置について、位置bのP(b,T,N,W,c)の値がすべて等しい(例えば、各隣接位置cについてP(b,T,N,W,c)=1/6)の時且つその時に限り、位置bのP(b,T,N,W,c)の値は等方性になる。逆に、P(b,T,N,W,c)の値は、異なる値を有する確率が少なくとも2つある場合に非等方性になる。別の例として、二次元の「チェッカーボード」格子で配置された位置の場合、P(b,T,N,W,c)の値は、
(i)位置bの北、南、東、及び西の移動確率がすべてpに等しく、
(ii)位置bの北東、北西、南東、及び南西の移動確率がすべて
【数1】


に等しく、且つ
(iii)
【数2】


である時且つその時に限り等方性になる。
【0067】
[0087]等方移動確率は生成が容易であるが、上記の条件を考慮して生成される非等方移動確率に比べると精度がかなり落ちる。したがって、例示的実施形態では移動確率は非等方性とするが、当業者には、本開示を読めば、等方移動確率を使用する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0068】
[0088]特性補正データベース313へのデータの取り込み−図7は、プロセス402、即ち特性補正データベース313へのデータの取り込みの一部として行われる主要プロセスのフローチャートである。
【0069】
[0089]一般に、位置特定サーバ214が無線端末201の位置を推定する能力は、無線端末201及び基地局202−1、202−2、202−3で特性が測定される際の精度によって制限される。測定誤差の性質又は大きさが予想不可能なほど不正確な場合、その誤差を克服するためにできることはほとんどない。
【0070】
[0090]それに対して、測定誤差の性質及び大きさが予測可能であるときには誤差を補正することができ、一部の測定誤差の性質及び大きさは実際に予測可能である。例えば、ある製造元及び機種の無線端末は、−2dBだけ信号の信号強度を誤って測定し、報告することが知られている。その機種の無線端末からの測定値を補正しなかった場合、その−2dBの誤差により、位置特定サーバ214が無線端末の位置を誤って推定する可能性がある。それに対して、位置特定サーバ214で、その製造元及び機種の無線端末からの測定値に2dBを加算する場合は、位置特定サーバ214が無線端末の位置を誤って推定する可能性は低減される。
【0071】
[0091]特性補正データベース313は、系統的な測定誤差を認識し、その誤差を補正するために位置特定サーバ214で必要とされる情報を備える。測定結果中の一部の状況誤差を除去する技術については、下記及び添付図面で説明する。
【0072】
[0092]プロセス701により、位置特定サーバ214に測定値を提供する可能性のあるすべての無線機と、測定値が誤っている可能性のあるすべての特性とについて歪み関数が生成される。
【0073】
[0093]一般に、歪み関数D(A,K,Q)は、特性Qについての報告測定値Rを、その特性についての実際値Aと、測定を行う無線機の定義特徴Kとに関係付ける。
R=D(A,K,Q) (式1)
【0074】
[0094]例示的実施形態によると、歪み関数D(A,K,Q)は、無線機の製造者から位置特定サーバ214の所有者/オペレータに提供される。ただし、当業者には、本開示を読めば、無線機の製造者の助けを借りずに任意の無線機の歪み関数D(A,K,Q)を生成する方法が明らかになろう。
【0075】
[0095]理想的な無線機は、受信する特性の値を完璧に測定及び報告し、ある特性及び理想的な無線機についての歪み関数D(A,K,Q)を図8aに示す。図8aのグラフから分かるように、理想的な無線機の主要な特徴は、測定の報告値Rが、無線機における特性の実際値Aと正確に等しいことである(即ち測定又は報告の誤差がない)。
【0076】
[0096]それに対して、大半の実際の無線機は、受信する信号の特性を完璧には測定しない。これは特に、誤差が大きくなりうる信号強度の測定の場合にそうである。例えば、図8bに、例示的な実際の無線機の歪み関数のグラフを示す。この場合、報告される測定値は、一部の値については高すぎ、他の値については低すぎ、1つの値についてしか正確でない。
【0077】
[0097]報告される測定値中の各誤差の性質と大きさは、歪み関数D(A,K,Q)に固有であり、したがって、歪み関数が分かれば、測定誤差を補償することが可能になる。即ち、無線機がどのように測定値を歪ませるかを位置特定サーバ214が正確に認識していれば、位置特定サーバ214は、較正関数で報告測定値を補正、即ち較正して、特性の実際値を導出することができる。較正関数(C(R,K,Q)と表す)は、プロセス1102で生成される。
【0078】
[0098]例示的実施形態によると、すべての測定値についての歪み関数D(A,K,Q)は、表形式で表される。例えば、各種無線機のための1種類の信号強度測定値の歪み関数を表1に示す。ただし、当業者には、本開示を読めば、一部又はすべての測定値についての歪み関数が表形式で表されない本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、当業者には、本開示を読めば、任意種類の特性の任意種類の測定値及び任意の無線機のための歪み関数を備える本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【表1】

【0079】
[0099]特徴Kの目的は、無線端末201からの報告測定値を較正する際に使用すべき較正関数を特定することであり、したがって、特徴Kは、無線端末201のための実際の較正関数を示すと同時に、経済的に妥当でなければならない。
【0080】
[0100]例えば、特徴Kは、これらに限定されないが、以下である。
i.無線端末201の一意の識別(例えば無線端末の電子連続番号(「ESN」))、無線端末の国際移動局識別子(「IMSI」)、無線端末の一時国際移動局識別子(「TIMSI」)、移動局識別(「MSID」)、無線端末のディレクトリ番号(「DN」等)、又は
ii.無線端末201の機種(例えばTimeport210c等)、又は
iii.無線端末201のメーカ(即ち製造会社)(例えばモトローラ(Motorola)(登録商標)、サムスン(Samsung)(登録商標)、ノキア(Nokia)(登録商標)等)、又は
iv.無線端末201の無線周波回路の識別(例えば、モトローラRF回路設計465B等)、又は
v.無線端末201の1つ又は複数の構成要素の識別(例えばアンテナの部品番号、測定コンポーネントの部品番号等)、又は
viii.i、ii、iii、iv、v、vi、viiの任意の組み合わせ。
【0081】
[0101]最も正確な特徴は、無線端末201の一意の識別である。その理由は、位置特定サーバ214が、その特定の無線端末のために生成された較正関数を使用することができるためである。しかし、すべての無線端末をテストして各自の一意の歪み関数を決定することが必要になるため、これが経済面で実現可能である見込みは低い。
【0082】
[0102]一方、無線端末201の製造元のみを特徴Kとして使用することは、経済的には妥当であるが、1つの製造会社の無線端末すべてのための単一の較正関数で、非常に正確な較正後の信号強度測定値が得られる見込みは低い。
【0083】
[0103]妥協案として、例示的実施形態では無線端末201の製造元と機種の組み合わせを特徴Kとして使用する。これは、同じ製造者及び機種の無線端末間の変動の量は小さく、その機種向けの単一の較正関数で、その製造元及び機種のすべての無線端末について許容できる正確さの較正後測定値が得られると考えられるためである。
【0084】
[0104]ただし、当業者には、本開示を読めば、特徴Kが何らか他のものに基づく、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0085】
[0105]プロセス502により、位置特定サーバ214に測定値を提供する可能性のあるすべての無線機と、測定値に歪みがある可能性のあるすべての特性とについて、較正関数C(R,K,Q)が生成される。
【0086】
[0106]一般に、較正関数C(R,K,Q)は、特性Qの較正後の測定値Sを、特性Qの報告測定値Rと、測定を行う無線機の定義特徴Kとに関係付ける。
S=D(R,K,Q) (式2)
【0087】
[0107]較正関数C(R,K,Q)は、歪み関数D(A,K,Q)の逆数である。即ち、較正関数C(R,K,Q)の重要な特徴は、式3
S=A=C(D(A,K,Q),K,Q) (式3)
を満たして、較正後の測定値Sが、測定及び報告を行う無線機が理想的なものであった場合の報告測定値Rになるようにすることである。当業者には、本開示を読めば、D(A,K,Q)からC(R,K,Q)を導出する方法が明らかになろう。図8cは、図8bに示す歪み関数D(A,K,Q)についての較正関数C(R,K,Q)のグラフを示す。
【0088】
[0108]例示的実施形態によると、関数C(R,K,Q)は、表2に示すような表形式で表される。
【表2】

【0089】
[0109]プロセス402により、較正関数C(R,K,Q)が特性補正データベース313に記憶される。
【0090】
[0110]位置特性データベース313の維持管理−図9は、プロセス403、即ち位置特性データベース313と特性補正データベース314の維持管理で行われる主要プロセスのフローチャートである。例示的実施形態が機能する能力は、位置特性データベース313と特性補正データベース314に保持される情報の精度、新しさ、及び完全性に基づき、またそれらによって制限される。
【0091】
[0111]プロセス901により、地理的領域220全域に高精度の機器で周期的に経験的測定を行って、位置特性データベース313及び特性補正データベース314に保持される情報の正確さ、新しさ、及び完全性を保証する、ドライブテスト規則が開発される。
【0092】
[0112]プロセス902で、そのドライブテスト規則が実施される。
【0093】
[0113]プロセス903により、必要に応じて位置特性データベース313と特性補正データベース314が更新される。
【0094】
[0114]無線端末201の位置の推定−図10は、プロセス403、即ち無線端末201の位置の推定で行われる主要プロセスのフローチャートである。例示的実施形態によると、プロセス403は、位置クライアント213からの無線端末201の位置に対する要求によって開始される。ただし、当業者には、本開示を読めば、プロセス403が周期的、又は散発的に、又は何らかの他の事象に応答して開始される、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0095】
[0115]プロセス1001により、時間間隔ΔTにおける各時点(瞬時)H〜Hにつき、無線端末201の位置についてのY個の確率分布が生成される。Yは正の整数であり、生成は、時点H〜H各々において無線端末201に関連付けられている特性の測定値を、それらの時間におけるそれらの特性についての予想値と比較することに基づく。Y個の確率分布はそれぞれ、無線端末201が時点H〜H各々に各位置にある確率の第1の推定を提供する。プロセス1001の詳細については、下記及び添付図面で説明する。
【0096】
[0116]プロセス1002により、時間間隔ΔTにおける各時点A〜Aの無線端末201の位置についてZ個の確率分布が生成される。Zは正の整数であり、生成は、各時点A〜Aにおける無線端末201でのAssisted GPS測定に基づく。Z個の確率分布は各々、各時点A〜Aに無線端末201が各位置にある確率の第1の推定を提供する。プロセス1002の詳細については、下記及び添付図面で説明する。
【0097】
[0117]プロセス1003により、プロセス1001で生成されたY個の確率分布と、プロセス1002で生成されたZ個の確率分布が、各自の時間順序を考慮して組み合わせられて、無線端末201の位置の第2の推定を生成する。プロセス1003の詳細については、下記及び添付図面で説明する。
【0098】
[0118]特性のパターンマッチングに基づく無線端末201の位置の確率分布の生成−図11aは、プロセス1001、即ち、各時点H〜Hにおいて無線端末201に関連付けられている特性の測定値を、それらの時間におけるそれらの特性の予想値と比較することに基づいて、無線端末201の位置のY個の確率分布を生成する際に行われる主要プロセスのフローチャートである。例示的実施形態によると、位置特定サーバ214は、プロセス1101〜1106各々を、そのプロセスを行うために必要なデータが入手可能になると直ちに行う。当業者には、本開示を読めば、図11aに示すタスクの中で同時に行うことが可能なタスク、又は図とは異なる順序で行うことが可能なタスクが明らかになろう。
【0099】
[0119]プロセス1101により、位置特定サーバ214は、無線端末201に関連付けられた、Y個の特性測定値の非空集合M〜Mを受け取る。各測定値の集合は、時点H〜Hの1つに作成される。
【0100】
[0120]例示的実施形態によると、各測定値の集合は以下を含む。
i.すべての送信元(例えば基地局202−1、202−2、202−3、商用テレビ、商用ラジオ、ナビゲーション、地上ベースの航空制御等)から無線端末201で受信されるすべての信号の経路損失、
ii.基地局202−1、202−2、202−3で受信される、無線端末201から送信されるすべての信号の経路損失、
iii.すべての送信元から無線端末201で受信されるすべての信号の受信信号強度、
iv.基地局202−1、202−2、202−3で受信される、無線端末201から送信されるすべての信号の受信信号強度、
v.すべての送信元から無線端末201で受信されるすべての信号の受信信号対妨害比、
vi.基地局202−1、202−2、202−3で受信される、無線端末201から送信されるすべての信号の受信信号対妨害比、
vii.すべての送信元から無線端末201で受信されるすべての信号のマルチパス成分の各対の受信時間差、
viii.基地局202−1、202−2、202−3で受信される、無線端末201から送信されるすべての信号のマルチパス成分の各対の受信時間差、及び
ix.すべての送信元から無線端末201で受信されるすべての信号の受信遅延拡散、
x.基地局202−1、202−2、202−3で受信される、無線端末201から送信されるすべての信号の受信遅延拡散、
xi.すべての送信元から無線端末201で受信されるすべての信号の2つ以上のマルチパス成分の受信相対到着時間、
xii.基地局202−1、202−2、202−3で受信される、無線端末201から送信されるすべての信号の2つ以上のマルチパス成分の受信相対到着時間、
xiii.基地局202−1、202−2、202−3を通じて無線端末201によって送受信されるすべての信号の往復時間、
xiv.無線端末201を通じて基地局202−1、202−2、202−3で送受信されるすべての信号の往復時間
xv.無線端末201に通信サービスを提供する基地局の識別、
xvi.無線端末201に通信サービスを提供することが可能な隣接基地局の識別、
xvii.無線端末201と無線通信システム200のハンドオーバー状態(例えばソフト、ソフター、1x、2x等)、
xviii.カレンダー時刻Tの表示、及び
xix.環境条件Nの表示。
【0101】
[0121]例示的実施形態によると、無線端末201は、位置特定サーバ214からの要求に応じて、ユーザプレーンを介して、自身の測定結果を直接位置特定サーバ214に提供する。これは、無線端末201の位置の推定の品質は、測定の性質、回数、又は動的範囲に制限がない場合(エアインタフェース標準に従って測定を行うことが要求される場合には制限がある可能性がある)に高まるため、有利である。ただし、当業者には、本開示を読めば、無線端末201が、周期的、又は散発的、又は何らかの他の事象に応答して自身の測定結果を提供する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。さらに、当業者には、本開示を読めば、無線端末201がUMTSプロトコルを介して自身の測定結果を位置特定サーバ214に提供する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0102】
[0122]例示的実施形態によると、基地局202−1、202−2、202−3は、位置特定サーバ214からの要求に応じて、無線交換局211を介して、各自の測定結果を位置特定サーバ214に提供する。ただし、当業者には、本開示を読めば、基地局202−1、202−2、202−3が、周期的、又は散発的、又は何らかの他の事象に応答して各自の測定結果を位置特定サーバ214に提供する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0103】
[0123]プロセス1101の一部として、位置特定サーバ214は、無線端末201から以下も受け取る。
i.各時点H〜Hに無線端末201にサービスを提供した基地局の識別、及び
ii.各時点H〜Hに無線端末201の位置にサービスを提供した隣接基地局の識別。
これらの情報は、下記で詳細に説明する検索エリア削減を行う際に位置特定サーバ214で使用される。
【0104】
[0124]プロセス1102により、位置特定サーバ214は、特性補正データベース314内で較正関数C(R,K,Q)を使用して、プロセス1001で受信した測定結果の系統誤差を補正する。
【0105】
[0125]プロセス1103により、位置特定サーバ214は、適切である場合には、測定値の差を計算して、プロセス1001で受け取った測定結果の状況誤差を補正する。無線端末201のアンテナの状態、バッテリの状態、及び端末が車両内にあるかどうかを含む多くの要因が、状況的な測定誤差を生じさせる可能性がある。これは特に経路損失及び信号強度の測定の場合にそうである。
【0106】
[0126]例示的実施形態では、プロセス1102で補正されていても補正されていなくとも、測定値自体をそれら特性の予想値とパターンマッチングするのではなく、それら測定値の対単位の差を、それら特性の予想値の対単位の差とパターンマッチングすることにより、上記のような要因の影響を緩和する。当業者には、本開示を読めば、対単位の差を使用することによって種々の測定値の状況誤差が補正される、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0107】
[0127]信号強度に関する単純な例でこの手法を具体的に説明する。第1の無線局である無線局Aが、位置1では−56dBmで、位置2では−42dBmで、位置3では−63dBmで、位置4では−61dBmで受信されることができ、第2の無線局である無線局Bが、位置1では−63dBmで、位置2では−56dBmで、位置3では−65dBmで、位置4では−52dBmで受信されることができる。この情報が下の表に要約され、位置を信号強度に相関付けるマップ又はデータベースの基礎となる。
【表3】

【0108】
[0128]アンテナが壊れた状態で未知の位置にある所与の無線端末が無線局Aを−47dBmで、無線局Bを−61dBmで受信すると、その無線端末は、無線局Aを無線局Bよりも14dBm強く登録する。これは、その無線端末が、位置1、3、又は4よりも位置2にある可能性が高いことを示唆する。測定された信号強度自体を位置特性データベース313とパターンマッチングした場合、その結果得られる無線端末201の位置についての確率分布は、この手法ほど正確ではない可能性がある。
【0109】
[0129]この手法の不利点は、(1)無作為の測定雑音の分散を倍にし、且つ(2)パターンマッチングするデータ点の数を1だけ減らす、ことの代償で状況バイアスが解消されることである。さらに、対単位の減算により、相対的信号強度の測定誤差に相関性が生じる(即ち、マッチングするすべてのデータ点が統計的に相関付けられる)。当業者には、測定報告の尤度を計算する際にこの相関性に対処する方法が明らかであろう。
【0110】
[0130]プロセス1104及び1105により、位置特定サーバ214は、プロセス1106に備えて、「検索エリア削減」と呼ばれる技術を行う。検索エリア削減とはどのようなものか、及びそれが有利である理由を理解するために、プロセス1106の簡単な説明が助けとなる。プロセス1106で、位置特定サーバ214は、各時点H〜Hに無線端末201が各位置にある確率を推定する。そのためには、各時点H〜Hにつき1つ、Y個の多次元確率分布を生成することが必要となる。
【0111】
[0131]各多次元確率分布を生成するプロセスは、計算量が多く、その量は、無線端末201の可能な位置として考慮しなければならない位置の数に応じて決まる。考慮しなければならない位置の数が少ない場合、このプロセスは、多くの「リアルタイム」の用途に十分に迅速に行うことができる。それに対して、考慮しなければならない位置の数が多い場合は、このプロセスはしばしば時間がかかりすぎる可能性がある。
【0112】
[0132]名目上は、地理的領域220内のすべての位置を考慮しなければならない。これは、プロセス1104及び1105の前に、無線端末201はどの位置にもありうるからである。例示的実施形態によると、地理的領域220は28個のみの位置を備える。ただし、本発明の多くの代替実施形態では、地理的領域220は、数千、数百万、或いは数十億個の位置を備える。各時点につき数千、数百万、或いは数十億個の位置を位置特定サーバ214で考慮すると、多くのリアルタイムの用途には時間がかかりすぎる可能性がある。
【0113】
[0133]したがって、プロセス1106の実施を迅速化するために、位置特定サーバ214は、無線端末201についての多くの可能な位置を迅速且つ簡潔に排除し、したがって無線端末201がそれらの位置にある確率を簡潔にゼロに設定する、いくつかの計算的に効率的なテストを行う。これにより、プロセス1106で完全に考慮しなければならない位置の数を減らし、一般にはプロセス1001が行われる速度を改善する。
【0114】
[0134]例示的実施形態によると、各時点H〜Hについて、位置特定サーバ214は、無線端末201が屋内にあるか否かの推定に基づくプロセス1104の検索エリア削減の第1段階を用い、その後、1つ又は複数の位置を無線端末201の存在しない位置として指定することを試みて、検索エリア削減の第1段階を「くぐり抜けた」位置に対して計算的に効率的な6種のテストを行う、プロセス1105の検索エリア削減の第2段階が行われる。下記及び図11b及び11cで詳細に説明するように、位置は、プロセス1104で時点Hに存在しない位置に指定されるか、又はプロセス1105の6種のテストの1つ又は複数で時点Hの時に存在しない位置に指定された場合に、時点Hにおいて存在しない位置と指定される。位置が時点Hに存在しない位置と指定される限りにおいては、その時点についての確率分布を生成する際の位置特定サーバ214への計算負荷は軽減される。
【0115】
[0135]プロセス1104及び1105で生じうるエラーには2種類ある。第1の種類のエラーであるタイプIエラーは、プロセス1104又は1105で、実際には無線端末201がその位置にあることが存在しない位置ではないときにその位置を存在しない位置と指定した場合に発生する。第2の種類のエラー、タイプIIエラーは、プロセス1104又は1105で、実際には無線端末201がその位置にあることができない時に位置を存在しない位置と指定しない場合に発生する。
【0116】
[0136]一般に、タイプIエラーは、例示的実施形態が無線端末201の位置を推定する精度に影響し、タイプIIエラーは、プロセス1104及び1105で確率分布を生成する速度に影響する。例示的実施形態によると、テストとそのパラメータは、タイプI及びタイプIIのエラーの数と、プロセス1104及び1105の計算の複雑度及び価値とのバランスをとるように選択される。例えば、タイプIIのエラーが多すぎると、プロセス1104及び1105の価値は、プロセス1104及び1105の計算負荷によって減じられてしまう。当業者には、本開示を読めば、任意数のタイプI及びタイプIIエラーを有する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0117】
[0137]図11bは、プロセス1104、即ち検索エリア削減の第1段階で行われる主要プロセスのフローチャートである。
【0118】
[0138]プロセス1111により、位置特定サーバ214は、無線端末201が屋内にあるか否かを推定する。例示的実施形態によると、この推定は、各種の測定信号特性及び予測信号特性に基づいて無線端末が屋内にあるか屋外にあるかを推定するようにパターン分類器がトレーニングされる、パターン分類技術を介して実現される。この技術は、「パターン分類を使用した、無線端末が屋内にあるかどうかの推定」という名称の同時係属出願第11/xxx,xxx号に開示され、同出願は参照により本願に援用される。当業者には理解されるように、本発明の他の実施形態では、例示的実施形態の技術に加えて、又はその代わりに、無線端末201が屋内にあるかどうかを推定する1つ又は複数の他の技術が用いられてもよく、また当業者には、本開示を読めば、そのような実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0119】
[0139]当業者にはさらに理解されるように、本発明の他の実施形態では、位置特定サーバ214以外のデータ処理システム(例えば、支援サーバ212、無線端末201、図面に図示しないシステム等)が代わりに屋内/屋外の推定を行い、その推定の結果を通知する信号をよく知られた方式で位置特定サーバ214に送信してもよい。いずれの場合も、当業者には、本開示を読めば、プロセス1111を行う本発明の実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0120】
[0140]プロセス1112により、位置特定サーバ214は、プロセス1111で推定された屋内/屋外の状態と矛盾するすべての位置を存在しない位置に指定する。即ち、プロセス1111で無線端末201が屋内にあると推定した場合は、プロセス1112では、屋外であることが分かっているすべての位置を存在しない位置に指定し、その逆の場合も同様である。例示的実施形態によると、地理的領域220内の位置の集合は、事前に(即ちプロセス403で無線端末201の位置を推定する前に)3つの部分集合、即ち屋内、屋外、及び屋内とも屋外とも指定されていない位置を含む第3の部分集合(例えば不確定、考慮外等)に区分される。当業者には理解されるように、本発明のいくつかの実施形態では、この区分は、地理情報システム(GIS)のデータベースから得られるデータに基づいてもよく、他の実施形態では、この区分は、何らかの他の方法論に基づいて行ってもよい。当業者にはさらに理解されるように、本発明の他の実施形態では、地理的領域220内の位置の集合は、代わりに2つの部分集合(即ち屋内と屋外)に区分してもよく、さらに他の実施形態では、明示的な区分を全く行わずに、1つ又は複数の位置を単純に屋内又は屋外と指定してもよい(例えば関連付けられたフラグ等を介して)。いずれの場合も、当業者には、本開示を読めば、プロセス1112を行う本発明の実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0121】
[0141]図11cは、プロセス1105、即ち検索エリア削減の第2段階で行われる主要プロセスのフローチャートである。例示的実施形態によると、プロセス1104で存在しない位置と指定されたすべての位置は、プロセス1105のさらなる処理から除外され、それにより、検索エリア削減の第2段階の計算要件を軽減する。
【0122】
[0142]プロセス1121により、位置特定サーバ214は、ある位置における、ある特性の測定値と、その特性の予想値との差が閾値を超える場合に、その位置を存在しない位置と指定する。このテストの基礎となる理論は、ある位置における、特性の測定値と、特性の予想値とのずれが大きい場合は、無線端末201がその位置にあったときに測定が行われなかったことを示唆するというものである。例示的実施形態によると、位置特定エンジン214は、各時点H〜Hについて各信号の各特性の各測定値に対してプロセス1121を行う。当業者には、本開示を読めば、所望数のタイプI及びタイプIIエラーを実現するために、特性及び信号及び閾値をどのように選択すべきかが明らかになろう。当業者には、本開示を読めば、プロセス1121を省略する、又はプロセス1121で1つ又は複数の特性及び/又は1つ又は複数の信号のテストを省略する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0123】
[0143]プロセス1122で、ある時点におけるある特性の2つの測定値の大きさが第1の閾値を超え、且つ、ある位置におけるその特性の予想値の大きさが第2の閾値を超える場合、位置特定サーバ214は、2つの測定値の順位付けが予想値の順位付けと異なれば、その位置を存在しない位置と指定する。このテストの基礎となる理論は、ある位置におけるある特性の測定値の順位付けと、その特性の予想値の順位付けとのずれが大きいことは、無線端末201がその位置にあったときに測定が行われなかったことを示唆するというものである。例示的実施形態によると、位置特定エンジン214は、各時点H〜Hについて、各特性の測定値の各対にプロセス1122を行う。当業者には、本開示を読めば、所望数のタイプIエラー及びタイプIIエラーを実現するために特性及び信号及び閾値をどのように選択すべきかが明らかになろう。当業者には、本開示を読めば、プロセス1122を省略する、又はプロセス1122で1つ又は複数の特性及び/又は1つ又は複数の信号のテストを省略する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0124】
[0144]プロセス1123で、位置特定サーバ214は、無線端末201が実際にその位置にあった場合に受信が予想される時に信号の特性の測定値が受信されなければ、その位置を存在しない位置と指定する。例示的実施形態によると、位置特定エンジン214は、各時点H〜Hについて各予想される信号の各特性に対してプロセス1123を行う。このテストは非常にタイプIエラーが生じやすく、慎重に使用するべきである。当業者には、本開示を読めば、プロセス1123を省略する、又はプロセス1123で1つ又は複数の特性及び/又は1つ又は複数の信号のテストを省略する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0125】
[0145]プロセス1124により、位置特定サーバ214は、無線端末201が実際にその位置にあれば受信が予想されない時に信号の特性の測定結果が受信された場合、その位置を存在しない位置に指定する。例示的実施形態によると、位置特定エンジン214は、各時点H〜Hについて各信号の各特性にプロセス1124を行う。一般に、このテストは、プロセス1123のテストよりもタイプIのエラーが生じにくい。当業者には、本開示を読めば、プロセス1124を省略する、又はプロセス1124で1つ又は複数の特性及び/又は1つ又は複数の信号のテストを省略する、本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0126】
[0146]プロセス1125により、位置特定サーバ214は、その時点に無線端末201にサービスを提供していることが分かっている基地局から、ある位置に無線通信サービスが提供されなければ、その位置を存在しない位置に指定する。このテストの基礎となる理論は、その時点に無線端末201に通信サービスを提供した基地局がその位置にサービスを提供していなければ、無線端末201がその時点にその位置にないことを示唆するというものである。一般に、このテストは、非常に正確であり、タイプI及びタイプIIのエラーは共に少ない。当業者には、本開示を読めば、プロセス1125を省略する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0127】
[0147]プロセス1126により、位置特定サーバ214は、ある位置が、無線端末201の隣接基地局であることが分かっている基地局の隣接サービスエリア内になければ、その位置を存在しない位置と指定する。このテストの基礎となる理論は、ある位置が、その時点に無線端末201の隣接基地局である基地局の隣接サービスエリア内になければ、無線端末201がその時点にその位置にないことを示唆するというものである。一般に、このテストは非常に正確で、タイプI及びタイプIIのエラーは共に少ない。当業者には、本開示を読めば、プロセス1126を省略する本発明の代替実施形態を作成し、使用する方法が明らかになろう。
【0128】
[0148]プロセス1121〜1126の1つ又は複数で時点Hに存在しない位置と指定された位置は、プロセス1105で時点Hにおいて存在しない位置と指定される。
【0129】
[0149]プロセス1106により、位置特定サーバ214は、各時点H〜Hにおけるその無線端末201についてのY個の確率分布各々を生成する。これを達成するために、位置特定サーバ214は、下記及び図11dで説明するプロセスを行う。
【0130】
[0150]図11dは、プロセス1106、即ち各時点H〜Hにおけるその無線端末201のY個の確率分布を生成する際に行われる主要プロセスのフローチャートである。
【0131】
[0151]プロセス1131により、位置特定サーバ214は、当該位置がプロセス1104又は1105で時点Hに存在しない位置と指定されている場合は、時点Hに無線端末201がその位置にある確率をゼロ(0)に設定する。
【0132】
[0152]プロセス1132により、位置特定サーバ214は、すべての時点と、プロセス1104又は1105で存在しない位置と指定されなかったすべての位置とについて、ある特性の測定値と、その特性の予想値とのユークリッドノルムを生成する。これを実現するために、位置特性データベース313中の特性について測定値(必要であればプロセス1102で補正された測定値、及び/又は場合によっては測定値の差)と予想値の間でユークリッドノルムが生成される。これを実現するために、ユークリッドノルムは、式4に記載するように生成される。
【数3】


ここで、V(b,H)は、時点Hにおける位置bについてのユークリッドノルムであり、各(適宜、補正された、差分の)特性測定値M(b,H,N,W,Q)からその特性の予想値E(b,H,N,W,Q)を引いた差の二乗の和の平方根に基づく。ω(Q)は、1つの特性のずれ対その他の特性のずれに与えられる相対的な重みを示す重み付け係数である。
【0133】
[0153]プロセス1133により、プロセス1132で生成されたユークリッドノルムに基づいて、各位置における無線端末201の位置の非正規確率が式5に示すように生成される。
【数4】


ここで、UP(b,H)は、時点Hに無線端末201が位置bにある非正規確率を表し、δは、
【数5】


に等しく、δは、位置特性データベース中の誤差の不確定性の二乗であり、δは、較正後の測定値の不確定性の二乗である。当業者には、本開示を読めばδを生成する方法が明らかになろう。
【0134】
[0154]プロセス1134で、プロセス1133で生成された確率が、式7に記載するように正規化される。
【数6】


ここで、NP(b,H)は、無線端末201が位置bにある正規化確率を表す。
【0135】
[0155]プロセス1134の一部として、位置特定サーバ214は、時点Hにおける正規化された確率分布の最尤関数に基づいて、時点Hにおける無線端末201の仮推定を生成する。
【0136】
[0156]Assisted GPSを利用した無線端末201の位置の確率分布の生成−図12は、プロセス1002、即ちGPSで得られる情報(即ちGPS衛星群221からの情報)に基づいて無線端末201の位置のZ個の確率分布を生成する際に行われる主要プロセスのフローチャートである。
【0137】
[0157]プロセス1124及び1201により、位置特定サーバ214は、プロセス1106で生成された時点Hの無線端末201の位置の仮推定を送信し、支援サーバ212はその仮推定を受信する。
【0138】
[0158]プロセス1202により、支援サーバ212は、時点Hにおける無線端末201の位置の仮推定に基づいて無線端末201についての支援データを生成する。例示的実施形態によると、支援サーバ212は、時点Hにおける無線端末201の位置の推定に基づいて、「フルカスタム」の支援データを生成する。この支援データが「フルカスタム」であるのは、時点Hの無線端末201の推定位置に特化して作成されるためである。当業者には、時点Hにおける無線端末201の推定位置に基づいて無線端末201のフルカスタムの支援データを生成する方法が明らかであろう。プロセス1202の一部として、支援サーバ212は、よく知られた方式で無線交換局212を介して支援データを無線端末201に送信する。
【0139】
[0159]プロセス1202のいくつかの代替実施形態によると、支援サーバ212は、地理的領域220内の複数の種々の位置について予め支援データを計算し、時点Hにおける無線端末201の推定位置に基づいて、無線端末201のための事前に計算された支援データを選択する。無線端末201に選択される支援データは、時点Hにおける無線端末201の推定位置に限定的に合わせて作成されたものではなく、また地理的領域220の全域や無線端末201にサービス提供する基地局のセル又はセクタに汎用的でもないので、「セミカスタム」の支援データとみなされる。一般に、セミカスタムの支援データは、フルカスタムの支援データほど正確ではないが、セルIDのみに基づいて選択される、地理的領域220内の1つの位置に基づく汎用的な支援データよりは概して正確である。当業者には、本開示を読めば、無線端末201のためのフルカスタム及びセミカスタムの支援データを生成する方法が明らかになろう。
【0140】
[0160]プロセス1203により、無線端末201は、(a)よく知られた方式で支援サーバ212から支援データを受信し、(b)その支援データを使用して、よく知られた方式で1つ又は複数のGPS衛星信号の入手と処理を容易にし、(c)時点G〜Gにおける読み取りのために、Z個のGPS導出情報の非空集合を位置特定サーバ214に送信する。Zは正の整数である。本発明の例示的実施形態によると、GPS導出情報の各集合は、以下を含む。
i.GPSで導出された無線端末201の位置の推定(例えば緯度、経度、高度の座標等)、又は
ii.1つ又は複数のGPS衛星からの測距データ(例えばPRNコードフェーズ等)、又は
iii.1つ又は複数のGPS衛星からの部分的に処理された測距信号(例えば測距データがまだ抽出されていない信号等)、又は
iv.i、ii,iiiの任意の組み合わせ。
【0141】
[0161]プロセス1204により、位置特定サーバ214は、時点G〜Gにおける読み取りのための位置特定サーバ214へのZ個のGPS導出情報の非空集合を受け取り、各時点G〜Gに無線端末201が各位置にある可能性を示す確率分布を生成する。当業者には、プロセス1204をどのように行うかが明らかであろう。
【0142】
[0162]図13は、プロセス1003、即ち、Y個の非GPSベースの確率分布と、Z個のGPSベースの確率分布とを組み合わせて、各時点J〜Jにおける無線端末201の位置の、F個の精緻化した多次元確率分布を得る際に行われる主要プロセスのフローチャートである。ここで、各Jは、次の1つに対応する。
i.特定の時点H(1≦y≦Y)、又は
ii.特定の時点G(1≦z≦Z)、又は
iii.特定の時点Hと特定の時点G両方の同時発生(1≦y≦Y且つ1≦z≦Z)。
即ち、各「合成」時点Jは、非GPSベースの確率分布に関連付けられた時点、又はGPSベースの確率分布に関連付けられた時点、又は非GPSベースの確率分布とGPSベースの確率分布の両方に関連付けられた時点のいずれかに対応する。
【0143】
[0163]プロセス1003により、Y個の非GPSベースの確率分布とZ個のGPSベースの確率分布が、各自の相対的な時間的出現を考慮してインテリジェントに組み合わせられて、時点J〜Jにおける無線端末201の位置についての精緻化した多次元確率分布を導出する。
【0144】
[0164]時点Jにおける無線端末201の位置の精緻化した確率分布を生成するために、時点Jより前に出現する確率分布を前方に時点Jまで時間外挿し、時点Jより後に出現する確率分布を後方に時点Jまで時間外挿し、それらの確率分布すべてを、時点Jにおける無線端末201の位置の時間外挿していない確率分布と組み合わせる。このようにして、他の時点における経験データによって各時点Jについての精緻化した確率分布すべての精度を高める。
【0145】
[0165]図14は、非GPSベースの時点H〜Hと、GPSベースの時点G〜Gとに基づいて各時点J〜Jを求める第1の例を示し、Y=4、Z=6である。図14から分かるように、合成時点の数Fは多くともY+Zであり、少なくともYとZのうち最大値である。前者は、一致するGPS/非GPSの確率分布がないときに生じ、後者は、可能な限り多くの一致するGPS/非GPSの確率分布があるときに生じる。
【0146】
[0166]図15は、非GPSベースの時点とGPSベースの時点に基づいて、各時点1〜Jを求める第2の例を示す。この第2の例は、非GPSベースの時点が時間的に等間隔であり、且つGPSベースの時点が時間的に等間隔であっても、合成時点は必ずしも時間的に等間隔にはならないことを実証する。
【0147】
[0167]本発明により、時間ステップΔtは、任意の2つの時点の間の最小の時間間隔と定義する。時間ステップは、任意の2つの時点の間の時間差は、複数の時間ステップの整数倍になる点でアトミックである。(2つの連続する時点は、非GPSベースの時点であっても、GPSベースの時点であっても、合成時点であっても、2時間ステップ以上離れている可能性があることに留意されたい。)したがって、本発明の時間ステップは、クロック駆動の離散事象シミュレーションで用いられる時間ステップに似る。
【0148】
[0168]当業者には理解されるように、時間ステップΔtに適切な値の選択は、一般には特定の用途に応じて決まり、(1)時間的な正確さと、(2)利用できるメモリ及び処理力とのトレードオフを伴う。当業者には、本開示を読めばさらに理解されるように、選択される時間ステップは、位置の定義、移動確率及び滞在確率、及び、したがって結果的にはそれらから導出されるグラフ(例えば隣接グラフ等)に影響する可能性がある。
【0149】
[0169]プロセス1301により、位置特定サーバ214は、上記のように時点J〜Jを求める。
【0150】
[0170]プロセス1302により、位置特定サーバ214は、以下の要領で、時点J〜Jについて、未精緻化確率分布V〜Vを構築する。
i.Jが特定のHのみに対応している場合には、Vは、時点Hにおける非GPSの確率分布と等しい。
ii.Jが特定のGのみに対応している場合には、Vは、時点GにおけるGPSベースの確率分布と等しい。
iii.その他の場合(Cが特定のH及び特定のGの両方に対応する場合)、Vは、時点Jにおける非GPSの確率分布とGPSの確率分布との正規化積に等しい確率分布に等しい。
【0151】
[0171]プロセス1303により、位置特定サーバ214は、各時点Jにつき、すべてのj≠i、1≦j≦Fについて、時間外挿された確率分布Di,jを求め、それらの確率分布は、(i)時点Jにおける未精緻化確率分布V、(ii)P(b,T,N,W)、及び(iii)P(b,T,N,W,c)、に基づく。したがって、外挿された確率分布Di,jは、時点Jにおける経験データに基づくが、Jを含む他の時点における経験データには基づかない、時点Jの予測確率分布になる。
i.全無線端末の移動についての過去のデータ
ii.無線端末Wの移動についての過去のデータ
iii.カレンダー時刻Tにおける無線端末Wの位置、速度、及び加速度
iv.位置bにある無線端末の移動に影響を与える可能性のあるトラフィック信号の状態。
【0152】
[0172]時間外挿された確率分布は前進させることができる(即ち、過去の確率分布に基づいて将来へ投射することができる)。例えば、時点Jが時点Jの1時間ステップ後である場合には、外挿された確率分布D3,2は、P(b,T,N,W)、及びP(b,T,N,W,c)を、未精緻化確率分布Vに1回適用することによって導出される。即ち、任意の位置bについて、
【数7】


であり、in(b)は、隣接グラフ中で他の位置から位置bに向かう弧の集合である。同様に、時間外挿された確率分布は、複数の位置{b,b,...,bη}について式(9)のシステムを構築し、行列代数を介して{D2,3[b], D2,3[b],...,D2,3[bη]}について解くことにより、次の式に基づいて後退させる(即ち将来の未精緻化確率分布に基づいて過去に投射する)ことができる。
【数8】

【0153】
[0173]当業者には本開示を読めばよく理解されるように、連続する時点の間が2時間ステップ以上離れている場合は、式8をよく知られた方式で反復的に適用することができる。(時間ステップはアトミックなので、反復回数は常に整数である。)当業者には本開示を読めばさらに理解されるように、連続しない時間時点についての外挿確率分布(例えばD2,4、D5,1等)は、連続する時間時点についての外挿確率分布から、動的プログラミングを介して、ボトムアップ方式で効率的に計算することができる。
【0154】
[0174]プロセス1304により、位置特定サーバ214は、
i.対応する未精緻化確率分布Vと、
ii.すべての利用可能な時間外挿された確率分布Di,j(j≠i)と
の加重平均として、各時点J(1≦i≦F)に対応する各精緻化された確率分布Lを計算する。
【数9】


ここでαは定数である(0<α<1)。この定数αは、時間外挿の度合いが低い確率分布を、時間外挿の度合いが高い確率分布よりも重く重み付けする「エージングファクタ」の役割を果たす。その理由は、時間外挿の度合いが高い確率分布は、時間外挿の度合いが低い確率分布に比べて正確でない可能性があるためである。例えば、i=4、F=5の場合、拡張された形の式10は、
【数10】


をもたらす。
【0155】
[0175]Di,j=Vと定義すると、式10は、コンピュータ処理に特に利便な、より簡潔な形で表すことができる。
【数11】

【0156】
[0176]プロセス1305により、位置特定サーバ214は、最尤関数Lに基づいて、1つ又は複数の時点における無線端末201の位置の推定を生成する。(当業者には本開示を読めば理解されるように、本発明の他の実施形態では、推定は、別の関数又は方法を使用して確率分布Lから生成してもよい。)
【0157】
[0177]プロセス1306により、位置特定サーバ214は、プロセス1305で生成された無線端末201の位置の推定(1つ又は複数)をよく知られた方式で位置クライアント213に提供する。
【0158】
[0178]上記の実施形態は本発明を説明するものにすぎず、本発明の範囲から逸脱することなく当業者によって上記の実施形態の多数の変形形態を考案できることを理解されたい。したがって、そのような変形形態は、以下の特許請求の範囲とその均等物の範囲に含まれるものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)無線端末によって処理される第1の信号の第1の特徴の測定値を受信するステップと、
(b)前記無線端末が屋内にあるか否かを推定するステップと、
(c)前記無線端末が屋内にあると推定される場合、前記無線端末の複数の可能な位置のうち屋外である各位置を存在しない位置と指定し、
前記無線端末が屋外にあると推定される場合、前記無線端末の前記複数の可能な位置のうち屋内である各位置を存在しない位置と指定するステップと、
(d)前記複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を、前記第1の信号の前記第1の特徴の予測値と比較することに基づいて、前記無線端末の位置を推定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記無線端末が屋内にあるか否かの推定が、少なくとも部分的に、前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(e)前記無線端末によって処理される第2の信号の前記第1の特徴の測定値を受信するステップと、
(f)前記複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、前記第2の信号の前記第1の特徴の前記測定値を、前記第2の信号の前記第1の特徴の予測値と比較することに基づいて、前記無線端末の位置を推定するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記無線端末が屋内にあるか否かの推定が、少なくとも部分的に、前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値と、前記第2の信号の前記第1の特徴の前記測定値とに基づく、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(e)前記第1の信号の第2の特徴の測定値を受信するステップと、
(f)前記複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、前記第1の信号の前記第2の特徴の前記測定値を、前記第1の信号の前記第2の特徴の予測値と比較することに基づいて、前記無線端末の位置を推定するステップと
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記無線端末が屋内にあるか否かの推定が、少なくとも部分的に、前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値と、前記第1の信号の前記第2の特徴の前記測定値とに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を受信する前記ステップの前に、前記無線端末の前記複数の可能な位置の1つが屋内であるか否かを判定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を受信する前記ステップの前に、前記無線端末の前記複数の可能な位置を、屋内の部分集合と屋外の部分集合とに区分するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を受信する前記ステップの前に、前記無線端末の前記複数の可能な位置を、屋内の部分集合と、屋外の部分集合と、第3の非空部分集合とに区分するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第3の非空部分集合の各可能な位置が、不確定の屋内状態及び考慮外の屋内状態の少なくとも1つに対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
(a)無線端末によって処理される第1の信号の第1の特徴の測定値を受信するステップと、
(b)前記無線端末が屋内にあるか否かの指示を受信するステップと、
(c)前記指示が、前記無線端末が屋内にある旨である場合、前記無線端末の複数の可能な位置のうち屋外である各位置を存在しない位置と指定し、
前記指示が、前記無線端末が屋外にある旨である場合、前記無線端末の前記複数の可能な位置のうち屋内である各位置を存在しない位置と指定するステップと、
(d)前記複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を、前記第1の信号の前記第1の特徴の予測値と比較することに基づいて、前記無線端末の位置を推定するステップと
を含む方法。
【請求項12】
(e)前記無線端末によって処理される第2の信号の前記第1の特徴の測定値を受信するステップと、
(f)前記複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、前記第2の信号の前記第1の特徴の前記測定値を、前記第2の信号の前記第1の特徴の予測値と比較することに基づいて、前記無線端末の位置を推定するステップと
をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(e)前記第1の信号の第2の特徴の測定値を受信するステップと、
(f)前記複数の可能な位置のうち存在しない位置と指定されていない少なくとも1つの位置について、前記第1の信号の前記第2の特徴の前記測定値を、前記第1の信号の前記第2の特徴の予測値と比較することに基づいて、前記無線端末の位置を推定するステップと
をさらに含む請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を受信する前記ステップの前に、前記無線端末の前記複数の可能な位置の1つが屋内であるか否かを判定するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を受信する前記ステップの前に、前記無線端末の前記複数の可能な位置を、屋内の部分集合と屋外の部分集合とに区分するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の信号の前記第1の特徴の前記測定値を受信する前記ステップの前に、前記無線端末の前記複数の可能な位置を、屋内の部分集合と、屋外の部分集合と、第3の非空部分集合とに区分するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の非空部分集合の各可能な位置が、不確定の屋内状態及び考慮外の屋内状態の少なくとも1つに対応する、請求項16に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【図6g】
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【図6h】
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【図6i】
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【図6j】
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【図6k】
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【図6L】
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【図6m】
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【図6n】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−158460(P2011−158460A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−183792(P2010−183792)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
2.Bluetooth
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【出願人】(506016646)ポラリス ワイアレス,インク. (16)
【Fターム(参考)】