説明

常開型電磁弁

【課題】強度を確保しつつ、弁部の形状精度を向上させることができる常開型電磁弁を提供する。
【解決手段】可動コアの可動により駆動される弁体4は、貫通孔に挿入されて、可動コアに押動される軸部41と、弁座に着座あるいは離座する弁部42と、軸部41と弁部42とを接続する接続部43と、を有して、これらが樹脂で一体成形されており、接続部43は、弁部42に接続され、弁部42から軸部41に向かうにしたがって拡径する円錐状部43aを有し、円錐状部43aには、軸方向から見て凹状とされた複数の肉盗み部45が形成されており、肉盗み部45は、円錐状部43aの周方向に均等配置されている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常開型電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、常開型電磁弁に係る技術としては、特許文献1に記載されたものが知られている。
特許文献1に記載された常開型電磁弁では、軸部と、この軸部の先端部に設けられた弁閉鎖体としての先部とにより弁体が構成されており、軸部と先部とが射出成形による樹脂材で一体に形成されている。
先部は、軸部側に設けられた円錐状部と、この円錐状部に連続して設けられた円柱状部と、この円柱状部の先端に設けられ、端部に弁座への当接面が設けられた弁部とを有している。
このような弁体は、固定コアに形成された貫通孔に軸部が挿通されて、可動コアの駆動によって摺動されるようになっている。
【0003】
このような常開型電磁弁によれば、弁体が樹脂材で一体に形成されているので、弁体の軽量化が可能になり、開閉動作の応答性が向上するという利点が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−347597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1では、弁体の先部に設けられた円錐状部が単純な円錐形状とされていた。このため、弁体の先部における体積が増加し、成形時にいわゆるヒケ(シンクマーク)が弁部に生じる虞があり、弁部の形状精度が低下する虞があった。
このようなヒケの発生の抑制する方策として、弁体の先部の体積を減少させることが考えられる。しかしながら、弁体の先部における単純な体積の減少は、先部の強度低下につながる虞があった。
【0006】
そこで、本発明では、前記した問題を解決し、強度を確保しつつ、弁部の形状精度を向上させることができる常開型電磁弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、通電可能なコイルと、前記コイルの通電により励磁される固定コアと、前記固定コアに吸引されて可動する可動コアと、前記固定コアに形成された貫通孔の一方の開口部側に配置された弁座と、前記貫通孔に挿入され、前記可動コアの可動により駆動される弁体と、を備え、前記弁体は、前記貫通孔に挿入されて、前記可動コアに押動される軸部と、前記弁座に着座あるいは離座する弁部と、前記軸部と前記弁部とを接続する接続部と、を有して、これらが樹脂で一体成形されており、前記接続部は、前記弁部に接続され、前記弁部から前記軸部に向かうにしたがって拡径する円錐状部を有し、前記円錐状部には、軸方向から見て凹状とされた複数の肉盗み部が形成されており、前記肉盗み部は、前記円錐状部の周方向に均等配置されていることを特徴とする。
【0008】
この常開型電磁弁では、接続部は、弁部から軸部に向かうにしたがって拡径する円錐状部を有しており、円錐状部には、軸方向に凹状とされ、周方向に均等配置された複数の肉盗み部が形成されているので、円錐状部による強度を確保しつつ、肉盗み部による体積の減少を図ることができる。
したがって、樹脂成形時のヒケの発生を好適に抑制することができ、弁部の形状精度を向上させることができる。
【0009】
また、複数の肉盗み部は、円錐状部の周方向に均等配置されているので、円錐状部の周方向に肉付きが偏らず、また、肉盗み部は軸方向から見て凹状とされているので、その分、円錐状部の軸方向における断面積の変化量をこのような肉盗み部が設けられていないものに比べて緩やかにすることができる。
これによって、樹脂成形時のヒケの発生を好適に抑制することができ、弁部の形状精度を向上させることができる。
【0010】
また、円錐状部は、弁部から軸部に向かって形成されているので、実質的に円錐状部の頂部に弁部が位置することとなり、閉弁時には、弁部に作用する当接力が弁部から円錐状部に直接的に伝わることとなる。これによって、弁部の強度を好適に確保することができ、前記のように弁部の形状精度が向上されることと相俟って、弁部(弁体)に変形等が生じる可能性を低減することができる。したがって、長期にわたって安定した弁体の開閉を実現することができ、作動信頼性の高い常開型電磁弁が得られる。
【0011】
また、本発明は、前記軸部に、前記弁部側とは反対側の端部から前記弁部側へ向けて穴部が形成されている構成とするのがよい。
【0012】
この常開型電磁弁では、軸部に穴部が形成されているので、軸部の軽量化、ひいては弁体の軽量化を図ることができる。
なお、弁体の成形時には、ピン等の部材を軸部に挿入して穴部を形成することができる。この場合、弁体の成形時に、ピン等の部材を樹脂圧縮用の部材として利用することができる。
ピン等の部材を樹脂圧縮用の部材として利用した場合には、軸部に対して弁部側とは反対側の端部から弁部側へ向けてピン等の部材を軸方向に挿入することができ、弁部側に対してピン等の部材で樹脂を圧縮することができる。これによって、弁部の形状精度をより一層向上させることができるようになる。
【0013】
また、本発明は、前記接続部が、前記円錐状部に連続して設けられた基部を有しており、前記肉盗み部は、前記円錐状部から前記基部にわたって形成されている構成とするのがよい。
【0014】
この常開型電磁弁では、肉盗み部が、円錐状部と、これに連続して設けられた基部にわたって形成されているので、接続部における体積をより減少させることができ、樹脂成形時のヒケの発生をより抑制することができる。これによって、弁部の形状精度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、強度を確保しつつ、弁部の形状精度を向上させることができる常開型電磁弁が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る常開型電磁弁を示した縦断面図である。
【図2】実施形態に係る常開型電磁弁の弁体を示した斜視図である。
【図3】弁体を示した図であり、(a)は弁部側から見た図、(b)は図3(a)のA−A線断面図、(c)は図3(a)のB−B線断面図、(d)は軸部の横断面図である。
【図4】(a)〜(c)は弁体の成形工程を示す説明図、(d)は図4(c)のD部分の拡大図である。
【図5】(a)(b)は成形工程を示す説明図、(c)は成形された弁体を示す断面図である。
【図6】変形例の弁体を示した図であり、(a)は弁部側から見た図、(b)は図6(a)のC−C線断面図、(c)は図6(a)のD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、常開型電磁弁の基本構造を説明した後、本発明の特徴部分の構造を詳細に説明することとする。
【0018】
図1に示すように、常開型電磁弁1は、アンチロックブレーキ制御装置等を構成する基体Kに内包された流路R1、R2の閉塞あるいは開放を切り替えるための弁であり、主として、固定コア2、コイルユニット3、弁体4、弁座構成材5および可動コア6を備えて構成されている。
【0019】
基体Kは、常開型電磁弁1が装着される有底の取付穴101を有しており、取付穴101には、流路R1、R2が連通している。取付穴101は、常開型電磁弁1の固定コア2の外形状に合わせて、その底部102から開口部に向かうにしたがって順次拡径する段付き円筒状に形成されている。
【0020】
常開型電磁弁1は、通常時は、弁体4の下部先端に設けられた後記する弁部42が弁座構成材5の弁座5aから離座して上方(便宜上、上下は図1を基準として用いる)に位置しており、下方に接続された流路R1から、側部に接続された流路R2への作動液の流れを許容するようになっている。
そして、コイルユニット3への通電により弁部42が弁座5aに着座すると、流路R1が閉塞されて作動液の流れを遮断するようになっている。また、この状態からコイルユニット3への通電が遮断されると、後記する戻しばね24によって弁部42が弁座5aから離座して流路R1が開放され、作動液の流れを許容するようになっている。
【0021】
次に、各部について詳細に説明する。
固定コア2は、上下に貫通した孔を有する円筒状に形成されており、各部品を収容するハウジングを兼ねている。固定コア2は、鉄や鉄合金等の磁性材料からなり、基体Kに装着されるボディ部21と、ボディ部21より細い外径で形成されて上方に延び、周囲にコイルユニット3が配置されるコア部22とから構成されている。
【0022】
ボディ部21は、下端部が取付穴101の下端に圧入されるようになっており、下端部の外周面21aが取付穴101の下端内周面101aに密着するようになっている。これによって、作動液の漏れが防止されている。そして、ボディ部21の上部外周面には、係止溝21bが凹設されており、この係止溝21bに取付穴101に設けられた塑性変形部101bが入り込んで、ボディ部21が取付穴101に係止されるようになっている。また、ボディ部21の内空は、下に向かって順次拡径する段付きの内面によって下方が拡がるように形成されている。
【0023】
ボディ部21の下端部の内空には、第一の集塵フィルタ23が装着され、この集塵フィルタ23の上側の内空に弁座構成材5が装着されている。また、ボディ部21の内空における弁座構成材5の上側には、弁体4の後記する弁部42が配置され、また、弁座構成材5と弁体4との間には、弁体4を可動前の位置に向けて付勢する戻しばね24が介設されている。
さらに、ボディ部21の外周面には、第二の集塵フィルタ25が環装されている。
【0024】
第一の集塵フィルタ23は、ボディ部21の下端部の内空に嵌め込まれる円筒状の枠体23aと、この枠体23aに保持される網状体23bとを備えて構成されている。
【0025】
弁座構成材5は、ボディ部21の弁室構成部21cに嵌め込まれる円筒状の部材であり、その外周面が弁室構成部21cの内周面に密着している。弁座構成材5の上面の中央には、弁体4の弁部42が着座する弁座5aが中空部5bを取り囲むように突設されている。
また、弁座構成材5の側部には、中空部5bと並列して貫通孔5cが形成されており、貫通孔5cの下端部には、一方向弁となる球体5dが配置されている。球体5dは、集塵フィルタ23側の液圧が弁室V側の液圧よりも高いときには貫通孔5cを閉塞し、逆に、弁室V側の液圧が集塵フィルタ23側の液圧よりも高いときには貫通孔5cを開放するようになっている。このような球体5dは、集塵フィルタ23の枠体23aによって脱落が防止されている。
なお、弁室構成部21cには、弁室Vと流路R2とを連通するための透孔21dが形成されている。
【0026】
第二の集塵フィルタ25は、ボディ部21の透孔21dを取り囲むようにボディ部21の外周面に環装されている。集塵フィルタ25は、上下一対の環状リング25a、25aと、この環状リング25a、25aに保持される網状体25bと、を備えて構成されている。
【0027】
戻しばね24は、コイルばねからなり、弁座5aと弁体4との間に圧縮状態で介設されている。弁体4は、この戻しばね24によって可動コア6側に付勢されており、通常時、弁部42が弁座5aから離座するようになっている。
【0028】
コア部22は、ボディ部21の内空に連通する貫通孔22aを有しており、この貫通孔22aに、弁体4の後記する軸部41が摺動可能に挿通されている。そして、コイルユニット3の励磁によって可動コア6が駆動されることで、弁体4が下方向に摺動され、弁座5aに弁部42が着座するようになっている。弁体4の詳細は、後記する。
コア部22の上部外周面には、有底円筒状のカバー7が液密に固着されている。なお、カバー7は、その全周を溶接すること等によりコア部22に固着される。
【0029】
可動コア6は、鉄や鉄基合金等の磁性材料からなり、その下端面6bを弁体4の軸部41の上端部41bに当接させた状態でカバー7の内部を上下方向に移動する。すなわち、可動コア6は、コイルユニット3を励磁したときに、固定コア2に引き寄せられて下方向に移動し、弁体4を下方向に押動する。
【0030】
コイルユニット3は、樹脂製のボビン31にコイル32が巻かれて構成され、ボビン31の外側には、磁路を形成するヨーク33が配置されている。
なお、コイルユニット3は、固定コア2のコア部22とカバー7とに環装されている。
【0031】
次に弁体4について図1〜図3を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、弁体4は、固定コア2のコア部22に設けられた貫通孔22aに挿通される軸部41と、弁座構成材5の弁座5aに着座あるいは離座する弁部42と、軸部41と弁部42とを接続する接続部43と、を備えて構成されている。本実施形態では、弁体4が後記するように樹脂材で一体成形されてなる。樹脂材としては、軽量で、作動液中において膨潤や収縮等が生じることのないポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が使用される。
【0032】
図2に示すように、軸部41の周壁には、軸方向に延びる断面湾曲凹状の溝部41aが形成されている。溝部41aは、図3(a)(d)に示すように、軸部41の周方向に90度間隔で計4つ形成されており、図1に示すように、貫通孔22aに軸部41が挿通された状態で、貫通孔22aの内周面との間に、作動液の通流する通路Wを形成している。これによって、弁室Vからの作動液が通路Wを通じて可動コア6側に通流可能となっている。
【0033】
軸部41には、図2に示すように、上端部41bから弁部42側へ向けて、段付き円柱状の穴部44が形成されている。この穴部44は、大径部44aと小径部44bとからなり、後記する樹脂成形時において、樹脂圧縮用の部材として機能するピン70(図4(b)参照)が挿入されることで形成することができる。このようなピン70を樹脂成形時に使用することによって、弁体4の形状精度の向上、特に弁部42側における形状精度の向上が図られている。
【0034】
このような軸部41は、図1に示すように、コイルユニット3を消磁した状態において、戻しばね24の付勢力によって、上端部41bが固定コア2の上端面から突出するように位置し、この突出した上端部41bに可動コア6の下端面6bが当接するようになっている。
【0035】
また、軸部41の下部、つまり、接続部43と接続される部分には、軸部41よりも拡径された鍔部47が形成されている。鍔部47には、後記する樹脂成形時の固定型60(図4(a)参照)に設けられたゲートG1、G2に対応して凹部47a(図2、図3(a)参照)が形成されている。鍔部47は、図1に示すように、戻しばね24の座として機能し、戻しばね24の上端が当接している。これによって、弁体4には可動コア6側への付勢力が付与されている。
【0036】
弁部42は、図2、図3(a)〜(c)に示すように、半球状とされており、半球状の当接面が弁座5a(図1参照、以下同じ)に着座して流路R1と流路R2との間を遮断するとともに、弁座5aから離座してこれらの間を開放するようになっている。
【0037】
接続部43は、前記したように軸部41と弁部42とを接続しており、弁部42から軸部41に向かうにしたがって拡径する円錐状部43aと、円錐状部43aに連続して軸部41側に形成された基部としての円柱状部43bとからなる。
なお、円柱状部43bの周面には、戻しばね24の上部が保持されるようになっている。
そして、このような接続部43には、円錐状部43aから円柱状部43bにわたって、弁体4の軸方向から見て断面湾曲凹状とされた複数の肉盗み部45が形成されている。
なお、接続部43は、図1に示すように、弁室Vに配置されており、戻しばね24の内側となる部分に位置している。別言すれば、接続部43は、周りを戻しばね24で囲われるようにして配置されており、これに形成される肉盗み部45も戻しばね24で囲われるようにして配置されている。
【0038】
肉盗み部45は、図2、図3(a)に示すように、接続部43の径方向に湾曲凹状とされ、図2、図3(c)に示すように、接続部43の軸方向に連続して溝状とされている。そして、このような肉盗み部45は、図3(a)に示すように、接続部43の周方向に均等な間隔(120度間隔)を置いて形成されており、本実施形態では、接続部43の周方向に計3つ形成されている。したがって、接続部43の体積は、このような肉盗み部45のない場合の体積に比べて、3つの肉盗み部45が形成されている分、減少したものとなっている。これによって、成形時の熱収縮変形によるヒケの発生が抑制されるようになり、その分、弁体4の形成精度が確保されている。
【0039】
また、接続部43は、このような3つの肉盗み部45を有して形成されているので、円錐状部43aの軸方向における断面積の変化量(軸方向における肉厚の変化量)は、このような肉盗み部45のない場合の断面積の変化量に比べて、小さいものとなり、緩やかなものとなっている。つまり、接続部43は、軸方向における断面積が急激に変化する部分を有しておらず、この点からも、接続部43におけるヒケの発生が抑制されている。これにより、弁体4の形成精度が確保されている。
また、接続部43は、肉厚の変化量が緩やかな円錐状部43aの拡径した側に肉厚が変化しない円柱状部43bが接続された構成で、急激に肉厚が厚くなる部分を有していないので、弁部42が弁座5aに着座したときに応力集中が生じることがない。
【0040】
弁部42と接続部43との接続部分には、図3(b)に示すように、平坦面46が形成されている。この平坦面46は、接続部43の軸方向に直角となる面であり、後記する射出成形時に、接続部43を形成するための左型61(図4(d)参照)と、弁部42を形成するための弁部成形型63(図4(d)参照)と、が合わさる部分に形成される面である。
【0041】
次に、図4、図5を参照しつつ適宜各図を参照して、射出成形による弁体4の成形工程の一例について説明する。
図4(a)に示すように、固定型60には、弁体4の軸部41を形成するための貫通孔60aが形成されており、この貫通孔60aの図中左側の開口縁には、鍔部47を形成するための凹部60bが設けられている。そして、この凹部60bに連通するように、ゲートG1、G2が形成されている。
【0042】
成形時には、まず、図4(b)に示すように、固定型60に対して図中の左右方向から左型61および右型62を組み合わせる。左型61は、接続部43を形成するための型であり、固定型60の左端部に当接する状態に組み合わされる。右型62は、軸部41の上端部41bを形成するための型であり、後記する圧縮成形時の押し込み量を考慮した間隔Sを隔てて固定型60の右端部に組み合わされる。
【0043】
ここで、右型62の中央部には、樹脂圧縮用の部材として機能するピン70が一体的に装着されている。このピン70は、右型62の組み合わせ時に固定型60の貫通孔60a内に挿入されるようになっており、貫通孔60aの右端開口に配置される大径部71と、この大径部71に連続して貫通孔60aの左端側に向けて延設された小径部72とを有している。
このようなピン70は、圧縮成形を行う際に、右型62の押圧移動とともに、固定型60に向けて移動する。
【0044】
次に、図4(c)に示すように、左型61に対して弁部成形型63を組み合わせる。弁部成形型63は、弁部42を形成するための型であり、左型61の左端部に当接する状態に組み合わされる。このように本実施形態では、弁部42の形状精度を確保するために、左型61と別に弁部成形型63を設けている。
ここで、図4(d)に示すように、弁部成形型63の開口径φ1は、左型61の左端開口径φ2よりも小径とされており、このような径の差から、左型61と弁部成形型63との組み合わせ部位に、前記した平坦面46を形成する段部63aが形成されるようになっている。このような段部63aを左型61と弁部成形型63との間に形成することによって、左型61と弁部成形型63との隙間に形成される可能性のあるバリを、最小に抑えることができる。
【0045】
そして、このように組み合わせた後、型締めをし、図5(a)に示すように、ゲートG1、G2を通じて溶融樹脂を充填して、型内に射出圧力の付された溶融樹脂を満たす。
【0046】
そして、充填後の冷却によって、樹脂材がある程度硬化したところで、図5(b)に示すように、右型62を固定型60に向けて押圧移動する。そうすると、右型62の移動とともにピン70が固定型60の貫通孔60a内にさらに進入する。これによって、その進入したピン70の容積分、充填されている樹脂に対して圧力が付与され、樹脂が圧縮されることとなる。
なお、右型62は、固定型60の右端面に当接して移動が停止される。
【0047】
右型62の押圧移動によって、ピン70は、弁部42側とは反対側となる軸部41の上端部41bから弁部42側へ向けて軸方向に進入することとなり、また、ピン70の小径部72は、弁部42側へ向けて延設されているので、ピン70の進入に伴って弁部42側に対し、好適に圧力が付与され、樹脂が好適に圧縮される。
【0048】
その後、樹脂が完全に硬化したところで脱型し、図5(c)に示すように樹脂で一体成形された弁体4を得る。
なお、ピン70は必ずしも圧縮成形用の部材として利用しなくてもよく、軸部41に穴部44を形成するための部材として用いてもよい。
【0049】
以上説明した本実施形態の常開型電磁弁1によれば、接続部43は、弁部42から軸部41に向かうにしたがって拡径する円錐状部43aを有しており、円錐状部43aには、軸方向から見て凹状とされ、周方向に均等配置された肉盗み部45が形成されているので、円錐状部43aによる強度を確保しつつ、肉盗み部45による体積の減少を図ることができる。
したがって、樹脂成形時のヒケの発生を好適に抑制することができ、弁部42の形状精度を向上させることができる。
【0050】
また、肉盗み部45は、円錐状部43aの周方向に複数均等配置されているので、円錐状部43aの周方向に肉付きが偏らず、また、肉盗み部45は、軸方向に凹状とされているので、その分、円錐状部43aの軸方向における断面積の変化量をこのような肉盗み部45が設けられていないものに比べて緩やかにすることができる。
これによって、樹脂成形時のヒケの発生を好適に抑制することができ、弁部42の形状精度を向上させることができる。
【0051】
また、円錐状部43aは、弁部42から軸部41に向かって形成されているので、実質的に円錐状部43aの頂部に弁部42が位置することとなり、閉弁時には、弁部42に作用する当接力が弁部42から円錐状部43aに直接的に伝わることとなる。これによって、弁部42の強度を好適に確保することができ、前記のように弁部42の形状精度が向上されることと相俟って、弁部42(弁体4)に変形等が生じる可能性を低減することができる。したがって、長期にわたって安定した弁体4の開閉を実現することができ、作動信頼性の高い常開型電磁弁1が得られる。
【0052】
また、接続部43の円錐状部43aは、弁部42から軸部41に向かうにしたがって次第に拡径する円錐状とされているので、弁部42から軸部41に向かって、断面積の変化量が緩やかなものとなるように設定することができる。これによって、接続部43の一部に応力が集中することがなく、接続部43および弁部42の耐久強度を向上させることができる。
【0053】
また、軸部41に穴部44が形成されているので、軸部41の軽量化、ひいては弁体4の軽量化を図ることができる。
また、弁体4の成形時には、ピン70を軸部41に挿入して穴部44を形成することができる。この場合、弁体4の成形時に、ピン70を樹脂圧縮用の部材として利用することができる。
ピン70を樹脂圧縮用の部材として利用した場合には、軸部41に対して弁部42側とは反対側の上端部41bから弁部42側へ向けてピン70を軸方向に挿入することができ、ピン70で樹脂を圧縮することができる。これによって、弁部42の形状精度をより一層向上させることができるようになる。
また、この場合、ピン70は、軸部41の上端部41bから弁部42側へ向けて軸方向に挿入されるので、挿入方向である弁部42側に対して、効果的に樹脂を圧縮することができ、ヒケの発生をより効果的に防止することができる。
【0054】
また、接続部43が、円錐状部43aに連続して設けられた円柱状部43bを有しており、肉盗み部45は、円錐状部43aから円柱状部43bにわたって形成されているので、接続部43における体積をより減少させることができ、樹脂成形時のヒケの発生をより抑制することができる。これによって、弁部42の形状精度をより向上させることができる。
【0055】
また、弁体4は、樹脂の一体成形によって形成されているので、複数の肉盗み部45や穴部44を設けた複雑な形状であっても、加工性を悪化させることなく形成することができる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は前記一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、図6(a)〜(c)に示すように、肉盗み部45’を、接続部43の周方向に均等な間隔(90度間隔)を置いて、計4つ形成してもよい。なお、図示はしないが、肉盗み部45は、周方向に均等な間隔(180度間隔)を置いて、計2つ形成してもよいし、同様に、計5つ以上形成してもよい。
【0057】
また、前記実施形態では、肉盗み部45が円錐状部43aから円柱状部43bに亘って形成されたものを示したが、円錐状部43aにのみ形成してもよいし、軸方向に形成される長さを、変更して、隣あう肉盗み部45同士の長さを異ならせて設けてもよい。
また、肉盗み部45は、断面湾曲凹状とされたものに限らず、種々の断面形状を採り得る。
【符号の説明】
【0058】
1 常開型電磁弁
2 固定コア
3 コイルユニット(コイル)
4 弁体
5 弁座構成材
5a 弁座
6 可動コア
22a 貫通孔
41 軸部
41b 上端部(端部)
42 弁部
43 接続部
43a 円錐状部
43b 円柱状部(基部)
44 穴部
45 肉盗み部
46 平坦面
70 ピン(樹脂圧縮用の部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電可能なコイルと、前記コイルの通電により励磁される固定コアと、前記固定コアに吸引されて可動する可動コアと、前記固定コアに形成された貫通孔の一方の開口部側に配置された弁座と、前記貫通孔に挿入され、前記可動コアの可動により駆動される弁体と、を備え、
前記弁体は、
前記貫通孔に挿入されて、前記可動コアに押動される軸部と、
前記弁座に着座あるいは離座する弁部と、
前記軸部と前記弁部とを接続する接続部と、を有して、これらが樹脂で一体成形されており、
前記接続部は、前記弁部に接続され、前記弁部から前記軸部に向かうにしたがって拡径する円錐状部を有し、
前記円錐状部には、軸方向から見て凹状とされた複数の肉盗み部が形成されており、
前記肉盗み部は、前記円錐状部の周方向に均等配置されていることを特徴とする常開型電磁弁。
【請求項2】
前記軸部には、前記弁部側とは反対側の端部から前記弁部側へ向けて穴部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の常開型電磁弁。
【請求項3】
前記接続部は、前記円錐状部の前記軸部側に連続して設けられた基部を有しており、
前記肉盗み部は、前記円錐状部から前記基部に亘って形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の常開型電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−12792(P2011−12792A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159158(P2009−159158)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】