説明

布材及びその製造方法

【課題】導電線材と接続部材とを接続性良く電気的に接続することができる布材を提供する。
【解決手段】導電線材15A及び非導電線材を含む布材13Aであって、非導電線材を部分的に除去して形成され導電線材を露出させる露出部17Aと、露出部で露出された導電線材に電気的に接続される接続部材18Aと、を備える。露出部は、布材が張設される枠体の内側に配置される複数の孔20Aを有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布材及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、導電線材と接続部材とを接続性良く電気的に接続することができる布材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用シートとして、面状弾性体(ネット材)を枠体に張設してなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この面状弾性体にセンサ機能又はヒータ機能を付与する場合、例えば、特許文献2に記載された導電糸を含む織物を面状弾性体として用いることが考えられる。この特許文献2には、主構成としての非導電糸(絶縁繊維などの他の線材)と導電糸(導電線材)にて構成される織物が開示されている。この導電糸は、通電により発熱可能な導電線材であり、例えば金属、合金、導電性プラスチックの導線又は炭素繊維にて構成される。そして経糸又は緯糸の一部に導電線材を用いて織物を織製したのち、導電線材の被接続部に接続部材を電気的につなげる。このとき接続部材を織物に熱溶着又は貼着することで、導電線材と接続部材を直接的につなげることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−342037号公報
【特許文献2】特開2007−227384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2の技術では、織物の主構成である非導電糸が導電線材と接続部材との接触の邪魔となるなどして、両者の接続抵抗が大きくなり接続性が悪化することがあった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、導電線材と接続部材とを接続性良く電気的に接続することができる布材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、請求項1に記載の発明は、導電線材及び非導電線材を含む布材であって、前記非導電線材を部分的に除去して形成され前記導電線材を露出させる露出部と、前記露出部で露出された前記導電線材に電気的に接続される接続部材と、を備えることを要旨とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載において、前記露出部は、前記布材が張設される枠体の内側に配置される複数の孔を有することを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2記載において、前記複数の孔は、略直線状に並んで配置されていることを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3記載において、前記孔は、前記導電線材の長手方向に横長となる形状に形成されていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれか一項記載において、前記孔は、楕円形、円形又は角部が円弧状とされた多角形に形成されていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項2乃至5のいずれか一項記載において、前記孔は、内縁部が溶着されていることを要旨とする。
【0007】
上記問題を解決するために、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の布材の製造方法であって、前記非導電線材を部分的に除去して前記露出部を形成する第1工程と、前記露出部で露出された前記導電線材に前記接続部材を電気的に接続する第2工程と、を備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の布材によると、非導電線材を部分的に除去して露出部が形成され、接続部材は、露出部で露出された導電線材に電気的に接続される。このように、非導電線材を除去して形成される露出部を備えることで、非導電線材に極力邪魔されることなく導電線材と接続部材とを接続性良く電気的に接続することができる。
また、前記露出部が、前記布材が張設される枠体の内側に配置される複数の孔を有する場合は、複数の孔の間には非導電線材が残った状態となるため、枠体に張設された布材の張力の低下を抑制して導電線材と接続部材とを電気的に接続することができる。また、各孔で露出される導電線材の両端側が非導電線材に支持されるため、露出された導電線材のまがりやよれがなく、導電線材と接続部材との接続安定性をより高めることができる。
また、前記複数の孔が、略直線状に並んで配置されている場合は、露出部を簡易に形成できるとともに、接続部材を簡易に取り付けることができる。
また、前記孔が、前記導電線材の長手方向に横長となる形状に形成されている場合は、孔の開口面積を必要最小限に抑えつつ導電線材の露出面積を大きくすることができる。これにより、枠体に張設された布材の張力の低下をより確実に抑制できるとともに、導電線材と接続部材との接続安定性をより高めることができる。
また、前記孔が、楕円形、円形又は角部が円弧状とされた多角形に形成されている場合は、孔の周囲側の非導電線材により布材の張力を好適に受け得るため、枠体に張設された布材の張力の低下をより確実に抑制できる。
さらに、前記孔が、内縁部が溶着されている場合は、孔の内縁部の溶着部位により布材の張力を好適に受け得るため、枠体に張設された布材の張力の低下をより確実に抑制できる。
【0009】
本発明の布材の製造方法によると、非導電線材を部分的に除去して露出部が形成され、接続部材は、露出部で露出された導電線材に電気的に接続される。このように、非導電線材を除去して形成される露出部を備えることで、非導電線材に極力邪魔されることなく導電線材と接続部材とを接続性良く電気的に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【図1】実施例1に係る布枠体を備える車両用シートの斜視図である。
【図2】上記車両シートのシートバックの分解斜視図である。
【図3】上記シートバックの横断面図である。
【図4】上記布枠体を模式的に示す正面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】図5のVI−VI線縦断面拡大図である。
【図7】上記布枠体の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は露出部の形成前の状態を示し、(b)は露出部の形成後の状態を示し、(c)は接続部材の取付状態を示す。
【図8】実施例2に係る布枠体を模式的に示す要部正面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面拡大図である。
【図10】実施例3に係る布枠体を模式的に示す要部正面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面拡大図である。
【図12】実施例4に係る布枠体を模式的に示す要部正面図である。
【図13】図12のXIII−XIII線断面拡大図である。
【図14】図12のXIV−XIV線断面図である。
【図15】実施例5に係る布枠体を模式的に示す要部正面図である。
【図16】図15のXVI−XVI線断面拡大図である。
【図17】上記布枠体の製造方法を説明するための説明図であり、(a)は露出部の形成前の状態を示し、(b)は露出部の形成後の状態を示し、(c)は接続部材の取付状態を示す。
【図18】その他の形態の露出部を説明するための説明図であり、(a)は露出されない導電線材が存在する形態を示し、(b)は露出されない導電線材が存在する形態を示し、(b)は1つの孔で複数の導電線材が露出されている形態を示す。
【図19】更にその他の形態の露出部を説明するための説明図であり、(a)は複数の孔で導電線材が露出される形態を示し、(b)は複数の切欠部で導電線材が露出される形態を示す。
【図20】更にその他の形態の孔形状を説明するための説明図である。
【図21】実施例6に係る布材を備える車両用シートの斜視図である。
【図22】上記布材の裏面の一部透視正面図である。
【図23】(a)〜(c)は、製造工程を示す布材の概略正面図である。
【図24】(a)及び(b)は、実施例6に係る別の製造工程を示す布材の正面図である。
【図25】(a)は、実施例6に係る布材の正面図であり、(b)は、布材の縦断面図である。
【図26】(a)は、実施例6に係る別例の布材の正面図であり、(b)は、布材の縦断面図である。
【図27】(a)及び(b)は、実施例7に係る製造工程を示す布材の概略正面図である。
【図28】(a)及び(b)は、実施例7に係る別の製造工程を示す布材の正面図である。
【図29】(a)は、実施例7に係る布材の正面図であり、(b)は、布材の縦断面図である。
【図30】(a)は、実施例7に係る別例の布材の正面図であり、(b)は、別例の布材の縦断面図である。
【図31】(a)は、実施例8に係る布材の正面図であり、(b)は、布材の縦断面図である。
【図32】実施例8に係る接続部材と導電線材の縦断面図である。
【図33】縫製回数と抵抗値の関係を示すグラフである。
【図34】実施例7に係る布材の更に他の形態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0012】
1.布材
本実施形態1.に係る布材は、導電線材及び非導電線材を含む布材であって、非導電線材を部分的に除去して形成され導電線材を露出させる露出部と、この露出部で露出された導電線材に電気的に接続される接続部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
上記「非導電線材」は、布材を構成する限り、その材質、形状等は特に問わない。この非導電線材としては、例えば、導電線材よりも燃焼又は溶融し易い線材を採用することができる。この場合、非導電線材は、導電線材よりも低融点であるか、又は限界酸素指数(LOI)が26未満の線材であることが望ましい。この限界酸素指数(LOI)とは、絶縁繊維などの線材が燃焼を持続するために必要な最小酸素量から求めた酸素濃度の指数(O2%)である。限界酸素指数(LOI)は、「JIS K 7201 高分子材料の酸素指数燃焼試験方法」や、「JIS L 1091(1999) 8.5E−2法(酸素指数法試験)」に準拠して測定できる。
【0014】
上記非導電線材の材質としては、例えば、植物系及び動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維及びこれらの混紡繊維を例示できる。これら繊維は、比抵抗が10Ω・cmを超える絶縁繊維である。そして絶縁繊維の線材(紡績糸、フィラメント、延伸糸又は伸縮加工糸(仮撚加工糸や座屈糸)などの線材)を布材の構成として使用することができる。そして一般的な天然繊維はLOIが26未満であることが多い。例えば綿のLOIは18〜20であり、羊毛のLOIは24〜25である。そして天然繊維では、綿、麻又は羊毛が風合いに優れるため、布材の構成として用いることが好ましい。
【0015】
また一般的な化学繊維は、導電繊維よりも低融点であることが多い。そしてLOIが26未満の化学繊維として、例えばポリエステル(LOI:18〜20)や、ナイロン(LOI:20〜22)を例示できる。そして化学繊維では、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維(例えばポリエチレンテレフタレートのフィラメント)は耐久性と耐光性と強度に優れるため、布材の構成として用いることが好ましい。
【0016】
上記「導電線材」は、通電可能な導電性の線材である限り、その材質、形状等は特に問わない。この通電線材は、典型的に比抵抗が10〜10−12Ω・cmである。この比抵抗(体積抵抗率)とは、どのような材料が電気を通しにくいかを比較するために用いられる物性値であり、例えば「JIS K−7194」に準拠して測定することができる。この導電線材を含むことで、布材自体を、静電容量式センサの電極やヒータとして用いることができる。上記導電線材としては、金属線(例えば金属や合金などの導電糸)、炭素繊維のフィラメント及びメッキ線材(後述)を例示できる。また導電線材に非導電線材を撚り合せる(カバリングする)こともできる。ここで炭素繊維とは、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)やピッチ系炭素繊維である。なかでも焼成温度1000℃以上の炭素繊維(炭素化繊維、黒鉛化繊維、黒鉛繊維)は良好な電気伝導性を有するため、導電線材として好適に使用できる。
【0017】
また金属線の材質として、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、鋼、亜鉛、錫、ニッケル、ステンレス、アルミニウム及びタングステンを例示できる。なかでもステンレス製の金属線は、耐食性及び強度に優れることから、導電線材として好適に使用することができる。ここで鋼種は特に限定しないが、SUSNo304、SUSNo.316及びSUSNo.316Lを例示できる。SUSNo304は汎用性が高く、SUSNo.316及びSUSNo.316Lはモリブテンが含まれるため耐食性に優れる。
【0018】
ここで金属線の線径は特に限定しないが、強度や柔軟性を考慮すると、φ10〜150μmの金属線を用いることが好ましい。なお線径が小さい金属線ほど、柔軟性に優れる導電線材となる。そして導電線材として、他の線材の芯糸に対して、S又はZ撚方向に金属線(鞘糸)をカバリングしたカバリング糸を使用できる。すなわち線径の細い金属線(導電糸等)は、柔軟性に優れるが、引張強度が十分でない場合には、例えば芯糸にポリエステルフィラメントを用い、その鞘糸としてS及びZ撚方向にカバリングすることによって引張強度の補強ができる。
【0019】
また導電線材は、金属線(芯部)と、樹脂層の鞘部を有することが好ましい。すなわち細径の金属線(導電糸等)は、表面積が広く、錆による影響が大きい。したがって、樹脂コーティングが行われることが好ましい。コーティングのし易さ、耐久性、接続部での除去のし易さから樹脂によるコーティングが好ましい。樹脂としては、ウレタン、アクリル、シリコーン、ポリエステルなど特に限定はないが、ポリウレタンが耐久性から好ましい。またコーティング(樹脂層)の厚さは、ポリマー種や耐久性、用途に応じて選択することができ、例えば0.05〜500μm程度に設定することができる。コーティング方法は特に限定しないが、ポリマー分散液中に金属線を通してポリマーを付着させ、熱をかけて固着させる方法が好ましい。またポリマー粉末やポリマー溶融物を金属線に付着させたのち、必要に応じて加熱などして固着させることもできる。そして金属線へのこれら樹脂コーティングも加熱手段(後述)によって溶融又は燃焼させて除去することによって導電線材を露出させることができる。
【0020】
そして上記導電線材は、非導電線材よりも高融点を有する線材であるか、または限界酸素指数(LOI)が26以上の線材である。金属や合金などの導電糸は、典型的に天然繊維や合成繊維よりも高融点である。また金属や合金などの導電糸のLOIは典型的に26以上である(例えばステンレス繊維のLOIは49.6である)。そして炭素繊維(PAN系炭素繊維及びピッチ系炭素繊維)は、非溶融性であるとともに、そのLOIが60.0以上である。
【0021】
そしてメッキ線材は、非導電性又は導電性の線材(芯部)と、金属又は合金のメッキ部を有する。メッキ部を形成することで、非導電性の線材を導電化できる。また導電性の線材にメッキ部を形成することで、その耐久性を向上させることができる。非導電性の線材(芯部)として、パラ系アラミド繊維(LOI:29)、メタ系アラミドPBO繊維(LOI:68)、ポリアクリレート繊維(LOI:28)、PPS繊維(LOI:34)、PEEK繊維(LOI:33)、ポリイミド繊維(LOI:36)、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維及びポロン繊維を例示できる。
【0022】
またメッキ部は、芯部表面の全体または一部に形成することができる。メッキ部の形成方法(無電解メッキや電気メッキ等)は、芯部の材質に応じて適宜選択できる。メッキ処理に用いられる金属として、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)及びパラジウム(Pd)を例示できる。またメッキ処理に用いられる合金として、Ni-Sn、Cu-Ni、Cu-Sn、Cu-Sn、Cu-Zn及びFe-Niを例示できる。
【0023】
上記「布材」は、織物、編物、不織布又は組紐(組物)のいずれでもよい。例えば布材としての織物は、平織物、斜文織物又は朱子織物等のいかなる構成の織物でもよい。また布材としての編物は、経編、丸編又は横編等のいかなる構成の編物でもよい。そして布材としての不織布は、いかなるウェブ形成技術、いかなるウェブ結合技術によって製造した不織布でもよい。
【0024】
そして布材としての織物を作製する場合、緯糸及び/又は経糸の一部又は全部を導電線材で構成するとともに、残りの緯糸と経糸を非導電線材で構成することができる。例えば導電線材(緯糸)を、複数又は単数の非導電線材(緯糸)毎に打込むことができる。また導電線材(経糸)を、複数又は単数の非導電線材(経糸)毎に配置することもできる。さらに上述の場合には、布材の裏面側に、表面側(例えば着座側、意匠面側等)よりも多くの導電線材を配置させることが好ましい。例えば朱子織物を用いることで、布材裏面に導電線材(緯糸)の大部分を配置することができる。このように布材の表面側に導電線材が極力露出しない構成として、摩擦や摩耗に対する導電線材の耐久性を向上させることができる。
【0025】
また布材としての編物を作製する場合、タテ編又はヨコ編に限定されず、構成糸の一部に導電線材を用いるとともに、他の構成糸に非導電線材を用いる。そして組紐(経糸のみで作製された布材)では、その経糸の一部に導電線材を用いることができる。
【0026】
また織物、編物、不織布の裏面に導電線材を貼り付けることにより、布材を作製することができる。貼付方法は特に限定しないが、刺繍や縫付け等のステッチボンド(縫着)、接着剤を用いたケミカルボンド、低融点のポリマーを用いたサーマルボンド等の手法を例示することができる。
【0027】
そして布材を車両用シートの表皮材として用いる場合には、複数の導電線材を並列配置することが好ましい(例えば、図4等参照)。例えば布材にヒータ機能を持たせる場合、導電線材同士の間隔寸法(W1)を1mm〜60mmに設定することができる。また布材にセンサ(電極)機能を持たせる場合、導電線材同士の間隔寸法(W1)を60mmの範囲内に設定することが望ましい。導電線材同士の間隔寸法(W1)が60mmを超えると、布材のセンサ機能が悪化(静電容量が低下)して電極として機能しないおそれがある。好ましくは導電線材の間隔寸法(W1)の上限値を30mmとすることで、布材がより好適なセンサ機能(静電容量)を備える。
【0028】
そして布材を車両用シートの座席部の表皮材として用いる場合、着座性等を考慮して、布材の裏面にバッキングを施したり(樹脂層を形成したり)、パッド材や裏基布を配設したりすることが好ましい。この種のパッド材は、柔軟性を備える多孔性の部材であり、例えば含気率の高いウレタンパッドや、軟質ウレタンフォームからなるスラブウレタンフォームを用いることができる。また裏基布は、例えば織編物や不織布(他の線材)にて構成できる。そして布材とパッド材と裏基布をこの順で積層して接合手段により一体化したのち、所定の形状にカットする(表皮ピースを形成する)ことが好ましく行われる。接合手段としては、ラミネート加工(溶着)、縫着、接着などの手法を例示することができる。
【0029】
上記「露出部」は、非導電線材を部分的に除去して形成され導電線材を露出させる部位である限り、その配置形態、形状、大きさ、個数等は特に問わない。この露出部は、例えば、加熱手段を用いて、非導電線材を溶融又は燃焼させて除去することにより形成されることができる。このとき加熱手段の温度や出力などを適宜設定することにより、導電線材を極力燃焼(溶融)又は断線させることなく、非導電線材を燃焼(溶融)させることが望ましい。
【0030】
上記加熱手段としては、例えば、布材と物理的に接触可能な加熱装置(例えばパンチ機構、ハサミ機構等)や、レーザなどの光学的な加熱手段を例示できる。なかでもレーザは正確な温度(出力)制御が可能であり、加熱手段として好適に用いることができる。ここでレーザの種類は特に限定しないが、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザ、LDレーザ、LD励起固体レーザを例示できる。なかでも有機物(非導電線材)への吸収が高いCO2レーザが好ましい。
【0031】
またレーザは、布材の表裏面のいずれからも照射可能である。布材の表面側(表材としての布材側、即ち意匠面側)からレーザを照射する場合には、導電線材の位置をセンシングしつつレーザを照射することが望ましい。なかでも布材の裏面側(非意匠面側)からレーザを照射し、表面側を固定面に固定させることで、レーザの焦点を布材に合わせやすいため好ましい。またレーザの照射とともに不活性ガスを布材に吹付けることもできる。不活性ガス(窒素やヘリウムなど)の存在下で第1工程を行うことで、導電線材の燃焼(溶融)を好適に防止又は低減することができる。
【0032】
そして加熱手段の設定温度などを適宜調節することで、導電線材を残存させつつ非導電線材だけを燃焼(溶融)させたり、必要に応じて導電線材を燃焼(溶融)させたりすることができる。例えば三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:2512H2、発信機形式名:25SRP、レーザ定格出力:1000W)を加熱手段として使用することができる。このときレーザ加工機の照射条件を、出力15W以上25W未満(周波数200Hz,加工速度1500mm/min)に設定することで、導電線材を極力残存させつつ非導電線材を燃焼(溶融)させることができる。また照射条件を、出力25W(周波数200Hz,加工速度500mm/min)以上に設定することで、導電線材を燃焼(溶融)又は切断させることができる。
【0033】
上記露出部としては、例えば、〔1〕布材の非導電線材をスポット状(例えば、孔状、切欠き状等)に除去して形成される形態(例えば、図4及び図27等参照)、〔2〕布材の側縁部の非導電線材を除去して形成される形態(例えば、図17及び図22等参照)等を挙げることができる。
【0034】
上記露出部は、例えば、布材が張設される枠体の内側に配置される複数の孔を有することができる。この枠体としては、例えば、布材と一体に形成される樹脂製の枠体(例えば、図2参照)、布材の端縁部が係合手段(例えば、係合フック、クリップ、接着部、溶着部等)を介して係合される枠体等を挙げることができる。
【0035】
上記複数の孔は、例えば、略直線状に並んで配置されていることができる(例えば、図4及び図27等参照)。この場合、例えば、複数の孔は、上記枠体の一辺の近傍内側でその一辺に沿って略直線状に並んで配置されることができる。これにより、複数の孔及び接続部材が布材の側縁部に形成されることとなる。そのため、布材の側縁部の表面に他部材(例えば、表皮材等)を設けることで、複数の孔及び接続部材を覆い隠して意匠性を高めることができる。また、乗員の着座動作などによるシートの機械的負荷が接続部材にかかり難くなり、接続部材の耐久性を向上させることができる。
【0036】
上記孔は、例えば、導電線材の長手方向に横長となる形状に形成されていることができる(例えば、図5及び図27等参照)。
【0037】
上記孔は、例えば、楕円形、円形又は角部が円弧状とされた多角形に形成されていることができる(例えば、図5及び図20等参照)。この場合、上記布材を構成する非導電線材の接点間が溶着されていることが好ましい。孔の周囲側の非導電線材により布材の張力をより好適に受け得るためである。
【0038】
上記孔は、例えば、内縁部が溶着されていることができる。この場合、上記露出部は、加熱手段により非導電線材を燃焼又は溶融させて形成されることが好ましい。加熱手段による孔の形成と同時に孔の内縁部に溶着部位を形成できるためである。
【0039】
上記「接続部材」は、上記露出部で露出された導電線材に電気的に接続される限り、その構成、配置形態、形状等は特に問わない。この接続部材としては、例えば、〔1〕帯状に形成され、上記露出部を構成する複数の孔を覆うように布材に取り付けられる形態(例えば、図4等参照)、〔2〕線状に形成され、上記露出部を構成する複数の孔に架け渡され、各孔の一部を露出させた状態で布材の取り付けられる形態(例えば、図10及び図29等参照)等を挙げることができる。これらのうち、接続部材の補強機能といった観点から、上記〔1〕形態であることが好ましい。
【0040】
上記〔1〕形態では、例えば、上記接続部材としては、〔a〕布材に取り付けられる帯状の支持体と、この支持体の表面に設けられるメッキ層と、このメッキ層の上側に設けられる通電可能な導線と、を有する形態(例えば、図6及び図25等参照)、〔b〕布材に取り付けられる帯状の支持体と、この支持体の表面に設けられるメッキ層と、を有する形態(例えば、図9及び図26等参照)、〔c〕通電可能な導線と、弾縮性を有する帯状の支持体と、を有し、支持体は、上糸又は下糸の少なくとも一方に上記導線を用いるミシン(例えば工業用ミシン、家庭用ミシン等)によって布材に縫製して取り付けられている形態(例えば、図14及び図32等参照)等を挙げることができる。また、上記〔2〕形態では、例えば、上記接続部材は、布材に取り付けられる通電可能な導線を有する形態(例えば、図11及び図29等参照)等を挙げることができる。
【0041】
上記〔a〕〔b〕形態では、例えば、支持体は布帛であることができる。また、上記メッキ層は、通常、電気導電性を有する金属又は合金を有する層である。このメッキ層は、支持体の両表面に形成されていてもよく、支持体の一方の表面(例えば導電線材に望む面)のみに形成されていてもよい。また、上記〔a〕形態及び上記〔2〕形態では、導線は、導電線材よりも比抵抗が低いことが好ましい。導線の電気抵抗を導電線材よりも低くすることで、通電時における接続部材の発熱を防止又は低減することができる。ここで導線の比抵抗は、導電線材の比抵抗によって適宜設定することができる。典型的には、導線の比抵抗を1.4〜15×10−8Ω・mに設定することで、通電時における接続部材の発熱を防止又は低減することができる。
【0042】
上記〔c〕形態では、縫製にあたり、上記支持体は布材と縫製して固定して接続部が導電線材に過大な力が掛からないようにする。また後述するように支持体の弾縮性によって、導電線材に導線が押付けられるため、両部材の接触安定性が向上する。そして支持体は、所定の圧縮特性(圧縮残留ひずみ,硬さ)を有することが好ましい。例えば、支持体の硬さを75〜2000Nに設定することができ、好ましくは100N以上、さらに好ましくは200N以上に設定する。また支持体の圧縮残留ひずみを1〜9%(比較的低い値)に設定することができ、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下に設定する。このように圧縮残留ひずみの低い支持体を使用することで、導電線材と導線の接圧を好適に高めることができる。ここで支持体の硬さは、「JIS K 6400 6.」に準拠して測定できる。また圧縮残留ひずみは、「JIS K 6400 7.」に準拠して測定できる。
【0043】
上記支持体の材質や厚みは特に限定しない。支持体(材質)として、ゴム(例えば天然ゴム、合成ゴム等)、エラストマ、スラブウレタンなどの発泡性樹脂、嵩高の不織布及び嵩高の織編物を例示できる。なかでもスラブウレタンや天然ゴム発泡体は、適度な圧縮特性を有するとともに、布材への縫製作業が容易である。例えば支持体として、スラブウレタン(タイプ:EMM、厚み:5.0mm)、スラブウレタン(タイプ:EL68H、厚み:4.3mm)、天然ゴム発泡体(厚み5.0〜10.0mm)を用いることができる。
【0044】
上記導線は、ミシン糸として使用可能な柔軟性を有することが好ましい。例えば導線(材質)として、金、銀、銅、黄銅、白金、鉄、鋼、亜鉛、錫、ニッケル、ステンレス、アルミニウム及びタングステンを例示できる。なかでも銅製の導線(銅線)は、作製しやすく安価であることから、導線として好適に使用することができる。また導線に、上記材質のメッキ層を形成することができる。メッキ層を導線に形成することで、導電線材との接触抵抗を低減できるとともに、導線の耐腐食性を向上させることができる。なおメッキ層の材質は特に限定しないが、比較的安価である錫や銀のメッキ層を好適に使用することができる。また他の線材表面にメッキ層を形成してなる線材を、導線として用いることもできる。
【0045】
上記導線の太さは特に限定しないが、例えばφ0.01mm〜φ2.0mmであることが好ましい。また導線(ミシン糸)として、単数の導線(単糸)や、複数の導線を撚り合わせた撚糸を用いることができる。例えば一般的な縫製針(ミシン針)を使用する場合、ミシン糸として、導線(φ0.05mm)を7〜22本撚り合わせた撚糸を用いることができる。ここで導線(撚糸)の撚り数は特に限定しないが、30〜200回/mであることが好ましい。撚り数が30回/m未満であると、縫製時などに導線が分解する(隣り合う導線同士が擦れ合うことで撚糸がバラける)ことがあり、縫製作業に手間取ることがある。また撚り数が200回/mよりも多いと、導電線材との接触面積が極端に低下する傾向にある。そして導線(撚糸)の撚り数を50〜150回/m(ピッチ:7〜10mm)に設定することで、導電線材との接触面積を好適に確保するとともに、縫製時の導線の分解を防止又は低減できる。
【0046】
上記導線の縫製方法(ステッチ形式)は特に限定しないが、本縫い、単環縫い、手縫い、二重環縫い、縁飾り縫い及び扁平縫いを例示できる。なかでも本縫いは、導線(比較的剛性に優れる線材)に適したステッチ形式である。ここで本縫いでは、2種のミシン糸(上糸、下糸)を用いる。上糸とは、ミシン針に取付ける糸であり、下糸とは、上糸のループに通す糸である。これら上糸と下糸の少なくとも一方に導線を使用することで、本縫いによる縫製線を形成することができる(例えば、図12及び図31等参照)。また上糸と下糸のいずれか一方に導線を使用して、前記一方とは異なる他方に非導電線材を使用することもできる(例えば、図14及び図32等参照)。このとき導線は、一般的な縫製糸(ポリスエステルや綿)に比して低伸度且つ高剛性であるため、下糸として使用することが好ましい。非導電線材(材質や太さ)は特に限定しないが、強度や耐久性に優れるナイロンやポリエステル(太さ8#、20#程度)を使用することが好ましい。なおミシンとして各種の工業用ミシンを使用することができる。例えば本縫い可能なミシンとして、1本針本縫いミシンと2本針本縫いミシンを例示できる。
【0047】
上記縫製線の形態(本数、縫いピッチ、縫い糸間隔、縫製部の幅、縫製形状)は特に限定しない(例えば、図12及び図31等参照)。縫製線の本数は単数でもよいが、導電線材の抵抗値を低減する観点から、複数の縫製線を支持体に形成することが好ましい(例えば、図33等参照)。また典型的な縫製線の縫いピッチは2.0mm前後である。縫い糸間隔(縫製線同士の隙間間隔)は4mm前後であり、縫製部の幅(複数の縫製線全体の配置幅)は20mm前後である。そして、縫い糸間隔を調整するなどして縫製部の幅を狭めることにより(比較的簡単な作業により)、接続部材をコンパクト化することができる。また縫製線の縫製形状(上方視)は、直線状や蛇行状などの各種形状を取り得る。なかでも縫製線を直線状とすることで、複数の縫製線を支持体上にコンパクトに形成することができる。
【0048】
上記〔1〕形態では、例えば、上記接続部材は、縫製により布材に取り付けられていることができる。この縫製方法(ステッチ形式)は特に限定しないが、本縫い、単環縫い、手縫い、二重環縫い、縁飾り縫い及び扁平縫いを例示できる。また、縫製線の形態(本数、縫いピッチ、縫い糸間隔、縫製部の幅、縫製形状)は特に限定しない。縫製線の本数は単数でもよいが、導電線材の抵抗値を低減する観点から、複数の縫製線を形成することが好ましい(例えば、図33等参照)。また典型的な縫製線の縫いピッチは2.0mm前後である。縫い糸間隔(縫製線同士の隙間間隔)は4mm前後であり、縫製部の幅(複数の縫製線全体の配置幅)は20mm前後である。そして、縫い糸間隔を調整するなどして縫製部の幅を狭めることにより(比較的簡単な作業により)、接続部材をコンパクト化することができる。また縫製線の縫製形状(上方視)は、直線状や蛇行状などの各種形状を取り得る。なかでも縫製線を直線状とすることで、複数の縫製線を支持体上にコンパクトに形成することができる。
【0049】
上記接続部材は、例えば、孔の内側及び外側での縫製により布材に取り付けられていることができる(例えば、図5等参照)。この縫製による縫製線は、通常、各孔の内側を通り接続部材の長手方向に沿って延びる縫製線と、各孔の外側を通り接続部材の長手方向に沿って延びる縫製線と、を有する。この場合、縫製作業性といった観点から、上記複数の孔が略直線状に配置されていることが好ましい。
【0050】
上記接続部材は、例えば、布材の表面側及び裏面側のそれぞれに設けられていることができる(例えば、図6等参照)。さらに、上記接続部材は、例えば、布材の表面側に設けられる他部材(例えば、表皮材、加飾材等)で覆われる位置に配置されていることができる(例えば、図3等参照)。
【0051】
2.布枠体
本実施形態2.に係る布枠体は、上述の実施形態1.で説明した布材と、この布材と一体にインサート成形され布材が張設される樹脂製の枠体と、を備えることを特徴とする。
【0052】
3.布材の製造方法
本実施形態3.に係る布材の製造方法は、上述の実施形態1.で説明した布材の製造方法であって、非導電線材を部分的に除去して露出部を形成する第1工程と、露出部で露出された導電線材に接続部材を電気的に接続する第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0053】
上記布材の製造方法としては、例えば、(1)上記第1工程では、加熱手段により非導電線材をスポット状(例えば、孔状、切欠き状等)に除去して露出部を形成する形態(例えば、図4及び図27等参照)、(2)上記布材は、通電の必要な第一の導電線材と、通電の不要な第二の導電線材と、を有し、上記第1工程では、露出部において、第一の導電線材を露出させるとともに、第二の導電線材を加熱手段により燃焼又は溶融させて除去する形態(例えば、図18(a)及び図24等参照)、(3)上記布材は、通電の必要な第一の導電線材と、通電の不要な第二の導電線材と、を有し、上記第1工程において、第一の導電線材をスポット状に露出させるとともに、第二の導電線材を非露出状態で維持する形態(例えば、図18(b)及び図28等参照)等を挙げることができる。
【0054】
上記(1)形態によると、布材の外形形状を極力維持できるため、枠体に張設された布材の張力の低下を抑制できる。上記(2)(3)形態によると、比較的簡単な作業によって、第一の導電線材だけを露出させることができる。例えば、車両用シートでは、乗員との接触部(例えば腰部、肩部等)の導電線材を通電する一方、その他の部分は非通電状態にしたいとの要請があり、この要望に対応することができる。その結果、必要な導電線材(第一の導電線材)にのみ通電することで、布材(例えば、ヒータ機能、センサ機能等を持つ布材)の消費電力を極力抑えることができる。
【実施例】
【0055】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本実施例では、本発明に係る「布材」として、車両用シートの表皮材として用いられる布材を例示する。
【0056】
<実施例1>
(1)車両用シートの構成
本実施例に係る車両用シート1Aは、図1に示すように、座席部を構成するシートクッション2Aと、このシートクッション2Aの一端側に連なり背もたれ部を構成するシートバック3Aと、このシートバック3Aの上端側に連なるヘッドレスト4Aと、を備えている。
【0057】
(2)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体10Aは、図2及び図3に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この枠体11Aは、バックフレーム5Aの枠形状と合致する略四角形の枠形状に形成されており、バックフレーム5Aの前面部に着脱可能に組み付けられるようになっている。そして、この枠体11Aには、その枠の前面に覆い掛けられるようにして、布材13Aが張設されている。
【0058】
上記バックフレーム5Aの後面部には、図3に示すように、樹脂製のバックボード6Aが後面全体を覆うように設けられて固定されている。ここで、布材13Aは、着座乗員の背部を支える支持面が、一枚の面材によって形成されており、この面材の外周縁部が、枠体11Aに向けて引張り込まれて枠体11Aに埋め込まれて固定されている。そして、布材13Aの左右両サイド部の表面側(意匠面側)には、着座乗員の背部をサイドサポートするクッション用のパッド7Aが配設されている。
【0059】
そして、上記した面材(布材13A)の左右両サイド部には、更に面材8A(本発明に係る「他部材」として例示する。)が縫合されて継ぎ合わされており、これら左右の継ぎ合わされた面材8Aは、上記したパッド7Aを取り巻くように、枠体11Aの両外側に回し込まれると共に、それらの外周縁部に縫合された掛フック9Aが、枠体11Aの左右の横枠部の後面部に突出して形成された把持部12Aにそれぞれ引張り込まれて掛着されて固定されている。
【0060】
上記枠体11Aは、図2に示すように、その上枠部が、バックフレーム5Aの上枠部となる丸パイプ製のアッパフレーム5aAに当てられた状態として、また左右の横枠部が、バックフレーム5Aの左右のサイドフレーム5bAにそれぞれ当てられた状態として、バックフレーム5Aに組み付けられるようになっている。
【0061】
上記布材13Aは、図4に示すように、複数の導電線材15A及び非導電線材を含む織物からなり、適当な伸縮性を有している。複数の導電線材15Aは、所定の間隔W1(例えば、約10mm)で並列配置されている。また、布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材18Aと、を備えている。
【0062】
上記露出部17Aは、レーザ加熱手段を用いて非導電線材をスポット状に溶融又は燃焼させて除去することにより形成される複数の孔20Aからなる。これら複数の孔20Aは、枠体11Aの左右の側辺の内側で側辺に沿うように略直線状に並んで配置されている。
【0063】
上記各孔20Aには、図5及び図6に示すように、レーザ加熱手段で燃焼(溶融)又は断線されない導電線材15Aの一部(被接続部)が露出される。また、各孔20Aの内縁部は、孔20Aを形成する際にレーザ加熱手段により溶着されている。また、各孔20Aは、導電線材15Aの長手方向に横長となる楕円形に形成されている。これら各孔20Aは、その長軸長さL1が約10mmとされ、その短軸長さL2が約5mmとされている。したがって、この長軸長さL1と短軸長さL2との比(L1/L2)は約2とされている。
【0064】
上記接続部材18Aは、帯状に形成され、複数の孔20Aを覆うように布材13Aの表面側及び裏面側のそれぞれに縫製により取り付けられている。この接続部材18Aは、布材13Aの表面側に設けられる上述の面材8A(図6参照)で覆われる位置に配置されている。また、接続部材18Aは、布帛からなる帯状の支持体21Aと、この支持体21Aの表面に設けられるメッキ層22Aと、このメッキ層22Aの上側に設けられる通電可能な複数(図中2つ)の導線23Aと、を有している。
【0065】
上記支持体21Aの両縁側は、縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線25Aは、各孔20Aの外側を通って支持体21Aの長手方向に延びている。また、上記各導線23Aは、縫製(かがり縫い)により支持体21Aに取り付けられている。この縫製による縫製線26Aは、孔20Aの内側を通って支持体21Aの長手方向に延びている。上記メッキ層22A及び導線23Aは、孔20Aで露出された導電線材15Aに接触している。したがって、接続部材18Aに電源ケーブル27A(図2参照)の端子を接続すれば、複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
【0066】
(3)布枠体の製造方法
次に、上記構成の布枠体10Aの製造方法について説明する。図7(a)に示すように、枠体11Aに面状の布材13Aを一体にインサート成形してなる布枠前駆体10’Aを用意する。次に、図7(b)に示すように、レーザ加熱手段を用いて布材13Aに複数の孔20Aを形成する。次いで、図7(c)に示すように、布材13Aの一方の表面側に、各孔20Aを覆うように接続部材18Aを縫製により取り付ける。その後、布材13Aの他方の表面側にも、各孔20Aを覆うように接続部材18Aを縫製により取り付けて布枠体10A(図4参照)が得られる。
【0067】
(4)実施例1の効果
以上より、本実施例の布枠体10Aによると、非導電線材を部分的に除去して露出部17Aが形成され、接続部材18Aは、露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される。このように、非導電線材を除去して形成される露出部17Aを備えることで、非導電線材に極力邪魔されることなく導電線材15Aと接続部材18Aとを接続性良く電気的に接続することができる。
【0068】
また、本実施例では、露出部17Aを、布材13Aが張設される枠体11Aの内側に配置される複数の孔20Aを有して構成したので、複数の孔20Aの間には非導電線材が残った状態となるため、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下を抑制して導電線材15Aと接続部材18Aとを電気的に接続することができる。また、露出部15Aで露出される導電線材15Aの両端側が非導電線材に支持されるため、露出された導電線材15Aのまがりやよれがなく、導電線材15Aと接続部材18Aとの接続安定性をより高めることができる。
【0069】
また、本実施例では、複数の孔20Aを略直線状に並べて配置したので、露出部17Aを簡易に形成できるとともに、接続部材18Aを簡易に取り付けることができる。特に、本実施例では、複数の孔20Aを、枠体11Aの側辺の近傍内側で側辺に沿って略直線状に並んで配置させたので、複数の孔20A及び接続部材18Aが布材13Aの側縁部に形成されることとなる。そのため、布材13Aの側縁部の表面に他部材(例えば、面材8A等)を設けることで、複数の孔20A及び接続部材18Aを覆い隠して意匠性を高めることができる。また、乗員の着座動作などによるシートの機械的負荷が接続部材18Aにかかり難くなり、接続部材18Aの耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、本実施例では、孔20Aを、導電線材15Aの長手方向に横長となる楕円形状に形成したので、孔20Aの開口面積を必要最小限に抑えつつ導電線材15Aの露出面積を大きくすることができる。これにより、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下をより確実に抑制できるとともに、導電線材15Aと接続部材18Aとの接続安定性をより高めることができる。
【0071】
また、本実施例では、孔20Aの内縁部が溶着されているので、孔20Aの内縁部の溶着部位により布材13Aの張力を好適に受けることができる。そのため、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下をより確実に抑制できる。特に、本実施例では、加熱手段により孔20Aを形成するようにしたので、孔20Aの形成と同時に孔20Aの内縁部に溶着部位を容易に形成することができる。
【0072】
また、本実施例では、接続部材18Aを、複数の孔20Aを覆うように布材13Aに取り付けたので、接続部材18Aに布材13Aの補強機能の持たせることができる。そのため、枠体11Aに張設された布材13Aの張力の低下をより確実に抑制できる。
【0073】
また、本実施例では、接続部材18Aを、縫製により布材13Aに取り付けるようにしたので、接続部材18Aを簡易且つ強固に取り付けることができ、接続部材18Aの補強機能をより高めることができる。
【0074】
また、本実施例では、接続部材18Aを、孔20Aの内側及び外側での縫製により布材13Aに取り付けるようにしたので、孔20Aの内側での導線23Aの縫製により導電線材15Aとの接続安定性をより高めることができる。また、孔20Aの外側での支持体21Aの縫製により接続部材18Aを布材13Aに強固に取り付けることができる。そのため、接続部材18Aの補強機能をより高めることができる。
【0075】
また、本実施例では、接続部材18Aを、布材13Aの表面側及び裏面側のそれぞれに設けるようにしたので、表裏側の接続部材18Aで布材13Aが挟み込まれるため、導電線材15Aと接続部材18Aとの接続安定性及び接続部材18Aの補強機能をより高めることができる。
【0076】
さらに、本実施例では、接続部材18Aを、布材13Aの表面側に設けられる面材8Aで覆われる位置に配置したので、面材8Aで接続部材18Aが覆い隠されるため、意匠性の低下を防止することができる。
【0077】
<実施例2>
次に、本実施例2に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例2の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である接続部材について詳説する。
【0078】
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体30Aは、図8及び図9に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材31Aと、を備えている。
【0079】
上記接続部材31Aは、帯状に形成され、複数の孔20Aを覆うように布材13Aの表面側及び裏面側のそれぞれに縫製により取り付けられている。この接続部材31Aは、布材13Aの表面側に設けられる上述の面材8Aで覆われる位置に配置されている。また、接続部材31Aは、布帛からなる帯状の支持体32Aと、この支持体32Aの表面に設けられるメッキ層33Aと、を有している。
【0080】
上記支持体32Aの両側縁は、縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線34Aは、孔20Aの外側を通って支持体32Aの長手方向に延びている。また、支持体32Aの中央側は、縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線35Aは、孔20Aの内側を通って支持体32Aの長手方向に延びている。上記メッキ層33Aは、孔20Aで露出された導電線材15Aに接触している。したがって、接続部材31Aに電源ケーブル27A(図2参照)の端子を接続すれば、複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
【0081】
(2)実施例2の効果
上記構成の布枠体30Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、接続部材31Aを、孔20Aの内側及び外側での縫製により布材13Aに取り付けるようにしたので、孔20Aの内側での支持体32Aの縫製により導電線材15Aとの接続安定性をより高めることができる。また、孔20Aの外側での支持体32Aの縫製により接続部材31Aを布材13Aに更に強固に取り付けることができ、接続部材31Aの補強機能をより高めることができる。
【0082】
<実施例3>
次に、本実施例3に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例3の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である接続部材について詳説する。
【0083】
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体40Aは、図10及び図11に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材41Aと、を備えている。
【0084】
上記接続部材41Aは、通電可能な複数(図中2つ)の導線42Aからなる。各導電42Aは、複数の孔20Aに架け渡されて布材13Aに縫製により取り付けられている。この導線42Aは、布材13Aの表面側に設けられる上述の面材8Aで覆われる位置に配置されている。
【0085】
上記導線42Aは、固定手段43A(例えば、導電糸、非導電糸、リング部材等)により露出部17Aで露出された導電線材15Aに固定されている。したがって、接続部材41Aに電源ケーブル27A(図2参照)の端子を接続すれば、複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
【0086】
(2)実施例3の効果
上記構成の布枠体40Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、接続部材41Aを導線42Aから構成したので、接続部材41Aひいては全体の製品コストを抑えることができる。また、本実施例3において、導線42Aを縫製(かがり縫い)により布材13Aに取り付けるようにすれば、接続部材41Aを布材13Aにより簡易に取り付けることができる。
【0087】
<実施例4>
次に、本実施例4に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例4の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である接続部材について詳説する。
【0088】
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体50Aは、図12及び図13に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部17Aと、この露出部17Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材51Aと、を備えている。
【0089】
上記接続部材51Aは、弾縮性を有する帯状の支持体52Aと、この支持体52Aを導電線材15Aに縫い付けるための導線53A(図14参照)と、を有している。この支持体52Aの両側縁部は、縫製により布材13Aに取り付けられている。この縫製による縫製線54Aは、孔20Aの外側を通って支持体52Aの長手方向に延びている。また、支持体52Aの中央部は、上記導線53Aをミシン糸として用いた縫製(本縫い)により布材13Aに取り付けられている。そのため、導線53Aは導電線材15Aに接触している。この縫製による縫製線55Aは、孔20Aの内側を通って支持体52Aの長手方向に延びている。
【0090】
次に、上記接続部材51Aの取付方法について説明する。上記支持体52Aの中央部分(縫製部)を露出された導電線材15Aに対面配置する。そして布材13Aに支持体52Aの側部を縫製(本縫い)にて取り付ける。次に、支持体52Aaの中央部分(縫製部)を、導電線材15Aに縫製(本縫い)にて取り付ける。この縫製では、図14に示すように、下糸(導電線材15Aを臨む側の糸)に導線53Aを使用するとともに、上糸に非導電線材57Aを使用することで、導電線材15Aと導線53Aを直接的に接触させることができる。このとき上糸よりも下糸のテンションを高くすることが好ましい。こうすれば上糸による下糸の張引が極力阻止される。このため下糸(導線53A)が側面視で直線的に配置することで、導電線材15Aとの接触面積を増大させることができる。
【0091】
(2)実施例4の効果
上記構成の布枠体50Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、接続部材51Aを、通電可能な導線53Aと、弾縮性を有する帯状の支持体52Aと、を有して構成し、支持体52Aを、上糸又は下糸の少なくとも一方に導線53Aを用いるミシンによって布材13Aに縫製して取り付けるようにしたので、支持体52Aの弾縮性によって、導電線材15Aに導線53Aが押し付けられて、導電線材15Aと導線53Aの接触性が向上する。これにより、導電線材15Aと接続部材51Aの接続安定性を向上させることができる。また、複数の縫製線(直線状)を支持体52Aにコンパクトに形成することができる。
【0092】
また、上記実施例では、支持体52Aから引き出した下糸(導線53A)を、ECUや電源に直接的に接続することができる。すなわち一般的には縫製の終点の直近でミシン糸を切断するが、本実施例では、縫製が終了したのち一定の長さだけ下糸(導線53A)を支持体52Aから引き出す。そして引き出した複数の下糸(導線53A)を収束して束ねることで、ECUや電源のコネクタに挿入接続することができる。したがって、接続部材51Aを介して複数の導電線材15Aに電力を供給でき、布材13Aを静電容量式センサの電極又はヒータとして機能させることができる。
【0093】
<実施例5>
次に、本実施例5に係る布枠体の構成について説明する。なお、本実施例5の布枠体では、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同じ構成部位には同符号を付けて詳説を省略し、主に相違点である露出部について詳説する。
【0094】
(1)布枠体の構成
本実施例に係る布枠体60Aは、図15及び図16に示すように、樹脂製の枠体11Aに布材13Aを一体にインサート成形してなされている。この布材13Aは、導電線材15Aを露出させる露出部61Aと、この露出部61Aで露出された導電線材15Aに電気的に接続される接続部材18Aと、を備えている。また、布材13Aの両側縁側は、枠体に埋設される埋設部13aAと、枠体から外方に突出する突出部13bAと、を有している。
【0095】
上記露出部61Aは、レーザ加熱手段を用いて布材13Aの突出部13bAの非導電線材を溶融又は燃焼させて除去することにより形成される布材13Aの両側縁部の一対の空間62Aからなる。これら各空間62Aには、レーザ加熱手段で燃焼(溶融)又は断線されない導電線材15Aの端部(被接続部)が露出される。
【0096】
(2)布枠体の製造方法
次に、上記構成の布枠体60Aの製造方法について説明する。図17(a)に示すように、枠体11Aに面状の布材13Aを一体にインサート成形してなる布枠前駆体60’Aを用意する。次に、図17(b)に示すように、レーザ加熱手段を用いて布材13Aの両側縁部に空間62Aを形成する。次いで、図17(c)に示すように、布材13Aの一方の表面側に接続部材18Aを縫製により取り付ける。その後、布材13Aの他方の表面側にも接続部材18Aを縫製により取り付けて布枠体60Aが得られる。
【0097】
(3)実施例5の効果
上記構成の布枠体60Aによると、上記実施例1に係る布枠体10Aと略同様の作用・効果を奏することに加えて、露出部61Aを、加熱手段により形成される布材13Aの側縁部の空間62から構成したので、露出部61Aを簡易に作成することができる。
【0098】
なお、本発明においては、上記実施例1〜5に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。すなわち、上記実施例1〜4において、複数の孔20Aのそれぞれで導電線材15Aを露出させるようにしたが、これに限定されず、例えば、図18(a)に示すように、導電線材15Aを露出させない孔66Aを設定するようにしてもよい。ここで、車両用シート1Aにおいて、乗員との接触部(例えば腰部や肩部)の導電線材15Aを通電する一方、その他の部分は非通電状態にしたいとの要請がある。具体的には、布材13Aには、上記接触部の導電線材(第一の導電線材67A)と接触部以外の導電線材(第二の導電線材68A)とがある。そこで、露出部17Aを形成する際に、孔66Aでは、第二の導電線材68Aの一部を加熱手段によって燃焼又は溶融させて除去する一方、孔20Aでは、第一の導電線材67Aを露出させる構成としてもよい。そして、第一の導電線材67Aにのみ接続部材18A,31A,41A,51Aを電気的につなげることで、第一の導電線材67Aを通電可能とする一方、第二の導電線材68Aを通電不能とすることができる。これにより、必要な導電線材(第一の導電線材67A)にのみ通電することで、例えば、静電容量式センサの電極又はヒータとして機能する布材13Aの消費電力を極力抑えることができる。
【0099】
また、上記実施例1〜4において、例えば、図18(b)に示すように、第一の導電線材67Aを露出させるとともに、第二の導電線材68Aを非露出状態で維持するように露出部17Aを構成してもよい。これにより、上述のような、乗員との接触部の導電線材67Aを通電する一方、その他の部分の導電線材68Aは非通電状態にしたいとの要請に対応することができる。
【0100】
また、上記実施例1〜4では、単数の孔20Aで単数の導電線材15Aを露出させるようにしたが、これに限定されず、例えば、図18(c)に示すように、単数の孔20Aで複数の導電線材15Aを露出させるようにしてもよい。
【0101】
また、上記実施例5では、露出部61Aを、布材13Aの側縁部に形成された空間62Aで構成するようにしたが、これに限定されず、例えば、露出部61Aを、布材13Aの側縁部に形成される複数の孔71A(図19(a)参照)で構成したり、布材13Aの側縁部に形成される複数の切欠部72A(図19(b)参照)で構成したりしてもよい。
【0102】
また、上記実施例1〜4では、露出部17Aを構成する孔20Aとして楕円形孔を例示したが、これに限定されず、例えば、図20に示すように、露出部17Aを構成する孔として、円形孔74A、多角形孔75A、角部が円弧状とされた多角形76A等を採用することができる。
【0103】
また、上記実施例1〜5では、露出部17A、61Aとして、加熱手段により非導電線材を溶融又は燃焼させて除去することにより形成されるものを例示したが、これに限定されず、例えば、切断手段(例えば、裁断機、カッター装置等)により非導電線材を切断除去することにより形成される露出部としてもよい。
【0104】
また、上記実施例1〜5では、接続部材18A,31A,41A,51Aを縫製により布材13Aに取り付ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、接続部材を接着、溶着等により布材に取り付けるようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施例1、2及び4では、孔20Aの内側及び外側での縫製により接続部材18A,31A,51Aを布材13Aに取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、孔の内側及び外側のうちの一方側のみでの縫製により接続部材を布材に取り付けるようにしてもよい。
【0106】
また、上記実施例1〜5では、布材13Aの両表面に一対の接続部材18A,31A,41A,51Aを取り付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、布材の一方の表面のみに接続部材を取り付けるようにしてもよい。
【0107】
また、上記実施例5では、布枠体10Aの枠体11Aの外側に配置される露出部17Aで導電線材15Aと電気的に接続される接続部材18Aを例示したが、これに限定されず、例えば、接続部材18Aに代えて、接続部材31A、41A、51A等を採用してもよい。
【0108】
また、上記実施例1〜5では、シートバック3Aを構成する表皮材としての布材13Aを例示したが、これに限定されず、例えば、シートクッション、天板メイン部、天板サイド部、かまち部、背裏部、ヘッドレスト等の車両用シートの各種構成の表皮材として布材を用いてもよい。また、上記実施例1〜5では、表皮材の着座側に布材を用いるようにしたが、これに限定されず、例えば、裏基布として布材を用いてもよい。さらに、布材を、家具用、家電用シートの表皮材として使用することもできる。
【0109】
また、上記実施例1〜5では、布材13Aに対して導電線材15Aを波状に配設したが、これに限定されず、例えば、導電線材は、直線状やジグザグ状などの各種状態で布材に配設するようにしてもよい。
【0110】
さらに、上記実施例1〜5では、導電線材15Aの両端部を露出させる例を説明したが、導電線材の露出部位を限定する趣旨ではない。
【0111】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本発明を限定するものと解釈されるものではない。本発明を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本発明の記述および図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的および例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本発明の範囲または精神から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本発明の詳述に特定の構造、材料および実施例を参照したが、本発明をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【0112】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【0113】
以下、本発明を実施するための形態を、図21〜図33を参照して説明する。各図では、便宜上、一部の導電線材にのみ符号を付すことがある。また各図には、適宜、車両用シート前方に符号F、車両用シート後方に符号B、車両用シート側方に符号L、車両用シート上方に符号UP、車両用シート下方に符号DWを付すこととする。
【0114】
<実施例6>
図21の車両用シート2は、シートクッション4とシートバック6とヘッドレスト8を有する。これら部材は、各々、シート外形をなすクッション材(4P,6P,8P、図示省略)と、クッション材を被覆する表皮材(4S,6S,8S)を有する。そして各表皮材は、典型的に複数の表皮ピースを袋状に縫合して構成される。
そして本実施例では、シートクッション4の着座側の表皮材4Sが、導電線材20を備える布材10(詳細後述)にて構成されている(図22を参照)。そしてこの布材10は、導電線材20に接続部材18を電気的につなげることで、静電容量式センサの電極又はヒータとして機能するのであるが、このとき導電線材20と接続部材18を接続性良くつなげることが望まれる。
そこで本実施例では、後述する各工程によって、導電線材20と接続部材18を接続性良く電気的につなげることとした。
【0115】
[布材の製造方法]
本実施例では、布材10から表皮ピース4SPを作製(前工程)したのち、下記の2工程によって接続部材18と導電線材20を電気的につなげることとした(図22及び図23を参照)。
第1工程:加熱手段によって非導電線材(以下「他の線材」とも記載する。)を溶融又は燃焼させて、導電線材20の被接続部22を残しつつ布材10から他の線材(後述の布片10e)を除去する。
第2工程:接続部材18を、露出した導電線材20の被接続部22(複数又は単数)に電気的につなげる。
【0116】
[前工程]
前工程では、導電線材20と他の線材を用いて布材10を作製する。この布材10は、織物、編物、不織布及び組紐(組物)のいずれでもよい。
また後述するように、表皮材4Sとして布材10を用いる場合には、適宜パッド材14や裏基布16を用いることができる。以下、各構成を説明する。
【0117】
(他の線材)
他の線材は、後述の導電線材20よりも燃焼又は溶融しやすい線材であり、布材10の主構成として使用することができる。この他の線材としては、上述の実施形態1.で説明した非導電線材の構成を適用したものを挙げることができる。
【0118】
(導電線材)
導電線材20は、通電可能な導電性の線材であり、典型的に比抵抗が10〜10−12Ω・cmである。この導電線材としては、上述の実施形態1.で説明した導電線材の構成を適用したものを挙げることができる。
【0119】
(布材の作製)
本実施例では、布材10の一部を導電線材20で構成するとともに、布材10の他部を他の線材にて構成する(図23を参照)。この布材としては、上述の実施形態1.で説明した布材の構成を適用したものを挙げることができる。
【0120】
(表皮ピースの作製)
表皮材4Sは、典型的に複数の表皮ピースから構成される。本実施例では、表皮材4Sの着座側をなす表皮ピース4SPに布材10を使用する。そして布材10を表皮材4Sに用いる場合、シートの着座性を考慮して、布材10の裏面にバッキングを施したり(樹脂層を形成したり)、パッド材14や裏基布16を配設したりすることが好ましい(図22を参照)。
この種のパッド材14は、柔軟性を備える多孔性の部材であり、例えば含気率の高いウレタンパッドや、軟質ウレタンフォームからなるスラブウレタンフォームを用いることができる。また裏基布16は、例えば織編物や不織布(他の線材)にて構成できる。そして布材10とパッド材14と裏基布16をこの順で積層して接合手段により一体化したのち、所定の形状にカットする(表皮ピース4SPを形成する)ことが好ましく行われる。接合手段としては、ラミネート加工(溶着)、縫着、接着などの手法を例示することができる。
【0121】
[第1工程]
第1工程では、加熱手段(図示省略)を用いて、他の線材を溶融又は燃焼させて除去することにより、導電線材20の被接続部22を露出させる(図23を参照)。このとき加熱手段の温度や出力などを適宜設定することにより、導電線材20を極力燃焼(溶融)又は断線させることなく、他の線材を燃焼(溶融)させることが望ましい。上記加熱手段としては、上述の実施形態1.で説明した加熱手段の構成を適用したものを挙げることができる。
【0122】
そして本実施例では、加熱手段によって他の線材だけを溶融(燃焼)させて、布材10(表皮ピース4SP)の両側に一対の切れ目(本発明に係る「露出部」として例示する。)を形成する(図23を参照)。このとき他の線材は、加熱手段によって切断されるが、導電線材20は切断されることなくそのままの状態で残存する。そこで布材本体10bから布片10eを剥き取ることにより、導電線材20の側部(被接続部22)を露出させることができる。なお布材10が、パッド材14と裏基布16を有する場合には、これらパッド材14と裏基布16を加熱手段にて同時に切断することができる。
【0123】
[第2工程]
第2工程では、露出した導電線材20の被接続部22に接続部材18を取付ける(図22、図25、図26を参照)。接続部材18によって導電線材20に電力を供給することで、布材10が、センサの電極又はヒータとして機能することができる。
ここで接続部材18は、導電線材20と電源を電気的につなげる部材であり、帯状の接続部材18(第一の接続部材18f、後述する第二の接続部材18s又は第三の接続部材18t)や、線状の接続部材18を例示することができる。
【0124】
例えば第一の接続部材18fは、帯状の支持体19aとメッキ層19bと導線19cを備える(図25を参照)。本実施例の支持体19aは、導線19cの配索方向に長尺な帯状(例えばシート前後方向に長尺な帯状)であり、布帛にて構成することができる。
またメッキ層19bは、電気伝導性を有する金属又は合金を有する層であり、支持体19a(被めっき体)に設けられる。メッキ層19bは、支持体19a全体に形成してもよく、支持体19aの一面(導電線材を臨む面)にのみ形成してもよい。
そして導線19cとして、金属や合金などの導電糸、メッキ線材を例示できる。なお導線19cは、支持体19a上に直線状に配置されていてもよいが、例えば周期的に揺動させるなどして波状に配置することもできる。
【0125】
なお導線19cは、導電線材20よりも比抵抗が低いことが好ましい。導線19cの電気抵抗を導電線材20よりも低くすることで、通電時における接続部材18の発熱を防止又は低減することができる。
ここで導線19cの比抵抗は、導電線材20の比抵抗によって適宜設定することができる。典型的には、導線19cの比抵抗を1.4〜15×10-8Ω・mに設定することで、通電時における接続部材18の発熱を防止又は低減することができる。
【0126】
(接続部材の配設)
図22及び図25を参照して、第一の接続部材18fを布材10の両端に各々配置したのち、被接続部22に電気的に並列につなげる。このときメッキ層19b及び導線19cを被接続部22と接触させて取付ける(かがり縫いする)。そして布材10側部に支持体19aを縫着する(取付ける)ことにより、第一の接続部材18fと導電線材20の相対的な位置関係が好適に維持されて、両者の電気的な接続安定性が向上する。
そして第一の接続部材18fに電源ケーブル9aの端子をつなげて、複数の導電線材20の電気回路を布材10に形成する。本実施例では、一対の第一の接続部材18fによって、複数の導電線材20の並列回路を形成することにより、比較的低電圧で複数の導電線材20を通電(発熱)させることができる。
【0127】
(別例)
別例では、帯状の支持体19a(布帛)と、メッキ層19bを有する第二の接続部材18sを用いる(図26を参照)。そして第二の接続部材18sを布材10の両端に各々配置したのち、被接続部22に電気的に並列につなげる。このときメッキ層19bを被接続部22と接触させて取付ける(本縫いする)。そして布材10側部に支持体19aを縫着する(取付ける)ことにより、第二の接続部材18sと被接続部22の相対的な位置関係が好適に維持されて、両者の電気的な接続安定性が向上する。
本別例では、メッキ層19bと導電線材20がより広い接触面積で電気的につながり、導電線材20と接続部材18の接触抵抗を低減することができる。
【0128】
[変形例]
ところで車両用シート2では、乗員との接触部(例えば腰部や肩部)の導電線材20を通電する一方、その他の部分は非通電状態にしたいとの要請がある。例えば図24を参照して、表皮ピース5SP(布材10)には、上記接触部の導電線材(第一の導電線材20f)と、接触部以外の導電線材(第二の導電線材20s)がある。
そこで本変形例では、第1工程において第二の導電線材20sの被接続部22を加熱手段によって燃焼又は溶融させて除去することにより、第一の導電線材20fの被接続部22だけを露出させる構成とした。
そして第2工程において、第一の導電線材20fにのみ接続部材18を電気的につなげることで、第一の導電線材20fを通電可能とする一方、第二の導電線材20sを通電不能とすることができる。
本変形例では、必要な導電線材(第一の導電線材20f)にのみ通電することで、布材10(ヒータやセンサ)の消費電力を極力抑えることができる。
【0129】
以上説明したとおり、本実施例では、第1工程及び第2工程(簡単な接続作業)によって、他の線材に極力邪魔されることなく導電線材20と接続部材18を電気的につなげることができる。このため本実施例によれば、導電線材20と接続部材18を、より接続性良く電気的につなげることができる。
また布材10は、導電線材20を通電状態とすることで静電容量式センサの電極又はヒータとして機能し、車両用シート2の表皮材4Sとして好適に使用できる。
そして本実施例では、比較的簡単に、通電の必要な第一の導電線材20fを残しつつ、通電の不要な第二の導電線材20sを除去することができる。このため本実施例の布材10は、消費電力を極力抑えつつヒータやセンサとして機能することができる。
【0130】
<実施例7>
本実施例の布材10は、実施例6の布材とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
[第1工程]
本実施例では、加熱手段によって他の線材をスポット状に溶融又は燃焼して、孔部30(閉鎖状の貫通孔;本発明に係る「露出部」として例示する。)から被接続部22を露出させる(図27を参照)。なお布材10が、パッド材14と裏基布16を有する場合には、これらパッド材14と裏基布16を貫通する孔部30を形成することができる。
【0131】
そして上記第1工程では、導電線材20以外の線材等をすべて溶融又は燃焼させることができる。例えばカバリングされた導電線材20や、被覆層を有する導電線材20であっても、同工程時にカバリング糸や被覆層を溶融(燃焼)除去できる(被接続部22を更に好適に露出させることができる)。
また被接続部22の両端は、布材10によって支持されているため、被接続部22が曲がったりよれたりしない(他の被接続部22と混線しにくい構成である)。
【0132】
[第2工程]
そして第2工程において、導線19c(線状の接続部材18)を、孔部30から露出した被接続部22と電気的につなげる。
例えば図29を参照して、導線19cを、孔部30を横切るように布材10に配置したのち、固定手段40によって被接続部22と固定する。なお固定手段40として導電糸やリング部材を例示することができる。
そして布材10上に導線19cを縫着する(取付ける)。このとき本実施例では、他の線材(布材10の外形形状)が極力維持されるため、導線19cを、比較的簡単に布材10に取付けることができる。
【0133】
(別例)
別例では、布材10の両端から被接続部22を露出させる(図30を参照)。このとき加熱手段によって他の線材をスポット状に溶融又は燃焼して、溝部32(開放状の貫通孔)から被接続部22を露出させる。そして導線19cを、溝部32を横切るように布材10に配置したのち、固定手段40によって被接続部22と固定する。
そして布材10上に導線19cを縫着する(取付ける)。このとき本別例においても、他の線材(布材10の外形形状)が極力維持されるため、導線19cを、比較的簡単に布材10に取付けることができる。
また本別例では、導線19cを、布材10の側方にかがり縫いして取付けることもできる。こうすれば布材10端部のほつれを同時に防止又は低減することができる。
【0134】
[変形例]
そして車両用シート2では、上述の通り、乗員との接触部の導電線材20を通電する一方、その他の部分は非通電状態にしたいとの要請がある。
そこで本変形例の表皮ピース5SPでは、図28を参照して、第一の導電線材20fの被接続部22をスポット状に露出させるとともに、第二の導電線材20sの被接続部を非露出状態で維持する構成とした。
このように本実施例では、さらに簡単な作業(例えばレーザの照射と非照射の繰返し)によって、第一の導電線材20fを露出状態とするとともに、第二の導電線材20sを非露出状態とすることができる。
【0135】
<実施例8>
本実施例の布材10は、実施例6等の布材とほぼ同一の基本構成を備えるため、共通の構造等は対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
本実施例では、支持体19aと導線19cを有する第三の接続部材18t(以下、単に接続部材18tと呼ぶ)を使用する(図31及び図32を参照)。
そして本実施例では、ミシン(工業用ミシン又は家庭用ミシン)を用いて支持体19aを被接続部22に縫製して取付ける(縫製線SEW)。このとき導線19cをミシン糸に使用することで、導電線材20と導線19cを電気的につなげる構成とした。
【0136】
(支持体)
本実施例の支持体19aは弾縮性を有する帯状部材である。この支持体としては、上述の実施形態1.で説明した支持体の構成を適用したものを挙げることができる。
【0137】
(導線)
本実施例の導線19cは、ミシン糸として使用可能な柔軟性を有することが好ましい。この導線としては、上述の実施形態1.で説明した導線の構成を適用したものを挙げることができる。
【0138】
(導線の縫製方法)
導線19cの縫製方法(ステッチ形式)は特に限定しない。この縫製方法としては、上述の実施形態1.で説明した縫製方法の構成を適用したものを挙げることができる。
【0139】
(縫製線の配設形態)
縫製線SEWの形態(本数、縫いピッチ、縫い糸間隔、縫製部の幅、縫製形状)は特に限定しない(図31及び図32を参照)。この縫製線の配設形態としては、上述の実施形態1.で説明した縫製線の配設形態の構成を適用したものを挙げることができる。
【0140】
(接続部材の配設)
図31及び図32を参照して、支持体19aの中央部分(縫製部)を被接続部22に対面配置する。そして表皮ピース4SP(布材10)の末端部に支持体19a側部を縫付ける(縫製線sew)。
つぎにミシン糸(21,19c)を用いて、支持体19aの中央部分(縫製部)を、被接続部22に本縫いにて取付ける(縫製線SEW)。そして本実施例では、下糸(被接続部22を臨む側の糸)に導線19cを使用するとともに、他の線材21を上糸に使用することで、導電線材20と導線19cを直接的に接触させることができる。このとき上糸よりも下糸のテンションを高くすることが好ましい。こうすれば上糸による下糸の張引が極力阻止される。このため下糸(導線19c)が側面視で直線的に配置することで、導電線材20との接触面積を増大させることができる。
そして本実施例では、複数の縫製線SEW(直線状)が支持体19aにコンパクトに形成される。さらに本実施例では、支持体19aの弾縮性によって、導電線材20に導線19cが押付けられて、導電線材20と導線19cの接触性が向上する。これにより被接続部22と接続部材18tの接続安定性を向上させることができる。
【0141】
ここで本実施例では、一対の接続部材18tを、表皮ピース4SP(布材10)の対向配置する二つの末端部に各々配設する(図22を参照)。このとき本実施例では、表皮ピース4SPの末端部(縫合線)よりも外側に導線19cを配置することができる(図31及び図32を参照)。こうすることで乗員に対する違和感をなくすことができるとともに、両末端部の間(比較的広い範囲)の導電線材20を通電状態とすることができる。
また接続部材18tを表皮ピース4SP(布材10)の末端部に配置したことで、乗員の着座動作などによるシートの機械的負荷が接続部材18tにかかりにくくなる(接続部材18tの耐久性が向上する)。
【0142】
さらに本実施例では、支持体19aから引き出した下糸(導線19c)を、ECUや電源9に直接的に接続することができる(図22を参照)。
すなわち一般的には縫製の終点の直近でミシン糸を切断するが、本実施例では、縫製が終了したのち一定の長さだけ下糸(導線19c)を支持体19aから引き出す(図31を参照)。そして引き出した複数の下糸(導線19c)を収束して束ねることで、ECUや電源9のコネクタに挿入接続することができる(接続部材18tの配設作業を比較的簡便に行うことができる)。
【0143】
以下、実験例について説明する。
[実験例1]
実験例1の導電線材として、炭素繊維(東レ社製「トレカ(登録商標)T300−1K−50A」)の芯糸と、ナイロン6の下糸巻きつけ糸(22dtex−7フィラメント)と、融着糸(110dtex−10フィラメント、東レ社製、「エルダー(登録商標)」)の上糸巻きつけ糸を用いた。
そしてカバリング糸(下糸巻きつけ糸)と融着糸(上糸巻きつけ糸)を、撚数400T/mに設定して、芯糸に対してSZ撚ダブルカバリングを行ったものを実験例1の導電線材とした。
【0144】
また布材を構成する糸として、先染め(アイボリー)ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸(167dtex/2−48フィラメント)の経糸と、先染め(アイボリー)PETの仮撚加工糸(84dtex/2−36フィラメント)の第1緯糸と、先染め(アイボリー)PETの仮撚加工糸(470dtex−96フィラメント)の第2緯糸を使用した。
そして経糸を整経したのち、ジャガード織機にて第1緯糸と第2緯糸(緯糸)を交互に打ち込む(柄を表現する)中で、緯糸38本に1本の周期で導電線材を打ち込んだ。
このとき経糸8本毎に導電線材を打ち込み、経糸8本に1本の割合で導電線材を布材表面に配置した。このとき布材の柄を考慮して、経糸の浮き柄同士の間(凹部分)に表側の導電線材を配置した。
【0145】
つぎに布材に対して、公知の仕上げ加工(起毛、剪毛)を行ったのち、バッキング剤を裏面に付与して乾燥したものを実験例1の布材とした。バッキング剤として、ブチルアクリレートとアクリロニトリルから合成されたアクリル系ポリマーと難燃剤を主成分とするものを用いた。そしてバッキング剤の付与量は45g/m2とし、乾燥温度は150℃×1minとした。布材の仕上げ密度は、経/緯=141/98本/2.54cmであった。導電線材同士の間隔寸法(W1)は10mmであった。
そして布材の裏面に、ウレタンシートのパッド材(厚み5mm)と、ハーフトリコット(18dtexのナイロン6)の裏基布を配置したのち、フレームラミネーションにより一体化した(表皮ピースに相当する布材を作製した)。
【0146】
(接続例1)
本接続例では、実施例6(変形例)に基づいて、導電線材と接続部材を電気的につなげることとした。
加熱手段として、三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:2512H2、発信機形式名:25SRP、レーザ定格出力:1000W)を使用した。
そして実験例1の布材にレーザを照射して、シート座面メイン用に、所定寸法のピースを切り出した(図23(a)を参照)。このときのレーザの照射条件は、速度500mm/分、出力30W、Duty7.7%、周波数200Hzとした。
つぎに布材ピース(裏面側)にレーザを照射して、その両側に一対の切れ目を形成した(図23(c)を参照)。レーザの照射条件は、速度1500mm/分、出力20W、Duty7.7%、周波数200Hzとした。このとき絶縁繊維であるPET糸(布材の他の線材)は、加熱手段によって溶融して切断されたが、炭素繊維(導電線材)は切断されることなくそのままの状態で残存した。
【0147】
さらに図24(b)を参照して、非通電状態の導電線材(第二の導電線材20s)を選択的に作製した。すなわち上記記載の一対の切れ目を形成したのと同じ位置をトレースしながら、特定の導電線材20に対してのみ選択的にレーザを照射して、第二の導電線材20sとした。このときのレーザの照射条件は、速度500mm/分、出力30W、Duty7.7%、周波数200Hzとした。
【0148】
そして布材ピース本体から布片を剥き取ることにより、導電線材の側部(被接続部)を露出させた。
そして布材の裏面から不織布(支持体)を縫製したのち、不織布に乗っている導電線材の被接続部の上に導線を配置し、被接続部と導線を縫製によって密着させて接続した(第二の接続部材と被接続部を電気的につなげた)。
【0149】
(接続例2)
本接続例では、実施例7に基づいて、導電線材と接続部材を電気的につなげることとした。
加熱手段として、三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:505GT、発信機形式名:5003D、レーザ定格出力:0.2kW、ガルバノヘッド付き)を使用した。レーザの照射条件は、出力5.9W、周波数200Hz、パルス幅12μsecとした。
そして実験例1の布材にレーザを照射して、シート座面メイン用に、所定寸法のピースを切り出した(図22を参照)。
そして導電線材の位置をセンシングしつつ、レーザによってPET(他の線材)をスポット状に溶融又は燃焼して、孔部(閉鎖状の貫通孔)から炭素繊維(被接続部)を露出させた(図27を参照)。孔部の径寸法は、導電線材の配索方向の幅寸法:20mm、長さ寸法:4mmとした。そして孔部では、絶縁繊維であるPET糸(他の線材)は、加熱手段によって溶融除去されたが、炭素繊維(導電線材)は切断されることなくそのままの状態で残存した。
そして孔部から露出した被接続部の上に導線(線状の接続部材)を配置し、両者を縫製によって接続した。
【0150】
[実験例2]
実験例2の導電線材として、ステンレス(SUS304)繊維(12μm径、100フィラメント)の芯糸と、先染め(アイボリー)PETの仮撚加工糸(167dtex/2−48フィラメント)の鞘糸を用いた。ステンレス繊維として、日本電線社製の「ナスロン(登録商標)」を用いた。
そして鞘糸の撚数を200T/mに設定して、芯糸にカバリングしたものを実験例2の導電線材とした。
【0151】
また布材を構成する糸として、先染め(アイボリー)PETの仮撚加工糸(167dtex/2−48フィラメント)の経糸と、先染め(アイボリー)PETの仮撚加工糸(84dtex/2−36フィラメント)の第1緯糸と、先染め(アイボリー)PETの仮撚加工糸(470dtex−96フィラメント)の第2緯糸を使用した。
そして経糸を整経したのち、ジャガード織機にて第1緯糸と第2緯糸(緯糸)を交互に打ち込む(柄を表現する)中で、緯糸19本に1本の周期で導電線材を打ち込んだ。
そして実験例1と同様の手法にて、実験例2の布材を作製した。
【0152】
(接続例3)
本接続例では、実施例6に基づいて、導電線材と接続部材を電気的につなげることとした。レーザとして、三菱炭酸ガスレーザ加工機(形式:2512H2)を用いた。
そして実験例2の布材にレーザを照射して、シート座面メイン用に、所定寸法のピースを切り出した。このときのレーザの照射条件は、速度500mm/分、出力30W、Duty7.7%、周波数200Hzとした。
そして布材ピース(裏面側)にレーザを照射して、布材ピースの片側にのみ切れ目を形成した。レーザの照射条件は、速度1500mm/分、出力15W、Duty7.7%、周波数200Hzとした。このとき絶縁繊維であるPET糸(布材の他の線材)は、加熱手段によって溶融して切断されたが、ステンレス繊維(導電線材)は切断されることなくそのままの状態で残存した。
【0153】
つぎに接続部材と被接続部を電気的につなげた。本接続例では、無電解メッキにて銅及びニッケルを全面にメッキしたPET織物(表面抵抗値:0.05Ω/sq)を第二の接続部材として用いた(図26を参照)。そして布材側と被接続部を共に縫製して、被接続部と第二の接続部材を電気的につなげた。
【0154】
[実験例3]
本実験例の布材として実験例2の布材を用いた。
そして布材の裏面に、ウレタンシートのパッド材(厚み5mm)と、ハーフトリコット(18dtexのナイロン6)の裏基布を配置したのち、フレームラミネーションにより一体化した。そして接続例3と同一の手法にて、緯糸方向の幅が100mmとなるように1対の切れ目を形成し、導電線材の側部(被接続部)を布材から露出させた。
【0155】
本実験例の接続部材として、第三の接続部材(支持体、導線)を使用した。導線として、錫メッキ銅線を使用するとともに、支持体として、ウレタンシート(イノアック社製「HR−90」、厚み:5mm、圧縮残留ひずみ:3%、硬さ:441N)を使用した。またミシンとして、2本針本縫いミシン(三菱「LU2−4430」)を使用した。そしてミシンにミシン糸を一本のみ通して、布材の片端に支持体の側部を縫製・接合した(図31の縫製線sew)。このときミシン糸(上糸と下糸)に、#8ポリエステル縫い糸を使用した。そして支持体の中央部分を被接続部に対面配置して、支持体の下側に被接続部(導電線材)を配置した。
つぎに支持体の中央部分を被接続部に本縫いにて取付けた(図31の縫製線SEW)。このとき下糸(被接続部を臨む側の糸)に導線を使用するとともに、上糸に、#8ポリエステル縫い糸(他の線材)を使用した。そして縫い目が重ならないように、少しずつ縫製位置をズラしながら支持体を4回縫製した(4本の縫製線SEWを形成した)。
【0156】
[実験例4]
本実験例の導電線材としてPETの仮撚加工糸(330dtex−72フィラメント)を芯糸にして、ステンレス繊維(SUS316、50μm径)を鞘糸としてS撚およびZ撚に各1本づつカバリングしたカバリング糸を用いた。
なおステンレス繊維には3μm厚のウレタンコーティングが施されていた。実験例2の導電線材を本実験例のカバリング糸に変えて同様の手法にて実験例4の布材を作成した。これを接続例3にしたがってステンレス繊維を残しながら他の線材を取り除き、接続部材と被接続部を電気的につなげた。
【0157】
[接続抵抗の測定試験]
導電線材の接続抵抗の測定器として、LCRメーター(ZM2353)を使用した。そして実験例3に係る布材の片端に縫製した導線と反対側にある導電線材1本ずつの抵抗値(n=10)を測定した。
【0158】
[結果及び考察]
実験例1の布材では、導電線材(炭素繊維)が表材表面にほとんど現われておらず、布材自体の有する良好な意匠性と風合いを維持していた。そして実験例1では、上述の接続例1及び接続例2のいずれにおいても、導電線材の被接続部を好適に露出させることがで
きた。
また実験例2及び4の布材でも、導電線材(ステンレス繊維)が表材表面に現われておらず、良好な意匠性を維持していた。そして実験例2及び4でも、上述の接続例3において、導電線材の被接続部を好適に露出させることができた。そして接続例3では、接続部材と被接続部の相対位置関係が良好に維持されて、布材を静電容量式センサの電極として機能させることができた。
このことから実験例1、2及び4によれば、シート特性に悪影響を極力及ぼすことなく、導電線材と接続部材を接続性良く電気的につなげられることがわかった。
【0159】
そして実験例3では、縫製回数(縫製線)の増加に従い、測定した抵抗値が減少することがわかった(図33を参照)。すなわち導電線材と導線の接続抵抗が減少していることを意味する。そして縫製回数(縫製線)を2以上に設定することで、導電線材と導線とのの接続抵抗を有効に低減させることができた。
【0160】
本実施例の織物は、上述した実施例に限定されるものではなく、その他各種の実施形態を取り得る。
(1)本実施例では、表皮ピース4SP等に布材10を使用する例を説明した。本実施例の布材は、天板メイン部、天板サイド部、かまち部、背裏部、及びヘッドレストなどの車両用シートの各種構成の表皮材(例えば4S,6S,8S)として使用することができる。また車両用シートのほか、天井部、ドア部、ハンドルなどの車両の各種構成の表皮材4Sとして使用することができる。さらに布材10は、家具用、家電用シートの表皮材として使用することができる。
また本実施例では、表皮材4Sの着座側に布材10を用いた。これとは異なり、裏基布として布材を用いてもよい。
【0161】
(2)また本実施例では、布材10に対して導電線材20を波状に配設した。この導電線材は、直線状やジグザグ状などの各種状態で布材に配設できる。
(3)また本実施例では、布材10に対して、複数の導電線材20をシート幅方向に並列配置する例を説明した。複数の導電線材の配置関係は特に限定されるものではなく、例えばシート前後方向に並列配置してもよい。この場合には一対の接続部材をシート前後に配置する。
(4)また本実施例では、導電線材の両端部に被接続部を設ける例を説明したが、被接続部の位置を限定する趣旨ではない。
(5)また接続例1では、第一の導電線材と第二の導電線材を切り分けるのに2回レーザを照射したが、レーザの照射条件(速度や出力等)を限定する趣旨ではない。例えばレーザの照射条件(速度や出力等)を布材の部位毎に変えることによって、第一の導電線材と第二の導電線材を1回のレーザ照射で切り分けることができる。
(6)さらに、上記実施例7では、複数の孔で導電線材と電気的に接続される線状の接続部材18を例示したが、これに限定されず、例えば、図34に示すように、線状の接続部材18に代えて、帯状の接続部材18f、18s、18t等を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0162】
導電線材と接続部材とを接続性良く電気的に接続できる布材に関する技術として広く利用される。特に、乗用車、バス、トラック等の他、列車、汽車等の鉄道車両、建設車両、農業車両、産業車両などの車両内装材の表皮材を構成する布材として好適に利用される。
【符号の説明】
【0163】
8A;面材、11A;枠体、13A,10;布材、15A,20;導電線材、17A,61A;露出部、18A,31A,41A,51A,18;接続部材、20A,30;孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電線材及び非導電線材を含む布材であって、
前記非導電線材を部分的に除去して形成され前記導電線材を露出させる露出部と、
前記露出部で露出された前記導電線材に電気的に接続される接続部材と、を備えることを特徴とする布材。
【請求項2】
前記露出部は、前記布材が張設される枠体の内側に配置される複数の孔を有する請求項1記載の布材。
【請求項3】
前記複数の孔は、略直線状に並んで配置されている請求項2記載の布材。
【請求項4】
前記孔は、前記導電線材の長手方向に横長となる形状に形成されている請求項2又は3に記載の布材。
【請求項5】
前記孔は、楕円形、円形又は角部が円弧状とされた多角形に形成されている請求項2乃至4のいずれか一項に記載の布材。
【請求項6】
前記孔は、内縁部が溶着されている請求項2乃至5のいずれか一項に記載の布材。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の布材の製造方法であって、
前記非導電線材を部分的に除去して前記露出部を形成する第1工程と、
前記露出部で露出された前記導電線材に前記接続部材を電気的に接続する第2工程と、を備えることを特徴とする布材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2011−255550(P2011−255550A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130457(P2010−130457)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】