説明

工作機械

【課題】 主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測することができて、加工精度の向上が図れる工作機械を提供する。
【解決手段】 第1基準位置P1に対する主軸半径方向の主軸軸心位置Oを計測する主軸側位置計測手段20と、第2基準位置P2に対する刃物台7の位置を計測する刃物側位置計測手段30とを設ける。主軸側位置計測手段20は、主軸半径方向に延びるスケール21および読取部22からなり、スケール基端および読取部22のいずれか一方を主軸台5等の主軸軸心Oの付近に設置し、他方を第1基準位置P1に設置する。刃物側位置計測手段30は、スケール31の基端および読取部32のいずれか一方を刃物台7等に設置し、他方を第2基準位置P2に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤、ドリル、研削盤等の工作機械、特に熱変位補正等のための計測機能を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、切削熱や機械運転に伴う各部位の発熱のために、ベッドや他の各部位の熱膨張,熱変形が生じる。このような熱膨張,熱変形は、加工精度の低下に繋がる。冷却装置を装備してその対策とするものもあるが、熱膨張を十分に抑えるには、冷却装置が大掛かりとなり、また冷却だけでは加工精度を確保することができない。そのため、従来より、熱膨張を計測して工具の切り込み量等の熱変位補正を行なうものが種々提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に記載の工作機械は、図12に示すように、主軸台51がベッド52上に位置固定され、刃物台53を搭載した送り台54が主軸半径方向(X軸方向)に移動可能に設けられた旋盤であり、主軸台51に取付けられ主軸半径方向に延びるスケール55を、送り台54に取付けられた読取部56で読み取ることにより、刃物台53の主軸半径方向における位置を計測する。この刃物台53の主軸半径方向位置の計測値は、熱変位等により変化する。そこで、計測値に応じて刃物台53の工具57の切り込み量等を補正することで、常に適正な加工精度を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−144191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、主軸台51と送り台54との相対位置だけを計測するのでは、送り台54に対する刃物台53の熱変位が生じた場合に、主軸軸心と工具の間の距離に誤差が生じる。また、特許文献1の工作機械は、主軸台51と刃物台53の送り台54とが主軸半径方向に並んで配置され、常に両者の主軸軸心方向(Z軸方向)の位置関係が同じであるため、主軸台51に取付けたスケール55を送り台54に取付けた読取部56で読み取ることができる。しかし、刃物台が主軸半径方向および主軸軸心方向の両方に移動する構成の工作機械の場合、主軸台と送り台との主軸軸心方向の位置関係が常に同じでないため、前記のようにスケールおよび読取部を設けることができない。刃物台が位置固定で、主軸台が主軸半径方向および主軸軸心方向の両方に移動する構成の工作機械の場合も、同様である。また、主軸台および刃物台が、主軸半径方向と主軸軸心方向とにそれぞれ個別に移動する構成の工作機械の場合も、同様である。
【0006】
この発明の目的は、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上が図れる工作機械を提供することである。
この発明の他の目的は、前記工作機械に設けられる計測手段を、主軸台または刃物台の移動に対応して必要な位置計測を行える構成としつつ、なるべく低コストで製作できるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、前記機械の寸法変化に対して、主軸の軸心と工具の刃先間の距離を精度良く補正できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の基本構成の工作機械は、ワークを把持するチャックを先端に有する主軸を回転自在に支持した主軸台と、工具が取付けられた刃物台とを、互いに主軸半径方向と主軸軸心方向とに相対的に移動可能にベッドに設置した工作機械において、
前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が第1基準位置に設けられてこの第1基準位置に対する前記主軸半径方向の主軸軸心位置を計測する主軸側位置計測手段と、
前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台またはこの刃物台と共に主軸半径方向に移動する部材に設置され、他方が第2基準位置に設けられてこの第2基準位置に対する前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段とを設け、
前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定とし、 前記主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから前記主軸半径方向における前記主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離を演算し、または前記主軸台と刃物台との主軸半径方向の相対移動量の補正に用いる値を演算する演算手段を設けたことを特徴とする。
【0008】
この構成によると、主軸側位置計測手段により、第1基準位置に対する主軸半径方向の主軸軸心位置が計測でき、かつ刃物側位置計測手段により、第2基準位置に対する刃物台の位置を計測するとが計測できる。第1基準位置と第2基準位置とは互いに位置固定であり、位置関係が変化しない。したがって、これら主軸側位置計測手段の読み取り値と刃物側位置計測手段の読み取り値とから、主軸半径方向における主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離が演算できる。
このように、主軸軸心位置および刃物台の位置の両方を計測するようにしたため、主軸軸心・刃先間相対距離が精度良く計測できる。すなわち、主軸軸心位置および刃物台の位置は、いずれもベッドやベッド上の機械部分の熱変位によって変化する。この両方の位置の熱変位を計測するため、主軸軸心・刃先間相対距離が精度良く計測できる。
また、主軸側位置計測手段は、スケールの基端および読取部のいずれか一方が、主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における主軸軸心の付近に設置されるため、主軸軸心からずれた位置にスケールや読取部が設けられる場合と異なり、そのずれ範囲での機械の熱変位等の影響を避けて計測することができる。そのため、より精度良く計測することができる。
このように、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
前記演算手段は、主軸軸心・刃先間相対距離の演算に限らず、主軸台と刃物台との主軸半径方向の移動量の補正に用いる値を演算するものであっても良い。この場合も、主軸軸心位置および刃物台の位置の両方を計測するようにしたため、精度の良い補正が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【0009】
なお、前記の「前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定」とは、主軸半径方向における第1基準位置と第2基準位置との相対的な位置関係が変わらず固定であることを意味し、第1基準位置と第2基準位置とが一緒に主軸半径方向に移動してもよい。ただし、第1基準位置と第2基準位置とは、機械の熱変位によっては変わる。このため、第1基準位置と第2基準位置とは、前記主軸半径方向に対して、互いに必ずしも一致していなくても良いが、熱変位の影響が無視できる適度に近接し位置、または熱変位の影響を精度良く補正できる程度に近接した位置であることが望ましい。
【0010】
この発明の工作機械は、主軸台と刃物台のいずれをどの方向に移動させるようにした構成であるかによって、次の第1〜第4の構成の工作機械に大別される。これら第1〜第4の構成の工作機械は、いずれもこの発明の前記基本構成を備える。
【0011】
この発明の第1の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台が、ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられた送り台に、主軸軸心方向に移動自在に搭載され、前記刃物台が前記ベッド上に位置固定に設けられた形式である。前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記送り台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記ベッド上に位置固定の第1基準位置に設けられる。前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が前記刃物台に取付けられ、他方が前記ベッド上に位置固定の第2基準位置に設けられる。
【0012】
この構成の場合、主軸側位置計測手段のスケールの目盛りを読取部で読み取った値は、送り台の移動した位置によって変わり、ベッド等の熱変位によって変わるが、第1基準位置と主軸軸心間の現在の実際の距離が読み取り値となる。刃物側位置計測手段の計測値は、本来は一定の値となるが、機械の熱変位があれば、その変位が加わった値となり、第2基準位置に対する刃物台の位置、しいては刃物台に取付けられた工具の刃先位置の現在の実際の値を示す。第1基準位置と第2基準位置は、互いに位置固定である。このため、前記演算手段により、主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから主軸軸心・刃先間相対距離を演算することで、精度良く、熱変位等を含む実際の主軸軸心・刃先間相対距離を求めることができる。
【0013】
この発明の第2の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台がベッド上に位置固定に設けられ、前記刃物台が、前記ベッド上に半径方向送り台および軸方向送り台を介して設置されて、前記半径方向送り台は前記ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられ、前記軸方向送り台は前記半径方向送り台上に主軸軸心方向に移動自在に搭載され、前記刃物台は前記軸方向送り台に搭載された形式である。前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第1基準位置に設けられる。前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記軸方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられる。
【0014】
この構成の場合、第1基準位置は半径方向送り台上の位置となり、第2基準位置は軸方向送り台上の位置となるとなるが、軸方向送り台は半径方向送り台上に軸方向移動自在に設置されているため、第1基準位置と第2基準位置は、互いに一緒に、半径方向送り台と共に移動することになり、第1基準位置と第2基準位置との相対位置は固定である。半径方向送り台の移動により、主軸軸心に対して刃物台が移動するが、半径方向送り台の実際の位置が主軸側位置計測手段によって計測され、半径方向送り台に対する刃物台の機械熱変位等が刃物側位置計測手段の計測からわかる。そのため、この構成においても、前記演算手段により、主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから主軸軸心・刃先間相対距離を演算することで、精度良く、熱変位等を含む実際の主軸軸心・刃先間相対距離を求めることができる。
【0015】
この発明の第3の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台がベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられ、前記刃物台が、前記ベッド上に主軸軸心方向に移動自在に設けられた軸方向送り台に搭載された形式である。前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記ベッド上に位置固定の第1基準位置に設けられる。前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記軸方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられる。
【0016】
この構成の場合、主軸台が主軸半径方向に移動し、刃物台が主軸軸方向に移動することになるが、主軸側位置計測手段により、第1基準位置に対する主軸軸心の実際の位置が計測され、刃物側位置計測手段により、第2基準位置に対する刃物台の実際の位置が計測される。そのため、この構成においても、前記演算手段により、主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから主軸軸心・刃先間相対距離を演算することで、精度良く、熱変位等を含む実際の主軸軸心・刃先間相対距離を求めることができる。
【0017】
この発明の第3の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台が、ベッド上に主軸軸心方向に移動可能に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設置された半径方向送り台に搭載された構成である。前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第1基準位置に設けられる。前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられる。
【0018】
この構成の場合、第1基準位置および第2基準位置は、共に半径方向送り台上の位置となる。半径方向送り台は、主軸半径方向に移動するが、半径方向送り台上の第1基準位置に対する実際の主軸軸心の位置が主軸側位置計測手段によって計測され、半径方向送り台に対する刃物台の機械熱変位等が刃物側位置計測手段の計測からわかる。そのため、この構成においても、前記演算手段により、主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから主軸軸心・刃先間相対距離を演算することで、精度良く、熱変位等を含む実際の主軸軸心・刃先間相対距離を求めることができる。
【0019】
この発明における第1の構成の工作機械および第3構成の工作機械のように、主軸台が直接または間接的に主軸半径方向へ移動可能である場合、前記主軸側位置計測手段の主軸側スケールは、前記チャックに把持され加工可能な最大径のワークの外径に前記刃物台の工具の刃先が接する位置に前記主軸台が位置するときに前記主軸側読取部が対応する位置から、前記主軸の軸心が前記工具の刃先と同じ前記主軸半径方向位置となるときに前記主軸側読取部が対応する位置である原点位置までの範囲に、またはその範囲内の1点もしくは複数の点で最大熱変位量が計測できる長さの範囲に、前記目盛りが付けられていれば良い。
前記のように、主軸側位置計測手段の主軸側スケールにつき必要不可欠な最小の範囲にだけ目盛りを付ければ、主軸台の移動に対応して必要な位置計測を行うことができる。目盛りの範囲を最小にすることで、コスト低下が図れる。
【0020】
また、この発明における第2の構成の工作機械および第4構成の工作機械のように、刃物台が直接または間接的に主軸半径方向へ移動可能である場合、前記主軸側位置計測手段の主軸側スケールは、前記チャックに把持され加工可能な最大径のワークの外径に前記刃物台の工具の刃先が接する位置に前記刃物台が位置するときに前記主軸側読取部が対応する位置から、前記主軸の軸心が前記工具の刃先と同じ前記主軸半径方向位置となるときに前記主軸側読取部が対応する位置である原点位置までの範囲に、またはその範囲内の1点もしくは複数の点で最大熱変位量が計測できる長さの範囲に、前記目盛りが付けられていれば良い。
前記のように、主軸側位置計測手段の主軸側スケールにつき必要不可欠な最小の範囲にだけ目盛りを付ければ、主軸台の移動に対応して必要な位置計測を行うことができる。目盛りの範囲を最小にすることで、コスト低下が図れる。
【0021】
この発明の前記各構成の工作機械において、移動命令の指令値に従って前記刃物台を前記主軸台に対して相対移動させる制御装置を設け、この制御装置に、前記指令値に対して、前記演算手段が求めた主軸軸心位置・刃先位置間相対距離によって補正を行う熱変位補正手段を設けても良い。
ワーク径の加工精度は、主軸軸心に対する工具の刃先位置の精度によって定まる。前記のように、主軸軸心位置・刃先位置間相対距離を精度良く計測することができれば、刃物台に対して主軸台を、または主軸台に対して刃物台を相対移動させる指令値に対して、前記演算手段で求められた主軸軸心位置・刃先位置間相対距離によって補正を行うことで、熱変位に対して精度の良い加工を行うことができる。
一般的に、一日における工作機械の温度変化は、一定ではない。この発明の構成では、その計測時の熱変位状態での主軸軸心位置・刃先位置間相対距離が正確に検出されることになる。したがって、適宜の時間をおいて計測を行い、計測後に前記熱変位補正手段による補正を行うことで、精度の良い加工が行える。
【0022】
この発明の第5の構成の工作機械は、ワークを把持するチャックを先端に有する主軸を回転自在に支持した主軸台と、工具が取付けられた刃物台とを、互いに主軸半径方向と主軸軸心方向とに相対的に移動可能にベッドに設置した工作機械において、
前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が第1基準位置に設けられてこの第1基準位置に対する前記主軸半径方向の主軸軸心位置を計測する主軸側位置計測手段と、
第2基準位置に対する前記主軸半径方向の前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段とを設け、
前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定とし、 前記主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから前記主軸半径方向における前記主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離を演算し、または前記主軸台と刃物台との主軸半径方向の相対移動量の補正に用いる値を演算する演算手段を設けたことを特徴とする。
【0023】
この構成の工作機械は、前記基本構成の工作機械において、刃物側位置計測手段を、スケールを有する構成に限定せず、「第2基準位置に対する前記主軸半径方向の前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段」とした発明である。刃物側位置計測手段としては、スケールを有する構成の他に、温度を計測して刃物台の位置を計測する構成、例えば、前記刃物台の温度を計測する温度計測手段と、この温度計測手段の温度計測値から、前記第2基準位置に対する前記主軸半径方向の前記刃物台の位置を求める温度対応刃物側位置計算手段とでなるものとできる。
このように構成した場合も、主軸側位置計測手段により、第1基準位置に対する主軸半径方向の主軸軸心位置が計測し、かつ刃物側位置計測手段により、第2基準位置に対する刃物台の位置を計測し、主軸軸心位置および刃物台の位置の両方を計測するようにしたため、主軸軸心・刃先間相対距離が精度良く計測できる。
【発明の効果】
【0024】
この発明における基本構成となる工作機械は、ワークを把持するチャックを先端に有する主軸を回転自在に支持した主軸台と、工具が取付けられた刃物台とを、互いに主軸半径方向と主軸軸心方向とに相対的に移動可能にベッドに設置した工作機械において、前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が第1基準位置に設けられてこの第1基準位置に対する前記主軸半径方向の主軸軸心位置を計測する主軸側位置計測手段と、前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台またはこの刃物台と共に主軸半径方向に移動する部材に設置され、他方が第2基準位置に設けられてこの第2基準位置に対する前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段とを設け、前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定とし、前記主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから前記主軸半径方向における前記主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離を演算し、または前記主軸台と刃物台との主軸半径方向の相対移動量の補正に用いる値を演算する演算手段を設けたため、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【0025】
この発明の第1の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台は、ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられた送り台に、主軸軸心方向に移動自在に搭載され、前記刃物台は前記ベッド上に位置固定に設けられ、前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記送り台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記ベッド上に位置固定の第1基準位置に設けられ、前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が前記刃物台に取付けられ、他方が前記ベッド上に位置固定の第2基準位置に設けられたため、主軸移動型でありながら、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【0026】
この発明の第2の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台はベッド上に位置固定に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に半径方向送り台および軸方向送り台を介して設置されて、前記半径方向送り台は前記ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられ、前記軸方向送り台は前記半径方向送り台上に主軸軸心方向に移動自在に搭載され、前記刃物台は前記軸方向送り台に搭載され、前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第1基準位置に設けられ、前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記軸方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられたため、刃物台移動型でありながら、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【0027】
この発明の第3の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台はベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に主軸軸心方向に移動自在に設けられた軸方向送り台に搭載され、前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記ベッド上に位置固定の第1基準位置に設けられ、前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記軸方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられたため、主軸台および刃物台の双方移動型でありながら、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【0028】
この発明の第4の構成の工作機械は、前記基本構成において、前記主軸台は、ベッド上に主軸軸心方向に移動可能に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設置された半径方向送り台に搭載され、前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第1基準位置に設けられ、前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられたため、主軸台および刃物台の双方移動型でありながら、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【0029】
第1または第3の構成の工作機械において、前記主軸側位置計測手段のスケールは、前記チャックに把持され加工可能な最大径のワークの外径に前記刃物台の工具の刃先が接する位置に前記主軸台が位置するときに前記読取部が対応する位置から、前記主軸の軸心が前記工具の刃先と同じ前記主軸半径方向位置となるときに前記読取部が対応する位置である原点位置までの範囲に、またはその範囲内の1点もしくは複数の点で最大熱変位量が計測できる長さの範囲に前記目盛りが付けられている場合は、主軸側位置計測手段を、主軸台の移動に対応して必要な位置計測を行える構成としつつ、なるべく低コストで製作できる。
【0030】
第2または第4の構成の工作機械において、前記主軸側位置計測手段のスケールは、前記チャックに把持され加工可能な最大径のワークの外径に前記刃物台の工具の刃先が接する位置に前記刃物台が位置するときに前記読取部が対応する位置から、前記主軸の軸心が前記工具の刃先と同じ前記主軸半径方向位置となるときに前記読取部が対応する位置である原点位置までの範囲に、またはその範囲内の1点もしくは複数の点で最大熱変位量が計測できる長さの範囲に前記目盛りが付けられている場合は、主軸側位置計測手段を、刃物台の移動に対応して必要な位置計測を行える構成としつつ、なるべく低コストで製作できる。
【0031】
この発明の第5の構成の工作機械は、ワークを把持するチャックを先端に有する主軸を回転自在に支持した主軸台と、工具が取付けられた刃物台とを、互いに主軸半径方向と主軸軸心方向とに相対的に移動可能にベッドに設置した工作機械において、前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が第1基準位置に設けられてこの第1基準位置に対する前記主軸半径方向の主軸軸心位置を計測する主軸側位置計測手段と、第2基準位置に対する前記主軸半径方向の前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段とを設け、前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定とし、 前記主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから前記主軸半径方向における前記主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離を演算し、または前記主軸台と刃物台との主軸半径方向の相対移動量の補正に用いる値を演算する演算手段を設けたため、主軸の軸心と工具の刃先間の主軸半径方向の距離を精度良く計測し、補正することができて、機械精度を左右する最大の要因である機械の寸法変化への処置が行え、加工精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の第1の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図2】同工作機械本体の斜視図である。
【図3】同工作機械の加工動作を示す部分平面図である。
【図4】同工作機械の主軸台部分の正面図である。
【図5】同工作機械の刃物台および工具を示す部分省略側面図である。
【図6】常温時の主軸軸心位置・刃先位置間相対距離と加工時の主軸軸心位置・刃先位置間相対距離を示す説明図である。
【図7】この発明の第2の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図8】この発明の第3の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図9】この発明の第4の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図10】同工作機械の一部を示す斜視図である。
【図11】この発明の第5の実施形態に係る工作機械おける工作機械本体の平面図と制御装置の概念構成のブロック図とを組み合わせた説明図である。
【図12】従来の工作機械における工作機械本体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図6と共に説明する。この工作機械は数値制御式の工作機械であり、機械部分である工作機械本体1と、この工作機械本体1を制御する制御装置2とで構成される。工作機械本体1は、主軸移動型の旋盤であり、ベッド3上に送り台4を介して設置された主軸台5に、主軸6が回転自在に支持され、ベッド3上に刃物台7が、支持台26を介して設置されている。支持台26は、ベッド3に固定して設置されている。刃物台7はタレットからなり、支持台26に回転割出可能に支持されている。
【0034】
送り台4は、ベッド3に設けられたX軸案内9上を、主軸6の軸心Oに対して直交する水平な主軸半径方向(X軸方向)に移動自在に設置され、ベッド3上に設置されたサーボモータ等のモータ10とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構11とからなるX軸移動機構12によって左右に進退駆動される。前記送りねじ機構11は、ねじ軸とナットとからなる。図4のように、主軸台5は、送り台4上に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向(Z軸方向)に移動自在に設置され、送り台4上に設置されたモータ14(図1、図2)とその回転出力を直線動作に変換する送りねじ機構15からなるZ軸移動機構16によって前後に進退駆動される。前記送りねじ機構15は、ねじ軸とナットとからなる。主軸6の回転駆動は、主軸台5に内蔵の主軸モータ(図示せず)よって行われる。主軸6の前端にはチャック17が着脱可能に設けられている。チャック17は、チャック半径方向に移動する複数のチャック爪17aにより、ワークW(図3)を把持可能である。
【0035】
刃物台7は、支持台26に対してX軸方向に沿う水平な回転中心T回りに回転自在であり、図5に示すように、外周部に円周方向に並ぶ複数の工具取付部7aを有している。各工具取付部7aに、工具ホルダ18aを介してバイトや回転工具等の工具18が取付けられる。図1に示すように、刃物台7は、軸受8を介して支持台26に回転自在に支持された中空軸7cの先端に固定されており、割出用モータ(図示せず)で中空軸7cを回転させることにより、任意の工具取付部7aが主軸6に対向する位置に旋回割出しされる。刃物台7は、その正面形状が、図5に示すような多角形状であっても、また円形であっても良い。なお、図5では工具18は一部の工具取付部7aに取付けられたもののみを示し、他は図示を省略してある。
【0036】
図1、図2において、この実施形態の工作機械は、前記基本構造の工作機械本体1に、主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30を設けたものである。
【0037】
主軸側位置計測手段20は、第1基準位置P1に対する前記主軸半径方向(X軸方向)の主軸軸心Oの位置を計測する手段であり、スケール21と読取部22とからなる。スケール21は棒状の部材であり、送り台4における主軸半径方向位置が主軸6の軸心Oの付近の箇所に基部21aが取付けられ、この基部21aから主軸半径方向に沿って延びている。なお、前記「軸心付近」とは、軸心位置を含む意味であり、スケール21の基部21aを軸心位置に取付けた場合に比べて、熱変位で生じる計測結果の違いが無視できる程度に離れた範囲を「軸心付近」と称している。以下で言う「軸心付近」も、前記と同様な意味である。スケール21は、図示の例では送り台4の前面にスペース部材25を介して取付けられているが、他の箇所、例えば送り台4の上面または下面の前端付近に取付けてもよい。スケール21の読取部22を向く面の所定の範囲には、主軸半径方向に沿って目盛り23が付けられている。読取部22は、スケール21の目盛り23を読み取るものであり、ベッド3上の位置となる第1基準位置P1に、取付部材24を介して位置固定に取付けられている。例えば、読取部22は光学式のものであり、検知用光を投光しその反射光を受光することで目盛り23を読み込む。あるいは、読取部22は、磁気式のものであってもよい。
【0038】
スケール21における目盛り23の付けられた範囲は、チャック17aに把持され加工可能な最大径のワークW(図3)の外径に刃物台7の工具18の刃先が接する位置に主軸台5が位置するときに読取部22が対応する位置から、主軸6の軸心Oが前記工具12の刃先と同じ主軸半径方向位置となるときに読取部22が対応する位置である原点位置までの範囲、またはその範囲内の1点もしくは複数の点で最大熱変位量が計測できる長さの範囲とされている。この実施形態のように、主軸台5が主軸半径方向へ移動可能である場合に、前記のようにスケール22の目盛り23を必要不可欠な最小の範囲にだけ付ければ、主軸台5の移動に対応して必要な位置計測を行うができる。目盛り23の範囲を最小にすることで、コスト低下が図れる。さらに、加工時での主軸台5の移動に対応する範囲については目盛り23を細かくし、加工時以外、例えばワーク交換、チャック交換等の際にだけ主軸台5が移動する範囲については目盛り23を粗くすれば、より一層のコスト低下を図れる。目盛り23をスケール22の全長にわたって設けてもよい。
【0039】
刃物側位置計測手段30は、第2基準位置P2に対する刃物台7の前記主軸半径方向(X軸方向)の位置を検出する手段であり、スケール31と読取部32とからなる。スケール31は丸棒状の部材で、基部31aが刃物台7の回転中心に取付けられ、主軸半径方向すなわち回転中心Tに沿って中空軸7cを貫通して延びている。スケール31の基部31aは刃物台7に固定であるが、基部31a以外は中空軸7cに対し回転自在かつ進退自在である。スケール31の中空軸7cから突出した端部に、読取部22に対応させて、主軸半径方向に並ぶ目盛り33が全周に付けられている。読取部32は、スケール31の目盛り33を読み取る円環状のものであり、ベッド3上の位置となる第2基準位置P2に、取付部材34を介して位置固定に取付けられている。読取部32も、光学式のものであっても、磁気式のものであってもよい。
【0040】
主軸側位置計測手段20の読取部22および刃物側位置計測手段30の読取部32は、互いに主軸半径方向位置を完全に一致させるか、または両読取部22,32の主軸半径方向位置の差による主軸半径方向の熱変位を無視または推定できる程度に揃える。すなわち第1基準位置P1と第2基準位置P2との主軸半径方向位置を揃える。
【0041】
主軸側位置計測手段20の読取部22および刃物側位置計測手段30の読取部32の各読取値は、制御装置2の演算手段40に入力される。この実施形態では、演算手段40が制御装置2に設けられているが、制御装置2とは別に設けても良い。
演算手段40は、主軸側位置計測手段20の読取部22の読み取り値と、刃物側位置計測手段30の読取部32の読み取り値とから、前記主軸半径方向(X軸方向)における主軸軸心Oと刃物台7の特定位置との間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する手段である。刃物台7の特定位置は、刃物台7上の位置、および刃物台7に取付けられる工具18上の位置であって、特定した位置であれば、何処であっても良いが、この実施形態では、刃物台7に取付けた標準の工具7の刃先位置を特定位置としている。前記標準の工具7は任意の工具であっても良く、例えば、この工作機械で最も多く使用される工具7とされる。
【0042】
図6に、常温時の主軸台5および刃物台7の位置(実線)と、昇温時の主軸台5および刃物台7の位置(二点鎖線)とを示す。常温時(例えば15°C)の主軸軸心・刃先間相対距離L0は、工作機械および工具18の既知の寸法から求まる。演算手段40は、主軸側位置計測手段20の読取部22および刃物側位置計測手段30の読取部32の各読取値から昇温による主軸台5の主軸半径方向の熱変位量ΔL1および刃物台7の主軸半径方向の熱変位量ΔL2を求め、その熱変位量ΔL1,ΔL2を常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に加算することで、運転中の主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する。
【0043】
さらに詳しく説明する。
主軸側位置計測手段20は、スケール21の目盛り23を読取部22で読み取る。読取部22はベッド3上に位置固定に取付けられているため、読取部23の読取値から、スケール21が取付けられた送り台4の主軸半径方向位置が分かる。この送り台4の位置に、送り台4と主軸台5の位置関係を加えることで、主軸台5の主軸半径方向位置が分かる。すなわち、第1基準位置P1と主軸軸心Oとの間の距離L1が分かる。送り台4は加工時に主軸半径方向に移動するが、その移動量を別の検出手段(図示せず)で検出し、検出された移動量を加算することで、常に主軸台5の主軸半径方向位置を求めることができる。その主軸台5の主軸半径方向位置から、常温時に対する加工時の主軸半径方向の熱変位量ΔL1が求まる。
【0044】
また、刃物側位置計測手段30は、スケール31の目盛り33を読取部32で読み取る。読取部32はベッド3上に位置固定に取付けられているため、読取部32の読取値から、スケール31が取付けられた刃物台7の主軸半径方向位置が分かる。すなわち、第2基準位置P2と刃物台7の特定位置(例えば、工具18の刃先位置)との間の距離L2が分かる。その刃物台7の主軸半径方向位置から、常温時に対する加工時の主軸半径方向の熱変位量ΔL2が求まる。なお、ここでは、刃物台7の熱変位量を、刃物台7に取付けられた工具18の刃先位置の熱変位量と見なしているが、工具刃先位置の熱変位量は、刃物台7の熱変位量に対して適宜の補正を加えて求めるようにしても良い。
【0045】
先に述べたように、演算手段40は、これらの求められた熱変位量ΔL1,ΔL2を、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に加算することで、運転中等の昇温時の主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する。この主軸軸心・刃先間相対距離Lは、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に熱変位による寸法変化が加味されたものであり、現時点の正確な距離を示している。演算手段40の演算結果は、演算手段40または熱変位補正手段43(図1)に記憶される。主軸軸心・刃先間相対距離Lを求めるのに代えて、主軸軸心・刃先間相対距離Lの変化を求めてもよい。
【0046】
図1において、制御装置2はコンピュータ式の数値制御装置からなり、加工プログラム41の各命令を、演算制御部42で解読して実行し、工作機械本体1の各駆動源に制御命令を与える。加工プログラム41のX軸方向の移動命令41aは、移動先を示す指令値の位置へ刃物台7をX軸方向へ相対的に移動させる命令であり、演算制御部42により、X軸のモータ10を駆動する命令として出力される。
【0047】
演算制御部42は、熱変位補正手段43を有していて、加工プログラム41におけるX軸方向の移動命令41aの指令値に対し、モータ10へ出力する指令値を、前記演算手段40によって算出された主軸軸心・刃先間相対距離Lを用いて補正する。熱変位補正手段43は、例えば、演算手段40から主軸軸心・刃先間相対距離Lが入力されると、その値が更新されるまでは常に記憶しておき、その記憶した値を用いて補正を行うものとされる。この場合、主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30が位置計測を行い、演算手段40によって算出される主軸軸心・刃先間相対距離Lの値が更新されると、その後に行う熱変位補正手段43の補正量が変わることになる。熱変位補正手段43による補正量については、後で説明する。
【0048】
なお、熱変位補正手段43は、スイッチ操作等による所定の入力により能動状態と非能動状態とに切換可能とされる。また、主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30の計測動作は、制御装置2に付属の操作盤(図示せず)の入力操作によって手動で行うようにしても良く、また計測用のプログラム(図示せず)を設けておいて、その計測用プログラムを制御装置2に実行させることで一連の計測動作を自動で行うようにしても良い。計測を自動で行うようにする場合、タイマ(図示せず)等で設定時刻に計測を行うようにしても、また開始用スイッチをオペレータがオンすることで、一連の自動計測が開始されるようにしても良い。
【0049】
熱変位補正手段43は、演算手段40または熱変位補正手段43に記憶されている主軸軸心・刃先間相対距離Lに応じて、加工プログラム41のX軸移動命令41aを演算制御部42で実行し、図3のように加工するときに、そのX軸移動命令41aの指令値を補正する。この補正は、例えば、主軸軸心・刃先間相対距離Lと設計寸法との差を、前記指令値に加算する補正とする。なお、熱変位補正手段43は、例えば前記演算手段40の計算結果に対して補正量を定める演算式またはテーブル等の関係設定手段を有していて、この手段を用いて定めた補正量によって前記指令値を補正するようにしても良い。前記関係設定手段で定める関係は、例えば、実際の運転結果等に基づき、演算手段40で求められる距離と指令値との差に対する補正量等の関係を定めたものとしても良い。このように熱変位補正手段43により補正を行うことにより、熱変位に対応して精度良く補正できて、加工精度が向上する。
なお、一日のうち、例えば1時間おき等の設定時間毎、あるいは設定時刻毎に計測を行い、演算手段40の演算結果を更新しておくことで、適切な熱変位補正が行える。
【0050】
図7は、この発明の第2の実施形態を示す。この工作機械の工作機械本体1は、刃物台移動型の旋盤であり、主軸台5はベッド3上に位置固定に設けられ、刃物台7はベッド3上に半径方向送り台4Aおよび軸方向送り台27を介して主軸半径方向(X軸方向)および主軸軸心方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。半径方向送り台4は、ベッド3に設けられたX軸案内9上を水平な主軸半径方向に移動自在に設置され、X軸移動機構12によって進退駆動される。軸方向送り台27は、半径方向送り台4A上に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向に移動自在に設置され、Z軸移動機構16によって進退駆動される。刃物台7はタレットからなり、軸方向送り台27に、X軸方向に沿う水平な回転中心T回りに回転自在に設置されている。前記以外の工作機械本体1の基本構造は、第1の実施形態と同じであり、対応する部分については同一符号を付して表し説明は省略する。
【0051】
この実施形態の工作機械も、工作機械本体1に主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30が設けられている。
【0052】
主軸側位置計測手段20は、第1基準位置P1に対する主軸半径方向(X軸方向)の主軸軸心Oの位置を計測する手段であり、スケール21と読取部22とからなる。スケール21は棒状の部材であり、主軸台5における主軸半径方向位置が主軸6の軸心付近の箇所に基部21aが取付けられ、この基部21aから主軸半径方向に沿って延びている。スケール21の基部21aは、主軸台5に対し、例えば上面に取付けられているが、下面または前面に取付けられていても、あるいは主軸台5の内部に取付けられていてもよい。スケール21の読取部22を向く面の読取部22に対応する箇所に、主軸半径方向に並ぶ目盛り23が付けられている。読取部22は、スケール21の目盛り23を読み取るものであり、第1基準位置P1となる半径方向送り台4の特定位置に、取付部材24Aを介して取付けられている。したがって、この実施形態では第1基準位置P1は可動であり、半径方向送り台4と共に移動する。半径方向送り台4Aの前記特定位置は、例えば半径方向送り台4のX軸方向幅の中心位置とされる。
【0053】
刃物側位置計測手段30は、第2基準位置P2に対する刃物台7の前記主軸半径方向(X軸方向)の位置を検出する手段であり、スケール31と読取部32とからなる。スケール31は棒状の部材であり、刃物台7に基部31aが取付けられ、この基部31aから主軸半径方向に沿って延びている。スケール31の読取部32を向く面の所定の範囲には、主軸半径方向に並ぶ目盛り33が付けられている。目盛り33の付けられた範囲は、第1の実施形態で説明したのと同様の範囲である。読取部32は、スケール31の目盛り33を読み取るものであり、第2基準位置P2に設置されている。第2基準位置P2は、この例では、軸方向送り台27上の特定位置に定められていて、読取部32は軸方向送り台27に取付部材(図示せず)を介して、または直接に固定されている。前記特定位置は、軸方向送り台27上に任意に特定した位置であれば良いが、この実施形態では第1基準位置P1と同じX方向位置としてある。
【0054】
前記同様、読取部22および読取部32の読取値が演算手段40に入力され、演算手段40により、常温時に対する加工時の主軸台5の主軸半径方向の熱変位量ΔL1(図6)と、常温時に対する加工時の刃物台7の主軸半径方向の熱変位量ΔL2(図6)とが求められ、これらの熱変位量ΔL1,ΔL2を、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0(図6)に加算することで、運転中等の昇温時の主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算する。この場合も、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に熱変位による寸法変化が加味された正確な主軸軸心・刃先間相対距離Lを得ることができ、この主軸軸心・刃先間相対距離Lを用いて、熱変位補正手段43により補正を行うことにより、熱変位に対応して精度良く補正できて、加工精度が向上する。
【0055】
図8は、この発明の第3の実施形態を示す。この工作機械の工作機械本体1は、主軸台および刃物台が共に移動する型の旋盤である。主軸台5はベッド3上に主軸半径方向(X軸方向)に移動可能に設けられ、刃物台7はベッド3上に軸方向送り台27Bを介して主軸軸心方向(Z軸方向)に移動可能に設けられている。主軸台5は、ベッド3に設けられたX軸案内9上を水平な主軸半径方向に移動自在に設置され、X軸移動機構12によって進退駆動される。軸方向送り台28は、ベッド3に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向に移動自在に設置され、Z軸移動機構16によって進退駆動される。刃物台7はタレットからなり、軸方向送り台27Bに、X軸方向に沿う水平な回転中心T回りに回転自在に設置されている。前記以外の工作機械本体1の基本構造は、第1および第2の実施形態と同じであり、対応部分については同一符号を付して表し説明は省略する。
【0056】
この実施形態の工作機械も、工作機械本体1に主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30が設けられている。
【0057】
主軸側位置計測手段20は、第1基準位置P1に対する主軸半径方向(X軸方向)の主軸軸心Oの位置を計測する手段であり、スケール21と読取部22とからなる。スケール21は棒状の部材であり、主軸台5における主軸半径方向位置が主軸6の軸心付近の箇所に基部21aが取付けられ、この基部21aから主軸半径方向に沿って延びている。スケール21の基部21aは、主軸台5に対し、例えば上面に取付けられているが、下面または前面に取付けられていても、あるいは主軸台5の内部に取付けられていてもよい。スケール21の読取部22を向く面の所定の範囲には、主軸半径方向に並ぶ目盛り23が付けられている。目盛り33の付けられた範囲は、第1の実施形態で説明したのと同様の範囲である。読取部22は、スケール21の目盛り23を読み取るものであり、ベッド3上の位置となる第1基準位置P1に、取付部材24を介して位置固定に取付けられている。
【0058】
刃物側位置計測手段30は、第2基準位置P2に対する刃物台7の前記主軸半径方向(X軸方向)の位置を検出する手段であり、スケール31と読取部32とからなる。スケール31は丸棒状の部材で、基部31aが刃物台7の中心に取付けられ、この基部31aから主軸半径方向に沿って中空軸7cを貫通して延びている。スケール31の中空軸7cから突出した端部には、主軸半径方向に並ぶ目盛り33が全周に付けられている。スケール31は、刃物台本体7bと一体に回転する。読取部32は、スケール31の目盛り33を読み取るものであり、第2基準位置P2に設置されている。第2基準位置P2は、この例では、軸方向送り台28に対して位置固定の特定位置に定められていて、読取部32は軸方向送り台28上の第2基準位置P2に取付部材34Bを介して固定されている。前記特定位置は、軸方向送り台28に対して位置固定で任意に特定した位置であれば良いが、この実施形態では第1基準位置P1と同じX方向位置としてある。
【0059】
この実施形態も、前記各実施形態と同様、読取部22および読取部32の読取値が演算手段40に入力され、演算手段40により前記同様の演算処理を行うことで、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に熱変位による寸法変化が加味された正確な主軸軸心・刃先間相対距離Lを得ることができる。さらに、この主軸軸心・刃先間相対距離Lを用いて、熱変位補正手段43により補正を行うことにより、熱変位に対応して精度良く補正できて、加工精度が向上する。
【0060】
図9は、この発明の第4の実施形態を示す。この工作機械の工作機械本体1も、主軸台および刃物台が共に移動する型の旋盤であるが、前記第3の実施形態とは逆に、主軸台5がベッド3上に主軸軸心方向(Z軸方向)に移動可能に設けられ、刃物台7がベッド3上に半径方向送り台4Cを介して主軸半径方向(X軸方向)に移動可能に設けられている。主軸台5は、ベッド3に設けられたZ軸案内13上に主軸軸心方向に移動自在に設置され、Z軸移動機構16によって進退駆動される。半径方向送り台4Cは、ベッド3に設けられたX軸案内9上を水平な主軸半径方向に移動自在に設置され、X軸移動機構12によって進退駆動される。刃物台7はタレットからなり、半径方向送り台4Cに、X軸方向に沿う水平な回転中心T回りに回転自在に設置されている。前記以外の工作機械本体1の基本構造は、前記第1〜第3の実施形態と同じであり、対応部分については同一符号を付して表し説明は省略する。
【0061】
この実施形態の工作機械も、工作機械本体1に主軸側位置計測手段20および刃物側位置計測手段30が設けられている。
【0062】
主軸側位置計測手段20は、第1基準位置P1に対する主軸半径方向(X軸方向)の主軸軸心Oの位置を計測する手段であり、スケール21と読取部22とからなる。スケール21は棒状の部材であり、ベッド3における主軸半径方向位置が主軸6の軸心付近の箇所に基部21aが取付けられ、この基部21aから主軸半径方向に沿って延びている。スケール21の読取部22を向く面の読取部22に対応する箇所に、主軸半径方向に並ぶ目盛り23が付けられている。読取部22は、スケール21の目盛り23を読み取るものであり、第1基準位置P1となる半径方向送り台4Cの特定位置に、取付部材24Cを介して取付けられている。したがって、この実施形態では第1基準位置P1は可動であり、半径方向送り台29と共に移動する。半径方向送り台4Cの前記特定位置は、例えば半径方向送り台29のX軸方向幅の中心位置とされる。
【0063】
図例では、図10に示すように、ベッド3上に固定した板状のベース部材13aの上に一対のZ軸案内13が設けられ、前記ベース部材13aの前面にスペース部材25を介してスケール21の基部21aを取付けてある。ベース部材13aの上面に、スケール21の基部21aを取付けてもよい。これらの場合、ベース部材13aはベッド3の一部を構成するものであり、ベッド3は、具体的にはベッド本体とその上に設けられたベース部材13aとでなる。ベース部材13aを設けずに、ベッド3にスケール21の基部21aを直接取付けても良い。
【0064】
刃物側位置計測手段30は、第2基準位置P2に対する刃物台7の前記主軸半径方向(X軸方向)の位置を検出する手段であり、スケール31と読取部32とからなる。スケール31は棒状の部材であり、軸方向送り台29に基部31aが取付けられ、この基部31aから主軸半径方向に沿って延びている。スケール31の読取部32を向く面の所定の範囲には、主軸半径方向に並ぶ目盛り33が付けられている。目盛り33の付けられた範囲は、第1の実施形態で説明したのと同様の範囲である。読取部32は、スケール31の目盛り33を読み取るものであり、第2基準位置P2に設置されている。第2基準位置P2は、この例では、軸方向送り台29上の特定位置に定められていて、読取部32は軸方向送り台29上の第2基準位置P2に(図示せず)を介して、または直接に固定されている。前記特定位置は、軸方向送り台27上に任意に特定した位置であれば良いが、この実施形態では第1基準位置P1と同じX方向位置としてある。
【0065】
この実施形態も、前記各実施形態と同様、読取部22および読取部32の読取値が演算手段40に入力され、演算手段40により前記同様の演算処理を行うことで、常温時の主軸軸心・刃先間相対距離L0に加工等による熱変位分が加味された正確な主軸軸心・刃先間相対距離Lを得ることができる。さらに、この主軸軸心・刃先間相対距離Lを用いて、熱変位補正手段43により補正を行うことにより、熱変位に対応して精度良く補正できて、加工精度が向上する。
【0066】
なお、前記各実施形態では、いずれも、主軸側位置計測手段20は、第1基準位置P1に読取部22を設け、主軸軸心Oの付近にスケール21の基部21aを設けたが、これとは逆に、第1基準位置P1にスケール21の基部21aを設け、主軸軸心Oの付近に読取部22を設けても良い。刃物側位置計測手段30についても、前記各実施形態では、いずれも、第2基準位置P2に読取部32を設け、刃物台7にスケール31の基部31aを設けたが、これとは逆に、第2基準位置P2にスケール31の基部31aを設け、刃物台7に読取部32を設けても良い。
【0067】
また、前記各実施形態では、いずれも演算手段40が主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算するものとしたが、演算手段40は、必ずしも主軸軸心・刃先間相対距離Lを演算することなく、主軸台5と刃物台7との主軸半径方向の移動量の補正に用いる値、例えば送り量指令値に対する補正量を演算するものとしても良い。その場合も、主軸軸心位置Oおよび刃物台7の位置の両方を計測するようにしたため、精度の良い補正が行え、結果として主軸軸心・刃先間相対距離を精度良く制御でき、加工精度の向上を図ることができる。
さらに、前記各実施形態では、いずれも刃物台7がタレット型の刃物台である場合につき説明したが、刃物台7は、櫛歯型等の他の形式のものであっても良い。
前記各実施形態は工作機械が旋盤であるが、この発明は工作機械がドリリングマシン、研削盤等である場合にも適用できる。
【0068】
図11は、この発明の第5の実施形態を示す。この実施形態は、図1〜図6に示した第1の実施形態において、刃物側位置計測手段30を、スケール31と読取部32とでなるものとする構成に代えて、図11の温度計測手段44と温度対応刃物側位置計算手段45とでなる刃物側位置計測手段30Aを設けたものである。温度計測手段44は、刃物台7の温度を計測する手段であり、熱電対等の温度計等からある。温度対応刃物側位置計算手段45は、温度計測手段7の温度計測値から、前記第2基準位置P2に対する前記主軸半径方向の刃物台7の位置を計算するものである。温度対応刃物側位置計算手段45は、温度計測手段44と刃物台7の主軸半径方向の位置との関係を設定したテーブルまたは演算式等からなる関係設定手段(図示せず)を有し、温度計測手段7の温度計測値と前記関係設定手段に設定された関係とから、刃物台7の主軸半径方向の位置を計算する。前記関係設定手段に設定されるテーブル,演算式等は、試験やシミュレーション等によって定めれたものとされる。温度対応刃物側位置計算手段45は、例えば制御装置2に設けられ、刃物側位置計測手段30Aの計測結果として前記演算手段40に入力される。第2基準位置P2は、例えば、ベッド3上における前記第1基準位置P1と同じ前記主軸半径方向の位置である。この実施形態におけるその他の構成は、第1の実施形態と同じである。
【0069】
刃物台7の位置と温度とには、定まった関係があるため、上記のように温度計測することによっても、刃物台7の主軸半径方向の位置が精度良く求められる。そのため、この実施形態においても、主軸6の軸心位置および刃物台7の位置の両方を計測して、主軸軸心・刃先間相対距離を精度良く計測することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…工作機械本体
2…制御装置
3…ベッド
4…送り台
4A,4C…半径方向送り台
5…主軸台
6…主軸
7…刃物台
12…X軸移動機構
16…Z軸移動機構
17…チャック
18…工具
20…主軸側位置計測手段
21…スケール
21a…基部
22…読取部
24,24A,24C…取付部材
26…支持台
27,27B…軸方向送り台
30,30A…刃物側位置計測手段
31…スケール
31a…基部
32…読取部
34,34B…取付部材
40…演算手段
43…熱変位補正手段
44…温度計測手段
45…温度対応刃物側位置計算手段
L,L0…主軸軸心・刃先間相対距離
L1,L2…距離
ΔL1,ΔL2…熱変位量
O…主軸の軸心
P1…第1基準位置
P2…第2基準位置
W…ワーク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持するチャックを先端に有する主軸を回転自在に支持した主軸台と、工具が取付けられた刃物台とを、互いに主軸半径方向と主軸軸心方向とに相対的に移動可能にベッドに設置した工作機械において、
前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が第1基準位置に設けられてこの第1基準位置に対する前記主軸半径方向の主軸軸心位置を計測する主軸側位置計測手段と、
前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台またはこの刃物台と共に主軸半径方向に移動する部材に設置され、他方が第2基準位置に設けられてこの第2基準位置に対する前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段とを設け、
前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定とし、 前記主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから前記主軸半径方向における前記主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離を演算し、または前記主軸台と刃物台との主軸半径方向の相対移動量の補正に用いる値を演算する演算手段を設けた、
工作機械。
【請求項2】
前記主軸台は、ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられた送り台に、主軸軸心方向に移動自在に搭載され、前記刃物台は前記ベッド上に位置固定に設けられ、
前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記送り台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記ベッド上に位置固定の第1基準位置に設けられ、
前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が前記刃物台に取付けられ、他方が前記ベッド上に位置固定の第2基準位置に設けられた
請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記主軸台はベッド上に位置固定に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に半径方向送り台および軸方向送り台を介して設置されて、前記半径方向送り台は前記ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられ、前記軸方向送り台は前記半径方向送り台上に主軸軸心方向に移動自在に搭載され、前記刃物台は前記軸方向送り台に搭載され、
前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第1基準位置に設けられ、
前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記軸方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられた 請求項1記載の工作機械。
【請求項4】
前記主軸台はベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に主軸軸心方向に移動自在に設けられた軸方向送り台に搭載され、
前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記ベッド上に位置固定の第1基準位置に設けられ、
前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記軸方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられた 請求項1記載の工作機械。
【請求項5】
前記主軸台は、ベッド上に主軸軸心方向に移動可能に設けられ、前記刃物台は、前記ベッド上に前記主軸半径方向に移動可能に設置された半径方向送り台に搭載され、
前記主軸側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第1基準位置に設けられ、
前記刃物側位置計測手段は、前記スケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記刃物台に取付けられ、他方が前記半径方向送り台上の位置となる第2基準位置に設けられた
請求項1記載の工作機械。
【請求項6】
前記主軸側位置計測手段のスケールは、前記チャックに把持され加工可能な最大径のワークの外径に前記刃物台の工具の刃先が接する位置に前記主軸台が位置するときに前記読取部が対応する位置から、前記主軸の軸心が前記工具の刃先と同じ前記主軸半径方向位置となるときに前記読取部が対応する位置である原点位置までの範囲に前記目盛りが付けられている請求項2または請求項4に記載の工作機械。
【請求項7】
前記主軸側位置計測手段のスケールは、前記チャックに把持され加工可能な最大径のワークの外径に前記刃物台の工具の刃先が接する位置に前記刃物台が位置するときに前記読取部が対応する位置から、前記主軸の軸心が前記工具の刃先と同じ前記主軸半径方向位置となるときに前記読取部が対応する位置である原点位置までの範囲に前記目盛りが付けられている請求項3または請求項5に記載の工作機械。
【請求項8】
ワークを把持するチャックを先端に有する主軸を回転自在に支持した主軸台と、工具が取付けられた刃物台とを、互いに主軸半径方向と主軸軸心方向とに相対的に移動可能にベッドに設置した工作機械において、
前記主軸半径方向に延びるスケールおよびこのスケールを読み取る読取部からなり、これらスケールの基端および読取部のいずれか一方が、前記主軸台またはこの主軸台と共に主軸半径方向に移動する部材における前記主軸半径方向の前記主軸軸心の付近に設置され、他方が第1基準位置に設けられてこの第1基準位置に対する前記主軸半径方向の主軸軸心位置を計測する主軸側位置計測手段と、
第2基準位置に対する前記主軸半径方向の前記刃物台の位置を計測する刃物側位置計測手段とを設け、
前記第1基準位置と第2基準位置とを前記主軸半径方向に対して互いに位置固定とし、 前記主軸側位置計測手段の読み取り値と前記刃物側位置計測手段の読み取り値とから前記主軸半径方向における前記主軸軸心と刃物台間の距離である主軸軸心・刃先間相対距離を演算し、または前記主軸台と刃物台との主軸半径方向の相対移動量の補正に用いる値を演算する演算手段を設けた、
工作機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−93069(P2011−93069A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251736(P2009−251736)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】