説明

展示商品の盗難監視システム

【課題】低コストで簡単な構成でありながら盗難の発見と場所の特定が容易で素早い対応が可能な防犯システムを提供する。
【解決手段】リーダ1とICタグ2で構成し、リーダ1を内蔵する監視ステーション3をレジカウンタなど店員のいる場所に設置し、ICタグ2を内蔵する監視ボックス4を展示商品5に貼り付けてリーダ1とICタグ2が常時無線による交信を行い、リーダ1を介してICタグ2から得られる監視情報を監視ステーション3に集約して店内の各所に分散している展示商品5を集中監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店内の各所に分散している展示販売商品を集中監視して万引きなどの盗難を防止する展示商品の盗難監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの展示販売商品は店員がいなくても客が自由に手に取って見れるので盗難が多発し、販売店に多大な損害を与えている。
そのため多くの販売店で展示商品の盗難防止装置を導入しているが、そのうちの1つにケーブル式の盗難防止装置がある(特許文献1)。
この装置は、基端を固定したケーブルの先端にタグを接続し、タグ本体を両面シートで商品に貼り付けてケーブルの先に商品を繋ぎ止める。タグは電池で作動し、タグと商品の間にスイッチを挿入する。以上の構成で商品からタグ本体を剥がすと、スイッチがONとなり、ブザーが警報を発する。また、タグ本体を商品に固定したままケーブルを切断すると、ケーブルスイッチがONとなり、同様にブザーが警報を発する。
【0003】
このケーブル式の盗難防止装置は、電池が切れると機能しないという問題の他に、警報を発する場所と盗難場所が同じなので、店員が盗難場所付近にいないと盗難の発見と場所の特定が困難で、素早い対応ができないという問題があった。
また、店内の各所に展示商品が分散している場合はなおさら盗難の発見と場所の特定が困難であった。
【0004】
この問題を解決するために、異常検知部と無線発信部を有するタグ本体と、威嚇鳴動して展示品特定情報を表示する中央監視装置で構成する盗難防止システムが提案されている(特許文献2)。
このシステムは、薄膜導電シートと盗難防止ワイヤで通電路を形成し、タグ本体が薄膜導電シートの破断や盗難防止ワイヤの切断による通電路の断によって異常を検知し、展示品の設置場所や展示品名を認識可能な固有識別データを付して無線送信する。
これを受信した中央監視装置は、外部に鳴動するとともに、固有識別データに対応する展示品特定情報を電源異常データとともに表示する。
このシステムは、以上のようにタグ本体に無線通信手段と中央監視装置に展示品特定情報の表示手段を備えるので、システムが大掛かりとなり、導入コストも増大する。
【特許文献1】特開2000−30156号公報
【特許文献2】特開2007−206838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする問題点は以上のような点であり、本発明は、低コストで簡単な構成でありながら盗難の発見と場所の特定が容易で素早い対応が可能な防犯システムを提供することを目的になされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため本発明は、リーダを内蔵する親局の監視ステーションと、センサを接続したICタグを内蔵する子局の監視ボックスと、この監視ボックスに接続する電源コードと、この監視ボックスを着脱自在に支持するホルダとで構成し、この監視ボックスを展示商品に取り付けてリーダとICタグが常時無線交信し、前記リーダは、指定したICタグからの応答信号を受信する受信手段を備え、前記ICタグは、センサ出力を含む応答信号をリーダに送信する送信手段を備え、前記監視ステーションは、前記リーダが応答信号に異常を検知したときはアラームを報知する報知手段と、異常を検知したICタグを識別するタグ識別情報を表示する表示手段とを備えることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、監視ステーションにアラームを報知する報知手段とタグ識別情報を表示する表示手段を備えるので、この監視ステーションをレジカウンタなど店員のいる場所に設置することにより、盗難場所付近に店員がいなくてもアラームによる盗難の発見とタグ識別情報による場所の特定が容易になり、素早い対応が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1に、本発明を実施した展示商品の盗難監視システムの構成図を示す。
展示商品の盗難監視システムは、リーダ1とICタグ2で構成し、リーダ1を内蔵する監視ステーション3をレジカウンタなど店員のいる場所に設置し、ICタグ2を内蔵する監視ボックス4を展示商品5に貼り付けてリーダ1とICタグ2が常時無線による交信を行い、リーダ1を介してICタグ2から得られる監視情報を監視ステーション3に集約して店内の各所に分散している展示商品5を集中監視する。
リーダ1は、予めICタグ2に付番したタグ番号を指定してポーリングを行い、指定したタグ番号のICタグ2だけが応答を許可される。これによりリーダ1とICタグ2の間でアンチコリジョン(衝突防止)制御が行われる。
ポーリングは間隔を空けずに常時繰り返し行い、展示商品5の持ち去りを瞬時に検出できるようにする。
【0010】
タグ番号は、ICタグ2を個別に識別するためのもので、ユーザ側で管理し易いようにメーカ側で付与したIDの代わりに付番し、事前にICタグ2をリーダ/ライタにかざして書き込んでおく。これにより、タグ番号からそれに対応するICタグ2を内蔵する監視ボックス4を取り付けた展示商品5を特定でき、展示商品5の商品名や設置場所をタグ番号で認識できるようになる。
【0011】
ICタグ2は、図2に示すように、サーキュレータ21を介してアンテナ20に接続する復調回路22、変調回路23、クロック回路24からなる通信部と、CPU25、メモリ26からなる制御部により構成され、センサポート27、A/Dコンバータ28を介して外部センサS1、S2に接続する。
以上のような構成で、リーダ1がICタグ2に要求信号を変調して電波を発射すると、ICタグ2のアンテナ20に誘起電圧が発生する。この誘起電圧の周波数を用いてクロック回路24がIC同期用のクロックを生成する。これよりIC回路にクロックが供給され、サーキュレータ21の順方向にある復調回路22がクロックに同期させながら要求信号を復調し、それをCPU25が解析して要求信号に応じた応答信号を生成する。
このとき外部センサS1、S2から受信した出力電圧をA/D変換し、それを応答信号に付加する。応答信号は変調回路23が変調してサーキュレータ21の順方向にあるアンテナ20を経由してリーダ1に送信する。
【0012】
監視ステーション3は、図3に示すように、ダイポールアンテナ30を植立し、前面にLED電源ランプ31、LED商品識別ランプ32、ブザー停止ボタン33、7セグメント数字表示器34、ハンドリング回数表示ボタン35をそれぞれ配置する。
LED商品識別ランプ32は、タグ識別情報の表示媒体としてICタグ2のタグ番号に対応してLEDランプを配列したもので、ポーリングで指定したタグ番号のICタグ2からの応答に異常を検知したときはブザーを鳴動して該当タグ番号に対応するランプを点灯する。これにより異常を検知したタグ番号を一目で認識して商品名と設置場所を特定し、直ちに対応できるようになる。タグ番号は、LEDランプの代わりに7セグメント数字表示器などで数字表示してもよい。
7セグメント数字表示器34は、ハンドリング回数表示ボタン35を押したときに客が展示商品5を手に取った回数を表示する。これにより展示商品5毎の注目度が分かり、販売戦略を立てる上での参考になる。このようにハンドリング回数の表示手段を備えることで、本システムを防犯以外にマーケティング情報の収集手段としても活用できる。
ハンドリング回数表示ボタン35は、1回押す毎に7セグメント数字表示器34の表示内容が切り替わり、タグ番号の順に該当ICタグ2を取り付けた展示商品5のハンドリング回数が表示される。また、現在ハンドリング回数を表示している展示商品5のタグ番号を知らせるため、対応するLED商品識別ランプ32が点灯する。
【0013】
監視ボックス4は、図4に示すように、一方の面を展示商品5の裏側に両面シートなどで固着し、他方の面は基端を設置場所に固定してホルダ7の通孔aから引き出した電源コード6の先端に繋ぎ止める。これにより電源コード6を切断するか、監視ボックス4を引き剥がすかしない限り、展示商品5を持ち去りできないようにする。
電源コード6は、監視ボックス4内で分岐して一端をICタグ2に接続して動作電源とし、他端を監視ボックス4外に引き出してコネクタ8を介して携帯電話などの展示商品5に給電する。
また、電源コード6を伸縮自在なカールコードにして展示商品5のハンドリング操作を容易にする。すなわち展示商品5を手に取るときは伸長して手元に引き寄せ易くし、元のホルダ7に戻すときは短縮して収まりを良くする。
【0014】
本発明に用いるICタグ2は、パッシブ型と比べて数m〜数十mの長距離通信が可能なアクティブ型とし、電池を持たずに電源コード6からの給電を動作電源とする。
そのため電源コード6を切断すると給電が停止し、リーダ1のポーリングに対する応答ができなくなるので、監視ステーション3側で電源コード6の切断を検知できる。
パッシブ型のICタグ2を用いる場合は、アンテナを各所に設置してリーダ1とICタグ2の間で数cm〜数mの短距離通信ができるようにする。また、ICタグ2に別のセンサを接続して電源コード6の切断を検知する必要がある。
【0015】
また、監視ボックス4の展示商品5側の面に、例えば光を検出するフォトセンサなどの外部センサS1を装着してICタグ2に接続する。
これにより監視ボックス4を引き剥がすときに入る外からの光を検出し、ICタグ2の応答信号にその状態を付加するので、監視ステーション3側で監視ボックス4の引き剥がしを検知できる。
【0016】
ホルダ7は、監視ボックス4と一体の展示商品5を着脱自在に支持し、監視ボックス4の支持面にマグネット71を取り付ける。一方の監視ボックス4側にはスチール板41を取り付けて両者を磁気接着し、監視ボックス4と一体の展示商品5のホルダ7への取り付け・取り外しを容易にする。
また、監視ボックス4のホルダ7側の面に、例えば磁気を検出するホールセンサなどの外部センサS2を装着してICタグ2に接続する。
これにより監視ボックス4をホルダ7のマグネットに接近・離間させたときに変化するホール電圧を検出し、ICタグ2の応答信号にその状態を付加するので、監視ステーション3側で監視ボックス4と一体の展示商品5の着脱を検知できる。
【0017】
監視ステーション3は、着脱を検知すると展示商品5をホルダ7から取り外したときを1回としてカウントし、それを展示商品5のハンドリング回数としてメモリに保存する。
ハンドリング回数は、ハンドリング回数表示ボタン35を押すと7セグメント数字表示器34に表示される他、CSV形式データでパソコンに取り込むことができる。取り込みが正常に終了するとカウンタはリセットされる。
【0018】
図5のフローチャートを参照して監視ステーション3の処理を説明する。
まず、ブザー停止ボタン33がONかどうか判定し(S01)、ONであればブザーを停止し(S02)、LED商品識別ランプ32を消灯する(S03)。
次に、タグ番号を指定してポーリングを行い(S04)、応答があるかどうか判定し(S05)、応答がなければブザーを鳴動し(S06)、該当LED商品識別ランプ32を点灯し(S07)、S01に戻る。
次に、監視ボックス4の引き剥がしを検知する外部センサS1がONかどうか判定し(S08)、ONであればS06に移行する。
次に、展示商品5のホルダ7への着脱を検知する外部センサS2がONかどうか判定し(S09)、ONであればメモリに記憶した前の状態がONかどうか判定し(S10)、ONでなければハンドリング回数に1を加え(S11)、前の状態をONにする(S12)。
外部センサS2がONでなければメモリに記憶した前の状態がONかどうか判定し(S13)、ONであれば前の状態をOFFにする(S14)。
次に、ハンドリング回数表示ボタン35がONかどうか判定し(S15)、ONでなければS01に戻り、ONであれば7セグメント数字表示器34にハンドリング回数を表示し(S16)、S15に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実施した展示商品の盗難監視システムの構成図である。
【図2】ICタグのブロック図である。
【図3】監視ステーションの正面図である。
【図4】監視ボックス、展示商品、ホルダの斜視図である。
【図5】監視ステーションの処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
1 リーダ
2 ICタグ
20 アンテナ
21 サーキュレータ
22 復調回路
23 変調回路
24 クロック回路
25 CPU
26 メモリ
27 センサポート
28 A/Dコンバータ
3 監視ステーション
30 ダイポールアンテナ
31 LED電源ランプ
32 LED商品識別ランプ
33 ブザー停止ボタン
34 7セグメント数字表示器
35 ハンドリング回数表示ボタン
4 監視ボックス
41 スチール板
5 展示商品
6 電源コード
7 ホルダ
71 マグネット
8 コネクタ
a 通孔
S 外部センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダを内蔵する親局の監視ステーションと、
外部センサを接続したICタグを内蔵する子局の監視ボックスと、
この監視ボックスに接続する電源コードと、
この監視ボックスを着脱自在に支持するホルダと、
で構成し、
この監視ボックスを展示商品に取り付けてリーダとICタグが常時無線交信し、
前記リーダは、
指定したICタグからの応答信号を受信する受信手段を備え、
前記ICタグは、
センサ出力を含む応答信号をリーダに送信する送信手段を備え、
前記監視ステーションは、
前記リーダが応答信号に異常を検知したときはアラームを報知する報知手段と、
異常を検知したICタグを識別するタグ識別情報を表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする展示商品の盗難監視システム。
【請求項2】
前記ICタグが電池を持たずに電源コードからの給電を動作電源とするアクティブタグであることを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。
【請求項3】
前記センサが監視ボックスの展示商品からの引き剥がしを検知するものであることを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。
【請求項4】
前記センサが監視ボックスと一体の展示商品のホルダへの着脱を検知するものであることを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。
【請求項5】
前記監視ステーションにセンサが検知した展示商品のホルダへの着脱のいずれか一方をカウントしたハンドリング回数を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。
【請求項6】
前記監視ボックスは一方の面を展示商品に固着し、
他方の面は基端を設置場所に固定してホルダから引き出した電源コードの先端に繋ぎ止めることを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。
【請求項7】
前記電源コードは監視ボックス内で分岐して一端をICタグに接続して動作電源とし、他端を監視ボックス外に引き出して展示商品に接続することを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。
【請求項8】
前記ホルダと監視ボックスの少なくともいずれか一方にマグネットを取り付けて監視ボックスと一体の展示商品をホルダに磁気接着させることを特徴とする請求項1記載の展示商品の盗難監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−44593(P2010−44593A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208201(P2008−208201)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(391016093)エル・エス・アイ ジャパン株式会社 (21)
【出願人】(593062441)株式会社パーム (4)
【Fターム(参考)】