説明

帯電防止処理剤、その処理剤を用いた帯電防止膜、被覆物品及びパターン形成方法

【課題】 化学増幅型レジストにおける膜減り現象防止に優れた帯電防止処理剤、その帯電防止処理剤を用いた帯電防止膜、被覆物品及びパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 水系溶媒可溶性導電性高分子、2価以上の脂肪族塩基性化合物及びアニオン性界面活性剤を含む帯電防止処理剤、その帯電防止処理剤を用いた帯電防止膜、被覆物品及びパターン形成方法。水溶性導電性高分子としては、ブレンステッド酸基を有するπ共役系導電性高分子が好ましく、2価以上の脂肪族塩基性化合物は含有する塩基性化合物の総モル数に対して0.1〜75モル%の範囲内にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系溶媒可溶性導電性高分子、2価以上の脂肪族塩基性化合物を含む帯電防止処理剤に関する。さらに詳しく言えば、本発明は、帯電防止能を維持しつつ、半導体微細加工に使用される化学増幅系レジストとのミキシング層が形成されにくい帯電防止処理剤に関する。更に、化学増幅系レジストとのミキシング層が形成されにくく、かつ該レジストに対し優れたぬれ性を発現する帯電防止処理剤に関する。また、その帯電防止処理剤を用いた帯電防止膜、被覆物品及びパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己ドープ型の導電性高分子は、通常、水に可溶であって容易に任意の形状に成形、製膜、配置できる特徴をもっていることから大面積フィルムの作製や、また微細加工が必要な電気素子に対しても極めて優れた加工性を有する特徴がある。
この特徴を活かして電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いたリソグラフィ工程におけるチャージアップ防止技術(特許文献1)が開示され、近年広く使用されるに至っている。
【0003】
光、電子線あるいはイオン線等の荷電粒子線を用いたリソグラフィの共通技術として必要不可欠の材料である化学増幅型レジストは、使用環境の影響を受け易く取り扱いの難しいレジストである。
【0004】
導電性組成物を化学増幅型レジストの表面に被覆して利用する場合、その水素イオン濃度(pH)の領域によっては、露光により生成した酸が被覆材料により中和される、もしくは露光していないのに被覆材料から供給される酸により露光されたと同じ状態となってしまう現象が認められる等、被覆材料中の僅かの酸成分がレジストの感度に大きく影響を与えることが知られている。この現象はポジ型レジストでは膜減りとなって現れ、ネガ型レジストでは難溶化層の形成あるいは不溶化層の形成となって現れる。
【0005】
水系溶媒可溶性導電性高分子の水溶液のpH変化を抑制する方法として、溶液中の溶存酸素を除去する方法(特許文献2)、弱酸とアミンとを含む緩衝液を使用してpH低下を抑制する方法(特許文献3)が開示されている。
【0006】
近年、半導体デバイスの最小回路線幅の微細化に合わせてレジスト倒れが発生するという問題があり、この現象を防止するためにアスペクト比を適性にするこころみが進められ、結果的にレジスト膜厚は薄くなる傾向にある。現像工程を経てパターニングされたレジストは、引き続きドライエッチング工程により基板にパターンが転写されるが、この過程でレジストのドライエッチング耐性の重要性が増しており、チャージアップ防止膜に起因したレジストの膜減り現象防止、あるいはレジスト形状の維持に対する要求は近年益々厳しくなっている。
【0007】
さらに詳しく説明すると、レジスト表面への帯電防止処理膜の形成過程において、レジスト中に帯電防止処理剤に含まれる水と親和性が高い溶剤が残留していると相互に液体成分が浸透していく。この液体成分の浸透に伴って水系溶媒可溶性導電性高分子も移動するためレジストと帯電防止処理膜との界面でミキシング層が形成される。このミキシング層に含まれる水系溶媒可溶性導電性高分子由来の酸成分がレジストの化学変化を誘起する濃度を超えるとポジ型の化学増幅型レジストでは膜減り現象として現れ、一方、ネガ型の化学増幅型レジストでは難溶化層の形成、ひいてはかぶり現象として現れる。このような界面における望まざる化学変化によって、描画後のレジストに肩落ちやT−トップと呼ばれる形状が発生する。このような形状の発現は、当該パターンをシリコンウエハー等の基板に転写する過程において線幅の変動やエッチングの深さ、形状等の制御に悪影響をもたらし、微細化への大きな問題点となっている。
【0008】
化学増幅系レジストの多くは脂溶性であり、その塗膜は水となじみにくく、導電性組成物をレジスト表面に被覆して利用する場合、ぬれ性を向上させる目的で導電性組成物に界面活性剤を添加することが知られている。しかし、これまで使用されてきた界面活性剤は、レジストへの膜減りなどレジスト形状に影響するものが多く、逆に界面活性剤量を減らすとぬれ性が低下し塗布性に問題が生じる。他方、界面活性剤もレジストへ影響をおよぼすことから界面活性効果をもつ水溶性高分子を用いる方法(特許文献4)が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平4−32848号公報
【特許文献2】特開平8−259673号公報
【特許文献3】特開平11−189746号公報
【特許文献4】特開2002−226721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、化学増幅型レジストにおける膜減り現象防止能を持つ帯電防止処理剤を提供することを課題とする。また、該レジストに対し、膜べり現象防止能をもちつつ、良塗布性を持つ帯電防止処理剤を提供することを課題とする。また、その帯電防止処理剤を用いた帯電防止膜、被覆物品及びパターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意研究の結果、水系溶媒可溶性導電性高分子及び2価以上の脂肪族塩基性化合物を含む帯電防止処理剤が化学増幅型レジストに対し膜減り現象防止能に優れることを発見し本発明に至った。更に界面活性剤を添加しても、レジストに対する膜べり防止能が維持され、かつ、良塗布性を発現することを発見し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記の帯電防止処理剤、その帯電防止膜を用いたパターン形成方法、その帯電防止膜及びパターン形成方法を利用して得られる各種基板製品に関する。
【0012】
[1]ブレンステッド酸基を有する水系溶媒可溶性導電性高分子及び2価以上の脂肪族塩基性化合物を含むことを特徴とする帯電防止処理剤。
[2]さらに揮発性の塩基性化合物を含む前記1に記載の帯電防止処理剤。
[3]塩基性化合物の総モル数に占める2価以上の脂肪族塩基性化合物のモル分率が0.1〜75モル%の範囲内にある前記1または2記載の帯電防止処理剤。
[4]2価以上の脂肪族塩基性化合物を少なくとも1種が、80℃以上の沸点をもつ前記1〜3のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[5]2価以上の脂肪族塩基性化合物が、ジアミノアルカン、トリアミノアルカン、ポリアミノアルカン及びポリアルキルイミンからなる群から選択される1種以上よりなる前記1〜4のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[6]2価以上の脂肪族塩基性化合物が、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノへキサン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される1種以上よりなる前記5記載の帯電防止処理剤。
[7]水系溶媒可溶性導電性高分子が、π共役系導電性高分子である前記1〜6のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[8]ブレンステッド酸基がスルホン酸基である前記1〜7のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[9]水系溶媒可溶性導電性高分子に含まれるブレンステッド酸基のモル数に対して、2価以上の脂肪族塩基性化合物に含まれる塩基性基のモル数が0.05〜50モル%である前記1〜8のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[10]帯電防止処理剤全体を100質量%として、水系溶媒可溶性導電性高分子を0.1〜10質量%、2価以上の脂肪族塩基性化合物を0.1〜20質量%、揮発性の塩基性化合物を0.1〜20質量%含む水溶液である前記2に記載の帯電防止処理剤。
[11]さらに界面活性剤を含む前記1〜10のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[12]界面活性剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物である前記11に記載の帯電防止処理剤。
[13]界面活性剤がアニオン性界面活性剤である前記11に記載の帯電防止処理剤。
[14]帯電防止処理剤全体を100質量%として、水系溶媒可溶性導電性高分子を0.1〜10質量%、2価以上の脂肪族塩基性化合物を0.1〜20質量%、揮発性の塩基性化合物を0.1〜20質量%、アニオン性界面活性剤を0.001〜1質量%含む水溶液である前記13に記載の帯電防止処理剤。
[15]水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、m及びnは、それぞれ独立して0または1を表し、XはS、N−R1またはOを表し、Aは−B−SO3-+で示される置換基を少なくとも一つ有する、炭素数1〜4のアルキレンまたはアルケニレン基(二重結合を2以上有していてもよい。)を表し、前記アルキレンまたはアルケニレン基は炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基で置換されていてもよく、Bは−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表し、p、q及びrは独立して0または1〜3の整数を表し、M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表す。)で示される化学構造を含む前記1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[16]水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R2〜R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表し、B及びMは前記15の記載と同じ意味を表す。)で示される化学構造を含む前記1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[17]水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R5は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表し、B及びMは前記15の記載と同じ意味を表す。)で示される化学構造を含む前記1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[18]水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(4)
【化4】

(式中、R6〜R9は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、またはSO3-+基を表し、R9は、水素原子、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される一価基を表し、B及びMは、前記15の記載と同じ意味を表す。)で示される化学構造を含む前記1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
[19]水系溶媒可溶性導電性高分子が、化学構造として5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを含む重合体である前記15または16に記載の帯電防止処理剤。
[20]前記1〜19のいずれか1項に記載の帯電防止処理剤を用いて得られる帯電防止膜。
[21]前記20に記載の帯電防止膜で被覆してなる被覆物品。
[22]帯電防止膜が下地基板に塗布された感光性組成物もしくは感荷電粒子線組成物上に形成されている前記21に記載の被覆物品。
[23]前記20に記載の帯電防止膜を用いることを特徴とするパターン形成方法。
【0013】
また、本発明は、下記の帯電防止処理剤用水溶性組成物に関する。
[24]2価以上の脂肪族塩基性化合物及びアニオン性界面活性剤を含むことを特徴とする帯電防止処理剤用水溶性組成物。
[25]2価以上の脂肪族塩基性化合物、揮発性の塩基性化合物及びアニオン性界面活性剤を含むことを特徴とする帯電防止処理剤用水溶性組成物。
[26]塩基性化合物の総モル数に占める2価以上の脂肪族塩基性化合物のモル分率が0.1〜75モル%の範囲内にある前記24または25記載の帯電防止処理剤用水溶性組成物。
[27]80℃以上の沸点をもつ2価以上の脂肪族塩基性化合物を少なくとも1種以上含む前記24〜26のいずれか1項に記載の帯電防止処理剤用水溶性組成物。
[28]2価以上の脂肪族塩基性化合物が、ジアミノアルカン、トリアミノアルカン、ポリアミノアルカン及びポリアルキルイミンからなる群から選択される1種以上よりなる前記24〜27のいずれかに記載の帯電防止処理剤用水溶性組成物。
[29]2価以上の脂肪族塩基性化合物がエチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノへキサン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される1種以上よりなる前記24〜27のいずれかに記載の帯電防止処理剤用水溶性組成物。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
係る帯電防止処理剤は、水系溶媒可溶性導電性高分子を含み、その塗布膜や被覆物が電子伝導性の機能を有し、帯電防止目的に使用されるものを意味する。
【0015】
本発明の帯電防止処理剤は、処理後に放置または乾燥すると、帯電防止処理剤に含まれている水が揮発等によって減少し、流動性のなくなった半固体あるいは固体となる。この流動性の無くなった状態を「帯電防止材」と呼び、さらに帯電防止材が膜状である場合を「帯電防止膜」と呼ぶ。本発明について以下に詳しく説明する。
【0016】
水系溶媒可溶性導電性高分子は、一般にブレンステッド酸基を有するπ共役系導電性高分子であり、ブレンステッド酸基に由来するスルホン酸基、あるいはカルボン酸基等が塩基性化合物で中和され使用されている。本発明においては、2価以上の脂肪族塩基性化合物または他の塩基性化合物よりなる混合物で中和を行う。
【0017】
水系溶媒可溶性導電性高分子は、レジスト表面に塗布された後、水が揮発するにつれて塩基性化合物とイオン結合するが、モビリティを完全には失っていない。また、揮発性の塩基性化合物を使用した場合は、帯電防止膜が塗布されたレジストと共に下地基板を加熱処理すると揮発性の塩基性化合物は部分的にイオン結合が分解し塩基成分が揮発してしまうために発生したブレンステッド酸によりレジストに影響を与えることが問題となっていた。
【0018】
本発明者らは、2価以上の脂肪族塩基性化合物で水系溶媒可溶性導電性高分子のブレンステッド酸を中和することによって、レジスト膜表面に形成された帯電防止膜中で導電性高分子と2価以上の脂肪族塩基性化合物との間でイオン結合を形成して、帯電防止膜中の導電性高分子のモビリティを抑制して化学増幅系レジストとの界面でのミキシングを抑制し、膜減り抑止やレジストの形状を維持するに有効であることを見出した。
【0019】
本発明に用いる2価以上の脂肪族塩基性化合物は、特に限定されないが、具体例としては、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−デカンジアミン、2,3−ブタンジアミン、1,2−ビスメチルアミノエタン、1,2−ビスエチルアミノエタン、1,2−ビスプロピルアミノエタン、1,2−ビスイソプロピルアミノエタン、2−ジメチルアミノエチルアミン、2−エチルアミノエチルアミン、2−イソプロピルアミノエチルアミン、2−ブチルアミノエチルアミン、2−プロピルアミノエチルアミン、1,2−ビスフルフリルアミノエタン、2−フルフリルアミノエチルアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられるが、電子線描画を行う際、一般的にレジストを加熱処理して用いることから、揮発性の塩基性化合物では部分的にイオン結合が分解するため、80℃以上の沸点を持つ2価以上の脂肪族塩基性化合物を少なくとも1種以上含むことが好ましい。これらの2価以上の脂肪族塩基性化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、他の塩基性化合物と混合して用いてもよい。ここで他の塩基性化合物としては、揮発性の塩基性化合物が好ましい。2価以上の脂肪族塩基性化合物の塩基性化合物全体に占めるモル比は0.01〜75質量%が好ましい。モル比が0.01質量%未満では本発明の効果が得られない。また75質量%を超えると導電性の低下や水系溶媒可溶性導電性高分子の不溶化、化学増幅型レジストに適用する場合には荷電粒子線の照射により発生した酸のクエンチングが起こる場合がある。
【0020】
揮発性の塩基性化合物は、常温常圧で気体状態であり、沸点が25℃以下の化合物を意味し、通常溶液で取り扱われるものを意味する。より具体的には、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン等が挙げられる。
【0021】
また、化学増幅型レジストは露光により酸触媒を発生させた後、加熱により反応を促進させる。その加熱温度以下に沸点をもつ塩基性化合物は、揮発性の塩基性化合物と同様、下記にあげる塩基性化合物も導電性高分子または後述の界面活性剤のブレンステッド酸との部分的にイオン結合が分解し塩基成分が揮発してしまう。従って、イソプロピルアミン、エチルメチルアミン、t−ブチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルメチルアミン、シクロプロピルアミン、ジエチルアミン、アリルアミン、イソブチルアミン、エチルプロピルアミンなど、通常レジストの加熱温度以下に沸点を持つ塩基性化合物も揮発性の塩基性化合物に含まれる。
【0022】
本発明で使用される水系溶媒可溶性導電性高分子は、基本的にブレンステッド酸基を有するπ共役系導電性高分子であって水溶性であればよい。導電性高分子のブレンステッド酸基は、π電子共役主鎖に直接置換されているか、スペイサーを介して、例えばアルキレン側鎖あるいはオキシアルキレン側鎖を介して置換されている自己ドープ型導電性高分子であれば良く、必ずしも化学構造には制限されない。具体的なポリマーとしては、ポリ(イソチアナフテンスルホン酸)、ポリ(ピロールアルキルスルホン酸)、ポリ(アニリンスルホン酸)等の繰り返し単位を含む共重合体またはこれらの各種塩構造体及び置換誘導体等を挙げることができる。
【0023】
また、前記共重合体におけるスルホン酸基を含む化学構造の繰り返し単位は、通常、重合体の全繰り返し単位の100モル%〜50モル%、好ましくは100モル%〜80モル%の範囲であり、他のπ共役系化学構造からなる繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、2〜5種の繰り返し単位からなる共重合体組成であってもよい。
【0024】
なお、本発明において、「繰り返し単位を含む共重合体」とは、必ずしもその単位を連続して含む共重合体に限定されず、π共役系主鎖に基づく所望の導電性が発現される限りにおいてランダムコポリマーのようにπ共役系主鎖に不規則、不連続に繰り返し単位を含む重合体の意味である。
【0025】
本発明のブレンステッド酸基を有する水系溶媒可溶性導電性高分子で特に有用な構造として、下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される構造が挙げられる。導電性高分子は、これらの各一般式の単独構造からなる重合体でもよいし、これら構造と他の構造を含む共重合体でもよい。
【0026】
一般式(1):
【化5】

式中、m及びnは、それぞれ独立して0または1を表す。XはS、N−R1またはOを表し、Aは−B−SO3-+で示される置換基を少なくとも一つ有する、炭素数1〜4のアルキレンまたはアルケニレン基(二重結合を2以上有していてもよい。)を表し、前記アルキレンまたはアルケニレン基は炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基で置換されていてもよい。Bは−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表し、p、q及びrは独立して0または1〜3の整数を表し、M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表す。
【0027】
一般式(2):
【化6】

式中、R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、−B−SO3-+基を表す。前記R2、R3及びR4のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルフィド結合、スルフィニル結合、スルホニル結合、イミノ結合を任意に含有してもよい。Bは−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表し、p、q及びrは独立して0または1〜3の整数を表し、M+は水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表す。
【0028】
一般式(3):
【化7】

式中、R5は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表す。上記のR5のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルフィド結合、スルフィニル結合、スルホニル結合、イミノ結合を任意に含有してもよい。Bは−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表し、p、q及びrは独立して0または1〜3の整数を表し、M+は水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表す。
【0029】
一般式(4):
【化8】

式中、R6〜R8は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、またはSO3-+基を表し、R9は、水素原子、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される一価基を表し、上記のR6〜R8のアルキル基、アルコキシ基またはアルキルエステル基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルフィド結合、スルフィニル結合、スルホニル結合、イミノ結合を任意に含有してもよい。Bは−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表し、p、q及びrは独立して0または1〜3の整数を表し、M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表す。
【0030】
上記式中のR2〜R8として特に有用な例として、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルエステル基、フェニル及び置換フェニル基、スルホン酸基が挙げられる。これらの置換基を更に詳しく例示すれば、アルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、1−ブテニル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エトキシエチル、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル、アセトニル、フェナシル等、アルコキシ基としてはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ等、アルキルエステル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ、ブチロイルオキシ等のアシルオキシ基、置換フェニル基としてはフロロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基等が挙げられる。上記のR2〜R8のアルキル基、アルコキシ基の鎖中には、カルボニル結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、アミド結合、スルホンアミド結合、スルフィド結合、スルフィニル結合、スルホニル結合、イミノ結合を任意に含有してもよい。
【0031】
一般式(3)及び一般式(4)中のR2〜R5が表す前記の置換基の中でも、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルコキシ基が望ましく、また、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が特に望ましい。
【0032】
一般式(4)中のR6〜R8が表す置換基としては、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和もしくは不飽和炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選ばれる一価基が望ましい。
【0033】
前記一般式(1)〜(5)におけるBは、−(CH2x−(O)y−(CH2z−を表し、x及びzは独立して0または1〜3の整数、yは0または1を表し、x=y=z=0の場合はBは存在せず、Bに結合すべきであった硫黄原子がBが結合すべきであった目的結合部位に直接結合する。
【0034】
Bの望ましい例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、アリーレン、ブタジエニレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、メチレンオキシエチレン、エチレンオキシエチレン等が挙げられる。
【0035】
Bが表す−(CH2x−(O)y−(CH2z−において、x及びzが独立して0または1を表し、yが0または1を表し、yが1のときzは1を表す場合がとりわけ望ましく、そのようなとりわけ望ましいBの例として、Bが存在せず硫黄原子が直接結合する例(−SO3-+)、Bが存在しメチレン(−CH2−)、ジメチレン(−CH2−CH2−)、オキシメチレン(−O−CH2−)、メチレンオキシメチレン(−CH2−O−CH2−)である例が挙げられる。
【0036】
式中、M+は水素イオン、アルカリ金属イオン、第4級アンモニウムイオンを表すが、これらカチオンを一種類以上含む混合物であっても良い。
アルカリ金属イオンとしては、例えばNa+、Li+、K+が挙げられる。
【0037】
第4級アンモニウムイオンは、N(R10)(R11)(R12)(R13+で示される。式中、R10〜R13は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の置換もしくは非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表し、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基のような炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキルまたはアリール基であってもよい。
【0038】
この様なN(R10)(R11)(R12)(R13+で示される第4級アンモニウムのカチオンとしては、例えばNH4+、NH(CH33+、NH(C653+、N(CH32(CH2OH)(CH2−Z)+等の非置換またはアルキル置換もしくはアリール置換型カチオンが用いられる。但し、Zは化学式量が600以下の任意の置換基を表し、例えば、フェノキシ基、p−ジフェニレンオキシ基、p−アルコキシジフェニレンオキシ基、p−アルコキシフェニルアゾフェノキシ基等の置換基である。なお、特定カチオンに変換するためには、通常のイオン交換樹脂を用いてもよい。
【0039】
本発明の水系溶媒可溶性導電性高分子を構成するブレンステッド酸を含む構成単位として、使用可能な例をより具体的に例示する。一般式(1)、(2)、(3)及び(4)に該当しない例として、ポリ(カルバゾール−N−アルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレン−オキシアルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−アルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−オキシアルカンスルホン酸)、ポリ(アニリン−N−アルカンスルホン酸)、ポリ(チオフェンアルキルカルボン酸)、ポリ(チオフェンオキシアルキルカルボン酸)、ポリ(ポリピロールアルキルカルボン酸)、ポリ(ピロールオキシアルキルカルボン酸)、ポリ(カルバゾール−N−アルキルカルボン酸)、ポリ(フェニレン−オキシアルキルカルボン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−アルキルカルボン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−オキシアルキルカルボン酸)、ポリ(アニリン−N−アルキルカルボン酸)またはこれらの置換誘導体、6−スルホナフト[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイル等、もしくはそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0040】
一般式(1)、(2)または(3)で表される化学構造の好ましい具体例としては、5−(3’−プロパンスルホ)−4,7−ジオキシシクロヘキサ[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイル、5−(2’−エタンスルホ)−4,7−ジオキシシクロヘキサ[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイル、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、4−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、4−メチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−メチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−メチル−4−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、5−メチル−4−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−エチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−プロピル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−ブチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−ヘキシル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−デシル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−メトキシ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−エトキシ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−クロロ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−ブロモ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−トリフルオロメチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(スルホメタン)イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−スルホエタン)イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−スルホエトキシ)イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−(2’’−スルホエトキシ)メタン)−イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−(2’’−スルホエトキシ)エタン)−イソチアナフテン−1,3−ジイル等、もしくはそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0041】
一般式(4)で示され化学構造の好ましい具体例としては、2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、3−メチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−メチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、6−メチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−エチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−ヘキシル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、3−メトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−メトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、6−メトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−エトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、2−スルホ−N−メチル−1,4−イミノフェニレン、2−スルホ−N−エチル−1,4−イミノフェニレン等、もしくはそのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0042】
本発明に用いられる自己ドープ型導電性高分子の分子量は、繰り返し単位の化学構造によって異なるため一概に規定することはできないが、本発明の目的に適うものであればよく、主鎖を構成する繰り返し単位数(重合度)が、通常5〜2000、好ましくは10〜1000の範囲の重合度のものが挙げられる。
【0043】
本発明に用いられるブレンステッド酸基を有するπ共役系導電性高分子の特に好ましい具体例として、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルの重合体、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを80モル%以上含有するランダムコポリマー、ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル−co−イソチアナフテン−1,3−ジイル)、ポリ(3−(3−チエニル)エタンスルホン酸))、ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸))、ポリ(2−(3−チエニル)オキシエタンスルホン酸))、2−スルホ−1,4−イミノフェニレンを50モル%以上含有するランダムコポリマー、ポリ(2−スルホ−1,4−イミノフェニレン−co−1,4−イミノフェニレン)等とそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0044】
本発明の水系溶媒可溶性導電性高分子の濃度は、所望する膜の機能によって異なるが、通常は、0.001〜30質量%、好ましくは0.01〜10質量%である。
本発明の帯電防止処理剤には水と混和し水系溶媒可溶性導電性高分子を脱ドープさせない溶解する溶媒を使用してもよい。具体的には、例えば1,4−ジオキサンやテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、硫酸等の鉱酸、酢酸などの有機酸等が挙げられる。これらは2種以上の混合溶媒として用いることもできる。
【0045】
本発明の帯電防止剤には、ぬれ性や塗布性を改善する目的として界面活性剤を適量使用することができる。特に、帯電防止剤を水との相溶性が低いレジストの塗膜表面に適用する場合には、界面活性剤を使用することが好ましい。
【0046】
本発明で使用することのできる界面活性剤は特に限定されず、アニオン性、カチオン性、両性およびノニオン性界面活性剤を用いることが出来るが、好ましくは、アニオン性および両性界面活性剤である。
【0047】
アニオン性および両性界面活性剤を用いる場合は、その分子中にブレンステッド酸が存在すると、化学増幅型レジストに影響を与えることがわかっている。
【0048】
本発明では、アニオン型界面活性剤及び/または両性界面活性剤のブレンステッド酸は水系溶媒可溶性導電性高分子中のブレンステッド酸と共に2価以上の脂肪族塩基性化合物で中和され、導電性高分子及び前記界面活性剤の任意のブレンステッド酸部位と塩基化合物とが架橋様のイオン結合をする。その結果、導電性高分子及び界面活性剤のモビリティを抑制させ、膜減り抑止効果を発現し、かつ今までにない優れた良ぬれ性が発現される。
【0049】
本発明で使用されるアニオン性界面活性剤としては、アルキルエーテルカルボン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、αオレフィンスルホン酸、アルカンスルフォネート、ジアルキルスルホコハク酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ−テル硫酸エステル、高級アルコールリン酸エステル、高級アルコール酸化エチレン付加物リン酸エステル、アシル−N−メチルタウリンなどが挙げられ、その塩類も用いることができる。
本発明で使用される両性界面活性剤としては、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、エトキシ化アンモニウムなどの4級アンモニウム型界面活性剤、アルキルアミン類やラウロイルアミドグアニジンなどのグアニジン基含有化合物などが挙げられ、その塩類も用いることができる。
【0050】
これらのアニオン性または両性界面活性剤は、1種類を単独で、または2種類以上を混合して用いてもよく、他に、ノニオン性またはカチオン性界面活性剤や水溶性高分子などの界面活性効果をもつ化合物と併用してもよい。
アニオン性界面活性剤の帯電防止処理剤への添加量は、帯電防止処理剤全体を100質量%として、0.001〜1質量%が好ましい。配合量が0.001質量%以上であれば本発明の効果が得られる。また、1質量%以下であればアニオン性界面活性剤のブレンステッド酸による膜減りなどのレジスト形状に影響を及ぼさない。両性界面活性剤の帯電防止処理剤への添加量も上記アニオン性界面活性剤の添加量と同様であり、同様の効果を奏する。
【0051】
本発明の帯電防止処理剤は、非化学増幅型レジスト及び化学増幅型レジストいずれに対しても使用することができる。
【0052】
非化学増幅型レジストに対しては、塗布性に優れた帯電防止処理剤として有効である。非化学増幅型のレジスト樹脂は特に限定されないが、具体例として、ノボラック樹脂等のフェノール系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、α−メチルスチレンとα−クロロアクリル酸との共重合体系等が挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
本発明は化学増幅型レジストに対して、本発明の帯電防止膜と化学増幅型レジストとの接触面においてのミキシング層形成を防止し、ポジ型の場合は膜減り抑制効果が、ネガ型の場合はカブリ抑制効果が認められる。化学増幅型レジストの組成物の成分としては、フェノール樹脂系、アクリル樹脂系、アジド化合物系等の感光性樹脂、ポリメタクリレート樹脂系、ポリビニルフェノール系やポリヒドロキシスチレン系、α−メチルスチレンとα−クロロアクリル酸との共重合体系等の感荷電粒子線樹脂と溶剤、および、添加剤として、感光剤、アジド化合物、架橋剤、溶解阻害剤、酸発生剤等が挙げられ、これら添加剤が高分子の主鎖および側鎖に導入された化合物でもよいが、これらに限定されるものではない。具体的には、例えば、特開2001−281864に記載されている電子線レジストの組成物として記載されている化合物を挙げることができる。
【0054】
本発明の帯電防止処理剤は、該溶液中に含まれる水系溶媒可溶性導電性高分子及びアニオン性界面活性剤のブレンステッド酸の中和に使用するアミン添加量を変化させることにより、酸性〜アルカリ性の間の任意のpHの値に調整することが可能である。
【0055】
本発明においては、水系溶媒可溶性導電性高分子のブレンステッド酸基のモル数に対して2価以上の脂肪族塩基性化合物に含まれる塩基性基のモル数は0.05〜50モル%であることが好ましい。このモル数が0.05未満では本発明の効果が得られない。また、50モル%を超えると導電性の低下や水系溶媒可溶性導電性高分子の不溶化が起こる場合がある。
【0056】
前記、帯電防止処理剤を用いてレジスト表面に帯電防止膜を形成する具体的な方法としては、回転塗布が主として使用されているが、その他ディッピング(浸漬する)、あるいは物品への吹きつけ、インクジェット法、スクリーン印刷、バーコーターによる塗布法等、使用目的に応じて様々な方法が挙げられる。均一な薄膜を作製する場合には、本発明の帯電防止処理剤をレジスト表面に塗布する方法として特に回転塗布が好ましい。
【0057】
本発明の帯電防止膜が被覆された物品としては、帯電防止膜とレジストが積層された状態の基板であって、基板の材質としてはシリコンウエハー、ガリウム砒素ウエハー、インジウムリンウエハー等の化合物半導体ウエハー、石英基板、磁性体基板等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、積層基板は、半導体製造過程、及びフォトマスク、レチクル、ステンシルマスク等の製造過程を含む電子線描画過程における一過的な状態の基板も含まれる。
【0058】
表面に帯電防止膜を被覆することによって、化学増幅型レジストの品質変化、例えば、カブリ、膜減り、Tトップや肩落ち等のレジストの形状変化を抑制し、パターンを精度良く形成することができる。また、帯電防止膜によるチャージアップ防止効果により荷電粒子線を用いた描画工程で位置ズレを防止することができ、より精度の良いパターンを形成することができる。
【0059】
本発明は電子デバイスにも適用できる。ここでいう電子デバイスとは、電極間に本発明の帯電防止膜を配置した電子デバイスであり、例えば有機発光素子が挙げられる。
電極間には、本発明の帯電防止膜以外の材料を含んでいてもよく、帯電防止のための薄膜とその他の材料の薄膜との積層構造を有するものでもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
下記の例において使用した水系溶媒可溶性導電性高分子化合物の合成法、各種物性等の測定に採用した測定機器、測定方法は以下の通りである。
【0061】
1)水系溶媒可溶性導電性高分子化合物の合成
水系溶媒可溶性導電性高分子化合物であるポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)は、特開平7−48436号公報に開示されている方法を参考にして合成した。
2)pHの測定
水溶液のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計pH METER F−13((株)堀場製作所製)にて測定した。
3)帯電防止処理剤の塗布膜の作製方法及び表面抵抗の測定
帯電防止処理剤の塗布膜は、スピンナー 1H−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、60mm×60mm×1.1mmのコーニング製#1737ガラス板上に帯電防止処理剤組成物2mlを滴下した後、1500rpmで回転塗布し作製した。
塗布膜の表面抵抗は、表面抵抗測定器メガレスタMODEL HT−301(シシド静電気(株)製)にて測定した。本機器の測定上限値は、1×1011Ω/□である。
4)接触角
接触角は、協和表面化学(株)製のFACE CA−Dで測定した。
【0062】
5)化学増幅型電子線レジスト(以下、「レジスト」と略す。)の膜減り量
レジストの膜減り量は以下の手順で評価した。
(1)レジスト膜形成:40mm×40mm四方のシリコンウエハー上に化学増幅型レジストであるフジフィルムアーチ社FEP171レジストを800rpm/60秒間で回転塗布した後、120℃90秒間のプリベークにより溶剤を除去した。
(2)レジスト膜厚測定:基板上に形成されたレジストの一部剥離して基板面を基準位置として、触針式段差計(Dektak−3030,日本真空(株)製)を用い初期のレジスト膜厚A(nm)を測定した。
(3)帯電防止膜形成:塗布されたレジスト表面に導電性組成物の5mlを滴下し基板全面に覆うように配置した後、スピンコーターにて800rpm/60秒間で回転塗布して膜厚0.02μmの帯電防止膜を作成した。
(4)ベーク処理:帯電防止膜とレジストが積層された基板を、空気雰囲気下、リフロー炉(SIKAMA INTERNATIONAL(株)製)のホットプレ−トの表面温度を表面温度計にて実測して120℃に調整して90秒間加熱し、この状態の基板を空気中常温下で30分静置した。
(5)現像:2.38質量%テトラメチルアンモニウムハドロオキサイド(TMAH)水溶液よりなる現像液2mlを帯電防止膜の表面に滴下した。60秒静置した後、800rpmで現像液を振りきり60秒間回転を維持して乾燥した。
(6)ポストベーク処理:90℃に予め加温しておいたオーブンの中に10分間静置して乾燥させた。
(7)前記(2)の一部剥離した部分について触針式段差計を用い現像後のレジスト膜厚B(nm)を測定した。
(8)上記Aの値からBを差し引いてレジストの膜減り量C(C=A−B)を算出した。
【0063】
6)基準膜減り量
レジストは、レジスト塗膜作成後の塗膜保管期間によって個々のレジストに特有の膜減り量(以下、基準膜減り量という。)D(nm)が存在する。帯電防止膜に起因しないこの膜減り量Dは、予め以下の方法で測定した。
(1)レジスト膜形成:40mm×40mm四方のシリコンウエハー上に化学増幅型レジストであるフジフィルムアーチ社FEP171レジストを800rpm/60秒間で回転塗布した後、120℃でプリベークにより溶剤を除去した。
(2)レジスト膜厚測定:基板上に形成されたレジストの一部剥離して基板面を基準位置として触針式段差計を用い初期のレジスト膜厚E(nm)を測定した。
(3)現像:2.38質量%TMAH水溶液からなる現像液2mlを帯電防止膜の表面に滴下し60秒静置した後、800rpmで現像液を振りきり60秒間回転を維持して乾燥した。
(4)ポストベーク処理:90℃に予め加温しておいたオーブンの中に10分間静置して乾燥させた。
(5)前記(2)の一部剥離した部分について触針式段差計を用い現像後のレジスト膜厚F(nm)を測定した。
(6)上記Fの値かEを差し引いてレジストの基準膜減り量D(D=F−E)を算出した。
基準膜減り量D(nm)−膜減り量C(nm)は10nm未満であることが好ましく、3nm未満が特に好ましい。
【0064】
実施例1:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、各々1mol/lのアンモニア水と1,4−ジアミノブタン水溶液を99%:1%の比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤1を得た。帯電防止処理剤1のガラス基板上における表面抵抗値は4.8×106ohm/sqであった。
【0065】
実施例2:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、各々1mol/lのアンモニア水と1,4−ジアミノブタン水溶液を90%:10%の比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤2を得た。帯電防止処理剤2のガラス基板上における表面抵抗値は6.4×106ohm/sqであった。
【0066】
実施例3:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、各々1mol/lのアンモニア水と1,6−ヘキサメチレンジアミン水溶液を99%:1%の比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤3を得た。帯電防止処理剤3のガラス基板上における表面抵抗値は3.9×106ohm/sqであった。
【0067】
実施例4:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、各々1mol/lのアンモニア水と1,6−ヘキサメチレンジアミン水溶液を90%:10%の比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤4を得た。帯電防止処理剤4のガラス基板上における表面抵抗値は5.1×106ohm/sqであった。
【0068】
比較例1:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、1mol/lのアンモニア水溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤5を得た。帯電防止処理剤5のガラス基板上における表面抵抗値は3.3×106ohm/sqであった。
【0069】
比較例2:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、各々1mol/lのアンモニア水とエタノールアミン水溶液を50%:50%の比率とする塩基性化合物水溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤6を得た。帯電防止処理剤6のガラス基板上における表面抵抗値は4.3×106ohm/sqであった。
【0070】
実施例1〜4及び比較例1、2の帯電防止処理剤を用い、膜減り量を測定した結果を表1に示す。
【表1】

【0071】
表1から、2価以上の脂肪族塩基性化合物を含む帯電防止処理剤(実施例1〜4)では殆ど膜減りを起こしていないが、他の塩基性化合物を用いた帯電防止処理剤(比較例1〜2)では膜減りを生ずることが確認できた。
【0072】
実施例5〜14:
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)の0.8質量%水溶液100mlにドデシルベンゼンスルホン酸0.1質量%添加後、各々1mol/lのアンモニア水と各種2価以上の脂肪族塩基性化合物の水溶液を表2のモル比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調整し、帯電防止処理剤を得た。。
各帯電防止処理剤の接触角測定結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
実施例15〜17:
水溶液100mLにドデシルベンゼンスルホン酸を表3に記載の配合量で添加後、各々1mol/Lのアンモニア水と1,4−ジアミノブタン水溶液を80%:20%の比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調整し、水溶性組成物を得た。各水溶性組成物の接触角を表1に示す。
【0075】
比較例3〜5:
水100mLにドデシルベンゼンスルホン酸を表1に記載の配合量で添加後、1mol/Lのアンモニア水溶液によりpH4.5に調製し、水溶性組成物を得た。各水溶性組成物の接触角を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3から本発明の水溶性組成物(実施例15〜17)は、比較例の水溶性組成物(比較例3〜5)に比べてぬれ性に優れていることが分かる。
【0078】
実施例18〜24:
水溶液100mLにn−ドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学製)を2000ppmとなるように添加後、各々1mol/Lの表4に示した比率とする塩基性化合物混合溶液によりpH4.5に調製し、実施例18〜24の水溶性組成物を得た。FEP171レジスト膜に対する各水溶性組成物の接触角を表4に示す。
【0079】
比較例6,7:
水100mLにn−ドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学製)を2000ppmとなるように添加後、各々1mol/Lのアンモニア水(関東化学製 1N アンモニア水)と表2に示した比率とするエタノールアミン混合溶液によりpH4.5に調製し、比較例6及び7の水溶性組成物を得た。FEP171レジスト膜に対する各水溶性組成物の接触角を表4に示す。
【0080】
【表4】

【0081】
比較例6及び7に対し、実施例18〜24はアニオン性界面活性剤に2価以上の脂肪族塩基性化合物を添加することで、FEP171レジスト膜に対する接触角が低下することが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレンステッド酸基を有する水系溶媒可溶性導電性高分子及び2価以上の脂肪族塩基性化合物を含むことを特徴とする帯電防止処理剤。
【請求項2】
さらに揮発性の塩基性化合物を含む請求項1に記載の帯電防止処理剤。
【請求項3】
塩基性化合物の総モル数に占める2価以上の脂肪族塩基性化合物のモル分率が0.1〜75モル%の範囲内にある請求項1または2記載の帯電防止処理剤。
【請求項4】
2価以上の脂肪族塩基性化合物を少なくとも1種が、80℃以上の沸点をもつ請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項5】
2価以上の脂肪族塩基性化合物が、ジアミノアルカン、トリアミノアルカン、ポリアミノアルカン及びポリアルキルイミンからなる群から選択される1種以上よりなる請求項1〜4のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項6】
2価以上の脂肪族塩基性化合物が、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノペンタン、ジアミノへキサン、ジアミノオクタン、ジアミノデカン及びポリエチレンイミンからなる群から選択される1種以上よりなる請求項5記載の帯電防止処理剤。
【請求項7】
水系溶媒可溶性導電性高分子が、π共役系導電性高分子である請求項1〜6のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項8】
ブレンステッド酸基がスルホン酸基である請求項1〜7のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項9】
水系溶媒可溶性導電性高分子に含まれるブレンステッド酸基のモル数に対して、2価以上の脂肪族塩基性化合物に含まれる塩基性基のモル数が0.05〜50モル%である請求項1〜8のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項10】
帯電防止処理剤全体を100質量%として、水系溶媒可溶性導電性高分子を0.1〜10質量%、2価以上の脂肪族塩基性化合物を0.1〜20質量%、揮発性の塩基性化合物を0.1〜20質量%含む水溶液である請求項2に記載の帯電防止処理剤。
【請求項11】
さらに界面活性剤を含む請求項1〜10のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項12】
界面活性剤がアニオン性界面活性剤、両性界面活性剤またはそれらの混合物である請求項11に記載の帯電防止処理剤。
【請求項13】
界面活性剤がアニオン性界面活性剤である請求項11に記載の帯電防止処理剤。
【請求項14】
帯電防止処理剤全体を100質量%として、水系溶媒可溶性導電性高分子を0.1〜10質量%、2価以上の脂肪族塩基性化合物を0.1〜20質量%、揮発性の塩基性化合物を0.1〜20質量%、アニオン性界面活性剤を0.001〜1質量%含む水溶液である請求項13に記載の帯電防止処理剤。
【請求項15】
水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(1)
【化1】

(式中、m及びnは、それぞれ独立して0または1を表し、XはS、N−R1またはOを表し、Aは−B−SO3-+で示される置換基を少なくとも一つ有する、炭素数1〜4のアルキレンまたはアルケニレン基(二重結合を2以上有していてもよい。)を表し、前記アルキレンまたはアルケニレン基は炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、または置換フェニル基で置換されていてもよく、Bは−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表し、p、q及びrは独立して0または1〜3の整数を表し、M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表す。)で示される化学構造を含む請求項1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項16】
水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(2)
【化2】

(式中、R2〜R4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表し、B及びMは請求項15の記載と同じ意味を表す。)で示される化学構造を含む請求項1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項17】
水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(3)
【化3】

(式中、R5は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表し、B及びMは請求項15の記載と同じ意味を表す。)で示される化学構造を含む請求項1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項18】
水系溶媒可溶性導電性高分子が、下記一般式(4)
【化4】

(式中、R6〜R9は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、またはSO3-+基を表し、R9は、水素原子、または炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される一価基を表し、B及びMは、請求項15の記載と同じ意味を表す。)で示される化学構造を含む請求項1〜14のいずれかに記載の帯電防止処理剤。
【請求項19】
水系溶媒可溶性導電性高分子が、化学構造として5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを含む重合体である請求項15または16に記載の帯電防止処理剤。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の帯電防止処理剤を用いて得られる帯電防止膜。
【請求項21】
請求項20に記載の帯電防止膜で被覆してなる被覆物品。
【請求項22】
帯電防止膜が下地基板に塗布された感光性組成物もしくは感荷電粒子線組成物上に形成されている請求項21に記載の被覆物品。
【請求項23】
請求項20に記載の帯電防止膜を用いることを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2006−117925(P2006−117925A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273462(P2005−273462)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】