説明

平版印刷版の製版方法

【課題】耐刷性及び現像時における処理性に優れ、指紋跡汚れを抑制できる平版印刷版の製造方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物、及び、(D)赤外線吸収剤を含有する感光層を有する平版印刷版原版を画像露光する露光工程、並びに、pHが8.5〜10.8である処理液により非露光部の感光層の除去及び版面親水性化処理を1液で行う1液処理工程を含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷とは、水と印刷インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(感光層、画像形成層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像形成層の画像部となる部分を残存させ、それ以外の不要な画像形成層をアルカリ性現像液又は有機溶剤によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
このように従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像形成層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、環境及び安全上、より中性域に近い現像液での処理や少ない廃液が課題として挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっており、上記課題の解決の要請は一層強くなってきている。
【0004】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート(CTP)技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0005】
上述のように、現像液の低アルカリ化、処理工程の簡素化は、地球環境への配慮と省スペース、低ランニングコストへの適合化との両面から、従来にも増して強く望まれるようになってきている。
例えば、特許文献1には、pH8.5〜11.5の水溶液で処理する現像方法が記載されている。
また、特許文献2の実施例には、pH11.9〜12.1の水溶性樹脂を含有する処理液による1浴処理が記載されている。
また、特許文献3には、赤外光レーザーによる走査露光に適した平版印刷版が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−65126号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第1868036号明細書
【特許文献3】特開2007−12121450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、従来の現像処理工程は、一般にpH10以上のアルカリ水溶液で現像した後、水洗浴にてアルカリ剤を流し、その後、親水性樹脂を主とするガム液で処理するという3つの工程からなっており、そのため自動現像機自体も大きくスペースを取ってしまい、さらに現像廃液、水洗廃液、ガム廃液処理の問題等、環境及びランニングコスト面での課題を残している。
特許文献1においては、水洗及びガム液処理工程を必要としており、環境及びランニングコスト面の課題解決には至っていない。
また、特許文献2においては、pH12のアルカリが版面に付着したままの原版は、作業者に対する安全面で問題がある上に、原版製造後に印刷までの経時が長くなると画像部が次第に溶解して耐刷性や耐薬品性の低下を招く問題があった。
さらに、特許文献2においては、ガム液処理工程を行わない態様であるために、表面保護機能に乏しく、すなわち、非画像部が外的要因で汚れやすく、特に現像後の版の非画像部を素手で持った際に生じるに印刷汚れ(以下、「指紋跡汚れ」ともいう。)が課題であった。
また、特許文献3においては、現像液中にカスが発生しやすく、現像時における処理性に劣るため、現像液の補充が速いサイクルで必要であり、環境及びランニングコスト面の課題解決には至っていない。
【0008】
本発明は、前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、耐刷性及び現像時における処理性に優れ、指紋跡汚れを抑制できる平版印刷版の製版方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は以下の<1>に記載の手段によって解決された。好ましい実施態様である<2>〜<10>と共に以下に記載する。
<1>支持体上に、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物、及び、(D)赤外線吸収剤を含有する感光層を有する平版印刷版原版を画像露光する露光工程、並びに、pHが8.5〜10.8である処理液により非露光部の感光層の除去及び版面親水性化処理を1液で行う1液処理工程を含むことを特徴とする平版印刷版の製版方法、
<2>前記処理液が、緩衝剤、並びに、界面活性剤及び/又は水溶性高分子化合物を含有する水溶液である上記<1>に記載の平版印刷版の製版方法、
<3>前記緩衝剤が、炭酸塩を含む上記<2>に記載の平版印刷版の製版方法、
<4>前記処理液のpHが、8.5以上10.0未満である上記<1>〜<3>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<5>前記処理液が、ヒドロキシカルボン酸のイオンを含む上記<1>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<6>前記ヒドロキシカルボン酸が、カルボキシル基を2つ以上有するヒドロキシカルボン酸である上記<5>に記載の平版印刷版の製版方法、
<7>前記ヒドロキシカルボン酸のイオンが、クエン酸イオン、酒石酸イオン及びリンゴ酸イオンよりなる群から選ばれた少なくとも1種のイオンである上記<5>又は<6>に記載の平版印刷版の製版方法、
<8>前記(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体が、さらに酸基を側鎖に有する上記<1>〜<7>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法、
<9>前記酸基が、カルボキシル基である上記<8>に記載の平版印刷版の製版方法、
<10>前記前記1液処理工程の前及び後のいずれにも水洗工程を施さない上記<1>〜<9>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐刷性及び現像時における処理性に優れ、指紋跡汚れを抑制できる平版印刷版の製版方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の平版印刷版の製版方法は、支持体上に、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物、及び、(D)赤外線吸収剤を含有する感光層を有する平版印刷版原版を画像露光する露光工程、並びに、pHが8.5〜10.8である処理液により非露光部の感光層の除去及び版面親水性化処理を1液で行う1液処理工程を含むことを特徴とする。
また、本発明の平版印刷版の製版方法は、前記1液処理工程の前及び後のいずれにも水洗工程を施さないことが好ましい。
【0013】
(平版印刷版原版)
本発明に用いることができる平版印刷版原版は、支持体上に、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物、及び、(D)赤外線吸収剤を含有する感光層を有する。また、必要に応じて、中間層(下塗り層)等の他の層をさらに有していてもよい。
また、本発明に用いることができる平版印刷版原版は、保護層(以下、「オーバーコート層」ともいう。)を有していてもよいが、保護層を有していないことが好ましい。上記構成の感光層を有することにより、大気中の酸素の影響を防止する保護層を設けなくとも十分に硬化が可能である。
以下、本発明の平版印刷版原版を構成する各要素について説明する。
【0014】
<感光層>
本発明の平版印刷版の製版方法に用いることができる平版印刷版原版における感光層は、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及び(D)赤外線吸収剤を含有する。
また、本発明に用いることができる平版印刷版原版は、ネガ型の平版印刷版原版であり、前記感光層は、ネガ型記録層である(以下、「感光層」を「ネガ型記録層」ともいう。)。
【0015】
前記感光層は、下記に示すような画像部形成機構を有する。
すなわち、(D)赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱及び/又は光により、(A)ラジカル発生剤からラジカルが発生する。そして、発生したラジカルを開始剤として、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーの重合反応が連鎖的に生起し、硬化する。また、バインダーポリマーとして(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を用いているため、(A)成分から発生したラジカルによりスチリルラジカルが生成し、スチリルラジカル同士で再結合し、効果的に架橋を行うため、形成された皮膜は疎水的な特性を有し、耐現像性に優れた表面を得られることから優れた特性の硬化皮膜を形成し得るという機能を有している。
これらのことから、このような(A)〜(D)成分を含む前記感光層は、(A)ラジカル発生剤と、(D)赤外線吸収剤との組み合わせにより、高感度化を達成することができると共に、大気中の酸素の影響を防止するオーバーコート層を設けなくとも十分に硬化が可能であり、かつ、露光後の加熱処理を行う必要のないことが特徴として挙げられる。
以下、感光層に含有される各成分について順次説明する。
【0016】
〔(A)ラジカル発生剤(光又は熱によりラジカルを発生する化合物)〕
本発明に用いることができる光又は熱によりラジカルを発生する化合物(以下、適宜、「ラジカル発生剤」ともいう。)とは、光又は熱によりラジカルを発生し得る化合物であれば、如何なる化合物を用いることができる。
ラジカル発生剤としては、例えば、有機ホウ素塩、オニウム塩化合物、トリハロアルキル置換された化合物(例えば、トリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物として、s−トリアジン化合物及びオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。)、ヘキサアリールビスイミダゾール、チタノセン化合物、ケトオキシム化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
本発明においては、これらのラジカル発生剤の中でも、特に、有機ホウ素塩、トリハロアルキル置換化合物を用いることが好ましく、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物とを組み合わせて用いることがより好ましい。
【0017】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記式(1)で表されることが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
式(1)中、R11、R12、R13及びR14は、各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、又は、複素環基を表す。これらのうちで、R11、R12、R13及びR14のうちの1つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0020】
前記有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンと同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。
オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン及びホスホニウムイオンが挙げられる。
有機ホウ素塩として、有機ホウ素アニオンとアルカリ金属イオン又はオニウムイオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素(本発明においては(D)赤外線吸収剤を指す。)を添加することで、色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、有機ホウ素塩として、カチオン性増感色素の対アニオンを有機ホウ素アニオンとした塩を用いる場合には、前記カチオン性増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は、さらに、アルカリ金属イオン又はオニウムイオンと有機ホウ素アニオンとの塩を併せて含有するのが好ましい。
【0021】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、前記式(1)で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウムイオンが好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとオニウムイオンとの塩であり、具体的には、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。
特に好ましい有機ホウ素塩の具体例(BC−1)〜(BC−6)を下記に示す。
なお、下記具体例中、Meはメチル基を表し、n−Buはn−ブチル基を表し、Phはフェニル基を表し、t−Buはt−ブチル基を表す。
【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
本発明において、他の好ましいラジカル発生剤として、トリハロアルキル置換化合物が挙げられる。トリハロアルキル置換化合物とは、具体的には、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物として、s−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、あるいは、前記トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0025】
トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物の特に好ましい具体例(T−1)〜(T−15)、及び、トリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい具体例(BS−1)〜(BS−10)を下記に示す。なお、下記具体例におけるMeは、メチル基を表す。
【0026】
【化4】

【0027】
【化5】

【0028】
【化6】

【0029】
また、本発明において、他の好ましいラジカル発生剤として、オニウム塩化合物が挙げられる。オニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましく用いられる。例えば、特開2004−252284号公報の段落0043〜0048に記載のスルホニウム塩、段落0050〜0058に記載のヨードニウム塩が挙げられる。
特に反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、及び、スルホニウム塩が好ましく挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において特に好ましい重合開始剤は、反応性、安定性のバランスから電子供与性基を有するヨードニウム塩、又は電子吸引性基を有するスルホニウム塩であり、中でも、カチオン部を有する骨格にアルコキシ基などを2つ以上有するヨードニウム塩、さらに好ましくはアルコキシ基を3つ以上有するヨードニウム塩が最も好ましい。例えば、特開2008−107758号公報の段落0048〜0068に記載のヨードニウム塩が挙げられる。
【0030】
本発明において、他の好ましいラジカル発生剤として、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジクロロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、及び、下記に示す構造を有する化合物等が挙げられる。
【0031】
【化7】

【0032】
上述したような(A)ラジカル発生剤の含有量は、後述する(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体に対して、1〜100重量%の範囲で含まれることが好ましく、1〜40重量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0033】
本発明に用いることができる(A)ラジカル発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。併用する場合におけるラジカル発生剤の総量は、後述する(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体に対して、1〜100重量%の範囲で含まれることが好ましく、1〜40重量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0034】
〔(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体(バインダーポリマー)〕
前記感光層において、バインダーポリマーとして用いられる、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体(以下、適宜、「特定重合体」ともいう。)とは、ビニル基が置換したフェニル基が直接又は連結基を介して主鎖と結合したものである。
また、前記バインダーポリマーは、分子量又は重量平均分子量が1,500以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。
前記連結基としては、特に限定されず、任意の基、原子、又はそれらの複合した基が挙げられる。
また、前記フェニル基は、当該ビニル基の他に、置換可能な基又は原子で置換されていてもよい。
かかる置換可能な基又は原子としては、具体的には、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
さらに、前記ビニル基は、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていてもよい。
上記した、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体は、さらに詳細には、下記式(2)で表される基を側鎖に有する重合体であることが好ましい。
【0035】
【化8】

【0036】
式(2)中、Z1は連結基を表し、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基等を表し、さらにこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。
4は置換可能な基又は原子を表す。
nは0又は1を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
【0037】
式(2)で表される基についてさらに詳細に説明する。
1で表される連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、下記に示す基、及び、複素環構造等の単独又は2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。上記した連結基は、さらに、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0038】
【化9】

【0039】
1で表される連結基を構成する複素環構造としては、ピロール環、ピラゾール環、イ
ミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。これらの複素環構造はさらに、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0040】
また、R4で表される置換可能な基又は原子としては、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。さらに、これらの基又は原子は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0041】
前記式(2)で表される基の具体例(K−1)〜(K−20)を以下に示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
前記式(2)で表される基の中でも、下記に示す構造を有するものが好ましい。すなわち、式(2)におけるR1及びR2が水素原子で、R3が水素原子若しくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。さらに、Z1で表される連結基としては、複素環構造を含むものが好ましく、k1は1又は2であるものが好ましい。
【0047】
本発明における特定重合体は、酸基を側鎖に有することが好ましい。前記酸基は、塩を形成していてもよい。
前記酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、及び、リン酸基等が例示でき、これらの中でも、カルボキシル基が好ましい。
また、本発明における特定重合体は、ビニル基が置換したフェニル基(より詳細には、前記式(2)で表される基)を有するモノマーに加え、カルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む共重合体であることが特に好ましい。
この場合、共重合体組成におけるビニル基が置換したフェニル基(好ましくは式(2)で表される基)を有するモノマーの割合としては、全組成100重量%中に対して、1重量%以上95重量%以下であることが好ましく、10重量%以上80重量%以下であることがより好ましく、20重量%以上70重量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、特定重合体の効果が十分に発揮でき、また、1液処理時における溶解性が十分得られる。
さらに、共重合体中におけるカルボキシル基含有モノマーの割合は、全組成100重量%中に対して、5重量%以上99重量%以下であることが好ましい。上記範囲であると、1液処理時における溶解性が十分得られる。
【0048】
共重合成分として用いられるカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸−2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
また、本発明における特定重合体は、かかる特定共重合体を構成する共重合成分として、側鎖に安息香酸を含有するポリアセタール、カルボキシベンズアルデヒド変性ポリビニルアルコールなどを用いることにより、カルボキシル基を含有させてもよい。
【0049】
本発明におけるビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体は、カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体としてもよい。こうした場合に、共重合体中に組み込むことができ得るモノマーとしては、例えば、
スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体;
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸デシル等のメタクリル酸アルキルエステル類;
メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステルあるいはメタクリル酸アルキルアリールエステル類;
メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類;
メタクリル酸−2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸−2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基を含有するメタクリル酸エステル類;
これらのメタクリル酸エステル類に対応するアクリル酸エステル類;
【0050】
ビニルホスホン酸等のリン酸基を有するモノマー類;
アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基を有するモノマー類;
ビニルスルホン酸及びその塩、アリルスルホン酸及びその塩、メタリルスルホン酸及びその塩、スチレンスルホン酸及びその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類;
4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類;
4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる四級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる四級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩基を有するモノマー類;
アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド誘導体;
アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;
メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;
その他、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等の各種モノマーを、適宜、使用することができる。
【0051】
これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中における式(2)で表される基を有するモノマー及びカルボキシル基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りにおいて、任意の割合で導入することができる。
【0052】
上記のような重合体の分子量は、重量平均分子量で1,500〜100万の範囲であることが好ましく、1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0053】
式(2)で表される基を側鎖に有する重合体の例(P−1)〜(P−13)を下記に示す。なお、構造式中における括弧の右下の数字は、共重合体の全組成100重量%中における各繰り返し単位の重量%を表す。
【0054】
【化14】

【0055】
【化15】

【0056】
【化16】

【0057】
【化17】

【0058】
【化18】

【0059】
本発明に用いることができるバインダーポリマーとしての(B)特定重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層におけるこれら(B)特定重合体の含有量は、画像部の強度(膜性、膜強度)や画像形成性の観点から、感光層の全固形分に対し、10〜90重量%であることが好ましく、20〜80重量%であることがより好ましい。
また、本発明における(B)特定重合体は、効果を損なわない範囲において、従来公知の他のバインダーポリマーと混合して用いることもできる。
【0060】
〔(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物(重合性化合物)〕
本発明において、重合性化合物として用いられる、ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物(以下、「特定モノマー」ともいう。)は、前述した(A)ラジカル発生剤より発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、これらの成分を含む前記感光層は、高感度で、加熱処理を必要としない感光層に好ましく用いることができる。
また、前記特定モノマーは、分子量が1,500未満であることが好ましく、1,200以下であることがより好ましい。
本発明における特定モノマーは、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0061】
【化19】

【0062】
式(3)中、Z2は連結基を表し、R21、R22及びR23はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、さらにこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。
24は置換可能な基又は原子を表す。
2は0〜4の整数を表し、k2は2以上の整数を表す。
【0063】
式(3)で表される化合物についてさらに詳細に説明する。
2の連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R5)−、−C(O)−O−、−C(R6)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環構造、及び、ベンゼン環構造等の単独又は2以上が複合した基が挙げられる。ここでR5及びR6は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。さらに、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0064】
2で表される連結基を構成する複素環構造としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられる。これらの複素環構造はさらに、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0065】
また、R24で表される置換可能な基又は原子としては、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられる。さらに、これらの基又は原子は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0066】
前記式(3)で表される化合物の中でも、下記に示す構造を有するものが好ましい。すなわち、式(3)におけるR21及びR22は水素原子で、R23は水素原子又は炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、k2は2〜10の整数である化合物が好ましい。
以下に式(3)で表される化合物の具体例(C−1)〜(C−11)を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
【0067】
【化20】

【0068】
【化21】

【0069】
【化22】

【0070】
本発明に用いることができる重合性化合物としての(C)特定モノマーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
感光層における前記(C)特定モノマーの添加量は、前記(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体(バインダーポリマー)1重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲で含まれることが好ましく、0.05〜1重量部の範囲で含まれることが特に好ましい。
また、本発明における(C)特定モノマーは、効果を損なわない範囲において、従来公知の他の重合性化合物と混合して用いることもできる。
【0071】
〔(D)赤外線吸収剤〕
本発明に用いることができる赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能及び励起電子を発生する機能を有している。赤外線吸収剤が光を吸収した際、前述した(A)ラジカル発生剤に作用して、(A)ラジカル発生剤が分解し、ラジカルを発生する。
本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1,200nmに吸収極大を有する染料又は顔料であることが好ましい。
【0072】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0073】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等の各公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の各公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の各公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0074】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)又は(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0075】
これらの中でも、染料としては、カチオン性の染料であることが好ましく、カチオン性増感色素であることがよりこのましい。
赤外線吸収剤としての染料の具体例(S−1)〜(S−14)を以下に示すが、これらに限定されるものではない。なお、下記具体例において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0076】
【化23】

【0077】
【化24】

【0078】
【化25】

【0079】
また、ここで例示した赤外線吸収剤(カチオン性増感色素)の対アニオンを、前述したように、有機ホウ素アニオンに置換した赤外線吸収剤も同様に用いることができる。
これらの染料は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記感光層における赤外線吸収剤としての染料の含有量は、感光層1m2当たり、3〜300mgであることが好ましく、10〜200mg/m2であることがより好ましい。
【0080】
本発明において用いることができる顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0081】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0082】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。
表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0083】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがより好ましく、0.1μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光性組成物中における顔料の優れた分散安定性が得られ、また、平版印刷版原版に適用した場合には、均一なネガ型記録層が得られる。
【0084】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0085】
前記感光層におけるこれらの赤外線吸収剤としての顔料の含有量は、感光層中における均一性や、感光層に適用した際における耐久性の観点から、感光層に含まれる全固形分に対し、0.01〜50重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましく、0.1〜10重量%であることがさらに好ましい。
【0086】
前記感光層には、以上の必須成分(A)〜(D)の他に、さらにその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましいその他の成分に関し例示する。
【0087】
〔熱重合禁止剤〕
前記感光層においては、感光層の製造中、あるいは、平版印刷版原版の保存中において、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、すなわち、(C)特定モノマー(重合性化合物)の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが好ましい。
適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
前記感光層における熱重合禁止剤の添加量は、感光層中の全固形分の重量に対して、0.01〜5重量%が好ましい。
また、必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。
前記感光層における高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層中の全固形分の重量に対して、0.5〜10重量%が好ましい。
【0088】
〔着色剤〕
さらに、前記感光層には、その着色を目的として染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。
着色剤としては、染料、顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。
前記感光層における着色剤としての染料及び顔料の添加量は、感光層中の全固形分の重量に対して、0.5〜5重量%が好ましい。
また、染料の場合、対アニオンとしてハロゲンイオンを含まないものが好ましい。
【0089】
〔その他の添加剤〕
前記感光層には、さらに目的に応じて、ホスフィン、ホスホネート、ホスファイト等の酸素除去剤や還元剤、退色防止剤、界面活性剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、帯電防止剤やその他種々の特性を付与する添加剤を使用してもよい。
【0090】
また、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等が挙げられる。
可塑剤は、(B)特定重合体(バインダーポリマー)と(C)特定モノマーとの合計重量に対し、10重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、紫外線(UV)開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
【0091】
さらに、重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィド等に代表される重合促進剤や連鎖移動剤等を添加することができる。それらの具体例としては、例えば、N−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリンなどが挙げられる。
【0092】
前記感光層は、前記各成分等を種々の有機溶剤に溶かして、後述する支持体又は中間層(下塗り層)上に塗布することにより設けられる。
ここで使用する溶媒としては、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独又は混合して使用することができる。
塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50重量%であることが好ましい。
【0093】
前記感光層の被覆量(厚さ)は、主に、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが好ましい。
耐刷性、感度等の観点から、感光層の被覆量は乾燥後の重量で、0.1〜10g/m2の範囲であることが好ましく、0.5〜5g/m2の範囲であることがより好ましい。
【0094】
<支持体>
本発明に用いることができる支持体としては、従来公知の平版印刷版原版に使用される支持体、好ましくは親水性支持体を、特に限定なく使用することができる。
使用される支持体は、寸度的に安定な板状物であることが好ましく、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
これらの表面に対し、必要に応じ親水性の付与や、強度向上等の目的で、適切な公知の物理的、化学的処理を施してもよい。
【0095】
好ましい支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板はさらに好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0096】
アルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10重量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
【0097】
また、本発明に用いることができるアルミニウム支持体の厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができるが、取り扱い性やCTP露光装置内でのジャミングの発生などの観点から、0.25mm〜0.55mmが好ましく、0.3〜0.50mmがより好ましい。
さらに、本発明に好適なアルミニウム支持体は、下記に示すような表面形状を有していることが好ましい。
【0098】
〔アルミニウム支持体の表面形状〕
本発明におけるアルミニウム支持体は、表面形状のファクターである、Ra、ΔS、a45が、それぞれ、下記条件(i)〜(iii)を満たすことが好ましい。
(i) Ra:0.2〜0.40μm
(ii) ΔS:35〜85%
(iii) a45:25〜55%
ここで、Raは、表面粗さを表す。
ΔSは、近似三点法により求められる実面積Sxと、幾何学的測定面積S0とから、下記式により求められる。
ΔS(%)=(Sx−S0)/S0×100
a45は、波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出して得られる傾斜度45゜以上の部分の面積率を表す。
以下、これらの表面形状について詳細に説明する。
【0099】
(i)Raは表面粗さを表す。ここで、アルミニウム支持体の表面粗さ(Ra)とは、アルミニウム圧延方向に対し直角方向の中心線平均粗さ(算術平均粗さ)をいい、蝕針計で測定した粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、それに直交する軸をY軸として、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、下記式で与えられた値をμm単位で表したものである。(Lの決定及び平均粗さの計測は、JIS B 0601に従う。)
【0100】
【数1】

【0101】
一般に保水性を向上させるには、表面粗さを大きくすることが有効であるが、表面粗さを大きくすると局所的に深い凹が生じ易くなり、深い凹部は現像不良の原因となるためポツ残膜が生じやすくなるため、Raは下記に示す範囲であることを要する。
すなわち、Raは、0.20〜0.40μmの範囲であることが好ましく、0.20〜0.35μmの範囲であることがより好ましく、0.25〜0.35μmの範囲であることがさらに好ましい。
【0102】
ΔSは、後に詳述するように、原子間力顕微鏡を用いて支持体表面の50×50μmを512×512点測定して求められる3次元データから、近似三点法により求められる実面積Sxと、幾何学的測定面積(見掛け面積)S0とから、下記式により求められる。
ΔS(%)=(Sx−S0)/S0×100
表面積比ΔSは、幾何学的測定面積S0に対する粗面化処理による実面積Sxの増加の程度を示すファクターである。
【0103】
ΔSが大きくなると、ネガ型記録層との接触面積が大きくなり、結果として耐刷性を向上させることができるため、ΔSは下記に示す範囲であることが好ましい。
すなわち、ΔSは35〜85%の範囲であることが好ましく、40〜85%の範囲であることがより好ましく、40〜80%の範囲であることがさらに好ましい。
【0104】
a45は、後に詳述するように、原子間力顕微鏡を用いて支持体表面の50×50μmを512×512点測定して求められる3次元データから、波長0.2μm以上2μm以下の成分を抽出して得られる傾斜度45゜以上の部分の面積率を表す。
急峻度は、支持体表面の微細な形状のとがり具合を表すファクターである。具体的には、支持体表面の凹凸の中で、一定角度以上の大きさの傾斜を有する面積の実面積に対する割合を表す。
【0105】
傾斜度45゜以上の斜面の面積率(急峻度)a45は、感光層と支持体との密着性を優れたものとし、耐刷性を向上させるためには、より大きくするのが好ましい。一方、非画像部におけるインキの引っ掛かりを抑制し、耐汚れ性を向上させるためには、より小さくするのが好ましい。これらのことから、a45は下記の範囲であることが好ましい。
すなわち、a45は25〜55%の範囲であることが好ましく、30〜55%の範囲であることがより好ましく、30〜50%の範囲であることがさらに好ましい。
【0106】
本発明におけるアルミニウム支持体において、ΔS、a45を求める方法は、以下の通りである。
【0107】
(1)原子間力顕微鏡による表面形状の測定
本発明においては、ΔS、a45を求めるために、まず、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)により表面形状を測定し、3次元データを求める。
測定は、例えば、以下の条件で行うことができる。すなわち、アルミニウム支持体を1cm角の大きさに切り取って、ピエゾスキャナー上の水平な試料台にセットし、カンチレバーを試料表面にアプローチし、原子間力が働く領域に達したところで、XY方向にスキャンし、その際、試料の凹凸をZ方向のピエゾの変位でとらえる。ピエゾスキャナーは、XY方向について150μm、Z方向について10μm、走査可能なものを使用する。カンチレバーは共振周波数120〜150kHz、バネ定数12〜20N/mのもの(SI−DF20、NANOPROBE社製)を用い、DFMモード(Dynamic Force Mode)で測定する。また、求めた3次元データを最小二乗近似することにより試料のわずかな傾きを補正し基準面を求める。
計測の際は、表面の50×50μmを512×512点測定する。XY方向の分解能は1.9μm、Z方向の分解能は1nm、スキャン速度は60μm/secとする。
【0108】
(2)3次元データの補正
ΔSの算出には、上記(1)で求められた3次元データをそのまま用いるが、a45の算出には、上記(1)で求められた3次元データから波長0.2μm以上2μm以下の成分を除去する補正をしたものを用いる。この補正により、平版印刷版原版に用いる支持体のような深い凹凸を有する表面をAFMの探針で走査した場合に、探針が凸部のエッジ部分に当たって跳ねたり、深い凹部の壁面に探針の尖端以外の部分が接触したりして生じるノイズを除去することができる。
補正は、上記(1)で求められた3次元データを、高速フーリエ変換をして周波数分布を求め、次いで、波長0.2μm以上2μm以下の成分を除去した後、フーリエ逆変換をすることにより行う。
【0109】
(3)各ファクターの算出
・ΔSの算出
上記(1)で求められた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形の面積の総和を求め、実面積Sxとする。表面積比ΔSは、得られた実面積Sxと幾何学的測定面積S0とから、下記式により求められる。S0は幾何学的測定面積であり、S0=Lx×Lyで求められ、本発明においてはLx=Ly=50μmである。
ΔS(%)=(Sx−S0)/S0×100
【0110】
・a45の算出
上記(2)で補正して得られた3次元データ(f(x,y))を用い、隣り合う3点を抽出し、その3点で形成される微小三角形と基準面とのなす角を全データについて算出し、傾斜度分布曲線を求め、一方で、該微小三角形の面積の総和を求めて実面積とする。傾斜度分布曲線より、実面積に対する傾斜度45度以上の部分の面積の割合a45を算出する。
【0111】
本発明において、上述した表面形状を有するアルミニウム支持体は、後述の表面処理が施されることで作製することができる。
以下、アルミニウム支持体に施される表面処理について説明する。
【0112】
〔粗面化処理〕
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。さらに、塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及び、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤とでアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤とで表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独又は組み合わせて用いることもできる。
その中でも粗面化に有用に使用される方法は、塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。さらに具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度10A/dm2〜50A/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
【0113】
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。
好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が例示でき、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。
エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。
特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65重量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。
以上のように処理された後、処理面の表面形状のファクターである、Ra、ΔS、a45が、それぞれ、前記条件(i)〜(iii)を満たしていれば、特に方法条件はこれらに限定されない。
【0114】
〔陽極酸化処理〕
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は、硫酸、燐酸、シュウ酸若しくはホウ酸/ホウ酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分は、もちろん含まれていても構わない。さらには第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10,000ppm程度含まれてもよい。
陽極酸化処理の条件は、処理によって作製される陽極酸化皮膜量が、0.5〜10.0g/m2であることが好ましく、1.0〜5.0g/m2であることがより好ましい。
また、通常電解液の主成分となる酸の濃度は、30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度1〜40A/m2の範囲で直流又は交流電解によって処理されることが好ましい。
【0115】
〔親水化処理〕
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。
皮膜の形成量は、Si又はP元素量として、2〜40mg/m2であることが好ましく、4〜30mg/m2であることより好ましい。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
【0116】
前記親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又は、ポリビニルホスホン酸が、1〜30重量%、より好ましくは2〜15重量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施されることが好ましい。
【0117】
前記親水化処理に用いることができるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。
アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第14族金属塩を配合してもよい。
アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。
第14族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
【0118】
アルカリ土類金属塩又は第14族金属塩は、単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用することもできる。
これらの金属塩の使用量は、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5.0重量%であることがより好ましい。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。
さらに、特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び親水化処理を組み合せた表面処理も有用である。
【0119】
<バックコート層>
本発明に用いることができる平版印刷版原版には、支持体の裏面に、必要に応じて、バックコート層が設けられてもよい。
かかるバックコート層としては、特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(OC254、Si(OC374、Si(OC494などの珪素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから与られ
る金属酸化物の被覆層が耐現像性に優れており特に好ましい。
【0120】
(露光工程)
本発明の平版印刷版の製版方法は、支持体上に、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物、及び、(D)赤外線吸収剤を含有する感光層を有する平版印刷版原版を画像露光する露光工程を含む。
【0121】
本発明に用いることができる平版印刷版原版を露光する光源としては、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられ、また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。
中でも、本発明においては、波長750〜1,400nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。
レーザーの出力は、100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。
平版印刷版原版に照射されるエネルギーは、10〜300mJ/cm2であることが好ましい。上記範囲であると、硬化が十分に進行し、また、レーザーアブレーションを抑制し、画像が損傷を防ぐことができる。
【0122】
本発明における露光は、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。
オーバーラップとは、副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表したとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が、0.1以上であることが好ましい。
【0123】
本発明に使用することができる露光装置の光源の走査方式は、特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
【0124】
(1液処理工程)
次に、1液処理工程について詳述する。
本発明の平版印刷版の製版方法は、pHが8.5〜10.8である処理液により非露光部の感光層の除去及び版面親水性化処理を1液で行う1液処理工程を含む。
なお、本発明における「版面親水性化処理」とは、界面活性剤による表面処理、及び/又は、水溶性高分子化合物による表面処理を意味する。また、「ガム引き」ともいう。
通常の処理工程においては、必要により前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥するのに対して、本発明においては、1液で現像処理することができる。
好ましくは、緩衝剤、及び、界面活性剤、及び/又は、水溶性高分子化合物を含有する水溶液を用いることにより、現像と同時にガム引きを行うことができる。よって、後水洗工程は特に必要とせず、1液で現像とガム引きとを行うことができる。現像の後、スクイズローラ等を用いて余剰の処理液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0125】
本発明における1液処理工程は、現像液の供給手段及び擦り部材を備えた自動処理機により好適に実施することができる。
本発明に用いることができる自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開平2−220061号、特開昭60−59351号の各公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像記録後の平版印刷版原版を、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許5148746号、同5568768号、英国特許2297719号の各明細書に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0126】
好ましく使用できる回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版における支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。上記回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号、特開平3−100554号、実公昭62−167253号の各公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
また、ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、及び、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は、20〜400μm、毛の長さは、5〜30mmのものが好適に使用できる。
さらに、回転ブラシロールの外径は、30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は、0.1〜5m/secが好ましい。
また、回転ブラシロールは、必要により、2本以上の複数本用いることが好ましい。
【0127】
回転ブラシロールの回転方向は、平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても逆方向であってもよいが、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが、同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが、逆方向に回転することが好ましい。これにより、非画像部の感光層の除去が、さらに確実となる。さらに、回転ブラシロールを、ブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0128】
1液処理工程のあと、連続的又は不連続的に乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥は熱風、赤外線、遠赤外線等によって行う。
【0129】
本発明の平版印刷版の製版方法において、好適に用いられる自動処理機の構造の1例を図1に模式的に示す。図1に示した自動処理機は、基本的に現像部6と乾燥部10とからなり、平版印刷版原版4は、現像槽20で、非露光部の感光層の除去及びガム引きを同時に行う1液処理工程を行い、乾燥部10で乾燥される。
【0130】
なお、本発明において、擦り処理後の平版印刷版原版を、引き続いて、水洗、乾燥処理、不感脂化処理することも任意に可能である。
不感脂化処理では、公知の不感脂化液を用いることができる。また、1液処理に先立ち、あらかじめ、水洗処理を施し、保護層を除去しておくことも任意に可能である。
【0131】
<処理液>
1液処理工程に使用される処理液(以下、「現像液」ともいう。)は、緩衝剤、並びに、界面活性剤及び/又は水溶性高分子化合物を含有する水溶液であることが好ましい。
前記処理液のpHは、8.5〜10.8であり、8.5〜10.0であることが好ましく、8.5以上10.0未満であることがより好ましく、9.0〜9.8であることがさらに好ましい。
【0132】
本発明に用いることができる現像液は、界面活性剤を含有することが好ましい。
界面活性剤は、アニオン系、ノニオン系、カチオン系、両性のいずれを含有してもよい。
アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類、芳香族スルホン酸塩類、芳香族置換ポリオキシエチレンスルホン酸塩類等が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
【0133】
カチオン系界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0134】
ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、油脂のエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー等や、多価アルコール型のグリセロールの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビトール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ショ糖の脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミン類の脂肪酸アミド等が挙げられる。
【0135】
本発明においては、ポリエチレングリコール型の高級アルコールエチレンオキサイド付加物、芳香族化合物のポリエチレングリコール付加物、ソルビトール及び/又はソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ジメチルシロキサン−エチレンオキサイドブロックコポリマー、ジメチルシロキサン−(プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド)ブロックコポリマー、多価アルコールの脂肪酸エステルがより好ましい。
【0136】
また、水に対する安定な溶解性又は混濁性の観点から、ノニオン系界面活性剤としては、HLB(Hydorophile−Lipophile Balance)値が、6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコーン系等の界面活性剤も同様に使用することができる。
界面活性剤は、単独又は組み合わせて使用することができる。
界面活性剤の現像液中における含有量は、0.01〜10重量%が好ましく、0.01〜5重量%がより好ましい。
【0137】
両性界面活性剤は、界面活性剤の分野においてよく知られているように、アニオン性部位とカチオン性部位とを同一分子内に持つ化合物であり、アミノ酸系、ベタイン系、アミンオキシド系等の両性界面活性剤が含まれる。
現像液に用いることができる両性界面活性剤としては、下記式<1>で表される化合物及び下記式<2>で表される化合物が好ましい。
【0138】
【化26】

【0139】
式<1>中、R8はアルキル基を表し、R9及びR10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、R11はアルキレン基を表し、Aはカルボン酸イオン又はスルホン酸イオンを表す。
式<2>中、R18、R19及びR20はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表す。ただし、R18、R19及びR20の全てが、水素原子であることはない。
【0140】
前記式<1>において、R8、R9又はR10におけるアルキル基、及び、R11におけるアルキレン基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、さらに、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<1>で表される化合物において、R8〜R11の炭素数の総和は、8〜25であることが好ましく、11〜21であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
また、有機溶剤、例えば、アルコール等の溶解助剤を添加することにより、界面活性剤の水系の現像液への溶解性を上げることも可能である。
【0141】
前記式<2>において、R18、R19又はR20におけるアルキル基は、直鎖でも分枝鎖でもよく、また、鎖中に連結基を有していてもよく、さらに、置換基を有していてもよい。連結基としては、エステル結合、アミド結合、エーテル結合などのヘテロ原子を含むものが好ましい。また、置換基としては、ヒドロキシル基、エチレンオキサイド基、フェニル基、アミド基、ハロゲン原子などが好ましい。
式<2>で表される化合物において、R18〜R20の炭素数の総和は、8〜22であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。上記範囲であると、疎水部分が適度であり、水系の現像液への溶解性に優れる。
【0142】
両性界面活性剤の総炭素数は、感光層に用いる材料、とりわけバインダーの性質により影響を受けることがある。親水度の高いバインダーの場合、総炭素数は比較的小さいものが好ましく、用いるバインダーの親水度の低い場合には、総炭素数が大きいものが好ましい傾向にある。
【0143】
現像液に用いることができる両性界面活性剤の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0144】
【化27】

【0145】
【化28】

【0146】
【化29】

【0147】
本発明に用いることができる現像液には、pHの緩衝剤(以下、単に「緩衝剤」又は「pH緩衝剤」ともいう。)を含有させることが好ましい。
pH緩衝剤としては、pH8.5〜10.8に緩衝作用を発揮する緩衝剤であれば、特に限定なく用いることができる。
本発明においてはアルカリ性の緩衝剤が好ましく用いられ、例えば、(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオン、(b)ホウ酸イオン、(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオン、及び、それらの併用などが挙げられる。すなわち、例えば、(a)炭酸イオン−炭酸水素イオンの組み合わせ、(b)ホウ酸イオン、又は、(c)水溶性のアミン化合物−そのアミン化合物のイオンの組み合わせなどが、現像液においてpH緩衝作用を発揮し、現像液を長期間使用してもpHの変動を抑制でき、pHの変動による現像性低下、現像カス発生等を抑制できる。特に好ましくは、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの組み合わせである。
【0148】
(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオンを現像液中に存在させるには、炭酸塩と炭酸水素塩とを現像液に加えてもよいし、炭酸塩又は炭酸水素塩を加えた後にpHを調整することで、炭酸イオンと炭酸水素イオンを発生させてもよい。
炭酸塩及び炭酸水素塩は、特に限定されないが、アルカリ金属塩であることが好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、ナトリウムが特に好ましい。これらは単独でも、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
(b)ホウ酸イオンを現像液中に存在させるには、ホウ酸及び/又はホウ酸塩を現像液に加えた後、アルカリを用いて、あるいはアルカリと酸とを用いて、pHを調整することで、適量のホウ酸イオンを発生させる。
ここで用いるホウ酸及びホウ酸塩は、特に限定されないが、公知のホウ酸及びホウ酸塩を用いることができる。
ホウ酸としては、例えば、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸などが挙げられ、中でもオルトホウ酸及び四ホウ酸が好ましい。ホウ酸は、1種単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
また、ホウ酸塩としては、例えば、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が挙げられ、オルトホウ酸塩、二ホウ酸塩、メタホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩、八ホウ酸塩などが挙げられ、中でもオルトホウ酸塩、四ホウ酸塩、特にアルカリ金属の四ホウ酸塩が好ましい。好ましい四ホウ酸塩として、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム及び四ホウ酸リチウムなどが挙げられ、中でも四ホウ酸ナトリウムが好ましい。ホウ酸塩は、1種単独で使用しても、2種以上併用してもよい。
本発明で用いることができるホウ酸及び/又はホウ酸塩としては、オルトホウ酸、四ホウ酸及び/又は四ホウ酸ナトリウムが特に好ましい。現像液にホウ酸及びホウ酸塩を併用してもよい。
【0150】
(c)水溶性のアミン化合物のイオンは、水溶性アミン化合物の水溶液において発生させることができ、水溶性アミン化合物の水溶液にさらにアルカリ又は酸を加えてもよく、また、もともとアミン化合物の塩になっている化合物を添加することにより水溶液中に含有させることができる。
水溶性のアミン化合物は、特に限定されないが、水溶性を促進する基を有している水溶性アミン化合物が好ましい。該水溶性を促進する基としてカルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、水酸基などが挙げられる。水溶性のアミン化合物は、これらの基を複数合わせ持っていてもよい。
アミン化合物の水溶性をカルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基により促進する場合は、アミノ酸に該当する。アミノ酸は水溶液中で平衡状態にあり、酸基が例えばカルボン酸基であるとき、平衡状態は下記のように表される。本発明におけるアミノ酸とは、下記のBの状態をいい、アミノ酸のイオンとは、下記のCの状態を意味する。Cの状態におけるカウンターイオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
[アミノ酸の平衡状態(酸基がカルボン酸の場合)]
【0151】
【化30】

(例えば、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基などを表し、Rは連結基を表す。)
【0152】
カルボン酸基やスルホン酸基、スルフィン酸基を持つ水溶性のアミン化合物の具体例としては、グリシン、イミノ二酢酸、リシン、スレオニン、セリン、アスパラギン酸、パラヒドロキシフェニルグリシン、ジヒドロキシエチルグリシン、アラニン、アントラニル酸、トリプトフアン等のアミノ酸、スルファミン酸、シクロヘキシルスルファミン酸、タウリン等の脂肪酸アミンスルホン酸、アミノエタンスルフィン酸等の脂肪酸アミンスルフィン酸などが例示できる。これらの中で、グリシン及びイミノ二酢酸が好ましい。
【0153】
ホスホン酸基(ホスフィン酸基も含む)を持つ水溶性のアミン化合物の具体例としては、2−アミノエチルホスホン酸、1−アミノエタン−1,1−ジホスホン酸、1−アミノ−1−フエニルメタン−1,1−ジホスホン酸、1−ジメチルアミノエタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミノペンタメチレンホスホン酸などが例示できる。特に2−アミノエチルホスホン酸が好ましい。
【0154】
水溶性を促進する基として水酸基を持つ水溶性のアミン化合物は、アルキル基に水酸基を有するアルキルアミンを意味し(下記状態B’)、これらのイオンとは、アミノ基のアンモニウムイオンを意味する(下記状態A’)。
【0155】
【化31】

(例えば、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基などを表す。ただし、R1、R2及びR3のうちの少なくとも1つは水酸基を有するアルキル基である。)
【0156】
水酸基を持つ水溶性のアミン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが例示できる。これらの中でも、トリエタノールアミン及びジエタノールアミンが好ましい。アンモニウムイオンのカウンターイオンとしては塩化物イオンが好ましい。
【0157】
pHの調整に用いることができるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、有機アルカリ剤、及び、それらの組み合わせなどを用いることができる。また、酸として、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、硝酸などを用いることができる。このようなアルカリ又は酸を添加することにより、pHを微調整することができる。
【0158】
本発明で用いることができる(a)炭酸イオン及び炭酸水素イオンを含む現像液のpHは、pH8.5〜10.8の範囲にあることが好ましい。pHが8.5以上であると非画像部の現像性を良好することができ、一方pHが10.8以下であれば、空気中の炭酸ガスの影響を受けにくく、炭酸ガスの影響による処理能力の低下を抑制できる。より好ましくはpH8.8〜10.2の範囲であり、特に好ましくはpH9.0以上10.0未満の範囲である。
【0159】
pH緩衝剤として(a)炭酸イオンと炭酸水素イオンとの組み合わせを採用する場合、炭酸イオン及び炭酸水素イオンの総量は、現像液の全重量に対して、0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。総量が0.05mol/L以上であると現像性、処理能力が低下せず、5mol/L以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時、中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0160】
また、アルカリ濃度の微少な調整、非画像部感光層の溶解を補助する目的で、補足的にアルカリ剤、例えば有機アルカリ剤を併用してもよい。
有機アルカリ剤としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等を挙げることができる。これらの他のアルカリ剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0161】
pH緩衝剤として(b)ホウ酸イオンを採用する場合、ホウ酸イオンの総量は、現像液の全重量に対して、0.05〜5mol/Lが好ましく、0.1〜2mol/Lがより好ましく、0.2〜1mol/Lが特に好ましい。ホウ酸塩の総量が0.05mol/L以上であると現像性、処理能力が低下せず、一方5mol/L以下であると沈殿や結晶を生成し難くなり、さらに現像液の廃液処理時の中和の際にゲル化し難くなり、廃液処理に支障をきたさない。
【0162】
pH緩衝剤として(c)水溶性のアミン化合物及びそのアミン化合物のイオンを採用する場合、水溶性のアミン化合物とそのアミン化合物のイオンとの総量は、現像液の全重量に対して0.01〜1mol/Lが好ましく、0.03〜0.7mol/Lがより好ましく、0.05〜0.5mol/Lが特に好ましい。pHが上記範囲であると、現像性、処理能力が低下せず、一方廃液処理が容易である。
【0163】
本発明に用いることができる現像液は、水溶性高分子化合物(以下、「水溶性樹脂」ともいう。)含有すること好ましい。
本発明に用いることができる現像液に含有させることができる水溶性樹脂としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
また、水溶性樹脂の好ましい酸価は、0〜3.0meq/gである。
【0164】
大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば、市販品としてソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10重量%水溶液の粘度が10〜100mPa/secの範囲にあるものである。
【0165】
変性澱粉としては、例えば下記式(III)で示されるものがある。式(III)で示される澱粉としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等のいずれの澱粉も使用できる。これらの澱粉の変性は、酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5〜30の範囲で分解し、さらにアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で作ることができる。
【0166】
【化32】

【0167】
式(III)中、エーテル化度(置換度)は、グルコース単位当たり0.05〜1.2の範囲であり、nは3〜30の整数を表し、mは1〜3の整数を表す。
【0168】
変成澱粉及びその誘導体の例として、ブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉及び無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体などがある。
【0169】
水溶性樹脂の中でも好ましいものとして、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
水溶性樹脂は2種以上を併用することもできる。
水溶性樹脂の処理液中における含有量は、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましい。
【0170】
本発明に用いることができる現像液は、有機酸を含有することが好ましく、ヒドロキシカルボン酸を含有することがより好ましく、カルボキシル基を2つ以上有するヒドロキシカルボン酸を含有することがさらに好ましい。
前記有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩等の塩の形で用いることもできる。
また、本発明に用いることができる現像液は、ヒドロキシカルボン酸のイオン(ヒドロキシカルボキシレートアニオン)を含有することがさらに好ましく、カルボキシル基を2つ以上有するヒドロキシカルボン酸のイオン(ヒドロキシカルボキシレートアニオン)を含有することが特に好ましい。上記範囲であると、指紋汚れの防止効果に優れる。
現像液中において、ヒドロキシカルボン酸をイオン化するには、例えば、ヒドロキシカルボン酸の塩を使用したり、現像液のpHをヒドロキシカルボン酸のpKa値以上にすることにより可能である。また、カルボキシル基を2つ以上有するヒドロキシカルボン酸の場合、現像液中でアニオン化(−COO-化)しているカルボキシル基は、1つであっても、2つ以上であってもよい。
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシカルボン酸である、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、リンゴ酸、及び、乳酸が好ましく挙げられ、カルボキシル基を2つ以上有するヒドロキシカルボン酸である、クエン酸、酒石酸、及び、リンゴ酸がより好ましく挙げられる。
【0171】
本発明で用いることができる現像液には、上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有させることができる。
【0172】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。
湿潤剤の含有量は、現像液の全重量に対して、0.1〜5重量%であることが好ましい。
【0173】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノール等が好ましく使用できる。種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液に対して、0.01〜4重量%の範囲が好ましい。
【0174】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類又はホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
キレート剤は、処理液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。
キレート剤の添加量は、現像液に対して、0.001〜1.0重量%が好適である。
【0175】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLBの5以下等の化合物を使用することができる。これらの中でも、シリコーン消泡剤が好ましい。
また、乳化分散型及び可溶化型等のいずれの消泡剤も使用できる。
消泡剤の含有量は、現像液に対して、0.001〜1.0重量%の範囲が好適である。
【0176】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、”アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)、ガソリン、灯油等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロルベンゼン等)や、極性溶剤が挙げられる。
【0177】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2−エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n−アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0178】
また、上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能である。現像液が有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、溶剤の濃度は40重量%未満が好ましい。
【0179】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。
無機塩の含有量は、現像液の全重量に対して、0.01〜0.5重量%の量が好ましい。
【0180】
前記1液処理工程における非露光部の感光層の除去及びガム引き時の温度は、好ましくは60℃以下、より好ましくは15〜40℃程度である。自動現像機を用いる現像処理においては、処理量に応じて現像液が疲労してくることがあるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0181】
1液処理工程が行われた後、自然乾燥にて現像液を乾燥させてもよいが、温風などによる乾燥工程を設けることが好ましい。
【0182】
本発明においては、上記の通り、露光工程の後、直ちに1液処理工程を行ってもよいが、露光工程と1液処理工程との間に加熱処理工程を設けることもできる。この加熱処理は、耐刷性を向上させ、さらに画像硬化度の版面内での均一性を高める効果があり、その条件はそれら効果のある範囲で適宜設定することができる。
加熱手段としては、慣用の対流オーブン、IR照射装置、IRレーザー、マイクロ波装置、ウィスコンシンオーブン等を挙げることができる。例えば、版面到達温度が70〜150℃の範囲で、1秒〜5分間の間で保持することにより好ましく行うことができる。より好ましくは80℃〜140℃で5秒〜1分間、さらに好ましくは90℃〜130℃で10〜30秒間である。上記範囲であると、上記の効果を効率よく得られ、また、熱による印刷版の変形などの悪影響がない。
また、本発明においては上述の露光工程、及び、必要により加熱処理工程の後に、1液処理工程が施され平版印刷版を得る。露光工程に用いられるプレートセッタ、加熱処理に用いられる加熱処理手段及び1液処理工程に使用される現像装置はお互いに接続されて、自動的に連続処理されることが好ましい。具体的には、プレートセッタと、現像装置がコンベアなどの運搬手段によって結合されている製版ラインが挙げられる。プレートセッタと現像装置との間に加熱処理手段が入っていてもよく、加熱手段と現像装置は一体の装置となっていてもよい。
【0183】
平版印刷版原版が作業環境における周囲の光の影響を受け易い場合は、上記の製版ラインがフィルタ又はカバーなどで遮光されていることが好ましい。
現像により画像形成した後、紫外線光などの活性光線で全面露光を行い、画像部の硬化促進を行ってもよい。
全面露光時の光源としては、例えば、カーボンアーク灯、水銀灯、ガリウム灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、各種レーザー光などが挙げられる。
さらに、十分な耐刷性を得るためには全面露光量としては、10mJ/cm2以上であることが好ましく、100mJ/cm2以上であることがより好ましい。
上記全面露光時に同時に加熱を行ってもよく、加熱を行うことにより、さらに耐刷性の向上が認められる。
加熱装置としては、慣用の対流オーブン、IR照射装置、IRレーザー、マイクロ波装置、ウィスコンシンオーブン等を挙げることができる。
このとき版面温度は、30℃〜150℃であることが好ましく、35〜130℃であることがより好ましく、40〜120℃であることがさらに好ましい。具体的には、特開2000−89478号公報に記載の方法を利用することができる。
このようにして得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0184】
本発明の平版印刷版の製版方法においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、1液処理工程後の画像に対し、全面後加熱、又は、全面露光を行うことが好ましい。1液処理工程後の加熱には、非常に強い条件を利用することができるが、十分な画像強化作用が得られ、かつ、支持体や画像部における熱による損傷を抑制するといった観点から、加熱温度が200〜500℃の範囲で実施されることが好ましい。
【0185】
以上の処理によって得られた平版印刷版は、オフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
なお、印刷に供された平版印刷版の汚れは、プレートクリーナーにより除去することができる。印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来より知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL−1,CL−2,CP,CN−4,CN,CG−1,PC−1,SR,IC(富士フイルム株式会社製)等が挙げられる。
【実施例】
【0186】
以下、本発明を以下の実施例に従って説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
まず、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、及び、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマーの代表的な化合物の合成例を、以下に示す。
【0187】
<合成例1:(B)特定重合体(P−1)の合成>
ビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)150重量部を475重量部のメタノール中に懸濁させ、冷却しながらトリエチルアミン101重量部を徐々に添加し、均一な溶液を得た。室温下に保ちながらp−クロロメチルスチレン(セイミケミカル(株)製、CMS−14)153重量部を10分にわたり滴下し、さらに3時間撹拌を続けた。反応生成物が次第に析出し、撹拌後に氷浴に移し内温を10℃まで冷却した後、吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で1昼夜乾燥することで、収率75%で下記に示す化合物(モノマー)を得た。
【0188】
【化33】

【0189】
上記のモノマー40重量部を、撹拌機、窒素導入管、温度計、還流冷却管を備えた4ツ口フラスコ内にとり、メタクリル酸70重量部及びエタノール159重量部、蒸留水50重量部を加え、撹拌しながら水浴上でトリエチルアミン110重量部を添加した。窒素雰囲気下で内温を70℃になるよう加熱し、この温度でアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を1重量部添加し、重合を開始した。6時間加熱撹拌を行い、その後重合系を室温まで冷却した。一部を取り出し、希塩酸を加えてpHを3程度に調整し、これを水中にあけることで、下記に示す構造の重合体(ポリマー)を得た。
【0190】
【化34】

【0191】
上記の重合体の一部を取り出した残りの重合体溶液中に、1,4−ジオキサン100重量部及びp−クロロメチルスチレンを23重量部加え、室温でさらに15時間撹拌を続けた。その後、濃塩酸(35〜37%水溶液)80〜90重量部を加え、系のpHが4以下になったことを確認後、蒸留水中に全体を移した。析出した重合体を濾過により分離し、蒸留水にて洗浄を繰り返した後、真空乾燥器内で1昼夜乾燥した。これにより、収率90%で目的とする(B)特定重合体(P−1)を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる分子量測定により、重量平均分子量9万(ポリスチレン換算)の重合体であり、さらに、プロトンNMRによる解析により(B)特定重合体(P−1)の構造を支持するものであった。
【0192】
<合成例2:(C)特定モノマー(C−5)の合成例>
チオシアヌル酸89重量部をメタノール1,187重量部に懸濁し、冷却しながら水酸化カリウム84重量部を溶解した30%水溶液を徐々に加え、均一な溶液を得た。これに、室温下でp−クロロメチルスチレン230重量部を内温が40℃を越えないよう徐々に滴下した。添加後まもなく生成物が析出してくるが撹拌を続け、3時間撹拌を行った後に吸引濾過により生成物を分離した。メタノールにより洗浄を行い、真空乾燥器内で一昼夜乾燥を行った後、90%の収率で(C)特定モノマー(C−5)を得た。
【0193】
〔支持体の作製〕
厚さ0.30mm、幅1,030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
【0194】
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0195】
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1重量%水溶液(アルミニウムイオン0.5重量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
【0196】
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1重量%水溶液(アルミニウムイオン0.5重量%、アンモニウムイオン0.007重量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
【0197】
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26重量%、アルミニウムイオン濃度6.5重量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25重量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
【0198】
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5重量%含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm2)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/m2であった。
【0199】
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRa、表面積比ΔS、急峻度a45は、それぞれ、Ra=0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)、ΔS=75%、a45=44%(測定機器;セイコーインスツル(株)製SPA300/SPI3800N)であった。
【0200】
〔下塗り層の形成〕
次に、このアルミニウム支持体表面に下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、100℃10秒間乾燥した。塗布量は5mg/m2であった。
−下塗り層用塗布液−
・ポリビニルホスホン酸 0.024重量部
・メタノール 27重量部
・イオン交換水 3重量部
【0201】
〔感光層の形成〕
次に、下記感光層塗布液を調整し、上記の表面処理を施したアルミニウム支持体に、乾燥後の厚みが1.4μmになるように塗布し、70℃の乾燥器内で5分間乾燥を行い、平版印刷版原版(CTP−1)を得た。
【0202】
<感光層塗布液>
・(A)ラジカル発生剤(BC−6) 2.0重量部
・(A)ラジカル発生剤(T−4) 2.0重量部
・(B)特定重合体(P−1) 10.0重量部
・(C)特定モノマー(C−5) 3.5重量部
・(D)赤外線吸収剤(S−4) 0.5重量部
・エチルバイオレッドのクロライド塩 0.3重量部
・ジオキサン 70.0重量部
・シクロヘキサン 20.0重量部
【0203】
なお、上記記録層塗布液に使用した(A)〜(D)の成分は、それぞれ、前述した具体例として記載されているものを指す。
【0204】
(実施例1〜22、及び、比較例1〜3)
〔露光、1液処理及び印刷〕
上記各平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpi、出力8W、網点面積率50%、外面ドラム回転数206rpm、版面エネルギー100mJ/cm2で露光した。
次いで、下記表1〜3に記載の組成の各処理液をそれぞれ用い、図1に示すような構造の自動現像処理機にて1液処理を実施した。自動現像処理機は、25Lの現像槽を有し、ポリブチレンテレフタレート製の繊維(毛の直径200μm、毛の長さ17mm)を植え込んだ外径50mmのブラシロールを1本有し、搬送方向と同一方向に毎分200回転(ブラシの先端の周速0.52m/sec)させた。処理液の温度は28℃であった。平版印刷版原版の搬送は、搬送速度100cm/minで行った。現像処理後、乾燥部にて乾燥を行った。乾燥温度は80℃であった。
【0205】
〔評価〕
<耐刷性>
得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて、1万枚印刷する毎に、富士フイルム(株)社製マルチクリーナーにより版材の表面からインクを拭き取る作業を繰り返しつつ印刷を行い、刷了枚数を耐刷性の指標とした。印刷枚数を増やしていくと徐々に平版印刷版上に形成された感光層の画像が磨耗しインキ受容性が低下するため、これに伴い、印刷物における画像のインキ濃度が低下する。そこで、インキ濃度(反射濃度)が印刷開始時よりも0.1低下したときの印刷枚数により、耐刷性(作製直後)を評価した。
また、平版印刷版を作製後、温度25℃、湿度60%の環境下で1週間放置した後、上記の条件で印刷を行い、耐刷性(1週間後)を同様に評価した。
【0206】
<処理性>
各平版印刷版原版を上記の条件で1週間かけて500m2現像処理した際に、自動現像機の漕壁に付着したカスの発生状況を目視観察した。処理中は現像液の補充は行わず、蒸発した水の補填のみを行った。カスの発生がない場合:○、カスの発生あるが許容レベルの場合:△、カス発生が顕著な場合:×と評価した。
【0207】
<指紋跡汚れ>
上記の手法により現像した印刷版の非画像部を親指で10秒間押し付け、その版を室温25℃、湿度70%の環境下にて現像した印刷版を合紙等で保護をすることなく、1日間放置した。その版を印刷し、押し付けた場所が印刷汚れにならないか評価した。評価基準を以下に示す。
○:印刷汚れにならない。
△:ポツ状の僅かな印刷汚れが認められるが、許容範囲である。
×:指の跡の印刷汚れになる。
【0208】
以下の表1〜4に実施例1〜22及び比較例1〜3で使用した各処理液の組成を示し、また、実施例1〜22及び比較例1〜3の評価結果を表5に示す。
【0209】
【表1】

【0210】
【表2】

【0211】
【表3】

【0212】
【表4】

【0213】
【表5】

【0214】
なお、表中において使用した市販品は、以下に示す通りである。
ニューコールB13:ポリオキシエチレン β−ナフチルエーテル(オキシエチレン平均数n=13、日本乳化剤(株)製)
ニューコールB4SN(61%水溶液):ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩(日本乳化剤(株)製)
エレミノールMON(47%水溶液):ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム(三洋化成工業(株)製)
pioninD3110:高級アルキルアミンエチレンオキサイド付加物(竹本油脂(株)製)
ペレックスNBL(35%水溶液):アルキルナフタレンスルホン酸塩(花王(株)製)
pioninC157K:アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(竹本油脂(株)製)
タケサーフC−157−L:アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(竹本油脂(株)製)
また、EDTA 4Naは、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩の略記である。
さらに、ヒドロキシアルキル化澱粉は、日澱化学(株)製ベノンJE66を使用した。
【0215】
表5の結果から、本発明の平版印刷版の製版方法によれば、現像処理後の置き版による耐刷性の低下がほとんどなく、また、現像槽中にカスを生じないことが分かる。さらに、素手で取り扱っても指紋汚れを生じない。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】自動現像処理機の構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0217】
4 平版印刷版原版
6 現像部
10 乾燥部
16 搬送ローラ
20 現像槽
22 搬送ローラ
24 ブラシローラ
26 スクイズローラ
28 バックアップローラ
36 ガイドローラ
38 串ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(A)ラジカル発生剤、(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体、(C)ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有する化合物、及び、(D)赤外線吸収剤を含有する感光層を有する平版印刷版原版を画像露光する露光工程、並びに、
pHが8.5〜10.8である処理液により非露光部の感光層の除去及び版面親水性化処理を1液で行う1液処理工程を含むことを特徴とする
平版印刷版の製版方法。
【請求項2】
前記処理液が、緩衝剤、並びに、界面活性剤及び/又は水溶性高分子化合物を含有する水溶液である請求項1に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項3】
前記緩衝剤が、炭酸塩を含む請求項2に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項4】
前記処理液のpHが、8.5以上10.0未満である請求項1〜3のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項5】
前記処理液が、ヒドロキシカルボン酸のイオンを含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項6】
前記ヒドロキシカルボン酸が、カルボキシル基を2つ以上有するヒドロキシカルボン酸である請求項5に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項7】
前記ヒドロキシカルボン酸のイオンが、クエン酸イオン、酒石酸イオン及びリンゴ酸イオンよりなる群から選ばれた少なくとも1種のイオンである請求項5又は6に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項8】
前記(B)ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体が、さらに酸基を側鎖に有する請求項1〜7のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項9】
前記酸基が、カルボキシル基である請求項8に記載の平版印刷版の製版方法。
【請求項10】
前記1液処理工程の前及び後のいずれにも水洗工程を施さない請求項1〜9のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−79081(P2010−79081A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249094(P2008−249094)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】