説明

平版印刷版原版の現像装置用洗浄組成物および洗浄方法

【課題】本発明は、洗浄特性が著しく向上しており、現像装置に悪影響を及ぼすことなく、平版印刷版原版の現像装置内の付着堆積物を、非常に効率よく除去することができる現像装置用洗浄組成物を提供する。
【解決手段】平版印刷版原版の現像装置用洗浄組成物であって、(a)酸化剤および(b)活性化剤を含むことを特徴とする洗浄組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版の現像装置用洗浄組成物に関し、さらに、当該洗浄組成物を用いる平版印刷版原版の現像装置を洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般商業印刷の分野では、製版フィルムとPS版を用いた製版システム、さらには近年、紫外、可視、赤外などの各種レーザを用いたダイレクト製版システム(「CTPシステム」ともいう)が広く普及している。いずれの版においても、露光され、画像形成された平版印刷版原版の現像処理には現像装置が広く用いられている。
【0003】
平版印刷版原版の現像処理では、背景領域(非画像領域)は現像液によって溶解され、除去され、画像領域が残される。現像装置で、長期間現像処理を続けると、現像液に溶解された平版印刷版原版の感光層成分が一部析出し、現像装置の現像槽内の壁面や搬送ロール、現像液の循環経路の壁面に付着し、シャワーノズルや循環ポンプが詰まって現像液が正常に循環されなくなる場合がある。このため、従来、現像装置を定期的に洗浄することが行われている。
【0004】
従来、現像装置の現像槽内の壁面や搬送ロールに付着した付着物を取り除く方法としては、市販のクリームクレンザー等を利用し、作業者が手作業で付着物を取り除いていたが大変な労力を必要とし、現像装置内の部材を損傷する恐れがあり、また循環経路内や循環ポンプの洗浄まで実施することは困難であった。また、研磨剤の残留や洗剤の泡立ちの問題があった。
現像装置の洗浄に用いられる専用の洗浄剤としては、水、有機溶剤、及び界面活性剤の混合物が知られている。
さらに洗浄効果を高めるために、特開2008−83224号公報では、現像工程で掻き落とされ、現像槽内の壁面や搬送ロール、現像液の循環経路の壁面に付着した感光層を除去するために、アルカノールアミンを洗浄剤に添加することが提案されている。
【0005】
特開2001−255667号公報では、チタノセン化合物を使用した光重合系印刷版を処理する現像装置の現像浴に析出する不溶性化合物を除去するために、キレート剤、n−アルカン酸又はその塩を、洗浄剤に添加することが提案されている。
【0006】
特開平10−3172号公報では、長時間運転の現像装置の現像液からの析出物を除去するために、塩素酸、次亜塩素酸、硝酸、亜硝酸、過酸化水素等の酸化剤を含む洗浄液を用いることが提案されている。
【0007】
特開平9−151394号公報では、現像装置の現像液からの析出物を除去するために、金属イオン封鎖剤、研磨剤、またはフッ素を含有する界面活性剤をそれぞれ含む各種の洗浄液を用いることが提案されている。
【0008】
特開平4−131856号公報では、現像装置の現像液からの析出物を除去するために、フッ素系界面活性剤及びキレート剤及びアルカリ性無機化合物又はアルカリ性を示す有機化合物を含有する水溶液からなる洗浄液を用いることが提案されている。
【0009】
特開平1−310356号公報では、PS版の現像装置の現像液からの析出物を除去するために、弗化水素酸もしくは弗酸塩を含有する水溶液からなる洗浄液を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−83224号公報
【特許文献2】特開2001−255667号公報
【特許文献3】特開平10−3172号公報
【特許文献4】特開平9−151394号公報
【特許文献5】特開平4−131856号公報
【特許文献6】特開平1−310356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような従来提案されている感光性平版印刷版原版の現像装置用の洗浄剤はいずれも、現像液からの析出物を除去することを目的としている。現像処理において、一旦は現像液に溶解した感光性平版印刷版原版の可溶性成分が、長期間、版の現像を繰り返した後に、現像液の濃度変化により析出し、現像装置の種々の場所に付着することは、よく知られている。しかし、現像液から可溶性成分が析出するより以前に、現像装置のパイプや循環ポンプの内側に汚れの付着が認められる場合がある。また、上述した先行技術文献に提案された洗浄剤を用いても、依然として除去されない付着物が存在する。
【0012】
本願発明者は、これらの付着物の主な成分が、感光性平版印刷版原版の画像記録層に用いられている色素であることを見出した。現像処理では、背景領域(非画像領域)は現像液によって溶解される。しかし、感光性平版印刷版原版の感光膜中に含まれる色素等は、その現像液に対する難溶性のため、現像装置の現像槽内壁、パイプや循環ポンプの内側に付着し易い。このように付着した成分は、上記列挙した従来技術の洗浄剤では十分に除去することができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題点は、(a)酸化剤および(b)活性化剤を含むことを特徴とする、平版印刷版原版の現像装置用洗浄組成物を用いることにより解決される。
【0014】
また、本発明の上記洗浄組成物は、(c)第四級アンモニウムハロゲン化物をさらに含むことを特徴とする。
【0015】
本発明は、上記の洗浄組成物を用いることを特徴とする、平版印刷版原版の現像装置およびその部材の洗浄方法も提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の洗浄組成物は、洗浄特性が著しく向上しており、現像装置に悪影響を及ぼすことなく、平版印刷版原版の現像装置内の付着堆積物を、非常に効率よく除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の洗浄組成物は、(a)酸化剤および(b)活性化剤を必須の成分として含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の洗浄組成物に用いることができる酸化剤の例としては、いわゆる酸素系漂白剤や塩素系漂白剤に一般的に用いられている化合物である。このような酸化剤としては、過酸化水素、過炭酸塩、過ホウ酸塩、過燐酸塩、過珪酸塩、モノ過硫酸塩などの無機の過酸とその塩、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウムなどの金属過酸化物、そのほか過マンガン酸塩や尿素・過酸化水素付加物等が好ましい。この中でも過炭酸ナトリウムが特に好ましい。過炭酸ナトリウムは、炭酸ナトリウムと過酸化水素に容易に分解され、過酸化水素の活性酸素が酸化力を提供する。
【0019】
本発明の洗浄組成物には、更に、塩素酸、亜塩素酸、次亜塩素酸などに代表される塩素のオキソ酸およびその塩や、硝酸、亜硝酸およびそれらの塩、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸などのハロゲン化イソシアヌル酸およびその塩、サラシ粉等も酸化剤として用いることができる。これらの酸化剤の中で次亜塩素酸ナトリウムは、いわゆる塩素系漂白剤として一般に用いられており、比較的取り扱いが容易なので本発明においても用いることができる。
【0020】
酸化剤の含有量としては、洗浄組成物の全量に対して0.1質量%〜30質量の範囲が好ましく、特に0.5質量%〜10質量%の範囲が好ましい。酸化剤の量が0.1質量%未満であると、十分な洗浄効果が得られないため好ましくない。また、酸化剤の量が30質量%を超えると、系の均一性が損なわれる恐れがあり好ましくない。
【0021】
本発明の洗浄組成物は、(a)酸化剤と一緒に(b)活性化剤を含むことが必須である。本明細書で用いられる「活性化剤」とは、酸化剤と一緒に用いて、活性酸素の発生を助ける物質である。
【0022】
本発明における活性化剤の役割は、強い酸化力を有する過カルボン酸を提供できることである。例えば、酸化剤の例として挙げた過炭酸ナトリウムの分解によって生成される過酸化水素は比較的弱い酸化力しか提供しないが、活性化剤としての、例えば、グリセロールトリアセテートと共存すると、過カルボン酸が生成される。この過カルボン酸がさらに活性酸素を発生し、付着堆積物に作用し、分解除去すると考えられる。
【0023】
本発明に係る活性化剤としては、酸化剤と反応し、過カルボン酸を提供することができる化合物であれば、いずれの化合物も用いることができ、具体的には、O−アシル化合物およびN−アシル化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、ウンデカノイルオキシベンゼンスルホン酸、ウンデカノイルオキシ安息香酸、オクタノイルオキシベンゼンスルホン酸、オクタノイルオキシ安息香酸、デカノイルオキシベンゼンスルホン酸、デカノイルオキシ安息香酸、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸、ドデカノイルオキシ安息香酸、ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸、ノナノイルオキシ安息香酸、3,5,5-トリメチルヘキサノイルオキシベンゼンスルホン酸、3,5,5-トリメチルヘキサノイルオキシ安息香酸およびその塩、ウンデカノイルオキシベンゼン、オクタノイルオキシベンゼン、デカノイルオキシベンゼン、ドデカノイルオキシベンゼン、ノナノイルオキシベンゼン、3,5,5−トリメチルヘキサノイルオキシベンゼン、グリセロールトリアセテート、ペンタアセチルグルコース、テトラアセチルエチレンジアミン、テトラアセチルグルコールウリル、そして置換又は無置換のベンゾイルカプロラクタム、ヘキサノイルカプロラクタム、ホルミルカプロラクタム、ブタノイルカプロラクタム、オクタノイルカプロラクタム、ノナノイルカプロラクタム、デカノイルカプロラクタム、ウンデセノイルカプロラクタム、アセチルカプロラクタム、プロパノイルカプロラクタム、ペンタノイルカプロラクタム等を挙げることができる。この中で、グリセロールトリアセテートおよびペンタアセチルグルコースなどが特に好ましい。
【0024】
活性化剤の含有量としては、洗浄組成物の全量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、特に0.2質量%〜10質量%の範囲が好ましい。活性化剤の量が0.1質量%未満であると、十分な洗浄効果が得られず好ましくない。また、活性化剤の量が20質量%を超えると、系の均一性を損なう恐れがあり好ましくない。
【0025】
本発明において、(a)酸化剤と(b)活性化剤との配合割合は、任意の割合で使用可能であるが、モル比で40:1〜1:2、特に有利には20:1〜1:1とするのが好ましい。この範囲を逸脱すると、効率的な付着堆積物の除去が得られにくくなる傾向がある。
【0026】
本発明の洗浄組成物は、(a)酸化剤、(b)活性化剤に加えて、(c)第四級アンモニウムハロゲン化物をさらに含むことが好ましい。第四級アンモニウムハロゲン化物を本発明の洗浄組成物に用いると洗浄特性を著しく向上させることが分かった。
【0027】
本発明の洗浄組成物に用いることができる第四級アンモニウムハロゲン化物は、第四級アンモニウム塩化物として、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、(2-メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロライド、(3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、(3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムクロライド、アセチルコリンクロライド、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、ベンゾイルコリンクロライド、ベンジルセチルジメチルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロライド、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、β-メチルコリンクロライド、カルバミルコリンクロライド、クロロコリンクロライド、コリンクロライド、ジアリルヂメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロライド、DL-カルニチンハイドロクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチルアセトヒドラジドアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサメトニウムクロライド、ラウロイルコリンクロライド、メタコリンクロライド、メタクロイルコリンクロライド、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド、N-ベンジルシンコニジニウムクロライド、N-ベンジルシンコニニウムクロライド、N-ベンジルキニジニウムクロライド、N-ベンジルキニニウムクロライド、n-デシルトリメチルアンモニウムクロライド、n-オクチルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリエチルアンモニウムクロライド、ホスホコリンクロライドカルシウム塩、ホスホコリンクロライドナトリウム塩、スタキドリン塩酸塩、スクシニルコリンクロライド、テトラアミルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラプロピルアンモニウムクロライド、トリメチルフェニルアンモニウムクロライド、トリメチルステアリルアンモニウムクロライド、トリメチルテトラデシルアンモニウムクロライド、トリメチル[2,3-(ジオレイルオキシ)プロピル]アンモニウムクロライド、トリメチル[3-(トリエトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0028】
第四級アンモニウムフッ化物としては、テトラブチルアンモニウムフルオライド、テトラエチルアンモニウムフルオライドなどが挙げられる。
【0029】
第四級アンモニウム臭化物としては、(フェロセニルメチル)ドデシルジメチルアンモニウムブロマイド、(フェロセニルメチル)トリメチルアンモニウムブロマイド、1,1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン] ジブロマイド、1,1'-(デカン-1,10-ジイル)ビス[4-アザ-1-アゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン] ジブロマイド、3-(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、アセチルコリンブロマイド、ベンゾイルコリンブロマイド、ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロマイド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロマイド、ブロモコリンブロマイド、コリンブロマイド、デカメトニウムブロマイド、デシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ジラウリルジメチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジミリスチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジオクチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジパルミチルアンモニウムブロマイド、ジメチルジステアリルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヘキサメトニウムブロマイド、ヘキシルジメチルオクチルアンモニウムブロマイド、ヘキシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ホマトロピンメチルブロマイド、メタコリンブロマイド、n-オクチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ネオスチグミンブロマイド、フェニルトリメチルアンモニウムブロマイド、スコポラミンメチルブロマイド、テトラ(デシル)アンモニウムブロマイド、テトラ-n-オクチルアンモニウムブロマイド、テトラアミルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラヘプチルアンモニウムブロマイド、テトラヘキシルアンモニウムブロマイド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラプロピルアンモニウムブロマイド、トリメチルステアリルアンモニウムブロマイド、トリメチルビニルアンモニウムブロマイド、バレタメートブロマイドなどが挙げられる。
【0030】
第四級アンモニウムヨウ化物としては、(2-ヒドロキシエチル)トリエチルアンモニウムヨーダイド、(フェロセニルメチル)トリメチルアンモニウムヨーダイド、1,1-ジメチル-4-フェニルピペラジニウムヨーダイド、3-(トリフルオロメチル)フェニルトリメチルアンモニウムヨーダイド、アセチルコリンヨーダイド、アセチルチオコリンヨーダイド、ベンゾイルコリンヨーダイド、ベンゾイルチオコリンヨーダイド、ベンジルトリエチルアンモニウムヨーダイド、β-メチルコリンヨーダイド、ブチリルコリンヨーダイド、ブチリルチオコリンヨーダイド、デカメトニウムヨーダイド、エチルトリメチルアンモニウムヨーダイド、エチルトリプロピルアンモニウムヨーダイド、O-β-ナフチルオキシカルボニルコリンヨーダイド、フェニルトリエチルアンモニウムヨーダイド、テトラ-n-オクチルアンモニウムヨーダイド、テトラアミルアンモニウムヨーダイド、テトラブチルアンモニウムヨーダイド、テトラエチルアンモニウムヨーダイド、テトラヘプチルアンモニウムヨーダイド、テトラヘキシルアンモニウムヨーダイド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、テトラプロピルアンモニウムヨーダイド、トリメチルフェニルアンモニウムヨーダイドなどが挙げられる。
【0031】
第四級アンモニウムハロゲン化物の含有量としては、洗浄組成物の全量に対して0.1質量%〜20質量%の範囲が好ましく、特に0.2質量%〜10質量%の範囲が好ましい。第四級アンモニウムハロゲン化物の量が0.1質量%未満であると、十分な洗浄効果が得られず好ましくない。また、第四級アンモニウムハロゲン化物の量が20質量%を超えると、系の均一性を損なう恐れがあり好ましくない。
【0032】
本発明の洗浄組成物は、有機溶剤を含むことが望ましい。この有機溶剤は、洗浄組成物を構成する他の成分を溶解すると共に、付着堆積物を溶解するための媒体としての機能を果たす。有機溶剤は、何れの有機溶剤も本発明の洗浄組成物に用いることができる。
【0033】
有機溶剤としては、たとえば、2,2,4-トリメチルペンタン、2-メチルブタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、n-オクタン、ペンタン等の脂肪族系溶媒、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ベンゼン、m-キシレン、o-キシレン、p-キシレン、トルエン、メシチレン等の芳香族系溶媒、1-ブタノール、1-オクタノール、1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール、2-プロパノール、エタノール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、メタノール、2-メトキシエタノール、1-フェニルエタノール、2-フェニルエタノール、3-フェニルプロパノール、1,4-フェニルブタノール、2,2-フェニルブタノール、1,2-フェノキシエタノール、2-ベンジルオキシエタノール、o-メトキシベンジルアルコール、m-メトキシベンジルアルコール、p-メトキシベンジルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール、2-メチルシクロヘクサノール、4-メチルシクロヘクサノール、3-メチルシクロヘクサノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル等のアルコール系溶媒、2-メトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、エチルアセテート、イソアミルアセテート、ギ酸エチル、ギ酸メチル、シュウ酸ジエチル等のエステル系溶媒、2-ブタノン、3-ペンタノン、4-メチル-2-ペンタノン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、1,1,2-トリクロロトリフルオロエタン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,1,1-トリクロロエタン、1-クロロブタン、ブロモホルム、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、ジ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエテール、エチレングリコールジメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、ピリジン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ピペリジン等のアミン系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒、ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ系溶媒、その他、二硫化炭素、ジメチルスルホキシド、スルホラン等を挙げることができる。これらの有機溶剤を1種、又は2種以上併用することができる。有機溶剤の中で、ベンジルアルコール、N,N-ジメチルアセトアミド等は、洗浄特性、現像装置に与える影響および他の成分との混和性などの観点から特に好ましい。
【0034】
有機溶剤は、洗浄組成物の全量に対して、1質量%〜80質量%の量で含有することが好ましく、特に、5質量%〜40質量%の量で用いることが好ましい。有機溶剤の量が1質量%未満であると、付着堆積物を除去する能力が低下し好ましくない。また、有機溶剤の量が80質量%を超えると、現像装置に対する損傷が懸念されるため好ましくない。
【0035】
本発明の洗浄組成物には更に界面活性剤を含有することが好ましい。本発明の洗浄組成物において、界面活性剤は、他の成分を可溶化し系を均一にするため、および付着堆積物と洗浄成分との親和性を高めるために添加し、これによって一段と洗浄効果が改良される。
【0036】
本発明に用いることができる界面活性剤には、特に制限はなく、アニオン系、カチオン系、ノニオン系および両性界面活性剤のいずれも用いることができる。界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ヒマシ油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
上記界面活性剤の中で、系の均一性、付着堆積物の除去性能の観点からアニオン系界面活性剤が好ましい。界面活性剤の含有量としては、洗浄組成物の全量に対して0.1質量%〜40質量%の範囲が好ましく、特に1質量%〜20質量%の範囲が好ましい。
【0038】
本発明の洗浄組成物は、上記成分に追加して、さらに、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基およびそれらの塩、pH緩衝剤、キレート剤等を必要に応じて含むことができる。本発明の洗浄組成物の残りの成分は水である。
【0039】
本発明の洗浄組成物は、洗浄性能、安定性の観点からpHが2.0〜13.0であり、4.0〜12.0がより好ましく、9.0〜12.0が特に好ましい。
【0040】
本発明の洗浄組成物を適用できる平版印刷版原版としては公知の種々のものを採用することができる。代表的なものとして、支持体表面上に、以下に例示する感光層、感熱層等の画像形成層を有する平版印刷版原版を挙げることができ、例えば、従来型ポジタイプ、従来型ネガタイプ、フォトポリマータイプ、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプが好適に挙げられる。以下、これらの好適な画像形成層について説明する。
【0041】
(支持体)
支持体としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、銅、ステンレス、鉄等の金属板;プラスチックフィルム;合成樹脂を溶融塗布あるいは合成樹脂溶液を塗布した紙、プラスチックフィルムに金属層を真空蒸着、ラミネート等の技術により設けた複合材料等が挙げられる。これらのうち、特にアルミニウムおよびアルミニウムが被覆された複合支持体の使用が好ましい。更に、支持体表面の保水性、親水性、画像形成層との密着性を向上させるために、粗面化処理、陽極酸化処理、親水化処理がなされる。
【0042】
(従来型ポジタイプ)
従来型ポジタイプの画像形成層は、好ましくは、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物から形成される。
【0043】
o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂又はクレゾールホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロールアセトン樹脂とのエステルが挙げられる。
【0044】
アルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノールクレゾールホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。
【0045】
さらに、従来型ポジタイプの画像形成層は、特開平7−92660号公報[0024]〜[0027]で示されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同公報[0031]で示されているような塗布性を良化するための界面活性剤が添加されることが好ましい。
【0046】
(従来型ネガタイプ)
従来型ネガタイプの画像形成層は、好ましくは、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性又は膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有する感光性組成物から形成される。
【0047】
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられ、さらに例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩又はテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。
【0048】
好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸又はマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、及び、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体を挙げることができる。
【0049】
さらに、従来型ネガタイプの画像形成層には、特開平7−281425号公報[0014]〜[0015]で示されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
【0050】
(フォトポリマータイプ)
フォトポリマータイプの画像形成層は光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という)から形成され、当該光重合性組成物は付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
【0051】
前記エチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体及びオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
【0052】
前記光重合開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤又は2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報[0021]〜[0023]で示されている開始系が好ましい。
【0053】
前記高分子結合剤としては、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、感光層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性又は膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子としては特開2001−22079号公報で示されている物が有用である。その他光重合性組成物には、同公報[0079]〜[0088]で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0054】
また、上記画像形成層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコールやその共重合体が挙げられる。
【0055】
(サーマルポジタイプ)
サーマルポジタイプの画像形成層は、好ましくは、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。アルカリ可溶性高分子化合物としては、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、及びこれらの混合物を包含し、特に下記(1)や(2)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい:
(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)。
【0056】
とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−及びm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。さらに詳しくは特開2001−305722号公報の[0023]〜[0042]で示されている高分子や、WO02/053627号公報記載の変性フェノール樹脂が好ましく用いられる。
【0057】
前記光熱変換物質としては、露光エネルギーを熱に変換して画像形成層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある色素(顔料又は染料)が好ましい。染料としては。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料を挙げることができる。サーマルポジタイプの組成物中には、前記従来型ポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましく、詳しくは特開2001−305722号公報の[0053]〜[0059]で示されている化合物が好ましい。
【0058】
サーマルポジタイプの画像形成層は単層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
【0059】
(サーマルネガタイプ)
サーマルネガタイプの画像形成層は、好ましくは、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の画像形成層である。このようなサーマルネガタイプの画像形成層の一つとして、重合型の層(以下、「重合層」という)が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
【0060】
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、ラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。
【0061】
(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの画像形成層に含有される前記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の段落番号[0017]〜[0019]に記載されたものを挙げることができる。
【0062】
(B)ラジカル発生剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特許第2764769号等の各公報、及び、Kunz,Martin "Rad Tech'98.Proceeding April 19-22,1998,Chicago" 等に記載される有機硼素酸塩、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号各公報等に記載されるチタノセン化合物、特公平6−29285号公報等に記載されるヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び、ジアリールヨードニウム塩、有機過酸化物等を挙げることができる。
【0063】
(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。
【0064】
(D)バインダーポリマーとしては、線状有機ポリマーを用いることが好ましくい、水又は弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、(メタ)アクリロイル基又はアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する共重合体が、膜強度、感度及び現像性のバランスに優れており、好適である。
【0065】
(C)ラジカル重合性化合物及び(D)バインダーポリマーに関しては同公報[0036]〜[0060]に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同公報[0061]〜[0068]で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
【0066】
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの画像形成層の一つとして、酸架橋型の層(以下、「酸架橋層」という)が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光又は熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)とを含有し、更に、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。また、赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。
【0067】
(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。
【0068】
(F)架橋剤としては、(i)ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基又はN−アシルオキシメチル基を有する化合物、又は(iii)エポキシ化合物が挙げられる。
【0069】
(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
【0070】
本発明の洗浄組成物は、色素を主成分とする付着堆積物を分解除去することにより、著しい洗浄効果を提供することができるので、色素を含有するタイプの平版印刷版原版、例えば、ネガ型およびポジ型のPS版、レーザ光を用いるCTP版(フォトンモード系およびサーマルモード系)等を現像する現像装置の洗浄に最も適している。
【0071】
本発明の洗浄組成物を適用できる平版印刷版原版は、具体的には、色素として、アゾ染料、金属鎖塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、インジゴ染料、キノリン染料、ニトロ系染料、キサンテン系染料、チアジン系染料、アジン染料、オキサジン染料等を含む。
【0072】
本発明の洗浄組成物は、特に、近赤外線または赤外線を効率よく吸収する色素、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を含む平版印刷版原版に適用することができ、本発明の洗浄組成物はこれらの染料を含む付着堆積物を効率よく分解除去することができる。
【0073】
本発明の洗浄組成物は、使用温度によってその洗浄効果が変化する。使用温度は10℃〜50℃の範囲が好ましく、特に20℃〜40℃の範囲が好ましい。洗浄作業としては、一般に、現像装置内に仕込んで、循環する方法が取られる。
【0074】
本発明の洗浄組成物は、洗浄作業後、洗浄液廃棄に先立って残留酸化剤を分解処理剤で分解処理しておくことが望ましい。このような分解処理剤としては、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどをはじめとする有機・無機還元剤が挙げられる。さらに、酸化剤として過酸化水素そのものや、過炭酸ナトリウムなどのように分解して過酸化水素を生成するような酸化剤を使用した場合には、カタラーゼやペルオキシダーゼなどに代表される過酸化水素分解酵素や、二酸化マンガン、活性炭も効果的な分解処理剤として用いることができる。また、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合には、酸化銅、酸化ニッケル、酸化コバルトなどの金属酸化物を分解処理剤として用いることができる。
【実施例】
【0075】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0076】
下記のサーマルネガタイプ(重合型)の平版印刷版原版の画像形成層用組成液を作製し、その組成液を厚みが0.30mmである砂目立て処理および陽極酸化処理を施したアルミ基板上に塗布を行い、110℃で乾燥させ、画像形成層を形成させた。
【0077】
<画像形成層用組成液>
高分子結合材 5質量部
光重合開始剤 1質量部
エチレン性不飽和化合物 4質量部
赤外線吸収色素 1.6質量部
重合禁止剤 2,6−ジ−t−ブチルクレゾール 0.4質量部
溶媒 プロピレングリコールモノメチルエーテル 46質量部
メチルエチルケトン 40質量部
着色剤 2質量部
【0078】
【化1】

【0079】
【化2】

【0080】
上記のようにして作製したサーマルネガタイプ(重合型)の平版印刷版原版を、サーマル用出力機PT―R4300(大日本スクリーン製造社製)を用いて露光画像部/非画像部(10/90)に露光した後、プロセッサPK−1310News(コダックグラフィックコミュニケーションズ社製)を用いて、約1ヶ月間(1日110m2処理)現像し、下記組成の現像液を繰り返し使用した。これにより、現像装置の現像槽および配管内部に、色素を主成分とする堆積物が付着した。
【0081】
<現像液>
水酸化カリウム(48%水溶液) 1g
リン酸(85%溶液) 0.3g
EDTA2Na 0.03g
ペレックスNBL 5g
水 1L
【0082】
このプロセッサ現像槽内の現像液を排出し、水洗後、以下の実施例および比較例に示す洗浄剤組成物(pH=9.5〜11.5)を満たし、30℃の温度にて30分間槽内循環を行った。洗浄剤組成物を排出し、水洗後に洗浄効果を確認した。
【0083】
評価
洗浄剤組成物を排出し、水洗後の状態を目視で観察し、以下に示す基準で、評価A〜Eの等級をつけた。
A:槽内循環のみでほぼ完全に付着堆積物を除去できた。
B:槽内循環と極軽い擦りにより十分に付着堆積物を除去できた。
C:槽内循環と擦りにより十分に付着堆積物を除去できた。
D:槽内循環と擦りによっても十分に付着堆積物を除去できなかった。
E:洗浄剤による効果は認められなかった。
D、Eは、付着堆積物を除去できなかったので、洗浄効果無し、と判断した。
【0084】
実施例1〜10:
これらの例は、洗浄組成物に、(a)酸化剤(b)活性化剤(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含む発明例である。これらの例では、(b)活性化剤の種類を変えて(表Iに示す)試験した。結果を以下の表Iに表す。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1〜10で用いた各種活性化剤を含む洗浄組成物は、何れも評価AまたはBであり、優れた洗浄効果を示した。
【0087】
実施例11〜17:
これらの例は、洗浄組成物に、(a)酸化剤(b)活性化剤(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含む発明例である。これらの例では、(c)第四級アンモニウムハロゲン化物の種類を変えて(表IIに示す)試験した。
【0088】
実施例18:
この例は、発明例であって、(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含まない例である。
【0089】
実施例19〜21:
これらの例は、洗浄組成物に、(a)酸化剤(b)活性化剤(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含む発明例である。これらの例では、(a)酸化剤の種類を変えて(表IIに示す)試験した。
実施例11〜21の結果を以下の表IIに表す。
【0090】
【表2】

【0091】
表I、IIで用いた略号は以下の化合物を表す。
1) TMAC: テトラメチルアンモニウムクロライド
2) BzTMAC: ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド
3) BzDPAC:ベンジルジメチルフェニルアンモニウムクロライド
4) OTMAC:n-オクチルトリメチルアンモニウムクロライド
5) BzTBAB:ベンジルトリブチルアンモニウムブロマイド
6) TMAB:テトラメチルアンモニウムブロマイド
7) TMAI:テトラメチルアンモニウムヨーダイド
8) SDCI:ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム
9) NOB:ノナノイルオキシベンゼン
10) NOBA:ノナノイルオキシ安息香酸ナトリウム
11) NOBS: ノナノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム
【0092】
実施例11〜17で用いた各種第四級アンモニウムハロゲン化物を含む洗浄組成物は、何れも評価Bであり、優れた洗浄効果を示した。(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含まない実施例18の洗浄組成物は、評価Cであり、優れた洗浄効果を示した。実施例19〜21で用いた各種酸化剤を含む洗浄組成物は、何れも評価Bであり、優れた洗浄効果を示した。
【0093】
比較例1:
この例は、洗浄組成物に、(a)酸化剤と(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含むが、(b)活性化剤は含まない例である。
【0094】
比較例2:
この例は、洗浄組成物に、(b)活性化剤と(c)第四級アンモニウムハロゲン化物を含むが、(a)酸化剤は含まない例である。
【0095】
比較例3,4:
これらの例は、(a)酸化剤のみ含む例である。
比較例1〜4の結果を以下の表IIIに表す。
【0096】
【表3】

【0097】
比較例1〜4の評価は、DまたはEであり、付着堆積物を除去できないか、洗浄効果を全く示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平版印刷版原版の現像装置用洗浄組成物であって、(a)酸化剤および(b)活性化剤を含むことを特徴とする洗浄組成物。
【請求項2】
前記酸化剤が、無機の過酸およびその塩、金属過酸化物、過マンガン酸塩、尿素・過酸化水素付加物、次亜塩素酸塩、ハロゲン化イソシアヌル酸およびその塩から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記無機の過酸およびその塩が、過炭酸ナトリウムであることを特徴とする請求項2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
前記活性化剤が、O−アシル化合物またはN−アシル化合物から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
洗浄組成物の全量に対して、前記酸化剤を0.1質量%〜30質量%含有し、そして前記活性化剤を0.1質量%〜20質量%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
(c)第四級アンモニウムハロゲン化物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記平版印刷版原版が、支持体表面上に赤外線吸収色素を含有する画像形成層が形成されている平版印刷版原版であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の洗浄組成物を用いることを特徴とする、平版印刷版原版の現像装置の処理槽内およびその部材の洗浄方法。
【請求項9】
洗浄作業後、前記洗浄組成物を含む洗浄液を廃棄する前に、残留する酸化剤を分解処理剤で分解処理することを特徴とする請求項8に記載の洗浄方法。

【公開番号】特開2010−271477(P2010−271477A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122214(P2009−122214)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】