干渉性散乱CTのビーム硬化補正および減衰補正
CSCTでは、多色性一次放射線に対して、各ボクセルの散乱機能の正確な再構築を行う方法は、知られていない。本発明の一実施例では、再構築の前に、ビーム硬化補正が行われ、等価水厚さから得られた一次放射線平均減衰データに基づいて、見かけ上正確な再構築を実施することが可能となる。等価水厚さから、エネルギーシフトが算定され、これを用いて、散乱放射線の初期の平均エネルギーが補正される。また、CT再構築は、CSCT再構築の前に実施され、ビーム硬化補正が可能となる。これにより、改良された画質を得ることができ、散乱機能の分解能が向上するという利点が得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇ビームが関心対象に照射される、干渉性散乱コンピュータ断層撮影法(CSCT)の分野に関する。特に、本発明は、関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築する方法、干渉性散乱コンピュータ断層撮影用の機器、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するデータ処理装置、および干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,751,722号には、ビーム方向に対して1゜乃至12゜の角度範囲に、干渉性散乱放射線の角度分布を調整することを基本とする装置が示されている。米国特許第4,751,722号に示されているように、弾性散乱放射線の主な割合は、光子エネルギーが40keV未満の12゜未満の角度範囲内に集中しており、散乱放射線は、明確な最大値を持つ特徴的な角度依存性を有し、その位置は、被照射物質自身によって決まる。狭い角度内のコヒーレントに散乱された放射線の強度分布は、物質の分子構造に依存するため、等しい吸収容量を有する異なる物質(従来の透光またはCTでは識別できない)を、各物質の典型的なコヒーレント放射線の傾斜散乱の強度分布により識別することができる。
【0003】
異なる対象材料を識別することができるという、そのようなシステムの改善された特性のため、そのようなシステムは、医療分野または産業分野において、次第に用途が広がっている。
【0004】
低角度散乱の主要成分は、干渉性散乱である。干渉性散乱は、散乱サンプルの原子配置に依存した干渉効果を示すため、干渉性散乱コンピュータ断層撮影法(CSCT)は、原理的に、2D対象領域の臓器または他の材料の分子構造の空間変化を画像化することに対して、感度を有する技術である。
【0005】
ハーディングらの「エネルギー分散X線回折断層撮影法」、Phys. Med. Biol.、35巻、No.1、p33-41、1990年には、エネルギー分散X線回折断層撮影法(EXDT)が示されており、この方法は、多色性放射線によって対象中に励起された干渉性X線散乱の、一定角度でのエネルギー解析に基づく、断層撮影画像化技術である。この方法では、放射線ビームは、適当な開口システムを用いることにより形成され、この開口システムは、鉛筆の形状を有し、ペンシルビームとも呼ばれる。ペンシルビーム源の反対側には、エネルギー解析に適した一つの検出器素子が配置され、関心対象によって変化したペンシルビームが検出される。
【0006】
ペンシルビームは、一つの検出器素子のみと組み合わせて使用されるため、放射線源によって放射される光子のうち、限定された数しか測定することはできず、従って少ない情報量しか測定することはできない。例えば、手荷物のようなより大きな対象にEXDTを適用する場合、EXDTは、散乱モードで使用する必要があるため、極めて長時間の測定時間が必要となる。
【0007】
扇ビーム一次ビームと2D検出器をCTと組み合わせて適用する、干渉性散乱器の構成は、米国特許第6,470,067B1号に示されており、これによりEXDT走査モードにおける測定時間の長期化の問題が解消される。多色性光源との組み合わせによる角度分散型構成の欠点は、散乱機能が不鮮明となることであり、これは、例えば、シュナイダー(Schneider)らの「扇ビーム形状を用いた干渉性散乱コンピュータ断層撮影法」、プロシーディングス、SPIE、4320巻、p754-763、2001年に示されている。
【0008】
現在のCT走査装置では、通常、放射線源として多色性X線源が使用される。そのような多色性X線源から放射される多色性一次放射線については、ボクセルに対する散乱機能の正確な再構築法は、知られていない。
【特許文献1】米国特許第4,751,722号明細書
【非特許文献1】シュナイダー(Schneider)ら、「扇ビーム形状を用いた干渉性散乱コンピュータ断層撮影法」、プロシーディングス、SPIE、4320巻、p754-763、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの改善された再構築法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明の一実施例では、前述の課題は、関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影(CSCT)データを再構築する方法によって達成され、この方法では、関心対象の減衰データは、関心対象を透過した一次放射線から取得される。次に、取得した減衰データに基づいて、散乱放射線データの補正が行われる。散乱放射線データは、関心対象から散乱された散乱放射線に基づいている。次に、補正された散乱放射線データを用いて、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データが再構築される。本発明のこの一実施例の態様では、散乱放射線データのビーム硬化補正が実施される。
【0011】
本発明のこの一実施例では、所与の運動量移動の散乱角度は、散乱光子のエネルギーに依存することが見出されており、各散乱放射線検出器で測定される信号構造は、強度およびエネルギー依存性減衰で重み付けされた異なるエネルギーの多重散乱投射の関数である。多色性投射、すなわち、多色性放射線源からの投射によって画像が再構築されると、スペクトルの平均エネルギーが使用され、この平均エネルギーを用いて、単色性再構築が行われる。しかしながら、一次放射線のスペクトル分布のため、これにより、散乱機能の低下が生じ得る。
【0012】
前述の本発明の一実施例では、散乱放射線データは、ビーム硬化効果が補正される。これは、再構築散乱機能の低下を抑制する。また、この場合、ビーム硬化効果を考慮することにより、背面投射経路の見かけ上正確な決定が可能となる。
【0013】
請求項2に記載の本発明の別の一実施例では、ビーム硬化効果の補正は、等価物に基づいて定められたエネルギーシフトに基づいて、実施される。この等価物のビーム硬化効果によって生じるエネルギーシフトは、既知であり、これを補正に使用しても良い。これにより、画質か向上する。
【0014】
請求項3に記載の本発明の別の一実施例では、関心対象に生じる平均減衰は、減衰データに基づいて定められる。次に、水および/または他のいずれかの適当な材料、例えばPMMAのような、予め選定された材料の等価厚さが、平均減衰に基づいて定められる。この等価厚さに基づいてエネルギーシフトが定められ、次に、このエネルギーシフトを用いて、散乱放射線データが補正される。
【0015】
換言すれば、本発明のこの一実施例では、エネルギー依存性減衰補正(ビーム硬化補正)が実施される。この一実施例の態様では、このエネルギー依存性減衰補正は、再構築の前に実施されても良い。
【0016】
これにより、再構築散乱機能に、極めて良好な空間分解能が得られるという利点が得られる。例えば、材料識別用途において、これにより、同じ減衰を有する材料の識別が可能となる。また、減衰補正のため、向上した画質が得られる。
【0017】
請求項4に記載の本発明の別の一実施例では、関心対象の吸収係数を含む体積データ組の再構築が実施される。次に、散乱放射線の散乱光子の放射線スペクトルが定められる。散乱光子の平均エネルギーは、放射線スペクトルに基づいて定められ、次に、これらの平均エネルギーを用いて、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの再構築が行われる。
【0018】
換言すれば、本発明のこの一実施例では、CT再構築は、CSCT再構築の前に実施される。これにより、例えば散乱光子の平均エネルギーに影響を及ぼすビーム硬化効果を考慮することによって、(これらの経路に現れる材料の)背面投射経路の見かけ上正確な計算が可能になるという利点が得られる。
【0019】
請求項5に記載の本発明の別の一実施例では、減衰データに基づいて、散乱放射線の散乱光子の経路に設置された材料が定められる。これは、CT再構築に基づいて行われる。次に、散乱放射線データの補正または補償を行うため、これらの材料が考慮され、散乱放射線データにおけるビーム硬化効果および/または吸収効果が補償される。次に補正された散乱放射線データに基づいて、CSCT再構築が実施される。
【0020】
請求項6に記載の本発明の別の一実施例では、散乱放射線データのビーム硬化補正が実施される、干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器が提供される。この干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器は、コーンビームCTシステムの一部とすることができるという利点がある。本発明による再構築では、前述のように画質が向上するため、この機器は、材料解析用の医療画像、および例えば手荷物検査に、有意に使用することができる。これらの用途に対しては、本発明の機器を用いることにより有意に得られる、散乱機能の良好な分解能が重要である。
【0021】
本発明による干渉性散乱コンピュータ断層撮影用の機器の一実施例は、請求項7および8に記載されている。
【0022】
請求項9に記載の本発明の別の一実施例では、メモリとデータプロセッサとを有するデータ処理装置が提供される。この一実施例によるデータ処理装置は、本発明の方法を実施するように適合される。
【0023】
請求項10に記載の本発明の別の一実施例では、関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するための、ソフトウェアプログラムが提供され、データプロセッサおよび干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器のいずれかで、コンピュータソフトウェアが実行されると、本発明の方法に一致する動作が実施される。本発明によるコンピュータプログラムは、CD-ROM等のコンピュータ読み取り媒体に保管される。またコンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワーク上に保管されても良く、そのようなネットワークから、データプロセッサの作動メモリにダウンロードされても良い。コンピュータプログラムは、C++のようないかなる適当なプログラム言語で記載されても良い。
【0024】
本発明の一実施例の要旨は、散乱放射線データが再構築に使用される前に、散乱放射線データで、ビーム硬化補正が実施されることである。これにより、再構築散乱機能の極めて良好な空間分解能が得られ、向上した画質を得ることができる。
【0025】
本発明のこれらのおよび他の態様は、添付図面を参照し、以下の実施例を参照することにより、さらに明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下の図1乃至13の説明において、同一のまたは対応する素子には、同じ参照符号が使用されている。
【0027】
図1には、本発明のコンピュータ断層撮影の一実施例を示す。この一実施例を参照して、例えば手荷物の物品中の爆発物などの危険物質を検出するため、本発明が手荷物検査に適用される場合を例に、説明する。ただし、本発明は、手荷物検査の分野に限定されるものではなく、例えば医療用の骨組織の画像化もしくは組織の識別など、他の産業用または医療用の用途にも使用できることに留意する必要がある。さらに、本発明は、非破壊検査の分野に使用しても良い。
【0028】
図1に示すコンピュータ断層撮影装置は、回転軸2の周囲に回転可能なガントリー1を有する。ガントリー1は、モータ3によって駆動される。参照符号4で示されている光線源は、本発明の態様では、X線源等であり、多色性のまたは単色性の放射線を放射する。
【0029】
参照符号9で示されているコリメータは、例えばスリット式ダイアフラムである。関心対象7を通過する扇ビーム11の走査面または扇面は、放射線検出器8の透過検出器ライン15と交差している。
【0030】
換言すれば、扇ビーム11は、そのビームが、ガントリー1の中央、すなわちコンピュータ断層撮影の検査領域に配置された手荷物7の物品を透過し、検出器8に照射されるように誘導される。前述のように、検出器8は、放射線源4と対向するようにして、ガントリー1に配置され、扇ビーム11の扇面は、検出器8の行またはライン15と交差する。図1に描かれている検出器8は、7つの検出器ラインを有し、各ラインは、複数の検出器素子を有する。前述のように、検出器8は、一次放射線検出器15、すなわち検出器8の中央ラインが、扇ビーム11の扇面内となるように配置される。
【0031】
検出器8の残りの6本のライン、すなわち各検出器ライン15の各側の、ハッチングで示した3本ずつの検出器ライン30と34は、散乱放射線の検出器ラインである。そのような検出器ライン30および34は、それぞれ、扇ビーム11の扇面の外側に配置される。換言すれば、これらのライン30および34は、X線源4と対向するようにして、回転軸2と平行な方向に、または扇面に対して垂直な方向に、扇面からずれた状態で、ガントリー1に配置される。検出器ライン30は、図1に示す回転軸2の方向に対して、正のずれとなるように配置され、一方、ライン34は、図1に示す回転軸2の方向に対して、扇面から負のずれとなるように配置される。
【0032】
検出器ライン30および34は、それらのラインが扇平面と平行となり、それらのラインが、ガントリー1の回転軸2の正または負の方向に、扇面からずれるように、ガントリー1に配置され、さらに、それらのラインが、コンピュータ断層撮影の検査領域内の手荷物7の物品から散乱される散乱放射線を受光し、または測定するように、ガントリー1に配置される。従って、以降、ライン30および34は、散乱放射線検出器とも言う。
【0033】
検出器ライン15、30および34の検出器素子は、シンチレータ検出器セルであっても良い。ただし、本発明の本一実施例の変形例では、テルル化カドミウムもしくはCdZnTe系または他の直接変換検出器セルが、ライン15またはライン34もしくは30のいずれかに使用されても良い。また、ライン30および34は、テルル化カドミウムまたはCZT系検出器セルであっても良く、ライン15は、シンチレータ検出器セルのラインであっても良い。一次ビーム検出器および散乱放射線検出器は、別のハウジング内に設置されても良い。
【0034】
一つのライン30または34のいずれか一つのみを提供しても良いことに留意する必要がある。ただし、複数のライン30および/または34を提供することが好ましい。また、手荷物7の物品によって生じる、扇面内の扇ビーム11の一次ビームの減衰の測定に、一つのライン15のみを提供しても良い。ただし、ライン30および34がある場合、複数の検出器ライン15の提供によって、コンピュータ断層撮影の測定速度がさらに向上する。以下、「一次放射線検出器」という用語は、扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するための、少なくとも一つの検出器ラインを含む検出器を意味するために使用される。
【0035】
図1からわかるように、検出器8の検出器セルは、線状または列状に配置され、この列は、回転軸2と平行であり、このラインは、回転軸2に対しては垂直であって、扇ビーム11のスライス面に対しては平行となるように、面内に配置される。
【0036】
手荷物7の物品の走査の間、放射線源4、コリメータ9(または開口システム)および検出器8は、矢印16に示す方向に、ガントリー1に沿って回転される。ガントリー1の回転のため、計算ユニット18に接続されたモータ制御ユニット17に、モータ3が接続される。
【0037】
図1では、手荷物7の物品は、コンベアベルト19に載せられている。手荷物7の物品の走査の間、ガントリー1は、手荷物7の物品の周囲を回転するが、コンベアベルト19は、ガントリー1の回転軸2と平行な方向に沿って、手荷物7の物品を移動させる。これにより、手荷物7の物品は、螺旋状の走査経路に沿って走査される。またコンベアベルト19は、走査の間、停止させても良い。これにより、単一のスライス面での測定が可能となる。
【0038】
検出器8は、計算ユニット18に接続されている。計算ユニット18は、検出結果、すなわち検出器8の検出器素子からの読み出しを受信し、扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するため、検出器8、すなわち散乱検出器ライン30および34とライン15から得られた走査結果に基づいて、走査結果を求める。これに加えて、計算ユニット18は、モータ制御ユニット17と協働して、ガントリー1の動きをモータ3および20またはコンベアベルト19と協調させる。
【0039】
検出器ユニット18は、一次放射線検出器、すなわち検出器ライン15と、散乱放射線検出器、すなわちライン30および34との読み出しからの画像を再構築するように適合される。計算ユニット18によって生じる画像は、インターフェース22を介して、ディスプレイ(図1には示されていない)に出力される。
【0040】
また、計算ユニット18は、ライン30および34、ライン15および32の読み出しに基づいて、手荷物7の物品中の爆発物を検出するように適合されている。これは、先の測定の際に、これらのラインの読み出しからの散乱機能の再構築、およびこれらの読み出しと、定められた爆発物の特徴的な測定値を含む表との比較により、自動的に行うことができる。計算ユニット18によって、検出器8からの読み出し測定値が、爆発物の特徴的な測定値と整合していると判断された場合、計算ユニット18は、拡声器21を介して、自動的にアラームを出力する。
【0041】
図2には、図1に示すCSCT走査システムの形状の単純化された概略図を示す。図2からわかるように、X線源4は、扇ビーム11を放射し、この扇ビームは、この場合、直径がuの手荷物7の物品を包囲するように、検出器8全体を覆う。対象領域の直径は、例えば、100cmであっても良い。この場合、扇ビーム11の角度αは、80゜である。そのような配置では、X線源4から対象物領域の中心までの距離vは、約80cmであり、検出器8の距離、すなわちX線源4からの個々の検出器セルの距離は、約w=150cmである。
【0042】
図2からわかるように、本発明の態様では、検出器セルまたはラインは、コリメータ40に設置され、セルまたはラインが、異なる散乱角を有する好ましくない放射線を測定することが回避される。コリメータ40は、ブレード状または積層物の形態であり、この形態は、光線源に向かって集束される。積層物の間隔は、検出器素子の間隔とは独立に選定することができる。
【0043】
図1、2に示すような湾曲した検出器8の代わりに、平坦な検出器配列を使用することも可能である。
【0044】
図3には、図1のコンピュータ断層撮影に使用される、検出器形状の別の概略図を示す。図1を参照して既に述べたように、検出器8は、手荷物7の物品によって生じる一次扇ビームの減衰を測定するため、1、2または3以上の検出器ライン30、34と、複数のライン15とを有する。図3からわかるように、検出器8は、検出器8の中央ライン15が、扇ビーム11の扇面内に来るように配置されることが好ましく、これにより、一次放射線の減衰が測定される。矢印42に示すように、X線源4の放射線源および検出器8は、手荷物の物品の周囲を相互に回転し、異なる角度からの投射が得られる。
【0045】
図3に示すように、検出器8は、複数の列tを有する。
【0046】
図4には、本発明をさらに説明するため、図1に示したコンピュータ断層撮影装置の形状の別の概略図を示す。図4では、一つのライン15と、一つのライン30とのみを有する検出器46が描かれている。ライン15は、コリメータ9によって形成される扇ビーム11の扇面に配置されている。ライン15は、扇ビーム11の一次ビームの減衰を測定するため、例えばシンチレータセルまたは他の適当なセルを有し、対象領域または検査領域内の関心対象によって生じる、一次扇ビームの減衰の積分測定が可能となる。
【0047】
図4に示すライン30は、エネルギー分解セルまたはシンチレータセルを有しても良い。図4からわかるように、ライン30は、扇ビーム11の扇面と平行に、この面からずらして配置される。換言すれば、ライン30は、扇面と平行な面であって、ライン15と平行な面内に配置される。扇面は、スライス面とも呼ぶ。
【0048】
参照符号44は、散乱放射線、すなわち手荷物等の関心対象によって散乱された光子を示す。図4からわかるように、散乱放射線は、スライス面から離れ、ライン30の検出器セルに衝突する。
【0049】
図5には、図1のコンピュータ断層撮影装置の検出器形状の側面図を示す。また図5は、図4の側面図が示されるように考慮されている。ただし、図5では、一つのライン30および一つのライン15を示す代わりに、ライン30とライン15の間の、複数の検出器ライン32が示されている。検出器素子Diは、一次扇ビームのスライス面から一定の距離に配置される。本発明の態様では、列tの各検出器素子Diに対して、および各投射Φ(図3参照)に対して、スペクトルI(E、t、Φ)が測定される。円形または螺旋状走査経路に沿った複数の投射Φに対して、この測定を行うことにより、三次元データ組が得られる。各対象画素は、3座標(x、y、q)で表される。従って、本発明の態様では、三次元データ組からの画像の再構築、または更なる情報の再構築のため、独国特許第DE10252662.1号に示されているような3D→3D再構築法が適用され、これは、本願の参照文献として取り入れられている。
【0050】
図6には、関心対象に生じる散乱事象を説明するための概略図を示す。検出器8での強度Iは、以下の式で表される:
【0051】
【数1】
式3から、検出器8での検出器信号Iは、強度I0(E)およびエネルギーに依存する減衰によって重み付けされた、多数のエネルギーの散乱投射の重ね合わせであることがわかる。Fは、散乱関数である。減衰因子α(E)とβ(E)は、光線源から散乱事象の生じる位置まで、および散乱事象の生じる位置から検出器までの経路に沿った入射放射線の減衰を表す。
【0052】
多色性放射線に基づいて定められた投射データからの画像を再結合する単純な手法は、スペクトルの平均エネルギーを計算した後、「単色性」の再構築を実施することである。しかしながら、前述のように、この場合、一次放射線のスペクトル特性によって生じる再構築画像に、波動ベクトル移動に依存した散乱機能の低下が生じ得る。
【0053】
図10、11を参照して、さらに詳しく説明される本発明の一実施例では、背面投射経路の決定のため、多色性、およびこれによる一次放射線のビーム硬化が補正される方法が提供される。これにより、見かけ上多色性の再構築が可能となる。
【0054】
図7には、マルチラインCSCT走査器の一実施例の概略図を示す。この走査器には、検出器48が設けられ、この検出器は、エネルギー分解検出器素子の複数のラインを有し、これは、図1を参照して示したものと同様である。放射線源9には、コリメータが設けられ、このコリメータは、X線の扇ビームを形成する。検出器48と放射線源49は、検出器48が、中心で集束されるように配置される。図6に示す図は、x−y平面、すなわち放射線源49および検出器48の回転面からの走査処理工程をさらに明確にするため、走査面またはスライス面に平行に示してある。図6からわかるように、放射線源49と検出器48の間の距離は、「SD」で示されており、光線源49と回転中心47の間の距離は、Sで示されており、散乱中心と検出器48の間の距離は、dで表されており、放射線が照射される検出器素子と散乱面またはスライス面の間の距離は、aで示されており、hは、検出器48の高さを示す。
【0055】
z座標軸は、放射線源49の回転面の中心に垂直であり、すなわち放射線源49の回転軸に垂直である。y座標は、放射線源の回転面である。
【0056】
図7からわかるように、以下の説明では、CSCT走査器は、例えば多色性X線源49と検出器49とを有するものと仮定する。検出器は、エネルギー分解検出器素子を有し、あるいはエネルギー分解検出器素子で構成され、この素子は、図1を参照して示したものと同様のものであっても良い。放射X線は、扇ビームが、放射線47の中心の周囲に設置された関心対象に照射されるように平行化される。
【0057】
以下の動作方法は、CSCTデータを再構築するため、すなわち検出器8と48の読み出しから画像を再構築するため、前述の走査器、または図1を参照して示した走査器に適用しても良い。
【0058】
ステップ1:データは、x−y−z空間のソース源の軌跡を表す環を取得する間に測定される。換言すれば、検出器8または48からの読み出しが収集され、放射線源4および49と、検出器8および48とは、回転面内の関心対象の周囲を回転する。読み出しは、測定データまたは取得CSCTデータと呼ばれる。測定CSCTデータは、x−y−q空間での線の積分と解釈され、ここでqは、波動ベクトルの移動を表す。波動ベクトルの移動の計算法は、以降に示す。
【0059】
ステップ2:取得CSCTデータは、そのデータがx−y−q空間での螺旋軌跡に沿った取得値に対応するように保管または外挿される。
【0060】
ステップ3:従来の螺旋再構築アルゴリズムによるデータの事前処理のため、例えば、本願の参照文献として取り入れられている、カッツセビッチ(Katsevich)の「螺旋コーンビームCTの正確な反転アルゴリズムの解析」、Phys. Med. Biol.、 47巻、p2583-2597、2002年に示されている、正確な再構築技術のような、さらなるステップが実施されても良い。
【0061】
ステップ4:再構築データおよび/または外挿データを、背面投射しても良い。この背面投射は、x−y−q空間の曲線に沿って実施される。これらの曲線は、例えば双曲線であっても良い。
【0062】
この動作、特にステップ2の動作について、以下により詳しく説明する。
【0063】
CSCTは、干渉性散乱形態因子F2(q)を再構築するため、干渉性散乱X線に使用される。干渉性散乱X線の微分断面積dσRayleigh/dΩは、
【0064】
【数2】
で表される。
【0065】
ここで、reは、古典的な電子径を表し、Θは、入射X線と散乱X線の間の角度を表す。角度Θだけ光子のずれを生じさせる波動ベクトル移動qは、対応するX線光子のエネルギーE、プランク定数hおよび光束cを用いて、
【0066】
【数3】
で定められる。狭い角度での散乱の場合、例えば関心角度範囲が0から6゜の間の場合、sin(Θ/2)は、ほぼΘ/2となり、式(5)は、
【0067】
【数4】
となる。図6から、散乱角度は、検出器の散乱中心の距離d、および散乱面から散乱放射線が入射される検出器素子の距離aで与えられ、
【0068】
【数5】
となる。式(6)と合わせて、
【0069】
【数6】
が得られる。
【0070】
x−y−q空間では、式(8)は、双曲線を表す。これらの双曲線は、直線に近似される。いくつかの可能性の中から、例えば、直線下の領域は、対応する双曲線領域に整合するという近似が行われる。別の近似は、以降に示す。直線は、関心領域の始点(dmax)と終点(dmin)で、双曲線と交差する:
【0071】
【数7】
図8には、いくつかの双曲線を示す。より詳細には、図8には、構成8で示された背面投射経路が示されている。図8からわかるように、各平均エネルギーにおいて、新しい経路が得られる。
【0072】
図1および6に示すような走査システムを考えると、実際の経路は、その経路が、x−y−q空間の螺旋軌道に沿った取得値に対応するように再構築され、外挿される。事実上の隣接軌道に対して、環状軌道で測定されたデータの外挿は、ジョーンの式を用いて行われる。ジョーンの式の考えは、3D空間を通る線空間の積分は、4Dであり、従って、対象関数から、その線の積分関数までのマッピングは、追加の次元を形成するというものである。これは、パッチ(S. K. Patch)の、「3次元CTデータおよび波動関数の一貫性の条件」、Phys. Med. Biol.、47巻、p2637-2650、および本願の参照文献として取り入れられている、米国特許第6173030号(1999)に示されている。
【0073】
実際の光線源位置の直線積分
【0074】
【数8】
は、
【0075】
【数9】
の光線源位置に対して測定された直線積分から外挿される。
【0076】
これは、線積分空間に冗長性を与え、パッチ(S.K. Patch)の「測定ビューからの未測定第三世代VCTビューの計算」、IEEE Trans. Med. Img. MI-21、p801-803、本願の参照文献として取り入れられている、米国特許第6292526(1999年)に示されているような、測定データからの未測定データの構築に使用される。ジョーンの式は、以下のように形状パラメータ組にパラメータ化され、これは、本願の参照文献として取り入れられている、デフライズ(M. Defrise、F. Noo、H. Kudo)らの「ジョーンの式に使用される螺旋コーンビームCTデータの改良された二次元再結合」、プロシーディングス2002IEEE核科学および医療用画像化シンポジウム、ノーフォーク(バージニア州)、論文M10-74に示されている。
【0077】
【数10】
ここでRは、事実上の光線源位置から同心円までの距離であり、uは、中央線から扇方向の露出検出器列までの距離である。線積分は、gによって表され、変数での線積分の微分は、指数によって表される。以下の式により、測定された線積分gから、事実上の光線源位置
【0078】
【数11】
に対して、線積分
【0079】
【数12】
を外挿することができる。
【0080】
【数13】
従って、式(10)は、
【0081】
【数14】
に対して解く必要がある。
【0082】
【数15】
また、uに対する部分積分は、
【0083】
【数16】
となり、これは、事実上の光線源位置
【0084】
【数17】
に対する線積分である。
【0085】
得られたおよび外挿されたデータは、そのデータが、x−y−q空間における螺旋軌道に沿った取得値と対応するように再構築される。
【0086】
【数18】
が、走査システムの回転中心から事実上の光線源までのベクトルであると仮定する。螺旋軌道は、
【0087】
【数19】
となり、ここでαは、x軸に対する光線源の角度位置を表す。
【0088】
ある範囲では、
【0089】
【数20】
の各値は、
【0090】
【数21】
で表され、これは、x−y−q空間における螺旋軌道のデータ取得値を満たす。この記載によって、螺旋データ取得値の開始点として、オフセットα0を定めることが可能となり、再構築工程に冗長データを用いることが可能となる。これにより、より良好な画質が得られる。
【0091】
前述のステップ1乃至4、特にステップ3は、図1乃至5を参照して示したCSCT走査器、図6に示す走査器、および図13に示すデータ処理装置に適用して、実施しても良い。
【0092】
前述のように、材料を通る移動の間に、X線スペクトルは、硬化する。このため、透過X線スペクトルの平均エネルギーは、一次スペクトルおよび関心対象内に存在する材料に依存する。このため、式5に示すように、異なる平均エネルギーに基づいて、経路に沿った背面投射を行うと、異なる背面投射経路が得られる。本発明では、再構築の際のこの影響を補正するため、各背面投射経路の平均エネルギーを得る必要があることが示されている。これは、図10および11を参照して示した方法によって行われる。
【0093】
前述のように、散乱放射線の経路のため、ファクターβ(E)は、散乱角度に依存する。以下、散乱放射線の減衰は、直接変換放射線の減衰と同じであると仮定する。透過放射線、すなわち一次放射線の減衰は、γ=I/I0で定められる。この減衰は、一次放射線ベクトル15によって定められても良い。この仮定を用いることにより、積α(E)×β(E)は、経路と独立となる。
【0094】
測定された平均減衰γ=I/I0に基づいて、散乱光子の平均エネルギーのずれを定める場合、関心対象の材料に関する以下の仮定が行われる。例えば、医療用途の場合、関心対象は、主として水で構成されていると仮定されても良く、すなわち放射線は、基本的に水を通って透過する。例えば、手荷物検査の分野では、「平均材料」は、例えば10%のアルミニウムと90%の衣類で構成されるものに使用される。
【0095】
以下、平均減衰に基づいて、平均エネルギーシフトに対するシミュレーションを実施する。換言すれば、平均エネルギーがどれだけシフトしているかが求められる。
【0096】
例えば、水の場合、透過水厚さは、平均減衰γ=I/I0に基づいて、以下の式を用いて定められる:
【0097】
【数22】
μは、水または平均材料のような、透過性材料の平均減衰である。
【0098】
図9には、複数のフィルタ化タングステンスペクトルに対する水およびPMMAのエネルギーと厚さの間の、近似された直線依存性を含む表を示す。例えば、図9の表の最初の行には、150keVで1.5mmのアルミニウムフィルタを有するX線管を使用した場合、放射される平均エネルギーは、63.3keVであることが示されている。透過水の厚さが10cmであると仮定すると、エネルギーシフトは、7.2keVとなる。従って、検出器8で求められ、ビーム硬化効果が補正され、減衰補正された平均エネルギーは、63.3keV+7.2keV=70.5keVとなる。
【0099】
図10には、本発明によるCT走査器、または本発明によるデータ処理機器で実施される、本発明による方法の一実施例のフロー図を示す。
【0100】
ステップS1でのスタートの後、ステップS2では、大気走査が行われる。大気走査では、関心対象がCT走査器の検査領域に存在しない状態で、走査が行われる。大気走査は、I0を求めるために実施される。次に、後続のステップS3では、透過放射線に基づいて、すなわち一次放射線検出器15の読み出しに基づいて、平均減衰γ=I/I0が求められる。換言すれば、平均減衰値は、一次放射線に基づいて導出される。
【0101】
次に、ステップS5では、平均減衰に基づいて、等価水厚さの決定が行われる。この等価水厚さ(または平均材料厚さ)は、以下の式に基づいて求められる:
【0102】
【数23】
次に、後続のステップS6では、等価水の厚さから、材料によって生じるエネルギーシフトが計算される。これは、例えば、図9に示した表のような、予め定められた表を参照することにより実施される。
【0103】
次に、後続のステップS7では、エネルギーシフトを用いて、散乱放射線の初期の平均エネルギーが補正または補償される。換言すれば、ステップS7では、減衰補正またはビーム硬化効果の補正が実施される。次に、後続のステップS8では、補正されたエネルギー測定結果を用いて、再構築が実施される。再構築は、前述の背面投射経路に沿って、実施されても良い。換言すれば、再構築は、前述のステップ1乃至4に従って、実施されても良い。次に、ステップS9において、操作方法が完了する。
【0104】
図11には、本発明によるCT走査器システム、またはデータ処理機器を動作する方法の、別の一実施例の別のフロー図を示す。予備CT再構築が全く実施されない図10に示した方法とは異なり、図11に示す方法では、実際の再構築の前に、CT再構築が実施される。この方法では、改良された吸収補正、および/または改良されたビーム硬化効果の補正を行うことができるという利点が得られる。
【0105】
ステップS10での開始の後、ステップS11において、I0を定めるため、大気走査が実施される。次に、ステップS12では、CT取得が実施される。換言すれば、ステップ12では、例えば螺旋軌道に沿って、関心対象体積のデータ取得が実施される。この場合、扇ビームが使用されても良い。そのような配置を使用することにより、透過放射線および散乱放射線の投射データを、同時に定めることができるという利点が得られる。ただし、本発明のこの一実施例の変形例では、透過放射線のみを用いて、すなわち、一次放射線検出器の読み出しのみを収集して、事前走査を行っても良い。次に、第2の走査が行われ、散乱放射線が求められる。
【0106】
次に、後続のステップS13では、一次放射線検出器の読み出しから、すなわち透過放射線データから、体積データ組が再構築され、各ボクセルは、関心対象体積内に収容された関心対象の吸収係数を有する。次に、後続のステップS14では、吸収補正および/またはビーム硬化効果の補正が実施される。ここで、散乱光子の平均エネルギーは、関心対象を通過した散乱光子の経路に存在する、関心対象の材料を考慮した、体積データ組に基づいて定められる。これらの材料は、ステップ13において定められた体積データ組から識別されても良い。例えば、これらの材料は、適当な閾値動作を実施することにより、求めても良い。
【0107】
換言すれば、既知のスペクトルでは、対象の散乱光子の投射経路は、既知であるため、この経路に沿った減衰が計算される。抵当な閾値動作を行うことにより、各光子のスペクトル経路に沿った材料が同定され、その吸収スペクトルが求められる。得られたスペクトルから、散乱光子の平均エネルギーが求められる。
【0108】
次に、後続のステップS15では、これらの平均エネルギーを用いて、再構築が実施される。このため、ステップ15において、実際の再構築が実施される間、各ボクセルに対して散乱関数が決定され、ステップ14で求められた平均エネルギーが、式5に使用され、これにより、導波ベクトル移動に依存する再構築散乱機能の、改良されたスペクトル分解能が得られる。
【0109】
また、ステップS13において求められた吸収値に基づいて、各投射経路に対して、吸収補正が実施され、これによっても、画質が向上する。次に、ステップS16において、方法が完了する。
【0110】
図12には、図11を参照して示した方法をさらに説明するための、単純化された概略図を示す。図12からわかるように、放射線源4から放射される放射線は、関心対象4を透過し、ライン15を有する一次放射線検出器によって測定される。関心対象7からの散乱放射線は、散乱放射線検出器30によって決定される。
【0111】
予備ステップでは、検出器ライン15、すなわち一次放射線検出器の読み出しに基づくCT再構築が実施される。これから、体積データ組が再構築される。関心対象7を通る経路にある、散乱放射線44に衝突した材料は、体積データ組から求められる。これらの材料によって生じるビーム硬化効果を考慮して、またこれらの材料によって生じる吸収スペクトルを考慮して、実際に検出器ライン30によって測定されるエネルギーが補正される。
【0112】
図13には、本発明の方法、例えば、図10および11を参照して示した方法を実施するための、データ処理装置の一実施例を示す。図9からわかるように、中央処理ユニット(CPU)または画像プロセッサ1は、検出器からの読み出し、または最終的な再構築データを保管するメモリ2に接続される。前述のように、データは、図1および6に示すようなCSCT走査器によって取得される。さらにデータプロセッサ1は、複数の入力/出力ネットワーク、あるいは他の診断装置に接続されても良い。さらに画像プロセッサ1は、ディスプレイ4(例えば、コンピュータモニタ)に接続され、ディスプレイ4は、情報またはコンピュータ画像を表示し、あるいは画像プロセッサ1に適合される。オペレータは、キーボード5を介して、および/または図1には示されていない他の入力もしくは出力装置を用いて、データプロセッサ1と情報をやり取りする。
【0113】
前述の本発明は、例えば、医療用画像処理の分野に適用することができる。しかしながら、前述のように、本発明は、非破壊検査または手荷物検査の分野に利用することも可能である。本発明は、再構築された散乱機能の極めて良好なスペクトル分解能を得ることができるという利点を有し、例えば、同じ減衰値の材料を識別することができる。また、特に医療用途において、改良された画質が得られる。本発明は、コーンビームCTシステムの追加機能に適用しても良い。本発明は、非エネルギー分解検出器と組み合わせて使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明によるコンピュータ断層撮影装置の一実施例の概略図である。
【図2】干渉性散乱放射線測定用の、図1のコンピュータ断層撮影装置の形状の概略図である。
【図3】図1のコンピュータ断層撮影装置の形状の別の概略図である。
【図4】本発明の別の説明用の、図1のコンピュータ断層撮影装置の測定形状の別の概略図である。
【図5】図1のコンピュータ断層撮影装置の形状の側面の別の概略図である。
【図6】図1のコンピュータ断層撮影装置において生じる散乱事象をさらに説明するための、別の概略図である。
【図7】本発明の別の一実施例による、マルチラインCSCT走査器の概略図である。
【図8】本発明の一実施例による、背面投射を実施するために使用される背面投射経路を示す図である。
【図9】本発明の一実施例によるエネルギーシフトを定める際に使用される表を示す図である。
【図10】本発明によるコンピュータ断層撮影を実行する方法の一実施例のフローチャートである。
【図11】本発明によるコンピュータ断層撮影の方法の別の一実施例の別のフローチャートである。
【図12】図11に示す方法をさらに説明するための、散乱事象の単純化された概略図である。
【図13】本発明の方法を実施するように適合された、本発明によるデータ処理装置の一実施例の単純化された概略図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、扇ビームが関心対象に照射される、干渉性散乱コンピュータ断層撮影法(CSCT)の分野に関する。特に、本発明は、関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築する方法、干渉性散乱コンピュータ断層撮影用の機器、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するデータ処理装置、および干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するためのコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,751,722号には、ビーム方向に対して1゜乃至12゜の角度範囲に、干渉性散乱放射線の角度分布を調整することを基本とする装置が示されている。米国特許第4,751,722号に示されているように、弾性散乱放射線の主な割合は、光子エネルギーが40keV未満の12゜未満の角度範囲内に集中しており、散乱放射線は、明確な最大値を持つ特徴的な角度依存性を有し、その位置は、被照射物質自身によって決まる。狭い角度内のコヒーレントに散乱された放射線の強度分布は、物質の分子構造に依存するため、等しい吸収容量を有する異なる物質(従来の透光またはCTでは識別できない)を、各物質の典型的なコヒーレント放射線の傾斜散乱の強度分布により識別することができる。
【0003】
異なる対象材料を識別することができるという、そのようなシステムの改善された特性のため、そのようなシステムは、医療分野または産業分野において、次第に用途が広がっている。
【0004】
低角度散乱の主要成分は、干渉性散乱である。干渉性散乱は、散乱サンプルの原子配置に依存した干渉効果を示すため、干渉性散乱コンピュータ断層撮影法(CSCT)は、原理的に、2D対象領域の臓器または他の材料の分子構造の空間変化を画像化することに対して、感度を有する技術である。
【0005】
ハーディングらの「エネルギー分散X線回折断層撮影法」、Phys. Med. Biol.、35巻、No.1、p33-41、1990年には、エネルギー分散X線回折断層撮影法(EXDT)が示されており、この方法は、多色性放射線によって対象中に励起された干渉性X線散乱の、一定角度でのエネルギー解析に基づく、断層撮影画像化技術である。この方法では、放射線ビームは、適当な開口システムを用いることにより形成され、この開口システムは、鉛筆の形状を有し、ペンシルビームとも呼ばれる。ペンシルビーム源の反対側には、エネルギー解析に適した一つの検出器素子が配置され、関心対象によって変化したペンシルビームが検出される。
【0006】
ペンシルビームは、一つの検出器素子のみと組み合わせて使用されるため、放射線源によって放射される光子のうち、限定された数しか測定することはできず、従って少ない情報量しか測定することはできない。例えば、手荷物のようなより大きな対象にEXDTを適用する場合、EXDTは、散乱モードで使用する必要があるため、極めて長時間の測定時間が必要となる。
【0007】
扇ビーム一次ビームと2D検出器をCTと組み合わせて適用する、干渉性散乱器の構成は、米国特許第6,470,067B1号に示されており、これによりEXDT走査モードにおける測定時間の長期化の問題が解消される。多色性光源との組み合わせによる角度分散型構成の欠点は、散乱機能が不鮮明となることであり、これは、例えば、シュナイダー(Schneider)らの「扇ビーム形状を用いた干渉性散乱コンピュータ断層撮影法」、プロシーディングス、SPIE、4320巻、p754-763、2001年に示されている。
【0008】
現在のCT走査装置では、通常、放射線源として多色性X線源が使用される。そのような多色性X線源から放射される多色性一次放射線については、ボクセルに対する散乱機能の正確な再構築法は、知られていない。
【特許文献1】米国特許第4,751,722号明細書
【非特許文献1】シュナイダー(Schneider)ら、「扇ビーム形状を用いた干渉性散乱コンピュータ断層撮影法」、プロシーディングス、SPIE、4320巻、p754-763、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの改善された再構築法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の本発明の一実施例では、前述の課題は、関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影(CSCT)データを再構築する方法によって達成され、この方法では、関心対象の減衰データは、関心対象を透過した一次放射線から取得される。次に、取得した減衰データに基づいて、散乱放射線データの補正が行われる。散乱放射線データは、関心対象から散乱された散乱放射線に基づいている。次に、補正された散乱放射線データを用いて、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データが再構築される。本発明のこの一実施例の態様では、散乱放射線データのビーム硬化補正が実施される。
【0011】
本発明のこの一実施例では、所与の運動量移動の散乱角度は、散乱光子のエネルギーに依存することが見出されており、各散乱放射線検出器で測定される信号構造は、強度およびエネルギー依存性減衰で重み付けされた異なるエネルギーの多重散乱投射の関数である。多色性投射、すなわち、多色性放射線源からの投射によって画像が再構築されると、スペクトルの平均エネルギーが使用され、この平均エネルギーを用いて、単色性再構築が行われる。しかしながら、一次放射線のスペクトル分布のため、これにより、散乱機能の低下が生じ得る。
【0012】
前述の本発明の一実施例では、散乱放射線データは、ビーム硬化効果が補正される。これは、再構築散乱機能の低下を抑制する。また、この場合、ビーム硬化効果を考慮することにより、背面投射経路の見かけ上正確な決定が可能となる。
【0013】
請求項2に記載の本発明の別の一実施例では、ビーム硬化効果の補正は、等価物に基づいて定められたエネルギーシフトに基づいて、実施される。この等価物のビーム硬化効果によって生じるエネルギーシフトは、既知であり、これを補正に使用しても良い。これにより、画質か向上する。
【0014】
請求項3に記載の本発明の別の一実施例では、関心対象に生じる平均減衰は、減衰データに基づいて定められる。次に、水および/または他のいずれかの適当な材料、例えばPMMAのような、予め選定された材料の等価厚さが、平均減衰に基づいて定められる。この等価厚さに基づいてエネルギーシフトが定められ、次に、このエネルギーシフトを用いて、散乱放射線データが補正される。
【0015】
換言すれば、本発明のこの一実施例では、エネルギー依存性減衰補正(ビーム硬化補正)が実施される。この一実施例の態様では、このエネルギー依存性減衰補正は、再構築の前に実施されても良い。
【0016】
これにより、再構築散乱機能に、極めて良好な空間分解能が得られるという利点が得られる。例えば、材料識別用途において、これにより、同じ減衰を有する材料の識別が可能となる。また、減衰補正のため、向上した画質が得られる。
【0017】
請求項4に記載の本発明の別の一実施例では、関心対象の吸収係数を含む体積データ組の再構築が実施される。次に、散乱放射線の散乱光子の放射線スペクトルが定められる。散乱光子の平均エネルギーは、放射線スペクトルに基づいて定められ、次に、これらの平均エネルギーを用いて、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの再構築が行われる。
【0018】
換言すれば、本発明のこの一実施例では、CT再構築は、CSCT再構築の前に実施される。これにより、例えば散乱光子の平均エネルギーに影響を及ぼすビーム硬化効果を考慮することによって、(これらの経路に現れる材料の)背面投射経路の見かけ上正確な計算が可能になるという利点が得られる。
【0019】
請求項5に記載の本発明の別の一実施例では、減衰データに基づいて、散乱放射線の散乱光子の経路に設置された材料が定められる。これは、CT再構築に基づいて行われる。次に、散乱放射線データの補正または補償を行うため、これらの材料が考慮され、散乱放射線データにおけるビーム硬化効果および/または吸収効果が補償される。次に補正された散乱放射線データに基づいて、CSCT再構築が実施される。
【0020】
請求項6に記載の本発明の別の一実施例では、散乱放射線データのビーム硬化補正が実施される、干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器が提供される。この干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器は、コーンビームCTシステムの一部とすることができるという利点がある。本発明による再構築では、前述のように画質が向上するため、この機器は、材料解析用の医療画像、および例えば手荷物検査に、有意に使用することができる。これらの用途に対しては、本発明の機器を用いることにより有意に得られる、散乱機能の良好な分解能が重要である。
【0021】
本発明による干渉性散乱コンピュータ断層撮影用の機器の一実施例は、請求項7および8に記載されている。
【0022】
請求項9に記載の本発明の別の一実施例では、メモリとデータプロセッサとを有するデータ処理装置が提供される。この一実施例によるデータ処理装置は、本発明の方法を実施するように適合される。
【0023】
請求項10に記載の本発明の別の一実施例では、関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するための、ソフトウェアプログラムが提供され、データプロセッサおよび干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器のいずれかで、コンピュータソフトウェアが実行されると、本発明の方法に一致する動作が実施される。本発明によるコンピュータプログラムは、CD-ROM等のコンピュータ読み取り媒体に保管される。またコンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワーク上に保管されても良く、そのようなネットワークから、データプロセッサの作動メモリにダウンロードされても良い。コンピュータプログラムは、C++のようないかなる適当なプログラム言語で記載されても良い。
【0024】
本発明の一実施例の要旨は、散乱放射線データが再構築に使用される前に、散乱放射線データで、ビーム硬化補正が実施されることである。これにより、再構築散乱機能の極めて良好な空間分解能が得られ、向上した画質を得ることができる。
【0025】
本発明のこれらのおよび他の態様は、添付図面を参照し、以下の実施例を参照することにより、さらに明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下の図1乃至13の説明において、同一のまたは対応する素子には、同じ参照符号が使用されている。
【0027】
図1には、本発明のコンピュータ断層撮影の一実施例を示す。この一実施例を参照して、例えば手荷物の物品中の爆発物などの危険物質を検出するため、本発明が手荷物検査に適用される場合を例に、説明する。ただし、本発明は、手荷物検査の分野に限定されるものではなく、例えば医療用の骨組織の画像化もしくは組織の識別など、他の産業用または医療用の用途にも使用できることに留意する必要がある。さらに、本発明は、非破壊検査の分野に使用しても良い。
【0028】
図1に示すコンピュータ断層撮影装置は、回転軸2の周囲に回転可能なガントリー1を有する。ガントリー1は、モータ3によって駆動される。参照符号4で示されている光線源は、本発明の態様では、X線源等であり、多色性のまたは単色性の放射線を放射する。
【0029】
参照符号9で示されているコリメータは、例えばスリット式ダイアフラムである。関心対象7を通過する扇ビーム11の走査面または扇面は、放射線検出器8の透過検出器ライン15と交差している。
【0030】
換言すれば、扇ビーム11は、そのビームが、ガントリー1の中央、すなわちコンピュータ断層撮影の検査領域に配置された手荷物7の物品を透過し、検出器8に照射されるように誘導される。前述のように、検出器8は、放射線源4と対向するようにして、ガントリー1に配置され、扇ビーム11の扇面は、検出器8の行またはライン15と交差する。図1に描かれている検出器8は、7つの検出器ラインを有し、各ラインは、複数の検出器素子を有する。前述のように、検出器8は、一次放射線検出器15、すなわち検出器8の中央ラインが、扇ビーム11の扇面内となるように配置される。
【0031】
検出器8の残りの6本のライン、すなわち各検出器ライン15の各側の、ハッチングで示した3本ずつの検出器ライン30と34は、散乱放射線の検出器ラインである。そのような検出器ライン30および34は、それぞれ、扇ビーム11の扇面の外側に配置される。換言すれば、これらのライン30および34は、X線源4と対向するようにして、回転軸2と平行な方向に、または扇面に対して垂直な方向に、扇面からずれた状態で、ガントリー1に配置される。検出器ライン30は、図1に示す回転軸2の方向に対して、正のずれとなるように配置され、一方、ライン34は、図1に示す回転軸2の方向に対して、扇面から負のずれとなるように配置される。
【0032】
検出器ライン30および34は、それらのラインが扇平面と平行となり、それらのラインが、ガントリー1の回転軸2の正または負の方向に、扇面からずれるように、ガントリー1に配置され、さらに、それらのラインが、コンピュータ断層撮影の検査領域内の手荷物7の物品から散乱される散乱放射線を受光し、または測定するように、ガントリー1に配置される。従って、以降、ライン30および34は、散乱放射線検出器とも言う。
【0033】
検出器ライン15、30および34の検出器素子は、シンチレータ検出器セルであっても良い。ただし、本発明の本一実施例の変形例では、テルル化カドミウムもしくはCdZnTe系または他の直接変換検出器セルが、ライン15またはライン34もしくは30のいずれかに使用されても良い。また、ライン30および34は、テルル化カドミウムまたはCZT系検出器セルであっても良く、ライン15は、シンチレータ検出器セルのラインであっても良い。一次ビーム検出器および散乱放射線検出器は、別のハウジング内に設置されても良い。
【0034】
一つのライン30または34のいずれか一つのみを提供しても良いことに留意する必要がある。ただし、複数のライン30および/または34を提供することが好ましい。また、手荷物7の物品によって生じる、扇面内の扇ビーム11の一次ビームの減衰の測定に、一つのライン15のみを提供しても良い。ただし、ライン30および34がある場合、複数の検出器ライン15の提供によって、コンピュータ断層撮影の測定速度がさらに向上する。以下、「一次放射線検出器」という用語は、扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するための、少なくとも一つの検出器ラインを含む検出器を意味するために使用される。
【0035】
図1からわかるように、検出器8の検出器セルは、線状または列状に配置され、この列は、回転軸2と平行であり、このラインは、回転軸2に対しては垂直であって、扇ビーム11のスライス面に対しては平行となるように、面内に配置される。
【0036】
手荷物7の物品の走査の間、放射線源4、コリメータ9(または開口システム)および検出器8は、矢印16に示す方向に、ガントリー1に沿って回転される。ガントリー1の回転のため、計算ユニット18に接続されたモータ制御ユニット17に、モータ3が接続される。
【0037】
図1では、手荷物7の物品は、コンベアベルト19に載せられている。手荷物7の物品の走査の間、ガントリー1は、手荷物7の物品の周囲を回転するが、コンベアベルト19は、ガントリー1の回転軸2と平行な方向に沿って、手荷物7の物品を移動させる。これにより、手荷物7の物品は、螺旋状の走査経路に沿って走査される。またコンベアベルト19は、走査の間、停止させても良い。これにより、単一のスライス面での測定が可能となる。
【0038】
検出器8は、計算ユニット18に接続されている。計算ユニット18は、検出結果、すなわち検出器8の検出器素子からの読み出しを受信し、扇ビーム11の一次放射線の減衰を測定するため、検出器8、すなわち散乱検出器ライン30および34とライン15から得られた走査結果に基づいて、走査結果を求める。これに加えて、計算ユニット18は、モータ制御ユニット17と協働して、ガントリー1の動きをモータ3および20またはコンベアベルト19と協調させる。
【0039】
検出器ユニット18は、一次放射線検出器、すなわち検出器ライン15と、散乱放射線検出器、すなわちライン30および34との読み出しからの画像を再構築するように適合される。計算ユニット18によって生じる画像は、インターフェース22を介して、ディスプレイ(図1には示されていない)に出力される。
【0040】
また、計算ユニット18は、ライン30および34、ライン15および32の読み出しに基づいて、手荷物7の物品中の爆発物を検出するように適合されている。これは、先の測定の際に、これらのラインの読み出しからの散乱機能の再構築、およびこれらの読み出しと、定められた爆発物の特徴的な測定値を含む表との比較により、自動的に行うことができる。計算ユニット18によって、検出器8からの読み出し測定値が、爆発物の特徴的な測定値と整合していると判断された場合、計算ユニット18は、拡声器21を介して、自動的にアラームを出力する。
【0041】
図2には、図1に示すCSCT走査システムの形状の単純化された概略図を示す。図2からわかるように、X線源4は、扇ビーム11を放射し、この扇ビームは、この場合、直径がuの手荷物7の物品を包囲するように、検出器8全体を覆う。対象領域の直径は、例えば、100cmであっても良い。この場合、扇ビーム11の角度αは、80゜である。そのような配置では、X線源4から対象物領域の中心までの距離vは、約80cmであり、検出器8の距離、すなわちX線源4からの個々の検出器セルの距離は、約w=150cmである。
【0042】
図2からわかるように、本発明の態様では、検出器セルまたはラインは、コリメータ40に設置され、セルまたはラインが、異なる散乱角を有する好ましくない放射線を測定することが回避される。コリメータ40は、ブレード状または積層物の形態であり、この形態は、光線源に向かって集束される。積層物の間隔は、検出器素子の間隔とは独立に選定することができる。
【0043】
図1、2に示すような湾曲した検出器8の代わりに、平坦な検出器配列を使用することも可能である。
【0044】
図3には、図1のコンピュータ断層撮影に使用される、検出器形状の別の概略図を示す。図1を参照して既に述べたように、検出器8は、手荷物7の物品によって生じる一次扇ビームの減衰を測定するため、1、2または3以上の検出器ライン30、34と、複数のライン15とを有する。図3からわかるように、検出器8は、検出器8の中央ライン15が、扇ビーム11の扇面内に来るように配置されることが好ましく、これにより、一次放射線の減衰が測定される。矢印42に示すように、X線源4の放射線源および検出器8は、手荷物の物品の周囲を相互に回転し、異なる角度からの投射が得られる。
【0045】
図3に示すように、検出器8は、複数の列tを有する。
【0046】
図4には、本発明をさらに説明するため、図1に示したコンピュータ断層撮影装置の形状の別の概略図を示す。図4では、一つのライン15と、一つのライン30とのみを有する検出器46が描かれている。ライン15は、コリメータ9によって形成される扇ビーム11の扇面に配置されている。ライン15は、扇ビーム11の一次ビームの減衰を測定するため、例えばシンチレータセルまたは他の適当なセルを有し、対象領域または検査領域内の関心対象によって生じる、一次扇ビームの減衰の積分測定が可能となる。
【0047】
図4に示すライン30は、エネルギー分解セルまたはシンチレータセルを有しても良い。図4からわかるように、ライン30は、扇ビーム11の扇面と平行に、この面からずらして配置される。換言すれば、ライン30は、扇面と平行な面であって、ライン15と平行な面内に配置される。扇面は、スライス面とも呼ぶ。
【0048】
参照符号44は、散乱放射線、すなわち手荷物等の関心対象によって散乱された光子を示す。図4からわかるように、散乱放射線は、スライス面から離れ、ライン30の検出器セルに衝突する。
【0049】
図5には、図1のコンピュータ断層撮影装置の検出器形状の側面図を示す。また図5は、図4の側面図が示されるように考慮されている。ただし、図5では、一つのライン30および一つのライン15を示す代わりに、ライン30とライン15の間の、複数の検出器ライン32が示されている。検出器素子Diは、一次扇ビームのスライス面から一定の距離に配置される。本発明の態様では、列tの各検出器素子Diに対して、および各投射Φ(図3参照)に対して、スペクトルI(E、t、Φ)が測定される。円形または螺旋状走査経路に沿った複数の投射Φに対して、この測定を行うことにより、三次元データ組が得られる。各対象画素は、3座標(x、y、q)で表される。従って、本発明の態様では、三次元データ組からの画像の再構築、または更なる情報の再構築のため、独国特許第DE10252662.1号に示されているような3D→3D再構築法が適用され、これは、本願の参照文献として取り入れられている。
【0050】
図6には、関心対象に生じる散乱事象を説明するための概略図を示す。検出器8での強度Iは、以下の式で表される:
【0051】
【数1】
式3から、検出器8での検出器信号Iは、強度I0(E)およびエネルギーに依存する減衰によって重み付けされた、多数のエネルギーの散乱投射の重ね合わせであることがわかる。Fは、散乱関数である。減衰因子α(E)とβ(E)は、光線源から散乱事象の生じる位置まで、および散乱事象の生じる位置から検出器までの経路に沿った入射放射線の減衰を表す。
【0052】
多色性放射線に基づいて定められた投射データからの画像を再結合する単純な手法は、スペクトルの平均エネルギーを計算した後、「単色性」の再構築を実施することである。しかしながら、前述のように、この場合、一次放射線のスペクトル特性によって生じる再構築画像に、波動ベクトル移動に依存した散乱機能の低下が生じ得る。
【0053】
図10、11を参照して、さらに詳しく説明される本発明の一実施例では、背面投射経路の決定のため、多色性、およびこれによる一次放射線のビーム硬化が補正される方法が提供される。これにより、見かけ上多色性の再構築が可能となる。
【0054】
図7には、マルチラインCSCT走査器の一実施例の概略図を示す。この走査器には、検出器48が設けられ、この検出器は、エネルギー分解検出器素子の複数のラインを有し、これは、図1を参照して示したものと同様である。放射線源9には、コリメータが設けられ、このコリメータは、X線の扇ビームを形成する。検出器48と放射線源49は、検出器48が、中心で集束されるように配置される。図6に示す図は、x−y平面、すなわち放射線源49および検出器48の回転面からの走査処理工程をさらに明確にするため、走査面またはスライス面に平行に示してある。図6からわかるように、放射線源49と検出器48の間の距離は、「SD」で示されており、光線源49と回転中心47の間の距離は、Sで示されており、散乱中心と検出器48の間の距離は、dで表されており、放射線が照射される検出器素子と散乱面またはスライス面の間の距離は、aで示されており、hは、検出器48の高さを示す。
【0055】
z座標軸は、放射線源49の回転面の中心に垂直であり、すなわち放射線源49の回転軸に垂直である。y座標は、放射線源の回転面である。
【0056】
図7からわかるように、以下の説明では、CSCT走査器は、例えば多色性X線源49と検出器49とを有するものと仮定する。検出器は、エネルギー分解検出器素子を有し、あるいはエネルギー分解検出器素子で構成され、この素子は、図1を参照して示したものと同様のものであっても良い。放射X線は、扇ビームが、放射線47の中心の周囲に設置された関心対象に照射されるように平行化される。
【0057】
以下の動作方法は、CSCTデータを再構築するため、すなわち検出器8と48の読み出しから画像を再構築するため、前述の走査器、または図1を参照して示した走査器に適用しても良い。
【0058】
ステップ1:データは、x−y−z空間のソース源の軌跡を表す環を取得する間に測定される。換言すれば、検出器8または48からの読み出しが収集され、放射線源4および49と、検出器8および48とは、回転面内の関心対象の周囲を回転する。読み出しは、測定データまたは取得CSCTデータと呼ばれる。測定CSCTデータは、x−y−q空間での線の積分と解釈され、ここでqは、波動ベクトルの移動を表す。波動ベクトルの移動の計算法は、以降に示す。
【0059】
ステップ2:取得CSCTデータは、そのデータがx−y−q空間での螺旋軌跡に沿った取得値に対応するように保管または外挿される。
【0060】
ステップ3:従来の螺旋再構築アルゴリズムによるデータの事前処理のため、例えば、本願の参照文献として取り入れられている、カッツセビッチ(Katsevich)の「螺旋コーンビームCTの正確な反転アルゴリズムの解析」、Phys. Med. Biol.、 47巻、p2583-2597、2002年に示されている、正確な再構築技術のような、さらなるステップが実施されても良い。
【0061】
ステップ4:再構築データおよび/または外挿データを、背面投射しても良い。この背面投射は、x−y−q空間の曲線に沿って実施される。これらの曲線は、例えば双曲線であっても良い。
【0062】
この動作、特にステップ2の動作について、以下により詳しく説明する。
【0063】
CSCTは、干渉性散乱形態因子F2(q)を再構築するため、干渉性散乱X線に使用される。干渉性散乱X線の微分断面積dσRayleigh/dΩは、
【0064】
【数2】
で表される。
【0065】
ここで、reは、古典的な電子径を表し、Θは、入射X線と散乱X線の間の角度を表す。角度Θだけ光子のずれを生じさせる波動ベクトル移動qは、対応するX線光子のエネルギーE、プランク定数hおよび光束cを用いて、
【0066】
【数3】
で定められる。狭い角度での散乱の場合、例えば関心角度範囲が0から6゜の間の場合、sin(Θ/2)は、ほぼΘ/2となり、式(5)は、
【0067】
【数4】
となる。図6から、散乱角度は、検出器の散乱中心の距離d、および散乱面から散乱放射線が入射される検出器素子の距離aで与えられ、
【0068】
【数5】
となる。式(6)と合わせて、
【0069】
【数6】
が得られる。
【0070】
x−y−q空間では、式(8)は、双曲線を表す。これらの双曲線は、直線に近似される。いくつかの可能性の中から、例えば、直線下の領域は、対応する双曲線領域に整合するという近似が行われる。別の近似は、以降に示す。直線は、関心領域の始点(dmax)と終点(dmin)で、双曲線と交差する:
【0071】
【数7】
図8には、いくつかの双曲線を示す。より詳細には、図8には、構成8で示された背面投射経路が示されている。図8からわかるように、各平均エネルギーにおいて、新しい経路が得られる。
【0072】
図1および6に示すような走査システムを考えると、実際の経路は、その経路が、x−y−q空間の螺旋軌道に沿った取得値に対応するように再構築され、外挿される。事実上の隣接軌道に対して、環状軌道で測定されたデータの外挿は、ジョーンの式を用いて行われる。ジョーンの式の考えは、3D空間を通る線空間の積分は、4Dであり、従って、対象関数から、その線の積分関数までのマッピングは、追加の次元を形成するというものである。これは、パッチ(S. K. Patch)の、「3次元CTデータおよび波動関数の一貫性の条件」、Phys. Med. Biol.、47巻、p2637-2650、および本願の参照文献として取り入れられている、米国特許第6173030号(1999)に示されている。
【0073】
実際の光線源位置の直線積分
【0074】
【数8】
は、
【0075】
【数9】
の光線源位置に対して測定された直線積分から外挿される。
【0076】
これは、線積分空間に冗長性を与え、パッチ(S.K. Patch)の「測定ビューからの未測定第三世代VCTビューの計算」、IEEE Trans. Med. Img. MI-21、p801-803、本願の参照文献として取り入れられている、米国特許第6292526(1999年)に示されているような、測定データからの未測定データの構築に使用される。ジョーンの式は、以下のように形状パラメータ組にパラメータ化され、これは、本願の参照文献として取り入れられている、デフライズ(M. Defrise、F. Noo、H. Kudo)らの「ジョーンの式に使用される螺旋コーンビームCTデータの改良された二次元再結合」、プロシーディングス2002IEEE核科学および医療用画像化シンポジウム、ノーフォーク(バージニア州)、論文M10-74に示されている。
【0077】
【数10】
ここでRは、事実上の光線源位置から同心円までの距離であり、uは、中央線から扇方向の露出検出器列までの距離である。線積分は、gによって表され、変数での線積分の微分は、指数によって表される。以下の式により、測定された線積分gから、事実上の光線源位置
【0078】
【数11】
に対して、線積分
【0079】
【数12】
を外挿することができる。
【0080】
【数13】
従って、式(10)は、
【0081】
【数14】
に対して解く必要がある。
【0082】
【数15】
また、uに対する部分積分は、
【0083】
【数16】
となり、これは、事実上の光線源位置
【0084】
【数17】
に対する線積分である。
【0085】
得られたおよび外挿されたデータは、そのデータが、x−y−q空間における螺旋軌道に沿った取得値と対応するように再構築される。
【0086】
【数18】
が、走査システムの回転中心から事実上の光線源までのベクトルであると仮定する。螺旋軌道は、
【0087】
【数19】
となり、ここでαは、x軸に対する光線源の角度位置を表す。
【0088】
ある範囲では、
【0089】
【数20】
の各値は、
【0090】
【数21】
で表され、これは、x−y−q空間における螺旋軌道のデータ取得値を満たす。この記載によって、螺旋データ取得値の開始点として、オフセットα0を定めることが可能となり、再構築工程に冗長データを用いることが可能となる。これにより、より良好な画質が得られる。
【0091】
前述のステップ1乃至4、特にステップ3は、図1乃至5を参照して示したCSCT走査器、図6に示す走査器、および図13に示すデータ処理装置に適用して、実施しても良い。
【0092】
前述のように、材料を通る移動の間に、X線スペクトルは、硬化する。このため、透過X線スペクトルの平均エネルギーは、一次スペクトルおよび関心対象内に存在する材料に依存する。このため、式5に示すように、異なる平均エネルギーに基づいて、経路に沿った背面投射を行うと、異なる背面投射経路が得られる。本発明では、再構築の際のこの影響を補正するため、各背面投射経路の平均エネルギーを得る必要があることが示されている。これは、図10および11を参照して示した方法によって行われる。
【0093】
前述のように、散乱放射線の経路のため、ファクターβ(E)は、散乱角度に依存する。以下、散乱放射線の減衰は、直接変換放射線の減衰と同じであると仮定する。透過放射線、すなわち一次放射線の減衰は、γ=I/I0で定められる。この減衰は、一次放射線ベクトル15によって定められても良い。この仮定を用いることにより、積α(E)×β(E)は、経路と独立となる。
【0094】
測定された平均減衰γ=I/I0に基づいて、散乱光子の平均エネルギーのずれを定める場合、関心対象の材料に関する以下の仮定が行われる。例えば、医療用途の場合、関心対象は、主として水で構成されていると仮定されても良く、すなわち放射線は、基本的に水を通って透過する。例えば、手荷物検査の分野では、「平均材料」は、例えば10%のアルミニウムと90%の衣類で構成されるものに使用される。
【0095】
以下、平均減衰に基づいて、平均エネルギーシフトに対するシミュレーションを実施する。換言すれば、平均エネルギーがどれだけシフトしているかが求められる。
【0096】
例えば、水の場合、透過水厚さは、平均減衰γ=I/I0に基づいて、以下の式を用いて定められる:
【0097】
【数22】
μは、水または平均材料のような、透過性材料の平均減衰である。
【0098】
図9には、複数のフィルタ化タングステンスペクトルに対する水およびPMMAのエネルギーと厚さの間の、近似された直線依存性を含む表を示す。例えば、図9の表の最初の行には、150keVで1.5mmのアルミニウムフィルタを有するX線管を使用した場合、放射される平均エネルギーは、63.3keVであることが示されている。透過水の厚さが10cmであると仮定すると、エネルギーシフトは、7.2keVとなる。従って、検出器8で求められ、ビーム硬化効果が補正され、減衰補正された平均エネルギーは、63.3keV+7.2keV=70.5keVとなる。
【0099】
図10には、本発明によるCT走査器、または本発明によるデータ処理機器で実施される、本発明による方法の一実施例のフロー図を示す。
【0100】
ステップS1でのスタートの後、ステップS2では、大気走査が行われる。大気走査では、関心対象がCT走査器の検査領域に存在しない状態で、走査が行われる。大気走査は、I0を求めるために実施される。次に、後続のステップS3では、透過放射線に基づいて、すなわち一次放射線検出器15の読み出しに基づいて、平均減衰γ=I/I0が求められる。換言すれば、平均減衰値は、一次放射線に基づいて導出される。
【0101】
次に、ステップS5では、平均減衰に基づいて、等価水厚さの決定が行われる。この等価水厚さ(または平均材料厚さ)は、以下の式に基づいて求められる:
【0102】
【数23】
次に、後続のステップS6では、等価水の厚さから、材料によって生じるエネルギーシフトが計算される。これは、例えば、図9に示した表のような、予め定められた表を参照することにより実施される。
【0103】
次に、後続のステップS7では、エネルギーシフトを用いて、散乱放射線の初期の平均エネルギーが補正または補償される。換言すれば、ステップS7では、減衰補正またはビーム硬化効果の補正が実施される。次に、後続のステップS8では、補正されたエネルギー測定結果を用いて、再構築が実施される。再構築は、前述の背面投射経路に沿って、実施されても良い。換言すれば、再構築は、前述のステップ1乃至4に従って、実施されても良い。次に、ステップS9において、操作方法が完了する。
【0104】
図11には、本発明によるCT走査器システム、またはデータ処理機器を動作する方法の、別の一実施例の別のフロー図を示す。予備CT再構築が全く実施されない図10に示した方法とは異なり、図11に示す方法では、実際の再構築の前に、CT再構築が実施される。この方法では、改良された吸収補正、および/または改良されたビーム硬化効果の補正を行うことができるという利点が得られる。
【0105】
ステップS10での開始の後、ステップS11において、I0を定めるため、大気走査が実施される。次に、ステップS12では、CT取得が実施される。換言すれば、ステップ12では、例えば螺旋軌道に沿って、関心対象体積のデータ取得が実施される。この場合、扇ビームが使用されても良い。そのような配置を使用することにより、透過放射線および散乱放射線の投射データを、同時に定めることができるという利点が得られる。ただし、本発明のこの一実施例の変形例では、透過放射線のみを用いて、すなわち、一次放射線検出器の読み出しのみを収集して、事前走査を行っても良い。次に、第2の走査が行われ、散乱放射線が求められる。
【0106】
次に、後続のステップS13では、一次放射線検出器の読み出しから、すなわち透過放射線データから、体積データ組が再構築され、各ボクセルは、関心対象体積内に収容された関心対象の吸収係数を有する。次に、後続のステップS14では、吸収補正および/またはビーム硬化効果の補正が実施される。ここで、散乱光子の平均エネルギーは、関心対象を通過した散乱光子の経路に存在する、関心対象の材料を考慮した、体積データ組に基づいて定められる。これらの材料は、ステップ13において定められた体積データ組から識別されても良い。例えば、これらの材料は、適当な閾値動作を実施することにより、求めても良い。
【0107】
換言すれば、既知のスペクトルでは、対象の散乱光子の投射経路は、既知であるため、この経路に沿った減衰が計算される。抵当な閾値動作を行うことにより、各光子のスペクトル経路に沿った材料が同定され、その吸収スペクトルが求められる。得られたスペクトルから、散乱光子の平均エネルギーが求められる。
【0108】
次に、後続のステップS15では、これらの平均エネルギーを用いて、再構築が実施される。このため、ステップ15において、実際の再構築が実施される間、各ボクセルに対して散乱関数が決定され、ステップ14で求められた平均エネルギーが、式5に使用され、これにより、導波ベクトル移動に依存する再構築散乱機能の、改良されたスペクトル分解能が得られる。
【0109】
また、ステップS13において求められた吸収値に基づいて、各投射経路に対して、吸収補正が実施され、これによっても、画質が向上する。次に、ステップS16において、方法が完了する。
【0110】
図12には、図11を参照して示した方法をさらに説明するための、単純化された概略図を示す。図12からわかるように、放射線源4から放射される放射線は、関心対象4を透過し、ライン15を有する一次放射線検出器によって測定される。関心対象7からの散乱放射線は、散乱放射線検出器30によって決定される。
【0111】
予備ステップでは、検出器ライン15、すなわち一次放射線検出器の読み出しに基づくCT再構築が実施される。これから、体積データ組が再構築される。関心対象7を通る経路にある、散乱放射線44に衝突した材料は、体積データ組から求められる。これらの材料によって生じるビーム硬化効果を考慮して、またこれらの材料によって生じる吸収スペクトルを考慮して、実際に検出器ライン30によって測定されるエネルギーが補正される。
【0112】
図13には、本発明の方法、例えば、図10および11を参照して示した方法を実施するための、データ処理装置の一実施例を示す。図9からわかるように、中央処理ユニット(CPU)または画像プロセッサ1は、検出器からの読み出し、または最終的な再構築データを保管するメモリ2に接続される。前述のように、データは、図1および6に示すようなCSCT走査器によって取得される。さらにデータプロセッサ1は、複数の入力/出力ネットワーク、あるいは他の診断装置に接続されても良い。さらに画像プロセッサ1は、ディスプレイ4(例えば、コンピュータモニタ)に接続され、ディスプレイ4は、情報またはコンピュータ画像を表示し、あるいは画像プロセッサ1に適合される。オペレータは、キーボード5を介して、および/または図1には示されていない他の入力もしくは出力装置を用いて、データプロセッサ1と情報をやり取りする。
【0113】
前述の本発明は、例えば、医療用画像処理の分野に適用することができる。しかしながら、前述のように、本発明は、非破壊検査または手荷物検査の分野に利用することも可能である。本発明は、再構築された散乱機能の極めて良好なスペクトル分解能を得ることができるという利点を有し、例えば、同じ減衰値の材料を識別することができる。また、特に医療用途において、改良された画質が得られる。本発明は、コーンビームCTシステムの追加機能に適用しても良い。本発明は、非エネルギー分解検出器と組み合わせて使用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明によるコンピュータ断層撮影装置の一実施例の概略図である。
【図2】干渉性散乱放射線測定用の、図1のコンピュータ断層撮影装置の形状の概略図である。
【図3】図1のコンピュータ断層撮影装置の形状の別の概略図である。
【図4】本発明の別の説明用の、図1のコンピュータ断層撮影装置の測定形状の別の概略図である。
【図5】図1のコンピュータ断層撮影装置の形状の側面の別の概略図である。
【図6】図1のコンピュータ断層撮影装置において生じる散乱事象をさらに説明するための、別の概略図である。
【図7】本発明の別の一実施例による、マルチラインCSCT走査器の概略図である。
【図8】本発明の一実施例による、背面投射を実施するために使用される背面投射経路を示す図である。
【図9】本発明の一実施例によるエネルギーシフトを定める際に使用される表を示す図である。
【図10】本発明によるコンピュータ断層撮影を実行する方法の一実施例のフローチャートである。
【図11】本発明によるコンピュータ断層撮影の方法の別の一実施例の別のフローチャートである。
【図12】図11に示す方法をさらに説明するための、散乱事象の単純化された概略図である。
【図13】本発明の方法を実施するように適合された、本発明によるデータ処理装置の一実施例の単純化された概略図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影(CSCT)データを再構築する方法であって、
前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得するステップと、
取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を行うステップであって、前記散乱放射線データは、前記関心対象から散乱される散乱放射線に基づいている、ステップと、
補正された前記散乱放射線データを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
ビーム硬化効果を補正するステップは、等価物に基づいて定められたエネルギーシフトに基づいて実施され、
前記ビーム硬化効果によって、前記等価物に生じる前記エネルギーシフトは、既知であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
前記減衰データに基づいて、前記関心対象によって生じる平均減衰を決定するステップと、
前記平均減衰に基づいて、事前に選択された第1の材料の等価厚さを決定するステップと、
前記事前に選択された第1の材料の前記等価厚さに基づいて、エネルギーシフトを決定するステップと、
前記エネルギーシフトを用いて、前記散乱放射線データを補正するステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
前記関心対象の吸収係数を含む体積データ組を再構築するステップと、
前記散乱放射線の散乱光子の放射線スペクトルを決定するステップと、
前記放射線スペクトルに基づいて、前記散乱光子の平均エネルギーを決定するステップと、
前記平均エネルギーを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの再構築を実施するステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記減衰データに基づいて、前記関心対象内の、前記散乱放射線の散乱光子の経路に設置された第2の材料が決定され、
前記第2の材料の吸収スペクトルは、前記散乱光子の平均エネルギーの決定に使用され、前記平均エネルギーは、前記再構築に使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
干渉性散乱コンピュータ断層撮影用の機器であって、
放射線源、第1の検出器および第2の検出器を備える検出器組立体を有し、
該検出器組立体は、関心対象の周囲を回転するように配置され、
前記第1および第2の検出器は、前記放射線源に対向するように配置され、
前記第1の検出器は、前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得するように配置され、
前記第2の検出器は、前記関心対象から散乱される散乱放射線から、前記関心対象の散乱放射線データを取得するように配置され、
当該機器は、取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を実施し、補正された前記散乱放射線データを用いて、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの再構築を実施することを特徴とする機器。
【請求項7】
前記ビーム硬化効果の補正は、前記ビーム硬化が既知の等価物に基づいて定められたエネルギーシフトに基づいて実施されることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項8】
減衰データに基づいて、前記関心対象内の、前記散乱放射線の散乱光子の経路に設置された第2の材料が決定され、
前記第2の材料の吸収スペクトルは、前記散乱光子の平均エネルギーの決定に使用され、
前記平均エネルギーは、前記再構築に使用されることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項9】
関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するデータ処理装置であって、
減衰データおよび散乱放射線データを保管するメモリと、データプロセッサとを有し、
前記データプロセッサは、
前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得する動作と、
取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を実施する動作であって、前記散乱放射線データは、前記関心対象から散乱された散乱放射線に基づいている、動作と、
補正された前記散乱放射線データを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築する動作と、
を行うように適合されていることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項10】
関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するためのコンピュータプログラムであって、
データプロセッサおよび干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器のいずれかで、当該コンピュータプログラムが実行されると、
前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得する動作と、
取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を実施する動作であって、前記散乱放射線データは、前記関心対象から散乱された散乱放射線に基づいている、動作と、
補正された前記散乱放射線データを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築する動作と、
が実行される、コンピュータプログラム。
【請求項1】
関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影(CSCT)データを再構築する方法であって、
前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得するステップと、
取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を行うステップであって、前記散乱放射線データは、前記関心対象から散乱される散乱放射線に基づいている、ステップと、
補正された前記散乱放射線データを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するステップと、
を有する方法。
【請求項2】
ビーム硬化効果を補正するステップは、等価物に基づいて定められたエネルギーシフトに基づいて実施され、
前記ビーム硬化効果によって、前記等価物に生じる前記エネルギーシフトは、既知であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、
前記減衰データに基づいて、前記関心対象によって生じる平均減衰を決定するステップと、
前記平均減衰に基づいて、事前に選択された第1の材料の等価厚さを決定するステップと、
前記事前に選択された第1の材料の前記等価厚さに基づいて、エネルギーシフトを決定するステップと、
前記エネルギーシフトを用いて、前記散乱放射線データを補正するステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、
前記関心対象の吸収係数を含む体積データ組を再構築するステップと、
前記散乱放射線の散乱光子の放射線スペクトルを決定するステップと、
前記放射線スペクトルに基づいて、前記散乱光子の平均エネルギーを決定するステップと、
前記平均エネルギーを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの再構築を実施するステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記減衰データに基づいて、前記関心対象内の、前記散乱放射線の散乱光子の経路に設置された第2の材料が決定され、
前記第2の材料の吸収スペクトルは、前記散乱光子の平均エネルギーの決定に使用され、前記平均エネルギーは、前記再構築に使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
干渉性散乱コンピュータ断層撮影用の機器であって、
放射線源、第1の検出器および第2の検出器を備える検出器組立体を有し、
該検出器組立体は、関心対象の周囲を回転するように配置され、
前記第1および第2の検出器は、前記放射線源に対向するように配置され、
前記第1の検出器は、前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得するように配置され、
前記第2の検出器は、前記関心対象から散乱される散乱放射線から、前記関心対象の散乱放射線データを取得するように配置され、
当該機器は、取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を実施し、補正された前記散乱放射線データを用いて、干渉性散乱コンピュータ断層撮影データの再構築を実施することを特徴とする機器。
【請求項7】
前記ビーム硬化効果の補正は、前記ビーム硬化が既知の等価物に基づいて定められたエネルギーシフトに基づいて実施されることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項8】
減衰データに基づいて、前記関心対象内の、前記散乱放射線の散乱光子の経路に設置された第2の材料が決定され、
前記第2の材料の吸収スペクトルは、前記散乱光子の平均エネルギーの決定に使用され、
前記平均エネルギーは、前記再構築に使用されることを特徴とする請求項6に記載の機器。
【請求項9】
関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するデータ処理装置であって、
減衰データおよび散乱放射線データを保管するメモリと、データプロセッサとを有し、
前記データプロセッサは、
前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得する動作と、
取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を実施する動作であって、前記散乱放射線データは、前記関心対象から散乱された散乱放射線に基づいている、動作と、
補正された前記散乱放射線データを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築する動作と、
を行うように適合されていることを特徴とするデータ処理装置。
【請求項10】
関心対象の干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築するためのコンピュータプログラムであって、
データプロセッサおよび干渉性散乱コンピュータ断層撮影機器のいずれかで、当該コンピュータプログラムが実行されると、
前記関心対象を透過した一次放射線から、前記関心対象の減衰データを取得する動作と、
取得された前記減衰データに基づいて、散乱放射線データのビーム硬化補正を実施する動作であって、前記散乱放射線データは、前記関心対象から散乱された散乱放射線に基づいている、動作と、
補正された前記散乱放射線データを用いて、前記干渉性散乱コンピュータ断層撮影データを再構築する動作と、
が実行される、コンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−529738(P2007−529738A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503483(P2007−503483)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050904
【国際公開番号】WO2005/091225
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050904
【国際公開番号】WO2005/091225
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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