説明

工作機械の熱変位補正システム

【課題】コラム前面を基準位置として熱変位量を評価し、且つ、テーブルの熱変位量が不均一であっても精度のよい熱変位補正を行うことなどが可能な工作機械の熱変位補正システムを提供する。
【解決手段】例えば、位置検出器温度センサ41−6と、テーブル温度センサ41−1〜41−5と、温度データa6を入力する温度データ入力部、温度データa6に基づいて位置検出器の熱変位量を算出する熱変位量算出部、温度データa1〜a5を入力する温度データ入力部、温度データa1〜a5に基づいてX軸方向の温度分布に応じたテーブルの熱変位量を算出する熱変位量算出部、前記位置検出器の熱変位量と前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出する熱変位量算出部、前記テーブル系統の熱変位量に基づいてX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部を有する変位補正装置とを備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械の熱変位補正システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に工作機械などの制御系では、図12に示すような機械端の位置情報を位置検出器1で検出して位置フィードバックとして使用するフルクローズドループのフィードバック制御系を採用しているが、機械内に有する主軸やサーボモータ2などの熱源及び外気温度の変化によって機械変位が発生するため、各移動軸の位置決め精度や3次元空間における位置決め精度などの静的精度は悪化する。なお、機械変位は単に熱変位によるものだけでなく、機械の自重によるたわみなどによっても発生する。
更に、工作機械などの制御系として図13に示すようなセミクローズドループのフィードバック制御系を採用した場合には、パルスコーダ3で検出するサーボモータ2の回転位置を位置フィードバックとして使用しているため、静的精度は更に悪化する傾向となる。このような機械変位はロボットなどの制御においても同様に発生する。
【0003】
上記のような機械変位による静的精度の悪化、特に熱などに起因して発生する機械変位による静的精度悪化は加工誤差増大の大きな要因の一つであり、現在でもなお大きな問題であるが、熱に起因して発生する機械変位による静的精度悪化の対策としては、従来より、図14及び図15に示すような温度センサによる熱変位補正システムなどが提案されている。
【0004】
詳細な説明は省略するが、図14は立形マシニングセンタの熱変位補正システム(熱変位補正機能)であり、この熱変位補正システムでは温度センサ11を機械の各部(コラム12、サドル13、ヘッド14、テーブル16、ワークW、ベッド18)に埋め込み、これらの温度センサ11によって計測した温度データを基にして機械の熱変位量を簡易的な算術式を用いて推測し、その変位量だけ機械座標などをシフトさせることにより機械変位量を補償する。なお、図13中の15は主軸である。
図15は門形マシニングセンタの熱変位補正システム(熱変位補正機能)であり、この熱変位補正システムでは温度センサ21を機械の各部(コラム22、クロスレール23、サドル24、主軸27、テーブル26、ワークW、ベッド28)に埋め込み、これらの温度センサ21によって計測した温度データを基にして機械の熱変位量を簡易的な算術式を用いて推測し、その変位量だけ機械座標などをシフトさせることにより機械変位量を補償する。なお、図9中の25はラムである。
なお、これらに関連する先行技術文献としては、下記の特許文献1〜5がある。
【0005】
一方で、工作機械の熱変位は熱源がある主軸やコラムなどの機械構造物だけでなく、テーブルにおいても発生する。そのため、テーブルの熱変位対策として、下記の特許文献6ではテーブルの熱変位を考慮した工作機械の熱変位補正方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−6183号公報
【特許文献2】特開2006−281420号公報
【特許文献3】特開2006−15461号公報
【特許文献4】特開2007−15094号公報
【特許文献5】特開2008−183653号公報
【特許文献6】特許第4359573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献6で提案されている工作機械の熱変位補正方法には、次のような問題点がある。
【0008】
(1) 特許文献6の方法ではテーブルの温度は均一としているが、大形の工作機械では特にテーブルの大きさが大きくテーブル全体が必ずしも均一な温度になることはなく、そのため熱変位量もテーブルの各部位によって異なる(テーブルには熱源は特にないため、テーブルは外気温度の変化や加工で使用するクーラントなどの影響を受けて熱変位することがほとんどである)。
(2) 特許文献6の方法ではテーブル上のワークの固定位置を規定しているが、このようにワークの固定位置を規定することは、小さなワークに対しては可能であるが、大形の工作機械のワークに対しては難しい。つまり、変形するワークを基準位置として規定する方法では現実的でない。
(3) 特許文献6の方法では熱変位の基準位置を工具中心位置としているが、実際にはコラム前面を基準位置として、次の2系統の熱変位が存在する。これに対して特許文献6の方法では、1系統側の熱変位のみを議論しており、基準位置もコラム前面とは異なる。
テーブル系統の熱変位:コラム⇒位置検出器⇒テーブル(⇒ワーク)
主軸系統の熱変位:コラム⇒クロスレール⇒サドル⇒主軸⇒(アタッチメント⇒)工具
【0009】
従って本発明は上記の事情に鑑み、コラム前面を基準位置として熱変位量を評価し、且つ、テーブルに温度分布が生じてテーブルの熱変位量が不均一であっても精度のよい熱変位補正を行うことができ、更には、テーブル系統だけでなく主軸系統の変位も考慮した総合的な精度のよい変位補正を行うことができる工作機械の熱変位補正システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1発明の工作機械の熱変位補正システムは、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいて前記コラムの前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量に基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、第2発明の工作機械の熱変位補正システムは、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、第3発明の工作機械の熱変位補正システムは、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、
前記コラムの前面側及び後面側に設置され、前記コラムの前面側及び後面側の温度を検出して温度データを出力するコラム温度センサと、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記コラム温度センサから前記温度データを入力するコラム温度データ入力部と、前記コラム温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記コラムの傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部と、前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量と前記コラム傾斜変位量算出部で算出された前記コラムの傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統変位量算出部で算出された前記主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、第4発明の工作機械の熱変位補正システムは、第3発明の工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記主軸系統温度データ入力部では、前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサから前記温度データを入力し、前記主軸系統熱変位量算出部では、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサの温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出することを特徴とする。
【0014】
また、第5発明の工作機械の熱変位補正システムは、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、
前記コラムに設置され、前記コラムの傾斜角度を検出して傾斜データを出力する水準器と、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記水準器から前記傾斜データを入力するコラム傾斜データ入力部と、前記コラム傾斜データ入力部で入力した前記傾斜データに基づいて前記コラムの傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部と、前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量と前記コラム傾斜変位量算出部で算出された前記コラムの傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統変位量算出部で算出された前記主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、第6発明の工作機械の熱変位補正システムは、第5発明の工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記コラムに設置され、前記コラムの温度を検出して温度データを出力するコラム温度センサを有し、
前記主軸系統温度データ入力部では、前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサから前記温度データを入力し、前記主軸系統熱変位量算出部では、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサの温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1発明の工作機械の熱変位補正システムによれば、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいて前記コラムの前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量に基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置とを備えたことを特徴としているため、コラム前面を基準位置としたテーブル系統(コラム⇒位置検出器⇒テーブル)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブルに温度分布が生じてテーブルの熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。
【0017】
第2発明の工作機械の熱変位補正システムによれば、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置とを備えたことを特徴としているため、コラム前面を基準位置としたテーブル系統(コラム⇒位置検出器⇒テーブル)の熱変位量と主軸系統(コラム⇒主軸系統の支持部材⇒主軸)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブルに温度分布が生じてテーブルの熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。更には、テーブル系統の熱変位量と主軸系統の熱変位量とを総合的に捉えた工作機械全体の熱変位モデルを実現することができ、より精度の良い変位補正システムとなる。
【0018】
第3発明の工作機械の熱変位補正システムによれば、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、前記コラムの前面側及び後面側に設置され、前記コラムの前面側及び後面側の温度を検出して温度データを出力するコラム温度センサと、前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記コラム温度センサから前記温度データを入力するコラム温度データ入力部と、前記コラム温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記コラムの傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部と、前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量と前記コラム傾斜変位量算出部で算出された前記コラムの傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統変位量算出部で算出された前記主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置とを備えたことを特徴としているため、コラム前面を基準位置としたテーブル系統(コラム⇒位置検出器⇒テーブル)の熱変位量と主軸系統(コラム⇒主軸系統の支持部材⇒主軸)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブルに温度分布が生じてテーブルの熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。また、テーブル系統の熱変位量と主軸系統の熱変位量とを総合的に捉えた工作機械全体の熱変位モデルを実現することができ、より精度の良い変位補正システムとなる。更には、テーブル系統及び主軸系統の熱変位量だけでなく、コラムの傾斜変位量も考慮することにより、更に精度の良い変位補正が可能になる。
【0019】
第4発明の工作機械の熱変位補正システムによれば、第3発明の工作機械の熱変位補正システムにおいて、前記主軸系統温度データ入力部では、前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサから前記温度データを入力し、前記主軸系統熱変位量算出部では、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサの温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出することを特徴としているため、コラムの温度データも考慮した主軸系統の熱変位量を評価することにより、より精度の良い変位補正が可能になる。
【0020】
第5発明の工作機械の熱変位補正システムによれば、工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材(例えばクロスレール、サドル、ラム、主軸ベアリングなど)と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、前記コラムに設置され、前記コラムの傾斜角度を検出して傾斜データを出力する水準器と、前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記水準器から前記傾斜データを入力するコラム傾斜データ入力部と、前記コラム傾斜データ入力部で入力した前記傾斜データに基づいて前記コラムの傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部と、前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量と前記コラム傾斜変位量算出部で算出された前記コラムの傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統変位量算出部で算出された前記主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置とを備えたことを特徴としているため、コラム前面を基準位置としたテーブル系統(コラム⇒位置検出器⇒テーブル)の熱変位量と主軸系統(コラム⇒主軸系統の支持部材⇒主軸)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブルに温度分布が生じてテーブルの熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。また、テーブル系統の熱変位量と主軸系統の熱変位量とを総合的に捉えた工作機械全体の熱変位モデルを実現することができ、より精度の良い変位補正システムとなる。更には、テーブル系統及び主軸系統の熱変位量だけでなく、コラムの傾斜変位量も考慮することにより、更に精度の良い変位補正が可能になる。
【0021】
第6発明の工作機械の熱変位補正システムによれば、第5発明の工作機械の熱変位補正システムにおいて、前記コラムに設置され、前記コラムの温度を検出して温度データを出力するコラム温度センサを有し、前記主軸系統温度データ入力部では、前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサから前記温度データを入力し、前記主軸系統熱変位量算出部では、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサの温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出することを特徴としているため、コラムの温度データも考慮した主軸系統の熱変位量を評価することにより、より精度の良い変位補正が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、温度センサの配置を示す工作機械の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態例1に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、変位補正装置側の構成を示すブロック図である。
【図3】(a)はテーブルの温度分布を示す図、(b)は単位長さ当たりのテーブル熱変位量の分布を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態例2に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、温度センサの配置を示す工作機械の側面図である。
【図5】本発明の実施の形態例2に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、変位補正装置側の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態例3に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、温度センサの配置を示す工作機械の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態例3に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、変位補正装置側の構成を示すブロック図である。
【図8】コラムの前面側と後面側の温度差によるコラム傾斜変位量の算出式に関する説明図である。
【図9】コラムの前面側と後面側の温度差によるコラム傾斜変位量の算出式に関する説明図である。
【図10】本発明の実施の形態例4に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、温度センサ及び水準器の配置を示す工作機械の側面図である。
【図11】本発明の実施の形態例4に係る工作機械の熱変位補正システムに関する図であって、変位補正装置側の構成を示すブロック図である。
【図12】従来のフルクローズドループのフィードバック制御装置のブロック図である。
【図13】従来のセミクローズドループのフィードバック制御装置のブロック図である。
【図14】従来の立形マシニングセンタの温度センサによる熱変位補正システムのブロック図である。
【図15】従来の門形マシニングセンタの温度センサによる熱変位補正システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
<実施の形態例1>
【0025】
図1〜図3に基づき、本発明の実施の形態例1に係る工作機械の熱変位補正システムについて説明する。
【0026】
図1に示すように、工作機械は、ベッド31と、テーブル32と、門形のコラム33と、クロスレール34と、サドル35と、ラム36と、ラム36に回転可能に支持された状態で内蔵された主軸37と、主軸37にアタッチメント38を介して装着された工具39と、位置検出器42とを有している。
【0027】
ベッド31は床面40に設置されている。ベッド31上にはテーブル32及びコラム33が設置され、テーブル32上にはワークWが載置されている。テーブル32は、ベッド31の上面31aに敷設されたガイドレール(図示省略)に沿って、送り機構(図1では図示省略:図2参照)により矢印Aの如く水平なX軸方向(コラム33の前後方向)に直線的に移動可能になっている。クロスレール34はコラム33の前面33aに設置されており、コラム前面33aに敷設されたガイドレール(図示省略)に沿って、送り機構(図示省略)により矢印Bの如く鉛直なZ軸方向に直線的に移動可能になっている。サドル35はクロスレール34の前面34aに設置されており、クロスレール34に沿って、送り機構(図示省略)により水平なY軸方向(図1の紙面と直交する方向)に直線的に移動可能になっている。ラム36はサドル35に設けられ、送り機構(図示省略)により矢印Cの如くZ軸方向に移動可能になっている。主軸37はラム36内に設けられており、主軸ベアリング40によって回転可能に支持されている。なお、X,Y,Z軸は互いに直交している。
【0028】
そして、テーブル32には複数個(図示例では5個)のテーブル温度センサ41−1,41−2,41−3,41−4,41−5が設置されている。これらのテーブル温度センサ41−1〜41−5はX軸方向に沿って等間隔にテーブル32の各部に配設されている。従って、テーブル温度センサ41−1〜41−5はテーブル32の各部の温度をそれぞれ検出して、これらの検出温度データa1,a2,a3,a4,a5を工作機械の変位補正装置51(図2参照:詳細後述)へ出力する。
【0029】
位置検出器42は一般的なインダクトシン方式のリニアスケールであり、スライダ42aとスケール42bとを有して成るものである。スケール42bはジグザグ状のコイル42b−1を有しており、ベッド31に取り付けられてX軸方向に延びている(長手方向がX軸方向に沿っている)。スライダ42aはジグザグ状のコイル42a−1を有し、スケール42bに対向した状態でテーブル32に取り付けられている。スライダ42aのコイル42a−1に電流を流すと、電磁誘導作用でスケール42bのコイル42b−1に電圧が発生する。従って、テーブル32とともにスライダ42aがX軸方向に移動すると、スライダ42aとスケール42bの相対位置が変化して前記電圧が変化するため、この電圧の変化によってスライダ42aのX軸方向の位置、即ちテーブル32(ワークW)のX軸方向の位置を検出することができる。このようにして位置検出器42はテーブル32(ワークW)の位置を検出し、この検出位置データを工作機械のフィードバック制御装置61(図2参照:詳細後述)へ出力する(位置フィードバック)。
【0030】
そして、位置検出器42のスケール42bには位置検出器温度センサ41−6が設置されている。位置検出器温度センサ41−6は位置検出器42(スケール42b)の温度を検出し、この検出温度データa6を工作機械の変位補正装置51へ出力する。
なお、上記では位置検出器42としてインダクトシン方式のリニアスケールについて記述しているが、リニアスケールはインダクトシン方式に限定するものではなく、他の方式のリニアスケールを位置検出器42として用いてもよい。
【0031】
次に、図1,図2及び図3に基づき、工作機械の変位補正装置51、フィードバック制御装置61及びテーブル送り機構71について説明する。
【0032】
図2に示すように、変位補正装置51はパーソナルコンピュータなどを用いたものであり、位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度データ入力部54と、テーブル熱変位量算出部55と、テーブル系統熱変位量算出部56と、X軸補正量出力部57とを有している。
【0033】
位置検出器温度データ入力部52では、位置検出器温度センサ41−6から出力される位置検出器42(スケール42b)の温度データa6を入力する。
位置検出器熱変位量算出部53では、位置検出器温度データ入力部52で入力した位置検出器42(スケール42b)の温度データa6に基づいて、位置検出器42(スケール42b)のX軸方向の熱変位量ΔL1を算出する。
【0034】
下記の(1)式が、位置検出器42(スケール42b)や、その他の工作機械各部(ラム36、主軸ベアリング40、サドル35、クロスレール34、コラム33など)の熱変位量の計算式例である。なお、位置検出器42以外の工作機械各部の熱変位量に関しては、他の実施の形態例で説明する。
【数1】

【0035】
ここで、ΔLは位置検出器42(スケール42b)などの工作機械各部の熱変位量[μm]、k1は補正係数、βは位置検出器42(スケール42b)などの工作機械各部の線膨張係数[1/(℃×m)]である。T0は基準温度[℃]、Tは位置検出器42(スケール42b)などの工作機械各部の温度データ[℃]、ΔTは温度データTと基準温度T0の温度差(T−T0)[℃]、Lは位置検出器42(スケール42b)などの工作機械各部の物体有効長(工作機械各部においてX軸方向の熱変位量に関わる部分の長さ)[m]である。
【0036】
従って、位置検出器42(スケール42b)のX軸方向の熱変位量ΔL1は、位置検出器42(スケール42b)の線膨張係数βと、基準温度T0と位置検出器42(スケール42b)の温度データT(位置検出器温度センサ41−6の温度データa6)との温度差ΔTと、位置検出器42(スケール42a)の物体有効長Lとを、(1)式に代入してΔLを算出することによって得られる。なお、位置検出器42(スケール42a)における物体有効長Lは、図1に示すようにコラム前面33aである基準位置XK(X軸方向の基準位置)からスライダ42aの位置(図示例ではスライダ42aにおけるX軸方向の中心位置)までの長さL1における長さであり、スライダ42aの移動に応じて変化する。また、位置検出器42(スケール42b)の熱変位量ΔL1は、コラム前面33aの基準位置XKからスライダ42aの位置までの長さL1の範囲で生じる熱変位量、即ち前記長さL1の範囲において位置検出器42(スケール42b)の熱変位により生じた誤差量である。
【0037】
テーブル温度データ入力部54では、テーブル温度センサ41−1〜41−5から出力されるテーブル32の各部の温度データa1〜a5を入力する。
テーブル熱変位量算出部55では、テーブル温度データ入力部54で入力したテーブル32の各部の温度データa1〜a5に基づいて、テーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量ΔL2を算出する。
【0038】
下記の(2)式及び(3)式が、テーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量ΔL2を計算するための計算式例である。
【数2】

【0039】
ここで、δは単位長さ当たりのテーブル32の熱変位量[μm/m]、k2は補正係数、βはテーブル32の線膨張係数[1/(℃×m)]、T0は基準温度[℃]、Tはテーブル32の温度データ[℃]である。ΔLはテーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量[μm]、X、Xiはテーブル32のX軸方向の位置である。
【0040】
図3(a)において横軸はテーブル32におけるX軸方向の位置[m]、縦軸はテーブル32の温度T[℃]である。図3(b)において横軸はテーブル32におけるX軸方向の位置[m]、縦軸は単位長さ当たりのテーブル32の熱変位量δ[μm/m]である。例えば、テーブル32において、図3(a)のようなテーブル32のX軸方向における温度分布が生じている場合、X軸方向における単位長さ当たりのテーブル32の熱変位量δの分布は図3(b)のようになる。従って、この単位長さ当たりのテーブル32の熱変位量δの分布から、X軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量ΔL2を算出することができる。なお、X=0は図1に示すようにテーブル32におけるスライダ42aの設置位置(図示例ではスライダ42aにおけるX軸方向の中心位置)である。
【0041】
詳述すると、テーブル温度センサ41−1~41−5の温度データa1〜a5を、順次、温度データTとして(2)式に代入することにより、X軸方向における各温度データT(a1〜a5)に応じた単位長さ当たりのテーブル熱変位量δを得る。例えば、X軸方向において、X=0からテーブル温度センサ41−1の位置までは温度データa1を用いてδを求め、テーブル温度センサ41−1の位置(当該位置を含まず)からテーブル温度センサ41−2の位置までは温度データa2を用いてδを求め、テーブル温度センサ41−2の位置(当該位置を含まず)からテーブル温度センサ41−3の位置までは温度データa3を用いてδを求め、テーブル温度センサ41−3の位置(当該位置を含まず)からテーブル温度センサ41−4の位置までは温度データa4を用いてδを求め、テーブル温度センサ41−4の位置(当該位置を含まず)からテーブル温度センサ41−5の位置(或いはテーブル32の端)までは温度データa5を用いてδを求めることができる。
【0042】
これらのδの値から、図3(b)に例示するようなX軸方向における単位長さ当たりテーブル熱変位量δの分布を表す式δ(X)を得ることができる。そして、このδ(X)を(3)式のようにX軸方向の位置X(0〜Xi)関して積分することにより、テーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル熱変位量ΔL(ΔL2)を算出することができる。例えば、図1に示すX=X1の位置においては、前述のスライダ42aの位置であるX=0の位置からX=X1の位置までの長さL2における熱変位量(即ちテーブル32の熱変位による生じる誤差量)が、テーブル熱変位量ΔL2である。
【0043】
次に、図2に示すように、テーブル系統熱変位量算出部56では、位置検出器熱変位量算出部53で算出された位置検出器42の熱変位量ΔL1と、テーブル熱変位量算出部55で算出されたテーブル熱変位量ΔL2とを加算することにより、テーブル系統の熱変位量(X軸方向の熱変位量)を算出する。例えば、図1に示すX=X1の位置においては、コラム前面33aの基準位置XKからX=X1の位置までの長さL3の範囲に含まれている熱変位量(即ち位置検出器42(スケール42b)及びテーブル32の熱変位によって生じるX軸の誤差量)が、テーブル系統の熱変位量である。テーブル系統熱変位量算出部56では、この算出したテーブル系統の熱変位量を、テーブル系統におけるX軸の変位量として、X軸補正量出力部57へ出力する。
【0044】
X軸補正量出力部57では、テーブル系統熱変位量算出部56から入力したテーブル系統におけるX軸の変位量(テーブル系統の熱変位量)に基づいて、テーブル系統におけるX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を求め、このX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)をフィードバック制御装置61へ出力する。
【0045】
図2に示すように、テーブル送り機構71はサーボモータ74、減速ギヤ75、ボールスクリュー76(ネジ部76a,ナット部76b)、パルスコーダ77などから構成されている。サーボモータ74は、減速ギヤ75を介してボールスクリュー76のネジ部76aに連結されている。ボールスクリュー76のネジ部76aとナット部76bは互いに螺合しており、ナット部76bはテーブル32に取り付けられている。また、テーブル32には前述のとおり位置検出器42のスライダ42aが取り付けられ、サーボモータ74にはパルスコーダ77が取り付けられている。
【0046】
従って、サーボモータ74の回転力が減速ギヤ75を介してボールスクリュー76のネジ部76aへ伝達され、ネジ部76aが矢印Dの如く回転すると、ナット部76bとともにテーブル32が矢印Aの如くX軸方向へ移動する。このときにテーブル32(ワークW)のX軸方向への移動位置が位置検出器42によって検出され、この検出位置データがフィードバック制御装置61へ送れられる(位置フィードバック)。また、サーボモータ74の回転角度がパルスコーダ77によって検出され、この検出回転角度データがフィードバック制御装置61へ送られる。
【0047】
フィードバック制御装置61は偏差演算部62、乗算部63、偏差演算部64、比例演算部65、積分演算部66、加算部67、電流制御部68、微分演算部69などから構成されている。
【0048】
偏差演算部62では、数値制御装置(図示省略)から送られてきたX軸位置指令に対して、変位補正装置51(X軸補正量出力部57)から送られてきたX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を加算することにより、前記X軸位置指令を補正し、この補正後のX軸位置指令と、位置検出器42からの位置フィードバック情報であるテーブル32(ワークW)の位置との差を演算することにより、位置偏差d1を求める。
【0049】
乗算部63では、位置偏差d1に対して位置ループゲインKpを乗算することにより、速度指令d2を求める。微分演算部69では、パルスコーダ77によって検出されたサーボモータ74の回転角度を時間で微分することにより、サーボモータ74の回転速度を求める。偏差演算部64では、速度指令d2と、微分演算部69で求めたサーボモータ74の回転速度との差を演算することにより、速度偏差d3を求める。比例演算部65では、速度偏差d3に対して速度ループ比例ゲインKvを乗算することにより、比例値d4を求める。積分演算部66では、速度偏差d3に対して速度ループ積分ゲインKviを乗算し、且つ、この乗算値を積分することにより、積分値d5を求める。加算部67では、比例値d4と積分値d5とを加算してトルク指令d6を求める。電流制御部68では、サーボモータ74のトルクがトルク指令d6に追従するようにサーボモータ74へ供給する電流を制御する。
【0050】
従って、このフィードバック制御装置61では、サーボモータ74の回転速度が速度指令d2に追従し、テーブル52のX軸方向の移動位置が補正後のX軸位置指令に追従するように制御する。
【0051】
以上のように、本実施の形態例1における工作機械の熱変位補正システムによれば、工具39が装着された主軸37と、コラム33と、主軸37とコラム33との間に介設された主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40と、コラム33の前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブル32と、テーブル32のX軸方向の位置を検出する位置検出器42とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、位置検出器42に設置され、位置検出器42の温度を検出して温度データa6を出力する位置検出器温度センサ41−6と、X軸方向におけるテーブル32の各部に設置され、テーブル32の各部の温度を検出して温度データa1〜a5を出力する複数のテーブル温度センサ41−1〜41−5と、位置検出器温度センサ41−6から温度データa6を入力する位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器温度データ入力部52で入力した温度データa6に基づいて位置検出器42の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度センサ41−1〜41−5から温度データa1〜a5を入力するテーブル温度データ入力部54と、テーブル温度データ入力部54で入力した温度データa1〜a5に基づいてテーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部55と、位置検出器熱変位量算出部53で算出された位置検出器42の熱変位量とテーブル熱変位量算出部55で算出されたテーブル32の熱変位量とに基づいてコラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部56と、テーブル系統熱変位量算出部56で算出されたテーブル系統の熱変位量に基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部57とを有する変位補正装置51とを備えたことを特徴としているため、コラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統(コラム33⇒位置検出器42⇒テーブル32)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブル32に温度分布が生じてテーブル32の熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。
【0052】
<実施の形態例2>
図4及び図5に基づき、本発明の実施の形態例2に係る工作機械の熱変位補正システムについて説明する。なお、図4及び図5に示す熱変位補正システムにおいて、上記実施の形態例1の熱変位補正システムと同様の部分については、同一の符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
【0053】
図4に示すように、本実施の形態例2では、前述と同様の温度センサ41−1〜41−6の他に更に複数の温度センサ41−7,41−8,41−9,41−10が、工作機械に設置されている。
【0054】
クロスレール温度センサ41−7はクロスレール34に設置されており、クロスレール34の温度を検出して、この検出温度データa7を工作機械の変位補正装置81(図5参照:詳細後述)へ出力する。サドル温度センサ41−8はサドル35に設置されており、サドル35の温度を検出して、この検出温度データa8を変位補正装置81へ出力する。ラム温度センサ41−9はラム36に設置され、ラム36の温度を検出して、この検出温度データa9を変位補正装置81へ出力する。主軸ベアリング温度センサ41−10は主軸ベアリング40に設置されており、主軸ベアリング40の温度を検出して、この検出温度データa10を変位補正装置81へ出力する。
【0055】
図5に示すように、変位補正装置81はパーソナルコンピュータなどを用いたものであり、前述と同様の位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度データ入力部54と、テーブル熱変位量算出部55と、テーブル系統熱変位量算出部56に加えて、主軸系統温度データ入力部82と、主軸系統熱変位量算出部83と、X軸補正量出力部84とを有している。
【0056】
主軸系統温度データ入力部82では、クロスレール温度センサ41−7から出力されるクロスレール34の温度データa7と、サドル温度センサ41−8から出力されるサドル35の温度データa8と、ラム温度センサ41−9から出力されるラム36の温度データa9と、主軸ベアリング温度センサ41−10から出力される主軸ベアリング40の温度データa10を入力する。
【0057】
主軸系統熱変位量算出部83では、主軸系統温度データ入力部82で入力した主軸系統の各部の温度データa7〜a10に基づいて、主軸系統におけるX軸方向の熱変位量を算出する。
【0058】
即ち、クロスレール34の線膨張係数βと、基準温度T0とクロスレール34の温度データT(クロスレール温度センサ41−7の温度データa7)との温度差ΔTと、クロスレール34の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、クロスレール34のX軸方向における熱変位量を算出する。また、サドル35の線膨張係数βと、基準温度T0とサドル35の温度データT(サドル温度センサ41−8の温度データa8)との温度差ΔTと、サドル35の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、サドル35のX軸方向における熱変位量を算出する。また、ラム36の線膨張係数βと、基準温度T0とラム36の温度データT(ラム温度センサ41−9の温度データa9)との温度差ΔTと、ラム36の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、ラム36のX軸方向における熱変位量を算出する。また、主軸ベアリング40の線膨張係数βと、基準温度T0と主軸ベアリング40の温度データT(主軸ベアリング温度センサ41−10の温度データa10)との温度差ΔTと、主軸ベアリング40の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、主軸ベアリング40のX軸方向における熱変位量を算出する。
【0059】
そして更に、主軸系統熱変位量算出部83では、この算出したクロスレール34の熱変位量、サドル35の熱変位量、ラム36の熱変位量及び主軸ベアリング40の熱変位量に基づいて(例えばこれらを加算して)、主軸系統におけるX軸方向の熱変位量を算出する。例えば、図4に示すX=X1の位置においては、コラム前面33aの基準位置XKからX=X1の位置までの長さL4の範囲に含まれている熱変位量(即ちクロスレール34、サドル35、ラム36及び主軸ベアリング40の熱変位によって生じるX軸の誤差量)が、主軸系統の熱変位量である。主軸系統熱変位量算出部83では、この算出した主軸系統の熱変位量を、主軸系統におけるX軸の補正量として、X軸補正量出力部84へ出力する。
【0060】
X軸補正量出力部84では、テーブル系統熱変位量算出部56から入力したテーブル系統におけるX軸の変位量(テーブル系統の熱変位量)と、主軸系統熱変位量算出部83から入力した主軸系統におけるX軸の変位量(主軸系統の熱変位量)とに基づいて(例えばこれらを差し引いて)、テーブル系統及び主軸系統におけるX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を求め、このX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)をフィードバック制御装置61へ出力する。
【0061】
フィードバック制御装置61の偏差演算部62では、数値制御装置(図示省略)から送られてきたX軸位置指令に対して、変位補正装置81(X軸補正量出力部84)から送られてきたX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を加算することにより、前記X軸位置指令を補正し、この補正後のX軸位置指令と、位置検出器42からの位置フィードバック情報であるテーブル32(ワークW)の位置との差を演算することにより、位置偏差d1を求める。
【0062】
本実施の形態例2の熱変位補正システムにおけるその他の構成については、上記実施の形態例1の熱変位補正システムと同様である。
【0063】
以上のように、本実施の形態例2における工作機械の熱変位補正システムによれば、工具39が装着された主軸37と、コラム33と、主軸37とコラム33との間に介設された主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40と、コラム33の前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブル32と、テーブル32のX軸方向の位置を検出する位置検出器42とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、位置検出器42に設置され、位置検出器42の温度を検出して温度データa6を出力する位置検出器温度センサ41−6と、X軸方向におけるテーブル32の各部に設置され、テーブル32の各部の温度を検出して温度データa1〜a5を出力する複数のテーブル温度センサ41−1〜41−5と、主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40に設置され、これらのクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40の温度を検出して温度データa7〜a10を出力する支持部材温度センサとしてのクロスレール温度センサ41−7、サドル温度センサ41−8、ラム温度センサ41−9及び主軸ベアリング温度センサ41−10と、位置検出器温度センサ41−6から温度データa6を入力する位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器温度データ入力部52で入力した温度データa6づいて位置検出器42の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度センサ41−1〜41−5から温度データa1〜a5を入力するテーブル温度データ入力部54と、テーブル温度データ入力部54で入力した温度データa1〜a5に基づいてテーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部55と、位置検出器熱変位量算出部53で算出された位置検出器42の熱変位量とテーブル熱変位量算出部55で算出されたテーブル32の熱変位量とに基づいてコラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部56と、クロスレール温度センサ41−7、サドル温度センサ41−8、ラム温度センサ41−9及び主軸ベアリング温度センサ41−10から温度データa7〜a10を入力する主軸系統温度データ入力部82と、主軸系統温度データ入力部82で入力した温度データa7〜a10に基づいてコラム前面33aを基準位置XKとした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部83と、テーブル系統熱変位量算出部56で算出されたテーブル系統の熱変位量と主軸系統熱変位量算出部83で算出された主軸系統の熱変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部84とを有する変位補正装置81とを備えたことを特徴としているため、コラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統(コラム33⇒位置検出器42⇒テーブル32)の熱変位量と主軸系統(コラム33⇒クロスレール34⇒サドル35⇒ラム36⇒主軸ベアリング40⇒主軸37)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブル32に温度分布が生じてテーブル32の熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。更には、テーブル系統の熱変位量と主軸系統の熱変位量とを総合的に捉えた工作機械全体の熱変位モデルを実現することができ、より精度の良い変位補正システムとなる。
【0064】
<実施の形態例3>
図6〜図9に基づき、本発明の実施の形態例3に係る工作機械の熱変位補正システムについて説明する。なお、図6及び図7に示す熱変位補正システムにおいて、上記実施の形態例1,2の熱変位補正システムと同様の部分については、同一の符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
【0065】
図6に示すように、本実施の形態例3では、前述と同様の温度センサ41−1〜41−10の他に更に複数の温度センサ41−11,41−12,41−13,41−14,41−15,41−16が、工作機械に設置されている。
【0066】
コラム温度センサ41−11,41−12,41−13はコラム33の前面33a側における上部、中間部及び下部にそれぞれ設置されており、これらの上部、中間部及び下部の温度を検出して、この検出温度データa11,a12,a13を工作機械の変位補正装置91(図7参照:詳細後述)へ出力する。コラム温度センサ41−14,41−15,41−16はコラム33の後面33b側における上部、中間部及び下部にそれぞれ設置されており、これらの上部、中間部及び下部の温度を検出して、この検出温度データa14,a15,a16を変位補正装置91へ出力する。
【0067】
図7に示すように、変位補正装置91はパーソナルコンピュータなどを用いたものであり、前述と同様の位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度データ入力部54と、テーブル熱変位量算出部55と、テーブル系統熱変位量算出部56に加えて、主軸系統温度データ入力部92と、主軸系統熱変位量算出部93と、コラム温度データ入力部94と、コラム傾斜変位量算出部95と、主軸系統変位量算出部96と、X軸補正量出力部97とを有している。
【0068】
主軸系統温度データ入力部92では、クロスレール温度センサ41−7から出力されるクロスレール34の温度データa7と、サドル温度センサ41−8から出力されるサドル35の温度データa8と、ラム温度センサ41−9から出力されるラム36の温度データa9と、主軸ベアリング温度センサ41−10から出力される主軸ベアリング40の温度データa10と、コラム温度センサ41−11〜41−16から出力されるコラム33の温度データa11〜a16を入力する。
【0069】
主軸系統熱変位量算出部93では、主軸系統温度データ入力部92で入力した主軸系統の各部の温度データa7〜a16に基づいて、主軸系統におけるX軸方向の熱変位量を算出する。
【0070】
即ち、クロスレール34の線膨張係数βと、基準温度T0とクロスレール34の温度データT(クロスレール温度センサ41−7の温度データa7)との温度差ΔTと、クロスレール34の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、クロスレール34のX軸方向における熱変位量を算出する。また、サドル35の線膨張係数βと、基準温度T0とサドル35の温度データT(サドル温度センサ41−8の温度データa8)との温度差ΔTと、サドル35の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、サドル35のX軸方向における熱変位量を算出する。また、ラム36の線膨張係数βと、基準温度T0とラム36の温度データT(ラム温度センサ41−9の温度データa9)との温度差ΔTと、ラム36の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、ラム36のX軸方向における熱変位量を算出する。また、主軸ベアリング40の線膨張係数βと、基準温度T0と主軸ベアリング40の温度データT(主軸ベアリング温度センサ41−10の温度データa10)との温度差ΔTと、主軸ベアリング40の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、主軸ベアリング40のX軸方向における熱変位量を算出する。
【0071】
また、コラム33の線膨張係数βと、基準温度T0とコラム33の温度データTとの温度差ΔTと、コラム33の物体有効長Lとを上記(1)式に代入して、コラム33のX軸方向における熱変位量を算出する。なお、コラム33の温度データTは、コラム温度センサ41−11〜41−16の温度データa11〜a16に基づくものであり、これらの温度データa11〜a16の平均値又は最大値などの適宜の値を用いることができる。
【0072】
そして更に、主軸系統熱変位量算出部93では、この算出したクロスレール34の熱変位量、サドル35の熱変位量、ラム36の熱変位量、主軸ベアリング40の熱変位量及びコラム33の熱変位量に基づいて(例えばこれらを加算して)、主軸系統におけるX軸方向の熱変位量を算出する。例えば、図6に示すX=X1の位置においては、コラム前面33aの基準位置XKからX=X1の位置までの長さL4の範囲に含まれている熱変位量(即ちクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40及びコラム33の熱変位によって生じるX軸の誤差量)が、主軸系統の熱変位量である。
【0073】
コラム温度データ入力部94では、コラム温度センサ41−11〜41−16から出力されるコラム33の温度データa11〜a16を入力する。
コラム傾斜変位量算出部95では、コラム温度データ入力部94で入力したコラム前面33a側の温度データa11〜a13とコラム後面33b側の温度データa14〜a16とに基づいて、コラム33の傾斜によるX軸方向の変位量である傾斜変位量δを算出する。
【0074】
図8及び図9を参照し、傾斜変位量δの算出式について説明する。図8には傾斜前のコラム33を一点鎖線で示し、傾斜後(コラム前面33a側とコラム後面33b側の温度差によって円弧状に変形した状態)のコラム33を実線で示している。
【0075】
図8において、コラム33の高さをLH、コラム側面33cの幅をε、コラム前面33a側の温度データをT1、コラム後面33b側の温度データをT2、傾斜変位量をδ、円弧状に変形したコラム33における円弧の半径をρ、コラム33の傾斜角度をθ、傾斜変位量を算出する際に、変位量を修正するための係数をαとすると、下記の(4)式及び(5)式が得られ、これらの(4)式,(5)式から、下記のようにして(6)式が得られる。(6)式において、ΔT1はコラム前面33a側の温度データT1と基準温度T0との温度差(T1−T0)、ΔT2はコラム後面33b側の温度データT2と基準温度T0との温度差(T2−T0)である。
【数3】

【0076】
一方、図9に示すような円の方程式(x−ρ)2+y2=ρ2におけるx,yに、傾斜変位量δ及びコラム33の高さLH(図8参照)を代入すると、下記の(7)式が得られ、この(7)式から、下記のようにして(8)式が得られる。そして、この(8)式におけるθに上記の(6)式を代入すると下記の(9)式が得られ、この(9)式から、下記のようにして(10)式が得られる。従って、この(10)式に温度データT1,T2を代入すれば、傾斜変位量δを算出することができる。なお、温度データT1には、コラム前面33a側の温度データa11〜a13の何れかの値又は平均値などを用いることができ、温度データT2には、コラム後面33b側の温度データa14〜a16の何れかの値又は平均値などを用いることができる。
【数4】

【0077】
図7に示すように、主軸系統変位量算出部96では、主軸系統熱変位量算出部93で算出された主軸系統の熱変位量と、コラム傾斜変位量算出部95で算出された傾斜変位量δとに基づいて(例えばこれを加算して)、主軸系統におけるX軸の変位量を算出し、これをX軸補正量出力部97へ出力する。
【0078】
X軸補正量出力部97では、テーブル系統熱変位量算出部56から入力したテーブル系統におけるX軸の変位量(テーブル系統の熱変位量)と、主軸系統変位量算出部96から入力した主軸系統におけるX軸の変位量(主軸系統の熱変位量及び傾斜変位量)とに基づいて(例えばこれらを差し引いて)、テーブル系統及び主軸系統におけるX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を求め、このX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)をフィードバック制御装置61へ出力する。
【0079】
フィードバック制御装置61の偏差演算部62では、数値制御装置(図示省略)から送られてきたX軸位置指令に対して、変位補正装置91(X軸補正量出力部97)から送られてきたX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を加算することにより、前記X軸位置指令を補正し、この補正後のX軸位置指令と、位置検出器42からの位置フィードバック情報であるテーブル32(ワークW)の位置との差を演算することにより、位置偏差d1を求める。
【0080】
本実施の形態例3の熱変位補正システムにおけるその他の構成については、上記実施の形態例1,2の熱変位補正システムと同様である。
【0081】
以上のように、本実施の形態例3における工作機械の熱変位補正システムによれば、工具39が装着された主軸37と、コラム33と、主軸37とコラム33との間に介設された主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40と、コラム33の前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブル32と、テーブル32のX軸方向の位置を検出する位置検出器42とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、位置検出器42に設置され、位置検出器42の温度を検出して温度データa6を出力する位置検出器温度センサ41−6と、X軸方向におけるテーブル32の各部に設置され、テーブル32の各部の温度を検出して温度データa1〜a5を出力する複数のテーブル温度センサ41−1〜41−5と、主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40に設置され、これらのクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40の温度を検出して温度データa7〜a10を出力する支持部材温度センサとしてのクロスレール温度センサ41−7、サドル温度センサ41−8、ラム温度センサ41−9及び主軸ベアリング温度センサ41−10と、コラム33の前面33a側及び後面33b側に設置され、コラム33の前面33a側及び後面33b側の温度を検出して温度データa11〜a16を出力するコラム温度センサ41−11〜41−16と、位置検出器温度センサ41−6から温度データa6を入力する位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器温度データ入力部52で入力した温度データa6に基づいて位置検出器42の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度センサ41−1〜41−5から温度データa1〜a5を入力するテーブル温度データ入力部54と、テーブル温度データ入力部54で入力した温度データa1〜a5に基づいてテーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部55と、位置検出器熱変位量算出部53で算出された位置検出器42の熱変位量とテーブル熱変位量算出部55で算出されたテーブル32の熱変位量とに基づいてコラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部56と、支持部材温度センサとしてのクロスレール温度センサ41−7、サドル温度センサ41−8、ラム温度センサ41−9、主軸ベアリング温度センサ41−10及びコラム温度センサ41−11〜41−16から温度データa7〜a16を入力する主軸系統温度データ入力部92と、主軸系統温度データ入力部92で入力した温度データa7〜a16に基づいてコラム前面33aを基準位置XKとした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部93と、コラム温度センサ41−11〜41−16から温度データa11〜a16を入力するコラム温度データ入力部94と、コラム温度データ入力部94で入力した温度データa11〜a16に基づいてコラム33の傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部95と、主軸系統熱変位量算出部93で算出された主軸系統の熱変位量とコラム傾斜変位量算出部95で算出されたコラム33の傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部96と、テーブル系統熱変位量算出部56で算出されたテーブル系統の熱変位量と主軸系統変位量算出部96で算出された主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部97とを有する変位補正装置91とを備えたことを特徴としているため、コラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統(コラム33⇒位置検出器42⇒テーブル32)の熱変位量と主軸系統(コラム33⇒クロスレール34⇒サドル35⇒ラム36⇒主軸ベアリング40⇒主軸37)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブル32に温度分布が生じてテーブル32の熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。また、テーブル系統の熱変位量と主軸系統の熱変位量とを総合的に捉えた工作機械全体の熱変位モデルを実現することができ、より精度の良い変位補正システムとなる。更には、テーブル系統及び主軸系統の熱変位量だけでなく、コラム33の傾斜変位量も考慮することにより、更に精度の良い変位補正が可能になる。
【0082】
<実施の形態例4>
図10及び図11に基づき、本発明の実施の形態例4に係る工作機械の熱変位補正システムについて説明する。なお、図10及び図11に示す熱変位補正システムにおいて、上記実施の形態例1〜3の熱変位補正システムと同様の部分については、同一の符号を付し、重複する詳細な説明は省略する。
【0083】
図10に示すように、本実施の形態例4では、前述と同様の温度センサ41−1〜41−16に加えて、水準器100が工作機械に設置されている。水準器100はコラム33の上面33dに設置されており、コラム33の傾斜角度θを検出して、この検出傾斜データθを工作機械の変位補正装置101(図11参照:詳細後述)へ出力する。
【0084】
図11に示すように、変位補正装置101はパーソナルコンピュータなどを用いたものであり、前述と同様の位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度データ入力部54と、テーブル熱変位量算出部55と、テーブル系統熱変位量算出部56と、主軸系統温度データ入力部92と、主軸系統熱変位量算出部93に加えて、コラム傾斜データ入力部102と、コラム傾斜変位量算出部103と、主軸系統変位量算出部104と、X軸補正量出力部105とを有している。
【0085】
コラム傾斜データ入力部102では、水準器100から出力されるコラム33の傾斜データθを入力する。
コラム傾斜変位量算出部103では、コラム傾斜データ入力部102で入力したコラム33の傾斜データθに基づいて、コラム33の傾斜によるX軸方向の変位量である傾斜変位量δを算出する。例えば、この傾斜変位量δは、上記(8)式に傾斜データθを代入することによって算出することができる。
【0086】
主軸系統変位量算出部104では、主軸系統熱変位量算出部93で算出された主軸系統の熱変位量と、コラム傾斜変位量算出部103で算出された傾斜変位量δとに基づいて(例えばこれを加算して)、主軸系統におけるX軸の変位量を算出し、これをX軸補正量出力部105へ出力する。
【0087】
X軸補正量出力部105では、テーブル系統熱変位量算出部56から入力したテーブル系統におけるX軸の変位量(テーブル系統の熱変位量)と、主軸系統変位量算出部104から入力した主軸系統におけるX軸の変位量(主軸系統の熱変位量及び傾斜変位量)とに基づいて(例えばこれらを差し引いて)、テーブル系統及び主軸系統におけるX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を求め、このX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)をフィードバック制御装置61へ出力する。
【0088】
フィードバック制御装置61の偏差演算部62では、数値制御装置(図示省略)から送られてきたX軸位置指令に対して、変位補正装置101(X軸補正量出力部105)から送られてきたX軸の補正量(=“−X軸の変位量”)を加算することにより、前記X軸位置指令を補正し、この補正後のX軸位置指令と、位置検出器42からの位置フィードバック情報であるテーブル32(ワークW)の位置との差を演算することにより、位置偏差d1を求める。
【0089】
本実施の形態例4の熱変位補正システムにおけるその他の構成については、上記実施の形態例1〜3の熱変位補正システムと同様である。
【0090】
以上のように、本実施の形態例4における工作機械の熱変位補正システムによれば、工具39が装着された主軸37と、コラム33と、主軸39とコラム37との間に介設された主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40と、コラム33の前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブル32と、テーブル32のX軸方向の位置を検出する位置検出器42とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、位置検出器42に設置され、位置検出器42の温度を検出して温度データa6を出力する位置検出器温度センサ41−6と、X軸方向におけるテーブル32の各部に設置され、テーブル32の各部の温度を検出して温度データa1〜a5を出力する複数のテーブル温度センサ41−1〜41−5と、主軸系統の支持部材であるクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40に設置され、これらのクロスレール34、サドル35、ラム36、主軸ベアリング40の温度を検出して温度データa7〜a10を出力する支持部材温度センサとしてのクロスレール温度センサ41−7、サドル温度センサ41−8、ラム温度センサ41−9及び主軸ベアリング温度センサ41−10と、コラム33に設置され、コラム33の温度を検出して温度データa11〜a16を出力するコラム温度センサ41−11〜41−16と、コラム33に設置され、コラム33の傾斜角度を検出して傾斜データθを出力する水準器100と、位置検出器温度センサ41−6から温度データa6を入力する位置検出器温度データ入力部52と、位置検出器温度データ入力部52で入力した温度データa6に基づいて位置検出器42の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部53と、テーブル温度センサ41−1〜41−5から温度データa1〜a5を入力するテーブル温度データ入力部54と、テーブル温度データ入力部54で入力した温度データa1〜a5に基づいてテーブル32に生じるX軸方向の温度分布に応じたテーブル32の熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部55と、位置検出器熱変位量算出部53で算出された位置検出器42の熱変位量とテーブル熱変位量算出部55で算出されたテーブル32の熱変位量とに基づいてコラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部56と、支持部材温度センサとしてのクロスレール温度センサ41−7、サドル温度センサ41−8、ラム温度センサ41−9、主軸ベアリング温度センサ41−10及びコラム温度センサ41−11〜41−16から温度データa7〜a16を入力する主軸系統温度データ入力部92と、主軸系統温度データ入力部92で入力した温度データa7〜a16に基づいてコラム前面33aを基準位置XKとした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部93と、水準器100から傾斜データθを入力するコラム傾斜データ入力部102と、コラム傾斜データ入力部102で入力した傾斜データθに基づいてコラム33の傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部103と、主軸系統熱変位量算出部93で算出された主軸系統の熱変位量とコラム傾斜変位量算出部103で算出されたコラム33の傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部104と、テーブル系統熱変位量算出部56で算出されたテーブル系統の熱変位量と主軸系統変位量算出部104で算出された主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部105とを有する変位補正装置101とを備えたことを特徴としているため、コラム前面33aを基準位置XKとしたテーブル系統(コラム33⇒位置検出器42⇒テーブル32)の熱変位量と主軸系統(コラム33⇒クロスレール34⇒サドル35⇒ラム36⇒主軸ベアリング40⇒主軸37)の熱変位量を評価することができ、しかも、テーブル32に温度分布が生じてテーブル32の熱変位量が不均一であっても、精度の良い変位補正が可能になる。また、テーブル系統の熱変位量と主軸系統の熱変位量とを総合的に捉えた工作機械全体の熱変位モデルを実現することができ、より精度の良い変位補正システムとなる。更には、テーブル系統及び主軸系統の熱変位量だけでなく、コラムの傾斜変位量も考慮することにより、更に精度の良い変位補正が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は工作機械の熱変位補正システムに関するものであり、門形マシニングセンタや立形マシニングセンタなどの各種の工作機械における熱変位補正システムに適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0092】
31 ベッド
31a 上面
32 テーブル
33 コラム
33a コラム前面
33b コラム後面
33c コラム側面
33d コラム上面
34 クロスレール
34a クロスレール前面
35 サドル
36 ラム
37 主軸
38 アタッチメント
39 工具
40 主軸ベアリング
41−1〜41−5 テーブル温度センサ
41−6 位置検出器温度センサ
41−7 クロスレール温度センサ
41−8 サドル温度センサ
41−9 ラム温度センサ
41−10 主軸ベアリング温度センサ
41−11〜41−16 コラム温度センサ
42 位置検出器
42a スライダ
42a−1 コイル
42b スケール
42b−1 コイル
51 変位補正装置
52 位置検出器温度データ入力部
53 位置検出器熱変位量算出部
54 テーブル温度データ入力部
55 テーブル熱変位量算出部
56 テーブル系統熱変位量算出部
57 X軸補正量出力部
61 フィードバック制御装置
62 偏差演算部
63 乗算部
64 偏差演算部
65 比例演算部
66 積分演算部
67 加算部
68 電流制御部
69 微分演算部
71 テーブル送り機構
74 サーボモータ
75 減速ギヤ
76 ボールスクリュー
76a ネジ部
76b ナット部
77 パルスコーダ
81 変位補正装置
82 主軸系統温度データ入力部
83 主軸系統熱変位量算出部
84 X軸補正量出力部
91 変位補正装置
92 主軸系統温度データ入力部
93 主軸系統熱変位量算出部
94 コラム温度データ入力部
95 コラム傾斜変位量算出部
96 主軸系統変位量算出部
97 X軸補正量出力部
101 変位補正装置
102 コラム傾斜データ入力部
103 コラム傾斜変位量算出部
104 主軸系統変位量算出部
105 X軸補正量出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいて前記コラムの前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量に基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正システム。
【請求項2】
工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正システム。
【請求項3】
工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、
前記コラムの前面側及び後面側に設置され、前記コラムの前面側及び後面側の温度を検出して温度データを出力するコラム温度センサと、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記コラム温度センサから前記温度データを入力するコラム温度データ入力部と、前記コラム温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記コラムの傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部と、前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量と前記コラム傾斜変位量算出部で算出された前記コラムの傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統変位量算出部で算出された前記主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正システム。
【請求項4】
請求項3に記載する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記主軸系統温度データ入力部では、前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサから前記温度データを入力し、前記主軸系統熱変位量算出部では、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサの温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出することを特徴とする工作機械の熱変位補正システム。
【請求項5】
工具が装着された主軸と、コラムと、前記主軸と前記コラムとの間に介設された主軸系統の支持部材と、前記コラムの前後方向であるX軸方向に移動可能なテーブルと、前記テーブルのX軸方向の位置を検出する位置検出器とを有する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記位置検出器に設置され、前記位置検出器の温度を検出して温度データを出力する位置検出器温度センサと、
前記X軸方向における前記テーブルの各部に設置され、前記テーブルの各部の温度を検出して温度データを出力する複数のテーブル温度センサと、
前記主軸系統の支持部材に設置され、前記主軸系統の支持部材の温度を検出して温度データを出力する支持部材温度センサと、
前記コラムに設置され、前記コラムの傾斜角度を検出して傾斜データを出力する水準器と、
前記位置検出器温度センサから前記温度データを入力する位置検出器温度データ入力部と、前記位置検出器温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記位置検出器の熱変位量を算出する位置検出器熱変位量算出部と、前記テーブル温度センサから前記温度データを入力するテーブル温度データ入力部と、前記テーブル温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいて前記テーブルに生じるX軸方向の温度分布に応じた前記テーブルの熱変位量を算出するテーブル熱変位量算出部と、前記位置検出器熱変位量算出部で算出された前記位置検出器の熱変位量と前記テーブル熱変位量算出部で算出された前記テーブルの熱変位量とに基づいてコラム前面を基準位置としたテーブル系統の熱変位量を算出するテーブル系統熱変位量算出部と、前記支持部材温度センサから前記温度データを入力する主軸系統温度データ入力部と、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出する主軸系統熱変位量算出部と、前記水準器から前記傾斜データを入力するコラム傾斜データ入力部と、前記コラム傾斜データ入力部で入力した前記傾斜データに基づいて前記コラムの傾斜変位量を算出するコラム傾斜変位量算出部と、前記主軸系統熱変位量算出部で算出された前記主軸系統の熱変位量と前記コラム傾斜変位量算出部で算出された前記コラムの傾斜変位量とに基づいて主軸系統の変位量を算出する主軸系統変位量算出部と、前記テーブル系統熱変位量算出部で算出された前記テーブル系統の熱変位量と前記主軸系統変位量算出部で算出された前記主軸系統の変位量とに基づいてX軸の補正量を求めてこのX軸の補正量を出力するX軸補正量出力部とを有する変位補正装置と、
を備えたことを特徴とする工作機械の熱変位補正システム。
【請求項6】
請求項5に記載する工作機械の熱変位補正システムにおいて、
前記コラムに設置され、前記コラムの温度を検出して温度データを出力するコラム温度センサを有し、
前記主軸系統温度データ入力部では、前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサから前記温度データを入力し、前記主軸系統熱変位量算出部では、前記主軸系統温度データ入力部で入力した前記支持部材温度センサ及び前記コラム温度センサの温度データに基づいてコラム前面を基準位置とした主軸系統の熱変位量を算出することを特徴とする工作機械の熱変位補正システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−86326(P2012−86326A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236424(P2010−236424)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】