説明

工程異常検知システム

【課題】手組みラインの各工程における作業時間や作業手順の異常を自動的に且つ可及的速やかに発見することで、手組みラインの改善活動を支援する。
【解決手段】生産ライン中の複数のポイントにてワークのIDを取得する一方で、各工程での作業開始と作業終了を検知することによって、作業開始時刻及び作業終了時刻をワークID別且つ工程別に記録していく。そして、作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知し、検知した異常とその異常に関係する工程とを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の工程を含む生産ラインの工程改善・生産管理を支援するための技術に関し、特に作業者が手作業で加工・組立てを行う手組みラインにおける工程異常を検知するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
商品ライフサイクルの短期化、ユーザニーズの多様化に伴い、製造業では、多品種少量生産、短納期生産、変量生産などへの対応が迫られている。そうした環境変化を受けて、機械が自動で製品の加工・組立てを行う自動化ラインから、人が手作業で加工・組立て作業を行う手組みラインへとシフトする工場が増えている。手組みラインとは、小規模構成のラインの中で多能工の作業者が臨機応変に作業を分担し合う生産方式である。セル生産方式は手組みラインの一形態である。手組みラインの利点は、人の柔軟性を活かすことで、設備を簡素化する(作業台と治工具で済む)とともに、多品種少量の製品を短納期で生産できることにある。
【0003】
手組みラインでは、製品の生産に必要な一連の作業が複数の工程に分割され、工程毎に作業場所、作業手順が定められる。各工程には作業者が配置され、先頭工程から最終工程まで全ての作業が順に実行されると製品が完成する(図18参照)。ライン全体に配置する作業者の人数や、一人の作業者が担当する工程の数には様々な形態が存在する。
【0004】
一般に、工場では生産性向上による競争力向上が至上命題であり、そのためには日々のたゆまぬ改善活動が重要となる。改善活動の第一歩は、ラインの生産能力を定量的に把握することである。とはいえ、手組みラインでは作業方法の良し悪しがラインの生産能力を大きく左右するが、多種多様で柔軟性に富んだ人の作業方法を直接定量化するのは困難である。そこで、通常、ラインの生産能力は作業時間によって間接的に定量化される。作業時間は作業方法の良し悪しによってできる影に相当するといえる。
【0005】
ラインの生産能力を定量的に把握できたら、次に課題発見を行う。
【0006】
工場が安定した収益を上げるには、同じ品質の製品が同じコスト、同じ時間で安定して生産できなければならない。なぜなら、品質、コスト、時間が製品毎に異なっていると、利益が出るかどうかがその製品の生産が完了するまでわからなくなるためである。手組みラインで同じ品質の製品を同じコスト、同じ時間で安定して生産するには、作業者が各工程の作業を一定の順序、一定の時間で安定して実行できることが重要である。
【0007】
しかしながら、プログラム通りに正確に動作する機械とは異なり、人の手作業は順序、時間のバラツキを伴う。バラツキの要因としては、例えば、作業者毎の習熟度・スキルの違い、作業手順書の記述の不備、作業手順書の解釈ミス、作業の難易度、作業ミスなどがある。
【0008】
このようなバラツキが発生しやすく、一定の順序、一定の時間で作業を安定して実行するのが困難な工程を発見するのが、手組みラインの改善活動における課題発見である。
【0009】
なお、作業の順序、時間を一定に保つための技術が特許文献1の中で提案されている。特許文献1には、工具に内蔵された発信機から発せされる基準信号を複数の受信機で受信し、受信機間の基準信号の受信時間差に基づいて工具の使用位置を監視する技術が開示されている。しかし、この方法は、作業ミスが発生しやすいことが既知である工程において
、作業ミスの発生を都度検知しているに過ぎない。
【0010】
また作業者に作業手順書を提示することで作業ミスを防止するための技術が特許文献2の中で提案されている。特許文献2には、各工程に設置されたディスプレイ上に作業者の作業とタイミングを合わせて自動で作業手順書を表示する技術が開示されている。しかし、これは作業手順書を電子化・自動表示することで、作業手順書の検索・閲覧を容易にしたに過ぎない。
【0011】
上述した公知技術はいずれも一定の手順、時間で作業を行うのが困難な工程(以下、「課題工程」という。)が事前に予測できている場合にしか適用できない。つまり、改善すべき課題工程の発見には何ら寄与しておらず、課題工程の発見自体は依然として豊富な経験と知識を持つ熟練者に頼るしかなかった。
【特許文献1】特開2004−258855号公報
【特許文献2】特開2004−310210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、手組みラインの各工程における作業時間や作業手順の異常を自動的に且つ可及的速やかに発見することで、手組みラインの改善活動を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明では、以下の手段または処理によって、複数の工程を含む生産ラインにおいて発生した異常を検知する。
【0014】
本発明に係る工程異常検知システムは、生産ライン中の複数のポイントにて、前記生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段と、各工程での作業開始を検知する作業開始検知手段と、各工程での作業終了を検知する作業終了検知手段と、前記作業開始検知手段の検知信号を受信した時刻及び前記作業終了検知手段の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録する作業実績記録手段と、前記作業実績記録手段により作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知する異常検知手段と、検知した異常とその異常に関係する工程とを出力する異常出力手段と、を備える。
【0015】
この構成によれば、作業実績記録手段により作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べるので、手組みラインの各工程における作業時間や作業手順の異常を自動的に且つ可及的速やかに発見することができる。
【0016】
ワーク識別手段がワークのIDを取得するポイント(ワークID取得ポイント)は、少なくとも生産ラインの入口工程と出口工程に設けられるとよい。好ましくは、生産ラインの中間工程にも1つ又は複数のワークID取得ポイントを設けるとよい。より好ましくは、生産ラインの全ての工程にワークID取得ポイントを設けるとよい。なお、ワークID取得ポイントが全ての工程に設けられていない場合には、作業実績記録手段は、作業開始時刻や作業終了時刻を記録する際、その地点より上流側最寄りのワークID取得ポイントで取得されたワークIDを利用すればよい。
【0017】
作業開始・作業終了の検知は、作業者が作業開始時・作業終了時に検知手段を明示的に
操作することにより行ってもよい。ただし、作業者の操作に頼ると検知ミス(検知漏れ)が発生するおそれがある。そこで、作業開始時・作業終了時に必ず発生するモノ又は人の動作(例えば、治具や工具の移動、ワークの移動、作業機械の操作など)を検知し、それを作業開始・作業終了とみなすようにすることが好ましい。これにより作業開始・作業終了の検知を自動化できるとともに、検知漏れを排除できる。
【0018】
異常検知手段によって発見可能な異常には、作業抜け、作業順序の逆転、作業時間の異常、滞留時間の異常、作業間隔の異常などがある。これらの異常を検知するための具体的な判断手法の例を以下に述べる。
【0019】
異常検知手段は、作業開始時刻が記録されたときに、このワークの一つ前の工程の作業終了時刻を調べ、前記一つ前の工程の作業終了時刻が記録されていなかった場合には、前記一つ前の工程において作業抜けが発生したと判断するとよい。
【0020】
すなわち、第1ワークが第1工程、第2工程の順に流れる生産ラインの場合であれば、第1ワークの第2工程の作業開始時刻が記録されたときに、第1ワークの第1工程の作業終了時刻を調べ、その作業終了時刻が記録されていなかったら、第1工程において作業抜けが発生したと判断するのである。かかる判断結果が出力されれば、ユーザは、作業抜けを誘発する問題が第1工程に存在する、つまり、第1工程が課題工程であると認識できる。
【0021】
あるいは、異常検知手段は、作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べ、この工程の作業開始時刻が記録されていなかった場合には、この工程において作業抜けが発生したと判断してもよい。
【0022】
異常検知手段は、作業開始時刻が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業開始時刻を調べ、前記一つ前のワークの作業開始時刻が記録されていなかった、又は、このワークの作業開始時刻よりも遅かった場合には、この工程の入口とこの工程の上流側最寄りのワークID取得ポイントとの間において作業順序の逆転が発生したと判断してもよい。
【0023】
すなわち、第1ワーク、第2ワークがこの順番で第1工程に流れる生産ラインの場合であれば、第2ワークの第1工程の作業開始時刻が記録されたときに、第1ワークの第1工程の作業開始時刻を調べ、第1ワークの第1工程の作業開始時刻が記録されていなかった、又は、第2ワークの第1工程の作業開始時刻よりも遅かったら、第1工程の入口と第1工程の上流側最寄りのワークID取得ポイントとの間において作業順序の逆転が発生したと判断するのである。かかる判断結果が出力されれば、ユーザは、作業順序の逆転を誘発する問題が第1工程の入口と第1工程の上流側最寄りのワークID取得ポイントとの間に存在する、つまり、その間の工程が課題工程であると認識できる。
【0024】
異常検知手段は、作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べることでこの工程における作業時間を算出し、前記作業時間が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において作業時間の異常が発生したと判断してもよい。
【0025】
すなわち、第1ワークの第1工程の作業終了時刻が記録されたときに、第1ワークの第1工程の作業開始時刻を調べ、両時刻の差分をとることで第1工程の作業時間を算出し、その作業時間と所定の基準と比較して作業時間の長短を判断するのである。かかる判断結果が出力されれば、ユーザは、作業時間の異常を誘発する問題が第1工程に存在する、つまり、第1工程が課題工程であると認識できる。
【0026】
異常検知手段は、作業開始時刻が記録されたときに、このワークの一つ前の工程の作業終了時刻を調べることで前記一つ前の工程とこの工程の間の滞留時間を算出し、前記滞留時間が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において滞留時間の異常が発生したと判断してもよい。
【0027】
すなわち、第1ワークが第1工程、第2工程の順に流れる生産ラインの場合であれば、第1ワークの第2工程の作業開始時刻が記録されたときに、第1ワークの第1工程の作業終了時刻を調べ、両時刻の差分をとることで第1工程と第2工程の間の滞留時間を算出し、その滞留時間と所定の基準とを比較して滞留時間の長短を判断するのである。かかる判断結果が出力されれば、ユーザは、滞留時間の異常を誘発する問題が第1工程若しくは第2工程、又は、第1工程と第2工程の間に存在する、つまり、第1工程及び第2工程が課題工程であると認識できる。
【0028】
異常検知手段は、作業開始時刻(又は作業終了時刻)が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業開始時刻(又は作業終了時刻)を調べることでこの工程における作業間隔を算出し、前記作業間隔が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において作業間隔の異常が発生したと判断してもよい。
【0029】
すなわち、第1ワーク、第2ワークがこの順番で第1工程に流れる生産ラインの場合であれば、第2ワークの第1工程の作業開始時刻(又は作業終了時刻)が記録されたときに、第1ワークの第1工程の作業開始時刻(又は作業終了時刻)を調べ、両者の差分をとることで第1工程における作業間隔を算出し、その作業間隔と所定の基準とを比較して作業間隔の長短を判断するのである。かかる判断結果が出力されれば、ユーザは、作業間隔の異常を誘発する問題が第1工程に存在する、つまり、第1工程が課題工程であると認識できる。
【0030】
前記基準は、所定期間に生産された複数のワークの作業実績から算出される統計値であって、前記統計値は、前記作業実績記録手段による記録が行われるたびに更新されるとよい。ここで「所定期間に生産された複数のワーク」は、例えば、「直近100個のワーク」「直近4時間の間に生産されたワーク」のように、個数や時間(日、週、月等を含む)で設定すればよい。統計値としては、平均値や標準偏差などを用いることができる。一般に、生産ラインの生産性は、環境、時間帯、ライン寿命、作業者(勤務シフト)などの種々の要因によって変動するものである。そこで、作業実績から求めた統計値を用い、しかもその統計値を逐一更新していくことで、上記要因による変動の影響を抑え、適切な異常判定を行うことができるようになる。
【0031】
さらに、前記基準が、作業者別又は/及びワークの種類別に複数設定されていることが好ましい。この場合、作業実績も、作業者別又は/及びワークの種類別に記録されることになる。作業者のシフトや作業中のワークに応じて基準を選択することで、より適切な異常判断を行うことができる。
【0032】
前記生産ラインにおける作業風景を動画記録する録画手段をさらに備え、前記異常出力手段は、異常が検知された時刻を表示するとともに、前記動画をその再生箇所の撮影時刻とともに再生表示することも好ましい。
【0033】
これにより、ユーザは、異常が発生した時点の作業風景を後から確認でき、どの工程のどの作業段階で異常が発生したのか、さらには、どのような理由から異常が発生したのか、などを詳細に検討することができ、改善活動に迅速につなげることができる。
【0034】
ここで、前記異常出力手段は、作業実績から、各工程における各ワークの作業開始時刻及び作業終了時刻を表すタイミングチャートを生成して表示し、前記タイミングチャート上に、異常が検知された時刻及び工程を表す異常箇所マークと、前記動画の再生箇所の撮影時刻を表す再生箇所マークとを表示するとなおよい。これにより、工程間のワークの流れを容易且つ適切に把握でき、異常の確認や課題工程の抽出が簡単になる。
【0035】
なお、本発明は、上記手段の少なくとも一部を有する工程異常検知システムとして捉えることができる。また、本発明は、上記処理の少なくとも一部を含む工程異常検知方法、または、かかる方法を実現するためのプログラムとして捉えることもできる。上記手段および処理の各々は可能な限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【0036】
たとえば、本発明の一態様としての工程異常検知方法では、情報処理装置が、生産ライン中の複数のポイントにて、前記生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段から、ワークのIDを受信し、各工程での作業開始を検知する作業開始検知手段から検知信号を受信し、各工程での作業終了を検知する作業終了検知手段から検知信号を受信し、前記作業開始検知手段の検知信号を受信した時刻及び前記作業終了検知手段の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録装置に記録し、前記記録装置に作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知し、検知した異常とその異常に関係する工程とを出力装置に出力する。
【0037】
また、本発明の一態様としての工程異常検知プログラムは、情報処理装置に、生産ライン中の複数のポイントにて、前記生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段から、ワークのIDを受信する処理と、各工程での作業開始を検知する作業開始検知手段から検知信号を受信する処理と、各工程での作業終了を検知する作業終了検知手段から検知信号を受信する処理と、前記作業開始検知手段の検知信号を受信した時刻及び前記作業終了検知手段の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録装置に記録する処理と、前記記録装置に作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知する処理と、検知した異常とその異常に関係する工程とを出力装置に出力する処理と、を実行させる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、手組みラインの各工程における作業時間や作業手順の異常を自動的に且つ可及的速やかに発見することができ、手組みラインの改善活動の支援が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
【0040】
(第1実施形態)
<システム構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る工程異常検知システムの構成を示している。工程異常検知システムは、複数の工程を含む生産ライン(特に手組みライン)において発生した異常及びその異常に関係する工程を自動的に検知し、改善活動を施すべき課題工程の発見を支援するためのシステムである。なお、本実施形態では、工程1〜工程nのn個の工程で生産ラインが構成されており、工程1、工程2、・・・、工程nの順にワークが流れるものとする。
【0041】
工程異常検知システムは、ハードウェア構成として、表示装置(液晶ディスプレイなど)を具備した情報処理装置(コンピュータ)1と、複数のリーダ2と、複数のセンサ3とを備えている。情報処理装置1は生産ラインあるいは生産管理部門に設置される。リーダ2は、生産ライン中の複数のポイント(ワークID取得ポイント)に設置される。図1の例では、工程1、工程3、工程nにリーダ2が設置されている。またセンサ3は生産ラインを構成する各工程1〜nに設置される。ただし、リーダ2が設置されたポイントでは、リーダ2がセンサ3の役割を果たすため、センサ3を設置しなくともよい。
【0042】
リーダ2は、ワークID取得ポイントにおいて、生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段として機能する。本実施形態では、それぞれのワークにバーコードが付されており、作業者がリーダ2でバーコードを読み取ることでワークのIDを識別する。リーダ2の識別信号は情報処理装置1に送られる。なお、リーダ2としては、バーコード・リーダの他にも、2次元コード・リーダ(この場合、ワークに2次元コードが付される。)や、RFIDタグ・リーダ(この場合、ワークにRFIDタグが付される。)などを採用することができる。RFIDタグを利用した場合、ワークIDの読取を自動化できるという利点がある。
【0043】
センサ3は、各工程での作業開始・作業終了を検知する作業開始検知手段・作業終了検知手段として機能する。センサ3としては、光電センサの他、どのようなセンサを採用してもよい。本実施形態では、作業開始・作業終了の検知を自動化し、検知漏れを排除するために、作業開始時・作業終了時に必ず発生するモノ又は人の動作をセンサ3で検知し、それを作業開始・作業終了とみなしている。一例を挙げると、ワークを作業台に設置して作業を行う工程では、作業台に取り付けた光電センサで、ワークが作業台に設置されたことを作業開始として、ワークが作業台から外されたことを作業終了として、それぞれ検知する。また、ワークを作業機械に装着して作業を行う工程では、ワークの脱着、作業機械のON/OFF、作業機械の治具やチャックの移動、作業機械の扉の開閉などを、作業開始・作業終了として検知すればよい。また、作業者が治具や工具を扱う工程では、その治具や工具の移動を検知するようにしてもよい。センサ3の検知信号は情報処理装置1に送られる。
【0044】
情報処理装置1は、機能構成として、作業実績記録部10、時刻供給部11、平均作業時間算出部12、平均作業間隔算出部13、作業抜け検知部14、作業順序逆転検知部15、作業時間異常検知部16、作業間隔異常検知部17、異常出力部18を備える。これらの機能は、情報処理装置1のCPU(中央演算処理装置)が工程異常検知プログラムを実行することにより実現されるものである。ただし、時刻供給部11はソフトウェアタイマでなくハードウェアタイマを利用しても構わない。
【0045】
作業実績記録部10は、センサ3又はリーダ2から作業開始・作業終了の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録する作業実績記録手段として機能する。また、作業抜け検知部14、作業順序逆転検知部15、作業時間異常検知部16、及び、作業間隔異常検知部17はそれぞれ、作業実績記録部10により作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知する異常検知手段として機能する。異常出力部18は、検知した異常とその異常に関係する工程とを表示装置(出力装置)に出力する異常出力手段として機能する。
【0046】
以下、情報処理装置1の各機能の具体的な動作を説明する。ここでは、先に生産ラインに供給されるワークから順に、「00001」、「00002」、「00003」、・・・というワークIDが付されているものとする。
【0047】
<作業実績の集計>
生産ラインの稼働中、ワークID取得ポイントではリーダ2によってワークIDが取得され、各工程ではセンサ3によって作業開始及び作業終了が検知される。リーダ2の識別信号及びセンサ3の検知信号はそれぞれ作業実績記録部10に送られる。
【0048】
作業実績記録部10は、リーダ2の識別信号を受信することで、ワークの存在位置とIDとを認識する。リーダ2が作業開始検知手段又は作業終了検知手段を兼ねているときには、識別信号を受信した時刻を当該工程における作業開始時刻又は作業終了時刻として認識する。また、作業実績記録部10は、センサ3の検知信号を受信することで、当該工程における作業開始時刻又は作業終了時刻を認識する。なお、識別信号、検知信号を受信したときの現在時刻は、時刻供給部11から供給される。
【0049】
作業実績記録部10は、識別信号・検知信号を受信する都度、又は、一定時間置きに、作業開始時刻及び作業終了時刻を記憶装置(ハードディスク、メモリなど)に記録する。図2は、記憶装置に記録される作業実績の一例である。図2に示すように、ワークID別、工程別に、作業開始時刻(日時)と作業終了時刻(日時)が記録されていく。なお、作業実績は、作業者別(勤務シフト別)又は/及びワークの種類別に記録されるとよい。作業者の習熟度やワークの作業内容によって生産性(作業時間)にバラツキがでるからである。
【0050】
図1に示す生産ラインでは、ワークIDの認識が工程1・工程3の入口(作業開始時)と工程nの出口(作業終了時)しかできない。そこで、作業実績記録部10は、センサ3の検知信号から作業開始時刻や作業終了時刻を記録する際には、その地点より上流側最寄りのワークID取得ポイントで取得されたワークIDを利用する。例えば、工程2の入口のセンサ3から検知信号を受信した場合には、直近の工程1のリーダ2で識別されたワークIDを利用し、他の作業実績記録との整合を適宜とりながら、工程2の作業開始時刻を記録するのである。
【0051】
このように作業実績を蓄積するのと並行して、平均作業時間算出部12は、所定期間に生産された複数のワークの作業実績から、工程毎の平均作業時間を算出する。具体的には、平均作業時間算出部12は、作業実績記録部10による記録が行われるたびに、直近の所定個数(例えば100個)分のワークの作業開始時刻及び作業終了時刻を読み出し、工程毎に作業時間(=作業終了時刻−作業開始時刻)を算出し、その平均値を求める。この算出結果は記憶装置に記録される。図3は記憶装置に記録される平均作業時間の一例である。
【0052】
さらに、平均作業間隔算出部13が、所定期間に生産された複数のワークの作業実績から、工程毎の平均作業間隔を算出する。作業間隔は、あるワークの作業開始時刻(又は作業終了時刻)とその次のワークの作業開始時刻(又は作業終了時刻)との差分として算出できる。平均作業間隔についても、直近の所定個数分のワークの作業実績から算出され、記憶装置に記録される。図4は平均作業間隔の一例である。
【0053】
ここで算出された平均作業時間及び平均作業間隔は、後述する作業時間異常や作業間隔異常を判定する際の判定基準として利用される。本実施形態では、判定基準として、直近の作業実績から算出される統計値(平均値)を用いるので、時間帯、ライン寿命、作業者(勤務シフト)などに起因する生産性の変動の影響を抑えて、適切な異常判定を行うことができるようになる。もちろん、作業実績が作業者別やワークの種類別に集計されているときは、それに合わせて判定基準(平均作業時間や平均作業間隔)も作業者別・ワークの種類別に算出し、使い分けるようにするとよい。
【0054】
<作業抜けの検知>
作業抜けとは、作業が施されることなく次の工程にワークが流れる異常をいう。作業抜け検知部14は、作業実績を監視することにより、作業抜けの発生を検知する。具体的には、作業抜け検知部14は、いずれかの作業開始時刻が記録されたときに、このワークの一つ前の工程の作業終了時刻を調べ、作業抜けの有無を判断する。
【0055】
例えば、図5の例であれば、ワークID「00003」のワークについて工程2の作業開始時刻が記録されたので、作業抜け検知部14は、同一ワークの工程1の作業終了時刻を調べる。このとき、工程1の作業終了時刻が空欄の場合(記録されていなかった場合)には、工程1において作業抜けが発生したと判断する。すなわち、工程1での作業終了の非検知が作業抜けに起因するものとみなすのである。
【0056】
この場合、作業抜けを誘発する何らかの問題が工程1に存在する、と言うことができる。換言すれば、工程1が改善活動の対象とすべき課題工程であると特定できる。
【0057】
なお、作業抜け検知部14が、いずれかの作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べて、作業抜けの有無を判断するようにしてもよい。すなわち、ワークID「00003」のワークについて工程2の作業終了時刻が記録されたら、その工程2の作業開始時刻を調べ、工程2の作業開始時刻が空欄の場合に、工程2において作業抜けが発生したと判断するのである。
【0058】
<作業順序逆転の検知>
作業順序の逆転とは、後のワークが前のワークよりも先に作業を施される異常(ワークの取り違えなど)をいう。作業順序逆転検知部15は、作業実績を監視することにより、作業順序の逆転を検知する。具体的には、作業順序逆転検知部15は、いずれかの作業開始時刻が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業開始時刻を調べ、作業順序の逆転が発生していないかどうか判断する。
【0059】
例えば、図6の例であれば、ワークID「00003」のワークについて工程2の作業開始時刻が記録されたので、作業順序逆転検知部15は、ワークID「00002」の工程2の作業開始時刻を調べる。このとき、工程2の作業開始時刻が空欄(記録されていなかった)又は工程1の作業開始時刻よりも遅かった場合には、工程2の入口と工程2の上流側最寄りのワークID取得ポイント(図1の例では工程1の入口)との間において作業順序の逆転が発生していたと判断する。
【0060】
この場合、作業順序の逆転を誘発する何らかの問題が工程1の入口から工程2の入口の間に存在する、と言うことができる。換言すれば、工程1あるいは工程2が改善活動の対象とすべき課題工程であると特定できる。
【0061】
<作業時間異常の検知>
作業時間異常とは、ある工程における作業時間が長すぎる又は短すぎる異常をいう。つまり、平均作業時間に比べて過度に作業時間が長い場合には、何らかの阻害要因で作業が中断・遅延したものと考えられるし、過度に作業時間が短い場合には、何らかの作業抜けが発生したものと考えられる。
【0062】
作業時間異常検知部16は、作業実績を監視することにより、作業時間の異常を検知する。具体的には、作業時間異常検知部16は、いずれかの作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べることでこの工程における作業時間を算出し、平均作業時間と比較することで作業時間の異常が発生していないかどうか判断する

【0063】
例えば、図7の例であれば、ワークID「00003」のワークについて工程2の作業終了時刻が記録されたので、作業時間異常検知部16は、同一ワークの工程2の作業開始時刻を調べ、工程2における作業時間(=作業終了時刻−作業開始時刻)を算出する。そして、算出された作業時間と、工程2の平均作業時間とを比較し、それらの差の絶対値が所定値以上であれば、作業時間に異常があると判断する。このとき比較対象となる平均作業時間は記憶装置から読み込まれる。
【0064】
この場合、作業時間の異常を誘発する何らかの問題が工程2に存在する、と言うことができる。換言すれば、工程2が改善活動の対象とすべき課題工程であると特定できる。
【0065】
<作業間隔異常の検知>
作業間隔の異常とは、ある工程でのワークの供給間隔(又は送出間隔)が長すぎる又は短すぎる異常をいう。つまり、平均作業間隔に比べて過度に作業間隔が長い場合には、何らかの阻害要因で作業の仕掛かりや作業自体が中断・遅延したものと考えられるし、過度に作業間隔が短い場合にも、何らかの作業異常が発生したものとみなすことができる。
【0066】
作業間隔異常検知部17は、作業実績を監視することにより、作業間隔の異常を検知する。具体的には、作業間隔異常検知部17は、いずれかの作業開始時刻が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業開始時刻を調べることでこの工程における作業間隔を算出し、平均作業間隔と比較することで作業間隔の異常が発生していないかどうか判断する。
【0067】
例えば、図8の例であれば、ワークID「00003」のワークについて工程2の作業開始時刻が記録されたので、作業間隔異常検知部17は、ワークID「00002」の工程2の作業開始時刻を調べ、工程2における作業間隔(=ワークID「00003」の作業開始時刻−ワークID「00002」の作業開始時刻)を算出する。そして、算出された作業間隔と、工程2の平均作業間隔とを比較し、それらの差の絶対値が所定値以上であれば、作業間隔に異常があると判断する。このとき比較対象となる平均作業間隔は記憶装置から読み込まれる。
【0068】
この場合、作業間隔の異常を誘発する何らかの問題が工程2に存在する、と言うことができる。換言すれば、工程2が改善活動の対象とすべき課題工程であると特定できる。
【0069】
なお、上記例では、作業開始時刻の差に基づいて作業間隔の異常を検知したが、作業終了時刻の差に基づいて同様の処理を行ってもよい。
【0070】
<検知結果の出力>
上述した異常検知処理のいずれかで異常が検知された場合、異常出力部18は、異常検知結果を表示装置に出力する。図9は、異常検知結果の表示例を示している。この例では、異常種別(検知された異常の種別)「作業抜け」、課題工程(異常に関係する工程)「工程2」、対象ワーク(異常のあったワークのID)「00005」、発生時刻(異常の発生した時刻)「2005/04/01 13:40:20」という情報が表示されている。
【0071】
このような情報が生産ライン又は生産管理部門に設置された表示装置に表示されることで、作業者又は生産管理者は、異常のあったワークを取り除いたり、異常のあった工程の作業状況を確認したりするなど、迅速に不具合対策をとることができる。さらに、工程2で作業抜けが発生したという事実に基づき、作業抜けが発生した原因を究明したり、工程
2の作業手順を見直したりと、課題工程の改善活動につなげることができる。
【0072】
ここで、異常出力部18が、作業実績から、各工程における各ワークの作業開始時刻及び作業終了時刻を表すタイミングチャートを生成して、そのタイミングチャートを表示装置に表示することも好ましい。さらに、タイミングチャート上に重ねて、異常が検知された時刻及び工程を表す異常箇所マークを表示してもよい。
【0073】
図10〜図14はタイミングチャートの一例を示している。横軸が時間軸を表している。これらの図では、説明を容易にするため、工程1、工程2、工程3の3つの工程からなる生産ラインに、3つのワークを流した例を示す。正常時には、図10に示すように、各ワークの各工程での作業時間、作業間隔等がほぼ一定であり、それぞれのワークの動線101,102,103が規則正しい軌跡を描く。作業抜けが発生した場合には、図11に示すように、作業抜けが発生した工程2において、ワークの動線102に途切れが現れる。この部分に異常箇所マーク104を表示することで、工程2が課題工程であることが即座にわかる。作業順序の逆転が発生した場合には、図12に示すように、逆転が発生した工程1と工程2の間において、ワークの動線102,103が交差する。この部分を異常箇所マーク104で囲うことで、工程1〜工程2が課題工程であることが明確になる。また、作業時間異常が発生した場合(図13参照)や、作業間隔異常が発生した場合(図14参照)には、その異常が発生した工程におけるワークの動線103が間延びしたり狭小になったりと変形する。この場合も異常箇所マーク104で課題工程を明示すると、問題の所在が明らかとなる。
【0074】
以上述べたように、本実施形態のシステムによれば、手組みラインで発生した作業時間・作業手順の異常の発見並びに課題工程の特定が自動的に行われるため、手組みラインの問題発見及び改善活動の実施が容易になる。
【0075】
また、作業実績が更新されるタイミングで異常検知処理が実行されるため、発生した異常を可及的速やかに発見することができ、迅速な不具合対策をとることができる。
【0076】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態では、工程異常検知システムに、工程間での滞留時間異常を検知するための構成(具体的には、平均滞留時間算出部と滞留時間異常検知部)を追加する。それ以外の構成は第1実施形態のものと同様なので説明を省略する。
【0077】
滞留時間とは、ある工程と次の工程との間でワークが作業待ち状態にある時間をいい、滞留時間異常とは、工程間での作業待ち時間が長すぎる又は短すぎる異常をいう。
【0078】
平均滞留時間算出部は、作業実績記録部10が作業実績を蓄積するのと並行して、所定期間に生産された複数のワークの作業実績から、各工程間の平均滞留時間を算出する。具体的には、平均滞留時間算出部は、作業実績記録部10による記録が行われるたびに、直近の所定個数(例えば100個)分のワークの作業開始時刻及び作業終了時刻を読み出し、各工程間の滞留時間(=ある工程の作業開始時刻−その前の工程の作業終了時刻)を算出する。そして、滞留時間の平均値を算出し、記憶装置に記録する。
【0079】
滞留時間異常検知部は、作業実績を監視することにより、滞留時間の異常を検知する。具体的には、滞留時間異常検知部は、いずれかの作業開始時刻が記録されたときに、このワークの一つ前の工程の作業終了時刻を調べることで、一つ前の工程とこの工程の間の滞留時間を算出し、平均滞留時間と比較することで滞留時間の異常が発生していないかどうか判断する。
【0080】
例えば、図5の例であれば、ワークID「00003」のワークについて工程2の作業開始時刻が記録されたので、滞留時間異常検知部は、同一ワークの工程1の作業終了時刻を調べ、工程1と工程2の間の滞留時間(=工程2の作業開始時刻−工程1の作業終了時刻)を算出する。そして、算出された滞留時間と、工程1、工程2間の平均滞留時間とを比較し、それらの差の絶対値が所定値以上であれば、滞留時間に異常があると判断する。
【0081】
この場合、滞留時間の異常を誘発する何らかの問題が工程1若しくは工程2又は工程1と工程2の間に存在する、と言うことができる。換言すれば、工程1及び工程2が改善活動の対象とすべき課題工程であると特定できる。
【0082】
滞留時間の異常検知結果についても、第1実施形態と同様の方法で表示される。
【0083】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態では、作業時間・作業間隔・滞留時間の異常を判定する際の判定基準として、平均値だけでなく標準偏差も用いる。それ以外の構成は第1・第2実施形態のものと同様なので説明を省略する。
【0084】
平均作業時間算出部12は、所定期間に生産された複数のワークの作業実績から、工程毎の平均作業時間を算出するときに、工程毎の作業時間の標準偏差も算出する。これらの算出結果は、図15に示すように、記憶装置に記録される。同様にして、作業間隔及び滞留時間の平均値・標準偏差も算出され、記憶装置に記録される。
【0085】
作業時間異常検知部16は、いずれかの作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べることでこの工程における作業時間を算出する。そして、算出された作業時間と平均作業時間の差の絶対値と、作業時間の標準偏差との比率が所定値以上であれば、作業時間に異常があると判断する。作業間隔や滞留時間の異常も同様の手法で判断される。
【0086】
工程毎に作業内容が異なるため、作業時間・作業間隔・滞留時間のバラツキの幅は工程毎に異なるのが通例である。よって、工程毎に一律の判定基準を設けるのは好ましくないが、その一方で、作業者や生産管理者が工程毎の作業バラツキを把握し適切な判定基準を設定するのは難しい。
【0087】
その点、本実施形態のように作業実績から求めた平均値と標準偏差を用いれば、工程毎の作業バラツキを考慮した異常判定を行うことができるので、容易に判定精度を向上することができる。
【0088】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態では、生産ラインの作業風景を撮影し、動画記録する構成を工程異常検知システムに追加する。それ以外の構成は第1〜第3実施形態のものと同様なので説明を省略する。
【0089】
図16に示すように、工程異常検知システムは、撮像装置4を備える。撮像装置4は、生産ラインの各工程の作業風景を撮影するためのビデオカメラである。一つのカメラで全ての工程を撮影するのが難しい場合には、複数台のカメラを設置してもよい。撮像装置4の映像信号は情報処理装置1に送られる。情報処理装置1は、録画部19によって、映像信号を動画データの形式で記憶装置に格納する。このとき、録画部19は、時刻供給部11から供給される時刻に従って、動画の撮影時刻を記録していく。これにより、動画の撮影時刻と作業実績の記録時刻との同期がとられる。
【0090】
図17は、本実施形態における異常検知結果の表示例を示す図である。この表示例では、異常種別・課題工程・対象ワーク・発生時刻に加えて、タイミングチャート110と動画111が表示されている。また、タイミングチャート110上には、異常が検知された時刻及び工程を表す異常箇所マーク112と、動画の再生箇所の撮影時刻を表す再生箇所マーク113とが表示されている。
【0091】
再生ボタン114を押下すると、動画の再生が始まり、表示中の撮影時刻に同期して再生箇所マーク113が右方向に移動する。停止ボタン115を押下すると、動画111の再生及び再生箇所マーク113の移動が停止する。また、再生箇所マーク113自体を移動させると、それに同期して動画111がスキップする。かかるユーザインターフェイスを利用することにより、任意の時点の作業風景を簡単に再生することができる。
【0092】
本実施形態の構成によれば、ユーザは、異常が発生した時点の作業風景を後から確認でき、どの工程のどの作業段階で異常が発生したのか、さらには、どのような理由から異常が発生したのか、などを詳細に検討することができる。しかも、動画とタイミングチャートを対比することができるので、異常発生箇所の確認が容易である。従って、より迅速且つ適切な改善活動を行うことができる。
【0093】
なお、上記実施形態は本発明の一具体例を例示したものにすぎない。本発明の範囲は上記実施形態に限られるものではなく、その技術思想の範囲内で種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】第1実施形態の工程異常検知システムの構成を示す図。
【図2】作業実績の一例を示す図。
【図3】平均作業時間の一例を示す図。
【図4】平均作業間隔の一例を示す図。
【図5】作業抜けの検知処理及び滞留時間異常の検知処理を示す図。
【図6】作業順序逆転の検知処理を示す図。
【図7】作業時間異常の検知処理を示す図。
【図8】作業間隔異常の検知処理を示す図。
【図9】第1実施形態の異常検知結果の表示例を示す図。
【図10】正常時のタイミングチャートの一例を示す図。
【図11】作業抜けが発生したときのタイミングチャートの一例を示す図。
【図12】作業順序の逆転が発生したときのタイミングチャートの一例を示す図。
【図13】作業時間異常が発生したときのタイミングチャートの一例を示す図。
【図14】作業間隔異常が発生したときのタイミングチャートの一例を示す図。
【図15】平均作業時間及び作業時間標準偏差の一例を示す図。
【図16】第4実施形態の工程異常検知システムの構成を示す図。
【図17】第4実施形態の異常検知結果の表示例を示す図。
【図18】手組みラインの一例を示す模式図。
【符号の説明】
【0095】
1 情報処理装置
2 リーダ
3 センサ
4 撮像装置
10 作業実績記録部
11 時刻供給部
12 平均作業時間算出部
13 平均作業間隔算出部
14 作業抜け検知部
15 作業順序逆転検知部
16 作業時間異常検知部
17 作業間隔異常検知部
18 異常出力部
19 録画部
101,102,103 ワークの動線
104 異常箇所マーク
110 タイミングチャート
111 動画
112 異常箇所マーク
113 再生箇所マーク
114 再生ボタン
115 停止ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の工程を含む生産ラインにおいて発生した異常を検知する工程異常検知システムであって、
生産ライン中の複数のポイントにて、前記生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段と、
各工程での作業開始を検知する作業開始検知手段と、
各工程での作業終了を検知する作業終了検知手段と、
前記作業開始検知手段の検知信号を受信した時刻及び前記作業終了検知手段の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録する作業実績記録手段と、
前記作業実績記録手段により作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知する異常検知手段と、
検知した異常とその異常に関係する工程とを出力する異常出力手段と、
を備える工程異常検知システム。
【請求項2】
前記異常検知手段は、
作業開始時刻が記録されたときに、このワークの一つ前の工程の作業終了時刻を調べ、前記一つ前の工程の作業終了時刻が記録されていなかった場合には、前記一つ前の工程において作業抜けが発生したと判断する
請求項1に記載の工程異常検知システム。
【請求項3】
前記異常検知手段は、
作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べ、この工程の作業開始時刻が記録されていなかった場合には、この工程において作業抜けが発生したと判断する
請求項1に記載の工程異常検知システム。
【請求項4】
前記異常検知手段は、
作業開始時刻が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業開始時刻を調べ、前記一つ前のワークの作業開始時刻が記録されていなかった、又は、このワークの作業開始時刻よりも遅かった場合には、この工程の入口とこの工程の上流側最寄りのワークID取得ポイントとの間において作業順序の逆転が発生したと判断する
請求項1〜3のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項5】
前記異常検知手段は、
作業終了時刻が記録されたときに、このワークのこの工程の作業開始時刻を調べることでこの工程における作業時間を算出し、前記作業時間が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において作業時間の異常が発生したと判断する
請求項1〜4のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項6】
前記異常検知手段は、
作業開始時刻が記録されたときに、このワークの一つ前の工程の作業終了時刻を調べることで前記一つ前の工程とこの工程の間の滞留時間を算出し、前記滞留時間が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において滞留時間の異常が発生したと判断する
請求項1〜5のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項7】
前記異常検知手段は、
作業開始時刻が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業開始時刻を調べることでこの工程における作業間隔を算出し、前記作業間隔が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において作業間隔の異常が発生したと判断する
請求項1〜6のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項8】
前記異常検知手段は、
作業終了時刻が記録されたときに、一つ前のワークの同一工程の作業終了時刻を調べることでこの工程における作業間隔を算出し、前記作業間隔が予め設定された基準から外れていた場合には、この工程において作業間隔の異常が発生したと判断する
請求項1〜6のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項9】
前記基準は、所定期間に生産された複数のワークの作業実績から算出される統計値であって、
前記統計値は、前記作業実績記録手段による記録が行われるたびに更新される
請求項5〜8のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項10】
前記基準は、作業者別又は/及びワークの種類別に複数設定されている
請求項5〜9のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項11】
前記生産ラインにおける作業風景を動画記録する録画手段をさらに備え、
前記異常出力手段は、異常が検知された時刻を表示するとともに、前記動画をその再生箇所の撮影時刻とともに再生表示する
請求項1〜10のいずれかに記載の工程異常検知システム。
【請求項12】
前記異常出力手段は、
作業実績から、各工程における各ワークの作業開始時刻及び作業終了時刻を表すタイミングチャートを生成して表示し、
前記タイミングチャート上に、異常が検知された時刻及び工程を表す異常箇所マークと、前記動画の再生箇所の撮影時刻を表す再生箇所マークとを表示する
請求項11に記載の工程異常検知システム。
【請求項13】
複数の工程を含む生産ラインにおいて発生した異常を検知する工程異常検知方法であって、
情報処理装置が、
生産ライン中の複数のポイントにて、前記生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段から、ワークのIDを受信し、
各工程での作業開始を検知する作業開始検知手段から検知信号を受信し、
各工程での作業終了を検知する作業終了検知手段から検知信号を受信し、
前記作業開始検知手段の検知信号を受信した時刻及び前記作業終了検知手段の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録装置に記録し、
前記記録装置に作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知し、
検知した異常とその異常に関係する工程とを出力装置に出力する
工程異常検知方法。
【請求項14】
複数の工程を含む生産ラインにおいて発生した異常を検知する工程異常検知プログラムであって、
情報処理装置に、
生産ライン中の複数のポイントにて、前記生産ラインを流れるワークのIDを取得するワーク識別手段から、ワークのIDを受信する処理と、
各工程での作業開始を検知する作業開始検知手段から検知信号を受信する処理と、
各工程での作業終了を検知する作業終了検知手段から検知信号を受信する処理と、
前記作業開始検知手段の検知信号を受信した時刻及び前記作業終了検知手段の検知信号を受信した時刻を、それぞれ作業開始時刻及び作業終了時刻として、ワークのID別且つ工程別に記録装置に記録する処理と、
前記記録装置に作業開始時刻及び作業終了時刻のいずれかの項目が記録されたときに、このワークの一つ前の項目又は一つ前のワークの同一項目の記録内容を調べることによって、作業時間又は作業手順の異常を検知する処理と、
検知した異常とその異常に関係する工程とを出力装置に出力する処理と、
を実行させる工程異常検知プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−302096(P2006−302096A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−125016(P2005−125016)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】