説明

平面再構成可能アンテナ

【課題】基板、金属層、マスターアンテナ、補助アンテナ、及びスイッチ組を含む平面再構成可能アンテナを提供する。
【解決手段】基板110は第1面111及び第2面112を有する。金属層120は基板110の第1面111上に配置され、金属層120の上縁部は凸形の弧の形状である。マスターアンテナは基板110上に配置され、垂直投影面上で金属層120と部分的にオーバーラップする。補助アンテナは基板110上に配置され、マスターアンテナに対向して配置されている。スイッチ組も基板110上に配置され、補助アンテナ内の複数の導波器141,142,143,144の接続関係を変化させて、平面再構成可能アンテナ100から生成される主ビームの走査方向を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明はアンテナに関するものである。本発明は特に、平面再構成可能アンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
アンテナは多くの無線通信システムにおける重要な要素であるだけでなく、システムの全体的性能にも影響を与える。一般的に言えば、無指向性(全方向性)アンテナ及びパネルアンテナは、マルチパス(多重経路)及び同じ周波数の信号の影響を受けやすく、無線伝送に問題を生じさせ、システム性能を制限し得る。
【0003】
上述した問題を解決するために、再構成可能(形状可変)アンテナ及びスマートアンテナに関する技術が提案されている。無線通信システムでは、このシステムは、再構成可能/スマートアンテナのパラメータを変化させて、より良好な通信品質を達成することができる。これらのパラメータの例は、向き、利得、及び極性を含む。その結果、再構成可能/スマートアンテナは、デジタルテレビジョンシステム、無線ローカルネットワーク、(携帯電話、ノート型コンピュータ、ネットブック(登録商標)、スマートブック(登録商標)、UMPC(Ultra Mobile PC:超小型携帯パソコン、登録商標)のような)ハンドヘルド電子装置、及び全地球測位システム(GPS)のような通信システムにおいて広く応用される。
【0004】
しかし、再構成可能/スマートアンテナは、多数のアンテナ素子、及び複雑かつ巨大な給電兼分配網を有することが多い。従って、再構成可能/スマートアンテナも高いコスト及び大きいサイズを有する。これに加えて、再構成可能/スマートアンテナは環境に応じてそのパラメータを変化させることができるので、その物理的具体化は一般に非常に複雑である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は平面再構成可能アンテナを提供することに指向したものである。この平面再構成可能アンテナは、基板上に配置したマスターアンテナ及び補助アンテナを利用して、対応する結合効果を生成して、指向性の無線周波数(RF)信号を放射する。この平面再構成アンテナは、その小型化において優れているだけでなく、電子装置をシステムとして具体化する複雑性を低減することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は平面再構成可能アンテナを提供する。この平面再構成可能アンテナは、基板、金属層、マスターアンテナ、補助アンテナ、及びスイッチ組を備えている。基板は第1面及び第2面を有する。金属層は、基板の第1面上に配置されている。金属層の上縁部は凸形の弧の形状である。マスターアンテナは基板上に配置され、垂直投影面上で金属層に部分的にオーバーラップ(重複)する。補助アンテナは基板上に配置され、マスターアンテナのすぐ前に配置されている。スイッチ組は基板上に配置されている。スイッチ組は、補助アンテナの複数の導波器の接続関係を変化させて、平面再構成可能アンテナによって生成されるビームの走査方向を変化させる。
【0007】
本発明の好適例によれば、マスターアンテナは第1駆動素子及び第2駆動素子を備えている。第1駆動素子は基板の第1面上に配置され、第1アーム及び第2アームを有する。第1駆動素子の第1アームは金属層から延びる。第2駆動素子は基板の第2上に配置され、第1アーム及び第2アームを有する。第1駆動素子の第1アームと第2駆動素子の第1アームとは、垂直投影面上で互いにオーバーラップする。第1駆動素子の第2アームと第2駆動素子の第2アームとは、正方向に関して互いに対称である。
【0008】
本発明の好適例によれば、補助アンテナまたはマスターアンテナの導波器が、第1導波器、第2導波器、第3導波器、及び第4導波器を含む。第1導波器は基板の第1面上に配置され、第1駆動素子の第2アームに対向する。第2導波器は基板の第1表上に配置され、スイッチ組によって第1導波器に電気接続されている。第3導波器は基板の第2面上に配置され、第2駆動素子の第2アームに対向する。第4導波器は基板の第2面上に配置され、スイッチ組によって第3導波器に電気接続されている。
【0009】
本発明の好適例によれば、スイッチ組は第1スイッチ及び第2スイッチを含む。第1スイッチは基板の第1面上に配置され、第1導波器と第2導波器との間に電気接続されている。第2スイッチは基板の第2面上に配置され、第3導波器と第4導波器との間に電気接続されている。第1スイッチ及び第2スイッチが共にオフ状態である際は、主ビームの向きは正向きである。第1スイッチがオン状態であり第2スイッチがオフ状態である際は、主ビームの向きが正向きから右に所定角度だけ外れる。第1スイッチがオフ状態であり第2スイッチがオン状態である際は、主ビームの向きは正向きから左に所定角度だけ外れる。第1スイッチ及び第2スイッチが共にオン状態である際は、2つに分割された主ビームが得られ、これらの分割された主ビームは、正方向から±90度だけ外れている。
【0010】
本発明の好適例によれば、上記平面再構成可能アンテナがさらに、第3〜第6スイッチ、給電線、第1ルート線、及び第2ルート線を備えている。第3〜第6スイッチ及び給電線は、基板の第2面上に配置されている。第1ルート線は基板の第2面上に配置され、第3及び第4スイッチを通して第2駆動素子と給電線との間に電気接続されている。第2ルート線は基板の第2面上に配置され、第5及び第6スイッチを通して第2駆動素子と給電線との間に電気接続されている。第2ルート線の長さは、第1ルート線の長さより短い。
【0011】
第1及び第2スイッチの一方がオン状態である際は、第3及び第4スイッチはオフ状態であり、第5及び第6スイッチはオン状態である。平面再構成可能アンテナによって受信した信号は、より短い第2ルート線を通過して給電線に至る。逆に、第1及び第2スイッチが共にオフ状態である際は、第3及び第4スイッチはオン状態であり、第5及び第6スイッチはオフ状態である。平面再構成可能アンテナによって受信した信号は、より長い第1ルート線を通過して給電線に至る。
【0012】
本発明の好適例によれば、上記平面再構成可能アンテナがさらに、第1反射素子及び第2反射素子を備えている。第1及び第2反射素子は基板の第2面上に配置され、かつ第2駆動素子の第1アームの両側に配置されている。第1及び第2反射素子は、垂直投影面上で上記金属層の上縁部を取り囲む。
【0013】
本発明は、マスターアンテナと補助アンテナとの結合効果を利用して、RF信号を送信/受信する。上記スイッチ組は、補助アンテナの導波器の接続関係を制御する。従って、上記平面再構成可能アンテナは、ビームの走査方向を信号源の強度に応じて動的に調整することができる。従って、高い通信品質が維持される。従来技術に比べれば、本発明の平面再構成可能アンテナは、その小型化において優れ、無線通信の品質を維持することができ、電子装置のシステム具体化の複雑性を低減することができる。
【0014】
本発明の上述した特徴及び利点、及び他の特徴及び利点を分かりやすくするために、以下に、図面を参照した実施例を詳細に説明する。
【0015】
なお、以上の一般的説明及び以下の詳細な説明は共に例示的なものであり、請求項に記載の本発明のさらなる説明を提供することを意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含め、本明細書に含まれ、その一部を構成する。図面は本発明の実施例を例示し、その説明と共に、本発明の原理を説明する働きをする。
【0017】
【図1】本発明の実施例による平面再構成可能アンテナの概念的レイアウト図である。
【図2】図1の平面再構成可能アンテナの、垂直投影面上の斜視図である。
【図3】図1の平面再構成可能アンテナからの主ビームの概念図である。
【図4】図1の平面再構成可能アンテナの、垂直投影面上の他の斜視図である。
【図5】図1の平面再構成可能アンテナの、垂直投影面上のさらに他の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施例による平面再構成可能アンテナの概念的レイアウト図である。この概念的レイアウト図は、X軸及びY軸によって規定される平面上、及び−X軸及びY軸によって規定される他の平面上に描かれている。図2は、垂直投影面上の、図1の平面再構成可能アンテナの斜視図である。この斜視図は、X、Y、及びZ軸によって規定される3次元空間内に描かれている。図1及び2を共に参照しながら説明する。平面再構成可能アンテナ100は、基板110、金属層120、マスターアンテナ130、補助アンテナ140、及びスイッチ組150を備えている。具体的には、図2は、平面再構成可能アンテナ100の素子の斜視図を、X、Y、及びZ軸によって規定される3次元空間内に示す。
【0019】
図1及び2を参照しながら説明する。基板110は、第1面111及び第2面112を有する。マスターアンテナ130は、第1駆動素子131及び第2駆動素子132を含む。補助アンテナ140は、第1導波器141、第2導波器142、第3導波器143、及び第4導波器144を含む。スイッチ組150は、第1スイッチ151及び第2スイッチ152を含む。金属層120は、基板110の第1面111上に配置されている。マスターアンテナ130及び補助アンテナ140は互いに対して対称であり、基板110の第1面111上及び第2面112上に配置されている。スイッチ組150は基板110上に配置されている。
【0020】
本実施例におけるような実際の応用では、マスターアンテナ130はダイポールアンテナとすることができる。具体的には、マスターアンテナ130の第1駆動素子131及び第2駆動素子132は、L字形及び2つのアームを有する。本実施例では、第1駆動素子131は第1アーム131a及び第2アーム131bを有する。第2駆動素子132は第1アーム132a及び第2アーム132bを有する。
【0021】
図1に示すように、第1駆動素子131と第2駆動素子132とは、離して見ればほぼ同一である。しかし、第1駆動素子131及び第2駆動素子132はそれぞれ、基板110の第1面111上及び第2面112上に配置されている。なお、図1では、第1駆動素子131と第1面111との空間的関係を、−X軸及びY軸によって規定される平面上に示している。第1駆動素子132と第2表面112との空間的関係は、X軸及びY軸によって規定される平面上に示している。これに加えて、図2に示すように、第1駆動素子131の第1アーム131aと第2駆動素子132の第1アーム132aとは、垂直投影面上で互いにオーバーラップしている。第1駆動素子131の第2アーム131bと第2駆動素子132の第2アーム132bとは、正向きDR(即ちY軸の向きに関して互いに対称である。これに加えて、第1面111上に配置された第1駆動素子131の第1アーム131aは、金属層120から延びる。マスターアンテナ130は正向きDR、即ち、第1駆動素子131の第2アーム131bまたは第2駆動素子132の第2アーム132bに直交する向きに沿って、その最大電力を放射することができる。
【0022】
他方では、補助アンテナ140及びスイッチ組150の見かけからは、補助アンテナ140の第1導波器141及び第2導波器142は、基板110の第1面111上に配置され、かつ第1導波器141は、第1駆動素子131の第2アーム131bに対向する。これに加えて、スイッチ組150の第1スイッチ151は、基板110の第1面111上に配置され、第1導波器141と第2導波器142との間に電気接続されている。その結果、第1導波器141と第2導波器142との接続関係は、第1スイッチ151がオン状態であるかオフ状態であるかに応じて変化させることができる。
【0023】
補助アンテナ140の第3導波器143及び第4導波器144は、基板110の第2面112上に配置されている。第3導波器143は、第2駆動素子132の第2アーム132bに対向する。これに加えて、スイッチ組150の第2スイッチ152は、基板110の第2面112上に配置され、第3導波器143と第4導波器144との間に電気接続されている。その結果、第3導波器143と第4導波器144との接続関係は、第2スイッチ152がオン状態であるかオフ状態であるかに応じて変化させることができる。
【0024】
なお、第1〜第4導波器141〜144の接続関係が変化すると、マスターアンテナ130及び補助アンテナ140は異なる結合効果を生成し、平面再構成可能アンテナ100は異なる向きにビームを発生する。例えば、図3は平面再構成可能アンテナ100からの主ビームの概念図である。図2及び3を共に参照しながら説明する。第1スイッチ151及び第2スイッチ152がオフ状態である際は、マスターアンテナ130と補助アンテナ140との間の結合効果が、平面再構成可能アンテナ100に、正向きDRの走査方向に主ビームを発生させる。図3に示すように、この状況では、平面再構成可能アンテナ100が発生する主ビームの偏差角は0度である。
【0025】
第1スイッチ151がオン状態であり、第2スイッチ152がオフ状態である際は、平面再構成可能アンテナ100は、正向きDRから右に所定角度だけ外れた向きに主ビームを発生する。第1スイッチ151がオフ状態であり、第2スイッチ152がオン状態である際は、平面再構成可能アンテナ100は、正向きDRから左に所定角度だけ外れた向きに主ビームを発生する。図3を例にとれば、この所定角度は約45度である。第1スイッチ151及び第2スイッチ152が共にオン状態である際は、マスターアンテナ130は、正向きDRに直交する向きに、マスターアンテナ130の両側に沿って、即ち正向きから±90度外れた偏差角に、最大出力を放射することができる。
【0026】
換言すれば、第1スイッチ151及び第2スイッチ152の制御下で、平面再構成可能アンテナ100は主ビームの向きを変化させることができる。従って、平面再構成可能アンテナ100をハンドヘルド電子装置に応用する際は、この電子装置は、このアルゴリズムをサポートする限り、信号源の強度に応じて、第1スイッチ151及び第2スイッチ152のオン/オフ状態を適応的に調整して、最適/最大信号受信を保証することができる。こうしたハンドヘルド電子装置の例は、携帯電話、ノート型コンピュータ、全地球測位システム(GPS)ナビゲータ、ウルトラモバイル・パーソナルコンピュータ(UMPC)、ネットワークにリンク可能なノート型コンピュータ(ネットブック(登録商標))、及びスマートブック(登録商標)を含む。当業者は、平面再構成可能アンテナ100を、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)のアクセスポイント(AP)、高機能基地局またはスマートアンテナシステム(SAS:Smart Antenna System)にも適用して、最適/最大信号受信を保証することもできる。なお、ハンドヘルド電子装置への適用は、本発明の必要な限定ではない。
【0027】
例えば、ハンドヘルド電子装置が、固定の放射ビームパターンを有する従来のGPSアンテナを使用するものと仮定する。このハンドヘルド電子装置が、高架橋または高い建物のような遮蔽物の下または付近にある際は、人工衛星によって送信された信号が、ハンドヘルド電子装置の異なる位置に起因する環境によって影響され、このため測位時間及び測位精度のようなGPSの性能が影響を受ける。それとは逆に、本実施例の平面再構成可能アンテナ100は、最適な信号方向に指向して、信号源に動的に指向したビームによってGPS信号を受信することができる。換言すれば、現在用いている向きの信号が弱い際は、平面再構成可能アンテナ100はより良好な信号を受信しようとして、他の向きに方向転換することができる。従って、環境によって生じる悪影響を最小化し、GPSの測位時間及び測位精度を改善することができる。
【0028】
これに加えて、平面再構成可能アンテナ100は平坦構造を有するので、ハンドヘルド電子装置に容易に統合することができる。例えば、平面再構成可能アンテナ100は、携帯電話の背面カバー上、またはバッテリーの背面カバー上、あるいは装置内部のプリント回路基板(PCB)上に配置することができる。平面再構成可能アンテナ100は平坦構造を有するので、携帯電子装置のサイズを最小化することもできる。さらに、平面再構成可能アンテナ100は、第1スイッチ151及び第2スイッチ152の制御を利用するだけで、ビームの指向方向を変化させることができる。従って、平面再構成可能アンテナ100は、ハンドヘルド電子装置のシステム実現の複雑性をさらに低減することができる。
【0029】
補助アンテナ140の第1〜第4導波器141〜144のより詳細については、図1及び2を参照しながら説明する。本実施例では、第1導波器141と第3導波器143とが、垂直投影面上で正向きDRに関して対称である。第2導波器142と第4導波器144も、垂直投影面上で正向きDRに関して対称である。
【0030】
電気接続については、追加的ビアを用いて、第1導波器141と第3導波器143とを接続することもできる。例えば、平面再構成可能アンテナ100はさらに、第1ビア160を含む。第1ビア160は、基板110、第1導波器141、及び第3導波器143を貫通して、第1導波器141と第3導波器143とを電気接続する。他方では、第1スイッチ151及び第2スイッチ152を通して、第1導波器141及び第3導波器143をそれぞれ、第2導波器142及び第4導波器144に電気接続することができる。補助アンテナ140の見かけからは、第1導波器141及び第3導波器143はマスター放射アームと等価である。第2導波器142及び第4導波器144はそれぞれ、左側放射アーム及び右側放射アームと等価である。
【0031】
実際には、左側放射アームと右側放射アームとは段差をおいて配置することができる。例えば、本実施例では、第1導波器141と第2導波器142とは、下向きの段差をおいて配置されている。明らかに、第1導波器141と第2導波器142とは、上向きの段差をおいて配置することもできる。さらに、第1導波器141と第2導波器142との段差距離は、1〜15ミリメートルとすることができる。さらに、補助アンテナ140の左側放射アームと右側放射アームとは水平に配置することができる。換言すれば、第1〜第4導波器141〜144は、同一水平面上または同一線上でマスターアームと整列させることができる。
【0032】
実際には、補助アンテナ140のマスター放射アーム、右放射アーム、及び左放射アームの長さはおよそ同じである。換言すれば、第1導波器141と第3導波器143との合計長は、第2導波器142の長さまたは第4導波器144の長さにおよそ等しい。さらに、補助アンテナ140及びマスターアンテナ130の見かけからは、第1駆動素子131の第2アーム131bと第2駆動素子132の第2アーム132bとの合計長は、第1導波器141または第3導波器143の長さより長い。
【0033】
RF信号伝送品質をさらに増強するために、本実施例の平面再構成可能アンテナ100はさらに、給電線170、第1ルート線181、第2ルート線182、第3スイッチ191、第4スイッチ192、第5スイッチ193、第6スイッチ194、第1反射素子210、第2反射素子220、及び複数の第2ビア231〜234を含む。金属層120は、切欠き(ノッチ)240を含む。第1ルート線181の長さは第2ルート線182の長さより長い。給電線170は、平面再構成可能アンテナ100の給電領域として機能し、マスターアンテナ130に電気接続されている。金属層120は、接地接続領域として機能し、システム接地に電気接続されている。
【0034】
給電線170、第1ルート線181、第2ルート線182、及び第3〜第6スイッチ191〜194は、基板110の第2面112上に配置されている。第3スイッチ191及び第4スイッチ192を通して、第1ルート線181は、第2駆動素子132と給電線170とを電気接続することができる。第5スイッチ193及び第6スイッチ194を通して、第2ルートライン182は、第2駆動素子132と給電線170とを電気接続することができる。さらに、第1〜第4導波器141〜144の接続関係が変化すると共に、第3〜第6スイッチ191〜194のオン/オフ状態はこれに応じて変化する。換言すれば、第1スイッチ151及び第2スイッチ152のオン/オフ状態が変化すると共に、第3〜第6スイッチ191〜194のオン/オフ状態はこれに応じて変化する。具体的には、給電線170、第1ルート線181、第2ルート線182、マスターアンテナ130、及び補助アンテナ140を含む信号経路の長さを、第1スイッチ151及び第2スイッチ152の状態に応じて、動作周波数を維持するように適応的に調整する。ここで、動作周波数は、特定周波数帯域内または所定の指定周波数に維持される。異なるスイッチのスイッチング方式によって調整される経路の設計に基づき、動作周波数の偏差による無線通信の特性の低下を回避することができ、従ってハンドヘルド電子装置の無線性能を安定化することができる。
【0035】
例えば、第1スイッチ151及び第2スイッチ152の一方がオン状態である際は、補助アンテナ140のマスター放射アームが左側放射アームまたは右側放射アームに電気接続される。この状況では、第3スイッチ191及び第4スイッチ192は共にオフ状態であり、第5スイッチ193及び第6スイッチ194は共にオン状態である。平面再構成可能アンテナ100が受信した信号は、より短い第2ルート線182を通って給電線170に渡される。同様に、第1スイッチ151及び第2スイッチ152が共にオン状態である際は、補助アンテナ140のマスター放射アームは、左側放射アーム及び右側放射アームに同時に電気接続される。この状況では、第3スイッチ191及び第4スイッチ192は共にオフ状態であり、第5スイッチ193及び第6スイッチ194は共にオン状態である。平面再構成可能アンテナ100が受信した信号は、より短い第2ルート線182を通って給電線170に渡される。
【0036】
他方では、第1スイッチ151及び第2スイッチ152が共にオフ状態である際は、補助アンテナ140のマスター放射アームは左側放射アームにも右側照射アームにも電気接続しない。この状況では、第3スイッチ191及び第4スイッチ192はオン状態であるが、第5スイッチ193及び第6スイッチ194はオフ状態である。平面再構成可能アンテナ100が受信した信号は、より長い第1ルート線181を通って給電線170に渡される。
【0037】
図1及び2を参照しながら説明する。第1反射素子210及び第2反射素子220は基板110の第2面112上に配置され、かつ第2駆動素子132の第2アーム132aの両側に配置されている。本実施例では、第1反射素子210及び第2反射素子220はストリップ形状を有する。これに加えて、第1反射素子210及び第2反射素子220を基板110の第1面111上に垂直に投影すると、これらの反射素子の射影は金属層120の上縁部の周囲にあり、かつ第2アーム131に近接している。さらに、金属層120を包囲する形状は基板110の形状と同様であり、(長方形のような)多角形パターンを有する。従って、第1反射素子210及び第2反射素子220もストリップ形状を有することができる。図1の上面の視角から、即ち+Z向きから−Z向きに向かって見れば、上述した包囲する形状は、上縁部、側部、及び底部を含む。平面再構成可能アンテナ100により広い方向角を有するビームを持たせるために、金属層120の上縁部は凸形の弧の形状を有し、即ち、金属層の上縁部はDR向き(即ち+Y向き)に広がり出て、金属層の広がり出る曲面は弧の形状である。第1反射素子210及び第2反射素子220も、金属層120の上縁部に沿った凸形の弧の形状を有する。その結果、弧形の金属層120、第1反射素子210、及び第2反射素子220は、平面再構成可能アンテナ100が発生する主ビームが、正向きDRから外れる角度を増加させることができる。
【0038】
第1反射素子210及び第2反射素子220は、ストリップ形状を有するものに限定されない。これらは基板110上に多角形パターンも有することもできる。なお、第1反射素子210及び第2反射素子220は、給電線170に接触することができない。図4及び5は、第1反射素子210及び第2反射素子220の異なる実施例を示す概念的レイアウト図である。図4では、第1反射素子210及び第2反射素子220は、DR向きとは逆向きに短い距離だけ延びる。図5では、第1反射素子210及び第2反射素子220は、DR向きとは逆向きに、より長い距離だけ延びる。図5に示す実施例は、平面再構成可能アンテナ100に、より広い主ビーム角及びより良好な指向性を与える。
【0039】
図1及び3を共に参照しながら説明する。周知の技術に基づき、第1反射素子210、第2反射素子220、及び金属層120の上縁部が長方形の形状を有する場合は、平面再構成可能アンテナ100が発生する主ビームは正向きDRの右側または左側に30度だけ外れることができる。第1反射素子210、第2反射素子220、及び金属層120の上縁部が弧の形状を有する場合は、平面再構成可能アンテナ100が発生するビームは、正向きDRの右側または左側に約45度だけ外れることができる。素子の構造の改良が、平面再構成可能アンテナ100に、より広い主ビームの走査角を与えていることは明らかである。
【0040】
第1反射素子210及び第2反射素子220は、第2面112上の第2駆動素子132から到来する放射エネルギーを主に反射する。金属層120は、第1面110上の第1駆動素子131から到来する放射エネルギーを主に反射する。しかし、エネルギー放射はほぼ全方向であり、かつ制御が困難であるので、第1反射素子210及び第2反射素子220も、第1面110から到来する放射エネルギーの一部を反射することができる。同様に、金属層120も、第2面112から到来する放射エネルギーの一部を反射することができる。その結果、一部のエネルギーは基板110を貫通し、DR向き(即ち−Y向き)とは逆向きに放射される。このエネルギーの損失は、平面再構成可能アンテナ100の性能にある程度悪影響する。
【0041】
エネルギー損失の影響を軽減するために、本発明の実施例はさらに、複数のビアを含むことができる。例えば、図1及び2では、第2ビア231〜234が、金属層120、基板110、及び第1反射素子210を貫通するか、あるいは金属層120、基板110、及び第2反射素子220を貫通するかのいずれかである。これらのビアは、前述した反射素子及び金属層と同じ効果を有する。具体的には、これらのビアは基板を貫通するエネルギーの一部を反射し、平面再構成可能アンテナ100の指向性または前後電界比を高めることができる。従って、追加的ビア231〜234は、平面再構成可能アンテナ100に、より広い主ビーム走査角及びより良好な主ビームの指向性を与えることができる。なお、任意数のビアが存在することができる。ビアの数は、設計上の要求、平面再構成可能アンテナ100のコストの関心に応じて決定することができる。当業者は、追加的ビアの位置を決定して、平面再構成可能アンテナ100の性能を最適化することができる。電気接続に関しては、第1反射素子210または第2反射素子220は、第2ビア231〜234を通して金属層120に電気接続することができる。他方では、第1駆動素子131の第1アーム131aを切欠き240の中央に配置して、マスターアンテナ130のマッチング(整合)効果を高める。
【0042】
本発明の平面再構成可能アンテナは、マスターアンテナと補助アンテナとが生成する結合効果を用いて信号を送信/受信する。補助アンテナのマスター放射アームは、左側放射アームまたは右側放射アームに、対応するスイッチを通して電気接続することができる。その結果、平面再構成可能アンテナは、ビーム指向性の向きを、受信信号の強度に応じて動的に調整することができる。従って、平面再構成可能アンテナは、最適/最強の信号に指向して、良好な通信品質を達成することができる。これに加えて、平面再構成可能アンテナは、その小型のサイズにおいて優れているだけでなく、電子装置のシステム実現における複雑性を軽減することもできる。
【0043】
本発明の範囲を逸脱することなしに、本発明の構造に種々の変更や変形を加えることができることは、当業者にとって明らかである。以上の観点から、本発明は、その変更及び変形を、これらが請求項及びその等価物の範囲内に入る限りカバーすることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する基板と;
前記第1面上に配置された金属層であって、この金属層の上縁部が凸形の弧の形状である金属層と;
前記基板上に配置され、垂直投影面上で前記金属層と部分的にオーバーラップするマスターアンテナと;
前記基板上に配置され、かつ前記マスターアンテナに対向して配置された補助アンテナと;
前記基板上に配置されたスイッチ組であって、前記補助アンテナの複数の導波器の接続関係を変化させて、前記平面再構成可能アンテナから生成される主ビームの向きを切り替えるスイッチ組と
を備えていることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記マスターアンテナが、
前記基板の前記第1面上に配置され、第1アーム及び第2アームを有し、前記金属層から延びる第1駆動素子と;
前記基板の前記第2面上に配置され、第1アーム及び第2アームを有する第2駆動素子とを備え、
前記第1駆動素子の前記第1アームと前記第2駆動素子の前記第1アームとが、前記垂直投影面上でオーバーラップし、前記第1駆動素子の前記第2アームと前記第2駆動素子の前記第2アームとが、正向きに関して対称であることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記補助アンテナの前記導波器が、
前記基板の前記第1面上に配置され、前記第1駆動素子の前記第2アームに対向する第1導波器と;
前記基板の前記第1面上に配置され、前記スイッチ組によって前記第1導波器に電気接続される第2導波器と;
前記基板の前記第2面上に配置され、前記第2駆動素子の前記第2アームに対向する第3導波器と;
前記基板の前記第2面上に配置され、前記スイッチ組によって前記第3導波器に電気接続される第4導波器と
で構成されることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項4】
請求項3に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記第1導波器と前記第3導波器とが、前記垂直投影面上で前記正方向に関して対称であり、前記第2導波器と前記第4導波器も、前記垂直投影面上で前記正方向に関して対称であることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項5】
請求項4に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記第1導波器と前記第3導波器、及び前記第2導波器と前記第4導波器が、上向きまたは下向きの段差をおいて配置されていることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項6】
請求項5に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記第1導波器と前記第3導波器との間の距離、及び前記第2導波器と前記第4導波器との間の距離が、1〜15ミリメートルであることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項7】
請求項4に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記第1導波器、前記第2導波器、前記第3導波器、及び前記第4導波器が、同一平面上または同一線上で整列されていることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項8】
請求項3に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記第1導波器と前記第3導波器との合計長が、前記第2導波器または前記第4導波器のいずれかの長さとおよそ同じであることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項9】
請求項8に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記第1駆動素子の前記第2アームと前記第2駆動素子の前記第2アームとの合計長が、前記第1導波器または前記第3導波器の長さより長いことを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項10】
請求項3に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、さらに、
前記基板、前記第1導波器、及び前記第3導波器を貫通して、前記第1導波器と前記第3導波器とを電気接続する第1ビアを備えていることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項11】
請求項3に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記スイッチ組が、
前記基板の前記第1面上に配置され、前記第1導波器と前記第2導波器とを電気接続する第1スイッチと;
前記基板の前記第2面上に配置され、前記第3導波器と前記第4導波器とを電気接続する該第2スイッチとを備え、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチが共にオフ状態である際は、前記主ビームの向きが前記正向きであり;
前記第1スイッチがオン状態であり、前記第2スイッチがオフ状態である際は、前記主ビームの向きが、前記正向きから右に所定角度だけ外れ;
前記第1スイッチがオフ状態であり、前記第2スイッチがオン状態である際は、前記主ビームの向きが、前記正向きから左に前記所定角度だけ外れ;
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチが共にオン状態である際は、2つに分割された前記主ビームが得られ、これらの2つに分割された前記主ビームは、前記正向きから±90度だけ外れている
ことを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項12】
請求項11に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記所定角度が約45度であることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項13】
請求項11に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、さらに、
前記基板の前記第2面上に配置された第3スイッチ、第4スイッチ、第5スイッチ、第6スイッチと;
前記基板の前記第2面上に配置された給電線と;
前記基板の前記第2面上に配置され、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチを通して、前記第2駆動素子と前記給電線とを電気接続する第1ルート線と;
前記基板の前記第2面上に配置され、前記第5スイッチ及び前記第6スイッチを通して、前記第2駆動素子と前記給電線とを電気接続する第2ルート線とを備え、前記第2ルート線の長さは前記第1ルート線の長さより短く、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチの一方がオン状態である際は、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチが共にオフ状態であり、前記第5スイッチ及び前記第6スイッチが共にオン状態であり;
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチが共にオン状態である際は、前記第3スイッチ及び第4スイッチは共にオフ状態であり、前記第5スイッチ及び前記第6スイッチは共にオン状態であり;
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチが共にオフ状態である際は、前記第3スイッチ及び前記第4スイッチが共にオン状態であり、前記第5スイッチ及び前記第6スイッチが共にオフ状態である
ことを特徴とする水平再構成可能アンテナ。
【請求項14】
請求項2に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、前記金属層がさらに切欠きを備え、前記第1駆動素子の前記第1アームは、前記金属層の前記切欠きから前記正向きに延び、前記第1アームは、前記切欠きの中央付近に配置されていることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項15】
請求項2に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、さらに、第1反射素子及び第2反射素子を備え、前記第1反射素子及び前記第2反射素子は、前記基板の前記第2面上に配置され、かつ前記第2駆動素子の前記第1アームの両側に配置され、前記第1及び前記第2反射素子は、前記垂直投影面上で前記金属層の上縁部を取り囲むことを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項16】
請求項15に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、さらに、複数の第2ビアを備え、これらの第2ビアは、前記金属層、前記基板、及び前記第1反射素子を貫通するか、あるいは前記金属層、前記基板、及び前記第2反射素子を貫通するかのいずれかで、前記第1反射素子または前記第2反射素子を前記金属層に接続することを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項17】
請求項1に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、さらに、前記基板の前記第2面上に配置された第1反射素子、第2反射素子、及び給電線を備え、前記第1反射素子及び前記第2反射素子は、前記マスターアンテナの両側に配置され、前記給電線は前記マスターアンテナに電気接続され、前記第1反射素子及び前記第2反射素子は多角形パターンを有するが、前記給電線には接触しないことを特徴とする平面再構成可能アンテナ。
【請求項18】
請求項1に記載の平面再構成可能アンテナにおいて、ハンドヘルド電子装置内、無線ローカルエリアネットワークのアクセスポイント内、高機能基地局内、またはスマートアンテナシステム内に応用されることを特徴とする平面再構成可能アンテナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−24183(P2011−24183A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−258735(P2009−258735)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(502160992)宏達國際電子股▲ふん▼有限公司 (97)
【Fターム(参考)】