説明

帯電部材、帯電部材の製造方法及び帯電装置

【課題】帯電均一性に優れ、かつ帯電部材を構成する弾性発泡体のセル壁の変形及び破れ等による帯電均一性の低下が長期的になく、圧縮永久歪みの小さい弾性発泡体からなる帯電部材及びそれを用いた帯電装置を提供すること、その帯電部材を安価に製造する方法を提供することである。
【解決手段】電圧を印加した帯電部材で被帯電体面を帯電処理する帯電部材であって、弾性率が0.3MPa以下、破断伸びが100%以上、かつ破断強度が0.8MPa以上である弾性発泡体からなる帯電部材。また、弾性発泡体を構成する発泡性未加硫ゴム組成物において、160℃にて測定したMH(トルク最大点)、t50(50%トルク時間)、tp90(90%発泡圧時間)の各測定値が4MPa≦MH≦8MPa、tp90≧t50であるように調製された発泡性未加硫ゴム組成物を加硫発泡させる帯電部材の製造方法、及び上記帯電部材を用いた帯電装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いる帯電部材、帯電部材の製造方法、帯電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真装置において、被帯電体である電子写真感光体を帯電する導電性の部材としては、適度な導電性と電子写真感光体への均一な接触の確保、低硬度が要求されており導電性のスポンジゴムローラが多く用いられている。また近年、接触帯電部材から被帯電体へ電荷が直接注入されることで、被帯電体表面を帯電する機構が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。中抵抗の接触帯電部材が被帯電体表面と接触して、放電現象を介さずに、つまり放電機構を基本的に用いないで、被帯電体表面に直接電荷注入を行うものである。接触帯電部材として、スポンジローラの様な多孔状のローラに、接触帯電性を向上させるための導電性粒子をコートし、接触帯電部材を被帯電体に対して速度差を設けて摺擦した状態で接触させることにより、接触を密にすることが可能となり、十分な帯電性を得ることができる。求められるスポンジローラとしては、セル径が適度に小さく、かつセル壁が薄い低硬度な導電性スポンジゴムローラが必要である(例えば特許文献3参照)。しかしながら、このような構成のスポンジゴムはセル壁が非常に薄いため、摺擦や構造的に大きな変形に有利ではなく、直接電荷注入方式(以下注入帯電)における帯電部材として今後更に高速化・高耐久化していくためには、更に変形と摺擦に対してより強度を向上させることが課題としてある。
【0003】
一方、スポンジゴムの製造方法は、ゴムに熱分解性の化学発泡剤を配合し加熱することによってゴム中にガスを発生させることによりスポンジ化する手法として、常圧下で行うフリー発泡法と金型により加圧した状態で行う型内発泡法がある。その他の方法としては、マイクロカプセル等をゴム中に混合、分散させる方法や、ゴム中に可溶性の材料を分散させた後、溶剤を用いて溶出することによってスポンジゴムを得る方法等がある(例えば特許文献4、5参照)。しかしながら、マイクロカプセル法はセル自身のサイズ、形状は安定したものが得られるが、高充填が難しく、セル壁の薄いスポンジ体を得ることは困難であり化学発泡剤と比較して材料費が高価である。溶出法は、化学発泡と比較して溶出時間が非常に長くかかってしまうため低コストで生産するには好ましい手法とはいえない。
【0004】
また、型内発泡法では割り金型を用いた方法が提案されており、セルの密度が高い高発泡なスポンジゴムが得られるとされているが(例えば特許文献6参照)、仕込み量による硬度のばらつきや割り金型のパーテーション部における電気抵抗のばらつきが課題であり、金型を極めて高精度にする必要があるため、金型製造コストが嵩むことや金型の洗浄工程を含むため低コストで生産することが困難である。
【0005】
一方、フリー発泡法では、連続加硫装置等を使用することができるため生産性が高く、金型の取り回しや、金型製造コスト等が不必要なため、低コストで生産するのに有利である。しかしながら、高発泡なスポンジゴムを常圧下で発泡させるフリー発泡で製造することは容易ではない。表面部のみ電子線を照射して予備加硫することによって発泡剤の発泡により発生したガスが外部に逃げるのを防止することによりスポンジゴムの発泡倍率を高くする方法が提案されているが(例えば特許文献7参照)、セル径が小さくかつセル壁の薄いスポンジゴムを得るにはかなり過度に表面部を加硫する必要があるため、表面部を過度に加硫すると発泡時の膨張に表面部が追従できずに表面にクラック等の不良が発生する恐れがあるため困難である。また、このような課題に対して、水蒸気を利用した加硫缶を用いて加硫発泡させることにより、セル径の小さなスポンジゴムをクラックを発生させずに製造する方法がある。これは加圧した状態で加硫を行うことで発泡時の急激な膨張が抑制され、かつ常圧状態に戻す場合は減圧スピードを制御することで急激な膨張を抑えているためである(例えば特許文献8参照)。以上述べたように、注入帯電部材として好ましい高発泡倍率かつセル、セル壁が微細な弾性発泡体を常圧下で製造することは容易ではない。
【特許文献1】特開平6−3921号公報
【特許文献2】特開平11−65231号公報
【特許文献3】特開2001−188404号公報
【特許文献4】特開2001−97594号公報
【特許文献5】特開平11−198250号公報
【特許文献6】特開2001−191349号公報
【特許文献7】特開平8−169974号公報
【特許文献8】特開平11−115069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、帯電均一性に優れ、かつ帯電部材を構成する弾性発泡体のセル壁の変形及び破れ等による帯電均一性の低下が長期的になく、圧縮永久歪みの小さい弾性発泡体からなる帯電部材及びそれを用いた帯電装置を提供すること、その帯電部材を安価に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、電圧を印加した帯電部材で被帯電体面を帯電処理する帯電部材であって、弾性率が0.3MPa以下、破断伸びが100%以上、かつ破断強度が0.8MPa以上である弾性発泡体からなることを特徴とする帯電部材が提供される。
【0008】
また、本発明に従って、弾性発泡体を構成する発泡性未加硫ゴム組成物において、160℃にて測定したMH(トルク最大点)、t50(50%トルク時間)、tp90(90%発泡圧時間)の各測定値が4MPa≦MH≦8MPa、tp90≧t50であるように調製された発泡性未加硫ゴム組成物を加硫発泡させることを特徴とする帯電部材の製造方法が提供される。
【0009】
更に、本発明に従って、上記帯電部材が被帯電体とニップ部を形成するように配置され、かつ該ニップ部に導電粒子を介在することを特徴とする帯電装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明は帯電均一性に優れ、かつ帯電部材を構成する弾性発泡体のセル壁の変形及び破れ等による帯電均一性の低下が長期的にない圧縮永久歪みのない弾性発泡体からなる帯電部材及びそれを用いた帯電装置を提供することと、加えてその帯電部材を安価に製造する方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明にかかる帯電部材について鋭意検討を行った結果、我々は帯電部材を構成する弾性層として、弾性率が0.3MPa以下でかつ破断伸びが100%以上でかつ破断強度が0.8MPa以上である弾性発泡体からなる帯電部材とすることで長期にわたって良好な帯電均一性を保持することができることを見出した。すなわち、弾性率を0.3MPa以下とすることで、帯電部材として必要な柔軟性を有しつつ、破断伸びを100%以上、破断強度を0.8MPa以上とすることで変形に対する追従性と強度が向上し、かつ長期に亘る被帯電体との摺擦によるセル壁の破壊等がないからであると考えられる。
【0013】
また、良好な帯電均一性を得るためには被帯電体への接触が密であることが重要である。帯電部材を構成する弾性発泡体の平均セル径を20〜100μm、セル壁の平均厚さを0.1〜10μmとすることが好ましく、これにより帯電部材表面に被覆してなる導電粒子による注入帯電が均一となり易くなる。また、帯電ローラとすることで被帯電体に対して速度差を設けて接触させることにより接触頻度が向上する。平均セル径が100μmを超えると被帯電体との間に介在する導電粒子が疎らとなり、帯電が不均一となり易い。逆に20μm未満であると導電粒子の保持が不十分であるため帯電が不均一となり易い。一方、セル壁の平均厚さに関しては、セル壁が薄いほうが柔軟性は高く、セルの密度が高くなることにより導電粒子の保持性が向上するため、帯電均一性を向上させるのに有利である。ただし、0.1μmより薄いと強度が低下するため好ましくない。
【0014】
帯電ローラは、被帯電体を帯電するに十分低い抵抗を有する必要がある。しかし、一方では被帯電体にピンホール等の欠陥部位が存在した場合に電圧のリークを防止する必要がある。よって、被帯電体として電子写真感光体を用いた場合、十分な帯電性と耐リーク性を得るには10〜10Ωの抵抗を有することが好ましい。
【0015】
帯電ローラの硬度は、硬度が低過ぎると形状が安定しないために接触性が悪くなり、高過ぎると帯電ニップを確保できないだけでなく、電子写真感光体表面への接触性が悪くなるので、アスカーC硬度で15〜30度が好ましい範囲である。
【0016】
以上、本発明における帯電部材の特性について説明してきたが、これらの特性を満たす弾性発泡体の製造方法について以下に説明する。本発明における帯電部材の特性の一つとして、セル、セル壁が微細であることは重要である。この特性を満たすには、発泡剤が分解してガスを発生する前に、加硫を進行させることによりゴムが高粘度の状態とし、発泡時に生成する発泡ガスがゴム中から逃げることを防止し、ゴム中に発泡セルのもとになる発泡核が最密充填している状態が形成されていることが必要であると考えられる。これらのことを顧みて、所望のセル、セル壁を有する弾性発泡体を製造するには、弾性発泡体を構成する発泡性未加硫ゴム組成物において加硫発泡特性として160℃にて測定したMH(トルク最大点)、t50(50%トルク時間 min)、tp90(90%発泡圧時間 min)の各測定値が4MPa≦MH≦8MPa、tp90≧t50であるように調製された発泡性未加硫ゴム組成物を加硫発泡させることにより達成できることを見出した。tp90≧t50の範囲に調製することにより、つまり加硫が進行した状態で、発泡を開始することにより、形成した発泡セルの膨張を抑制し、セル同士が結合することによるセルの粗大化を防ぐことができるものであり、セル径を100μm以下、セル壁の厚みを10μm以下とすることが可能となる。tp90<t50の場合には、加硫の進行よりも早く発泡が進行してしまうため、発泡時のゴムの粘度が低く、発泡ガスの逃げ及び発泡セルの結合が進行し易いため、セルが粗大化してしまう。また、MHが4MPa未満では、前記tp90≧t50の範囲であっても、微細な発泡セルを形成するに十分なゴムの粘度より低く、セルが粗大化してしまう。また、MHが8MPaを超えると発泡時のゴムの粘度が高過ぎるため、セルの形成が困難となり、低発泡倍率になってしまい、セル壁が厚くなってしまう。
【0017】
また、更に耐久性のある帯電部材、すなわち前記引張特性を満たす帯電部材を製造するには、微細なセル、セル壁を有する発泡状態であり、かつ引張伸度及び強度を大きくする必要がある。このような特性を満たすには前記加硫発泡特性を満たす発泡性未加硫ゴム組成物であり、それに加えて高分子量タイプのゴムを用いることにより達成できると考えられる。ゴムの種類としては特に制限はないが、圧縮永久歪み性の点から、エチレンプロピレンジエンゴムが好適であり、上記伸び特性を考慮するとムーニー粘度(M1+4 100℃)が50〜100であり、かつヨウ素価が18〜22のような性質を有するものが好ましい。つまり高分子量で、かつヨウ素価が低いエチレンプロピレンジエンゴムを用いることによって、引張伸度、引張強度、かつ圧縮永久歪み性を向上した弾性発泡体を得ることが可能となることを見出した。
【0018】
ただし、ムーニー粘度が50未満のゴムを用いた場合は、ゴムの分子量が低下するため引張伸度、引張強度が低下し易い。また、ムーニー粘度が100を超えると、粘度が高過ぎるため押出し性等が悪化するため加工が困難となる。また、このような発泡性未加硫ゴム組成物を用いて熱風オーブン等、種々の加熱装置を用いて加硫発泡したところ、従来困難であった常圧下においても安定に製造することが可能となった。これは、ゴムの引張伸度及び強度が向上したためであり、ゴム表面の加硫が進行した状態でも、発泡による膨張にゴムが追随できるからであると考えられる。このような材料により帯電部材を更に高耐久化でき、かつ安価に製造できるものである。
【0019】
ヨウ素価が18未満のゴムを用いた場合には、加硫速度が低下し、加硫が不十分な状態で発泡が進行するため、微細な発泡セルが得られないことと、架橋が十分でないため圧縮永久ひずみ性が悪化する。また、ヨウ素価が22を超えると、架橋度が高いため、ゴムの伸びが減少し、高発泡倍率で発泡する場合に、発泡セルが破れたり、変形が起こるため好ましくない。
【0020】
前記発泡性未加硫ゴム組成物に含まれる発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、配合量は15〜30質量部であることが好ましい。すなわち、上述したような加硫と発泡のバランスを保つためには、発泡剤の分解温度が高いことと、かつ加硫が進行した状態でも発泡するように一般的な配合量よりも過剰に配合しておくことが好適であり、また分解温度の高い発泡剤を用いることで従来よりもゴム表面の加硫を進行させることができるからである。
【0021】
加硫剤及び加硫促進剤は前記加硫発泡特性を満たせれば特に制限はなく、加硫剤としては、硫黄や金属酸化物等が挙げられ、加硫促進剤としてチアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系及びカルバメート系等が挙げられ、それぞれの加硫剤に対応して適宜選択される。その他、公知の加硫促進助剤、軟化剤、補強剤、無機充填剤等が、必要に応じて適宜添加される。
【0022】
導電性とする際には、原料組成物中の原料ポリマー中に、導電性粉末を分散させる。例えば、多用される導電剤としては、カーボンブラックや導電性カーボン等のカーボン類、グラファイト、TiO、SnO及びZnO等の導電性金属酸化物、SnOとSbの固溶体、ZnOとAlの固溶体等の前記金属酸化物との複合酸化物、CuやAg等の金属粉、導電性の繊維等を挙げることができる。所望の導電率に応じ、また、用いる導電粉材料の比重に応じて、原料ポリマー100質量部に対して、導電剤の添加量を5〜200質量部の範囲で選択して、適宜添加する。
【0023】
その他、無機充填剤、例えば、カーボンブラック、タルク、クレー等を添加することもあり、また、原料組成物の混練や、その後の押し出しによる円筒形状の形成等に利する、プロセスオイル、軟化剤等を必要に応じて、適宜添加する。
【0024】
加硫発泡処理を行うための加熱手段は特に制限はなく、水蒸気を加圧し熱媒体として用いる加硫缶や連続加熱装置として従来から用いられている熱風で加熱するHAV法、低融点の金属塩を溶融させた浴内で加熱するLCM法、微小なガラスビーズを熱風により加熱して熱媒体として用いるPCM法、その他マイクロ波加熱(UHF)や遠赤外線等を用いた加熱手段を用いることができる。
【0025】
本発明にかかる帯電装置の代表的な構成は図1に示される。本発明の帯電部材として帯電ローラ2と被帯電体である電子写真感光体1から構成され、帯電ローラ2は電子写真感光体1とニップ部nを形成している。帯電ローラ2は、芯金2a上に弾性層2bを形成することにより作製される。弾性層2bは前述したように、ゴム、導電性粒子(カーボンブラック)、加硫材及び発泡剤等により処方され、押出し、加熱の過程を経て芯金2aの上にローラ状に形成される。その後、表面を研磨して帯電ローラ2を作製する。帯電ローラの表面形状は、研磨加工によってスポンジゴムのセル、セル壁によって構成された凹凸形状になっている。
【0026】
次に、図1に示される導電粒子mについて述べる。導電粒子mとしては、金属酸化物等の粒子や有機物との混合物、あるいは、これらの表面処理を施した等の各種導電粒子が使用できる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化スズ/酸化アンチモン複合酸化物や酸化チタン/酸化スズ複合酸化物が挙げられる。有機化合物としては、ポリピロール及びポリアニリン等が挙げられる。
【0027】
導電粒子の抵抗は、粒子を介した電荷の授受を行うため比抵抗としては1012Ω・cm以下が好ましい。粒子の抵抗測定は、錠剤法により測定し正規化して求めた。底面積2.26cmの円筒内に凡そ0.5gの粉体試料を入れ、上下電極に15kgの加圧を行うと同時に100Vの電圧を印加し抵抗値を計測、その後正規化して比抵抗を算出する。
【0028】
また、粒径は良好な帯電均一性を得るために平均粒径が0.05mm(50μm)以下が好ましい。粒径の下限値は、粒子が安定して得られるものとして10nmが限界である。また、粒径の制御の点で0.3μm以上が好適である。本発明において、粒子が凝集体として構成されている場合の粒径は、その凝集体としての平均粒径として定義した。
【0029】
次に、本発明にかかる帯電装置を具備した画像形成装置の構成例について、図4を用いて説明する。本構成例は、電子写真感光体のクリーニングを装備することなく、トナーリサイクルを可能にした電子写真画像形成装置である。この画像形成装置は、電子写真感光体1の周囲に配置された、帯電装置2、露光器3、現像器4、転写帯電器5、定着装置6から構成されている。ここで、現像手段を電子写真感光体及び帯電手段と共に一体的にカートリッジ化し、画像形成装置本体に対して着脱自在としたプロセスカートリッジにしてもよい。
【0030】
次に、後記実施例におけるトナー画像形成プロセスを図4により説明する。
【0031】
帯電ローラ2は、被帯電体としての電子写真感光体1に対して弾性に抗して所定の押圧力で圧接させて配設してある。nは電子写真感光体1と帯電ローラ2のニップ部である帯電ニップ部であり、この帯電ニップ部幅は3mmである。この帯電ローラ2を帯電ニップ部nにおいて、帯電ローラ表面と電子写真感光体表面と互いに逆方向に等速で移動するよう、凡そ80rpmで矢印方向に回転駆動させた。
【0032】
また、帯電ローラ2の芯金2aには、帯電バイアス印加電源S1から−620Vの直流電圧を帯電バイアスとして印加するようにした。本例では、電子写真感光体1の表面は帯電ローラ2に対する印加電圧とほぼ等しい電位(−600V)に帯電処理される。
【0033】
電子写真感光体1の基本構成は、外径30mmのアルミニウムシリンダー表面に、電荷発生層、電荷輸送層及び電荷注入層を、この順で有する。電荷発生層は、ジスアゾ系電荷発生顔料をポリビニルブチラール樹脂に2:1の割合(質量比)で分散させた膜厚が1μmの層である。電荷輸送層は、ヒドラゾン系電荷輸送化合物をポリカーボネート樹脂に1:1の割合で分散させた膜厚が20μmの層である。電荷注入層は、帯電ローラからの電荷を電荷輸送層に注入させ易くさせる層であり、導電フィラーとしてSnO紛体をホスファゼン樹脂に7:10の割合で分散させた膜厚が10μmの層である。電子写真感光体は矢印方向に50mm/secの周速で回転する。
【0034】
露光器3は、レーザーダイオード・ポリゴンミラー等を含むレーザービームスキャナである。このレーザービームスキャナは、目的の画像情報の時系列的電気ディジタル画素信号に対応して強度変調されたレーザー光を出力し、該レーザー光で上記回転電子写真感光体1の一様帯電面を走査露光する。この走査による露光光Lにより回転電子写真感光体1の面に目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0035】
電子写真感光体1面の静電潜像は、現像装置4によりトナー画像として現像される。本例の現像装置は、磁性1成分絶縁トナー(ネガトナー)を用いた反転現像装置である。4aはマグネットロール4bを内包させた、現像剤担持搬送部材として非磁性回転現像スリーブであり、この回転現像スリーブ4aに規制ブレード4cで現像剤4dが薄層にコートされる。現像剤4dのトナーは、規制ブレード4cで回転現像スリーブ4aに対する層厚が規制され、また電荷が付与される。回転現像スリーブ4aにコートされた現像剤は、スリーブ4aの回転により電子写真感光体1とスリーブ4aの対向部である現像部(現像領域部)aに搬送される。また、スリーブ4aには現像バイアス印加電源S2により現像バイアス電圧が印加される。現像バイアス電圧は、−500VのDC電圧と、周波数1800Hz、ピーク間電圧1600VのAC電圧を重畳したものを用いた。これにより、電子写真感光体1側の静電潜像がトナーで現像される。
【0036】
現像剤4dはトナーtと導電粒子mの混合物であり、トナーtは結着樹脂、磁性体粒子及び電荷制御剤を混合し、混練、粉砕、分級の各工程を経て作製し、これに、導電粒子mや流動化剤を外添剤として添加して作製されたものである。トナーtは、質量平均粒径(D4)は7μmであった。導電粒子mとしては、粒径3μmの導電性酸化亜鉛粒子を用い、比抵抗は10Ω・cm、二次凝集体を含めた平均粒径は3μmである。また、トナー100質量部に対して導電粒子は2質量部である。
【0037】
接触転写手段としての中抵抗の転写ローラ5は、電子写真感光体1に所定に圧接させて転写ニップ部bを形成させてある。この転写ニップ部bに不図示の給紙部から所定のタイミングで記録媒体としての転写材Pが給紙され、かつ転写ローラ5に転写バイアス印加電源S3から所定の転写バイアス電圧が印加されることで、電子写真感光体1側のトナー像が転写ニップ部bに給紙された転写材Pの面に順次に転写されていく。ローラ抵抗値は5×10Ωのものを用い、+2000VのDC電圧を印加して転写を行った。即ち、転写ニップ部bに導入された転写材Pはこの転写ニップ部bを挟持搬送されて、その表面側に回転電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー画像が順に静電気力と押圧力にて転写されていく。
【0038】
転写ニップ部bに給紙されて電子写真感光体1側のトナー像の転写を受けた転写材Pは、回転電子写真感光体1の面から分離されて熱定着方式等の定着装置6に導入され、トナー像の定着を受けて画像形成物(プリント、コピー)として装置外へ排出される。
【0039】
電子写真感光体1上のトナー画像は、転写ニップ部bにおいて転写バイアスの影響で転写材P側に引かれて積極的に転移するが、電子写真感光体1上の導電粒子mは導電性であることで転写材P側には積極的には転移せず、電子写真感光体1上に実質的に付着保持されて残留する。
【0040】
転写後の電子写真感光体1面に残存の転写残トナー及び上記の導電粒子mは、電子写真感光体1と帯電ローラの帯電ニップ部nに電子写真感光体1の回転でそのまま持ち運ばれて帯電ローラ2に付着・混入する。
【0041】
従って、電子写真感光体1と帯電ローラ2とのニップ部nにこの導電粒子mが存在した状態で電子写真感光体1の接触帯電が行われる。なお、印字初期においては帯電ローラ表面に導電粒子が供給されず帯電が行えないので、帯電ローラ表面には予め導電粒子を塗布しておく。また、帯電ローラに移行したトナーは、帯電ローラから徐々に吐き出され現像器4に回収され、再び現像に用いられる。
【実施例】
【0042】
以下に、実施例及び比較例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
表1に示される各配合の材料をオープンロールを用いて混練してできた発泡性未加硫ゴム組成物を押出し成形によりチューブ状に成形し、160℃で30分間一次加硫を行い弾性発泡体とし、160℃で30分間二次加硫を行った。加熱方法としては、配合1及び2では熱風オーブンを用いて一次加硫を行った。配合3〜6に用いEPDM(商品名:EPT4100E)は配合1、2に用いたEPDM(商品名:EPT8075E)と比べて分子量の低いので、熱風オーブンを用いた常圧下での加硫発泡させた場合、発泡時の膨張にチューブ表面にクラックが入る恐れがあり、配合3〜6の発泡性未加硫ゴム組成物に関しては加硫缶を用いて一次加硫を行った。これは加硫缶のような水蒸気の加圧下で加硫発泡することにより、発泡時の急激な膨張を抑制することができるためである。
【0044】
【表1】

【0045】
このようにして製造したチューブに外径6mm、長さ250mmの芯金を圧入及び接着し、表面の研磨を行い外径16mmの帯電ローラを製造した。配合1〜6に従い6本の帯電ローラを製造し、前述したトナー画像形成プロセスに得られた帯電ローラを適用して、形成させたトナー画像を評価した。トナー画像は幅1mmの細線画像を10mm間隔で多数本形成したものであり、1枚目の画像を初期画像評価とし、以後500枚ごとにべた白画像を出力し、画像上に黒点画像(かぶり画像)がないかどうかで評価し、○、△、×の3段階評価で耐久画像評価を行った。また、黒点画像が発生した時点で画像評価を中断し、ローラ表面の観察を行った。○は15000枚以上通紙しても黒点画像が出ないこと、△は12000枚までは黒点画像が出ないこと、×は10000枚までに黒点画像が出てしまったものとする。
【0046】
配合1〜6の帯電ローラについて、実施例1、2及び比較例1〜4として引張特性である弾性率、破断伸び、破断強度、平均セル径、セル壁の平均厚み、ローラ抵抗を測定し、上記の「かぶり」評価と共に表2に示す。
【0047】
(弾性率、破断伸び、破断強度の測定方法)
JIS−K6301に準拠した方法でそれぞれ測定を行った。試料としては、長さ100mm、幅10mm、厚み2mmのものを調製した。
【0048】
(平均セル径、セル壁の平均厚みの測定方法)
帯電ローラの弾性発泡体の任意断面に可視光(ハロゲンランプ)を照射して、光学顕微鏡(ライカマイクロシステム株式会社製DMR HC金属顕微鏡)により倍率200倍にて観測し、得られた図2に示されるセル、セル壁で構成されるスポンジ構造を二値化し各セルの面積から、各セルを真円相当径に換算したその平均をセル径とする。ただし、10μm以下のセルは除いてセル径を算出する。セル壁の平均厚みは、セル壁を2点間距離で任意に50点測定したものを平均したものである。
【0049】
(ローラ抵抗の測定方法)
図3に示すように帯電ローラ42の芯金41に総圧で1kgの荷重がかかるようにφ30mmのアルミニウムドラム43に圧着した状態で、芯金41とアルミニウムドラム43にDC100Vの電圧を印加して計測する方法で測定した。
【0050】
(加硫発泡特性 MH、t50、tp90の測定方法)
発泡性未加硫ゴム組成物をJIS−K6300に準拠して発泡圧測定機能付き加硫試験機ロータレス・レオメータRLR−3(東洋精機製)を用い、160℃にて最大トルクMH、50%トルク時間t50、90%発泡圧時間tp90を測定した。
【0051】
(ムーニー粘度の測定方法)
JIS−K6300に準拠してムーニービスコメータ SMV−200(島津製作所製)を用い、ムーニー粘度試験を行い、ML(1+4)100℃の値を測定した。
【0052】
【表2】

【0053】
表2より、実施例1及び2では耐久性が向上していることが分かる。これは、セル、セル壁が微細でかつ柔軟性があり、電子写真感光体に密に接触できることより本電子写真プロセスにおいて不可避である転写残トナーによる汚染による帯電均一性の低下がなく、また、伸び性及び強度が高いため長期使用によるセル壁の変形、破れ等による画像不良が発生しない。比較例1及び2は長期耐久によるセル、セル壁の異常は見られなかったが、弾性率が高いため実施例1、2と比べて電子写真感光体との接触性が低いため耐久画像で若干劣る結果となった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる帯電部材の構成及び動作を示す断面図である。
【図2】本発明にかかる帯電部材の弾性発泡体のセル、セル壁の概略構成図である。
【図3】実施例に於いて、ローラ抵抗を測定した装置の構成図である。
【図4】本発明にかかる帯電装置を用いた画像形成装置の構成及び動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電子写真感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
2a 芯金
2b 弾性体ローラ
3 露光器
4 現像器
4a 現像スリーブ
4b マグネットロール
4c 規制ブレード
4d 現像剤
5 転写帯電器
6 定着装置
t トナー
m 導電粒子
n 帯電ニップ
L 露光光
31 セル
32 セル壁
41 芯金
42 帯電ローラ
43 アルミニウムドラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧を印加した帯電部材で被帯電体面を帯電処理する帯電部材であって、弾性率が0.3MPa以下、破断伸びが100%以上、かつ破断強度が0.8MPa以上である弾性発泡体からなることを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記弾性発泡体の平均セル径が20〜100μm、セル壁の平均厚みが0.1〜10μmである請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記帯電部材が帯電ローラである請求項1又は2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記帯電ローラのローラ抵抗が10〜10Ωである請求項3に記載の帯電部材。
【請求項5】
前記弾性発泡体の表面に導電粒子を被覆してなる請求項1〜4のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項6】
前記導電粒子の比抵抗が1012Ω・cm以下である請求項5に記載の帯電部材。
【請求項7】
弾性発泡体を構成する発泡性未加硫ゴム組成物において、160℃にて測定したMH(トルク最大点)、t50(50%トルク時間)、tp90(90%発泡圧時間)の各測定値が4MPa≦MH≦8MPa、tp90≧t50であるように調製された発泡性未加硫ゴム組成物を加硫発泡させることを特徴とする帯電部材の製造方法。
【請求項8】
発泡性未加硫ゴム組成物に含有しているゴムがエチレンプロピレンジエンゴムであり、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4 100℃)が50〜100であり、かつヨウ素価が18〜22である請求項7に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項9】
前記発泡性未加硫ゴム組成物を常圧下で加硫発泡する請求項7又は8に記載の帯電部材の製造方法。
【請求項10】
前記発泡性未加硫ゴム組成物が発泡剤としてアゾジカルボンアミドを含有する請求項7〜9のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項11】
前記発泡性未加硫ゴム組成物が発泡剤を15〜30質量部含有する請求項7〜10のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項12】
前記発泡性未加硫ゴム組成物が導電剤を含有する請求項7〜11のいずれかに記載の帯電部材の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜6のいずれかに記載の帯電部材が被帯電体とニップ部を形成するように配置され、かつ該ニップ部に導電粒子を介在することを特徴とする帯電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−133383(P2006−133383A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320682(P2004−320682)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】