説明

工業廃水を処理するためのハイブリッド膜モジュール、システム及び工程

廃水流中の有機物質の含有量及び体積を低減する工程であって、廃水流をナノ濾過装置に接触させ、濃縮液及び水流である通過液を得る段階を備える。通過液は、存在する非沈殿性の金属イオンを含有する。その後、濃縮液を、好適に逆流洗浄可能な限外濾過装置に接触させ、必要に応じて、活性炭素にも接触させる。この工程は、廃水流から他の成分を除去する様々な工程のうちの一部であってもよい。モジュールは、(a)ナノ濾過装置、(b)好適に逆流洗浄可能な限外濾過装置、(c)限外濾過装置にナノ濾過装置の濃縮液を搬送するための導管及び必要に応じて活性炭素を含む容器を備える。また、このモジュールを含む廃水流処理用のシステムも本発明の一部を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業廃水を処理するためのハイブリッド膜モジュール、システム及び工程に関する。より詳しくは、有機物質及び無機物を含有する工業廃水を、(a)再利用するための高品質の水、(b)再利用するため或いは容易に廃棄処理を行なうための精錬並びに高度に濃縮された塩水、(c)分散されるとともに溶解された有機物質を含む高度に濃縮された最小体積量の水流(尚、この水流は、湿式酸化処理(WAO: wet air oxidation)或いは焼却処理といった酸化手法による最終的な破壊がなされる)に変えるハイブリッド膜モジュール、システム及び工程に関する。
【背景技術】
【0002】
化学、石油化学、製薬、金属、食品部門の全ての工場は、例えば、大量の廃水流を作り出している。廃水流は、懸濁物質並びに溶解された物質の混合液を含み、この懸濁物質と溶解された物質の分離は困難である。製薬、農薬或いは精製化学製品工場からの一般的な水性廃水流は、高濃度の有機物質(1000-1000 ppm TOC)を含有する。この有機物質のうち、0.5%乃至30%は無機物質である。
メタノール、エタノール、IPA、エチルアセテート、トルエン、キシレン、DMF、NMP、THF、ホルムアミド及び他の有機溶媒などといった溶媒によって例示される有機溶媒の濃度の変化が、廃水流中に存在する。飽和した溶媒或いは過飽和化した溶媒である廃水中並びに熱蒸留や膜濃縮工程による若干の廃水流の濃縮処理により、いくつかの無機物質及び有機物質が廃水中に現れる。これら無機物質及び有機物質は、固体スラリとして分離できる。この固体スラリは、廃水処理装置表面上に沈殿し、廃水処理装置に悪影響を及ぼす。廃水処理装置として、公共的に稼動する廃水処理工場(POWT: publicly operated wastewater treatment plant)、熱蒸発器、膜設備、フィルタ、制御装置及び配管路を挙げることができる。
上述の問題の多い廃水流の成分に加えて、廃水流は多くの場合、強い有機溶媒を含む。この有機溶媒は、逆浸透膜、電気透析設備或いはナノ濾過設備などの膜処理設備に対して、特に有害である。大抵の場合、これらの有機溶媒は飽和化された状態で存在し、膜設備中で濃縮されると、小滴或いは水流中に分散したコロイド状のエマルジョンの形態で分離する。実質的に、各溶媒小滴(トルエン、キシレン、塩化メチレン或いはクロロホルムなどの小滴)は、100%の純粋な有機溶媒となる。制御装置のプラスチック製の表面或いは膜表面に接触すると、これらの活性を有する有機溶媒の小滴は、小滴が接触するポリマ表面を攻撃し、この結果、不可逆的な損傷を生ずることとなる。このため、膜並びに装置の寿命が短くなる。
したがって、廃水システム中に、主要な処理段階(例えば、膜設備)前にこのような有機溶媒を除去する適切な前処理手段を設けることは重要である。廃水流の前処理に用いられる前処理設備の膜は、とりわけ、耐溶媒性に優れたものである必要がある。
【0003】
様々な化学工場からの工業廃水流は、有害な化合物を含む。この化合物は、環境並びに多くの生物学的廃水処理設備に悪影響を与える。この結果、公共的に稼動する廃水処理工場(POWT plant)、水輸送機構及び環境への化合物の排出は、環境に関する法律により厳格に制限されている。このように制限された化合物のリストには、とりわけ、吸着性有機ハロゲン(AOX: absorbable organic halogen)、アンモニア、重金属、リン酸塩及び自然に存在するバクテリアの活動を抑制し、自然発生的な有機物の分解並びに環境に害を与える他の有機物質及び無機物質が含まれる。
【0004】
廃水処理設備への無機物の排出は、法律により制限される。したがって、多くの場合、無機物は、法律条項にしたがって除去並びに排出される必要がある。無機物質の純度が基準値にある場合や、無機物質の検査証にしたがって、しばしば、無機物質は、高い価値を有する製品として回収される。このような回収可能な塩として、CaCl2, CaSO4, CaCO3, Al2(SO4)3及び他の塩を挙げることができる。
【0005】
公共的に稼動する廃水処理工場(POWT)並びに環境に引き起こす有害性のため、工業会社は、公共的に稼動する廃水処理工場(POWT)に廃水流を排出する前に、廃水流を処理することを法的に強制されている。多数認可されている処理として、生物学的廃水処理設備を挙げることができる。生物学的廃水処理設備において、特に順応した微生物(バクテリア)が、有機物をCO2及び同時に形成されるバイオマスに変換する。世界中で稼動する生物学的廃水処理設備には様々な種類がある。ある種の生物学的廃水処理設備は、大きな沈殿池中で稼動する。沈殿池中では、自然沈殿の結果として、バイオマスの分離が生ずる。他の手法として、プラスチック表面に固定化されたバクテリアを用いるものがある。生物設備を組み合わせたものもよく知られている。生物設備において、バクテリアが、処理された廃水から分離される。この分離は、精密濾過膜の限外濾過によりなされる。これらは、膜式生物学的反応器(MBR: Membrane Biological Reactor)と称される。
【0006】
工業的由来の多種の廃水は、生物学的処理設備に対して特有の困難性を生じさせる。この主要因子を以下に示す。
(a)非生物学的分解性有機物質の存在
これらの有機物質は、微生物により分解することが困難である。これらの有機物質のCO2への変換には、長期の保持期間、特別な条件が必要とされる。また、多くの場合において、これらの有機物質は、生物学的処理を受けた廃水流中においても完全な状態を維持し、主要な有機含有物(全有機炭素(TOC: Total Organic Carbon))となり、この有機含有物は、処理後の廃水中に残存することとなる。非分解性の有機物に起因するTOC値は、許容される排出限界値を大幅に超え、後処理設備への高い投資金額の主要な理由となっている。
(b)有毒性有機分子の存在
これらの分子は、公共的に稼動する廃水処理工場(POWT)に深刻な損害を与え、バイオマスを殺傷する。生物学的処理段階前に廃水からこれら分子を除去することが唯一の解決手法であることもある。
(c)工業廃水中の高濃度の無機物質の存在
工業廃水中の高濃度の無機物質の存在の結果、バイオマスが、高い浸透圧に抗する手段として、厚い細菌細胞膜を構築することとなる。このため、これら物質の変換に係る代謝速度が激減することとなる。
【0007】
これら因子は、工業廃水中の有機物質の低い水準の分解に起因するものである。生物学的処理を受けた排水中の有機物質の残存濃度は、1リットル当たり1000−3000ミリグラムの高さであることもしばしばである。尚、その一方で、公共的に稼動する廃水処理工場(POWT)への排出に要求される限界値は、それよりもかなり低い(TOC<200 mg/L, AOX<1ppm, 10 ppm未満のアンモニア)。
【0008】
これらを理由として、生物学的処理設備(蒸留処理工程)前或いは生物学的廃水処理設備(下流処理工程)後のいずれかにおいて、廃水洗練ユニットを取り付け、廃水流の質を改善する必要を生ずることはしばしばである。
【0009】
全体的な世界的立法傾向は、いわゆる液体排出量をゼロとする状況(ZLD: Zero Liquid Discharge)に向かっている。この状況とすることにより、全ての廃水液は、処理され、工場レベルで完全に再利用されることとなる。工場は、その敷地からの固形廃棄物のみの排出が許可されることとなる。残存する排出物の純度並びに排出物量は、廃棄に係る総合的なコストを決定する因子となる。高純度の固形無機物質は、低い廃棄価格となる一方で、高い水準の有機汚染物が混在する固形無機物質は、その廃棄に多大なコストが必要とされることとなる。
これらの理由に起因して、化学工業分野では、継続的に最良の技術を評価並びに探索し、工業廃水を処理している。これにより、最小の処理コストでの液体排出量をゼロ(ZLD: Zero Liquid Discharge)とする要求を満たそうとしている。
本明細書に開示されるハイブリッド膜技術(HMT: Hybrid Membrane Technology)に係る発明の課題の1つは、進歩的且つ費用効率の高い廃水処理技術を有する化学工業を提供し、ZLDの目標を達成することである。
【0010】
無機物、自然由来有機物(NOM: natural organic matter)、低分子重量の腐植物質、人工有機物質(SOC: synthetic organic substance)或いは味並びに臭気成分(T&O: taste and odor)を含有する工業的廃水の処理に用いられる一般的な従来技術に係る処理設備として、酸化処理、凝固処理、沈殿処理、砂濾過処理、粒状炭への吸着(GAC)或いは活性炭への吸着(PAC)を挙げることができる。
【0011】
精密濾過(MF: microfiltration)や限外濾過(UF: ultrafiltration)などの低圧駆動型膜技術の使用は、よく知られている。しかしながら、これらの膜器具は、低分子量の汚染物質を除去するのには効率的ではない。
【0012】
粉状活性炭(PAC: powdered activated carbon)を備えるUF及びMFの組合体が文献にて提案されている。これらの文献のうち1つが、一般的な例示的な参考文献として本明細書に挙げられる(S. Mozia, M. Tomaszewska in Desalination 162 (2004))。この開示される粉状活性炭とUF/MFの組合体において、膜は、障壁としてのみ機能し、処理後の液流に炭素粒子が入り込むことを防止する。活性炭は、低分子量の有機物を吸着することにより、処理後の通過液の質を保証する因子となる。UF循環ループは、水とPACを混合する反応装置としての役割並びに汚染物質を吸着する役割を担う。
【0013】
炭素粒子が、膜の流量の安定性に与える影響に関しては、意見が分かれている。ある文献では、炭素粒子の存在は、詰りを防止するのに役立つと言及しているのに対し、他の文献では、逆の作用について言及している。
【0014】
PACとUF/MF膜の開示された組合体を効率的な方法で稼動させるためには、添加される活性炭の量は、廃水中のTOC量をはるかに超えた程度に大きいものである必要がある。なぜなら、活性炭による有機物質の吸収能力には限界があるためである。この限界は、10−50%であり、即ち、0.5 gのTOCに対して、活性炭(AC: activated carbon)1 g当たり、0.1 g程度しか吸収しない。上記の参考文献によれば、9 mg/L未満の廃水中のTOC濃度において、廃水へのPACの投与量は、100 mg/Lに達する。この例において、PAC/TOC間の比率は、11を超える。
【0015】
他の文献(H.H.P. Fang et al. in Desalination 189 (2006))によれば、TOC濃度が100-900 mg/Lであるとき、活性汚泥に添加される活性炭の量は、1670 mg/Lであり、TOC当たりの活性炭の量は、17倍から2倍の範囲にある。
【0016】
活性炭の過大な使用は、費用的に高く、特に高いTOC負荷(例えば、1-3 g/L)であるときは、問題が多い。
本発明による開示では、本発明のハイブリッドシステム中で用いられる活性炭の量は、従来技術で述べられた値よりも有意に低い水準である。1000 mg TOCから3000 mg TOCの廃水流に添加される必要のある活性炭は、100 mg/Lから500 mg/Lしかない。したがって、AC/TOCの比率は、0.03から0.16の値の範囲に留まることとなる。驚くべきことに、このような低水準のACの使用量により、AC不存在下で測定される流量と比較して、安定的且つ高水準の膜流量を十分に保証することができる。
【0017】
粉状活性炭(PAC: powdered activated carbon)を用いる生物学的処理を組み合わせた廃水処理設備の使用は、技術文献或いは商業文献において既知のものである。これら文献のうち幾つかを、一般的な文献として例示する(PACT(登録商標) http://zimpro.usfilter.com; Use of the PACT(登録商標)System to treat Industrial Wastewaters for Direct Discharge or Reuse, John Meidl-USFilters, Zimpro Systems; The challenge of Treating a Complex Pharmaceutical Wastewater, Terrence Virnig, Joe Melka-Synthetech, Inc. and John Medl-USFilter Zimpro Systems)。
しかしながら、これら文献は、本発明にしたがう粉状或いは粒状の活性炭と、限外濾過、ナノ濾過或いは逆浸透膜とのハイブリッド使用における有利な組合せを示唆するものではない。
【0018】
いくつかの膜ユニットの組合体(例えば、限外濾過、活性炭、電気透析及び逆浸透)は、従来技術の文献において既知のものである。
米国特許第4,676,908号明細書(出願人:Ciepiela, et al.)は、エアレーション、気泡浮上分離、二層処理、活性炭吸着、電気透析及びイオン交換などといった一連の幾つかの連続的工程を開示する。この開示された装置は、本発明とは異なるものである。なぜなら、ユニットが連続的に配され、連続的な工程それぞれが、独立したユニットにより実行されるからである。したがって、このような構成では、相乗効果は生じ得ない。この開示される機構は、複雑であり、多量の化学物質を必要とし、多量の残渣を生み出す。この残渣の廃棄には、多額の費用が必要となる。
【0019】
米国特許第6,425,974号明細書(出願人:Bryant et al.)は、限外濾過及び/又はナノ濾過を用いた漂白剤工場から排出される廃水処理手法を開示する。この手法は、無機物質を含むことなく大量の有機物質を回収する。高分子量の有機物質が存在するため、4000ダルトンの分子量カットオフ値を備える比較的開口度のある膜を用いたとしても、濃縮流中の有機物質の濃度は有意に増加する。結果として、殆どの塩は、通過液中に入り込むこととなる。濃縮された有機物質のこの部分的に脱塩された液流は、漂白工程から生ずる追加的な有機物質の抽出を行なう役割を担う。したがって、この工程に必要とされる新鮮な水の体積は最小限化される。最適な濃度及び通過液の組成を達成するために、UF工程或いはNF工程の間の体積濃縮率は、たったの2から7.5という低い値に維持されることとなり、たったの50%から15%程度の体積減容となる。
【0020】
本発明は、有機物質の分離を目的とする。この有機物質は、可能な限り低分子量の有機物質を含むとともに、過度に多くの無機物を含まない。本発明は、更に、初期の廃水体積量に対して、好適には5%、更に好ましくは1%及び最も好ましくは0.1%未満まで、これらの有機物質を低減することを目的とする。有機物質を沈殿させ、限外濾過によりNF濃縮液から沈殿した有機物質を除去するまで、ナノ濾過濃縮液中の有機分子を濃縮することにより、この目的は達成される。結果として、有機物質を選択的に濃縮することができ、殆どの無機物をNF通過液に入り込ませることが可能となる。
一方で、米国特許第6,425,974号明細書は、限外濾過とナノ濾過を組み合わせることの可能性について言及するが、本発明と異なり、このような組合せの構造或いは目的については、何ら示唆を与えるものではない。
【0021】
米国特許第5,308,492号明細書(出願人:Loew et al.)は、工業廃水の処理手法を開示する。特に、この手法は、染色或いは食品加工などの工業的工程及び繊維或いは紙工業からの副産物の処理に関連する。これらの場合、副産物は、生物学的処理によっては、容易に分解しない。また、廃水を地表水に排出或いは公害の危険性を有することなく再利用するために、従来の処理手法を実行する前後に、廃水からこれら副産物が除去される必要がある。
【0022】
Loew等の特許は、ナノ濾過、化学酸化及び吸収の組合せを使用する手法を開示する。開示される一連の工程の目的は、非生物学的分解性分子を廃水流から除去し、高生物分解性を有する物質を分離することである。これにより、液流は、生物学的処理設備中で処理可能となる。炭素吸着は、特定の非生物学的分解性分子を液流から除去することを目的とする。この特許は、限外濾過について言及するが、ナノ濾過と限外濾過の組合せに関しては、何ら開示していない。
本発明は、米国特許第5,308,492号明細書の開示発明とも異なるものといえる。なぜなら、本発明は、比較的少量の活性炭のみを必要とし、本発明中で用いられるNF膜のカットオフ値は、多量の有機物質を濃縮液中で保持できる程度のものである。したがって、上記特許で期待されるものよりはるかに高い純度の処理後通過液を得ることが可能となる。
【0023】
米国特許第4,981,594号明細書(出願人:Jones et al.)は、冷却用廃水の処理手法を開示する。この手法は、特に、大径粒子(50ミクロン)の除去用の砂濾過、その後行なわれるバクテリア及び藻を除去するためのイオン化ユニットによる殺菌及び小径粒子(5ミクロン)の除去のためのナノ濾過ユニットを連続的に組み合わせるものである。この特許と対照的に、本発明は、ナノメートル単位の寸法を有する溶解分子を除去することを目的とする。この参考文献は、限外濾過とナノ濾過を組合せることの可能性について言及するが、その詳細に関しては、何も開示していない。
【0024】
米国特許第6,007,712号明細書(Tanaka et al.)は、固定化微生物の担体として活性炭素を用いることを開示する。尚、微生物の結合は、架橋親水性ポリマ(アセタール化PVA含水ゲル)を用いてなされる。このような固定化された微生物は、生物学的廃水処理反応装置の一部となる。懸濁された粒子は、約13000ダルトンの分画分子量を備える限外濾過膜により保持される。したがって、懸濁された粒子が通過液中に入り込むことはできない。この文献では、本発明と異なり、溶解した低分子量の有機物質を保持する役割を担うナノ濾過を用いていない。したがって、NF濃縮液中で沈殿を開始する程度まで、低分子量の有機物質を濃縮せず、更にその後、UF膜を用いて、沈殿した粒子をNF濃縮液から除去し、NF濃縮液が粒子を含まない状態とするものではない。
更に、本発明では、活性炭の役割は、NF膜を詰まらせる低分子量の有機物質を吸着することである。尚、自然に吸着された微生物は、AC粒子に吸着された有機物質の分解を助ける役割を担う。
【0025】
米国特許第4,956,093号明細書(Pirbazari, et al.)は、本質的な生物学的反応装置を開示する。この反応装置は、タンク中で攪拌される活性炭粒子上に吸着される微生物を備える。微生物は、有機廃棄物質の分解に用いられ、生物学的分解が遅い或いは全く生物学的分解性を有さない有機物質の分解に特に好適なものである。循環システムは、限外濾過器を備え、懸濁された粒子を保持する。この特許は、ナノ濾過を開示していない。
【0026】
米国特許第6,893,559号明細書(Kin et al.)は、UV/オゾンを用いた酸化によって、廃水から有機化合物を除去するシステム並びに方法を開示する。
本明細書中で言及された米国特許並びに公開された米国特許出願の内容全体は、参照として本明細書に組み込まれるものとする。
【0027】
【特許文献1】米国特許第4,676,908号明細書
【特許文献2】米国特許第6,425,974号明細書
【特許文献3】米国特許第5,308,492号明細書
【特許文献4】米国特許第4,981,594号明細書
【特許文献5】米国特許第6,007,712号明細書
【特許文献6】米国特許第4,956,093号明細書
【特許文献7】米国特許第6,893,559号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明の課題は、有害な工業廃水の処理並びに再利用するためのモジュール、システム及び工程を提供することである。有害な工業廃水には、とりわけ、溶解並びに懸濁した有機物質、塩素化合物、臭化物、臭素酸塩、塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、重金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン及び他のイオンなどの様々な濃度の無機物質及び有機溶媒を含む。
【0029】
本発明の課題は、最大の工程回収状態で稼動するとともに廃水の大部分を再利用可能な物質に変換する能力を備える廃水処理工程及びシステムを提供することである。より一般的には、最初の有害な水性廃水流が全体的に、(a)工場での再利用に好適な質を有する純水(75−95%)、(b)少なくとも10%、多くの場合15%、好適には20%の無機物含有量を備える状態での精錬された塩濃縮液(5−10%)(必要に応じて、20%の塩水を処理する膜蒸留ユニットを組み込むことにより、70%まで無機物含有量を増大させることが可能である。70%までの無機物含有量の増大は、太陽蒸発装置或いは熱蒸発装置によって、最終蒸発処理を行い、乾燥した純度の高い固形塩とするのに十分且つ適切な純度である)及び(c)最小限の体積での高濃度の有機物濃縮液(この濃縮液は、最小量の有機物を含み、酸化手法或いは燃焼手法による最終的な破壊に好適なものである)。
【0030】
本発明の更なる課題は、上記した類の工程並びにシステムであって、幾つかの膜ユニット及び非膜ユニットを1つのシステムに合成した工程及びシステムを提供することである。このシステムは、最適且つ効率的であり、最も経済的な方式で稼動する。
【0031】
本発明の更に他の課題は、最適化された廃水処理及び再利用工程を提供することである。この工程において、限外濾過サブユニット、活性炭柱サブユニット、ナノ濾過サブユニット、逆浸透サブユニット、電気透析サブユニット及び触媒による酸化を行なうサブユニットと特徴的な手法で合成されている。これにより、高い回収率を達成し、高い純度の再利用される液流を作り出し、全てのサブユニットが詰まることがなく、最小のエネルギ消費量並びに最小の費用で稼動することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、一の実施形態において、有機物質を含有する廃水流中の有機物質の含有量及び体積量の低減に有用性を備えるモジュールであって、(a)ナノ濾過装置と、(b)好適に逆流洗浄を実行することが可能な限外濾過装置と、(c)ナノ濾過装置からの濃縮液を前記限外濾過装置へ搬送するように形成された導管からなり、(d)必要に応じて、活性炭を備える容器を備え、該容器が、前記ナノ濾過装置からの濃縮液を前記容器に搬送するとともに前記ナノ濾過装置からの濃縮液を前記活性炭に接触させるように形成された導管を備え、前記モジュールが、前記廃水流を前記ナノ濾過装置に搬送するように形成された流入用導管と、前記限外濾過装置からの濃縮液と通過液及び前記ナノ濾過装置からの通過液を前記容器に向かわせる流出用導管を備えることを特徴とするモジュールを提供する。
【0033】
本発明のモジュールは、更に、以下に示す特徴のうち少なくとも1つを備えるという点で特徴付けられる。
(i)前記ナノ濾過装置が、1000ダルトン以下のカットオフ値、好ましくは500ダルトン以下のカットオフ値、より好ましくは、160ダルトン以下のカットオフ値を備えるという特徴。
(ii)前記ナノ濾過装置が、pH7乃至pH14の範囲で安定するという特徴。
(iii)前記ナノ濾過装置が、pH0乃至pH7の範囲で安定するという特徴。
(iv)前記ナノ濾過装置が、水混和性有機溶媒及び水非混和性有機溶媒の存在下で安定するという特徴。
(v)前記廃水流が、沈殿性を有する金属イオンの塩を本質的に備えないという特徴。
(vi)前記ナノ濾過装置と接触する前の流入廃水と接触するように配された活性炭及び上記した(d)で用いられる他の活性炭の全体又は一部が、必要に応じて、有機物質分解バクテリアの生存を維持する場合において、前記モジュールが、前記ナノ濾過装置と接触する前の流入廃水と接触するように配された活性炭を収容する容器を備えるという特徴。
【0034】
上記特徴(iv)を備えるモジュールの特定の実施形態において、前記活性炭を収容する一の容器が、前記流入廃水と接触するとともに、前記ナノ濾過装置からの濃縮液に接触する。
【0035】
他の実施形態において、本発明は、沈殿性の金属イオンの塩、非沈殿性の金属イオンの塩、有機溶媒及び有機溶質を含む有機物質を含有する廃水流を処理するシステムであって、(A)廃水流用の流入導管、前記廃水流中の沈殿性の金属イオンとの反応により非水溶性の塩を形成する反応物質用の流入導管、前記非水溶性の塩のスラリを除去するための流出導管及び沈殿性の無機塩の低減化がなされた前記廃水流をユニット(B)へ案内する流出導管を備える反応装置と、(B)前記塩の低減化がなされた廃水流中の沈殿性の金属イオンの塩の含有量を100ppm未満に低減するとともに、前記塩の低減化がなされた廃水流のための流入導管、無機塩沈殿物を有する限外濾過装置濃縮液のための流出導管及び本質的に沈殿性の金属イオンを含まない限外濾過装置を通過した液のための流出導管を備える限外濾過装置と、(C)上記のモジュールからなることを特徴とするシステムを提供する。
【0036】
システムは、好適には、追加的に以下の特徴(D1)、(D2)及び(D3)のうち1つを備える。
(D1)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作するとともに、低減された有機物質の含有量を備えるナノ濾過装置の通過液を受け止め、非沈殿性の金属イオンの塩の略全量と更に低減された有機物質含有量を有する濃縮液と略純水である通過液とに前記ナノ濾過装置の通過液を分離する電気透析膜と逆浸透膜の組合体。
(D2)前記ナノ濾過装置の通過液を受け止め、該ナノ濾過装置の通過液を非沈殿性の金属イオンの塩の略全量と有機溶質を含む濃縮液と、略純水である通過液とに分離する膜蒸留ユニット。
(D3)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作するとともに、前記ナノ濾過装置の通過液を受け止め、該通過液を、略純水である膜蒸留凝集液と有機汚染物質を略備えない前記電気透析膜の無機物質濃縮液とに分離する電気透析膜と膜蒸留膜の組合体。
【0037】
より好適には、システムは、追加的に以下の特徴(E)及び(F)のうち少なくとも1つを備える。
(E)前記限外濾過装置からの濃縮液のための前記流出導管及び必要に応じて活性炭を含有する前記容器からの有機物質を破壊するためのユニット。
(F)紫外線放射化で低分子量の有機化合物を酸化させる少なくとも1つのユニット。
前記紫外線放射下における酸化は、以下に示す1若しくはそれ以上の地点で実行される。
(i)前記ナノ濾過装置の通過液上の点。
(ii)及び/又は、前記逆浸透膜の通過液及び/又は電気透析濃縮物(塩)上の点。
(iii)及び/又は、膜蒸留通過液及び/又は膜蒸留濃縮液上の点。
【0038】
他の実施形態において、本発明は、有機物質を含有する廃水流中の有機物質含有量及び体積を低減させる工程であって、前記廃水流をナノ濾過装置に接触させ、濃縮液と、前記廃水流中に存在する非沈殿性の金属イオンの塩を含有する水流である通過液を得る段階と、その後、前記濃縮液を、好適に逆流洗浄することが可能な限外濾過装置に接触させ、必要に応じて、活性炭にも接触させ、前記濃縮液中の有機物質の含有量及び体積量を低減させる段階からなることを特徴とする工程を提供する。
【0039】
更なる実施形態において、本発明は、沈殿性の金属イオンの塩、非沈殿性の金属イオンの塩、有機溶媒及び有機溶質を含む有機物質を含有する廃水流を処理する工程を提供する。この工程は、以下に示す連続的な段階を備える。
(A)前記廃水流からの沈殿性の金属イオンの非水溶性の塩を沈殿させる反応物質に前記廃水流を接触させ、前記非水溶性の塩の形成されたスラリを除去し、段階(B)を実行するために無機塩の低減化がなされた前記廃水流を案内する段階。
(B)段階(A)からの廃水を限外濾過装置に接触させ、前記塩の低減化がなされた廃水流中の沈殿性の金属イオンの含有量を100ppm以下に低減させる段階。
(C)前記限外濾過装置の通過液をナノ濾過装置に接触させ、濃縮液と、前記廃水中に存在する非沈殿性の金属イオンの塩を含む水流である通過液を得るとともに、その後、前記濃縮液を好適に逆流洗浄することが可能な限外濾過装置に接触させるとともに必要に応じて活性炭にも接触させ、前記濃縮液中の有機物質の含有量及び体積量を低減する段階。
【0040】
この工程は、好適には、追加的に以下に示す段階(D1)、(D2)及び(D3)のうち1つを備える。
(D1)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作する電気透析膜と逆浸透膜の組合体に前記ナノ濾過装置の通過液を接触させ、有機物質の含有量の低減化がなされた前記通過液を、非沈殿性の金属イオンの塩の略全量を含有するとともに更に低減された有機物質の含有量を備える濃縮液と、略純水である通過液に分離する段階。
(D2)前記ナノ濾過装置の通過液を膜蒸留ユニットに接触させ、前記通過液を非沈殿性の金属イオンの塩の略全量を含む濃縮液と、略純水の通過液に分離する段階。
(D3)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作するとともに前記ナノ濾過装置の通過液を受け止める電気透析膜と逆浸透膜の組合体に接触させ、略純水の膜蒸留凝集液と、略有機汚染物質を含まない前記電気透析膜の無機物質濃縮液に分離する段階。
【0041】
この工程は、好適には、以下に示す段階のうち少なくとも1つを備える。
(E)前記限外濾過装置濃縮液中の有機物質を破壊するとともに必要に応じて、活性炭との接触後の流出液中の有機物質を破壊する段階。
(F)前記ナノ濾過装置の通過液、及び/又は、逆浸透膜の通過液、及び/又は、電気透析濃縮物(塩)、及び/又は、分子蒸留の通過液、及び/又は、膜蒸留濃縮液に紫外線照射を行い、これらに含有される低分子化合物を酸化する段階。
【0042】
他の実施形態において、本発明は、有機物質を含有する廃水流中の有機物質の含有量及び体積量を低減させる工程において、前記廃水流は、沈殿性の金属イオンの塩を略含まず、前記廃水流を、ナノ濾過装置に接触させ、濃縮液と、前記廃水流中に存在する非沈殿性の金属イオンの塩を含有する水流である通過液を得る段階を備え、前記濃縮液を限外濾過装置に接触させ、前記ナノ濾過装置内に形成された沈殿物質を連続的に除去することにより、前記ナノ濾過装置の寿命を延ばすことを特徴とする工程を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本出願に添付する図面は、本発明の実施形態を示すが、単に例示的なものにすぎない。
本発明の特定の実施形態は、以下の3つの連続的なサブユニットを備える。
【0044】
1.前処理ユニット/ステップ1
このハイブリッドサブユニットは、化学反応装置と、限外濾過ユニット/精密濾過ユニットを組み合わせたものである。化学反応装置内では、Ca、Mg、Ba、Sr、重金属及び他の沈殿性を有する金属イオン及びアンモニアが、例えば、pHと、リン酸塩、炭酸塩、NaOH及び/又はリン酸などの化学物質の適切な選択により除去される。限外濾過ユニット/精密濾過ユニットは、溶媒に対して安定性を示す好適な管状の膜及びスラリ分離装置を備える。管状の膜は、慎重に選択された範囲の無機物沈殿物の濃度範囲で作動する。スラリ分離装置は、沈殿タンク或いは遠心分離装置を備える。
この合成段階で、以下の事項の達成がなされる。
a.無機物質の沈殿物、有機物質の沈殿物及びコロイド状粒子の完全な除去
b.アンモニアの実質的な除去
c.結晶質の懸濁物質の洗浄効果並びに高い循環速度による、非常に高く安定した値の膜流量の維持
d.7−50%の間の濃度範囲の高度に濃縮された固形残渣の生成
e.99.5%を超える非常に高い生成物の回収の達成
【0045】
2.前処理ユニット/ステップ2
このハイブリッドサブユニットは、ナノ濾過ユニット、活性炭柱、第2のNFユニット及びUFユニットを備える。ナノ濾過ユニットは、好適には、溶媒に対して耐性を有する膜を備える。活性炭柱は、必要に応じて、NFユニットへの供給タンクとして機能する。第2のNFユニットは、必要に応じて、溶媒に対して安定性を有するNF膜を備える。この膜は、管状或いは平板形状であり、スラリの存在下で動作する能力を備える溶媒耐性モジュールである。第2のNFユニットは、UFユニットを備える。UFユニットは、有機沈殿物の連続的な除去を行なう。有機沈殿物は濃縮段階の間、NF濃縮液流中で形成されるものである。
このハイブリッド前処理段階で、以下の事項の達成がなされる。
a.活性を有する有機溶媒の完全な除去
b.廃水流からの有機汚染物の連続的且つ選択的な吸収の結果として生ずる高いNF膜流量の維持(この有機汚染物は、ACの不存在下において、NF膜表面に堆積し、膜を詰まらせ、非実用的な水準までの著しい流量の低下を引き起こす)。NFとACの連続的な組合せにより、減少する有機汚染物質の濃度を上昇させ、ACの段階(処理)に高い効率性を確保することができる。
c.連続的な沈殿性の有機物質粒子を除去並びに以後の廃棄或いは焼却処理のための高レベルに濃縮されたスラリとして有機物質粒子を濃縮すること
d.次の処理段階により最終処理を実行するために、前処理ユニット2に流入する流量の95%以上を回収すること
【0046】
前処理ユニット/段階2の他の好適な実施形態は、ナノ濾過ユニット及び活性炭柱に加えて、NFシステムの濃縮タンクに播種されたバイオマスを備える。バイオマスは、分散されたバクテリア粒子或いはバクテリア群の形態で組み込まれる。他の実施形態においては、活性炭粒子或いは他の担体表面上に固定化される。驚くべきことに、このような実施形態を用いた場合、有機物の濃度は、濃縮工程の間のNF濃縮液中で増加しないが、濃縮処理を施される有機物質の連続的な生物学的分解の結果として、有機物質の濃度が非常に一定で且つ低い濃度に保たれることが判明した。90%を超える溶解した有機物は、このようなハイブリッドユニット内で分解された。本実施形態におけるバクテリアによる有機物質の分解は、非常に効率的に行なわれる。なぜなら、溶解した有機物質の濃度は、NF処理段階によって絶え間なく増加する一方で、溶解した有機物質は、炭素粒子に吸収され及び/又はその後バクテリアによる生物学的分解作用を受けるからである。
【0047】
3.分離ユニット/段階3
本発明のハイブリッドユニットは、逆浸透(RO: Reverse Osmosis)を利用し、この逆浸透は、電気透析(ED: electrodialysis)に接続する。塩濃度は、2−5%の範囲で一定水準に保たれる。このことは、高いRO流量、汚染物質を含有しないRO濃縮液、高品質のRO通過液(低TOC及び低塩分)を保証するとともに、25%までのED濃縮液中の高い塩濃度を保証する。必要に応じて、膜蒸留ユニットを追加することにより、塩濃度は、更に、70%まで濃縮される。そして、膜蒸留ユニットに接続された膜式晶析装置を追加することにより、固形塩とすることも可能となる。
酸化洗練工程を追加し、RO通過液及び/又は塩濃縮液から有機分子残渣を除去することも可能である。
特定の実施形態において説明される他の方法として、有機物質と無機物質を含有する汚染された流入液を処理するために用いられる本発明に係るハイブリッド膜(HMT: hybrid membrane)システムは、(i)汚染された液流から有機物を除去するとともに、最小体積の有機物質濃縮液中で有機汚染物質を濃縮するユニット、(ii)汚染された廃水流から純水生成物を回収するユニット及び(iii)廃水流から略有機汚染物質を含まない無機物濃縮液或いは無機物スラリを回収するユニットを備える。
【0048】
汚染された液流は、0.1%から0.5%或いはそれ以上の濃度範囲の有機物質及び1%から5%或いはそれ以上の無機含有物を含む。加えて、液流は、様々な濃度の有機溶媒及び様々な濃度(10ppmから数1000ppmの水準)の多価金属塩(Ca、Mg、Ba、Sr、Al、Zn、Cr及びその他)を含む。
【0049】
HMTシステムは、幾つかの連続的なユニットを備える。
(i)この連続的なユニットは、限外濾過ユニットを備える。限外濾過ユニットは、廃水流から沈殿性の塩を取り除く。これにより、略非沈殿性の塩と有機物からなる第1の前処理された液流が形成される。このようなモジュールは、沈殿性の化学物質を添加するための導管及び付属部品並びに沈殿工程を制御する制御手段を備える混合反応装置と、限外濾過膜を備える。限外濾過膜は、沈殿性の塩を除去するとともに、懸濁物の形態並びに第1の処理液流からのコロイドの形態の他の沈殿物を除去する役割を担う。
(ii)この連続的なユニットは、汚染された廃水流から有機物質を除去及び濃縮するナノ濾過/限外濾過モジュールを備える。この汚染された廃水流は、必要に応じて、第1の前処理を施された液流とすることができる。この第1の前処理を施された液流は、第1の前処理の後、沈殿性のイオンを略含まないものである。尚、この汚染された廃水流を沈殿性の塩を含む最初の廃水流とすることもできる。
このようなユニットは、以下の設備を備える。
(1)低分子重量の有機物及び第1の処理を施された液流から除去されなかった低分子重量の沈殿性の無機物を濃縮するナノ濾過膜。
有機含有物及び無機含有物は濃縮されるとともにナノ濾過濃縮液中で沈殿する。そして、濃縮液の一部又は全部を限外濾過装置に向かわせることにより、これら含有物は連続的にナノ濾過濃縮液から取り除かれる(以下の項目(2)を参照)。このようなハイブリッド設備の結果として、沈殿性物質が常時で濃縮されること、ナノ濾過濃縮液中で沈殿性物質が沈殿すること、沈殿性物質がナノ濾過濃縮液から、常時、除去されることの作用が同時に生じ、沈殿した固形物がナノ濾過膜を汚染することがなく、ナノ濾過ユニットの詰りが除去される。このような複合的な作用がない場合には、汚染や詰りが非常に短い期間で生じ、連続的な処理の可能性を排除することとなる。
(2)ナノ濾過濃縮液から沈殿物を除去するとともに、処理された液流を懸濁物質を含まない限外濾過通過液とする限外濾過膜装置。
したがって、ナノ濾過濃縮液から沈殿物質の濃縮、沈殿並びに除去する工程は無制限に連続的に実行可能となる。限外濾過ユニットは周期的に逆流洗浄される。したがって、限外濾過膜表面並びに限外濾過ユニットのチャネルから堆積した固形物質の放出がなされる。ナノ濾過濃縮液から除去されるとともに限外濾過濃縮液中で蓄積された沈殿物は、限外濾過濃縮液から直接的に、或いは、従来から用いられるセトラ式浄化装置を用いて逆流洗浄流から必要に応じて、除去される。分離された固形物の体積は、様々な固体緻密化設備(圧濾器或いはデカンタ遠心分離機など)により低減される。同時に、低濃度の懸濁固体物質を含む濾液或いは上澄液は、限外濾過膜に向けて戻され、追加的な分離処理を施される。このような作用の結果として、有機相の濃度は、例えば、最初の汚染された廃水中の0.1%の有機物から数倍にも増加し、濃縮されたスラリ中では、5%、10%、20%或いはそれ以上の濃度になる。すなわち、このような有機相を含む総体積量は順次減少し、最初の廃水流中で99.9の体積単位であったものが、1.9、0.9及び最終的には0.4の体積単位となり、250倍又はそれ以上の倍率で水分体積が低下する。例えば、流動層乾燥機などを用いて実行される追加的な乾燥工程は、総体積量を0.1%まで低減することを可能とする。したがって、プラズマ処理手段或いは燃焼処理手段を用いた最終的な酸化工程或いは破壊のコストを有意に低減可能となる。
(3)必要に応じて、活性炭柱をナノ濾過を受ける液流に組み込むことができる。活性炭柱は、特定の溶解性の汚染有機片によるナノ濾過膜の汚染を除去するのに役立つ。活性炭(AC: activated carbon)柱は、最初にNFに流入する流れ或いはNFに流入する再循環流に加えられる。これにより、汚染された液体が、NF膜及び活性炭柱を横切って循環する。驚くべきことに、このような特徴的なNFとACの組合せにおいて、ACの量が非常に少なく、処理される汚染された液体1リットル当たり100−250mgの量であり、且つ、汚染された液体中の汚染有機物の濃度が、汚染液体中のAC炭素濃度より10から20倍高い場合であっても、NF膜の流量は非常に高い水準で維持されることが判明した。対照的に、このようなAC炭素柱が除去されると、NF膜の深刻な汚染が観察され、この汚染は、許容範囲外までの流量低下に帰結する。NFとACの特徴的な組合せは、非常に高い効率並びに能力でのAC柱の稼動を維持するのに役立つ。
【0050】
本発明の他の実施形態は、このような活性炭素が、有機物質分解バクテリアの担体となり、有機物質の分解を促進し、この促進により、NF膜表面からの有機物質の除去を補助し、更に、NF膜の汚染を除去するという選択肢を有する。バイオマスは、分散したバクテリア粒子或いはバクテリア群の形態で組み込まれる。若しくは、別の実施形態では、バイオマスは、活性炭粒子或いは他の担体表面上に固定される。驚くべきことに、このような実施形態を用いる場合、濃縮工程の間、有機物濃度は、NF濃縮液中で増加しないが、濃縮する有機物質の連続的な生物学的分解の結果として、非常に安定して、低い濃度値に保たれることが判明した。90%を超える溶解した有機物質が、このようなハイブリッドユニットの中で分解された。本実施形態におけるバクテリアによる有機物質の分解は、非常に効率的に行なわれる。なぜなら、溶解した有機物質の濃度は、NF処理工程により、常時、増加するとともに、溶解した有機物質は、炭素粒子に吸収され、及び/又は、その後、バクテリアによる生物学的分解作用を受けるからである。
【0051】
活性炭素への播種に用いられるバクテリアは、市販の生物学的反応装置(例えば、米国特許第4,207,179号明細書(出願人:McCarthy et al.) 発明の名称:「Bio treatment using carbon treated recycle and/or clarifier effluent backwash」)に開示されるような生物学的反応装置)に用いられる株の混合体とすることができる。
【0052】
特定の実施形態において、純水、純粋な無機物濃縮液及び有機物質を含有する未だ汚染状態にある水流を分離するユニット/工程が利用される。この工程の目的は、有機物質を含まない略純水状態の液流或いは、有機物質を略含まない無機物の液流を作り出すことである。有機物質を含有するとともに脱塩され、塩を含有しない液流が更なる分離処理の始め(初期工程)に戻る循環処理がなされる。或いは、高い塩含有量がない状態で、バクテリアにより有機物質を効果的に分解する生物学的処理施設に、有機物質を含有するとともに脱塩され、塩を含有しない液流が送られる。他の可能な方法は、酸化手段を用いて、脱塩された有機物の液流を前処理し、この部分的に分解された液流を生物学的設備或いは分離ユニットに送ることである。この目的のために幾つかの可能な選択肢が存在する。
(1)電気透析(ED: Electrodialysis)を備える逆浸透(RO: Reverse Osmosis)の使用。
この選択肢において、低減した有機物質含有量を備える前処理を施された液流は、逆浸透処理を用いて濃縮され、可能な限り高い濃度にされる。このとき、有機物含有量は、RO通過液の純度、及び、その下流のED濃縮液の純度に悪影響を与えない値に制限される。後に行われるED工程において、略有機物質を含有しない純粋な塩濃縮液が除去され、残りの有機物質液流は脱塩される。その後、有機物質液流は、生物学的分解工程に戻る方向に送られる。
(2)RO及びEDを組み合わせた形態の使用
この選択肢において、2つの液流は、2つの膜ユニットの間で循環される。
(3)国際公開WO2006/074259号公報(米国特許出願第20060144787号:出願人 Schmidt et al.)に開示されるような一般的なリザーバを介したEDとROの使用
(4)ROの代わりに、膜蒸留(MD: membrane distillation)ユニットを利用すること
膜蒸留ユニットは、高い純度の蒸留物及びEDを用いて更に純度を高められる濃縮液を作り出す。EDは、有機物含有量を低減することにより、無機物濃縮液の純度を増大させるために用いられる。
【0053】
本発明の他の特徴及び形態は、添付の図面とともに本発明の特定の実施形態に係る下記の説明を参照することにより、当業者に対して明らかにされる。
【0054】
図1乃至図8は、本発明に係るモジュール、ハイブリッド膜システム(HMT)及び工程の実行態様の実施形態を示す。本発明は、様々な工業設備(例えば、製薬工場、農薬、殺菌剤又は殺生物剤を製造する工場、酵母産生工場、アルコール発酵工場、ポリマ及び化学工業品への添加物を製造する工場などの様々な工業設備)から生ずる汚染された工業液及び廃水を処理するために利用可能である。また、本発明は、地方自治体の廃棄場、砂糖製造工場、パルプ及び紙の工場、金属加工工場、電子部品工場からの浸出液を処理するために利用可能である。これらの複雑な廃水流の組成は、工場設備ごとに異なるが、これら全ては、溶解状態、沈殿状態並びに沈殿可能な形態の無機物、有機溶質及び有機溶媒を含み、複雑な処理上の問題を形成する共通の組成構造を備える。有機組成物の幾つかは、本質的に有害なものであり、湿式空気酸化、燃焼、プラズマ分解及びこれに類するものなどといった非常に高価な破壊手段を用いて破壊される必要がある。有害な有機物を含有する液流体積を最小限化するために、廃水の蒸発がしばしば用いられる。廃水の蒸発それ自体が、高価であり、多くの操作上の問題及びメンテナンス上の問題を生ずるエネルギ集中処理技術である。
【0055】
本発明のHMTのモジュール、システム及び工程は、複雑な混合液を複雑性を低減された液流に分離し、可能な限り廃棄処理を容易にされたこのような液流を回収し、好適には再利用可能な材料とすることにより、問題の複雑性を低減させることを目的とする。分離された純化された成分は、純水、略有機汚染物を含有しない純化された無機物濃縮液及び可能な限り体積が低減されるとともに有機組成物濃度が最大化された有機組成物を含有する有機液流である。このような分離処理は、以下の幾つかの重要な利点をもたらす。
【0056】
(1)十分に高い品質の水は、冷却塔への供給水或いは処理水として工場内で再利用可能であり、有害な液流体積を最小限化可能となる。
(2)純化された無機物濃縮液は、海中に排出可能となる。或いは、蒸発池で蒸発される。又は、再利用可能な高価値の無機物濃縮液として回収される。
(3)無機汚染物質を略備えない有機残渣の処理費用が低減される。体積減少係数に比例して、劇的なコスト低減が実現されることとなる。更に、多くの場合、純化された有機濃縮液は、大きな経済的価値を有し、有機物質を無機物質と混合し、再利用できない熱的方法或いは燃焼を用いた従来の手法とは対照的に大きな財源を作り出すことができる。
したがって、本発明のHMTを用いた工業廃水の処理費用は、最終的な破壊の前に廃水全体積量を処理する必要がある、或いは、蒸発処理を受ける必要がある従来の手法で要求される処理費用の数分の一程度となる。
【0057】
膜技術は、UF,NF及びROなどの圧力駆動式膜ユニット、拡散透析及び膜蒸留(MD: membrane distillation)などの濃度駆動式及び電気的に駆動する電気透析(ED: electrodialysis)に分類される。これらユニットは、本技術分野でよく知られており、水脱塩工程及び限定的な数の工業的用途に主に用いられる。廃水処理及び工業的処理用途におけるラージスケールでの適用に関して、これら技術を制限する主な欠点として、以下のものを挙げることができる。
(a)様々な有機汚染物及び無機汚染物に曝されると容易に汚染されるとともに詰りやすくなるという感受性の欠点
(b)工業的な廃水流或いは他の廃水流でしばしば観察される様々な物質及び条件に対する化学的な安定性に制限があるという欠点
加えて、極端なpH条件、活性を有する有機溶媒の存在及び酸化体に対して影響を受けやすく、膜の性能に悪影響を与えるとともに膜の寿命が短くなる。
【0058】
本発明は、上記の欠点の殆どを克服する可能性をもたらし、以下に詳述する工業処理液流及び廃水流の処理用の広い利用範囲の膜技術を提供する。
【0059】
図中の説明において、図中の同様の構成要素には、同様の符号が付されている。
図1を参照する。図1は、廃水処理用のナノ濾過ユニットを示す。導管(41)(図示せず)を通じた液流或いは導管(47)を通じた液流が、任意の第1の前処理段階からタンク(11)(好ましくは、タンク(11)は活性炭(12)を備える)に供給され、ナノ濾過膜(23)及び供給タンク(11)を横切る導管(25,25a)を介してポンプ(34a)を用いて循環され、結果として生ずる通過液を、膜を横切って通過させる。NF通過液は、主に無機物と、非常に小さな濃度の非常に小さな有機分子を含有する。好適には、この工程で用いられるNF膜は、化学的に溶媒安定性を示し、活性を有する有機化学物質或いは溶媒の存在に対して耐性を示すものである。
【0060】
NF工程の間、タンク(11)及び膜(23)中の通過液の通過の結果として、低分子量の有機組成物が濃縮され、すぐに、NFユニット内で当該組成物が沈殿する当該組成物の溶解限界に達する。膜上を汚染する有機沈殿物の堆積を避けるために、タンク(11)、導管(25,25b)及びポンプ(34b)を介して、UF膜(24)を用いて、NF濃縮液から沈殿物が常時除去される。粒子を有さないUF通過液がNFタンクに戻され、NF濃縮液を実用的な程度に懸濁された汚染物質を含まない状態に維持することを補助する。UF濃縮液(28)からの懸濁物質(54)は、必要に応じて、液体固体分離機(11d)内で分離される。懸濁物の削減処理を施された上澄液(48)は、タンク(11)に戻される。
図2を併せて参照する。NF−UFの合成の結果として、NFユニットは、最適な汚染物質のない状態で稼動し、以下に示す破壊手段のうち1つ、即ち、必要に応じて、導管(63)を介した再循環を用いるプラズマ分解、燃焼或いは化学的熱破壊ユニット(62)による最終の経済的な破壊の前に、最小体積で且つ高度に濃縮された有機物が、例えば、流動層乾燥機或いは熱蒸留ユニット(61)内で取り除かれる。また、必要に応じて、これら工程からの熱気体が、流動層乾燥機に循環される。上述の如く、合成されたNF−UFユニットを用いて、劇的な体積減量の達成がなされる。一般的に、有機濃縮液の体積は、導管(47)或いは導管(41)の容積内を通過した液流の体積の5%未満、好ましくは、これら液流の1%未満、最も好ましくは、0.5%未満となる。
【0061】
他の実施形態において、UF膜からの固形物は、ポンプ(34c)を用いてUF通過液を利用して、周期的に逆流洗浄される。UF膜の逆流洗浄流或いはUF濃縮液の漏出液流は、導管(26)を通じて、タンク(11a)に方向付けられる(図3参照)。タンク(11a)では、UF濃縮液からの懸濁した固体が沈殿並びに分離される。また、固体成分の削減がなされた液流は、タンク(11)に戻される。これにより、0.1%以下まで有機固形物の体積の追加的な最小限化が可能となる。
【0062】
NF−UFモジュール(図3参照)の本明細書に開示される他の実施形態において、UF膜及びNF膜に供給をそれぞれ行なうタンク(11b,11a)は、導管を備え、導管(26)を介して、UF膜からタンク(11a)に通過液を通過させる。加えて、NFモジュールの濃縮液を、導管(27a)を介して、タンク(11a)に向けて方向付ける。この結果、NFモジュールの濃縮液は、導管(25b,34a)を介して、UF膜に方向付けられることとなる。
【0063】
本発明の他の実施形態において、NF膜からの濃縮液は、活性炭(AC: activated carbon)(12)を含有する柱に向けて戻り循環される。活性炭(12)を含む柱は、好適には、タンク(11)内に位置する。溶解性の有機汚染物質は、ナノ濾過膜を汚染する能力を備えるが、濃縮工程の間、ACによって、連続的且つ選択的に吸収され、この結果、NF膜の詰りが回避されることとなる。2つの工程を合成することにより、即ち、1つの統合ユニット内でNFとACを組み合わせることにより、両サブユニットは、最適な態様で稼動することとなる。ACの吸収効率は劇的に増大する。なぜなら、有機汚染物の濃度が常に増加し、その一方で、ACによる吸収の結果として、廃水流中の有機汚染物質が低減するからである。一方で、NF膜の流量は、液流中の汚染物質の不存在に起因して高い状態を維持することとなる。この合成の結果として、消費される活性炭の量は非常に小さくなる。即ち、ACの消費量は、廃水中に存在するTOC1kg当たり1−10%にすぎない。対照的に、NF膜の工程をなくして稼動させた従来の活性炭処理には、50%若しくはそれ以上の活性炭消費量が必要とされる。驚くべきことに、実際の排水処理用途において観察される活性炭の消費は、1000−5000ppmの溶解有機物(TOC)を含有する処理される廃水体積1リットル当たり100mgに過ぎない。このことは、要求される活性炭量が、殆ど1桁大きい文献中の如何なる開示内容とも対照的なことである。
【0064】
このような詰りを生じない構成において、98−99%を超える非常に高い回収率が、詰りの問題を招来することなくナノ濾過工程において達成可能である。
【0065】
本発明の他の実施形態において、活性炭は、有機物質を分解可能なバクテリアの成長培地としての役割を担う。ACとバイオマスの合成の結果として、NF濃縮液中の溶解有機物の高い濃度に起因して、有機物質の一層効果的な分解が達成される。
【0066】
本発明の他の特徴は、導管(29)を介してナノ濾過膜(23)から、(a)ゼロの濃度又は無視できる程度の濃度の塩分及び有機汚染物質を備える略純水状態の水及び(b)有機物質を略含まない純化された塩に、前処理を施された液流を分離する可能性をもたらす。
【0067】
図4は、前処理ユニットを開示する。一実施形態において、沈殿性の金属イオンの塩、非沈殿性の金属イオンの塩、有機溶媒及び溶質を含有する有機物の混合液が、導管(41)を介して、任意の分離ユニットに供給される。分離ユニットは、全ての沈殿性の無機物を混合液から取り除くことを目的とする。このようなユニットは、化学的な反応装置−分離装置−除濁装置(10)、ポンプ(33)、限外濾過膜(22)及び必要に応じて、液体−固体分離装置(30)を備える。沈殿化学物質(例えば、化学物質1,2、3)が、化学反応装置(10)に添加され、反応装置底部における沈殿性無機物質の沈殿及び分離を生じさせる。沈殿性の含有物質の低減が図られるとともに除濁処理を受けた液流は、限外濾過膜(22)に供給され、懸濁されたコロイド状の物質全てが分離並びに濃縮処理を施される。懸濁されたコロイド状の物質は、分離装置−除濁装置に戻り循環される。沈殿物を含まないきれいな限外濾過通過液は、導管(47)を介して下流のユニットに供給される。沈殿物は、除濁装置(10)の底部から移送され、必要に応じて、濃縮された固体スラリ(65)に凝集される。同時に、濾液或いはデカンテーション液が循環され、追加的な再処理のために化学反応装置に戻される。
分離−濃縮システムの他の実施形態は、図5に示すような、RO膜(40)及びEDユニット(90)を使用する。供給液は、ナノ濾過膜を通じた処理或いは循環の後、導管(29)からもたらされる前処理を受けた液流であり、沈殿性のイオンを含まず、非常に低い濃度の有機溶質を含む。このような前処理された液流のみが、RO−EDシステムでの処理に適切である。RO濃縮タンク(11e)中の低濃度の有機溶質は、RO工程における高い水回収率を達成することを可能とし、これらの十分に保持され続けた有機溶質の必要以上の濃縮を生じることはない。したがって、有機溶質のRO通過液への進入を最小限化することができる。この工程は、許容値を越える有機物質の水準を許さないこのような手法において最適化される。このため、低い或いはゼロの有機含有量を伴う高い品質のRO通過液を作り出すことができ、この通過液は冷却水、処理水或いは他の任意の使用用途に再利用可能となる。もし、RO工程へのNF前処理供給液流が使用されない場合には、RO濃縮液中の有機溶質の濃度が高くなりすぎ、これらの有機溶質のかなりの部分が通過液中に進入することとなり、上述した用途への再利用に不適切なものとなる。
【0068】
更に、当業者にとって理解可能な事項であるが、RO工程前にナノ濾過工程を実行しない場合、多くの有機物質は、水と混合しない有機溶媒を含み、この有機溶媒が、RO膜に捕らえられることとなる。多くの有機物質は、これらの溶解限界以上に濃縮され、RO濃縮タンク(11e)内で沈殿を開始し、RO要素の両方の液用流路(チャネル)を詰まらせるとともに膜を汚染する。同様に、濃縮された有機溶媒は、純化された溶媒の微小な小滴としてRO膜表面に蓄積し、RO膜に損傷を与える。したがって、上述のナノ濾過ユニットを用いる前処理工程は、このようなRO膜の汚染並びに損傷の影響を避けるために必要不可欠なものであり、このようにして、RO工程において高い回収率を達成することができる。水の高い回収率は、コスト面で効果的な廃水処理工程にとって不可欠な条件である。
【0069】
有機汚染物質及び有機溶媒によって引き起こされる汚染を除去することに加えて、高い水の回収率の達成を妨げるRO膜上の無機汚染物質の沈殿が生ずるため、上述のナノ処理工程を追加した化学的な前処理工程を用いることにより達成される沈殿性の塩の除去を行なうことなしに、RO工程で高い回収率を達成することができないということも重要である。
【0070】
高い水の回収率は、前述した前処理のみに起因して達成可能となるが、RO濃縮液中の水溶解性無機物質の濃度は増加し、高い浸透圧を作り出す。高い浸透圧は、RO濃縮工程の更なる継続並びに所望の高い水の回収率の達成を妨げる。
【0071】
電気透析ユニット(90)を用いて、汚染物質を有さない水性の無機濃縮液が容易に脱塩可能であることは、本技術分野においてよく知られている。ある可能な選択肢は、導管(38a)を介してRO濃縮液を分離タンク(11d)に送ることである。分離タンク(11d)は、導管(35b)を介して、ポンプ(36b)を用いて、EDユニットに液流を供給し、所望の水準となるまで脱塩処理を続けるために、導管(39)を介して、EDユニット(90)からタンク(11d)へ戻すように液流を循環させる。導管(60)から出されるEDの精錬された塩濃縮液が、この工程中において作り出される。この塩濃縮液は、有機汚染物質(有機溶媒を含む)を略含まない。尚、有機汚染物質は、前述のナノ濾過工程にて除去されている。上述の化学処理工程にて除去される沈殿性の無機イオンの不存在に起因して、高濃度のED濃縮液は、ED工程にて作り出される。このような化学的処理を施さない場合、ED濃縮液中のCaSO4やBaSO4などの沈殿性イオンの沈殿を防ぐために、ED濃縮液中の達成可能な塩濃度は、たった1−2%程度に制限される。硫酸塩イオンの輸送を低減し、ED濃縮液中の濃度をある程度増加させるために、一価アニオン選択交換膜がしばしば用いられる。この選択膜は、選択的に一価のCl-、NO3-及びHCO3-を通過させるとともに二価のSO4=イオンの輸送を最小限化する。一価選択ED膜を利用するEDの主要な用途の1つは、海水からの塩濃縮液(〜20%w/w)の形成である。本発明の進歩的な工程は、高濃度のED濃縮液を作り出すことを可能とし、沈殿性の塩の沈殿を回避し、一価選択電気透析膜の使用の必要性はない。しかしながら、本発明の進歩的な工程におけるこのような一価選択膜の使用は可能であり、一価選択膜の使用により、達成可能なED濃縮液中の塩濃度を向上させることができる。
【0072】
ポンプ(36b)を介した導管(35b)からのED供給液流を所望の水準まで脱塩処理した後、液流は、導管(39a)を介して、RO供給タンク(11e)に戻され、RO工程において濃縮が続けられる。EDとRO工程の組合せは、2つの完全に分離した工程として、或いは、EDとROが同時に作用するとともにEDユニット(90)からタンク(11d)へ向かう導管(39)を介した液流の一部の循環がなされる統合的な処理としてもたらされる。この液流の一部は、導管(39a)を介して、タンク(11e)へ向けて循環される。同様に、導管(38)を介したRO工程からの液流は、タンク(11e)に向けて循環され(導管(35a)及びポンプ(36a)を介して再度取り入れられる)、導管(38a)を介して、タンク(11d)に向けて循環される(導管(35b)及びポンプ(36b)を介して再度取り入れられる。これにより、工程に要求される特定の液位及び濃度水準が保たれることとなる。ED及びROのこのような分離工程の用途は、特徴的なものでなく、本技術分野において既知のものであるが、RO及びED膜の詰り並びに損傷を避けるため並びに膜の詰りを生ずることなく高純度のRO通過液及びED濃縮液を以って、高い回収率を達成するために、前述のナノ濾過工程及び化学的な前処理工程を備えるこれら工程の組合せることは、新規なものであり、従来技術において達成できない結果をもたらすこととなる。
【0073】
上記において参照されたSchmidt等による公開された特許出願は、汚染された液体を処理するためのRO或いはNFシステムを備える統合型電機透析の使用を開示する。この開示の主眼は、脱塩の効率を増加させること、即ち、この統合型処理を以って、従来のEDにおいて90−96%であった無機物の除去を98+%以上まで上げることである。しかしながら、Schmidt等は、沈殿性の有機溶質、無機物質及び有機溶媒を除去する前処理の使用を何ら開示しない。この結果、Schmidt等の組合せ式の処理工程は、沈殿性有機物質及び無機物質の存在下では働かず、有機溶媒の存在は、RO及びED膜に損傷を与えることとなるということは当業者には明らかである。
【0074】
したがって、化学的処理がUF及びNFと組み合わされ、必要に応じて、ED/ROの組合せの類と組み合わされる本発明は独特のものであり、高い水の回収率を達成でき、高純度の生成物(RO通過液及びED濃縮液)を得ることができる。
【0075】
多くの工業的な液流及び廃水流は、水溶解性の低分子量の有機物質を含有する。これら有機物質は、NF、RO及びED膜に殆ど捕捉されることはない。一般的な例として、エタノール、メタノール、テトラヒドロフラン、アセトン及びその他のものを挙げることができる。結果として、既知の工程は、再利用可能な程度に、十分に精錬処理された水及び無機物質濃縮液を作り出すことはできない。これらの分子ほとんどが、活性炭素や他の吸収物質などの吸着材料を用いても吸収されない。したがって、処理された液流からこれらの濃度を低減するために、このような分子の物理的な破壊が要求される。いくつかの可能な手段として、オゾンを用いた化学的酸化や触媒を利用する或いは利用しない過酸化水素を用いた化学的酸化を挙げることができる。このような破壊手段の多くは、本技術分野において既知のものである。最先端の処理形態の幾つかは、化学物質及び触媒の添加を利用する或いは利用しないUV処理技術を、これらに組み合わせている。
【0076】
本発明の好適な一実施形態は、上述した有機物破壊手段に本発明のシステム及び工程を組み合わせたものである。
図6は、導管(50)から出た水性RO通過液及び導管(60)から出たED塩濃縮液の後処理を示し、UV破壊装置を用いる。UV破壊装置から、洗練された液流が、導管(51,66)それぞれを介して流出する。このような装置(93,92)はそれぞれ、導管(29)に流入する前処理された液流或いは導管(39b)を介した残渣液流であるED蒸留液上に配されてもよい。更に、このような有機物破壊手段が、最終生成物及び液流残渣の質を向上させる処理システム及び工程の任意の地点に組み込まれてもよい。
【0077】
図7及び図8は、本発明の好適な一実施形態を示す。この実施形態において、NFを用いて前処理された液流は、略沈殿性の塩及び有機物質を含有せず、タンク(11c)に供給される。この前処理された液流は、導管(55a)(或いは導管(78,78a))及び導管(78,78a)を介してポンプ(36a)を用いて、膜蒸留(MD: membrane distillation)ユニット(70)に循環される。また、導管(38又は79)を介して、タンク(11c)に戻される。このサブユニットからの生成物は、略純水であり、導管(80)から出される。この純水は、如何なる無機汚染物及び有機汚染物を含まず、処理水或いは冷却塔への供給水として利用可能な質を備える。無機汚染物及び有機汚染物両方を備えるMD工程の濃縮液は、導管(78,78b)を介して同時に循環され、ポンプ(36b)を用いて、電気透析ユニット(90)に循環される。電気透析ユニット(90)は、非荷電有機物質から無機物質を分離する作用を発揮する。導管(60)から出る高度に純化された塩濃縮液は、10%w/w、より好適には20%w/w及び最も好ましくは25%w/wの精錬された無機物質濃度を有し、最終的な蒸発処理のため、蒸発池或いは熱式の蒸発−晶析装置に放出され、純化された塩濃縮液の回収がなされる。
【0078】
他の実施形態において、導管(60)から出される純化された塩濃縮液が、他のもう1つの膜蒸留ユニット(MD2)に供されてもよい。この他のもう1つの膜蒸留ユニット(MD2)は、晶析装置(99)に組み合わせられる。これにより、純化された結晶導管塩(98)及び母液を作り出すことができる。純化された結晶導管塩(98)及び母液は循環されるとともに回収される。第2のMDユニットから導管(80a)を通じて出される純水流は、第1のMDユニットから導管(80)を通じて出される純水流に組み合わせることができる。このような処理の結果として、略純水状態の水と、略純粋な塩結晶が、これら実施形態からの主要な生成物となる。
【0079】
本発明の好適な一実施形態は、以下の段階を備える工程である。
(a)汚染された液流に対して、精密濾過或いは限外濾過によって、沈殿した無機物質及び懸濁物質全てを除去並びに濾過除去する化学的前処理段階を実行する段階
(b)有機物質を除去及び濃縮するNF−UFモジュールの上述した形態のうち1つを用いて、第1の液流を処理する段階
(c)上述の前処理を受けた液流に対して、RO或いはMD工程を実行し、処理された水の生成物を作り出す段階
(d)電気透析を備えるRO或いはMD工程(c)からの濃縮液流を処理し、略有機物質を含有しない無機物質濃縮液を作り出し、廃棄或いは再利用を容易化する段階
【0080】
本発明の処理は、以下の追加的な段階のうちのいずれか1つ若しくは組合せを必要に応じて備える。
(e)必要に応じて、UV酸化工程を用いて液流を洗練する段階
(f)NF及びUFモジュールからの有機物濃縮液を、プラズマ処理、化学的破壊処理或いは燃焼処理を用いて破壊する段階
(g)有機物濃縮液残渣或いは無機物質液流の濃縮のための熱処理から発生する熱を利用する段階
【0081】
上記工程の好適な実施形態のうち1つは、溶解物質100ppm未満、必要に応じて溶解物質10ppm未満、好適には、溶解物質1ppm未満を含有する質の通過水を作り出すとともに100ppm未満のTOC、好ましくは30ppm未満のTOC及び最も好ましくは1ppm未満のTOCの処理後の水流中の有機物濃度を与える工程である。
【0082】
上記工程の追加的な実施形態は、無機塩濃縮液或いはスラリ中の無機塩濃度が、12%w/wを超える値、好適には20%w/wを超える値、より好ましくは40%を超える値最も好ましくは70%w/wを超えるものであり、且つ、無機濃縮液或いはスラリ中の有機物質の濃度が、1000ppm未満のTOC、より好ましくは100ppm未満のTOC、より好ましくは50ppm未満のTOC及び最も好ましくは10ppm未満のTOCとなるものである。
【0083】
本発明の他のもう1つの実施形態は、処理後の有機物濃縮液の体積が、初期の汚染された廃水流の15%未満、好適には5%未満、より好適には0.5%未満及び最も好適には0.1%未満となるものである。
【0084】
本発明の好適な一実施形態は、製薬工程からの廃水を、本発明のHMT工程によって処理するものである。尚、汚染された廃水流は、例えば、生物学的反応装置或いはMBRを用いた処理の後、処理システムに供される。
【0085】
本発明の好適な一実施形態は、農薬製造工程から生じた廃水を、例えば、生物学的反応装置或いはMBRを用いた処理の後、本発明の処理システムに供するものである。
【0086】
本発明の更なる他のもう1つの実施形態において、本発明の工程及びシステムが、アルコール製造、酵母産生、バイオ燃料製造やこれに類するものなどの発酵工程からの廃水を処理するために用いられる。このような汚染された廃水流は、例えば、生物学的反応装置やMBRを用いた処理の後、本発明の処理システムに供される。このような食品製造からの液流において、溶解状態又は沈殿状態の有機物の濃縮液は、10%w/wを超える値、好ましくは20%w/wを超える値及び最も好ましくは40%w/wを超える値まで濃縮される。有機物の液流は、低減された濃度の無機物を含有し、動物への食品添加物として利用可能となる。
【0087】
本発明の更なる他のもう1つの好適な実施形態において、本発明の工程及びシステムは、固体廃棄物廃棄場から生じた廃水(浸出液からの廃水)を処理するために用いられる。このような廃水は、例えば、生物学的反応装置又はMBRを用いた処理の後、本発明の処理システムに供される。ED工程からの無機液流を特定の目的対象とする。この無機液流は、アンモニア塩を主に含み、アンモニアとして取り出され又は液肥を構成する硝酸、リン酸や硫酸として取り出される。
【0088】
本発明の更に好適な実施形態において、本発明の工程及びシステムは、ミルク、チーズ或いは食肉を作り出す工業的食品加工業からの廃水を処理するために用いられる。例えば、生物学的反応装置又はMBRを用いた処理の後、廃水流は、本発明の処理システムに供される。
【0089】
(試験例)
本発明の利点が、以下の非限定的な試験例の中で説明される。
試験例I及び試験例IIの中では、NFを用いた活性炭の吸収効率とNFを用いない場合の活性炭の吸収効率の説明がなされる。
【0090】
(試験例I)
蒸留水中にメチレンブルーを入れた溶液1リットルを1組用意し、活性炭を用いたメチレンブルー(MB: methylene blue)の染料の吸収が判定された。メチレンブルーの濃度は、100ppmから1000ppmの間で変動する。溶液は一晩攪拌された。その後、50mlのサンプルが、各容器から取り出された。分光光度計を用いて、メチレンブルーの残存濃度が測定された。炭素1グラム当たりに吸収されたメチレンブルーの量が算出された。結果が、下記の表1に示されている。本試験例から、溶液中の有機溶質の濃度が低減すると、有機分子の吸収効率が急速に低減することが明らかである。
【0091】
(表1:平衡溶液中のMB濃度に対する活性炭素によるメチレンブルー(MB: methylene blue)の吸収効率)

【0092】
(試験例II)
以下の試験は、ラボスケールのテストセルを用いて実行された。試験セルは、ステンレス鋼からなる圧力容器から形成される。圧力容器は、2つの主要部品を備える。
(a)焼結されたSS支持材及び焼結支持材上面に取り付けられたナノ濾過膜を備える底部フランジ部分
(b)磁気攪拌器及び上部フランジカバーを備えるSSフランジシリンダからなる上部
【0093】
テストセルは、テスト溶液で満たされた。テスト溶液は、75ppmのメチレンブルー溶液150mlを備える。セル中の最初のMBの量は、11.3mgであった。粉状のAC11ミリグラムをMBテスト溶液に添加した。テストセルのフランジは、しっかりと組み立てられた。磁気攪拌器を稼動させ、圧力レギュレータを通じて圧縮された窒素バルーンから圧力を供給した。圧力値は40barであった。
【0094】
圧力を供給するとすぐに、力を負荷されたテスト液が膜を横切って通過した。テストセルに取り付けられたナノ濾過膜は、Nano Pro-BPT-NF-4型であり、95%のグルコース除去率及び100%のメチレンブルーに対する除去率を備えた。除去率(%)は、数式1によって定義されている。ここで、CPは通過溶液中の染料濃度であり、CCは、濃縮液側の染料濃度である。100%の染料除去率は、通過液流中の染料の濃度が0ppmであることを指し示す。
【0095】
【数1】

【0096】
高いMB除去率のため、通過液は、MBを全く含有せず、セル中でメチレンブルー全てが濃縮された。
135mlの通過液が得られるまで試験が行われ、試験液がセルから取り除かれた。MBは、10倍に濃縮された(体積濃度係数(Volume Concentration Factor)−VCF=10)。
【0097】
セルが開けられ、濃縮溶液に対して濾過処理を行い、炭素粒子の分離が行なわれた。MBの濃度が計測され、400ppmであることが分かった。残存する濃縮液体積が15mlであったことから、水性溶液中のMBの量の算出値は4.5ミリグラムであり、11ミリグラムの活性炭により吸収された量は、6.7ミリグラムであった。したがって、ナノ濾過膜と合成された活性炭によるMBの吸収能力は、〜60%であった。表1に示す吸収試験データに基づき、ACにより吸収されたMBの量は、たったの7%程度であることが予測される。
本試験は、NFなどの圧力駆動ユニットとACの合成の利点を説明するものである。
【0098】
(試験例III:限外濾過された廃水を処理する間の活性炭の膜流量への影響)
試験例IIで説明されたラボセル中で、本試験は実行された。セルは、試験例IIと同種の膜を備える。製薬会社からの廃水を利用して、いくつかの濃縮工程が実行された。全てのカルシウムイオン及びマグネシウムイオンを沈殿させるためにpHを増大させ、リン酸三ナトリウムを添加することにより、廃水の化学的処理がなされた。200,000ダルトンの分子量カットオフ値を備える限外濾過膜を用いて、濁りの除去がなされた。UFからの透明な通過液が全ての以下の試験に用いられた。このような処理液流中の有機物濃度は、TOC
2380ppmであり、塩濃度は2.5%であった。VCF値=50に体積濃度係数(VCF: Volume Concentration Factor)の値がなるまで、濃縮操作が行なわれ、その間、膜流量が測定された。活性炭の濃度の関数としての流量を示す結果が、図9に示される。活性炭の存在がない場合には、VCF=10で、〜5l/m2*hourの流量まで、膜流量が急激に降下する一方で、たった100ppmの活性炭の添加が、VCF=20で、10lmhより上の流量を維持することを補助することを明確に本試験結果は示している。更に、たった250ppmまでのACの増加が、VCF=40で〜25lmhの水準で、流量を維持することに役立った。また、500ppmのACの添加が、VCF=50で35を超える値の流量を維持した。
比較のために、活性炭がない場合のパイロット実験における市販のNF膜(Koch membranes MPS-44)を用いて得られた結果が同一のグラフに示されている。
【0099】
(試験例IV)
以下の試験は、廃水流を再利用可能な生成物に分離するときの本発明に係るハイブリッド膜システムの効果を説明する。システムは、図に示される詳細にしたがって構築され、以下の要素を含む。
【0100】
管状の限外濾過システムは、8mmの管径と200000ダルトンのカットオフ値を備える。UFシステムは、1barの圧力下において直線速度4m/sで稼動する。UFシステムには、試験例IIIにしたがって、最初に化学的に調整された工業廃水が用いられた。VCF値が10となるこれらの条件において得られた平均流量は、300l/m2*hr*barであった。透明な通過液が、ナノ濾過システムの供給タンクに供給された。ナノ濾過システムは、小さな活性炭柱を備える。活性炭柱は、100グラムの活性炭を含有する。ナノ濾過試験は、溶媒に対して安定であり、化学的に安定である螺旋状ナノ濾過要素Nano-Pro-BPT-NF-4を用い、ナノ濾過要素の径は、2.5インチであり、長さは14インチであった。試験は、1ヶ月間行われ、総廃水量1000リットルを処理した。実現した活性炭の平均消費量は100ppmであった。20lmhの高い平均流量比が、これら試験で得られた。この試験の通過液が、常時、ハイブリッドRO/EDユニットに加えられ、RO/EDユニットは、20%の濃縮された塩水を作り出した。塩水には、たった140ppmの有機汚染物質しか含まれていなかった。また、RO/EDユニットは、100ppm未満の塩分並びに10pp未満の含有量の有機含有物を備えるRO通過液を作り出した。
【0101】
本試験の間のRO通過液の回収率は90%であった。
本試験の組は、遠心或いは膜蒸留ユニットを含まないものであった。
本発明にしたがって、ナノ濾過濃縮液を逆流洗浄可能な限外濾過装置と接触させることによって、ナノ濾過膜の寿命の延長を含む改善された結果を得ることができた。
【0102】
(試験例V)
以下の試験は、廃水流から価値のある無機物を回収するときのハイブリッド膜システムの効果を説明する。この試験に用いられたハイブリッドシステムは、試験例IVで用いられたものと同様のものであるが、幾つかの変更を加えられている。
(a)廃水流は生物学的処理を用いて処理されず、CaCl2の3.5%希釈液を含んでいた。この希釈液は、数百ppmの有機物質と、1.2ジクロロプロパン、アセトン及びジクロロジイソプロピルエーテルなどの活性を有する有機溶媒で汚染されている。
(b)高いpH(>11)で、液流がUFシステムを用いて処理された。
(c)主な処理段階において、RO膜を用いる代わりに、NF膜を用いた。NF膜は試験例IVで述べたものと同種である。この試験の間、pHは約3まで低減した。
【0103】
この液流の処理結果を以下に示す。
20%のCaCl2濃縮液は、たったの120ppmのTOCとなった。このことは、濃縮されるとともに回収された生成品が高度に純化されたことを意味する。
本発明にしたがって、ナノ濾過濃縮液を逆流洗浄可能な限外濾過装置に接触させると、ナノ濾過膜の寿命の延長を含む改善された結果を得ることができた。
【0104】
試験例Vから得られた塩濃縮液が、膜蒸留ユニットを含む実験室設備で処理された。膜蒸留ユニットは、疎水性のポリプロピレン膜を備え、この膜は、水蒸気のみと通過させ、液体状の水を通過させない。駆動力は、通過側の真空並びに塩水側の溶液を温めることにより作り出された。この試験の間、塩水流の濃度は、20%から略40%まで増加した。予め濃縮された溶媒が4℃まで冷却され、これにより、CaCl2の塩が結晶状態で沈殿した。この結晶は、70%w/wの純化されたCaCl2を含むものであった。
このようなユニットが、ラージスケールの市販の設備に組み込まれ、ED濃縮液を濃縮し、固形塩を得ることができるということは、当業者にとって明らかなことである。
【0105】
(試験例VII)
MBR(膜型生物学的反応装置:membrane biological reactor)を用いた処理後の廃水流のサンプルが、NFテストセルに入れられた。このテストセルは、NF膜(BPT-NF-3型)を備える。この膜は、90%のグルコース除去率に特徴付けられる。テスト体積は、150mlであり、膜の面積は13cmであった。濃縮試験は、30バールの作動圧力の下で実行された。供給サンプルのTOCは1100mg/lであった。サンプルは、10倍に濃縮され、8200mg/lのTOC値を備える15mlの濃縮液と300mg/lのTOC含有量を備える通過液135mlを得た。この試験結果は、NF濃縮液が予測通り処理され、溶解性のTOC成分が、体積濃縮係数(volumetric concentration factor)(VCF=10)と膜除去率にしたがって、テストセル中で濃縮されたことを示唆する。
【0106】
(試験例VIII)
試験例VIIと同様に、MBRを用いた処理後の廃水が、NFシステム内で処理された。NFシステムは、30リットルのNFリザーバ、炭素柱及びNFポンプを備える。NFポンプは、NF供給流の圧力を20バールまで増加させ、NF供給流を2.5インチの螺旋状に巻回されたNF要素を横切って循環させる。NF要素は、90%のグルコース除去率により特徴付けられる。NF通過液が、1時間当たり1リットルの流量でNFシステムから除去され、NFリザーバ内の体積が常時満たされるように、MBRの新鮮な供給流が1時間当たり1リットルの流量で供給された。NFシステム中の液体の平均滞留時間は、約30時間である。通過液流及び濃縮液流のTOC濃度は、時間の関数として周期的に測定され、体積的な濃縮が本試験において達成された。これらの測定の結果が図10に示される。驚くべきことに、観測時において、NF濃縮液の有機物質濃度は、VCFに対して比例して増加せず、予測値よりもはるかに下回った値に留まっている。体積濃縮係数が20となる時点で、濃縮液中の有機物質濃度は、〜20000mg/lとなると予測されたが、実際のTOCの測定値は、たったの2100mg/lであった。即ち、予測値に対してたったの10%であった。
【0107】
活性炭が取り出され、発見された活性を有するバイオマスの存在に対する解析が行なわれた。これらの結果は、活性炭と生物学的反応装置をナノ濾過段階内で合成させるという新しい型の形態を指し示す。
本発明にしたがって、ナノ濾過濃縮液を逆流洗浄可能な限外濾過装置に接触させると、ナノ濾過膜の寿命の延長を含む改善された結果を得ることができた。
【0108】
(試験例IX:NF濃縮液から沈殿物を除去するUFを用いて稼動するNF処理工程の改善された実行形態を説明する比較例)
製薬工場からの工業廃水がまず、生物学的廃水処理設備内で処理され、700-1200mg/lの全有機体炭素(TOC: total organic carbon)及び2%の無機物を含むものとなった。この工業廃水は、HMT(ハイブリッド膜技術:Hybrid Membrane Technology)パイロットプラントに供給された。
【0109】
液流のpHは、8.2の初期値から10を超える値に増加し、液流は、第1のUF段階を通じて濾過された。第1のUF段階で用いられた装置は、1インチの管状膜を備える。この管状膜は、8mm径のUF膜であり、20−30ナノメートルの大きさの開口穴を有する。作動圧は、〜1バールであり、UFモジュール内部の循環速度は、〜4m3/hrsであった。これにより、4m/sの管状UF膜内部の直線速度が得られた。Caイオンの濃度は、初期値〜400mg/lから10mg/l未満まで低減した。このUF工程からの懸濁物質濃縮液の体積は、この工程の処理に係る総供給量の0.5%未満となった。
【0110】
上記のUF工程からの通過液は、常時、ハイブリッドNFユニットに供給された。ハイブリッドNFユニットは、20リットルのステンレス鋼のNFリザーバを備える。NFリザーバは、高圧(30バール)ポンプを備える。高圧ポンプは、上記のUF通過液を、螺旋状に巻回された溶媒耐性要素(BPT-NFSR-4)(BPT社(Bio Pure Technology Ltd.)の製品))を横切って、常時循環させる。溶媒耐性要素の分子量カットオフ値(MWCO: molecular weight cut off)は、〜200であり(〜95%のグルコース除去率により特徴付けられる)、2.5インチの直径と14インチの長さの物理的寸法を有する。NF工程からの通過液は、常時下流のRO工程に供給される。このとき、濃縮液は、NF供給リザーバに戻るように循環された。濃縮液は、途中で、粒状の炭素製フィルタを横切る。炭素製フィルタは、100グラムの活性炭を含有する。膜によって捕捉された有機物質は、供給タンク内で体積的に濃縮され、その係数は、20以上であった。初期の通過液流量は、〜15l/m2/hour(LMH)であった。通過液の流量は、作動時間の関数として記録され、図11に示されている。観察時において、通過液の流量は、15LMHの値から2LMHまで急速に降下し、このことは、たったの3日の後に膜の詰りが生じたことを示している。2週間後、試験を停止し、供給タンクから全ての液体が取り出され、活性炭を新たなものに置き換え、螺旋状のNF要素は、定置洗浄(CIP: cleaning in place)システムを用いて洗浄された。
【0111】
更なる試験において、NFシステムは変更され、NFリザーバの下方排出口に追加の低圧ポンプが付け加えられた。この低圧ポンプは、NF濃縮液の一部を、管状のセラミック製UF要素を横切って循環させる。セラミックUF要素は、20,000ダルトンのMWCOを備える。第2のUFユニットの透明な通過液は、NFタンクに戻された。UF要素は、UF通過液を用いて、定期的に逆流洗浄された。逆流洗浄流は、懸濁物質を含有し、分離リザーバ内で沈殿処理が可能である。懸濁物質が低減された上澄液は、NFタンクに戻され、再処理に供される。NF要素の流量は、時間の関数として記録され、同一の図11に示される。第2のUFシステムがNF濃縮と合成した状態で作動すると、2ヶ月を超えた期間において、はるかに高い水準の流量値を保ったということが明らかとなっている。
【0112】
本発明は、詳細な説明により示され、説明のための実施形態がかなり詳細に説明されているが、出願人の意図するところが制限されるものではなく、或いは、添付の請求の範囲がこのような詳細に限定されるものではない。したがって、幅広い特徴を有する本発明は、特定の詳細事項、説明されるとともに図示されたシステム及び方法、説明のための実施例に限定されるものではない。したがって、出願人の全般的な発明の概念の本質或いは範囲から逸脱することなく、このような詳細と異なるものを作り出すことは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】廃水処理用のナノ濾過/限外濾過モジュールを概略的に示す図である。このモジュールは、共通の供給タンクを通じて稼動する。また、適宜、活性炭柱を備え、液体/固体の分離特性を備える。
【図2】廃水処理用のナノ濾過/限外濾過モジュールの他の実施形態を概略的に示す図である。このモジュールは、液体と固体の分離特性を備えるとともに有機性固体破壊ユニットを備える。
【図3】廃水処理用のナノ濾過/限外濾過モジュールの他の実施形態を概略的に示す図である。このモジュールは、個別の供給タンクを備え、この供給タンクは、独立して、UFサブユニット並びにNFサブユニットに供給する。
【図4】廃水流からの沈殿性塩の除去を実行する前処理ユニットを概略的に示す図である。
【図5】RO膜とED膜を組み合わせた形態を概略的に示す。これらの膜は、前処理を施された廃水流を、純水、精錬された塩及び部分的に脱塩された有機物質液流に分離する。この有機物質液流は、ナノ濾過モジュール/限外濾過モジュール或いは任意の前処理サブユニット或いは後処理サブユニットに再循環されるために戻される。
【図6】ED−RO構造の他の実施形態を概略的に示す。このED−RO構造は、供給液流及び/又は分離された純水流及び/又は濃縮された無機物の液流及び/又は酸化による有機物残渣の破壊に曝される有機物を含む液流の洗練を実行する。酸化による破壊処理は、必要に応じて紫外線酸化によりなされ、化学的な補助を伴うものであってもよく、伴わないものであってもよい。
【図7】膜蒸留ユニットを概略的に示す。膜蒸留ユニットは、前処理を施された液流を、純水蒸留液と、濃縮された有機物質と無機物質の汚染液流に分離する。この汚染液流は更に、ハイブリッドEDユニット中で精錬される。ハイブリッドEDユニットは、汚染された塩の有機物濃縮液を略有機物を含有しない塩濃縮液と脱塩された有機物液流に分離する。
【図8】共通の供給タンクを起点として作動するEDと膜蒸留ユニットを組み合わせる他の実施形態を概略的に示す。この実施形態は、純水の蒸留液、略純粋な無機物濃縮液と、略脱塩された有機物質の液流を形成する。有機物質は、工程の最初の地点に戻され、再循環されるか、若しくは、有機物質の破壊処理が行われる。図8は、第2のMD工程を用いた純粋なED塩濃縮液の更なる濃縮の追加工程並びに、その後に塩の結晶化処理を施し、純粋な結晶生成物を作り出す追加的な手法を開示する。
【図9】NFセルに添加される活性炭の量に対するNF膜の流量を示すグラフである。
【図10】濃縮係数(VCF)の関数として、供給液流、通過液流及びNF濃縮液流中の有機物質の濃度(TOC)を示すグラフである。
【図11】ナノ濾過ユニットの相対的な流量変動を示すグラフであり、ナノ濾過濃縮液に対する限外濾過の合成がなされたナノ濾過ユニットと合成がなされていないナノ濾過ユニットの場合が示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物質を含有する廃水流中の有機物質の含有量及び体積量の低減に有用性を備えるモジュールであって、
(a)ナノ濾過装置と、
(b)好適に逆流洗浄を実行することが可能な限外濾過装置と、
(c)ナノ濾過装置からの濃縮液を前記限外濾過装置へ搬送するように形成された導管からなり、
(d)必要に応じて、活性炭を備える容器を備え、
該容器が、前記ナノ濾過装置からの濃縮液を前記容器に搬送するとともに前記ナノ濾過装置からの濃縮液を前記活性炭に接触させるように形成された導管を備え、
前記モジュールが、前記廃水流を前記ナノ濾過装置に搬送するように形成された流入用導管と、前記限外濾過装置からの濃縮液と通過液及び前記ナノ濾過装置からの通過液を前記容器に向かわせる流出用導管を備えることを特徴とするモジュール。
【請求項2】
(i)前記ナノ濾過装置が、1000ダルトン以下のカットオフ値、好ましくは500ダルトン以下のカットオフ値、より好ましくは、160ダルトン以下のカットオフ値を備えるという特徴、
(ii)前記ナノ濾過装置が、pH7乃至pH14の範囲で安定するという特徴、
(iii)前記ナノ濾過装置が、pH0乃至pH7の範囲で安定するという特徴、
(iv)前記ナノ濾過装置が、水混和性有機溶媒及び水非混和性有機溶媒の存在下で安定するという特徴、
(v)前記廃水流が、沈殿性を有する金属イオンの塩を本質的に備えないという特徴、
(vi)前記ナノ濾過装置と接触する前の流入廃水と接触するように配された活性炭及び請求項1の発明特定事項(d)で用いられる他の活性炭の全体又は一部が、必要に応じて、有機物質分解バクテリアの生存を維持する場合において、前記モジュールが、前記ナノ濾過装置と接触する前の流入廃水と接触するように配された活性炭を収容する容器を備えるという特徴の少なくとも1つの特徴を備えることを特徴とする請求項1記載のモジュール。
【請求項3】
前記特徴(vi)を備え、前記活性炭を収容する一の容器が、前記流入廃水と接触するとともに、前記ナノ濾過装置からの濃縮液に接触することを特徴とする請求項2記載のモジュール。
【請求項4】
沈殿性の金属イオンの塩、非沈殿性の金属イオンの塩、有機溶媒及び有機溶質を含む有機物質を含有する廃水流を処理するシステムであって、
(A)廃水流用の流入導管、前記廃水流中の沈殿性の金属イオンとの反応により非水溶性の塩を形成する反応物質用の流入導管、前記非水溶性の塩のスラリを除去するための流出導管及び沈殿性の無機塩の低減化がなされた前記廃水流をユニット(B)へ案内する流出導管を備える反応装置と、
(B)前記塩の低減化がなされた廃水流中の沈殿性の金属イオンの塩の含有量を100ppm未満に低減するとともに、前記塩の低減化がなされた廃水流のための流入導管、無機塩沈殿物を有する限外濾過装置濃縮液のための流出導管及び本質的に沈殿性の金属イオンを含まない限外濾過装置を通過した液のための流出導管を備える限外濾過装置と、
(C)請求項1乃至3いずれかに記載のモジュールからなることを特徴とするシステム。
【請求項5】
(D1)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作するとともに、低減された有機物質の含有量を備えるナノ濾過装置の通過液を受け止め、非沈殿性の金属イオンの塩の略全量と更に低減された有機物質含有量を有する濃縮液と略純水である通過液とに前記ナノ濾過装置の通過液を分離する電気透析膜と逆浸透膜の組合体と、
(D2)前記ナノ濾過装置の通過液を受け止め、該ナノ濾過装置の通過液を非沈殿性の金属イオンの塩の略全量と有機溶質を含む濃縮液と、略純水である通過液とに分離する膜蒸留ユニットと、
(D3)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作するとともに、前記ナノ濾過装置の通過液を受け止め、該通過液を、略純水である膜蒸留凝集液と有機汚染物質を略備えない前記電気透析膜の無機物質濃縮液とに分離する電気透析膜と膜蒸留膜の組合体のうち1つを更に備えることを特徴とする請求項4記載のシステム。
【請求項6】
(E)前記限外濾過装置からの濃縮液のための前記流出導管及び必要に応じて活性炭を含有する前記容器からの有機物質を破壊するためのユニットと、
(F)紫外線放射化で低分子量の有機化合物を酸化させる少なくとも1つのユニットとの特徴(E)、(F)のうち少なくとも1つを更に備え、
前記紫外線放射下における酸化が、
(i)前記ナノ濾過装置の通過液上、及び/又は、
(ii)前記逆浸透膜の通過液及び/又は電気透析濃縮物(塩)上、及び/又は、
(iii)膜蒸留通過液及び/又は膜蒸留濃縮液上の点(i)(ii)(iii)のうち、1若しくはそれ以上の点で行なわれることを特徴とする請求項5記載のシステム。
【請求項7】
有機物質を含有する廃水流中の有機物質含有量及び体積を低減させる工程であって、
前記廃水流をナノ濾過装置に接触させ、濃縮液と、前記廃水流中に存在する非沈殿性の金属イオンの塩を含有する水流である通過液を得る段階と、
その後、前記濃縮液を、好適に逆流洗浄することが可能な限外濾過装置に接触させ、必要に応じて、活性炭にも接触させ、前記濃縮液中の有機物質の含有量及び体積量を低減させる段階からなることを特徴とする工程。
【請求項8】
(i)前記ナノ濾過装置が、1000ダルトン以下のカットオフ値、好ましくは500ダルトン以下のカットオフ値、より好ましくは、160ダルトン以下のカットオフ値を備えるという特徴、
(ii)前記ナノ濾過装置が、pH7乃至pH14の範囲で安定するという特徴、
(iii)前記ナノ濾過装置が、pH0乃至pH7の範囲で安定するという特徴、
(iv)前記ナノ濾過装置が、水混和性有機溶媒及び水非混和性有機溶媒の存在下で安定するという特徴、
(v)前記廃水流が、沈殿性を有する金属イオンの塩を略備えないという特徴、
(vi)追加的な活性炭及び請求項7に記載の他の活性炭の全部或いは一部が、必要に応じて、有機物質分解バクテリアの生存を維持する場合において、前記ナノ濾過装置と接触する前に、前記廃水流が前記追加的な活性炭に接触するという特徴の少なくとも1つの特徴を備えることを特徴とする請求項7記載の工程。
【請求項9】
前記特徴(vi)を備え、一の前記活性炭が、流入する廃水流との接触及び前記ナノ濾過装置からの濃縮液との接触に用いられることを特徴とする請求項8記載の工程。
【請求項10】
沈殿性の金属イオンの塩、非沈殿性の金属イオンの塩、有機溶媒及び有機溶質を含む有機物質を含有する廃水流を処理する工程であって、
(A)前記廃水流からの沈殿性の金属イオンの非水溶性の塩を沈殿させる反応物質に前記廃水流を接触させ、前記非水溶性の塩の形成されたスラリを除去し、段階(B)を実行するために無機塩の低減化がなされた前記廃水流を案内する段階と、
(B)段階(A)からの廃水流を限外濾過装置に接触させ、前記塩の低減化がなされた廃水中の沈殿性の金属イオンの含有量を100ppm以下に低減させる段階と、
(C)前記限外濾過装置の通過液をナノ濾過装置に接触させ、濃縮液と、前記廃水中に存在する非沈殿性の金属イオンの塩を含む水流である通過液を得るとともに、その後、前記濃縮液を好適に逆流洗浄することが可能な限外濾過装置に接触させるとともに必要に応じて活性炭にも接触させ、前記濃縮液中の有機物質の含有量及び体積量を低減する段階を備えることを特徴とする工程。
【請求項11】
(D1)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作する電気透析膜と逆浸透膜の組合体に前記ナノ濾過装置の通過液を接触させ、有機物質の含有量の低減化がなされた前記通過液を、非沈殿性の金属イオンの塩の略全量を含有するとともに更に低減された有機物質の含有量を備える濃縮液と、略純水である通過液に分離する段階と、
(D2)前記ナノ濾過装置の通過液を膜蒸留ユニットに接触させ、前記通過液を非沈殿性の金属イオンの塩の略全量を含む濃縮液と、略純水の通過液に分離する段階と、
(D3)直列式或いは並列式に、同時又は連続的に動作するとともに前記ナノ濾過装置の通過液を受け止める電気透析膜と逆浸透膜の組合体に接触させ、略純水の膜蒸留凝集液と、略有機汚染物質を含まない前記電気透析膜の無機物質濃縮液に分離する段階のうち1つの段階を更に備えることを特徴とする請求項10記載の工程。
【請求項12】
(E)前記限外濾過装置濃縮液中の有機物質を破壊するとともに必要に応じて、活性炭との接触後の流出液中の有機物質を破壊する段階と、
(F)前記ナノ濾過装置の通過液、及び/又は、逆浸透膜の通過液、及び/又は、電気透析濃縮物(塩)、及び/又は、分子蒸留の通過液、及び/又は、膜蒸留濃縮液に紫外線照射を行い、これらに含有される低分子化合物を酸化する段階との特徴(E)、(F)のうち少なくとも1つの段階を更に備えることを特徴とする請求項11記載の工程。
【請求項13】
有機物質を含有する廃水流中の有機物質の含有量及び体積量を低減させる工程において、前記廃水流は、沈殿性の金属イオンの塩を略含まず、前記廃水流を、ナノ濾過装置に接触させ、濃縮液と、前記廃水流中に存在する非沈殿性の金属イオンの塩を含有する水流である通過液を得る段階を備え、
前記濃縮液を限外濾過装置に接触させ、前記ナノ濾過装置内に形成された沈殿物質を連続的に除去することにより、前記ナノ濾過装置の寿命を延ばすことを特徴とする工程。
【請求項14】
(i)前記ナノ濾過装置が、1000ダルトン以下のカットオフ値、好ましくは500ダルトン以下のカットオフ値、より好ましくは、160ダルトン以下のカットオフ値を備えるという特徴、
(ii)前記ナノ濾過装置が、pH7乃至pH14の範囲で安定するという特徴、
(iii)前記ナノ濾過装置が、pH0乃至pH7の範囲で安定するという特徴、
(iv)前記ナノ濾過装置が、水混和性有機溶媒及び水非混和性有機溶媒の存在下で安定するという特徴、
(v)前記廃水流が、沈殿性を有する金属イオンの塩を略備えないという特徴、
(vi)活性炭の全部或いは一部が、必要に応じて、有機物質分解バクテリアの生命を維持する場合において、前記ナノ濾過装置との接触前、前記ナノ濾過装置との接触後、前記ナノ濾過装置との接触の前後で、前記廃水流が当該活性炭に接触するという特徴、
(vii)前記限外濾過装置が逆流洗浄可能な限外濾過装置であるという特徴のうち少なくとも1つの特徴を備えることを特徴とする請求項13記載の工程。
【請求項15】
前記特徴(vi)を備え、前記ナノ濾過装置の濃縮液と前記限外濾過装置との接触に加えて、一の前記活性炭が、流入する廃水流との接触及び前記ナノ濾過装置からの濃縮液との接触に用いられることを特徴とする請求項14記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−530100(P2009−530100A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501018(P2009−501018)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【国際出願番号】PCT/IL2007/000363
【国際公開番号】WO2007/107992
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(508282937)ビー.ピー.ティー.−バイオ ピュア テクノロジ エルティーディー. (1)
【Fターム(参考)】