説明

平板状部材の熱処理炉

【課題】大型の平板状部材であっても、熱処理することができる平板状部材の熱処理炉を提供する。
【解決手段】平板状部材を、トンネル状の炉体1の炉長方向に移送しつつ熱処理を行う平板状部材50の熱処理炉であって、炉体1の両側壁1bから炉内に延出するローラ2を、互いに対向させて、炉長方向に複数、回転自在に配設し、対向するローラ2の先端2a間に、平板状部材50を転支する受けコロ4を配設し、ローラ2及び受けコロ4上に平板状部材50を載せ、ローラ2を一定方向に回転させて、平板状部材50を、炉体1の炉長方向に移送するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプラズマディスプレイパネルや液晶ディスプレイパネルのような大型のフラットパネルに代表される平板状部材の製造に用いられる平板状部材の熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル等のフラットパネルは、ガラスやセラミックスからなる基板上に機能性材料を多層に印刷し、乾燥や焼成などの熱処理を施すことによって製造された平板状部材である。このような平板状部材の熱処理を効率よく行うために、特許文献1に示されるように、従来からローラーハースキルン等の熱処理炉が広く使用されている。
【0003】
このようなローラーハースキルンは、図7に示されるように、炉体122に、多数のセラミックス製のローラ120を、貫通させて一定ピッチで配置した形式のトンネル炉である。各ローラ120は、炉体122外に設けた駆動装置121によって同一方向に回転されるようになっている。平板状部材131をセッター132上に載置した状態で、セッター132を前記ローラ120上に載せて、平板状部材131を搬送するようにしている。炉体122内は予熱帯、乾燥帯や焼成帯、冷却帯などに区分され、バーナやヒータ123等の加熱手段によって炉室内に所定の温度勾配が形成されている。平板状部材131は多数のローラ120によって炉長方向に移送されながら、予熱帯、乾燥帯や焼成帯、冷却帯などを通過する間に所定の温度履歴が与えられ、熱処理される。
【0004】
最近では、製造されるフラットパネルが大型になりつつあることから、炉幅が大きくなり、ローラ120の長さも長くなりつつある。しかしながら、ローラ120はセラミックス製であることから、長尺のローラ120を製作することは困難であるという問題があった。また、ローラ120が長くなるにつれて、ローラ120の中央部分の曲げモーメントも増大することから、ローラ120が撓むことや、破損する可能性があるという問題があった。また、炉体122をメンテナンスする場合に、ローラ120を炉体122から抜き取る必要があるが、ローラ120が長尺である場合には、ローラ120を抜き取るスペースの確保が困難であるという問題があった。
【0005】
そこで、ローラ120の代わりに、炉体122内の床面に、浮上用気体の噴出手段設けて、平板状部材131やセッター132を、前記浮上用気体で浮上させて炉体121内を搬送する熱処理炉が提案させている。しかしながら、このような熱処理炉は、炉体122内の温度が低下することを防止するために、前記浮上用気体を炉体122内の温度と殆ど同じ温度に加熱する必要があり、多大なエネルギーを消費してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、大型の平板状部材131であっても、熱処理することができる熱処理炉の開発が要望されていた。
【特許文献1】特開2007−292404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、大型の平板状部材であっても、熱処理することができる平板上部材の熱処理炉を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、平板状部材を、トンネル状の炉体の炉長方向に移送しつつ熱処理を行う平板状部材の熱処理炉であって、
前記炉体の両側壁から炉内に延出するローラを、互いに対向させて、炉長方向に複数、回転自在に配設し、
前記対向するローラの先端間に、平板状部材を転支する受けコロを配設し、
前記ローラ及び受けコロ上に平板状部材を載せ、前記ローラを一定方向に回転させて、前記平板状部材を、炉体の炉長方向に移送するように構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明の受けコロは、フリーベアリングであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の受けコロは、セラミックスベアリングであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、対向するローラの先端間に、上方に開口した気体吹出口を配設したことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、炉長方向に隣接する受けコロの炉幅方向の位置を変化させて配設したことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、複数の受けコロを、縦長の支持部材に回転自在に列設して受けコロユニットを構成し、
前記受けコロユニットの長手方向を、炉長方向に向けて、炉体内に配設したことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の支持部材はパイプ形状又は箱形状のいずれかであり、
受けコロの上部を、前記支持部材の上部から突出させるとともに、受けコロの上部以外を、前記支持部材内に収納したことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、炉体の床部に、アジャスタボルトを螺設し、このアジャスタボルトを回転することにより、受けコロユニットの高さを調整可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明は、炉体の両側壁から炉内に延出するローラを、互いに対向させて、炉長方向に複数、回転自在に配設したことを特徴とする。このため、ローラを2分割にすることにより長尺なローラを製作する必要がなく、炉幅を広くすることが可能となった。また、炉体をメンテナンスする際の、ローラを抜き取るための広大なスペースを確保する必要が無くなった。
【0017】
また、請求項1に記載の発明は、前記対向するローラの先端間に、平板状部材を転支する受けコロを配設し、前記ローラ及び受けコロ上に平板状部材を載せ、前記ローラを一定方向に回転させて、前記平板状部材を、炉体の炉長方向に移送するように構成したことを特徴とする。このため、多大な曲げモーメントが、ローラに作用することを防止し、ローラの破損を防止することが可能となった。また、ローラが撓むことを防止して、ローラ上に載せられた、板状部材が変形することを防止することが可能となった。また、受けコロでも、平板状部材を転支することにしたので、ローラの長さを短くすることができ、炉体をメンテナンスする際の、ローラを抜き取るためのスペースを、更に減少させることが可能となった。
【0018】
請求項2に記載の発明の受けコロは、フリーベアリングであることを特徴とする。このため、受けコロの偏摩耗を防止することが可能となった。また、フリーベアリングは、摺動抵抗が小さいので、受けコロが平板状部材に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材の受けコロとの接触面に傷が付くこと防止することが可能となった。同様に、ローラが平板状部材に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材が移送されないことや、平板状部材の受けコロとの接触面に傷が付くこと防止することが可能となった。
【0019】
請求項3に記載の受けコロは、セラミックスベアリングであることを特徴とする。セラミックスベアリングは、摺動抵抗が小さいので、受けコロが平板状部材に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材の受けコロとの接触面に傷が付くこと防止することが可能となった。同様に、ローラが平板状部材に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材が移送されないことや、平板状部材の受けコロとの接触面に傷が付くこと防止することが可能となった。
【0020】
請求項4に記載の発明は、対向するローラの先端間に、上方に開口した気体吹出口を配設したことを特徴とする。このため、平板状部材に上向きの力が作用するので、受けコロの摺動抵抗が減少し、受けコロが平板状部材に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材の受けコロとの接触面に傷が付くこと防止することが可能となった。同様に、ローラが平板状部材に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材が移送されないことや、平板状部材の受けコロとの接触面に傷が付くこと防止することが可能となった。また、受けコロの摺動抵抗が減少するので、僅かな力で、平板状部材を移送することが可能となり、ローラを回転させる駆動手段の出力を低下させることが可能となり、ローラを回転させるために消費されるエネルギーを低減することが可能となった。
【0021】
請求項5に記載の発明は、炉長方向に隣接する受けコロの炉幅方向の位置を変化させて配設したことを特徴とする。このため、移送される平板状部材と受けコロとの接触箇所が毎回異なり、平板状部材の損傷を防止することが可能となった。また、平板上部材の幅方向の熱履歴に差が生じることを防止することが可能となった。
【0022】
請求項6に記載の発明は、複数の受けコロを、縦長の支持部材に回転自在に列設して受けコロユニットを構成し、前記受けコロユニットの長手方向を、炉長方向に向けて、炉体内に配設したことを特徴とする。このため、受けコロユニットを炉内で移動させれば、受けコロユニットに、取り付けられた複数の受けコロも一度に移動するので、受けコロの、炉長方向の及び炉幅方向の位置決め作業を容易にすることが可能となった。
【0023】
請求項7に記載の発明の支持部材はパイプ形状又は箱形状のいずれかであり、受けコロの上部を、前記支持部材の上部から突出させるとともに、受けコロの上部以外を、前記支持部材内に収納したことを特徴とする。このため、受けコロの摺動にともなう粉塵が、前記支持部材内に留まり、前記粉塵が炉体内に飛散することを防止し、炉体内を清浄な状態に保つことが可能となった。また支持部材内を吸引する配管を設けることにより、粉塵の飛散をさらに抑制することも可能である。
【0024】
請求項8に記載の発明は、炉体の床部に、アジャスタボルトを螺設し、このアジャスタボルトを回転することにより、受けコロユニットの高さを調整可能に構成したことを特徴とする。このため、受けコロユニットの高さ調整を容易にすることが可能になった。さらにアジャスタボルトを炉外からも調整できる構造とすることにより、炉の使用開始後においても受けコロユニットの高さ調整をすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態(第1の実施形態)を示す。
図1は第1の実施形態の説明図であり、炉体1の断面を示した図である。炉体1は、床壁1a、側壁1b、天井壁1cとから構成され、トンネル状をしている。炉体1は、耐火材や断熱材で構成されている。炉体1には、加熱手段が設けられ、この加熱手段により、炉体1内を昇温するようにしている。加熱手段の一例として、天井ヒータ、床ヒータが含まれる。
【0026】
2は円柱形状のローラである。ローラ2は、耐熱材料であるセラミックスで構成されている。なお、前記セラミックスには、アルミナ(Al)や炭化珪素(SiC)、Si含浸SiCが含まれ、ローラ2をこれらのセラミックスで構成することが好ましい。ローラ2は、炉体1の両側壁1bから、炉内に延出している。両側壁1bから炉内に延出したローラ2の先端2aは、互いに対向している。ローラ2は、炉体1に、炉長方向に対して一定間隔をおいて、複数配設されている。なお、本発明において、「両側壁1bから炉内に延出したローラ2の先端2aは、互いに対向している」とは、両側壁1bから炉内に延出したローラ2の炉長方向の位置が同じ位置だけでなく、炉長方向の位置が同じ位置でない状態も含まれる。
【0027】
ローラ2は、炉外から、側壁1bを貫通して配設されている。ローラ2の基端2bは、炉外に配設されたローラ支持部材3により回転自在に支持されている。ローラ2は、図示しない駆動手段により、同一速度で一定方向に回転するようになっている。前記駆動手段には、サーボモータやインバータモータ等が含まれる。
【0028】
ローラ2の上には、平板状部材50が載置され、一定方向に回転するローラ2により、炉体1の炉長方向に移送されるようになっている。この際に、平板状部材50が、熱処理されるようになっている。なお、前記熱処理には、乾燥や焼成が含まれる。なお、平板状部材50を結晶化ガラス等で構成されたセッターに載せて、このセッターをローラ2上に載せて、平板状部材50を炉体1の炉長方向に移送することにしても差し支えない。前記セッターに、結晶化ガラスを使用すると、セッターが熱膨張し難く、前記セッターに載せられた平板状部材50に与える影響を少なくすることが可能となる。
【0029】
対向するローラ2の両先端2a間には、受けコロ4が配設されている。受けコロ4の炉長方向の位置は、ローラ2の炉長方向の位置とは関係なく配置することが可能である。受けコロ4の上端位置は、ローラ2の上端位置と殆ど同じ位置またはローラ2より僅かに低い位置になっている。本発明では、受けコロ4は、平板状部材50を転支している。本実施形態では、受けコロ4は、円盤形状をしている。本実施形態では、受けコロ4は、耐熱材料であるセラミックスで構成されている。なお、前記セラミックスには、アルミナ(Al)や炭化珪素(SiC)、Si含浸SiC、窒化珪素(Si)が含まれ、受けコロ4をこれらのセラミックスで構成することが好ましい。
【0030】
図2に受けコロユニット7の斜視図を示し、図3の図2のA−A断面の断面図を示す。図2に示されるように、複数の受けコロ4が、縦長の支持部材5に回転自在に列設されていて、受けコロユニット7を構成している。本実施形態では、支持部材5は、角パイプ形状をしている。あるいは、支持部材5は、箱形状であっても差し支えない。支持部材5は、耐熱材料であるセラミックスで構成されている。なお、支持部材5を耐熱金属で構成することにしても差し支えない。
【0031】
図2に示されるように、支持部材5には、支持部材5の幅方向を貫通する軸支穴5aが貫通形成されている。図2や図3に示されるように、支持部材5の上部には、支持部材5の内外を連通する、断面形状が長方形状の連通穴5bが形成されている。受けコロ4を支持部材5内に入れた状態で、受けコロ4の上部を、連通穴5bから支持部材5の外部に露出させている。
【0032】
また、図3に示されるように、受けコロ4の中心には、断面形状が円形状の貫通穴4aが形成されている。受けコロ4の貫通穴4aには、円柱形状のピン6が挿通されている。ピン6は、耐熱材料であるセラミックスで構成されている。ピン6は、支持部材5の軸支穴5aに挿通されている。このように構成することにより、受けコロ4の上部が、支持部材5の連通穴5bから突出するとともに、受けコロ4の上部以外の部分が、支持部材5の内部に収納されている構造となっている。
【0033】
ピン6の外径は、貫通穴4aの内径よりも僅かに小さくなっていて、受けコロ4は、ピン6に対して回転自在になっている。受けコロ4のピン6に対する回転による、受けコロ4の貫通穴4aとピン6の摩耗を減少させるために、受けコロ4とピン6は同材質で構成することが好ましい。受けコロとピンを前記実施例のように別構造とする形式の他に、受けコロ4とピン6を一体で成型する、または接合する構造としても良い。本構造の場合は支持部材5の軸支穴5aの内径をピン6の外形より僅かに大きくする構造となっている。
【0034】
受けコロユニット7は、受けコロユニット7の長手方向を、炉体1の炉長方向に向けて、炉体1内に配設されている。このように、複数の受けコロ4を、支持部材5に列設して、受けコロユニット7を構成することにしたので、炉体1の炉長方向の位置決め作業を容易にすることが可能となる。また、受けコロ4とピン6の摺動部分が、パイプ形状又は箱形状の支持部材5の内部に位置しているので、受けコロ4とピン6の摺動にともなう粉塵が、支持部材5内に留まり、前記粉塵が炉体1内に飛散することを防止し、炉体1内を清浄な状態に保つことが可能となる。また支持部材5内を吸引する配管を設けることにより、粉塵の飛散をさらに抑制することも可能である。
【0035】
図1に示されるように、平板状部材50は、受けコロ4で転支されるようになっている。このように、平板状部材50を、受けコロ4で転支することにしたので、ローラ2のローラ支持部材3で支持されている部分に、多大な曲げモーメントが作用することを防止している。
【0036】
図4に受けコロユニットの高さ調整機構の説明図を示す。図4は炉体1の床壁1b部分の断面を詳細に示した図である。10は外壁材である。外壁材10は、金属製の板材で構成されている。外壁材10の内側には、断熱材11が配設されている。断熱材11は、ファイバー状、またはボード状であり、セラミックファイバー、珪酸カルシウム等で構成されている。外壁材10及び断熱材11により、炉体1の床壁1bが構成されている。
【0037】
外壁材10には、調整ネジ穴10aが螺刻されている。外壁材10の調整ネジ穴10aには、アジャスタボルト12が螺設されている。アジャスタボルト12の先端は、外壁材12を貫通して、断熱材11が配設されている側に突出している。一方で、アジャスタボルト12のネジ頭は、炉体1の外側に露出している。
【0038】
アジャスタボルト12の先端には、板部材13が載置されている。板部材13は、金属やセラミックスで構成されている。板部材13上には、ブロック状の断熱煉瓦14が載置されている。断熱煉瓦14上に、受けコロユニット7が載置されている。アジャスタボルト12を回転させると、板部材13及び断熱煉瓦14が上下に移動し、更に、受けコロユニット7もまた、上下に移動するようになっている。このように構成したので、アジャスタボルト12を回転させるだけで、炉体1外から、受けコロユニット7の高さを微調整することが可能となり、受けコロユニット7の高さ方向の位置決め作業が容易となっている。より好ましい構造として、受けコロユニット直下部の外壁材10を部分的に取り外し可能な構造とし、板部材13及びアジャスタボルトごと炉の外部に取り外し可能とすることにより、受けコロの交換を容易にする構造としてもよい。
【0039】
断熱材11の上で、受けコロユニット7の支持部材5の両側方には、耐火煉瓦15が配設されている。耐火煉瓦15と支持部材5の両側面とは当接している。このように、耐火煉瓦15を支持部材5の両側面に当接させて、ピン6が支持部材5から抜けることを防止している。受けコロユニットの支持部材を固定する方法としては、前述の耐火材の他、耐熱金属製の溝状のものとしてもよい。またピン6が支持部材5から抜けることを防止するため、ピンをその中央部を太くした段付構造としてもよい。
【0040】
(第2の実施形態)
図5に第2の実施形態の説明図を示して、第2の実施形態の説明をする。第2の実施形態では、対向するローラ2の先端2a間に、気体吹出口18aを配設し、気体吹出口18aから吹き出される気体により、平板状部材50に上向きの力を作用させる実施形態である。
【0041】
第2の実施形態では、炉体1の炉幅方向に隣接する受けコロ4間に、気体供給管18を配設している。気体供給管18は、セラミックスや耐熱金属で構成されている。気体供給管18の上部には、上方に開口した気体吹出口18aが形成されている。気体吹出口18aは、炉体1の炉長方向に一定間隔もしくは不均等間隔をおいて複数形成されている。
【0042】
気体供給管18は、図示しない気体供給手段に接続されている。気体供給手段により、気体供給管18に、空気や窒素等の気体が加圧された状態で供給されるようになっている。前記気体供給手段には、ブロワが含まれる。
【0043】
気体供給手段と気体供給管18との間には、加熱手段が設けられている。この加熱手段により、前記気体供給手段により供給された加圧気体が加熱され、気体吹出口18aから加熱気体が吹き出されるようになっている。
【0044】
気体吹出口18aから吹き出される加熱気体の温度は、炉内1の温度に対して0℃〜−40℃以内に制御されるようになっている。この気体吹出口18aから吹き出される、加熱気体の温度の前記した温度に制御することにより、平板状部材50の面内温度差が小さくなるようにしている。気体吹出口18aから吹き出される加熱気体の温度が、炉内1温度に対して40℃以上低い場合には、気体吹出口18aとその周辺の温度差が、大きくなり平板状部材50の温度分布が不均一となり、平板状部材50が反る危険性が生じる。
【0045】
前記加熱手段には、電熱ヒータやバーナが含まれる。気体吹出口18aから、吹き出される気体は平板状部材50と直接接触するので、バーナフレームと加圧気体とを直接接触させる構造は、平板状部材50に異物を付着させるおそれがあるため好ましくない。このため、前記加熱手段が、バーナである場合には、加圧空気の流路を外側からバーナ加熱する構造となっている。なお、前記加熱手段は、炉体1からの排気熱を、熱交換器で回収して、加圧気体の加熱に使用する構造のものであってもよい。
【0046】
気体吹出口18aから加熱気体が吹き出されると、加熱気体が平板状部材50と当接し、平板状部材50に上向きの力が作用する。平板状部材50に上向きの力が作用すると、受けコロ4を下側に押し下げる力が減少するので、受けコロ4の貫通穴4aとピン6との摺動面の摩擦抵抗が減少する。受けコロ4とピン6が一体構造の場合にあっては、ピン6と支持部材5との摺動面の摩擦抵抗が減少する。このため、僅かな力で、平板状部材50を移送することが可能となり、ローラ2を回転させる駆動手段の出力を低下させることが可能となり、ローラ2を回転させるために消費されるエネルギーを低減することが可能となる。
【0047】
また、受けコロ4の貫通穴4aとピン6との摺動面の摩擦抵抗が、受けコロ4とピン6が一体構造の場合にあっては、ピン6と支持部材5との摺動面の摩擦抵抗が減少するので、受けコロ4が平板状部材50に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材50の受けコロ4との接触面に傷が付くこと防止することが可能となる。同様に、平板状部材50がローラ2に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材50が移送されないことや、平板状部材50の受けコロ4との接触面に傷が付くことを防止することが可能となる。
【0048】
ローラーハースキルンでは、平板状部材50の上面に比較して下面にはローラが存在するため、加熱を行いにくかったのであるが、本実施形態では、気体吹出口18aから平板状部材50の下面に、加熱気体を吹き付けることにしたので、平板状部材50の上面及び下面を均等に加熱することが可能となる。
【0049】
平板状部材50は、中央部よりも端部の方が加熱冷却され易いため、例えば、昇温工程では中央部の加熱空気の温度をやや高温とし、冷却工程ではやや低温にするなどの操作が可能となる。
【0050】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、受けコロ4を、フリーベアリング20で構成した実施形態である。図6にフリーベアリング20の説明図を示す。図6に示されるように、フリーベアリング20は、ケーシング21と、メインボール22と、多数の小ボール23とから構成されている。ケーシング21の内面は、半球形状をしていて、上方に開口している。多数の小ボール23は、ケーシング21に受容されている。メインボール22は、小ボール23上に載置されている。メインボール22の外径は、小ボール23の外径よりも大きくなっている。ケーシング21、メインボール22、小ボール23は、セラミックスや耐熱金属で構成されている。
【0051】
第1の実施形態と同様に、フリーベアリング20を縦長の支持部材に列設して、受けコロユニットを構成し、炉体1内に配設することが好ましい。
【0052】
このように、受けコロ4を、フリーベアリング20で構成すると、受けコロ4の偏摩耗を防止することが可能となる。また、フリーベアリング20は、摺動抵抗が小さいので、
受けコロ4が平板状部材50に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材50の受けコロ4との接触面に傷が付くこと防止することが可能となる。同様に、ローラ2が平板状部材50に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材50が移送されないことや、平板状部材50の受けコロ4との接触面に傷が付くことを防止することが可能となる。
【0053】
(第4の実施形態)
第3の実施形態は、受けコロ4を、セラミックス製のボールベアリングで構成した実施形態である。受けコロ4をセラミックス製のボールベアリングで構成すると、ボールベアリングは、摺動性に優れるので、受けコロ4の偏摩耗を抑制することが可能となる。また、ボールベアリングは、摺動抵抗が小さいので、僅かな力で、平板状部材50を移送することが可能となり、ローラ2を回転させる駆動手段の出力を低下させることが可能となり、ローラ2を回転させるために消費されるエネルギーを低減することが可能となる。
【0054】
また、受けコロ4が平板状部材50に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材50の受けコロ4との接触面に傷が付くこと防止することが可能となる。同様に、平板状部材50がローラ2に追従することなく滑ってしまうことを防止することができ、平板状部材50が移送されないことや、平板状部材50の受けコロ4との接触面に傷が付くこと防止することが可能となる。
【0055】
(炉長方向に隣接する受けコロの炉幅方向の位置を変化させた構造)
炉長方向に並列して配設された受けコロ4の炉幅方向の位置が、同じである場合には、平板状部材50は、常に同じ位置で、受けコロ4に転支されることになる。この場合には、平板状部材50は、常に同じ位置で接触するため、平板状部材50の受けコロ4との接触部分が損傷する恐れがある。また、平板状部材50が、同じ位置で、受けコロ4に転支されると、平板状部材50の幅方向の温度履歴が不均一となり、熱処理された平板状部材50の品質が低下してしまう恐れがある。具体的には、熱処理する平板状部材50に縞模様が形成される恐れがある。
【0056】
前記恐れが有る場合には、炉体1の炉長方向に隣接する受けコロ4の炉幅方向の位置を変化させて配設することが好ましい。この構造を採用した場合には、移送される平板状部材50と受けコロ4の接触箇所が毎回異なることになるので、平板状部材50の損傷や、熱処理された平板状部材50の熱履歴に差が生じることを防止することが可能となる。
【0057】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う平板状部材の熱処理炉もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す説明図である。
【図2】受けコロユニットの斜視図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】受けコロユニットの高さ調整機構の説明図である。
【図5】第2の実施形態の説明図である。
【図6】フリーベアリングの説明図である
【図7】従来のローラーハースキルンの説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 炉体
1a 床壁
1b 側壁
1c 天井壁
2 ローラ
2a ローラの先端
2b ローラの基端
3 ローラ支持部材
4 受けコロ
4a 貫通穴
5 支持部材
5a 軸支穴
5b 連通穴
6 ピン
7 受けコロユニット
10 外壁材
10a 調整ネジ穴
11 断熱材
12 アジャスタボルト
13 板部材
14 断熱煉瓦
15 耐火材
18 気体供給管
18a 気体吹出口
20 フリーベアリング
21 ケーシング
22 メインボール
23 小ボール
50 平板状部材
120 ローラ
121 駆動装置
122 炉体
123 ヒータ
131 平板状部材
132 セッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状部材を、トンネル状の炉体の炉長方向に移送しつつ熱処理を行う平板状部材の熱処理炉であって、
前記炉体の両側壁から炉内に延出するローラを、互いに対向させて、炉長方向に複数、回転自在に配設し、
前記対向するローラの先端間に、平板状部材を転支する受けコロを配設し、
前記ローラ及び受けコロ上に平板状部材を載せ、前記ローラを一定方向に回転させて、前記平板状部材を、炉体の炉長方向に移送するように構成したことを特徴とする平板状部材の熱処理炉。
【請求項2】
受けコロは、フリーベアリングであることを特徴とする請求項1に記載の平板状部材の熱処理炉。
【請求項3】
受けコロは、セラミックスベアリングであることを特徴とする請求項1に記載の平板状部材の熱処理炉。
【請求項4】
対向するローラの先端間に、上方に開口した気体吹出口を配設したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の平板状部材の熱処理炉。
【請求項5】
炉長方向に隣接する受けコロの炉幅方向の位置を変化させて配設したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の平板状部材の熱処理炉。
【請求項6】
複数の受けコロを、縦長の支持部材に回転自在に列設して受けコロユニットを構成し、
前記受けコロユニットの長手方向を、炉長方向に向けて、炉体内に配設したことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の平板状部材の熱処理炉。
【請求項7】
支持部材はパイプ形状又は箱形状のいずれかであり、
受けコロの上部を、前記支持部材の上部から突出させるとともに、受けコロの上部以外を、前記支持部材内に収納したことを特徴とする請求項6に記載の平板状部材の熱処理炉。
【請求項8】
炉体の床部に、アジャスタボルトを螺設し、このアジャスタボルトを回転することにより、受けコロユニットの高さを調整可能に構成したことを特徴とする請求項6又は請求項7のいずれかに記載の平板状部材の熱処理炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−186051(P2009−186051A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23881(P2008−23881)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】