説明

工作機械、制御装置、プログラム及び工作機械による加工方法

【課題】暖気運転の時間をなくすか短縮することができる工作機械、制御装置、プログラム及び工作機械による加工方法を提供する。
【解決手段】工作機械1は、ワークWを把持する主軸71を回転可能に支持する主軸台72が載置され、X軸方向に移動する第2X軸スライド部91と、工具Trを保持する工具台100と、X軸方向には移動しないドグと、第2X軸スライド部91に対して不動である検出部と、制御部300と、を備える。制御部300は、検出部の検出に基づき検出時の第2X軸スライド部91のX軸座標を取得し、第1の検出時のX座標と第1の検出時後の第2の検出時のX座標との差をX軸方向における熱変位量として算出し、熱変位量に応じて補正量を取得し、工具の目標位置に補正量を加味した位置に第2X軸スライド部91を移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、制御装置、プログラム及び工作機械による加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、切削熱、機械運転に伴う各部位の発熱等により、ベッドや他の各部位の熱膨張、熱変形による熱変位が生じると、加工精度の低下に繋がる。そこで、熱変位の影響を少なくするため、熱変位が一定値に収束し平衡状態(サチレート状態)になるまで暖気運転を行うことが一般的であった。
【0003】
特許文献1では、基台および移動台のいずれか一方に、移動台の移動方向に沿う局部的な目盛り範囲のリニアスケールを設け、基台および移動台の他方に、リニアスケールを読み取るセンサを設けた工作機械の送り制御装置が開示されている。特許文献1では、このようなリニアスケールにより、熱膨張を計測して工具の切り込み量等の熱変位補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−148025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る技術においても、リニアスケール自体の温度特性が影響するため、暖気運転が必要であった。
【0006】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、暖気運転の時間をなくすか短縮することができる工作機械、制御装置、プログラム及び工作機械による加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る工作機械は、
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記ワークを加工する工具を保持する工具台と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出する検出手段と、
前記検出手段が検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段が第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する補正量取得手段と、
前記工具の位置を示す予め定められた目標位置に前記補正量取得手段が取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させる駆動制御手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0008】
また、上記工作機械において、
前記工作機械の動作時間に基づいて累積加工時間を算出する時間算出手段と、
前記時間算出手段が算出した累積加工時間が予め定められた所定期間に達したか否かを判別する判別手段と、をさらに備え、
前記判別手段によって前記累積加工時間が前記所定期間に達したと判別された場合、前記駆動制御手段は、前記補正量取得手段が前記所定期間に達する前に取得した補正量を前記目標位置に加味した位置に前記スライド部を移動させる、ようにしてもよい。
【0009】
また、上記工作機械において、
前記補正量取得手段は、1より小さい値の係数を前記熱変位量に掛けたものを補正量として取得する、ようにしてもよい。
【0010】
また、上記工作機械において、
前記工具台は、前記工具を複数保持し、
前記補正量取得手段は、複数の工具のうち少なくとも1つの工具の前記所定の軸上の位置を示す値と前記スライド部の前記所定の軸上の最大移動量との比であって1より小さい値の係数を算出し、算出した係数を前記熱変位量に掛けたものを補正量として取得する、ようにしてもよい。
【0011】
また、上記工作機械において、
前記第1の部分と前記第2の部分の一方は、接触センサであり、
前記検出手段は、前記接触センサと、前記第1の部分と前記第2の部分の他方とが接触したことを検出する、ようにしてもよい。
【0012】
また、上記工作機械において、
前記第1の部分と前記第2の部分の一方は、非接触センサであり、
前記検出手段は、前記非接触センサと、前記第1の部分と前記第2の部分の他方とが所定の距離だけ接近したことを検出する、ようにしてもよい。
【0013】
また、上記工作機械において、
前記所定の軸方向は、前記ワークの径方向であり、前記スライド部を前記所定の軸と直交する軸方向に移動させる移動機構をさらに備える、ようにしてもよい。
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る制御装置は、
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、を備える工作機械の動作を制御する制御装置であって、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出する検出手段と、
前記検出手段が検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段が第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する補正量取得手段と、
前記ワークを加工する工具の位置を示す予め定められた目標位置に前記補正量取得手段が取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させる駆動制御手段と、を備える、
ことを特徴とする。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、を備える工作機械の動作を制御するプログラムであって、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出する処理と、
検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得する処理と、
第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する処理と、
前記ワークを加工する工具の位置を示す予め定められた目標位置に取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させる処理と、
を実行させる。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の第4の観点に係る工作機械による加工方法は、
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、を備える工作機械による加工方法であって、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出するステップと、
検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得するステップと、
第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得するステップと、
前記ワークを加工する工具の位置を示す予め定められた目標位置に取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させるステップと、を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、暖気運転の時間をなくすか短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る工作機械を側面から見た様子の一例を示す模式図である。
【図2】(a)は、第1加工機構をZ方向から見た図である。(b)は、第2加工機構をZ方向から見た図である。
【図3】第2加工機構をY方向から見た図である。
【図4】(a)は、図2(b)におけるA部の拡大図であり検出機構を説明するための図である。(b)は、図1における検出機構付近の拡大図である。
【図5】制御部が実行する基準位置取得処理のフローチャートである。
【図6】制御部が実行する補正量取得処理のフローチャートである。
【図7】図3の要部拡大図であり、X軸における原点座標、各工具の座標等を説明するための図である。
【図8】(a)〜(c)は、変形例1に係る工作機械の検出機構付近の拡大図である。(a)は、検出機構をZ方向から見た図であり、(b)は、検出機構をX方向から見た図であり、(c)は、検出機構をY方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.第1実施形態
以下、本発明の一実施形態に係る工作機械について、図面を参照して説明する。図1に示す工作機械1は、2つの主軸で円柱状の被加工物(ワーク)Wの前面及び背面を加工する多機能旋盤として構成されている。
なお、以下では、鉛直方向を「Y軸方向」といい、ワークの中心線に沿った水平方向を「Z軸方向」といい、Y軸及びZ軸方向に垂直な水平方向を「X軸方向」という。また、図1〜図4、図7の図中には、X、Y、Z軸の各々の方向を示す矢印を示した。以下では、これら矢印が示す各々の方向において、矢印の向く方向を+側として説明する。
【0020】
工作機械1は、工作機械1全体の台であるベッドSと、第1加工機構10と、第2加工機構60と、制御部300と、を備える。
【0021】
第1加工機構10は、ワークWの前面(+Z軸方向に向く面)及び側面を加工する機構であり、ワーク保持部20と、第1Z軸スライド機構30と、工具移動機構40と、を備える。
【0022】
ワーク保持部20は、主軸21と、主軸21を回転可能に支持する主軸台22と、を備える。
主軸台22には、ワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。このワーク回転用モータは、主軸21に備えられたチャック21aが把持するワークWを回転させる。
【0023】
第1Z軸スライド機構30は、ワーク保持部20をZ軸方向に移動させるための機構であり、ベッドS上に取り付けられた軸受部31と、軸受部31に軸支されてZ軸方向に伸びるボールねじ32と、ボールねじ32を回転させる第1Z軸モータ33と、主軸台22が載置される第1Z軸スライド部34と、を備える。
第1Z軸スライド部34は、そのY軸方向下方に、ボールねじ32と嵌合するナット35を有する。ナット35は、ボールねじ32が回転するとZ軸方向に移動する。
第1Z軸スライド機構30は、第1Z軸モータ33でボールねじ32を回転させることで、ナット35ないしは第1Z軸スライド部34を移動させ、ワーク保持部20をZ軸方向に移動させる。したがって、第1加工機構10では、ワークWをチャック21aで保持して前記ワーク回転用モータによって回転させながら、ワークWをZ軸方向に移動させることができる。
【0024】
工具移動機構40は、ワークWを加工するための工具Tf(図2(a)参照)をX軸方向及びY軸方向に移動させるための機構であり、ベッドSに固定された固定台41と、固定台41に取付けられたX軸移動部44と、X軸移動部44に取付けられたY軸移動部50と、を備える。
【0025】
固定台41は、X軸方向に伸びるレール部Rx1と、Z軸方向に貫通する空洞部41Hに取付けられた中空のフランジ43aと、フランジ43aの内面に取付けられたガイドブッシュ43bと、を備える。ガイドブッシュ43bは、ワークWの保持や移動を補助するものであり、フランジ43aやガイドブッシュ43bは、加工するワークWに合わせて適宜変更することができる。
また、固定台41は、X軸移動部44を移動させるための第1X軸スライド機構(図示せず)を備える。この第1X軸スライド機構は、第1X軸モータ(図示せず)等を備え、例えば上述した第1Z軸スライド機構30と同様に構成される。
【0026】
X軸移動部44は、前記第1X軸スライド機構によってレール部Rx1上をX軸方向に移動する部分であり、第1X軸スライド部45と、ガイド溝部Gx1、軸受部46と、ボールねじ47、及びY軸モータ48と、を備える。
【0027】
第1X軸スライド部45は、略平板状の形態を有する。ボールねじ47は、図1に示すように、この第1X軸スライド部45の内部に収納されている。ガイド溝部Gx1は、X軸方向に延びるように、当該略平板状の一方の面に設けられている。ガイド溝部Gx1は、固定台41のレール部Rx1と係合する。当該略平板状の他方の面には、Y軸方向に延びるようにガイド溝部(図示せず)が設けられている。このガイド溝部は、Y軸移動部50が移動する際のガイドとして機能する。第1X軸スライド部45には、主軸21に把持されたワークWが貫通しうる中空部45Hが形成されている。軸受部46は、ボールねじ47を回転可能に軸支し、このように軸支されたボールねじ47は、Y軸方向に延びるように配置され、Y軸モータ48によって回転される。
【0028】
Y軸移動部50は、前記ガイド溝部(図示せず)に沿ってY軸方向に移動する部分であり、Y軸スライド部51と、Y軸スライド部51に設けられた工具保持部52及びナット53と、を備える。
なお、Y軸移動部50は、X軸移動部44に取付けられているため、前記第1X軸スライド機構によってX軸移動部44がX軸方向に移動するとY軸移動部50もX軸方向に移動する。
【0029】
Y軸スライド部51は、略平板状の形態を有する。当該略平板状の主面(Y軸と平行な面)には、主軸21に把持されたワークWが貫通しうる中空部51Hが形成されている。
工具保持部52は、Y軸スライド部51の主面上に取り付けられる。工具保持部52は、図2(a)に示すように、中空部51Hの左右の端に沿うようにして配設される。この工具保持部52は、複数のバイト、ドリル等から構成される工具Tfを固定的に保持する。工具Tfは、例えば、図2(a)に示すように、X軸方向且つ中空部51Hの中央部に向く9本のバイトと、−Z軸方向に向く4本のドリル(図2(a)で点線で示した)と、から構成されている。工具Tfを構成するバイトは、ワークWを切断する切断用バイトを含む。また、工具Tfを構成するドリルによって、ワークWの正面を加工することができる。
Y軸スライド部51の工具保持部52が設けられた面の裏面には、Y軸方向に沿って延びるレール部(図示せず)が取り付けられている。このレール部は、前記した第1X軸スライド部45に設けられた前記ガイド溝部(図示せず)と係合する。
第1加工機構10は、Y軸モータ48でボールねじ47を回転させ、これにより、ボールねじ47と嵌合するナット53を移動させることで、Y軸移動部50を、Y軸方向に移動させる。
【0030】
上記構成により、工具移動機構40のX軸移動部44はX軸方向に、Y軸移動部50はY軸方向に移動可能となっている。それに伴い、工具TfもX軸及びY軸方向に移動可能となっている。
【0031】
第2加工機構60は、ワークWの背面(−Z軸方向に向く面)及び側面を加工する機構であり、ワーク保持部70と、第2Z軸スライド機構80と、第2X軸スライド機構90と、工具台100と、検出機構200と、を備える。
【0032】
ワーク保持部70は、主軸71と、主軸71を回転可能に支持する主軸台72と、を備える。
主軸台72には、ワーク回転用モータ(図示せず)が内蔵されている。このワーク回転用モータは、主軸71に備えられたチャック71aが把持するワークWを回転させる。主軸第72は、第2X軸スライド機構90の後述する第2X軸スライド部91上に設置されている。
【0033】
第2Z軸スライド機構80は、ワーク保持部70をZ軸方向に移動させるための機構であり、ベッドS上に取り付けられた軸受部81と、軸受部81に軸支されてZ軸方向に伸びるボールねじ82と、ボールねじ82を回転させる第2Z軸モータ83と、第2X軸スライド機構90が載置される第2Z軸スライド部84と、図2(b)に示すようにベッドS上に固定された基台S2の上に取り付けられたレール部Rz2と、を備える。
第2Z軸スライド部84は、そのY軸方向下方に、ボールねじ82と嵌合するナット85及びZ軸方向に延びるガイド溝部Gz2(図2(b)参照)を有する。ナット85は、ボールねじ82が回転するとZ軸方向に移動する。ガイド溝部Gz2は、図示するように前記レール部Rz2と係合する。
第2Z軸スライド機構80は、第2Z軸モータ83でボールねじ82を回転させることで、ナット85ないしは第2Z軸スライド部84を移動させる。これにより、ワーク保持部70は、Z軸方向に延びたレール部Rz2上を移動することができる。
【0034】
第2X軸スライド機構90は、ワーク保持部70をX軸方向に移動させるための機構であり、図2(b)等に示すように、第2X軸スライド部91と、第2Z軸スライド部84上に設けられた軸受部92と、軸受部92に軸支されてX軸方向に伸びるボールねじ93と、ボールねじ93を回転させる第2X軸モータ94と、を備える。
第2X軸スライド部91上には、主軸台72が設置されている。第2X軸スライド部91は、そのY軸方向下方に、ボールねじ93と嵌合するナット95(図3参照)及びX軸方向に延びるガイド溝部Gx2(図1、図3参照)を有する。ナット95は、ボールねじ93が回転するとX軸方向に移動する。ガイド溝部Gx2は、図1に示すように前記レール部Rx2と係合する。ボールねじ93は、第2X軸モータ94によって回転可能に支持されており、第2X軸モータ94側(+X軸側)の端は固定端、その他端は自由端となっている。このため、第2X軸モータ94等の発熱により熱変位が生じると、ボールねじ93は、−X軸方向に伸びる。
第2X軸スライド機構90は、第2X軸モータ94でボールねじ93を回転させることで、ナット95ないしは第2X軸スライド部91を移動させる。これにより、ワーク保持部70は、X軸方向に延びたレール部Rx2上を移動することができる。なお、第2X軸スライド機構90は、第2Z軸スライド機構80上に配置されているため、第2Z軸スライド機構80によって第2Z軸スライド部84がZ軸方向に移動することで第2X軸スライド部91もZ軸方向に移動する。
【0035】
上記構成により、ワーク保持部70に保持されたワークWは、X軸及びZ軸方向に移動可能となっている。
【0036】
工具台100は、先端が+Z軸方向に向くように取り付けられたドリル、タップ、ターニングバイト、ボーリングバイト等の工具Trを保持する。本実施形態では、工具Trは、複数あり、例えば、図3に示すように、4つの工具TrがX軸方向に所定の間隔を空けて設けられることで、櫛歯状になっている。
工具台100は、図示しないが、ベッドS等に固定的に支持されることで、ベッドSに対して不動となるように設けられている。工具台100は、保持する工具Trの先端(例えば、軸中心)が、第2加工機構60のワーク保持部70が保持するワークWの軸中心に位置するような高さに配置されている。
【0037】
検出機構200は、図3及び図4(a)、(b)に示すように、検出部210及びドグ220から構成される。
【0038】
検出部210は、タッチスイッチ(接触センサの一例)から構成され、対象物(本実施形態ではドグ220)に接触すると接触したことを示すON信号を制御部300に供給する。検出部210は、第2X軸スライド部91の側面(X−Y平面と平行な面)に設置されている。具体的には、検出部210は、図3に示すように、第2X軸スライド部91の側面であって+Z軸方向に向く面に固着された平板状の取付板91A上に取り付けられている。検出部210は、例えば、図4(a)に示すように、ボルトB1により取付板91Aに固着される。
このように取り付けられた検出部210は、第2X軸スライド部91に対して不動である。したがって、検出部210は、第2X軸スライド部91の移動に伴ってX軸方向に移動する。
【0039】
ドグ220は、第2Z軸スライド部84の側面(X−Y平面と平行な面)に設置されている。具体的には、ドグ220は、図4(b)に示すように、第2Z軸スライド部84の側面であって+Z軸方向に向く面に固着された立方体状のスペーサ84A上に取り付けられている。ドグ220は、例えば、図4(a)、(b)に示すように、ボルトB2によりスペーサ84Aに固着される。
このように、ドグ220は、第2Z軸スライド部84に取り付けられているため、X軸方向には移動しない。
【0040】
ドグ220は、例えば、平板状の金属板であり、その主面がX方向に向くようにして配置され、検出部210とX軸方向で対向する位置に配設されている。検出部210とドグ220とは、検出部210が第2X軸スライド部91の移動により−X軸方向に移動していき、熱変位していない場合において第2X軸スライド部91が最も−X軸方向に移動したときに(つまり、ボールねじ93の最大長さのときに)検出部210の先端部211がドグ220の主面に丁度接触するように配置されている。検出部210の先端部211がドグ220に接触すると、検出部210は、ドグ220に接触したことを示すON信号を制御部300に供給する。
以上のように構成される本実施形態に係る検出機構200は、第2加工機構60におけるX軸方向の熱変位(主に、X軸方向に延びるボールねじ93に起因する熱変位)を測定するために設けられている。
【0041】
制御部300は、工作機械1の各部の動作を制御するものであり、図示しないCPU(Central Processing Unit)、CPUによる処理の手順を定義したプログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、ユーザによる適当な数値入力等を受けて実行されるプログラム及び必要な情報を一時的に記憶しておくRAM(Random Access Memory)、計時を行うタイマ装置等を備える。制御部300のROM内には、後述する「基準位置取得処理」及び「補正量取得処理」を実行するためのプログラムPG(図1参照)が予め記憶されており、CPUは、これらプログラムを読み出し、実行する。なお、制御部300は、CPUと他の専用回路とが協働して工作機械1の各部の動作を制御するものであってもよい。
【0042】
制御部300は、数値制御(NC(Numerical Control))によって、ワーク保持部20をZ軸方向に、工具保持部52をX軸及びY軸方向に移動させ、ワークWと工具Tfとの相対的な位置関係を適切に設定する。具体的には、第1加工機構10のワーク回転用モータ、第1Z軸モータ33、第1X軸モータ、Y軸モータ48を駆動制御することによって、上記関係を実現する。また、制御部300は、数値制御によって、ワーク保持部70をX軸及びZ軸方向に移動させ、ワークWと工具Trとの相対的な位置関係を適切に設定する。具体的には、第2加工機構60のワーク回転用モータ、第2Z軸モータ83、第2X軸モータ94を駆動制御することによって、上記関係を実現する。
【0043】
次に、上記構成の工作機械1によるワークWの加工について説明する。本実施形態に係る工作機械1においては、まず第1加工機構10においてワークWの一次加工を行い、次に、第2加工機構60において一次加工が施されたワークWをさらに加工する(二次加工を行う)。この加工は、制御部300の制御の下、行われる。
【0044】
(ワークの加工について)
(1)一次加工
制御部300は、Y軸モータ48を駆動し、所望の工具TfがワークWと同じ高さに位置するようにY軸移動部50を移動させる。次に、制御部300は、前記ワーク回転用モータと第1Z軸モータ33を駆動し、ワークWを回転させながらZ軸方向に移動させ、また、これと同時又は時間差で前記第1X軸モータを駆動し、前記第1X軸スライド機構によりX軸移動部44をワークWに向けて移動させる。
このようにして、バイト、ドリル等の工具TfをワークWの前面又は側面に当接させ、第1加工機構10は、ワークWを一次加工する。
【0045】
(2)二次加工
一次加工を終えると、制御部300は、第2Z軸モータ83及び第2X軸モータ94を駆動し、ワーク保持部70を移動させて、一次加工されたワークWを、チャック71aに把持させる。続いて、制御部300は、前記ワーク回転用モータと第1X軸モータ(図示せず)を駆動し、第1X軸スライド部45をワークWに向けて移動させ、工具Tfの切断用バイトにより、ワークWを所望の位置で切断する。なお、図1では、このようにワークWが切断された後の状態を示している。続いて、制御部300は、工具台100の複数の工具Trのうち、所定の工具Trを割り出し、主軸71を回転させながら、第2Z軸スライド機構80及び第2X軸スライド機構90により、把持したワークWの背面又は側面に選択した工具Trに当接させ、さらにワークWを加工する。
このようにして、第2加工機構60は、ワークWを二次加工する。
【0046】
以上のようにワークWを加工する本実施形態に係る工作機械1は、二次加工において上記所定の工具Trの位置を割り出す際、測定したX軸方向の熱変位から算出した「補正量」を加味した位置に割り出す。そして、補正量を加味した位置を目標として、主軸71で把持したワークWを移動させる。
【0047】
ここで、補正量を求める理由を説明する。
工作機械1を起動し、運転させると、機械の温度の上昇に起因して、工作機械1を構成する各部に熱変位が発生する。高度の加工精度が求められる場合、このような熱変位を加味して加工する必要がある。本実施形態では、第2加工機構60において、工具TrでワークWを二次加工しており、この二次加工では、ボーリングバイトでワークWに開口部を形成したり、ターニングバイトでワークWの外周を加工したりするため、内径や外径の加工精度を高くする必要がある。特に、第2X軸モータ94の発熱等により、ボールねじ93がX軸方向に伸びる(熱変位する)と、ワークWの径方向に熱変位による誤差が生じてしまうため、高い加工精度を維持できなくなってしまう。
そこで、本実施形態に係る工作機械1では、制御部300が、予め測定した第2X軸スライド部91の位置(基準位置)と1つのワークWを加工する直前に測定した第2X軸スライド部91の位置との差から熱変位量を求め、この熱変位量に基づいて補正量を算出する。そして、工具Trを選択し、主軸71が把持したワークWを選択した工具Trの位置に移動させる際、制御部300は、主軸71の位置を、算出した補正量を加味した位置に移動させる。
【0048】
なお、熱変位が平衡状態になるまでにおける、ボールねじの熱変位量ΔLは、理論的には、次の(数1)式より求められる。
【数1】

【0049】
ここからは、補正量を算出するための処理について説明する。制御部300は、以下に説明するように、まず、補正量を求めるための基準となる基準位置を取得する「基準位置取得処理」を実行し、次に、求めた基準位置に基づいて補正量を取得する「補正量取得処理」を実行する。工作機械1(本実施形態においては第2加工機構60)は、この補正量を加味した位置において工具TrでワークWを加工する。
【0050】
(基準位置取得処理)
図5のフローチャートを参照して、制御部300が実行する基準位置取得処理を説明する。この処理は、例えば、工作機械1の電源を投入したことを条件に開始される。
【0051】
基準位置取得処理を開始すると、制御部300は、まず、第2Z軸スライド部84及び第2X軸スライド部91を検出待機位置に移動させる(ステップS11)。
具体的には、制御部300は、i)まず、第2Z軸モータ83を駆動し、第2Z軸スライド部84を、工具Trに当たらないように、主軸71先端が工具台100の工具Tr先端よりも+Z方向に所定距離隔てた位置に位置するように移動させ、ii)次に、第2X軸モータ94を駆動し、第2X軸スライド部91を、検出部210の先端部211がドグ220に近接する検出待機位置まで移動させる。
【0052】
ここで、図7に示すように、第2X軸スライド部91が最も−X軸方向に移動した際の主軸71の軸中心の座標をX=0(原点)とする。また、第2X軸スライド部91が最も+X軸方向に移動した際に主軸71の軸中心と工具Trのうち最も+X方向側に位置する工具Tr4の軸中心とが一致するとし、工具Tr4の軸中心の座標をX=Xmとする。この場合、予め設定された第2X軸スライド部91のX軸方向の最大移動量はXmとなる。
なお、座標X=0、X=Xmは、工作機械1が熱変位していない場合における座標として予め設定されている。また、図7に示すように、工具Tr4よりも−X軸方向に位置する工具Tr3、Tr2、Tr1各々の軸中心の座標X3、X2、X1も同様に予め設定されている。
【0053】
この場合、検出待機位置は、例えば、Xm=+200である場合に、検出部210の先端の座標がX=+4.0となる位置である。つまり、ドグ220と検出部210先端の間の距離が、4.0mmになる位置である。この位置は、例えば、先端部211とドグ220とが移動の反動によって誤って当接しない程度に両者の間に間隔を空けた位置であり、第2加工機構60の機械寸法等を勘案して適宜定められる。
【0054】
続いて、制御部300は、第2X軸モータ94を駆動し、第2X軸スライド部91を−X方向に移動させることで、検出を開始する(ステップS12)。これにより、検出部210は、徐々にドグ220に近づき、検出部210の先端部211がドグ220に接触すると、検出部210は、検出信号(ON信号)を制御部300に供給する。制御部300は、この検出信号を受信することで、検出部210がドグ220に接触したことを検出し、また、検出信号を受信した時点でのX座標(例えば、主軸71の軸中心の位置)を取得する(ステップS13)。制御部300は、例えば、検出信号を受信した時点の第2X軸モータ94の回転数(回転数=回転角度/360)にボールねじ93のリード(ボールねじ93の1回転あたりにナット95がX軸方向に進む距離)を掛けることにより、検出信号を受信した時点のX座標を取得する。制御部300は、取得したX座標を基準位置として記憶する。この基準位置は、後述の補正量取得処理において、補正量を算出する際に用いられる。
ステップS13の処理を実行すると基準位置取得処理は終了する。
【0055】
次に、取得した基準位置に基づいて補正量を取得する補正量取得処理について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0056】
(補正量取得処理)
制御部300は、例えば、ワークの加工開始の指示を示す信号を受け付けたことを条件に、補正量取得処理を開始する。
【0057】
制御部300は、補正量取得処理を実行すると、まず、累積加工時間がサチレート時間に達しているか否かを判別する(ステップS20)。
ここで、累積加工時間とは、ワークWの実際の加工時間にみなせる時間をいい、例えば、工作機械1の電源を投入してから電源を切るまでの時間から工作機械1のアイドリング状態の時間を減算したものである。このようにアイドリング状態の時間を減算する理由は、アイドリング状態では、機械に帯びた熱が発散するためである。また、同様に機械から熱が発散することを考慮して、一時的に工作機械1の電源を切った時間が予め定めた時間(例えば、30分)未満である場合には、累積加工時間をリセットせずに、工作機械1の電源を投入してから電源を切るまでの時間から、このような一時的に電源を切った時間を減算したものを累積加工時間としてもよい。また、サチレート時間とは、機械の熱変位がほぼ収束し、平衡状態に達するまでの時間をいう。
具体的には、制御部300は、図示しないタイマにより、上記累積加工時間を算出しており、現在の累積加工時間が、予め設定したサチレート時間(例えば、2時間程度)に達したか否かを判別する。
【0058】
サチレート時間に達していないと判別した場合(ステップS20;No)、制御部300は、前述のステップS11と同様に、第2Z軸スライド部84及び第2X軸スライド部91を検出待機位置に移動させる(ステップS21)。以降、制御部300は、ステップS21〜S23の処理を実行するが、これらの処理は、前述のステップS11〜S13と同様である。
【0059】
ステップS23で、制御部300は、検出部210からの検出信号を受信した時点におけるX座標(例えば、主軸71の軸中心の位置)を取得し、取得したX座標を記憶すると、続いて、補正量を取得する(ステップS24)。
具体的には、制御部300は、ここで取得したX座標からステップS13で取得した基準位置としてのX座標を減算した値を算出する。この値は、基準位置を取得した時点に対する現時点のX軸方向の熱変位量を示す。ここで算出された値をaとすると、aが正の値であれば、熱変位によって、ボールねじ93が概ねaだけ−X軸方向に伸びていることが推定される。逆に、aが負の値であれば、熱変位によって、ボールねじ93が概ねaだけ+X軸方向に縮んでいることが推定される。第1実施形態では、このように算出された熱変位量をそのまま補正量として取得し、記憶する。
【0060】
続いて、制御部300は、第2X軸スライド部91を加工待機位置に移動させる(ステップS25)。具体的には、制御部300は、第2X軸モータ94を駆動し、第2X軸スライド部91を、検出部210の先端部211がドグ220に近接する位置まで移動させる。この位置は、例えば、ステップS11及びS21と同様の位置である。
【0061】
ステップS25の処理を終えるか、又はステップS20においてサチレート時間に達していると判別した場合(ステップS20;Yes)、制御部300は、ワークWの加工を開始する(ステップS26)。
ここで、サチレート時間に達している場合(ステップS20;Yes)に、補正量を取得せずに、ワークを加工開始する理由は、サチレート時間に達していれば、機械の熱変位は平衡状態にある(つまり、安定している)ためである。
【0062】
制御部300は、1つのワークWの加工を終えると、処理をステップS20に戻す。制御部300は、加工終了の指示を示す信号を受信するまで、上記処理を繰り返し実行する。
このため、サチレート時間に達した(ステップS20;Yes)後の補正量は、前回処理(サチレート時間に達する直前のステップS24)における補正量となる。つまり、サチレート時間に達した後の補正量は、サチレート時間に達する直前のステップS24で取得したX座標からステップS13で取得した基準位置としてのX座標を減算した値となる。
【0063】
ステップS26におけるワークWの加工は、前述の(ワークの加工について)で説明した手順(1)、(2)のように行われる。そして、複数の工具Trのうち、ある工具を選択し、選択した工具の位置(工具の軸中心)に主軸71(主軸71の軸中心)を位置させる際には、ステップS24で取得し、記憶している補正量を加味した位置に移動させる。
具体的には、例えば、図示するように、工具Trのうち最も−X方向側に位置する工具Tr1でワークWを加工する場合、算出された補正量がaであるとすると、熱変位によって、ボールねじ93が概ねaだけ−X軸方向に伸びていることが推察される。このため、制御部300は、予め設定された工具Tr1の加工目標座標(X=X1)に、X軸方向の補正量aを加味した、補正加工目標座標(X=X1+a)の位置に、主軸71の軸中心が位置するように第2X軸スライド部91を移動させて、工作機械1(本実施形態では、第2加工機構60)にワークWを加工させる。
【0064】
第1実施形態に係る工作機械1(第2加工機構60)は、ワークWを把持する主軸71を回転可能に支持する主軸台72が載置され、X軸方向(所定の軸方向の一例)に移動する第2X軸スライド部91と、ワークWを加工する工具Trを保持する工具台100と、X軸方向には移動しないドグ220(第1の部分の一例)と、第2X軸スライド部91に対して不動であり、第2X軸スライド部91の移動と共にX軸方向に移動する検出部210(第2の部分の一例)と、制御部300と、を備え、制御部300は、ドグ220と検出部210とが接触したことを検出する機能と、検出したことに基づいて検出時の第2X軸スライド部91のX座標(所定の軸上の位置を示す値の一例)を取得する機能と、第1の検出時に取得したX座標値と第1の検出時後の第2の検出時に取得したX座標値との差をX軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する機能と、工具Trの位置を示す予め定められた加工目標座標(目標位置の一例)に取得した補正量を加味した補正加工目標座標が示す位置に第2X軸スライド部91を移動させる機能と、を備える。
このような工作機械1、制御部300(制御装置の一例)、及び工作機械1による加工方法によれば、第1検出時と第2検出時との相対的な熱変位量に応じて補正量を取得しているため、室温、機械温度によらず、正確な熱変位補正が可能であり、暖気運転の時間をなくすか短縮することができる。また、暖気運転の時間をとられずに済むため省エネにもなる。また、検出部210を第2X軸スライド部91に取り付け、ドグ220をX軸方向には移動しない位置に取り付けるだけでよいため、構成が簡単である。
【0065】
また、制御部300は、工作機械1の動作時間に基づいて累積加工時間を算出する機能と、算出した累積加工時間が予め定められたサチレート時間(所定期間の一例)に達したか否かを判別する機能と、をさらに備え、累積加工時間がサチレート時間に達したと判別された場合、サチレート時間に達する直前に取得した補正量を加工目標座標に加味した補正加工目標座標が示す位置に第2X軸スライド部91を移動させる。
このようにすれば、サチレート時間の経過後は、検出機構200による検出時間が不要になるため、加工時間を短縮することができる。
【0066】
また、X軸方向は、ワークWの径方向であり、工作機械1は、第2X軸スライド部91をX軸と直交するZ軸方向に移動させる第2Z軸スライド機構80をさらに備える。
このような工作機械1によれば、X軸及びZ軸にワークWを移動させることができ、ボーリングバイト、ターニングバイト等の工具TrでワークWに開口部を形成したり、ワークWの外周を加工したりすることができる。そして、内径や外径の加工精度が求められる場合であっても、ワークWの径方向であるX軸方向における熱変位を補正することができるため、高い加工精度を実現できる。
【0067】
2.第2実施形態
第1実施形態では、ステップS24で、算出した熱変位量をそのまま補正量としたが、第2実施形態では、算出した熱変位量に所定の係数を掛けたものを補正量として取得する例を示す。
ここで、上記(数1)式を参照すると、熱変位量は、サチレートするまで(平衡状態になるまで)は、ボールねじの長さLに比例することがわかる。すると、第1実施形態で求めた熱変位量は、ボールねじ93による−X軸方向の最大の変位において求めた値であるため、ボールねじ93による最大変位箇所には位置しない複数の工具Tr各々の位置に補正量としてこの熱変位量をそのまま加味しただけでは、必ずしも正確な位置に熱変位補正をすることができない。
そこで、第2実施形態では、制御部300は、補正量取得処理のステップS24において、算出した熱変位量に係数C(0<C<1)を掛けた値を補正量として算出し、取得する。ここで、図7に示すように、工具Tr1とTr4との間隔をL1(つまり、L1=Xm−X1)、工具Tr2とTr4との間隔をL2(つまり、L2=Xm−X2)、工具Tr3とTr4との間隔をL3(つまり、L3=Xm−X3)とする。この場合、例えば、係数Cは、C=(L1/2)/Xmの関係式から求められる値に設定すれば、ボールねじ93による最大移動長さにおける工具台100の位置を概ね反映したものになる。仮に、Xm=200、L1=84である場合は、係数Cは、上記関係式から0.21と求められる。
第2実施形態では、このように定めた係数Cを熱変位量に掛けて求められる値(例えば熱変位量がaである場合、C・aで求められる値)を加味した位置に工具Trの位置を補正する。具体的には、例えば、工具Tr1でワークWを加工する場合、算出された熱変位量がaであるとすると、制御部300は、予め設定された工具Tr1の加工目標座標(X=X1)に補正量を加味した補正加工目標座標(X=X1+C・a)の位置に、主軸71の軸中心が位置するように第2X軸スライド部91を移動させて、工作機械1(本実施形態では、第2加工機構60)にワークWを加工させる。
【0068】
第2実施形態では、制御部300が、補正量取得処理のステップS24において、1より小さい値の係数Cを熱変位量に掛けたものを補正量として算出する。
これにより、ボールねじ93の最大長さに対する工具台100の位置を考慮した正確な熱変位補正が実現できるため、ワークWの加工精度を高めることができる。
【0069】
3.第3実施形態
第3実施形態では、複数の工具Trの各位置を示す量とボールねじ93によるX軸方向での最大変位の位置を示す量(Xm)との比を係数として複数求め、これら係数の各々を熱変位量に掛けた補正量を、複数取得する。これにより、さらに精度の良い熱変位補正を実現する。
以下、加工目標としての工具Trの各々についての係数をどのように求めるかを説明する。
【0070】
(1)工具Tr1を選択する際の係数
工具Tr1の位置は、ボールねじ93の長さが最小となるXmを基準にすれば、L1と表せる。したがって、工具Tr1を選択する際の係数をC1とすると、係数C1は、C1=L1/Xmにより求められる。例えば、Xm=200、L1=84である場合、係数C1は、C1=84/200より、0.42と算出できる。
(2)工具Tr2を選択する際の係数
工具Tr2の位置は、ボールねじ93の長さが最小となるXmを基準にすれば、L2と表せる。したがって、工具Tr2を選択する際の係数をC2とすると、係数C2は、C2=L2/Xmにより求められる。例えば、Xm=200、L2=56である場合、係数C2は、C2=56/200より、0.28と算出できる。
(3)工具Tr3を選択する際の係数
工具Tr3の位置は、ボールねじ93の長さが最小となるXmを基準にすれば、L3と表せる。したがって、工具Tr3を選択する際の係数をC3とすると、係数C3は、C3=L3/Xmにより求められる。例えば、Xm=200、L3=28である場合、係数C3は、C3=28/200より、0.14と算出できる。
(4)工具Tr4を選択する際の係数
工具Tr4の位置は、ボールねじ93の長さが最小となるXmを基準にすれば、0(ゼロ)となる。したがって、工具Tr4を選択する際の係数をC4とすると、係数C4は、C4=0/Xmより、0と算出できる。
【0071】
第3実施形態では、このように定めた係数C1〜C4を熱変位量に掛けて求められる値を加味した位置に工具Trの位置を補正する。
具体的には、算出された熱変位量がaであるとすると、制御部300は、工具Tr1でワークWを加工する場合は補正加工目標座標(X=X1+C1・a)の位置に、工具Tr2でワークWを加工する場合は補正加工目標座標(X=X2+C2・a)の位置に、工具Tr3でワークWを加工する場合は補正加工目標座標(X=X3+C3・a)の位置に、工具Tr4でワークWを加工する場合は補正加工目標座標(X=Xm+C4・a)の位置に、主軸71の軸中心が位置するように第2X軸スライド部91を移動させて、工作機械1(本実施形態では、第2加工機構60)にワークWを加工させる。
なお、この場合、全ての工具Tr1〜Tr4について、係数を求め、補正加工目標座標を算出する必要はなく、例えば、工具Trの割り出す際に、工具Tr1〜Tr4の各々の工具について「補正行う/行わない」といった所定のコードで制御部300に指令することにより、任意の工具についてのみ補正量を求め、補正加工目標座標を算出するようにしてもよい。
【0072】
上記のように、工具台100は、工具Trを複数保持し、第3実施形態では、制御部300は、複数の工具(Tr1〜Tr4)のうち少なくとも1つの工具のX軸上の位置を示す量(L1、L2、L3、0)と第2X軸スライド部91のX軸方向における最大移動量(Xm)との比であって1より小さい値の係数(C1〜C4)を算出し、算出した係数を熱変位量に掛けたものを補正量として算出する。
これにより、ボールねじ93の最大長さに対する工具Trの各々の位置を考慮した正確な熱変位補正が実現できるため、ワークWの加工精度をより高めることができる。
【0073】
4.変形例
(変形例1)
以上の実施形態では、検出機構200が、X軸方向には移動しないドグ220と、第2X軸スライド部91に対して不動であり、第2X軸スライド部91の移動と共にX軸方向に移動する検出部210と、から構成される例を示したが、検出部とドグの関係は逆であってもよい。ここからは、工作機械1のうち以上の実施形態とは検出機構の構成が異なる変形例1を説明する。
【0074】
変形例1に係る検出機構200’は、図8(a)〜(c)に示すように、検出部210’及びドグ220’から構成される。
【0075】
検出部210’は、タッチスイッチから構成され、対象物(ドグ220’)に接触すると接触したことを示すON信号を制御部300に供給する。
検出部210’は、第2Z軸スライド部84の側面(X−Y平面と平行な面)に設置されている。具体的には、検出部210’は、図8(b)に示すように、第2Z軸スライド部84の側面であって+Z軸方向に向く面に固着された立方体状のスペーサ84A上に取り付けられている。検出部210’は、例えば、ボルトB1’(図8(a)参照)によりスペーサ84A(図8(b)参照)に固着される。
このように、検出部210’は、第2Z軸スライド部84に取り付けられているため、X軸方向には移動しない。
【0076】
ドグ220’は、第2X軸スライド部91の側面(X−Y平面と平行な面)に設置されている。具体的には、ドグ220’は、図8(c)に示すように、第2X軸スライド部91の側面であって+Z軸方向に向く面に固着された平板状の取付板91A上に取り付けられている。ドグ220’は、例えば、図8(a)に示すように、ボルトB2’により取付板91Aに固着される。
このように取り付けられたドグ220’は、第2X軸スライド部91に対して不動である。したがって、ドグ220’は、第2X軸スライド部91の移動に伴ってX軸方向に移動する。
【0077】
ドグ220’は、例えば、平板状の金属板であり、その主面がX方向に向くようにして配置され、検出部210’とX軸方向で対向する位置に配設されている。検出部210’とドグ220’とは、ドグ220’が第2X軸スライド部91の移動により−X軸方向に移動していき、熱変位していない場合において第2X軸スライド部91が最も−X軸方向に移動したときに(つまり、ボールねじ93の最大長さのときに)検出部210’の先端部211’がドグ220’の主面に丁度接触するように配置されている。検出部210’の先端部211’がドグ220に接触すると、検出部210’は、ドグ220’に接触したことを示すON信号を制御部300に供給する。
【0078】
工作機械1が備える検出機構として、以上のような検出機構200’であってもよい。この場合、制御部300は、ステップS11及びステップS21において、第2X軸モータ94を駆動し、第2X軸スライド部91を、ドグ220’の検出部210’に向く主面が検出部210’の先端部211’に近接する検出待機位置(例えば、Xm=+200である場合に、ドグ220’の検出部210’に向く主面の座標がX=+4.0となる位置)まで移動させればよい。このようにすれば、上記と同様の基準位置取得処理及び補正量取得処理により補正量を取得し、取得した補正量を加味した、補正加工目標座標の位置においてワークWを加工させることができる。
【0079】
変形例1に係る工作機械1(第2加工機構60)は、ワークWを把持する主軸71を回転可能に支持する主軸台72が載置され、X軸方向(所定の軸方向の一例)に移動する第2X軸スライド部91と、ワークWを加工する工具Trを保持する工具台100と、X軸方向には移動しない検出部210’(第1の部分の一例)と、第2X軸スライド部91に対して不動であり、第2X軸スライド部91の移動と共にX軸方向に移動するドグ220’(第2の部分の一例)と、制御部300と、を備え、制御部300は、検出部210’とドグ220’が接触したことを検出する機能と、検出したことに基づいて検出時の第2X軸スライド部91のX座標(所定の軸上の位置を示す値の一例)を取得する機能と、第1の検出時に取得したX座標値と第1の検出時後の第2の検出時に取得したX座標値との差をX軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する機能と、工具Trの位置を示す予め定められた加工目標座標(目標位置の一例)に取得した補正量を加味した補正加工目標座標が示す位置に第2X軸スライド部91を移動させる機能と、を備える。
このような変形例1によっても、第1検出時と第2検出時との相対的な熱変位量に応じて補正量を取得しているため、室温、機械温度によらず、正確な熱変位補正が可能であり、暖気運転の時間をなくすか短縮することができる。また、ドグ220’を第2X軸スライド部91に取り付け、検出部210’をX軸方向には移動しない位置に取り付けるだけでよいため、構成が簡単である。
【0080】
(変形例2)
また、以上の実施形態及び変形例1では、検出部210又は210’が、タッチスイッチ(接触センサの一例)である例を示したが、これに限られない。
検出部210又は210’は、非接触センサであってもよい。非接触センサは、例えば、渦電流式距離測定器であり、自機と対象物であるドグ220又は220’との距離を測定し、計測値を制御部300に供給するものである。具体的には、制御部300は、渦電流式距離測定器が備えるコイルに高周波電流を流し、電磁誘導作用によってドグ220又は220’表面に渦電流を発生させることで、両者の距離に応じて変化するコイルのインピーダンスを取得し、取得したインピーダンス値に基づいて前記距離を測定する。
この場合、制御部300は、上記ステップS13及びステップS23において、予め記憶しておいた距離に、測定値が達した時点でのX座標を取得すればよい。このようにしても、上記と同様の基準位置取得処理及び補正量取得処理により補正量を取得し、取得した補正量を加味した、補正加工目標座標の位置においてワークWを加工させることができる。
【0081】
このように、変形例2に係る工作機械1では、X軸方向(所定の軸方向の一例)には移動しない第1の部分と、第2X軸スライド部91に対して不動であり、第2X軸スライド部91の移動と共にX軸方向に移動する第2の部分との一方は、非接触センサであり、制御部300は、非接触センサと、前記第1の部分と前記第2の部分の他方であるドグ220又は220’とが所定の距離だけ接近したことを検出する。
【0082】
(その他の変形例)
以上の実施形態及び変形例では、制御部300は、ワーク加工を開始し(ステップS26)、1つのワークWを加工するとステップS20に処理を戻すものとしたが、これに限られない。制御部300は、複数のワークWを加工した後や、所定時間経過後に、ステップS20の処理に戻すようにしてもよい。このようにすれば、毎回、検出機構200に検出させずに済むので、加工時間を短縮することができる。
【0083】
また、以上の実施形態及び変形例では、検出部210を第2X軸スライド部91に対して不動な位置に取り付けることで、第2加工機構60のX軸方向の熱変位を測定したが、これに限られない。検出部を第2Z軸スライド部84に対して不動な位置取り付けることで、第2加工機構60のZ軸方向の熱変位を測定してもよいし、同様にして、第1加工機構10のX軸、Y軸、Z軸方向の熱変位を測定してもよい。この場合、ドグは、測定したい軸方向には移動しない位置に取り付けられる。つまり、任意の軸方向で熱変位量を測定してもよいし、全ての軸方向で熱変位量を測定してもよい。
【0084】
また、以上の実施形態及び変形例では、サチレート時間に達した(ステップS20;Yes)後の補正量が、前回処理(サチレート時間に達する直前のステップS24)における補正量であるものとしたが、これに限られない。制御部300は、累積加工時間がサチレート時間に達したと判別した場合、サチレート時間に達する2つ前、3つ前の処理における補正量を加工目標座標に加味して補正加工目標座標を求めてもよい。
【0085】
また、以上では、ドグ220又は検出部210’が第2Z軸スライド部84の側面に設置されている例を示したが、これに限られない。ドグ220又は検出部210’は、熱変位の測定方向(上記実施形態及び変形例ではX軸方向)に不動であればよいので、ドグ220又は検出部210’を、例えば、X軸、Y軸、及びZ軸方向に不動であるベッドSに取り付けてもよい。
【0086】
また、以上の実施形態及び変形例では、工具台100をベッドSに対して不動であるものとしたがこれに限られない。工具台100は、例えば、主軸71に対する工具Trの高さ方向の位置を調整することが可能な、Y軸方向に移動できるものであってもよい。この場合、例えば、Y軸移動部50のような機構によって、工具台100をY軸方向に移動させればよい。
【0087】
また、接触センサはタッチスイッチに限られず、非接触センサは渦電流式距離測定器に限られない。接触センサ、非接触センサともに、公知の各種センサの中から任意に選択してもよい。
【0088】
また、以上の実施形態及び変形例では、工作機械1を多機能旋盤として説明したが、これに限られない。第1加工機構10のみに相当する工作機械や、第2加工機構60のみに相当する工作機械であってもよい。また、工作機械は、フライス盤、ボール盤等であってもよい。
【0089】
また、基準位置取得処理、補正量取得処理を制御部300のCPUが実行するためのプログラムは、制御部300のROMに予め記憶されているものとして説明したが、このような動作プラグラム及び各種データは、工作機械1に含まれるコンピュータに対して、着脱自在の記録媒体により配布・提供されてもよい。さらに、動作プログラム及び各種データは、電気通信ネットワーク等を介して接続された他の機器からダウンロードすることによって配布されるようにしてもよい。
【0090】
そして、各処理の実行形態も、着脱自在の記録媒体を装着することにより実行するものだけではなく、電気通信ネットワーク等を介してダウンロードした動作プログラム及び各種データを内蔵の記憶装置に一旦格納することにより実行可能としてもよいし、電気通信ネットワーク等を介して接続された他の機器側のハードウェア資源を用いて直接実行してもよい。さらには、他の機器と電気通信ネットワーク等を介して各種データの交換を行うことにより各処理を実行してもよい。
【0091】
なお、本発明は上記の実施形態、変形例、及び図面によって限定されるものではない。適宜変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。
【符号の説明】
【0092】
1 …工作機械
S …ベッド
10 …第1加工機構
20 …ワーク保持部
30 …第1Z軸スライド機構
40 …工具移動機構
41 …固定台
44 …X軸移動部
50 …Y軸移動部
60 …第2加工機構
70 …ワーク保持部
80 …第2Z軸スライド機構
90 …第2X軸スライド機構
100 …工具台
200 …検出機構
300 …制御部
200’…変形例1に係る検出機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記ワークを加工する工具を保持する工具台と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出する検出手段と、
前記検出手段が検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段が第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する補正量取得手段と、
前記工具の位置を示す予め定められた目標位置に前記補正量取得手段が取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させる駆動制御手段と、を備える、
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
前記工作機械の動作時間に基づいて累積加工時間を算出する時間算出手段と、
前記時間算出手段が算出した累積加工時間が予め定められた所定期間に達したか否かを判別する判別手段と、をさらに備え、
前記判別手段によって前記累積加工時間が前記所定期間に達したと判別された場合、前記駆動制御手段は、前記補正量取得手段が前記所定期間に達する前に取得した補正量を前記目標位置に加味した位置に前記スライド部を移動させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記補正量取得手段は、1より小さい値の係数を前記熱変位量に掛けたものを補正量として取得する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記工具台は、前記工具を複数保持し、
前記補正量取得手段は、複数の工具のうち少なくとも1つの工具の前記所定の軸上の位置を示す値と前記スライド部の前記所定の軸上の最大移動量との比であって1より小さい値の係数を算出し、算出した係数を前記熱変位量に掛けたものを補正量として取得する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記第1の部分と前記第2の部分の一方は、接触センサであり、
前記検出手段は、前記接触センサと、前記第1の部分と前記第2の部分の他方とが接触したことを検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第1の部分と前記第2の部分の一方は、非接触センサであり、
前記検出手段は、前記非接触センサと、前記第1の部分と前記第2の部分の他方とが所定の距離だけ接近したことを検出する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項7】
前記所定の軸方向は、前記ワークの径方向であり、前記スライド部を前記所定の軸と直交する軸方向に移動させる移動機構をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項8】
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、を備える工作機械の動作を制御する制御装置であって、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出する検出手段と、
前記検出手段が検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得する位置取得手段と、
前記位置取得手段が第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する補正量取得手段と、
前記ワークを加工する工具の位置を示す予め定められた目標位置に前記補正量取得手段が取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させる駆動制御手段と、を備える、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項9】
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、を備える工作機械の動作を制御するプログラムであって、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出する処理と、
検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得する処理と、
第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得する処理と、
前記ワークを加工する工具の位置を示す予め定められた目標位置に取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させる処理と、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
ワークを把持する主軸を回転可能に支持する主軸台が載置され、所定の軸方向に移動するスライド部と、
前記所定の軸方向には移動しない第1の部分と、
前記スライド部に対して不動であり、前記スライド部の移動と共に前記所定の軸方向に移動する第2の部分と、を備える工作機械による加工方法であって、
前記第1の部分と前記第2の部分とが接触したこと又は所定の距離だけ接近したことを検出するステップと、
検出したことに基づいて検出時の前記スライド部の前記所定の軸上の位置を示す値を取得するステップと、
第1の検出時に取得した位置を示す値と前記第1の検出時後の第2の検出時に取得した位置を示す値との差を前記所定の軸方向における熱変位量として算出し、算出した熱変位量に応じて補正量を取得するステップと、
前記ワークを加工する工具の位置を示す予め定められた目標位置に取得した補正量を加味した位置に前記スライド部を移動させるステップと、を備える、
ことを特徴とする工作機械による加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−82022(P2013−82022A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222375(P2011−222375)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000133593)株式会社ツガミ (28)
【Fターム(参考)】