説明

平版印刷版原版および印刷方法

【課題】取り扱い等による製版工程での傷が発生せず重大なトラブルのない、感度が高く、耐刷力の高く、印刷性能の良好な平版印刷版原版、且つ画像情報に基づきレーザー露光し、現像処理を施さずに印刷することを特徴とする印刷方法、を提供する。
【解決手段】支持体上に親水性層、画像形成層を順次設けてなる平版印刷版原版において、画像形成層に平均粒子直径の異なる2種以上の熱溶融性粒子を有し、平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径をA(μm)、平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子の平均粒子直径をB(μm)とすると4B<A≦30Bであり、且つ平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の内で少なくとも1種は分子量が5000以下であり、少なくとも1種は分子量が10000以上であり、且つ画像形成層の乾燥後の膜厚をC(μm)とすると9B≦C<50Bであることを特徴とする平版印刷版原版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版および印刷方法に関するものであり、詳しくは、ディジタル信号に基づいた画像記録が可能であり、安定した印刷物を得ることができる平版印刷版原版及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷工程は、原稿画像からネガもしくはポジフィルムを作製し、フィルムを介してアルミ砂目支持体上に感光層を有する平版印刷版原版に画像を露光し、アルカリ性現像液で現像処理を行うことで平版印刷版を作製し、これを印刷機に取り付け印刷するという手順で行われてきた。
【0003】
近年、コンピューターの普及に伴い、フィルムを介さずに原稿画像データを直接印刷版に描画するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)技術が普及しつつあり、フィルム作製に要していた時間短縮、コスト削減が可能となってきている。又印刷物のニーズとして、数千枚〜1万枚程度の刷り枚数で多種の高品質画像を印刷する、少部数多品種の傾向が高くなってきた。この為、描画時間が短く、高解像度が得られるヒートモードレーザー記録を用いた刷版作製がCTPの主流となりつつある。
【0004】
CTPの普及と同期して印刷環境もオフィス化が進み、又環境適性の面からもアルカリ現像液を必要としない、更には全く現像処理を必要としない平版印刷版原版が望まれるようになってきた。
【0005】
そして、例えば、親水性結合剤中に分散された熱可塑性粒子を含有する平版印刷版原版を印刷機に取り付け、印刷機上で現像して平版印刷版を作製する方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。これらの技術に依ればアルカリ現像を施すことなく、又現像機も要することなく刷版作製が可能であり、擬似的に現像処理不要の平版印刷版を提供できる。
【0006】
しかしながら、熱溶融性粒子を用いた場合の記録方式は、傷耐性に弱く、傷耐性を確保すると感度、耐刷低下、感度、耐刷確保すると著しく傷低下するというトレードオフ関係にあり、強く改良が望まれていた。
【0007】
熱溶融性粒子を用いた場合の記録方式については、熱溶融性粒子を用いての感度、耐刷性について述べられてはいるものの(特許文献4参照)、取り合いとなる傷耐性については十分なものではなく双方の両立性能が強く望まれていた。
【0008】
又、一方、平版印刷版原版の支持体については、支持体に親水性のアルミ基板を用いず近年プラスチックフィルムを支持体として用い得ることも記載されている。プラスチックフィルムは金属に比較して熱伝導性が低く、画像形成の際のレーザー露光により感熱層において発生する熱を支持体へと拡散させることなく、効率よく画像形成に利用でき、さらに、アルミニウム支持体に比較して安価であるという利点も有している。これらのプラスチックフィルムを支持体に用いた刷版として特開平9−314794号公報には表面をコロナ処理した支持体の使用例が挙げられており、特開平11−245530号公報にはプラズマ処理した支持体が開示されている。
【特許文献1】特開平9−123387号公報
【特許文献2】特開平9−123388号公報
【特許文献3】特開平9−131850号公報
【特許文献4】特開2000−221667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、取り扱い等による製版工程での傷が発生せず重大なトラブルのない、感度が高く、耐刷力の高く、印刷性能の良好な平版印刷版原版、且つ画像情報に基づきレーザー露光し、現像処理を施さずに印刷することを特徴とする印刷方法、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0011】
1.支持体上に親水性層、画像形成層を順次設けてなる平版印刷版原版において、
画像形成層に平均粒子直径の異なる2種以上の熱溶融性粒子を有し、平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径をA(μm)、平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子の平均粒子直径をB(μm)とすると4B<A≦30Bであり、
且つ
平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の内で、少なくとも1種は分子量が5000以下であり、少なくとも1種は分子量が10000以上であり、
且つ
画像形成層の乾燥後の膜厚をC(μm)とすると9B≦C<50Bである
ことを特徴とする平版印刷版原版。
【0012】
2.前記平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子(平均粒子直径:A(μm))は分子量が5000以下であり、平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子(平均粒子直径:B(μm))は分子量が10000以上であることを特徴とする1に記載の平版印刷版原版。
【0013】
3.前記分子量が5000以下である熱溶融性粒子が、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスおよびキャンデリラワックスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする1または2に記載の平版印刷版原版。
【0014】
4.1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像情報に基づきレーザー露光し、機上現像後に印刷することを特徴とする印刷方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、取り扱い等による製版工程での傷が発生せず重大なトラブルのない、感度が高く、耐刷力の高く、印刷性能の良好な平版印刷版原版、且つ画像情報に基づきレーザー露光し、現像処理を施さずに印刷することを特徴とする印刷方法、を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
本発明は、上記請求項を満たすことで、達成されることを初めて見出された。
【0019】
即ち、
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に親水性層、画像形成層を順次設けてなる平版印刷版原版において、
画像形成層に平均粒子直径の異なる2種以上の熱溶融性粒子を有し、平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径をA(μm)、平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子の平均粒子直径をB(μm)とすると4B<A≦30Bであり、
且つ
平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の内で少なくとも1種は分子量が5000以下であり、別の少なくとも1種は分子量が10000以上であり、
且つ
画像形成層乾燥後の膜厚をC(μm)とすると9B≦C<50Bである
ことが特徴であり重要である。
【0020】
即ち、本発明に於いて、4B<A≦30Bであことが重要である。Aは好ましくは4.1B以上28B以下であり、より好ましくは4.2B以上10B以下である。熱溶融性粒子の平均粒子直径の最も大きいもの(A粒子ともいう)の平均粒子直径A(μm)が、平均粒子直径の最も小さいもの(B粒子ともいう)の平均粒子直径B(μm)の4B以上である場合には、「平均粒子直径の最も小さいB粒子自身が外部圧力により変形することで親水層表面に固着し傷発生する」懸念がない。一方、平均粒子直径の最も大きいものの平均粒子直径A(μm)が平均粒子直径の最も小さいものの平均粒子直径B(μm)の30Bよりも小さい場合には、「大きい粒子自身が膜中で保持されにくくなり、外部圧力により主に平均粒子直径の最も大きいもの(A粒子)自身が変形し、親水層表面に固着し傷発生する」懸念がない。熱溶融性粒子の平均粒子直径の最も大きいもの(平均粒子直径:A(μm))と、熱溶融性粒子の平均粒子直径の最も小さいもの(平均粒子直径:B(μm))との、双方が外部圧力により変形しなくなるのは4B<A≦30Bの関係を満たした場合であり、外部圧力により変形しなくなるのは4B<A≦30Bの関係を満たすことが重要である。
【0021】
且つ、本発明に於いて、感度確保の点で平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の少なくとも1種は分子量が5000以下であり、少なくとも1種は10000以上であることが重要である。好ましく、平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の少なくとも1種は分子量が5000以下500以上であり、少なくとも1種は10000以上500000以下であり、より好ましくは、平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の少なくとも1種は分子量が4000以下600以上であり、少なくとも1種は10000以上300000以下である。感度に対してよりセンシティヴな役割を分子量が5000以下の熱溶融性粒子に行わせ、外的圧力による傷発生に対して耐性を持たせるために分子量が10000以上の熱溶融性粒子を用いることが必要である。分子量が5000以下の熱溶融性粒子が含有されていないと低感度になり、逆に分子量が5000未満の熱溶融性粒子のみになると低分子量のため外部圧力に弱く、変形し傷発生する。また、分子量10000以上の熱溶融性粒子のみになると外部圧力の傷には良いものの、分子量が大きいために熱溶融しにくくなり低感度となる。従って、本発明において平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の少なくとも1種は分子量が5000以下であり、少なくとも1種は分子量が10000以上であることが重要であり、このことはことを本発明において初めて見出したものである。
【0022】
且つ、本発明に於いて、画像形成層乾燥後の膜厚C(μm)とすると9B≦C<50Bであることが重要である。膜厚Cは好ましくは9.1B以上45B以下であり、より好ましくは9.2B以上20B以下である。膜厚C(μm)が熱溶融性粒子の平均粒子直径の最も小さいものの平均粒子直径B(μm)の50倍(即ち、50B)以上に大きくなると、熱溶融能力が著しく劣化し、そのことで、感度、耐刷が著しく劣化する。一方、膜厚C(μm)が熱溶融性粒子の平均粒子直径の最も小さいものの平均粒子直径B(μm)の9倍(即ち、9B)より小さくなると、外的圧力に対して耐性が悪くなり傷発生しやすくなる。
【0023】
(支持体)
本発明に用いられる支持体としては、特に大きな制限無く、金属、プラスチックフィルム、金属、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、更にこれら材料を適宜貼り合わせた複合基材等も用いることが出来る。
【0024】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アセテート、ナイロン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【0025】
陽極酸化処理されたアルミニウム板が特に好ましい。
【0026】
アルミニウム板は、純アルミニウム板またはアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板である。アルミニウム合金に含まれる異元素の例には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケルおよびチタンが含まれる。異元素の割合は、10質量%以下であることが好ましい。市販の印刷版用アルミニウム板を用いてもよい。
【0027】
アルミニウム板の厚さは、0.05乃至0.6mmであることが好ましく、0.1乃至0.4mmであることがさらに好ましく、0.15乃至0.3mmであることが最も好ましい。
【0028】
アルミニウム板表面には、粗面化処理を行うことが好ましい。粗面化処理は、機械的方法、電気化学的方法あるいは化学的方法により実施できる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法またはバフ研磨法を採用できる。電気化学的方法としては、塩酸または硝酸などの酸を含む電解液中で交流または直流により行う方法を採用できる。混合酸を用いた電解粗面化方法(特開昭54−63902号公報記載)も利用することができる。化学的方法としては、アルミニウム板を鉱酸のアルミニウム塩の飽和水溶液に浸漬する方法(特開昭54−31187号公報記載)が適している。
【0029】
粗面化処理は、アルミニウム板の表面の中心線平均粗さ(Ra)が0.2乃至1.0μmとなるように実施することが好ましい。
【0030】
粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理を行う。アルカリ処理液としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムの水溶液が一般に用いられる。アルカリエッチング処理の後は、さらに中和処理を行うことが好ましい。
【0031】
アルミニウム板の陽極酸化処理は、支持体の耐摩耗性を高めるために行う。
【0032】
陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質が使用できる。一般には、硫酸、塩酸、蓚酸、クロム酸あるいはそれらの混酸が電解質として用いられる。
【0033】
陽極酸化の処理条件は一般に、電解質の濃度が1乃至80質量%溶液、液温が5乃至70℃、電流密度が5乃至60A/dm2、電圧が1乃至100V、そして、電解時間が10秒乃至5分の範囲である。
【0034】
陽極酸化処理により形成される酸化皮膜量は、1.0乃至5.0g/m2であることが好ましく、1.5乃至4.0g/m2であることがさらに好ましい。
【0035】
陽極酸化処理により形成された酸化皮膜には、さらにシリケート処理を実施して、親水性表面を形成できる。アルカリ金属ケイ酸塩(例、ケイ酸ナトリウム)の水溶液を用いる処理については、米国特許第2714066号、同3181461号、同3280734号および同3902734号の各明細書に記載がある。
【0036】
水溶液中のアルカリ金属ケイ酸塩の濃度は、0.1乃至30質量%が好ましく、0.5乃至15質量%がさらに好ましい。25℃における水溶液のpHは、10乃至13.5であることが好ましい。水溶液の温度は、5乃至80℃が好ましく、10〜70℃がさらに好ましく、15乃至50℃がさらに好ましい。処理時間は、0.5乃至120秒間が好ましい。陽極酸化被膜と水溶液との接触方法は、浸漬またはスプレーによる吹き付けが好ましい。
【0037】
ケイ酸塩の対イオンとなるアルカリ金属は、ナトリウム、カリウムまたはリチウムが好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液は、水酸化物(例、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム)を用いてpHを調整することが好ましい。水溶液に、アルカリ土類金属塩もしくは第IVb族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩は水溶性であることが好ましい。アルカリ土類金属塩の例には、硝酸塩(例、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム)、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩およびホウ酸塩が含まれる。第IVb族金属塩の例には、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウムが含まれる。二種類以上のアルカリ土類金属または第IVb族金属塩を併用してもよい。アルカリ土類金属または第IVb族金属塩の添加量は、0.01乃至10質量%の範囲であることが好ましく、0.05乃至5.0質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0038】
(画像形成層の熱溶融性粒子)
本発明の平版印刷版原版の画像形成層は、熱により融着可能な熱溶融性粒子及び熱により親油性を発現する物質の内から選択して含有することができる。
【0039】
熱により融着可能な熱溶融性粒子としては、ワックス類、アクリル系樹脂、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、合成ゴム類、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂などの水に分散されたラテックスやエマルジョンから得られるものが挙げられる。これらの内その融点が70〜180℃のものが好ましく、表面エネルギーの親水性成分が10dyn/cm2以下であることが好ましい。融点がこの温度より低い場合には、保存時における性能劣化がし易く、この温度より高い場合には画像の強度が得られず耐刷性が劣化し易い。又表面エネルギーがこの範囲であると画像部のインキ着肉性が良好になる。このような点で熱溶融性物質としてはワックス類、アクリル系樹脂、合成ゴム類が特に好ましい。
【0040】
本発明に利用可能なワックス類としてはカルナバワックス、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、ホホバ油、ラノリン、オゾケライト、パラフィンワックス、モンタンワックス類、キャンデリラワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、高級脂肪酸等が挙げられる。又、乳化しやすくするためにこれらのワックスを酸化し、水酸基、エステル基、カルボキシル基、アルデヒド基、ペルオキシド基などの極性基を導入することもできる。
【0041】
熱により融着可能な熱溶融性粒子を含有する画像形成層には、レーザー露光時の粒子の融着性を阻害しない範囲で画像形成層の皮膜性を付与する為に親水性結着剤を含有させてもよい。
【0042】
利用可能な親水性結着剤としては例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリビニルメチルエーテル、又は天然結合剤、例えばゼラチン、多糖類、例えばデキストラン、プルラン、セルロース、アラビアゴム、アルギニン酸が挙げられる。又親水性結着剤は、フェノール性ヒドロキシ基及び/又はカルボキシル基を有する水に不溶性、アルカリ溶解性又は膨潤性樹脂であってもよい。又種々の界面活性剤、コロイダルシリカなども利用できる。
【0043】
熱により親油性を発現する物質としては融点が70〜180℃の熱溶融性物質が利用でき、ワックス類ではカルナバワックス、蜜ろう、鯨ろう、木ろう、ホホバ油、ラノリン、オゾケライト、パラフィンワックス、モンタンワックス類、キャンデリラワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、高級脂肪酸等が、アクリル系樹脂では、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、スチレンなどの一種もしくは2種以上を共重合したものが、又合成ゴム類ではポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、メタアクリル酸エステル−ブタジエン共重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。又その他に、アイオノマー樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等が利用できる。これらの親油化剤は水分散体の形で利用することが塗工のし易さの面で好ましい。又、別の形態のものとして、熱破壊可能な親水性被覆材に覆われている熱架橋剤、熱により解離する保護基により官能基がブロックされた熱架橋剤が挙げられる。これら熱架橋剤は特開平7−1849号、同7−1850号、同9−311443号、同10−6468号、同10−1141168号にマイクロカプセル化された親油性成分として記載されている。
【0044】
(平均粒子直径)
本発明において、熱溶融性粒子の平均粒子直径は、異なる大きさであれば、同一種類でも、別種類でも良く特に制限なく使用して良い。
【0045】
本発明において、平均粒子直径とは粒子郡が径の不均一な多くの粒子から構成される場合に、その粒子郡を代表させる粒子径(存在率の最も多い粒子径)で、その粒子径を平均粒子径と定義する。
【0046】
(熱溶融性粒子分子量)
本発明において、熱溶融性粒子の少なくとも1種は分子量が5000以下、少なくとも1種は分子量が10000以上であることが重要である。
【0047】
分子量違いの熱溶融性粒子は、特にどの種類を用いてもよく、同一種類でも、別種類でも良く特に制限なく使用して良い。
【0048】
分子量5000以下の熱溶融性粒子は特に制限なく用いて良いが、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、キャンデリラワックスが、印刷性能の点で好ましい。
【0049】
(画像形成層の乾燥後の膜厚)
本発明の画像形成層の乾燥後の膜厚を膜厚C(μm)とすると、膜厚C(μm)は、0.9A≦C<4Aであることが印刷性能としてより重要である(但し、Aは最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径)。最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径Aの膜中での保持性、印刷感度、耐刷力の点で上記本範囲であることが重要である。
【0050】
(バインダー樹脂)
平版印刷版原版の親水性層、画像形成層、保護層、のバインダー樹脂としては特に大きな制限なく用いることが出来る。
【0051】
例えば、ポリウレタン、ポリエステル、塩化ビニル系共重合体等の塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリアミド、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルホルマール等のアセタール系樹脂、及びポリビニルアルコール、ゼラチン等の水溶性樹脂等がある。
【0052】
(粒子物)
本発明には粒子物を含んでも良い。
【0053】
粒子物としてはフィラーを挙げることが出来る。
【0054】
カーボンブラック、グラファイト、TiO2、BaSO4、ZnS、MgCO3、CaCO3、ZnO、CaO、WS2、MoS2、MgO、SnO2、Al23、α−Fe23、α−FeOOH、SiC、CeO2、BN、SiN、MoC、BC、WC、チタンカーバイド、コランダム、人造ダイアモンド、ザクロ石、ガーネット、ケイ石、トリボリ、ケイソウ土、ドロマイト等の無機フィラーやポリエチレン樹脂粒子、フッ素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子等の有機フィラーを挙げることができる。
【0055】
フィラーとしては、無機微粒子や有機樹脂粒子を挙げることができ、これらは離型剤を兼ねても良い。この無機微粒子としてはシリカゲル、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸性白土、活性白土、アルミナ等を挙げることができ、有機微粒子としてはフッ素樹脂粒子、グアナミン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリコン樹脂粒子等の樹脂粒子を挙げることができる。
【0056】
・粒子物としてコア−シェル構造を有するフィラーを使用しても良い。
【0057】
コア−シェル構造を有する粒子は、コア粒子表面にシェルとなる部分に粒子を固着させてなる粒子である。
【0058】
コア粒子、シェルとなる部分の粒子は無機粒子でも有機粒子でもよい。
【0059】
コア粒子にシェルとなる粒子を何層にも固着(被覆)させても良い。
【0060】
コア粒子の平均粒径は0.1〜15μmが好ましく、より好ましくは平均粒径1〜10μmである。
【0061】
表面凹凸粒子において、小粒子の平均粒径はコア粒子の平均粒径の1/3以下が好ましく、より好ましくは1/10以下である。表面凹凸粒子の平均粒径は15μmを越えないことが好ましく、また0.1μm以上であることが好ましい。
【0062】
コア粒子の表面に固着する小粒子の被覆度は、任意に選ぶことができる。
【0063】
表面凹凸粒子は、例えば、東レリサーチセンター(株)編「微粒子ポリマーの新展開」に記載のヘテロ凝集法を利用する方法、コア粒子表面からの重合反応による方法、粉体工学会編「粒子設計工学」に記載のハイブリダイザーを用いる乾式凝集攪拌法、等を用いて容易に製造することができる。また、ある種のコア−シェル粒子はコア粒子の表面に小粒子を析出させることにより製造できる。
【0064】
・粒子物として金属原子含有粒子を挙げることが出来る。
【0065】
金属原子含有粒子とは鉄、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、チタン、銀、アルミニウム、金、白金等の金属またはその酸化物等の化合物を総称している。
【0066】
金属原子含有粒子は、強磁性酸化鉄粉末、強磁性金属粉末、立方晶板状粉末等が挙げられる。
【0067】
強磁性酸化鉄としては、γ−Fe23、Fe34、又はこれらの中間酸化鉄でFeOx(1.33<x<1.50)で表されるものを挙げることができる。
【0068】
強磁性金属粉末としては、Fe、Coを始め、Fe−Al系、Fe−Al−Ni系、Fe−Al−Zn系、Fe−Al−Co系、Fe−Al−Ca系、Fe−Ni系、Fe−Ni−Al系、Fe−Ni−Co系、Fe−Ni−Zn系、Fe−Ni−Mn系、Fe−Ni−Si系、Fe−Ni−Si−Al−Mn系、Fe−Ni−Si−Al−Zn系、Fe−Ni−Si−Al−Co系、Fe−Al−Si系、Fe−Al−Zn系、Fe−Co−Ni−P系、Fe−Co−Al−Ca系、Ni−Co系、Fe、Ni、Co等を主成分とするメタル磁性粉末等の強磁性金属粉末が挙げられ、中でもFe系金属粉末が好ましく、例えばCo含有γ−Fe23、Co被着γ−Fe23、Co含有Fe34、Co被着Fe34、Co含有磁性FeOx(4/3<x<3/2)粉末等のコバルト含有酸化鉄系磁性粉末が挙げられる。
【0069】
(親水性層)
本発明で述べている親水性層とは、「印刷時に水とインクの乳化した溶液が来た際、水をより多く取り込むことの出来る層」と定義する。
【0070】
本発明では、支持体と親水性層の間にはその他の層を形成してもよい。例えば、親水性層の接着性を改善する下引き層や、長波長の緩やかな粗さを付与するうねり形成層、親水性層が受ける応力を緩和するクッション層などである。また、これらいずれかの層が光熱変換素材を含有していてもよい。
【0071】
(平版印刷版原版の作製)
本発明の平版印刷版原版は上述した支持体上に画像形成層(感光する層、感光層ともいう)を設けることで作製することができる。
【0072】
画像形成層(感光する層)はバインダー樹脂及び着色剤、必要に応じて潤滑剤、分散剤、帯電防止剤、充填剤、フィラー等と溶媒とを混練して、高濃度の感光層形成組成物を調製し、次いでこれを希釈して塗布用感光層形成組成物とし、支持体上に塗布・乾燥させて形成することができる。
【0073】
画像形成層(感光する層)を形成するための塗料に用いられる有機溶剤としては上記の組成物や金属イオン錯体色素(増感剤)等を溶解又は分散出来るものであれば特に制限は無く、例えばアルコール類(エタノール、プロパノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ)、芳香族類(トルエン、キシレン、クロルベンゼン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ハロゲン系溶剤(クロロホルム、ジクロルベンゼン等)、アミド系溶剤(例えばジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)等を用いることができる。又、着色剤成分の混練分散には二本ロールミル、三本ロールミル、ボールミル、ペブルミル、コボルミル、トロンミル、サンドミル、サンドグラインダー、Sqegvariアトライター、高速インペラー分散機、高速ストーンミル、高速度衝撃ミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、オープンニーダー、連続ニーダー等を用いることができる。
【0074】
支持体上への画像形成層(感光する層)の形成は、例えばエクストルージョン方式の押し出しコータにより塗布乾燥して行うことができ、高解像度の画像を得るため感光層表面の硬さを上げるために、該表面をカレンダー処理してもよい。
【0075】
(印刷方法及び画像露光)
本発明の平版印刷版原版に画像形成する露光光源としては、上記金属イオン錯体色素が感応することのできる光源であれば特に制限なく用いることができる。その中で高解像度を得るためにはエネルギー印加面積が絞り込める電磁波、特に波長が1nm〜1mmの紫外線、可視光線、赤外線が好ましく、このような光エネルギーを印加し得る光源としては、例えばレーザー、発光ダイオード、キセノンフラッシュランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク燈、メタルハライドランプ、タングステンランプ、石英水銀ランプ、高圧水銀ランプ等を挙げることができる。この際加えられるエネルギーは画像形成材料の種類により、露光距離、時間、強度を調整することにより適時選択して用いることができる。
【0076】
本発明の印刷方法に使用するレーザー光源としては一般によく知られているルビーレーザー、YAGレーザー、ガラスレーザーなどの固体レーザー;He−Neレーザー、Arイオンレーザー、Krイオンレーザー、CO2レーザー、COレーザー、He−Cdレーザー、N2レーザー、エキシマーレーザーなどの気体レーザー;InGaPレーザー、AlGaAsレーザー、GaAsPレーザー、InGaAsレーザー、InAsPレーザー、CdSnP2レーザー、GaSbレーザーなどの半導体レーザー;化学レーザー、色素レーザー等を挙げることができ、これらの中でも効率的にアブレートを起こさせるためには、波長が600〜1200nmのレーザーが光エネルギーを熱エネルギーに変換できることから、感度の面で好ましい。
【0077】
本発明の印刷方法では、画像情報に基づいてレーザー露光した後、現像処理を施さずに印刷することを特徴とする。
【0078】
(機上現像)
本発明における機上現像とは、以下内容である。
【0079】
露光済みの平版印刷版用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、平版印刷版用原版の画像形成層の未露光部を除去する方法である。
【0080】
すなわち、平版印刷版用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で現像処理が完了する方式である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0082】
実施例1
〔支持体の作製〕
厚さ0.30mmの材質1Sのアルミニウム板を、塩酸11g/L、酢酸10g/L、アルミ8g/Lを含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が80A/dm2の条件で電解粗面化処理を行った。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は、8回に分割して行ない、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2、合計の処理電気量(陽極時)を320C/dm2とした。また、各回の処理の間に3秒間の休止時間を設けた。
【0083】
電解粗面化後は、50℃に保たれた10質量%リン酸水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマット含めた溶解量が0.65g/m2になるようにエッチングし、水洗した。
【0084】
次いで、20%硫酸水溶液中で、5A/dm2の電流密度で付量2.5g/m2の陽極酸化皮膜を形成させる条件で陽極酸化処理を行ない、さらに水洗した。
【0085】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた0.5質量%のリン酸水素二Na水溶液に15秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、支持体を得た。
【0086】
上述の方法により、支持体の表面形状パラメータRa値を求めた。Ra値は0.38μmであった。
【0087】
〔平版印刷版原版の作製〕
《親水層の塗設》
上記支持体に下記組成の親水層塗布液を用いてバー塗布にて親水層膜厚が2μm(乾燥時)となるように親水層を設けた。
【0088】
親水層塗布液
スノーテックス−S〔日産化学工業株式会社製〕 2.97部
スノーテックス−PSM〔日産化学工業株式会社製〕平均粒径0.085μm
5.03部
シルトンJC−70〔水澤化学工業株式会社製〕平均粒径4.0μm 3.14部
ETB−300〔チタン工業株式会社製〕 14.90部
AMT−08〔水澤化学工業株式会社製〕 0.81部
MP−4540〔日産化学工業株式会社製〕 3.14部
リチウムシリケート35〔日産化学工業株式会社製〕 1.88部
リン酸三ナトリウム・12水〔関東化学株式会社製〕 0.07部
FZ−2161〔日本ユニカー株式会社製〕 0.06部
純水 68部
《画像形成層の塗設》
親水層上に下記組成の画像形成層塗布液を用いて乾燥膜厚0.6μmになるようにバー塗布にて画像形成層を設けて、平版印刷版原版試料1を作製した。
【0089】
画像形成層塗布液
DL−522〔株式会社日本触媒製、平均分子量170.000〕 0.625部
HI−DISPER A−118〔株式会社岐阜セラツク製造所製〕カルナバワックス 熱溶融性粒子、平均粒径0.30μm、分子量1000 2.2部
SE−2636F〔大成ファインケミカル株式会社製〕スチレンアクリルポリマー粒子、熱溶融性粒子、平均粒径0.06μm、分子量50000 1.775部
赤外色素ADS830AT(下記構造) 0.30部
純水 80.3部
イソプロピルアルコール 14.7部
ペノンJE−66〔日澱化学株式会社製〕 0.10部
この時のA=0.30μm、B=0.06μm、C=0.60μmであった。
【0090】
【化1】

【0091】
更に、下記平版印刷版原版試料を作製した。
【0092】
・平版印刷版原版試料2の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=2.50μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料2を作製した。
【0093】
・平版印刷版原版試料3の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=0.80μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料3を作製した。
【0094】
・平版印刷版原版試料4の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=1.10μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料4を作製した。
【0095】
・平版印刷版原版試料5の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=0.20μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料5を作製した。
【0096】
・平版印刷版原版試料6の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=1.50μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料6を作製した。
【0097】
・平版印刷版原版試料7の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子SE−2636Fを、東邦化学工業株式会社製のポリプロピレンエマルジョンHYTEC−P5060、平均粒径0.03μm、分子量30000に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料7を作製した。
【0098】
・平版印刷版原版試料8の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を、株式会社岐阜セラツク製造所製のポリエチレンワックスHI−DISPER A−514、平均粒径0.55μm、分子量1250に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料8を作製した。
【0099】
・平版印刷版原版試料9の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を、株式会社岐阜セラツク製造所製のマイクロクリスタリンワックスHI−DISPER A−206、平均粒径0.50μm、分子量800に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料9を作製した。
【0100】
また、比較として以下の平版印刷版原版試料作製した。
【0101】
・平版印刷版原版試料10の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を、株式会社岐阜セラツク製造所製のポリエチレンワックスHI−DISPER A−475、平均粒径2.0μm、分子量4000に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料10を作製した。
【0102】
・平版印刷版原版試料11の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を、株式会社岐阜セラツク製造所製のポリエチレンワックスHI−DISPER A−212、平均粒径2.0μm、分子量2000に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料11を作製した。
【0103】
・平版印刷版原版試料12の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を、株式会社岐阜セラツク製造所製のポリエチレンワックスHI−DISPER A−110、平均粒径5.0μm、分子量2000に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料12を作製した。
【0104】
・平版印刷版原版試料13の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子SE−2636Fを、株式会社岐阜セラツク製造所製のカルナバワックスHI−DISPER A−118、平均粒径0.3μm、分子量1000に変更し、かつ熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を株式会社岐阜セラツク製造所製のポリエチレンワックスHI−DISPER A−101、平均粒径1.5μm、分子量2000に変更し、画像形成層の膜厚C=3.0μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料13を作製した。
【0105】
・平版印刷版原版試料14の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子SE−2636Fを東邦化学工業株式会社製のアクリルエマルジョン HYTEC−E1000、平均粒径0.2μm、分子量30000に変更し、画像形成層の膜厚C=2.0μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料14を作製した。
【0106】
・平版印刷版原版試料15の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子SE−2636Fを東邦化学工業株式会社製のポリプロピレンエマルジョン HYTEC−P5060、平均粒径0.03μm、分子量30000に変更し、熱溶融性粒子HI−DISPER A−118を東邦化学工業株式会社製のポリエチレン共重合エマルジョン HYTEC−S8512、平均粒径0.15μm、分子量100000に変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料15を作製した。
【0107】
・平版印刷版原版試料16の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=0.30μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料16を作製した。
【0108】
・平版印刷版原版試料17の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層膜厚C=3.50μmに変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料17を作製した。
【0109】
・平版印刷版原版試料18の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、画像形成層の熱溶融性粒子SE−2636Fを、日本ゼオン株式会社製の変性スチレン・アクリルNipol MH5055、平均粒径0.5μm、分子量50000に、HI−DISPER A−118〔株式会社岐阜セラツク製造所製〕カルナバワックス 熱溶融性粒子、平均粒径0.30μm、分子量1000をジョンソンポリマー株式会社製ジョンワックス26、平均粒径0.07μm、分子量4000に、画像形成層膜厚C=0.70μmに、変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料18を作製した。
【0110】
・平版印刷版原版試料19の作製
平版印刷版原版試料1の作製において、熱溶融性粒子、平均粒径0.30μm、分子量1000を日本触媒株式会社製ST200、平均粒径0.25μm、分子量6000に、変更した以外は同様にして平版印刷版原版試料19を作製した。
【0111】
《評価方法》
(平版印刷版原版の露光及び印刷(機上現像))
得られた平版印刷版原版に半導体レーザー光源(発光波長830nm、スポット寸法10μm)の光源で解像度は走査方向、副走査方向ともに2000dpi(dpiとは2.54cm当たりのドットの数を表す。)を用いて175線相当で50%網点画像及びベタ画像を、走査速度を変えて画像面における照射エネルギー量が250mJ/cm2で露光した。
【0112】
露光後の平版印刷版原版を現像処理を行なわずにハイデルGTO印刷機に取り付け、エッチング液としてSEU−3(コニカ(株)製)の45倍水希釈液、インキとしてハイエコー(東洋インキ製造(株)製)を用い、印刷紙として上質紙を用いて印刷を行った。
印刷は、23℃48%相対湿度の環境下で行った。
【0113】
(爪こすり傷耐性)
20人にて平版印刷版原版試料の表面を人差し指の爪の腹でこすり、後、露光、機上現像印刷を行い、印刷50枚目の実害度合いを下記ランクに基づいて評価し、全員のランクを積算した。積算点数の多い方が良好である。
【0114】
5:全く地汚れ無し
4:若干地汚れ有るが実害なし
3:少し地汚れ有り実害性懸念
2:地汚れ有り、実害性あり
1:地汚れ多く、実害性あり
(スクラッチ耐性)
平版印刷版原版試料を新東科学株式会社HEIDON−18を用いて0.1径サファイヤ針で1000mm/minのスピード0〜1000g加重をかけ、膜強度をJIS K 6718に準じた方式で測定評価を行った。数値が大きいほど、膜が強いことになる。
【0115】
(感度)
4000dpi(dpiとは、2.54当たりのドット数を表す。)のライン&スペースの細線が印刷物で完全に再現される露光エネルギーを評価した。露光エネルギーが低いほど高感度である。
【0116】
(異物耐性)
1000枚印刷後の版面の50%の網点画像上に148μmの釣り糸を付着させ、100枚印刷後、148μmの釣り糸を除去し更に100枚後の印刷物の50%網点画像のやられ度合いを以下ランクにて目視評価した。
【0117】
5:全くやられ無し
4:若干やられ有るが実害なし
3:少しやられ有り実害性懸念
2:やられ有り、実害性あり
1:やられ多く、実害性あり
(耐刷性)
印刷物の50%網点が再現されなかった枚数を目視により評価した。枚数が多い方が耐刷性が高く、良好である。
【0118】
結果を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
但し、表1中、
A:平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径(μm)
B:平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子の平均粒子直径(μm)
C:画像形成層の乾燥後の膜厚(μm)
(A):平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子
(B):平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子
表1から明らかなように、本発明の場合には、爪こすり傷耐性、スクラッチ耐性、感度、異物耐性、耐刷性、に優れており、本発明を満たせば印刷適正、性能の良好な平版印刷版原版が得られていることわかる。
【0121】
本発明により、取り扱い等による製版工程での傷が発生せず重大なトラブルのない、感度が高く、耐刷力の高く、印刷性能の良好な平版印刷版原版、且つ画像情報に基づきレーザー露光し、現像処理を施さずに印刷することを特徴とする印刷方法、を提供できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に親水性層、画像形成層を順次設けてなる平版印刷版原版において、
画像形成層に平均粒子直径の異なる2種以上の熱溶融性粒子を有し、平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子の平均粒子直径をA(μm)、平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子の平均粒子直径をB(μm)とすると4B<A≦30Bであり、
且つ
平均粒子直径の異なる熱溶融性粒子の内で、少なくとも1種は分子量が5000以下であり、少なくとも1種は分子量が10000以上であり、
且つ
画像形成層の乾燥後の膜厚をC(μm)とすると9B≦C<50Bである
ことを特徴とする平版印刷版原版。
【請求項2】
前記平均粒子直径の最も大きい熱溶融性粒子(平均粒子直径:A(μm))は分子量が5000以下であり、平均粒子直径の最も小さい熱溶融性粒子(平均粒子直径:B(μm))は分子量が10000以上であることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
【請求項3】
前記分子量が5000以下である熱溶融性粒子が、カルナバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスおよびキャンデリラワックスから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版原版。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の平版印刷版原版を、画像情報に基づきレーザー露光し、機上現像後に印刷することを特徴とする印刷方法。

【公開番号】特開2007−326230(P2007−326230A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−157002(P2006−157002)
【出願日】平成18年6月6日(2006.6.6)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】