廃水中の金属イオンの電解除去回収方法および装置
本発明は、各種処理廃水から金属イオンを除去・回収する装置に関する。この方法は、廃水から酸化剤を分解および除去する酸化剤除去装置と、酸化剤除去装置から排出された廃水から金属イオンを回収する電気析出装置(21)とを備えている。電気析出装置は、電極と、電極間にイオン交換体を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種処理廃水から金属イオンを除去・回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ廃水、半導体装置製造工程廃水、プリント基板製造廃水、鉱山廃水などのような重金属を含む廃水の処理にあたっては、廃水中の重金属を除去し、必要に応じてこれを回収することが求められている。
【0003】
例えば、近年、半導体集積回路などの半導体装置の製造において、微細化への要求が一段と厳しくなるのに伴って、配線抵抗による信号遅延が問題になってくる。この問題を解決するためにアルミニウムやタングステンなどに代えて銅配線が用いられるようになってきた。
【0004】
すなわち、CPUやDRAMなどの半導体チップの高集積化に伴い、チップ内の配線材料として、従来のアルミニウムから、より電気抵抗の低い銅が、特に配線の最小線幅が0.13μm以下のチップで採用されつつある。
【0005】
このような銅配線を用いる場合、銅はエッチングによるパターン形成が困難なため、通常、メッキによるダマシンプロセスで成膜し、成膜後に化学機械研磨(CMP)や電解研磨(ECP)などの方法によって膜の表面を研磨して配線を形成する。
【0006】
図1Aから図1Eにその配線形成方法の一例を示す。まず、図1Aに示すように、半導体素子を形成した半導体基材1の上に導電層2を形成し、この上にさらにSiO2からなる絶縁膜3を堆積する。そして、絶縁膜3の層の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、コンタクトホール4と配線用の溝5を形成する。次に、図1Bに示すようにバリア層6を形成する。バリア層としては、例えば、Ta、TaN、TiN、WN、SiTiN、CoWP、CoWB等の金属若しくは金属化合物材料が用いられる。次に、電解メッキ法で銅層を形成する場合には、図1Cに示すように、バリア層6の上に電解メッキの給電層としての銅シード層7をスパッタリング法などにより形成する。また、銅層を無電解メッキ法で形成する場合には、銅シード層に代えて、バリア層6の上に前処理を行って触媒層7を形成する。
【0007】
次に、図1Dに示すように、銅シード層若しくは触媒層7の表面に電解メッキ法若しくは無電解メッキ法で銅メッキを施すことにより、コンタクトホール4および配線用溝5内に銅を充填させると共に、絶縁膜3の上に銅層8を堆積させる。その後、化学機械研磨(CMP)法や電解研磨(ECP)法などによって絶縁膜3上の銅層8を除去して、コンタクトホール4および配線用溝5に充填した銅層8の表面と絶縁膜3の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1Eに示すように、絶縁膜3の内部に銅シード層若しくは触媒層7銅層8からなる配線を形成する。
【0008】
このような状況下で、半導体装置製造工程における電解若しくは無電解メッキ法による銅メッキ工程や、集積回路マイクロチップの化学機械研磨(CMP)若しくは電解研磨(ECP)工程においては、銅イオンを大量に含む廃水が生じる。廃水中の銅イオンに関しては、許容限度として、日本では最大濃度が3.0mg/l以下に規制されており、また米国においては、一例として最大濃度が2.7mg/l以下、一日あたりの平均濃度が1.0mg/l以下、1年あたりの平均濃度が0.4mg/l以下に、より厳しく規制されている。したがって、廃水中の銅を効率よく除去する技術を提供することが強く求められている。
【0009】
現在の半導体装置製造工場においては、CMP装置1台あたり最大で0.5m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/l程度、同様に銅メッキ装置1台あたり最大で0.2m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/l程度というのが大凡の現状である。銅配線を利用する半導体装置の平均的な半導体装置製造工場では、一つの工場あたりCMP装置が10台程度、銅メッキ装置が10〜20台程度設置されている場合があり、これら装置から排出される銅含有廃水の総量は最大で220m3/日程度になり、廃水中に含まれる銅の総量は最大で約22kg−Cu/日にもなる。したがって、この廃水から銅を効率よく回収して再利用することが、環境保護のみならず、省資源の観点からも、強く求められている。
【0010】
また、従来の半導体装置製造を含む設備産業では、工場内における各種工程からの廃水を集めて回収し、これを一括して処理するという総合廃水処理設備の考え方が主流であったが、製造プロセスの技術の進化が早い半導体装置製造においては、それぞれの工程での廃水をその場で処理するという方法、すなわちユースポイントで廃水を処理する方法が求められている。これは、従来の少品種・大量生産型から多品種・少量生産型へと生産方式が変わってきているため、製造品種の変更頻度の増加に伴って廃水の性状変動も大きくなり、従来の方法ではこの性状の変動に対応することが難しいことや、各プロセスから発生する個別の廃水に対応して処理を行った方が重金属の回収・再利用のプロセスが容易であることなどの理由による。
【0011】
以上のような現状の下、被処理水の水質変動に対応可能で、高濃度の金属イオンを含む廃水から低濃度の金属イオンを含む廃水まで幅広く処理することが可能で、さらに、被処理水量が多くても十分に対応することのできる、廃水から金属イオンを除去・回収する装置、特に半導体装置製造プロセス廃水から銅を除去・回収する装置が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、高濃度から低濃度までの広範囲にわたる金属イオンを含む廃水を処理することができ、大量の廃水を十分に処理することができる廃水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属イオンを含有する廃水、特に銅イオンを含有する半導体装置製造プロセスからの廃水を処理する装置として、電解析出操作と、イオン交換操作とを組み合わせることにより、廃水中の金属イオンを効率的に除去・回収することができることを見出した。すなわち、本発明の一態様は、電解析出ユニットとイオン交換ユニットとを組み合わせたことを特徴とする、金属イオンを含む被処理水の処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の被処理水を処理する装置の実施形態を説明する。以下の図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を意味し、重複して説明しない。
【0015】
上記のように、本発明の一態様に係る被処理水の処理装置は、金属イオンを含む被処理水の処理において、電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせたことを特徴とする。
【0016】
金属イオンを含む廃水を電解析出処理にかける操作は、金属イオンを含む水溶液中に、チタン、ニッケル、ステンレスなどの電極を浸漬して通電することにより、陰極(カソード)の表面上に金属が析出するという原理に基づくものである。例えば、銅イオンが含まれている水をこのような電解処理にかけると、陽極(アノード)では次の化学式(1)および/または(2)で示される1以上の反応が起きる。
H2O → 2H++1/2O2↑+2e− ・・・(1)
2OH− → H2O+1/2O2↑+2e− ・・・(2)
これにより、酸素ガスが発生する。陰極では次の化学式(3)および(4)および/または(5)で示される反応が起きる。
Cu2++2e− → Cu↓ ・・・(3)
2H+ + 2e- → H2↑ ・・・(4)
2H2O + 2e- → H2↑ + 2OH- ・・・(5)
これにより、銅が電極表面上に析出すると共に水素ガスが発生する。
【0017】
図2に、電解析出装置の一具体例を示す。図2に示す装置は、電解槽11内に、陽極12および陰極13が配置されている。両電極は、それぞれ直流電源14の陽極および陰極に電気的に接続されている。この電解槽11に廃水(被処理水)15を供給して、両電極に通電することによって、廃水中の金属イオンMn+は、電位勾配によって陰極13に引き寄せられ、陰極13の表面上で電極反応によって金属として析出する。この操作によって金属イオンの濃度が低められた処理水は、処理水出口16から排出される。電解槽11内の廃水15は十分に撹拌することが陰極13表面に均一に析出させる点で好ましい。
【0018】
また、図3に他の形態の電解析出装置の一具体例を示す。図3に示す電解析出装置21は、通水性の材料で形成された陰極22と陽極23とを有していて、これら両電極に挟まれて電解室25が形成されている。両電極は、それぞれ直流電源の陰極および陽極に電気的に接続されている。また、両電極の外側には、それぞれ水供給配管26および水排出配管27が形成されている。このような電解析出装置21に、水供給配管26から金属イオンを含む廃水(被処理水)を供給し、両電極に通電しながら電解室を通過させると、廃水中の金属イオンMn+は、陰極22を通過する際に陰極22の表面上で電極反応によって金属として析出する。この操作によって金属イオンの濃度が低められた廃水は、水排出配管27から排出される。なお、このような電解析出装置においては、廃水の通液方向を逆にして、すなわち、27より廃水を供給して、陽極23、陰極22の順で廃水を通過させた後、処理水を配管26から排出するようにしてもよい。
【0019】
このような電解析出装置において用いられる電極材料としては、通常の電気透析装置や電気分解装置などの電気化学的反応装置に用いられている様々な材質、形状のものを用いることができる。材質としては、活性炭材料、グラファイト炭素繊維などの炭素系材料、並びに、銅、ニッケル、チタン、二酸化鉛、フェライト、ステンレスなどのような各種導電性金属材料、さらにこれら金属材料に貴金属のコーティングを施した材料を挙げることができる。また、特に処理対象の金属を析出させる陰極として金属材料を用いる場合には、対象の金属と同じものを陰極材料として用いることが好ましい。また、形状としては、板状、棒状、多孔質、繊維状、フェルト状、スポンジ状などの形状の材料を用いることができ、比表面積が大きい形状のものほど、電極電流密度が小さくなり、目的とする電極反応を制御しやすくなるので好ましい。
【0020】
また、例えば図3に示す電解析出装置のように電極を通して水を流通させる方式の場合には、電極の材料として十分な通水性を有することが要求される。さらに、図2に示すような電解析出装置においても、電極を通して水を流通させることが好ましい場合がある。このような場合に好ましく用いることのできる通水性の電極材料としては、エキスパンデッドメタル、金属斜交網材料、格子状金属材料、網状金属材料などを挙げることができる。このような通水性の電極材料としては、具体的には、金網、パンチングメタル、エキスパンドメタル(ラスメタル仕様)、発泡金属、繊維状金属などを挙げることができる。陽極に用いる場合には、チタンで作られたこれらの形状のものに白金メッキしたものを用いることが好ましい。また、陰極に用いる場合には、ステンレスで作られたこれらの形状のものを用いることが好ましい。
【0021】
また、電解析出装置21の電解室25内において、陰極に接触させて通水性導電体の層を配置すると、金属の析出場として機能する陰極の実質的な表面積を増大させることができるのでより好ましい。例えば、図4に示す装置は、図3に示す装置の電解室25内において、陰極に接触させて通水性導電体28の層を配置したものである。この目的で用いる通水性導電体としては、陰極の実質的な表面積を増大させる目的で使用するので、表面積が大きいものが好ましく、炭素または金属などの導電性のシート状繊維材料が好ましく用いられる。具体的な例としては、例えば、炭素繊維によって形成される不織布シート材料(例えば、フェルト状活性炭繊維シート)、発泡金属、金属繊維シートなどを挙げることができる。また、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸して焼成炭化させ、さらにグラファイト化させた多孔質板も導電層28として好適に使用できる。
【0022】
また、金属繊維を不織布上に加工しさらに焼結させた焼結金属繊維も好適に使用できる。発泡金属や金属繊維シートに用いることのできる金属としては特に制約は無いが析出させる金属イオンと同じ金属を用いることが析出させた金属の再利用が容易に可能なことからから好ましい。また、鉛や亜鉛などの、水を電気分解する過電圧が高い金属を発泡金属や金属繊維シートとして用いた場合には、化学式(5)による水の分解が起こりにくくなり、運転可能な電圧の範囲が広がって運転操作が容易となるとともに、不要な化学反応に使われる電流が少なくなり目的とする金属イオンの析出に使用される電流の比率が高くなるので電流効率が高くなるので好ましい。
【0023】
なお、上記に説明した活性炭繊維のフェルト状シート材料は、フェルト状の炭素繊維シートがそのまま提供されるものと、フェルト状シートの両面に、ポリエチレンテレフタレートアクリル酸エステルのフィラメントシート、または、ポリアミド、ポリプロピレンおよび含水珪酸マグネシウムを混練紡糸して形成される長繊維の不織布などや、あるいは紙などの薄いシートを補強材として貼付した形態で提供されるものとがある。このような炭素繊維フェルト状シート材料を、本発明に係る装置において陰極の表面積を増大させるための通水性導電体として用いる場合には、シートを必要に応じて複数枚積層して配置することができる。また、本発明者らの実験によれば、両面に、補強用の長繊維積層不織布や紙などのシートが貼付されたままの形態で、フェルト状シートを必要に応じて複数枚積層して本発明に係る装置内に装填することによって、廃水中の金属の析出をより促進させることができることが分かった。これは、導電性の繊維シートの間に、不織布や紙などの非導電性の薄いシートが介在することにより、この箇所での電位差が大きくなって金属が析出しやすい電位差を得ることができるためである。したがって、本発明においては、導電性の繊維材料を複数枚積層配置して、各層の間の少なくとも一つに非導電性材料のシートを配置することによって導電体層を形成してもよい。また、複数枚積層配置されている導電性繊維材料のそれぞれの層の間にこのような非導電性のシートを配置すると、当該シートが配置された箇所のそれぞれが金属の析出場として機能するので、導電体層の全体に亘って金属を析出させることができるという効果も得られる。また、同様の考え方により、通水性導電体の層とカチオン交換体の層との間に、非導電性材料のシートが配置されていてもよい。この場合にも、非導電性のシートが介在することによって、陰極として作用する通水性導電体と、カチオン交換体との間の電位差が大きくなって、金属が析出しやすくなる場合があると考えられる。
【0024】
また、各種金属によって形成される通水性の発泡金属材料または焼結金属繊維を、上記の目的の通水性導電体として、上記に説明したような導電性繊維材料に代えて、あるいはこれと組み合わせて用いることができる。発泡金属材料も、繊維材料と同様に極めて表面積が大きく、陰極の実質的な表面積を増大させて金属を効率よく電解析出させるための導電性材料として好適である。かかる目的で用いることのできる通水性の発泡金属材料としては、例えば、銅発泡金属などを挙げることができる。
【0025】
例えば、後述するように、本発明に係る電解析出装置を半導体装置製造プロセスにおけるCMP廃水や銅メッキ廃水、電解研磨廃水などの処理に用いて、廃水中の銅を除去・回収する目的で用いる場合、廃水中には銅イオン以外の金属イオンが実質的に存在しない場合がある。このような廃水を処理して銅を回収するプロセスにおいて、陰極として作用させる導電性材料として銅の発泡体を用いれば、廃水中には金属イオンとして実質的に銅しか存在していないので、電解析出によって銅発泡体にさらに銅が析出することになる。したがって、電解析出運転の後に導電性材料である銅発泡体を回収すれば、特に精製工程を必要としないでそのまま銅材料として再利用することが可能である。
【0026】
上記に説明したように、本発明の好ましい態様においては、電極間の電解室内において、通水性導電体の層を陰極に接触させて配置することが好ましい。しかしながら、このような導電体の層を陰極と別に配置することは必ずしも必要ではなく、例えば、上記に説明した炭素繊維材料や通水性発泡金属材料などを陰極それ自体として使用することで、陰極の表面積を増大させることもできるし、あるいはエキスパンデッドメタルまたは金網などで形成された陰極を複数枚積層して配置することで、陰極の表面積を増大させることもできる。また上記の炭素繊維材料,通水性発泡金属材料,エキスパンデッドメタルおよび金網などを任意に組み合わせて陰極の表面積を増大させることもできる。また、同様の材料を陽極材料として用いることで、陽極の表面積を増大させることもできる。
【0027】
また、電極間の電解場に粒状導電体を存在させて、これを陰極として機能させることによって、陰極の実質的な表面積を増大させると共に、処理対象の金属が析出した粒状導電体をバッチ式または連続的に回収することで、金属の回収作業を簡便にすることができる。例えば、図5にこのような形態の電解析出装置を示す。図5に示す電解析出装置21は、図3に示す装置の電解室25に、粒状導電体31を存在させたことを特徴とする。粒状導電体31は、電解室25内にバッチ式に充填する、すなわち所定量の粒状導電体31を充填した状態で電解析出運転を行い、所定量の金属析出が得られた後に粒状導電体31を回収することができ、あるいは粒状導電体31を電解室に連続的に水流などによって供給・回収することもできる。電解室25内の粒状導電体31は、陰極22と接触することによって陰電荷を帯び、これにより廃水中の金属イオンが電極反応によって粒状導電体31の表面に金属として析出する。例えば、図5に示すように、このような粒状導電体31を水流などによって電解室25に連続的に供給・回収すれば、処理対象の金属を連続的に回収することができるし、粒状導電体31の電解室25への供給・回収はバッチ式で行ってもよい。但し、このような装置の場合、陰電荷を帯びた粒状導電体31と陽極とが接触して短絡することを防ぐために、陽極の表面に透水性且つ絶縁性の隔膜32を配置する必要がある。この目的で使用される絶縁性の隔膜32としては、樹脂、セラミック等からなるものを用いることができ、電極と同様に、網状材料、斜交網材料、格子状材料などを用いることができる。また、かかる形態で使用することのできる粒状導電体31としては、陰極と同様の導電体を使用することができ、例えば、粒状の金属、黒鉛、活性炭等を用いることができる。処理対象の金属と同種の金属粒子を用いるとより好ましい。なお、図4に示すような陰極に接触させて通水性導電体を装填した形態の装置においても、通水性導電体と陽極との間に粒状導電体を存在させることができる。
【0028】
次に、金属イオンを含む廃水をイオン交換処理にかける操作は、例えばビーズ形状のイオン交換樹脂を充填したカラムや、織布・不織布などの繊維材料や多孔膜あるいは斜交網等のスペーサー部材などの形態のイオン交換体に対して、金属イオンを含む廃水(被処理水)を通液することによって、廃水中に残留している金属イオンMn+をイオン交換によってイオン交換体に吸着させることによって、廃水中から残留する金属イオンをより高度に除去・回収するというものである。イオン交換処理における廃水の通水方法としては、イオン交換体の層に廃水を通液する方法と、イオン交換体の層の表面に沿って廃水を流す方法とがあるが、何れの方法を採用してもよい。
【0029】
この目的で用いることのできるイオン交換体樹脂ビーズとしては、当該技術において公知のものを用いることができる。例えば、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋したビーズなどを基材樹脂として用い、これを硫酸やクロロスルホン酸のようなスルホン化剤で処理してスルホン化を行なって基材にスルホン基を導入することにより、本発明で使用することのできる強酸性カチオン交換樹脂ビーズを得ることができる。このような製造方法は当該技術において周知であり、またこのような手法によって製造されたカチオン交換樹脂ビーズとしては、種々の商品名で市販されているものを挙げることができる。また、官能基として、イミノジ酢酸およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有する樹脂ビーズを用いてもよい。
【0030】
また、同様の目的で用いることのできるイオン交換繊維材料としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、厚みが均一に製造できるので、上記の目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0031】
また、斜交網等のスペーサー部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので、好ましい。
【0032】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
【0033】
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、ガンマ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはガンマ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0034】
不織布などの繊維基材やスペーサー基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基またはアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができ、あるいは、上記カチオン交換基およびアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。また、官能基としてイミノジ酢酸およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0035】
これらの各種イオン交換基は、これらのイオン交換基を有するモノマーを用いてグラフト重合、好ましくは放射線グラフト重合を行うか、または、これらのイオン交換基に転換可能な基を有する重合性モノマーを用いてグラフト重合を行った後に当該基をイオン交換基に転換することによって、繊維基材またはスぺーサー基材に導入することができる。この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、またはクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。あるいは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0036】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布または織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布、不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポアまたはマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、全てのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、被処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。したがって、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0037】
本発明は、金属イオンを含む被処理水を処理して、金属イオンを回収する装置において、上記に説明した電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせて用いることを特徴とする。電解析出操作によって被処理水中の金属イオンを除去・回収する方法は、ある程度高い濃度の金属イオンを含む被処理水の処理には好適に用いることができ、対象の金属イオンを金属として回収することができるという利点を有するが、被処理水中の金属イオン濃度が低くなると、運転電圧が高くなるという問題がある。また、イオン交換操作によって被処理水中の金属イオンを除去・回収する方法は、金属イオン濃度が低い被処理水の処理に好適に使用することができるが、イオン交換体に吸着させて回収するので、この吸着した金属イオンを溶離させて回収する際に大量の酸を必要とすること、被処理水の金属イオン濃度が高かったり、あるいは被処理水の水量が大きかったりすると、金属回収量が大きくなるため、イオン交換体から金属イオンを溶離させて回収する作業の頻度が多くなり高い負担になること、金属イオンとして回収されるので、これから金属を金属単体として回収するためには電解析出等の更なる処理が必要であることなどの問題がある。
【0038】
本発明は、このような長所と短所とを併せ持つ電解析出操作およびイオン交換操作を組み合わせて被処理水の処理に使用することで、両者の短所を補いながら長所を組み合わせて、被処理水の水質および水量の変動に対応した適切な処理を行うことを可能にしたものである。
【0039】
図6は、本発明によって被処理水を処理する装置を示す。図6に示す装置は、互いに直列に接続され、廃水(被処理水)を処理する電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを備えている。例えば、半導体装置製造プロセスのCMPユニットやECPユニットあるいは銅メッキユニットなどの処理ユニット51からの銅イオンなどの銅イオンを含む廃水は、まず廃水タンク52に受容され、次に電解析出ユニット53にかけられ、廃水中に含まれている銅イオンの十分量が電解析出操作により銅金属として回収される。電解析出ユニット53で処理された処理水は、次にイオン交換ユニット54にかけられ、残余の銅イオンがほぼ完全に除去された後に、処理水55として排出することができる。
【0040】
また、廃水タンク52中に銅イオン濃度測定装置56を設置し、廃水中の処理対象の銅イオン濃度が所定の濃度以下であるために、電解析出操作による効率的な処理が望めないことが予測される場合には、切替えバルブ58を切替えることにより、廃水を廃水タンク52から、電解析出ユニット53をバイパスして、直接イオン交換ユニット54に送るようにすることもできる。また、銅イオン濃度の測定値に応じて、濃度が低い場合には電解析出ユニット53を停止するかまたは供給する電流を少なくしてもよい。
【0041】
図7は、本発明の他の実施形態に係る被処理水の処理装置を示す。図7に示すように、電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを直列に接続した形態の装置においては、電解析出ユニット53から排出される処理水の少なくとも一部を戻し配管71によって廃水タンク52に戻して、再び電解析出ユニット53にかけることによって、金属イオンの除去・回収の効率をより高めることができる。
【0042】
図8は、本発明のさらなる他の実施形態に係る被処理水の処理装置を示す。図8に示すように、イオン交換ユニット54から排出される処理水の一部を配管72によって廃水タンク52に戻して、再び電解析出ユニット53およびイオン交換ユニット54にかけるように装置を構成することもできる。
【0043】
なお、図6から図8で説明したような直列接続の装置においては、電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを入れ替えて廃水がまずイオン交換ユニットに導入された後、電解析出ユニットに導入されるようにしてもよい。
【0044】
また、図9は、被処理水の処理において電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを並列に接続した、本発明のさらなる他の実施態様に係る被処理水の処理装置を示す。例えば、半導体装置製造プロセスのCMPユニットやECPユニットあるいは銅メッキユニットなどの処理ユニット51からの銅イオンなどの金属イオンを含む廃水(被処理水)は、まず廃水タンク52に受容され、次に、バルブ62を通して適宜量が処理タンク61に供給される。処理タンク61に受容された廃水は、バルブ58によって電解析出ユニット53との間を循環され、これによって廃水中の銅イオンの十分量を電解析出操作により銅金属として回収することができる。電解析出操作によって銅イオン濃度が所定の値以下に低下したら、次にバルブ59によって廃水がイオン交換ユニット54との間を循環される。これによって、廃水中の銅イオンをほぼ完全に除去することができる。銅イオンがほぼ完全に除去された処理水55は処理タンク61から排出される。この場合、処理水タンク61内に銅イオン濃度測定装置56を設置して、廃水中の処理対象の銅イオンの濃度を測定し、その濃度値に応じて電解析出ユニット53およびイオン交換ユニット54との間のバルブ58,59の開閉を制御することができる。なお、図9においては、バルブ58、59は各々二つずつ設けられているが、それぞれ1つ以上であればよい。
【0045】
図40A,図40B,図41,および図47はイオン交換操作の一形態である電気透析操作を用いて金属イオンを濃縮した濃縮水に対して電解析出操作を行う装置を示す。図40A,図40B,図41,および図47に示されるように、被処理水15は電気透析操作により、金属イオンが除去され、金属イオン濃度が減少した処理水55が得られる。金属イオンを受入れた濃縮水44は電解析出装置45において電解析出操作に供されて、金属イオンは金属の形態で回収される。金属イオンの濃縮水44は、金属イオン濃度が被処理水15よりも高くなるので電解析出操作を低電圧で行うことができるようになる。電気透析操作においては、濃縮室41に隣接する陰極側の室には被処理液を供給してもよいし、被処理液の代わりに硫酸イオン(SO42−)、硝酸イオン(NO3−)、塩素イオン(Cl−)などを含む酸あるいは塩溶液を供給してもよい。濃縮室41と脱塩室42の間に両室のイオン濃度差を緩和することを目的としたバッファー室43を設けてもよい(図41参照)。脱塩室42にはカチオン交換体を充填する。濃縮室41には、カチオン交換体またはアニオン交換体を充填してもよい。バッファー室43はカチオン交換体を充填し、脱塩室42または濃縮室41との境界にはカチオン交換膜111を設けるものを挙げることができる。バッファー室43には純水を連続的に供給してもよいし、循環させてもよい。循環させる場合はイオン交換樹脂層を循環ライン内に設けることにより、イオン濃度を長期にわたって低く安定化させることができる。
【0046】
また、図40A,図40B,図41,および図47に示される装置において、イオン交換操作は電気的にイオン交換体の再生が可能なものを採用することができる。電気的に連続再生を行えるイオン交換操作が好ましい。イオン交換操作により、被処理水15から金属イオンが除去される。イオン交換体は電気的に再生されるため、イオン交換体の交換は不要である。金属イオンの濃縮水44は電解析出装置45において電解析出操作に供されて、金属イオンは、金属、金属酸化物、金属水酸化物の形態で回収される。電解析出操作の処理水はイオン交換操作に返送し、金属イオン濃縮水44の原水として循環させることができる。金属イオンの濃縮水44は、金属イオン濃度が1000ppm以上と高く、析出操作を低い電圧で行うことができる。イオン交換操作においては、濃縮室41に隣接した陰極側の室にSO42−、NO3−などを含む、酸あるいは塩溶液を存在させることが好ましい。濃縮室41内に濃縮されたSO42−などの陰イオンは、電気透析、拡散透析などの透析操作を濃縮水ライン途上に設けることにより、回収し、再利用することができる。本方法では、被処理水15が直接的に電極反応を受けないため、電極反応による被処理水15中溶存物質の変質、pH変化の影響などを受けにくい利点がある。
【0047】
次に、図47に示される処理フローについて詳述する。被処理水15は電気透析装置において分離処理に供されてCu濃縮水44を得る。次に、Cu濃縮水44を回収処理に供する。回収処理水は、破線で示されるように分離処理に返送してもよい。回収処理としては電解析出装置を用いることができる。分離処理としては公知の電気透析装置を用いることもできる。分離処理または回収処理それぞれは、並列接続または直列接続としてもよい。回収ライン途上に、電気透析または拡散透析操作をさらに設けて陰イオンを回収し、陰極室に供給する構成としてもよい。
【0048】
このように、本発明によれば、幅広い金属イオン濃度の各種の被処理水を、被処理水中の金属イオン濃度に応じて適切な処理を行うことができる。したがって、通常100mg/l以下の銅濃度を有するCMP廃液、100mg/l以下の銅濃度を有するメッキリンス液、2000mg/l〜10%の銅濃度を有する廃メッキ液の処理を、全て本発明の廃水処理装置によって処理して、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、廃水中の銅イオンの十分量を、銅金属として回収することができる。
【0049】
また、本発明の他の態様によれば、カチオン交換体を電解析出装置の内部に組み込む。このように電解析出装置の内部にカチオン交換体を組み込むことにより、このカチオン交換体によって、金属イオン(カチオン)の捕捉が行われると共に、電解場にイオン交換体を配置することにより後述する水分子が分解する反応場(水解場)が形成されて、これによって電解析出装置の運転電圧が下がる。また、水分子が分解し始める電圧(理論電解電圧+過電圧)はイオン交換体と接触する電極または透水性通電体の材料の組合せで異なる。過電圧が低い白金や銅は低い電圧で水分解を起こすが、過電圧が高い炭素、鉛、亜鉛などは水分解を起こすのに白金や銅に比べて高い電圧を必要とする。このため、両極間にイオン交換体を装填した電解析出装置においては、通水性の導電体を含む陰極と陽極の材料を適切に選定することにより、陰極側と陽極側の水分解の発生を制御することができる。
【0050】
このように水分解の発生を制御することによって電流効率が大幅に増大する。ここで、電流効率とは、前述の電極反応の式の(3)/((3)+(4)+(5))の電流の比率である。このため、従来、電解析出装置では処理することのできなかった低い金属イオン濃度の被処理水にも電解析出法を適用して、被処理水中の金属イオンを効率的に除去・回収できることができる。
【0051】
すなわち、本発明の他の態様は、対向して配置された陽極および陰極と、これら両電極間に装填されているカチオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置に関する。このように、電解析出装置において、陽極と陰極との間にカチオン交換体を装填し、通電しながら両電極間に被処理水を流通させると、被処理水中の金属イオン(カチオン)は、陰極に析出する他にカチオン交換体のカチオン交換基によってイオン交換されて捕捉される。カチオン交換体に捕捉された金属イオンは、両電極間の電位勾配により、カチオン交換体の表面を陰極側に向かって移動し、陰極の表面上で電極反応により金属として析出する。したがって、両電極の間での金属イオンの移動がカチオン交換体の表面上で起こるので、被処理水中の金属イオン濃度が極めて低い状態となっても、運転電圧の上昇を伴うことなしにイオンの移動がスムーズに行われる。また、両電極間にカチオン交換体を装填することで、陽極とカチオン交換体との接触点が、低電圧で水分子が解離する反応場(水解反応場)として作用し、ここで発生したH+イオンによってカチオン交換体のカチオン交換基が次々と再生されるので、低電圧で電解運転を継続することが可能になる。
【0052】
このように、電気分解および電極反応による析出によって被処理水中の金属イオンを除去・回収する所謂電解析出装置において、陽極と陰極との間にカチオン交換体を配置して、金属イオンの動きを制御するという考え方を採用したものは、本発明者らが知る限りにおいてこれまで存在しなかった。
【0053】
図10は、図3に示すような形態の電解析出装置にカチオン交換体を組み込んだ本発明の一態様に係る電解析出装置の概念を示す。図10に示す電解析出装置101は、通水性の材料で形成された陰極102と陽極103とを有し、さらに両電極の間の電解室内にカチオン交換体の層108が配されている。カチオン交換体の層108は、運転電圧の安定を考慮すれば陰極および陽極の両方に接して配されていることが好ましい。しかしながら、カチオン交換体の層は、陰極または陽極のいずれか一方に接していてもよく、あるいは両方に接していなくてもよい。また、陰極102の外側には給排水管106が、陽極103の外側には給排水管107が配設されており、電極およびカチオン交換体よりなる複合層を通して廃水(被処理水)を流すように構成されている。
【0054】
図10に示す構成の電解析出装置101に対して、管107から廃水を供給し管106から処理水を排水した場合、廃水はまず陽極103を通過し、次にカチオン交換体の層108を通過し、ここで廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)がカチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の上を陰極102に向かって移動し、陰極102の表面上で、電極反応によって金属として析出する。このようにして、廃水中の金属イオンが電解析出によって除去され、処理された水が管106から処理水として排出され、金属が回収される。
【0055】
また、図10に示す構成の装置は、管106から廃水を供給し管107から処理水を排水することもできる。この場合、廃水はまず陰極102を通過し、ここで廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)が、陰極102の表面上で、電極反応によって金属として析出する。陰極102を通過した廃水は、次にカチオン交換体108の層を通過する。ここで、廃水中に残留する金属イオンが、カチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の表面を陰極102に向かって移動し(戻され)、陰極102の表面上で電極反応によって金属として析出する。処理された水は管107から処理水として排出される。
【0056】
図10に示す電解析出装置は、上述の通水形態のいずれをも採ることができるが、本発明者らの実験によれば、陰極側から陽極側へ廃水を流通させる方式、すなわち、陰極で捕捉しきれなかった残留金属イオンを、続くカチオン交換体の層で捕捉して、電位勾配によって陰極側に引き戻して析出させる方式の方が、金属イオンの除去効率がより高く、好ましいことが分かった。
【0057】
上記のような目的で電解析出装置内に装填されるカチオン交換体の層は、層として十分な通水性を有することが求められる。このような通水性のカチオン交換体の層は、例えば、カチオン交換樹脂ビーズを、装置内の所定の位置(すなわち、図10に示す形態の場合には、陽極103と陰極102との間)に充填することによって形成することができる。また、上記に説明したようなカチオン交換繊維材料やカチオン伝導スペーサーを、陰極と陽極との間に装填することもできる。
【0058】
なお、図10に示すような形態の電解析出装置において、電解室内に、イミノジ酢酸基などのキレート基を有する樹脂ビーズ材料、繊維材料、スペーサーなどを充填してもよく、あるいは、これらを上記に説明したカチオン交換体と混合充填してもよい。
【0059】
また、図10に示すような形態の電解析出装置においても、上記に説明したように電極間の電解室内において通水性導電体の層を陰極に接触させて配置し、当該通水性導電体の層と陽極の間にカチオン交換体の層を充填することによって、陰極の実質的な表面積を増大させることが好ましい。かかる形態の電解析出装置の一具体例を図11に示す。図11に示す電解析出装置101は、通水性の材料で形成された陰極102と陽極103とを有し、さらに両電極の間に、陰極102と接触して配置されている通水性導電体の層109と、当該通水性導電体層109と陽極103との間に、両者に接触して配置されているカチオン交換体の層108を有する。カチオン交換体の層108は、運転電圧の安定を考慮すれば通水性導電体の層109および陽極103の両方に接して配されていることが好ましい。しかしながら、前述したように、カチオン交換体の層は、陰極または陽極のいずれか一方に接していてもよく、あるいは両方に接していなくてもよい。また、両電極の外側には、給排水口106および107が配設されており、電極、導電体およびカチオン交換体よりなる複合層を通して廃水(被処理水)を流すように構成されている。
【0060】
図11に示す構成の電解析出装置101に対して、管107から廃水を供給し管106から処理水を排水した場合、廃水はまず陽極103を通過し、次にカチオン交換体の層108を通過し、ここで廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)がカチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の上を陰極102に向かって移動する。通水性導電体109は陰極102と接触して配置されているので、陰極として機能する。したがって、カチオン交換体108上を移動してきた金属イオンは、陰極として機能する通水性導電体の層109の表面上で、電極反応によって金属として析出する。このようにして、廃水中の金属イオンが電解析出によって除去され、処理された水が管106から処理水として排出され、金属が回収される。
【0061】
また、図11に示す構成の電解析出装置101も、管106から廃水を供給し管107から処理水を排水することもできる。この場合、廃水はまず陰極102を通過し、次に通水性導電体層109を通過する。通水性導電体層109は陰極2と接触して配置されているので、陰極として機能する。したがって、廃水が通水性導電体層109を通過する間に、廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)が、陰極として機能する通水性導電体109の表面上で、電極反応によって金属として析出する。通水性導電体層109を通過した廃水は、次にカチオン交換体108の層を通過する。ここで、廃水中に残留する金属イオンが、カチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の上を陰極102に向かって移動し(戻され)、通水性導電体109の表面上で電極反応によって金属として析出する。処理された水は管107から処理水として排出される。
【0062】
上述したように、図11に示す電解析出装置101においては、廃水を管107から供給し管106から排出しても、管106から供給し管107から排出してもいずれであってもよい。本発明者らの実験によれば、陰極側から陽極側へ廃水を流通させる方式、すなわち、陰極として機能する通水性導電体の層で捕捉しきれなかった残留金属イオンを、続くカチオン交換体の層で捕捉して、電位勾配によって陰極側に引き戻して析出させる方式の方が、金属イオンの除去効率がより高く、好ましいことが分かった。
【0063】
このような目的で用いられる導電体も、それを通して水を通過させるので、通水性を有することが求められる。このような導電体としては、上記において説明したような活性炭繊維シートや通水性発泡金属材料などを用いることができる。
【0064】
また、図10に示すような電解室内にカチオン交換体を装填した形態の電解析出装置においても、粒状導電体を電解室内に存在させることによって金属が析出する陰極の実質的表面積を増大させることができる。かかる形態の電解析出装置の一具体例を図12に示す。図12に示す電解析出装置101は、陰極102と陽極103との間に形成される電解室内に、陽極103に接触させてカチオン交換体の層108を装填し、さらに、カチオン交換体の層108と陰極との間に粒状導電体110を存在させたことを特徴とする。粒状導電体110は、陰極102と接触することによって陰電荷を帯び、これにより廃水中の金属イオンが電極反応によって粒状導電体110の表面に金属として析出する。なお、カチオン交換体の層は、陽極または粒状導電体に接していなくてもよい。粒状導電体110によって捕捉されなかった金属イオンは、カチオン交換体108によって捕捉され、両電極の間の電位勾配によって陰極に向かって引かれ、陰電荷を帯びた粒状導電体110がカチオン交換体108に接触することによって、カチオン交換体108の表面を移動してきた金属イオンが、粒状導電体110の表面上で電極反応によって金属として析出する。図12において、粒状導電体を含む水の通水方向は上方から下方となっているが、下方から上方でもよい。図5に関して説明したように、粒状導電体110は水流などによって連続的に供給・回収することもできるし、あるいは粒状導電体110の供給・回収をバッチ式で行うこともできる。また、図12に示す形態の電解析出装置においては、図5に示す装置とは異なり、陽極上に導電性を有しないカチオン交換体の層108が配置されているので、陰電荷を帯びた粒状導電体110と陽極103とが接触することを防止するための絶縁性の隔膜(図5のダイヤフラム32)は必ずしも配置する必要はない。この目的で使用される粒状導電体110としては、図5に関して上記に説明した各種の材料を用いることができる。また、図11に示すように陰極に接触させて通水性導電体を装填した形態の装置において、通水性導電体の層109とカチオン交換体の層108との間に空間を形成し、ここに粒状導電体を存在させることができる。
【0065】
なお、電解析出装置内にイオン交換体を組み込む場合、運転電圧の低減のみを考える場合には、アニオン交換体を装填してもよい。この場合、アニオン交換体による金属イオンの捕捉は期待できないが、水解が発生することによって運転電圧が低減するという効果は得られる。アニオン交換体を電極内に装填した場合、陽極とアニオン交換体との接触点が、低電圧で水分子が解離する反応場(水解反応場)として作用してOH−イオンが発生し、このOH−イオンによってアニオン交換体のアニオン交換基が次々と再生されることにより、低電圧の電解運転が可能になる。よって、金属イオン濃度が低い廃水の処理には、電解析出装置内にアニオン交換体を装填し、回分式にて電解析出装置処理水を再度電解析出装置に通水し、これを繰り返すことで所望の除去率を達成することが可能な場合がある。したがって、本発明のより広い態様は、対向して配置された陽極および陰極と、これら両電極間に装填されているイオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置に関する。なお、本方法においては、金属イオンがOH−イオンの影響を受けて金属水酸化物または金属酸化物の形態で水中から除去される場合がある。このような効果も利用して処理性能を高めることもできる。
【0066】
さらに、導電体の層とカチオン交換体の層との間にカチオン交換膜を配して、金属イオンの移動を行わしめることができる。かかる態様の電解析出装置の概念を図13に示す。図13に示す電解析出装置121は、陰極102と陽極103との間の電解室において、陰極102に接触して導電体の層109が装填され、陽極103に接触してカチオン交換体の層108が装填されている。そして、導電体の層109とカチオン交換体の層108との間にはカチオン交換膜111が装填されている。このような構成の装置に、例えば図13に示すように、金属イオンを含む廃水122を、まず導電体の層109に通し、次にカチオン交換体の層108に通すと、まず、陰極として機能する導電体109の表面上で廃水中の金属イオンが析出する。導電体によって捕捉されずに廃水中に残留した金属イオンは、次に廃水がカチオン交換体の層108を通過する間にカチオン交換体によって捕捉される。カチオン交換体によって捕捉された金属イオンは、電位勾配によって陰極に引かれ、カチオン交換膜111を通過して導電体の層109に移動し、陰極として機能する導電体の表面上で金属として析出する。カチオン交換体の層108からは、金属イオンが除去された処理水123が得られる。このような装置においては、電極102および103の材料としては、通水性は必ずしも要求されない。なお、図13に示す電解析出装置においても、廃水の流れを図13とは逆に、すなわち、まずカチオン交換体の層108を通し、次に導電体の層109を通すようにしてもよい。また、カチオン交換膜の破損防止のために、カチオン交換膜と導電体の層との間にクッション材としてカチオン交換体を挿入してもよい。さらに、カチオン交換膜と導電体またはカチオン交換体と導電体の間に空間を設けてもよい。金属イオンは導電体の層109に析出する際に細かい針状の結晶として析出し、結晶が成長する過程で折れて金属微粒子を発生することがある。また銅酸化物や銅水酸化物の粒子を発生することがある。このため、導電体の層109を通過した水に対して、導電体層109で発生した金属含有微粒子を除去する目的で、フィルタ設備を設けてカチオン交換体層108に通水してもよい。この場合は、フィルター設備を通した水をイオン交換体の層に供給することでイオン交換操作を安定して行うことができる。
【0067】
また、図38および図39に示す構成としてもよい。図38に示すように、金属イオンを含む被処理水122をカチオン交換体の層108を通して透水性の陽極103から抜き出す際に金属イオンはカチオン交換体によって補足される。カチオン交換体によって捕捉された金属イオンは電位勾配によって陰極102に引かれカチオン交換膜111を通過して導電体の層109に移動し、陰極として機能する導電体の表面上で金属として析出する。カチオン交換体の層108からは、金属イオンが除去された処理水123が得られる。このような装置においては、陰極の材料としては、通水性は必ずしも要求されない。また陰極として機能する導電体は溶液中に浸漬されていればよく、必ずしも溶液が流れている必要はない。また、カチオン交換体への被処理液の供給は1ヶ所からでもよいが、複数箇所から供給するとイオン交換体が有効に利用されるので好ましい。また、図39に示すようにカチオン交換体に供給した水122は直接カチオン交換体の層108から抜き出してもよい。ここでカチオン交換体から抜き出した処理水123の一部をカチオン交換体の入口部に戻してもよい。このような装置においては、陽極および陰極の材料としては、通水性は必ずしも要求されない。
【0068】
次に、電解析出装置内にイオン交換体を装填する場合のイオン交換体と陰極との関係を説明する。電解析出装置内にイオン交換体を装填した場合には、イオン交換体が捕捉した金属イオンを陰極に引き寄せて陰極表面で析出させる。したがって、電圧の低減を図るためにはイオン交換体と陰極とが接触していた方がよい。しかしながら、金属が析出していくにつれて陰極の体積が増大していく。この際、特にイオン交換体として織布、不織布などのイオン交換繊維材料を用いた場合、陰極がイオン交換繊維材料の繊維を取り込みながら体積を増大させていくという現象がみられることがある。このため、陰極を取り出して金属を回収する際に、陰極内に取り込まれた繊維を除去する作業が必要になり作業が煩雑になる場合がある。そこで、場合によっては、陰極とイオン交換体との間に多少の間隙、例えば0.1〜2mm程度の間隙を形成することが好ましい。このような間隙は、例えば、陰極とイオン交換体との間に、透水性の紙、不織布または斜交網形状などのスペーサーを挟んだり、あるいは枠部材を挿入することによって形成することができる。なお、上記ではイオン交換体と陰極との関係を説明したが、陰極として機能する通水性導電体の層を配置する場合には、イオン交換体と通水性導電体の層との間にも同様のことが言えることは言うまでもない。
【0069】
次に、電解析出装置内にイオン交換体を装填する場合のイオン交換体と陽極との関係について説明する。電解析出装置内にイオン交換体を装填すると、イオン交換体に吸着された金属イオンが、電位勾配によってイオン交換体上を陰極に向かって移動する。この際、水解によって発生するH+イオンによってイオン交換基に結合している金属イオンが押し出され、イオン交換基の上を次々に渡って陰極に向かって移動する。しかしながら、H+イオンによる押出しによる金属イオンの移動は電流効率が悪い場合があり、廃水中の金属イオン濃度が高い場合には廃水中をイオンが移動する方が金属イオン移動の電流効率がよくなる場合がある。そこで、例えば、図11に示す電解析出装置101において、陽極103を可動型として、廃水の金属イオン濃度が高い場合には、陽極103とイオン交換体の層108とを離隔することによって、金属イオンの移動の電流効率を向上させることができる。
【0070】
図14は、本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す。図14に示す電解析出装置131は、2枚の陽極103の間に陰極109が離隔して配置されていて、陽極と陰極との間のスペースの一方にイオン交換体の層108が両極に接触して装填されている。これによって、一つのモジュール内において、陽極と陰極との間の電解室にイオン交換体が装填されているタイプの電解析出槽と、陽極と陰極との間の電解室にイオン交換体が装填されていないタイプの電解析出槽とが直列に配置される。
【0071】
このような電解析出装置131に対して、水供給管107から廃水(被処理水)132を供給すると、廃水は、まず、イオン交換体が装填されていない電解室内で第1段の電解析出処理にかけられ、次に、イオン交換体が装填されている電解室内での第2段の電解析出操作にかけられる。したがって、ある程度の高い金属イオン濃度を有する廃水をこのような電解析出装置131で処理すると、第1段の電解析出操作によってまず金属イオンの粗回収が行われ、次に、第2段の電解析出操作によって金属イオンの高度回収(ポリッシング)が行われる。
【0072】
図15は、本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す。図15に示す電解析出装置は、廃水132の入口方向から順に、陽極103、間隔をおいて陰極109、間隔をおいて陰極109、陰極に接触してイオン交換体108、イオン交換体に接触して陽極103の順に配列している。この場合、前段の陽極と陰極が順序が逆でもよい。また、後段の陰極と陽極についても順序が逆でもよい。
【0073】
さらに、図3から図5に示すような電解室内にイオン交換体を配置しないタイプの電解析出装置と、図10から図13に示すような電解室内にイオン交換体を配置するタイプの電解析出装置とを組み合わせて処理装置を構成することもできる。例えば、図16Aに示すように、電解室内にイオン交換体を配置しないタイプの電解析出装置201と電解室内にイオン交換体を配置するタイプの電解析出装置202とを直列に接続し、金属イオンを含む被処理水210を通水することにより、第1段の電解析出装置201によって金属イオンの粗回収を行い、次に第2段の電解析出装置202によって金属イオンの精密回収を行うことによって、ある程度以上の濃度の金属イオンを含む被処理水を処理して、金属イオンが除去された処理水211を得ることができる。また、図16Bに示すように、これらの電解析出装置201、202を並列に接続し、被処理水210をまず水タンク203に受容して、金属イオン濃度測定装置204によって被処理水中の金属イオン濃度を測定し、その測定値に応じて、被処理水の金属イオン濃度に対応した適切な電解析出装置に被処理水を通水して金属イオンの除去・回収を行うことができる。なお、このような処理装置で得られた処理水211は、必要に応じてさらに上記に説明したようなイオン交換操作にかけて、被処理水中の金属イオンを完全に除去することもできる。
【0074】
なお、図10以降を参照して上記で説明した、電解析出装置内にイオン交換体を装填する形態およびその各種バリエーションは、図2に示すような電解槽内に電極を浸漬したタイプの電解析出装置においても適用することができる。
【0075】
次に、図3、図4、図10、および図11のように、通水性の電極の間に電解室を形成するタイプの電解析出装置の通水方法の各種形態を図17を参照して説明する。図17Aから図17Fにおいて、301は電解析出装置、302は電極間の電解室、303は被処理水、304は処理水である。図17Aに示すように、被処理水303を電解析出装置301に供給し、両電極間の電解室302から処理水の少なくとも一部を回収して、水導入ラインに戻すことができる。また、図17Bに示すように、電解析出装置301を通過した処理水304の少なくとも一部を電解室302内に戻すことができる。また、図17Cに示すように、電解析出装置301を通過した処理水304の少なくとも一部を水導入ラインに戻すことができる。また、図17Dに示すように、電解室から処理水の少なくとも一部を回収して、フィルタ305などによって被処理水中の銅、銅酸化物や銅水酸化物などの微細な金属含有粒子を除去した後、再び水導入ラインに戻すことができる。ここで、フィルタの位置に、銅酸化物または銅水酸化物を溶解させる作用がある酸の注入設備を代用として用いてもよい。酸の注入設備はフィルタと併用してもよい。また、図17Eに示すように、被処理水303を、直接両電極間の電解室内に供給することができる。この形態の場合には、陰極として通水性の構造体を使用する必要がない。さらに、図17Fのように処理水を電解室302内から直接取水してもよい。図17Gに示すように被処理水303の一部を電解室302に導入して循環させてもよい。図17Hに示すように循環ラインの途中でフィルタ306を設けてもよい。フィルタ306の代用として酸注入設備を設けてもよくまたは両者を併用してもよい。図17Aから図17Hでは、電解室内にイオン交換体層や導電体層を装填した形態は示されていないが、これらの層を電解室内に装填した場合でも、同様の通水操作が可能である。また、図17は被処理水を陰極−陽極の順で通過させる形態を示しているが、被処理水を陽極−陰極の順で通過させる場合でも図17に示すような各形態の通水方法を採用することができる。
【0076】
次に、図2に示すような、電解槽内に電極を浸漬配置するタイプの電解析出装置の通水方法(撹拌方法)の各種形態を図18Aから図18Dを参照して説明する。18Aから図18Dにおいて、311は電解槽、313は被処理水、314は処理水である。電解槽内の矢印は槽内での被処理水の流れを示す。図18Aに示すように、電解槽内に撹拌用インペラーなどのような機械的撹拌装置318を配置することによって電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。インペラーの位置は極間以外の位置に設けてもよい。また、図18Bに示すように、電解槽内に仕切り板315を配置することによって電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。また、図18Cに示すように、処理水の少なくとも一部を回収して再びポンプで槽内に導入することによって槽内の水流を発生させて電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。また、図18Dに示すように、槽内に散気装置316を配置して、撹拌用ガス317を吹き込むことによって、槽内の水流を発生させて電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。
【0077】
電解析出装置を用いて金属イオンを含む被処理水を電解析出処理すると、電極反応によって電極の表面上でガスが発生する。すなわち、陰極あるいは陰極として作用する導電体の表面からは水素ガスが、陽極の表面からは酸素ガスがそれぞれ発生する。この水素ガスと酸素ガスとが混合されると、所謂爆鳴気となって、引火すると大きな音を発生し、さらに大量のガスが引火すると爆発現象を起こす。したがって、実際の装置においては、この発生するガスを除去する手段を配することが望ましい。このような発生ガスの除去を考慮した電解析出装置による被処理水の処理装置の具体的構成例を図19Aおよび図19Bに示す。図19Aおよび図19Bにおいて、351は電解析出装置、352は電極間の電解室、353は被処理水、354は処理水、355は水タンク、356は処理水タンクである。図19Aに示す電解析出装置においては、陰極に隣接して被処理水が供給される被処理水供給室359が、陽極3に隣接して処理水が排出される処理水排出室360が、それぞれ設けられている。水タンク355から、被処理水供給室に供給された被処理水の一部は、電解析出装置の陰極、電解室352、陽極をそれぞれ通過し、被処理水中の金属イオンが、陰極に析出することによって除去される。金属イオンが除去された処理水は、処理水排出室360に受容され、ポンプによって水排出配管370を通して処理水タンク356に受容される。被処理水供給室359に供給された被処理水の残りは、被処理水循環配管を通って水タンク355に戻される。
【0078】
陰極の表面から発生した水素ガスは、循環される被処理水と共に流れて、ガス抜き口357から排出される。一方、陽極3の表面から発生した酸素ガスは、処理水と共に流れて、ガス抜き口358から排出される。このように、被処理水を循環しながら本発明に係る電解析出装置に供給することにより、両電極から発生するガスを混合させることなく安全に除去しながら被処理水の処理を進行させることができる。また、被処理水の供給量と処理水の排出量とを制御して電解析出装置を通過する水量を調節することにより、様々な金属濃度の被処理水に対応することができる。このように発生するガスを除去しながら電解析出反応を連続して継続させるためには、電極や通水性導電体の層をガスが通過するように構成する必要があり、このため、電極および通水性導電体の層は、通水性を有するのに加えて、通ガス性をも有することが好ましい。また、図19Bに示す電解析出装置では、処理水を、電解室352内の陰極表面に沿って供給する。陰極の表面から発生した水素ガスは、循環される被処理水と共に流れて、ガス抜き口357から排出される。このような構成の場合には、陰極は通水性、通ガス性である必要はない。また、用いる材料や処理水量などにより、両電極の間の電解室352内にガスが溜まってしまう場合がある。この場合には、陰極と陽極との間の電解室内にも、ガス抜き手段を設けることが好ましい。なお、図19Aおよび図19Bには、陰極側から陽極側へ被処理水を通過させる態様の電解析出装置の配置を示しているが、陽極側から陰極側へ被処理水を通過させる態様の配置に関しても、同様に装置を構成することができる。また、図19Aおよび図19Bに示すような構成において、処理水の少なくとも一部を水タンク355に循環するようにしてもよい。さらには、被処理水の少なくとも一部は水タンク355への循環は行わずに、処理水の少なくとも一部のみを水タンク355へ循環するようにしてもよい。
【0079】
発生した水素ガスの処理するために、図44から図46に示す以下の方法を用いることができる。水素ガスと等モル以上の酸素を含有するガスと混合させ,水素ガスと酸素ガスを再結合させて水とする能力を有する触媒充填層46を通過させて触媒反応させ残存する水素ガス濃度を爆発限界濃度である4容積%未満にする方法(図44参照)、大量の空気または不活性ガス等を混合して爆発限界濃度未満となるように水素濃度をさげる方法(図45参照)、燃料電池47に供給する方法(図46参照)などを採用することができる。燃料電池47を用いる場合は得られた電気エネルギーを廃水処理施設48または他施設の運用に用いることができる。
【0080】
次に、上記のような本発明に係る廃水処理装置によって得られた処理水の水質や水量をモニターして異常検知を行う方法について図20Aおよび図20Bを参照して説明する。図20Aおよび図20Bにおいて、401は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃水処理装置、403は被処理水、404は処理水である。まず第一の方法として、図20Aに示すように、本発明に係る廃水処理装置401を通過することによって得られた処理水404の金属イオン濃度を、金属イオン濃度測定装置402によって測定し、処理水の金属イオン濃度が設定値よりも高くなった場合に警報を行うようすることができる。この場合、電解析出装置での電流不足、原水の金属イオン濃度の増大、イオン交換処理でのイオン交換体の劣化などが考えられ、電解析出装置での運転電流の上昇や、イオン交換体の交換などの作業によって対処することができる。このような目的で使用することのできる液中の金属イオン測定装置としては、例えば、イオン電極法、電極ポーラロ法、HPLC電気泳動法、蛍光光度法などに基づく測定装置を挙げることができる。また、図20Bに示すように、本発明に係る廃水処理装置401を通過することによって得られた処理水404の流量を流量計(FI)で測定して、処理水量が設定値を下回った場合に警報を行うようにすることができる。この場合には、電解析出装置において金属の析出量が大きくなりすぎたことによる被処理水の閉塞、イオン交換体の目詰まり、処理水入口の導入圧力の不足などが考えられ、それぞれ、電解析出装置の陰極または導電体の交換、イオン交換体の交換、処理水入口圧力の上昇などの対処を行うことができる。なお、このような対処は、測定装置による測定値に連動した自動的制御によって行うこともできる。
【0081】
本発明に係る廃水の処理装置において、電解析出装置での陰極または陰極として作用させる導電体の交換時期については、図21Aから図21Cに示すような各種の方法によって決定することができる。図21Aから図21Cにおいて、451は電解析出装置、452は被処理水、453は処理水である。まず図21Aに示すように、電解析出装置451への被処理水の水供給ライン460に圧力計(PI)を配置し、被処理水供給圧力をモニタリングすることによって、陰極または導電体の交換時期を決定することができる。この被処理水供給圧力が設定値を超えた場合には、陰極または導電体への金属の析出量が大きくなって装置が閉塞している状態が考えられるので、陰極または導電体を交換する。また、処理水ライン461に別の圧力計(PI2)を配置し、PIとPI2との差圧が設定値を超えた場合に、陰極または導電体を交換するようにしてもよい。また、図21Bに示すように、電解析出装置の電解室において陰極に接触して導電体層454を配置し、この導電体層に直接被処理水を供給して、一部を水タンク455に戻す形態の電解析出装置においては、導電体層への被処理水導入ラインに圧力計(PI)を配置し、導電体層からの処理水の循環ラインに別の圧力計(PI2)を配置することによって、図21Aと同様の制御を行うことができる。また、PIのみを設置して、供給圧力が設定値を超えることによって、交換時期を決定してもよい。さらに、図21Cに示すように、処理水ライン461に流量計(FI)を配置して、処理水の流量が設定値を下回った時点で陰極または導電体を交換するようにしてもよい。
【0082】
本発明に係る電解析出装置は、金メッキ廃液からの金の回収、銅配線を用いた半導体装置製造工程における化学機械研磨(CMP)廃液や電解研磨(ECP)廃液、あるいは銅メッキリンス液や銅メッキ廃液などからの銅の回収、その他メッキ廃液からの金属の回収、使用済核燃料の再処理工程で発生する高レベル廃液中に含まれるパラジウムの回収、ホタテ貝などの食品廃棄物からのカドミウムの回収などの技術に適用することができる。
【0083】
上記に説明した本発明に係る廃水処理システム、特に、両電極間の電解室内にカチオン交換体を装填した形態の電解析出装置によれば、電極間にカチオン交換体を装填したことによって、除去対象となる金属イオンの濃度が低い被処理水に関しても、運転電圧の上昇を招くことなく、安定して効率よく金属を析出させて除去・回収することができる。したがって、例えば、本発明に係る電解析出装置を用いれば、200mg/l以下の金属イオン濃度を有する被処理水を処理して、金属イオン濃度が低下せしめられた処理水を得ると共に、被処理水中に含まれていた金属を金属単体または一部金属水酸化物,金属酸化物を伴った金属単体の形態で回収することができる。例えば、本発明によって、半導体装置製造工程から排出される銅イオンを含む廃水、例えば、CMPプロセス廃水や銅メッキ廃水、電解研磨廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、銅を銅金属の形態で回収することができる。ここで、銅の排出基準値は、日本で3.0mg/l以下、米国の一例では2.7mg/l以下である。本発明においては、1.0mg/l以下、より好ましくは0.5mg/l以下の銅イオン濃度の処理水を得ることがより好ましい。電解析出処理とイオン交換処理とを組み合わせた本発明による廃水処理システムによれば、銅イオンを含む半導体装置製造プロセスの廃水を処理して、銅を金属としてまたは金属水酸化物、金属酸化物として回収しながら、0.5mg/l以下の銅イオン濃度の処理水を連続的に得ることができる。CMPプロセス廃水や銅メッキ廃水中の銅濃度は通常100mg/l以下であるので、これまでは、これらの廃水からの銅の回収処理には、運転電圧の上昇の問題から電解析出法は用いられていなかった。イオン交換樹脂法では銅は金属イオンとしてイオン交換樹脂に吸着されて回収され、また凝集沈殿法では銅は水酸化物または酸化物の形態で沈殿・回収されるので、いずれも、回収された銅を再利用する際には、更なる処理が必要である。さらに、イオン交換樹脂法ではイオン交換樹脂の交換頻度が高くなる。しかしながら、上述の本発明に係る方法によれば、銅が金属単体として回収されるので、その後の処理の必要性なしに金属として容易に再利用することができる。
【0084】
本発明に係る電解析出装置を、半導体装置製造プロセスからの廃水、例えば、CMP廃水、ECP廃水や銅メッキ廃水などの処理に適用することによって、これらの廃液の処理システムを構築することができる。クリーンルーム半導体工場内で使用される廃液処理装置においては、メンテナンスが最小限になるような装置とする必要がある。また、CMPで使用される砥液には、過酸化水素、硝酸鉄、過硫酸ナトリウムなどの酸化剤が加えられることもあり、また銅メッキ工程でウエハ表面に銅膜を形成した後、ウエハの周辺部(エッジ部分)に付着した銅膜あるいはウエハ裏面に付着した銅膜が剥離して、クリーンルームを汚染するおそれがあるので、所謂レベルエッチングによってウエハ周辺あるいはウエハ裏面に付着した銅膜を過酸化水素などの酸化剤で酸化させながらクエン酸、シュウ酸、塩酸または硫酸等の酸で溶かして除去を行う。このように、半導体の銅配線形成に使われるCMPやECPあるいは銅メッキ装置の廃水には、大量の銅イオンに加えて過酸化水素などの酸化剤が含まれていることが多い。このような酸化剤、特に過酸化水素は電解によって容易に分解されるが、過酸化水素の電気分解は銅などの重金属の電解析出よりも優先して進行するので、廃水中に過酸化水素が多く含まれていると、電解析出により大きな電流が必要になる。また、被処理水中に過酸化水素などの酸化剤が含まれていると、イオン交換体の機能を低下させるという問題もある。また、析出した金属、水酸化物、酸化物が再溶解する懸念もある。したがって、この過酸化水素の存在を考慮した廃水処理システムとすることが好ましい。
【0085】
このような点を考慮した半導体装置製造工程からの廃水の処理システムの構成例を図22に示す。図22に示すシステムでは、CMP工程、ECP工程や銅メッキ工程などの各種工程501からの廃水を、酸化剤除去工程502でまず処理して、次に本発明に係る電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせた廃水処理装置503で処理する。これにより、被処理水を、本発明に係る廃水処理装置503に通す前に、酸化剤除去工程502に通すことによって、被処理水中の過酸化水素などの酸化剤を分解することができる。酸化剤除去工程502を通過して過酸化水素などの酸化剤が分解・除去された被処理水は、本発明に係る廃水処理装置503に供給され、電解析出操作とイオン交換操作との組み合わせによって、被処理水中の銅などの金属イオンが除去されて、処理水が処理水タンク504に受容される。この場合、処理水の少なくとも一部を本発明に係る廃水処理装置503に循環してもよい。なお、図22および以下の説明において、「本発明に係る廃水処理装置503」とは、上記において説明してきた電解析出操作とイオン交換操作とが組み合わされた本発明に係る廃水処理装置を意味し、図6から図9などで説明した電解析出装置とイオン交換処理との組み合わせ、あるいは、図10から図15などで説明した電解析出装置内にイオン交換体を組み込んだ装置のいずれも含み、その他の図などで説明した各種の通水方法や制御方法などは全て包含される。
【0086】
上記のような被処理水中に含まれる過酸化水素などの酸化剤を除去する目的で用いることのできる処理工程としては、活性炭による触媒分解、貴金属触媒、例えばチタニア担持白金触媒、アルミナ担持白金触媒などによる触媒分解、二酸化マンガン触媒による触媒分解、電気分解、紫外線処理、オゾン添加、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤による分解処理、H2O2分解酵素(カタラーゼ)などによる酵素分解などの処理を挙げることができる。アルミナ担持白金触媒などの白金触媒を用いる場合には、ハニカム形状の触媒を用いると比表面積が大きくとれ、分解速度が増すのでより好ましい。また、ハニカム形状の触媒は流路方向に連続した開口部を得ることができるので、開口部面積より小さな粒子であればろ過されて触媒内に蓄積することなく触媒を通過することが可能である。このため、例えばCMP廃水などのスラリを含有する排水中に含まれる酸化剤の分解に好適に用いることができる。
【0087】
なお、図22のシステムにおいて、本発明に係る廃水処理503として、図6から図9などで説明した電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置とイオン交換処理との組み合わせによる処理を用いる場合には、図23Aに示すように、各種半導体装置製造プロセス501からの廃水を、まず酸化剤除去工程502で処理し、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置511、イオン交換操作512の順に処理して処理水504を得ることもできるし、図23Bに示すように、廃水を、電解析出装置511でまず処理し、次に酸化剤除去工程502にかけ、次にイオン交換操作512にかけてもよいし、あるいは図23Cに示すように、廃水を、イオン交換操作512にまずかけて、次に、酸化剤除去工程502にかけ、次に電解析出装置511で処理してもよい。図22以降のシステムフロー図においては、同じ参照番号は同じ構成要素を意味する。
【0088】
また、図24Aに示すように、廃水をまず酸化剤除去工程502で処理し、排出水を処理水タンク515に受容して、電解析出装置511に循環させることで廃水中の金属イオンを除去した後に、イオン交換処理512で残余の金属イオンを除去して処理水504を得ることもできる。あるいは、図24Bに示すように、廃水を水タンク515に受容して、電解析出装置511に循環させることで廃水中の金属イオンを除去した後に、酸化剤除去工程502で処理し、次にイオン交換処理512で残余の金属イオンを除去して処理水504を得ることもできる。図23および24に示す各種システムにおいては、電解析出装置として、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置511に代えて、図10から図13などで示すような電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置を用いてもよいし、あるいは図14から16に示すように、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置と、電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置とを組み合わせて用いてもよい。
【0089】
また、図22に示すようなシステムにおいては、電解析出装置として、電極間にイオン交換体を配置しない通常の電解析出装置511のみを用いてシステムを構築することもできる。このような電解析出装置を用いたシステムの構成例を図25に示す。このシステムにおいては、酸化剤除去工程502で処理した被処理水を、電解析出装置511で電解析出処理して、被処理水中の金属イオンを除去・回収することによって処理水504を得る。さらに、このようなシステムにおいては、図26に示すように、金属除去処理として、イオン交換処理を用いることもできる。図26のシステムにおいては、酸化剤除去工程502で処理した被処理水を、イオン交換操作512でイオン交換処理して、被処理水中の金属イオンを除去することによって処理水504を得る。このシステムにおいてイオン交換処理として用いることのできるイオン交換体としては、上記に説明した各種のイオン交換樹脂ビーズ、イオン交換繊維材料、イオン交換スペーサーなどを挙げることができる。これらのイオン交換体は酸またはアルカリにより再生することができる。また再生を電気化学的に行うこともできる。電気化学的に行う場合は再生廃液が発生しないので好適である。また、金属除去処理として、凝集剤を用いた凝集沈殿処理を用いることもできる。図27に示すシステムにおいては、酸化剤除去工程502で処理した被処理水は、凝集沈殿槽531に受容される。凝集沈殿槽531では、凝集剤532が被処理水に添加されて、被処理水中の金属イオンが凝集沈殿することで被処理水中から除去され、上澄み液が処理水504として回収される。凝集沈殿槽531内で沈殿した金属は、沈殿物533として回収され、必要に応じてその後の処理にかけられる。このようなシステムにおいて、被処理水中の金属イオンを凝集沈殿させるために使用される凝集剤532としては、当該技術において、水系媒体から金属イオンを凝集沈殿させるために用いることができることが公知の各種の薬剤を用いることができる。具体的な例としては、例えば、NaOH、Ca(OH)2、KOHなどのアルカリや、高分子凝集剤、無機凝集剤、例えばFeSO4、FeCl3等を挙げることができる。FeSO4などのFe2+を含む無機凝集剤を使う時には、フェントン反応が起きるので、過酸化水素とキレート材が分解され、より好ましい。なお、凝集処理によって生成したスラッジをMF膜などの廃水処理に一般的に用いられている膜によって濾過してもよい。
【0090】
図48は、本発明に係る廃水処理システムをめっき処理装置に導入した場合の構成例を示す図である。めっき処理装置801はめっき工程801aおよび洗浄工程801bを有しており、めっき工程801aでは、めっき液がめっき液タンク802との間に循環されている。洗浄工程801bでは、めっき工程801aを終えたウエハの表面に残留しているめっき液を純水などにより洗い流す。この洗浄工程801bにおいて排出される液を本発明に係る廃水処理システム503に導入する。
【0091】
図49は、本発明に係る廃水処理システムをCMP装置に導入した場合の構成例を示す図である。CMP装置803は研磨ユニット803aと洗浄ユニット803bを有しており、研磨工程803aではウエハの研磨が行われる。研磨工程803aで、スラリ、分散剤、酸、アルカリ、キレート剤などを含む薬液(1つまたは複数)および純水などの液体が使用される。これらの廃液体を廃水処理システム503に導入する。洗浄工程803bでは、ウエハ上に残留するスラリ、研磨粉、薬液を純水などにより洗浄する。これらの洗浄排水も廃水処理システムに導入する。なお、研磨ユニット803aは電解研磨法によるものでもよい。いずれかの廃水に特有の物質が含まれており、廃水処理を阻害する場合は、薬品処理803c、固液分離処理803dなどにより、予め阻害要因を取り除くこともできる(例えば、エッジ欠けにより発生したSSの分離、金属メタル粉の溶解または分離)。なお、ここでいう廃水処理システムは、少なくともイオン交換または電解処理を含むものであればよい。
【0092】
図50は、本発明に係る廃水処理システムを同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置に導入した場合の構成例を示す図である。図50に示す装置804は、エッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を同一チャンバ804a内で行なうものである。エッチング方法としては、電解研磨などの電気化学的な方法を用いることができる。ケミカル・メカニカルポリッシング(CMP)を用いてもよい。各工程の廃水を全て廃水処理システム503に導入してもよいし、また、一部の工程の廃水のみを廃水処理システム503に導入してもよい。
【0093】
図51は、本発明に係る廃水処理システムを同じ工程を担う複数の装置に導入した場合の構成例を示す図である。例えば、CMP装置803などの研磨装置のうち、ある同じ工程を担うものはまとめて本発明に係る廃水処理装置503aに導入する。またCMP装置803のうち、別の同じ工程を担うものは別にまとめて廃水処理装置503bにおいて処理を行う。
【0094】
図52は、本発明に係る廃水処理ユニットを筐体に収容した場合の例を示す斜視図である。図52に示すように、廃水処理ユニット805は、pH調整ユニット805a、内部負圧形成装置、廃水受容タンク、移動用キャスター等を1つ以上備えた筺体806の内部に備えられる。内部負圧形成装置は、圧力計信号により制御されるものであってもよい。筺体806は分割できる構成であってもよい。上記のような構成であれば、クリーンルームあるいはクリーンルーム階下のようなある一定以上のクリーン度を要するスペースにも設置可能となる。
【0095】
図53Aおよび図53Bは、本発明に係る廃水処理システムをCMP装置、ECP装置、またはめっき処理装置に導入した場合の両者の好適な位置関係を示す図である。図53Aは、廃水処理装置503を、クリーンルーム809内の半導体製造装置807の直下にグレーチング808を介して設置する例である。図53Bは、廃水処理装置503を、半導体製造装置807に隣接して設置する例である。これらのように、半導体製造装置807の直近に設置することにより、設備コスト(配管コストなど)を低減するとともに、工場全体の体積(大きさ)をコンパクトにすることができる。工場全体の建設コストを低減することができる。
【0096】
図54Aから図54Cは、本発明に係る廃水処理システムを違う工程を担う装置に導入した場合の構成例を示す図である。例えば、図54Aに示すように、装置810では、電解研磨工程810aから排出される廃水とめっき工程810bから排出される廃水を混合して廃水処理システム503で処理することができる。また、図54Bに示すように、同一作用の異なる工程を担う装置811においても、CMP工程811aから排出される廃水と、CMP工程811bから排出される廃水を混合して廃水処理装置503で処理することができる。
【0097】
また、図54Cに示す装置812のように、CMP工程812aからの廃水と、めっき工程またはECP工程812bからの異なる性状の廃水それぞれを、廃水処理システム503の異なる処理工程に導入してもよい。また、処理水を廃水処理装置503から排出する際は、工程813と工程814からそれぞれ別に処理水を取出してもよい。
【0098】
なお、図22から図27に示すようなシステムにおいては、金属イオン除去工程を2系列にして、イオン交換体、電解析出装置の陰極などの交換部品の交換の際に経路を切替えることにより、連続的な処理を確保することができる。例えば、図28Aのシステムでは、各種半導体装置製造プロセス501からの廃水は、まず廃水タンク550に受容され、次に、酸化剤分解工程502にかけられ、次に、二系統にされた本発明に係る電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせた廃水処理装置503の一方に供給され、金属イオンが除去されて処理水504が得られる。電解析出装置の陰極やイオン交換操作のイオン交換体などの交換部品の交換時期になったら、経路を切替えてもう一方の廃水処理装置503に被処理水を通水し、通水が停止された側の装置503の交換部品の交換を行う。これにより、廃水の連続処理が確保される。図28Bでは電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置511が2系統並列に接続され、図28Cではイオン交換処理装置512が2系統並列に接続され、図28Dでは凝集沈殿装置531が2系統並列に接続されており、同様に廃水の連続処理を行うことができるようになっている。また、同様に、酸化剤除去工程502を2系統並列に接続して、部品交換などの際にも廃水の連続処理が行えるようにすることができる。
【0099】
また、半導体装置製造プロセスにおけるCMP工程からの廃水には、さらに、CMP処理の際に用いたシリカ粒子、アルミナ粒子などを含むスラリ粒子が含まれていることが多い。このスラリ粒子を含む廃水をそのまま酸化剤除去工程に通すと、酸化剤除去装置が目詰まりを起こしたり、あるいは電解析出装置内で蓄積してしまう場合がある。そこで、図22から図28に示す廃水処理システムにおいては、被処理水を酸化剤除去工程に通す前に、被処理水に酸またはアルカリを加えてpH調整することにより、被処理水中でスラリを良好に分散させることによって、酸化剤除去装置の目詰まりや電解析出装置内でのスラリ粒子の蓄積を防止することができる。この目的で使用することのできる酸としては、クエン酸、塩酸、硫酸、硝酸などを挙げることができ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン系化合物などを挙げることができる。
【0100】
さらに、シリカ粒子、アルミナ粒子などのスラリ粒子を含むCMP工程からの廃水を処理する場合には、廃水のpHを調整してスラリ粒子が凝集しやすい条件にしてスラリ粒子を凝集させた後、この廃水または廃水の上澄み液をセラミックフィルターなどの濾過装置に通してスラリ粒子を除去し、その後、上述したような酸化剤除去処理および金属の除去処理を行うことができる。凝集剤添加を組み合わせてもよい。かかる形態の被処理水の処理システムの構成例を図29Aおよび図29B。従前の図と同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【0101】
図29Aに示す被処理水の処理システムでは、金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子が凝集しやすい条件にされる。凝集剤はpH調整槽551の流入水に添加・混合してもよい。スラリ粒子が凝集しやすい条件とは、廃水中に含まれるスラリ粒子の種類や廃水自体の性状などによって異なる。また、この目的で使用することのできる酸およびアルカリとしては、クエン酸、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドライド、アンモニアなどを挙げることができる。また、凝集剤としては高分子凝集剤、無機凝集剤、例えばFeSO4、FeCl3等を上げることができる。FeSO4などのFe2+を含む無機凝集剤を使う時には、フェントン反応が起きるので、過酸化水素とキレート材が分解され、より好ましい。廃水は、次に濾過装置552に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552としては、例えば、セラミックフィルターなどを用いることができる。また、図29Aおよび図29Bに示すように、濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部をpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。濾過装置552によってスラリ粒子が取り除かれた廃水は、以後、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解除去された後、本発明に係る電解析出操作とイオン交換処理とを組み合わせた廃水処理装置503で処理されて、廃水中に含まれている銅などの金属が除去・回収され、処理水504が得られる。また、図29Bに示すように、酸化剤除去工程を最前段に配置してもよい。また、図29Cに示すように、沈降分離後の上澄み液に対して膜ろ過を行う構成でもよい。沈降分離処理565としては、沈降分離の他、遠心分離などを用いることができる。
【0102】
酸またはアルカリまたは凝集剤の添加・混合により沈降分離されたスラリの上澄水に対して濾過を行う構成としてもよい。この場合はフィルタにかかる固形物負荷を低減させることができる。フィルタとしては、孔径0.1〜1.0μm程度のものを用いることができる。材質は、セラミック、有機高分子を挙げることができる。膜分離処理における未透過水(膜濃縮水)の一部または全部を循環槽566または沈降分離処理565に返送してもよいし、しなくてもよい。循環槽566の流出水の一部を沈降分離処理565またはpH調整槽551に返送してもよい。
【0103】
沈降分離処理565で生じた汚泥はそのまま系外に排出し、濃縮・脱水処理を行った後に廃棄処分する。別途設置されている総合排水処理施設または汚泥処理施設に供してもよい。
【0104】
汚泥に付着している液体に含まれる金属イオン濃度をさらに低くする場合は、金属イオン濃度が低い水、例えば純水、本発明に係る廃水処理システムの処理水504を用いてリンスすることができる。廃リンス水は沈降分離処理565またはpH調整槽551に導入することができる。リンス手段としては遠心分離処理567を用いることができる(図29D)。
【0105】
リンス水を沈降分離槽(沈降分離処理565)または沈降分離槽からの汚泥排出管に導入することによっても、汚泥に付着する金属イオンの量を削減することができる。このような手段を採用してもよい。
【0106】
排水中の過酸化水素が、沈降分離または濾過を阻害する場合は、これらの処理の前に過酸化水素分解手段を設ける。
【0107】
設置スペース的に循環槽566を設けることが困難な場合は、沈殿分離処理565を行う沈降分離槽が循環槽を兼ねてもよい(図29E)。濾過装置552から沈降分離処理565への返送配管553は設けなくてもよい。さらに、図29Fに示すように、濾過装置552を沈降分離処理565を行う沈降分離槽の中に設けてもよい。廃水処理装置503は、少なくともイオン交換、電解析出または凝集分離処理を備えるものであればよい。
【0108】
なお、図29Aおよび図29Bのシステムにおいて、本発明に係る廃水処理503として、図7から図9などで説明した電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置とイオン交換処理との組み合わせによる処理を用いる場合には、図30Aから図30Fに示すように、種々のフローが考えられる。図30Aから図30Fにおいて、555は、図29Aおよび図29Bに示すpH調整槽551と濾過装置552とを組み合わせたスラリ除去工程、502は酸化剤除去工程、511は電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置、512はイオン交換操作を示す。図30Aに示すシステムでは、金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程からの廃水は、まずスラリ除去工程555にかけられてスラリ粒子が除去され、次に酸化剤除去工程502で酸化剤が分解され、次に電解析出装置511、イオン交換処理512の順に通水されて、廃水中の金属イオンが除去・回収され、処理水504が得られる。図30Bに示すシステムでは、廃水はまず酸化剤除去工程502にかけられて廃水中の酸化剤を分解した後、スラリ除去工程555でスラリ粒子が除去され、次に電解析出装置511、イオン交換処理512の順に通水されて、廃水中の金属イオンが除去・回収され、処理水504が得られる。図30Cに示すシステムでは、廃水は、スラリ除去工程555にかけられてスラリ粒子が除去され、次に電解析出装置511で廃水中の金属イオンを除去・回収した後、酸化剤除去工程502で酸化剤を分解し、次に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。図30Dに示すシステムでは、廃水は、まず、電解析出装置511にかけられて廃水中の金属イオンを除去・回収した後、スラリ除去工程555でスラリ粒子が除去され、次に、酸化剤除去工程502で酸化剤を分解し、最後に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。図30Eに示すシステムでは、廃水は、まず、電解析出装置511にかけられて廃水中の金属イオンを除去・回収した後、酸化剤除去工程502で酸化剤を分解し、次にスラリ除去工程555でスラリ粒子が除去され、最後に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。図30Fに示すシステムでは、廃水は、まず、酸化剤除去工程502にかけられて酸化剤を分解した後、電解析出装置511にかけられて廃水中の金属イオンを除去・回収し、次にスラリ除去工程555でスラリ粒子を除去した後、最後に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。なお、図30Aから図30Fに示す各種システムにおいては、電解析出装置として、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置511に代えて、図10から図15などで示すような電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置を用いてもよいし、あるいは図16に示すように、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置と、電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置とを組み合わせて用いてもよい。
【0109】
また、このようなスラリ除去−酸化剤除去という一連の前処理と、電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置による金属除去処理、イオン交換による金属除去処理、あるいは凝集法を用いた金属除去処理とを組み合わせることができる。かかる形態の被処理水の処理システムの構成例を図31から図33に示す。図31から図33において、前述の図面と同じ参照番号は、同じ構成要素を示す。
【0110】
図31に示すシステムでは、銅などの金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子を凝集させた後、濾過装置552に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部を戻し配管553によってpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。次に、廃水は、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解された後、電解析出装置511を通されて、廃水中に含まれている銅などの金属イオンが除去・回収され、処理水504が得られる。
【0111】
図32に示すシステムでは、銅などの金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子を凝集させた後、濾過装置552に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部を戻し配管553によってpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。次に、廃水は、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解された後、イオン交換体が充填されたイオン交換槽512を通されて、イオン交換体によって廃水中に含まれている金属イオンが吸着・除去され、金属イオンが除去された処理水504が得られる。このような被処理水中の銅などの金属イオンを除去する目的で使用することのできるイオン交換体としては、上記に説明したような各種イオン交換樹脂、イオン交換繊維材料、イオン交換スペーサーなどを用いることができる。金属イオンを吸着したイオン交換体は、所定期間使用した後、イオン交換槽から取出して、適当な再生処理にかけることによって金属を回収することができる。電気的に再生することももちろん可能である。
【0112】
また、図33に示すシステムでは、金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子を凝集させた後、濾過装置553に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部を戻し配管553によってpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。次に、廃水は、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解された後、凝集沈殿槽531に受容される。凝集沈殿槽531では、凝集剤532が被処理水に添加されて、被処理水中の金属イオンが凝集沈殿することで被処理水中から除去され、上澄み液が処理水504として回収される。凝集沈殿槽531内で沈殿した金属は、沈殿物533として回収され、必要に応じてその後の処理にかけられる。このようなシステムにおいて、被処理水中の金属イオンを凝集沈殿させるために使用される凝集剤532としては、当該技術において、水系媒体から金属イオンを凝集沈殿させるために用いることができることが公知の各種の薬剤を用いることができる。具体的な例としては、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)2、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドライド、アンモニア、高分子凝集剤などを挙げることができる。沈殿物533と上澄み液の分離には沈降分離の他に膜処理,遠心分離法を用いることもできる。また、沈降分離と膜処理,遠心分離法を組み合わせてもよい。
【0113】
なお、図29,図31,図32,および図33に示すシステムにおいては、先に酸化剤分解工程502に通水して、その処理水を濾過工程(濾過装置552)に通水する方法としてもよい。また、図29Aから図29Fに示すシステムの廃水処理装置503として、図31から図33に示すような廃水処理方法、すなわち、イオン交換、電解析出、凝集沈殿のいずれかを用いてもよい。
【0114】
なお、図29,図31,図32,および図33に示すシステムにおいては、図34に示すように、酸化剤分解工程502と、電解析出、イオン交換、凝集のいずれかによる金属イオン除去工程とのそれぞれの少なくとも一方を、並列に二つ以上接続して、交換部品の交換などの際にも連続運転を確保することができる。図34で、556は、図29に示す本発明に係る電解析出操作とイオン交換処理とを組み合わせた廃水処理装置503、図31に示す電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置511、図32に示すイオン交換槽512、あるいは図33に示す凝集槽531のいずれかによる金属除去工程である。なお、図31から図34において、スラリ除去工程と酸化剤除去工程の順序を逆にしてもよい。
【0115】
さらに、酸化剤除去工程502と金属除去工程とを組み合わせた本発明に係る廃水処理システム、あるいはこの前段としてさらにスラリ除去工程555を組み合わせた廃水処理システムにおいては、被処理水を各工程における最適pHとするために、各工程の少なくとも一つ以上の前段にpH調整工程を設けてもよい。このようなシステムの例を図35Aおよび図35Bに示す。図35Aおよび図35Bにおいて、555は、図29Aおよび図29Bなどに示すpH調整槽551と濾過装置552とを組み合わせたスラリ除去工程、502は酸化剤除去工程、561は、本発明に係る電解析出操作とイオン交換処理とを組み合わせた廃水除去装置503(図29Aおよび図29B等を参照)、電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置511(図23A,図23B,図23C等を参照)、イオン交換操作による金属除去装置512(図26等を参照)、あるいは凝集沈殿による金属イオン除去装置(図27等参照)のいずれかの金属除去工程を意味する。図35Aに示すシステムにおいては、廃水は、まずpH調整槽562において、次段の酸化剤除去工程502における最適pHに調整された後、酸化剤除去工程502で酸化剤の除去が行われ、次に、他のpH調整槽563において、次段の金属除去工程561における最適pHに調整された後、金属除去工程561によって廃水中の金属イオンが除去・回収されて、処理水504が得られる。また、図35Bに示すシステムにおいては、廃水は、まずpH調整槽564において、次段のスラリ除去工程555における最適pHに調整された後、他のpH調整槽562において、次段の酸化剤除去工程502における最適pHに調整された後、酸化剤除去工程502で酸化剤の除去が行われ、さらに他のpH調整槽563において、次段の金属除去工程561における最適pHに調整された後、金属除去工程561によって廃水中の金属イオンが除去・回収されて、処理水504が得られる。なお、これらのpH調整槽は、いずれか一つ以上を省略することができる。CMP装置803からの廃水を処理する場合は、金属またはシリカの粗大粒子を除去することを目的として、濾過装置552aにおいて孔径0.1〜0.5μm程度の膜で予め排水を処理してから、イオン交換、電解析出などの処理工程815へ導入することもできる(図42および図43)。
【0116】
図42に示される実施形態において、そのような膜を有する濾過装置552aを設け、図43に示される実施形態において、2つの濾過装置552a,552bを設けて粗濾過および細濾過する。
【0117】
本発明に係る廃液の処理システムを実際の半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法の例を図36Aおよび図36Bに示す。図36Aおよび図36Bにおいて、601は半導体装置製造工場、602は銅メッキ装置、603はCMP、ECPなどのポリッシング装置、604は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃液の処理装置または廃液処理システムを意味する。例えば、図36Aに示すように、半導体装置製造工場601内の銅メッキ装置602や、CMP、ECPなどのポリッシング装置603などからの廃液を集めて、これを本発明の各種態様に係る廃液の処理装置または廃液処理システム604で処理して、銅などの金属イオンが除去された処理水502を得ることができる。また、図36Bに示すように、銅メッキ装置602からの廃水や、CMP、ECPなどのポリッシング装置603などの廃水をそれぞれ別々に集めて、これを別々に本発明の各種態様に係る廃液の処理装置または廃液処理システム604で処理して、銅などの金属イオンが除去された処理水504を得ることができる。したがって、各工場での廃液を発生する装置の実状に合わせてユースポイントに本発明の廃液処理装置を配置することにより廃液処理をすることができる。なお、CMPとECPとが共存する場合には、これらの廃液を別々に処理しても、混合して処理してもよい。本発明による処理水504を下水道放流または別途設置した総合排水処理施設に供する場合、pHなどの水質項目が適さない場合においてはこれらの調整を行ってから供することは勿論である。
【0118】
上述した電解析出操作において、銅などの金属が析出する陰極が設けられた槽に導入される水に対して、N2ガスなどの酸素濃度が空気より低い気体を導入して、溶存している酸素ガスをパージする。水中の溶存酸素濃度を低くすることにより、酸素が陰極で反応して電流を消費したり、陰極表面に析出した銅金属の水中への再溶解を抑制することができるので、電流効率を高く取ることができる。脱酸素工程は、電解析出工程の前段であれば、本文で説明する処理フローのいずれの位置に導入してもよい。電解析出工程内では、陰極の近傍を通過した後に陽極の近傍を通過させることが望ましい。
【0119】
図55Aから図55Eは、脱酸素工程が導入された種々の処理フローを示す。図55Aおよび図55Bに示される処理プロセスにおいては、被処理水が脱酸素工程に供され、その後に電解析出工程を経て処理水が得られる。図55Cおよび図55Dに示される処理プロセスにおいては、被処理水が、窒素ガスの導入と電解析出工程が同時に行われる脱酸素工程に供され、処理水が得られる。図55Eに示される処理プロセスにおいては、処理水を元に戻す工程が図55Bに示される工程に追加されている。特に、電解析出工程を経た処理水の一部が脱酸素工程に戻されることによって水中の溶存酸素濃度をさらに下げることができる。
【0120】
上記に詳細に説明したように、本発明によれば、金属イオンを含む被処理水を処理して金属を金属単体の形態で除去・回収することができる。本発明を例えば、半導体製造プロセスのCMP工程やECP工程、あるいは銅メッキ工程などの各種工程からの廃水に適用すれば、これら各種工程からの廃水を、その場で、すなわちユースポイントで処理して、排出基準を満足する処理水を得ると共に、銅を銅金属として回収することができる。
【0121】
本発明の各種実施態様としては、以下の形態を挙げることができる。
(1)電解析出ユニットとイオン交換ユニットとを組み合わせたことを特徴とする金属イオンを含む被処理水の処理装置。
【0122】
(2)少なくとも金属イオンを含む被処理水の処理装置であって、
被処理水を導入して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出ユニットと、
電解析出ユニットからの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換ユニットとを有する上記(1)に記載の装置。
【0123】
(3)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0124】
(4)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程と、
電解析出工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0125】
(5)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0126】
(6)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0127】
(7)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、凝集剤を加えて金属を凝集沈殿させる凝集沈殿工程とを有するシステム。
【0128】
(8)被処理水を酸化剤除去工程に導入する前に、被処理水に酸またはアルカリを添加する工程を含む上記(3)から(7)のいずれかに記載のシステム。
【0129】
(9)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0130】
(10)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程と、
電解析出工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0131】
(11)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0132】
(12)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0133】
(13)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、凝集剤を加えて金属を凝集沈殿させる凝集沈殿工程とを有するシステム。
【0134】
(14)被処理水が、半導体装置製造工程からの廃水である上記(1)または(2)に記載の装置。
【0135】
(15)被処理水が、半導体装置製造工程からの廃水である上記(3)から(13)のいずれかに記載のシステム。
【0136】
(16)被処理水が、半導体装置製造工程におけるCMP工程または銅メッキ工程からの廃水、電解研磨廃水である上記(1)または(2)に記載の装置。
【0137】
(17)被処理水が、半導体装置製造工程におけるCMP工程または銅メッキ工程からの廃水、電解研磨廃水である上記(3)〜(13)のいずれかに記載のシステム。
【0138】
(18)対向して配置された陽極および陰極と、
これら両電極間に装填されているイオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置。
【0139】
(19)対向して配置された通水性の材料によって形成される陽極および陰極によって画定される電解室を具備し、
これら両電極間に少なくともイオン交換体の層が装填されており、
両電極とイオン交換体との複合層を通して被処理水を給排水する給排水手段をさらに具備することを特徴とする上記(18)に記載の電解析出装置。
【0140】
(20)陰極に接して通水性導電体の層が配置され、
当該通水性導電体層と陽極の間に、両者に接してイオン交換体の層が配置されている上記(18)または(19)に記載の電解析出装置。
【0141】
(21)通水性導電体が通水性の炭素繊維材料である上記(20)に記載の電解析出装置。
【0142】
(22)通水性の炭素繊維材料が活性炭繊維シートである上記(21)に記載の電解析出装置。
【0143】
(23)通水性導電体が通水性の金属発泡体材料または金属繊維材料である上記(20)に記載の電解析出装置。
【0144】
(24)通水性の金属発泡体材料が、銅発泡体である上記(23)に記載の電解析出装置。
【0145】
(25)イオン交換体がイオン交換繊維材料である上記(18)から(24)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0146】
(26)イオン交換繊維材料が、イオン交換基が放射線グラフト重合法によって有機高分子不織布基材に導入されたものである上記(25)に記載の電解析出装置。
【0147】
(27)イオン交換基が、スルホン基、リン酸基またはカルボキシル基から選択されるカチオン交換基である上記(26)に記載の電解析出装置。
【0148】
(28)イオン交換体がカチオン交換基である上記(18)から(27)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0149】
(29)イオン交換基がイミノジ酢酸基およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基から選択される上記(26)に記載の電解析出装置。
【0150】
(30)陽極および陰極が、エキスパンデッドメタル、金属斜交網材料、格子状金属材料、網状金属材料によって形成されている上記(18)から(29)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0151】
(31)陽極および陰極が、通水性および通ガス性の材料で形成されている上記(18)から(30)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0152】
(32)通水性導電体または通水性金属発泡体材料が、通水性および通ガス性の材料で形成されている上記(20)から(31)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0153】
(33)200mg/l以下の金属イオン濃度を有する被処理水を処理して、
金属イオン濃度が低められた処理水を得ると共に、
被処理水中に含まれていた金属を金属単体の形態で回収することを特徴とする、金属イオンを含有する被処理水を処理する方法。
【0154】
(34)半導体装置製造工程からの銅イオンを含む廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、
銅を銅金属として回収することを特徴とする、半導体装置製造プロセスにおけるCMP処理廃水または銅メッキ廃水の処理方法。
【0155】
(35)処理対象の廃水が、半導体装置製造工程におけるCMP工程または銅メッキ工程からの廃水、電解研磨廃水である上記(34)に記載の方法。
【0156】
(36)処理対象の廃水が、100mg/l以下の銅イオン濃度を有する上記(34)または(35)に記載の方法。
【0157】
(37)0.5mg/l以下の銅イオン濃度を有する処理水を連続的に得る上記(33)〜(36)のいずれかに記載の方法。
【0158】
(38)スラリ除去工程と酸化剤除去工程の順番が逆に配置されている上記(9)から(13)のいずれかに記載の方法。
【0159】
実施例
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例の記載は、本発明の一具体例を説明するもので、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0160】
カチオン交換不織布の製造
表1に、本実施例において使用したカチオン交換不織布の製造に使用した基材不織布の仕様を示す。この不織布は、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンから構成される複合繊維を、熱融着によって不織布としたものである。
【0161】
【表1】
【0162】
表1に示す仕様の不織布に、ガンマ線を窒素雰囲気下で照射した後、メタクリル酸グルシジル(GMA)溶液に浸漬して反応させ、グラフト率175%を得た。次に、このグラフト不織布を、亜硫酸ナトリウム/イソプロピルアルコール/水の混合液中に浸漬して反応させることによって、スルホン化を行った。得られたカチオン交換不織布のイオン交換容量を測定したところ、中性塩分解容量が2.82meq/gの強酸性カチオン交換不織布が得られたことが分かった。
【0163】
図37に示す電解析出装置を構成した。陰極702としてエキスパンドメタル(ラスメタル仕様)を用いた。具体的には、このエキスパンドメタルは、ステンレスからなり、短目7mm、長目14mm、厚さ3mmである。陽極703として特注品のエキスパンドメタル(ラスメタル仕様)を用いた。具体的には、このエキスパンドメタルは、チタンに白金コーティングしたもので、短目6mm、長目14mm、厚さ3mmである。上記で製造したカチオン交換不織布705を陽極703に接して10枚積層して配置して、カチオン交換不織布層705の層厚さを10mmとした。また、厚さ2mmの活性炭不織布シートを陰極702に接して5枚積層配置して、活性炭不織布層704の層厚さを10mmとした。装置の廃水流通面の断面積は77cm2であった。
【0164】
純水に硫酸銅を溶解させることによって銅イオン濃度100mg/lの水溶液を形成し、これを原水とした。原水をタンク722に収容し、電極間に電流を通電しながら、ポンプによって電解析出装置の廃水供給室712に送り、供給水500に対して、処理水100の割合でポンプによって処理水727を回収した(したがって循環水724の量は400となる)。運転中、適宜ガス抜き口から発生ガスを放出した。運転電流および電圧と、処理水の銅イオン濃度とを表2の実験IおよびIIに示す。本発明に係る電解析出装置によれば、低電圧・低電流で、極めて効率よく廃水中の銅イオンを除去することができることが分かった。また、運転後の装置を分解して活性炭不織布シートの状態を観察したところ、表面に銅金属の析出が認められた。
【0165】
また、用いた活性炭不織布シートは、両面に補強用の非導電性不織布のシートが貼付されているものであり、上記の実験IおよびIIではこのシートをはがした後に積層した。
【0166】
実験IIIとして、この補強用非導電性不織布シートを貼付したままで5枚積層して活性炭不織布層704の層厚さを10mmとした装置を用いて同様の実験を行った。他の条件は実験IおよびIIと同じである。その結果も実験IおよびIIとともに表2に示す。実験IIIにおける処理水は実験IおよびIIとほぼ同等の水質であった。運転後の装置を分解して活性炭不織布シートの状態を観察したところ、活性炭不織布シートの層の全体に亘って均一に銅が析出していたことが認められた。
【0167】
【表2】
【実施例2】
【0168】
この例では、実施例1の装置において、陰極と陽極を反対に配置した。すなわち、被処理水が、陽極703、カチオン交換不織布の層705、活性炭不織布シートの層704、陰極702の順に流通するように装置を構成した。活性炭不織布シートの層は全層厚が5mmとなるように3枚積層配置し、カチオン交換不織布の層は全層厚が2mmとなるように2枚積層配置した。また、原水中の銅イオン濃度を実施例1より小さく調整して実験を行った。他の条件は実施例1と同じである。この結果を表3の実験IVおよびVに示す。
【0169】
【表3】
【0170】
被処理水を、陰極、活性炭不織布シート、カチオン交換不織布、陽極の純に通した実施例1と比較した場合には劣る水質であったが、被処理水中の銅イオンをある程度除去できたことが確認された。
【実施例3】
【0171】
イミノジ酢酸不織布の製造(基材は同じ)
表1に、本実施例において使用したイミノジ酢酸不織布の製造に使用した基材不織布の仕様を示す。この不織布は、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンから構成される複合繊維を、熱融着によって不織布としたものである。
表1に示す仕様の不織布に、ガンマ線を窒素雰囲気下で照射した後、クロロメチルスチレン(CMS)溶液に浸漬して反応させ、グラフト率115%を得た。次に、このグラフト不織布をヨウ化ナトリウムおよびアセトンの混合液中に浸漬して反応させた。反応後の不織布基材を純水およびアセトンで洗浄後、イミノジ酢酸ジエチル/ジメチルホルムアミド溶液中に浸漬し反応させた。反応後の不織布をメタノールで洗浄した。さらに、この不織布を水酸化ナトリウムおよびエタノールの混合溶液中に浸漬し反応させることによってイミノジ酢酸不織布を得た。
【実施例4】
【0172】
実施例1の装置において、通水性導電体として厚さ7mmの銅発泡金属(60ppi)を用いて実施例1と同様の実験を行った(実験VI)。また、通水性導電体として厚さ7mmの銅発泡金属(60ppi)および炭素繊維不織布を用いて実施例1と同様の実験を行った(実験VII)。また、実験6と同様の構成として発泡金属とイオン交換体の間に1.2mmの間を設けて実施例1と同様の実験を行った(実験VIII)。
【0173】
実験VIIでは発泡金属とイオン交換体の間に炭素繊維不織布を導入する構成とした。結果を表4に示す。また、実験VIおよびVIIIでは銅の水酸化物および酸化物が通水性導電体の表面に認められた。この現象は、原水のpHが2以下の条件では抑制できることを確認した。実験VIIでは原水のpHによらず、酸化物および水酸化物の析出は認められなかった。炭素繊維を利用する場合ではこれらの析出を抑制できることが認められた。
【0174】
これらの実験の結果より、通水性導電体として発泡金属を用いた場合においても、本発明の効果に変わりがないことを確認した。
【表4】
【実施例5】
【0175】
実施例4中の実験VIIと同様の実験装置において、イオン交換体としてイミノジ酢酸基を有するイオン交換不織布を用いた(実験IX)。また、実験IXと同様の装置において銅めっき洗浄工程から排出されるリンス排水を原水として実験を行った(実験X)。結果を表5に示す。
【0176】
この結果より、イオン交換体としてイミノジ酢酸基を有するものを用いた場合においても本発明の効果に変わりはないことを確認した。また、銅めっきリンス排水を対象とした場合においても効果があることを確認した。
【0177】
【表5】
【実施例6】
【0178】
図40Aに示す構成の実験装置を用いて実験を行った。分離処理においては、脱塩室42のイオン交換体にはイミノジ酢酸基を有するイオン交換不織布を用いた。濃縮室41のイオン交換体にはスルホン基を有するイオン交換不織布を用いた。電極材は実施例1と同様とした。陰極室には硫酸または硝酸を濃度約1%となるように供給した。
【0179】
回収においては、板状の電極を用いた。陽極103の材質はチタン/白金コーティング、陰極102は銅とした。槽内は攪拌機により300rpm(m−1)で撹拌した。
【0180】
実験XIは、原水として銅めっきリンス排水を用いて行った。実験XIIは原水として銅を研磨するCMP排水を用いて行った。CMP排水のスラリ濃度はTS(Total Solid:Residue, Total, EPA Method 160.3)として2000ppmであった。
【0181】
電流密度は分離処理および回収処理ともに3A/dm2とした。
【0182】
この結果、実験XIでは、原水のCu濃度が120ppmであるのに対して処理水Cu濃度は0.1ppm未満であり、本実施例の構成においても効果は変わりがないことを確認した。濃縮室中に濃縮された銅イオン濃度は1000ppm以上となった。濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。
【0183】
実験XIIにおいても、原水のCu濃度が110ppmに対して処理水Cu濃度は0.1ppm未満であり、濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。CMP排水を対象とした場合においても効果が得られることを確認した。
【実施例7】
【0184】
実施例6と同様の装置において、脱塩室42のイオン交換体にスルホン基を有するイオン交換不織布を用いた。実施例6と同様の原水(CMP廃水、めっきリンス廃水)を用いた。電流密度は分離処理および回収処理共に3A/dm2とした。この結果、実施例5と同様の処理水質(Cu濃度<0.1ppm)を得るとともに、廃水中の銅イオンを銅金属として回収することができた。
【実施例8】
【0185】
図29Dに示す処理フローにしたがって実験を行った。実施例5と同様のCMP排水を用いた。硫酸によりpH2〜3に調整し、スラリ成分を主体とする沈殿物を得た。上澄み液に対してセラミックフィルタ(分画分子量50000相当)を用いた濾過を行った。その後、図40A、実施例7に示す構成の装置でCu2+イオン除去を行い、Cu濃度0.1ppm未満の処理水を得た。また、濃縮室中に回収したCu2+イオンを陰極に析出させ、銅金属として回収した。沈殿物は遠心分離器に供し、遠心分離処理を一度行い、スラリ表面の母液の大部分を除去した。この後、リンス水としてpH2〜3に調整した純水を遠心分離処理に供し、再度、遠心分離を行った。遠心分離処理で分離された母液および廃リンス水は沈降分離処理に供給した。
【0186】
上述したように、本発明によれば、重金属イオンを含む被処理水を処理して、重金属濃度が低められた処理水を得ると共に、重金属を金属単体として回収することができる。本発明は、例えば、半導体製造プロセス(例えば、CMP工程や銅メッキ工程)から排出される廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、廃水中の銅を銅金属として回収することができるので、排出基準および資源保護の両方の観点から、極めて有用性の高いものである。
【0187】
本発明の好ましい形態について詳細に説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、様々な種類の被処理水から金属イオンを除去・回収する装置に使用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1Aから図1Eは半導体チップの銅配線形成方法を示す概念図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図3】図3は本発明の他の実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図4】図4は本発明のさらなる他の実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図5】図5は本発明のさらなる他の実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図8】図8は本発明のさらなる他の実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図9】図9は本発明のさらなる他の実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図10】図10は本発明の他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図11】図11は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図12】図12は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図13】図13は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図14】図14は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図15】図15は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理装置を示す概念図である。
【図17】図17Aから図17Hは本発明の一態様における一実施形態に係る電解析出装置の通水方法を示す概念図である。
【図18】図18Aから図18Dは本発明の他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の通水方法を示す概念図である。
【図19】図19Aおよび図19Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の通水方法を示す概念図である。
【図20】図20Aおよび図20Bは本発明の一態様における一実施形態に係る電解析出装置の異常検知方法を示す概念図である。
【図21】図21Aから図21Cは本発明の一態様における一実施形態に係る電解析出装置の運転制御方法を示す概念図である。
【図22】図22は本発明の一態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図23】図23Aから図23Cは本発明の他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図24】図24Aおよび図24Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図25】図25は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図26】図26は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図27】図27は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図28】図28Aから図28Dは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図29A】図29Aは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29B】図29Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29C】図29Cは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29D】図29Dは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29E】図29Eは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29F】図29Fは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図30】図30Aから図30Fは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図31】図31は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図32】図32は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図33】図33は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図34】図34は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図35】図35Aおよび図35Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図36】図36Aおよび図36Bは本発明に一実施形態に係る廃液の処理システムを半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法を示す概念図である。
【図37】図37は、実施例で用いた電解析出装置の構成図である。
【図38】図38は本発明の他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図39】図39は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図40A】図40Aは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図40B】図40Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図41】図41は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図42】図42は本発明の他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図43】図43は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図44】図44は、本発明に係る電解析出装置において発生した水素ガスの処理方法を示す概念図である。
【図45】図45は、本発明に係る電解析出装置において発生した水素ガスの他の処理方法を示す概念図である。
【図46】図46は、本発明に係る電解析出装置において発生した水素ガスのさらに他の処理方法を示す概念図である。
【図47】図47は、被処理水の処理流れを示す図である。
【図48】図48は、めっき処理装置と本発明に係る廃水処理システムとの間の関係を示す図である。
【図49】図49は、CMP装置と本発明に係る廃水処理システムとの間の関係を示す図である。
【図50】図50は、同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置から排出された廃水を廃水処理システムに導入した場合を示す図である。
【図51】図51は、同じ工程を担う複数の装置から排出された廃水を廃水処理システムに導入した場合を示す図である。
【図52】図52は、筐体に収容した廃水処理ユニットを示す斜視図である。
【図53】図53Aおよび図53Bは、CMP装置またはめっき処理装置と本発明に係る廃水処理システムとの間の好適な位置関係を示す図である。
【図54】図54Aから図54Cは、異なる工程を行う装置から排出された廃水を集中的に処理する場合を示す図である。
【図55】図55Aから図55Eは、脱酸素工程を導入した場合の種々の処理フローを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種処理廃水から金属イオンを除去・回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メッキ廃水、半導体装置製造工程廃水、プリント基板製造廃水、鉱山廃水などのような重金属を含む廃水の処理にあたっては、廃水中の重金属を除去し、必要に応じてこれを回収することが求められている。
【0003】
例えば、近年、半導体集積回路などの半導体装置の製造において、微細化への要求が一段と厳しくなるのに伴って、配線抵抗による信号遅延が問題になってくる。この問題を解決するためにアルミニウムやタングステンなどに代えて銅配線が用いられるようになってきた。
【0004】
すなわち、CPUやDRAMなどの半導体チップの高集積化に伴い、チップ内の配線材料として、従来のアルミニウムから、より電気抵抗の低い銅が、特に配線の最小線幅が0.13μm以下のチップで採用されつつある。
【0005】
このような銅配線を用いる場合、銅はエッチングによるパターン形成が困難なため、通常、メッキによるダマシンプロセスで成膜し、成膜後に化学機械研磨(CMP)や電解研磨(ECP)などの方法によって膜の表面を研磨して配線を形成する。
【0006】
図1Aから図1Eにその配線形成方法の一例を示す。まず、図1Aに示すように、半導体素子を形成した半導体基材1の上に導電層2を形成し、この上にさらにSiO2からなる絶縁膜3を堆積する。そして、絶縁膜3の層の内部に、例えばリソグラフィ・エッチング技術により、コンタクトホール4と配線用の溝5を形成する。次に、図1Bに示すようにバリア層6を形成する。バリア層としては、例えば、Ta、TaN、TiN、WN、SiTiN、CoWP、CoWB等の金属若しくは金属化合物材料が用いられる。次に、電解メッキ法で銅層を形成する場合には、図1Cに示すように、バリア層6の上に電解メッキの給電層としての銅シード層7をスパッタリング法などにより形成する。また、銅層を無電解メッキ法で形成する場合には、銅シード層に代えて、バリア層6の上に前処理を行って触媒層7を形成する。
【0007】
次に、図1Dに示すように、銅シード層若しくは触媒層7の表面に電解メッキ法若しくは無電解メッキ法で銅メッキを施すことにより、コンタクトホール4および配線用溝5内に銅を充填させると共に、絶縁膜3の上に銅層8を堆積させる。その後、化学機械研磨(CMP)法や電解研磨(ECP)法などによって絶縁膜3上の銅層8を除去して、コンタクトホール4および配線用溝5に充填した銅層8の表面と絶縁膜3の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1Eに示すように、絶縁膜3の内部に銅シード層若しくは触媒層7銅層8からなる配線を形成する。
【0008】
このような状況下で、半導体装置製造工程における電解若しくは無電解メッキ法による銅メッキ工程や、集積回路マイクロチップの化学機械研磨(CMP)若しくは電解研磨(ECP)工程においては、銅イオンを大量に含む廃水が生じる。廃水中の銅イオンに関しては、許容限度として、日本では最大濃度が3.0mg/l以下に規制されており、また米国においては、一例として最大濃度が2.7mg/l以下、一日あたりの平均濃度が1.0mg/l以下、1年あたりの平均濃度が0.4mg/l以下に、より厳しく規制されている。したがって、廃水中の銅を効率よく除去する技術を提供することが強く求められている。
【0009】
現在の半導体装置製造工場においては、CMP装置1台あたり最大で0.5m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/l程度、同様に銅メッキ装置1台あたり最大で0.2m3/h程度の廃水が生成し、廃水中の銅濃度は最大で100mg/l程度というのが大凡の現状である。銅配線を利用する半導体装置の平均的な半導体装置製造工場では、一つの工場あたりCMP装置が10台程度、銅メッキ装置が10〜20台程度設置されている場合があり、これら装置から排出される銅含有廃水の総量は最大で220m3/日程度になり、廃水中に含まれる銅の総量は最大で約22kg−Cu/日にもなる。したがって、この廃水から銅を効率よく回収して再利用することが、環境保護のみならず、省資源の観点からも、強く求められている。
【0010】
また、従来の半導体装置製造を含む設備産業では、工場内における各種工程からの廃水を集めて回収し、これを一括して処理するという総合廃水処理設備の考え方が主流であったが、製造プロセスの技術の進化が早い半導体装置製造においては、それぞれの工程での廃水をその場で処理するという方法、すなわちユースポイントで廃水を処理する方法が求められている。これは、従来の少品種・大量生産型から多品種・少量生産型へと生産方式が変わってきているため、製造品種の変更頻度の増加に伴って廃水の性状変動も大きくなり、従来の方法ではこの性状の変動に対応することが難しいことや、各プロセスから発生する個別の廃水に対応して処理を行った方が重金属の回収・再利用のプロセスが容易であることなどの理由による。
【0011】
以上のような現状の下、被処理水の水質変動に対応可能で、高濃度の金属イオンを含む廃水から低濃度の金属イオンを含む廃水まで幅広く処理することが可能で、さらに、被処理水量が多くても十分に対応することのできる、廃水から金属イオンを除去・回収する装置、特に半導体装置製造プロセス廃水から銅を除去・回収する装置が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、高濃度から低濃度までの広範囲にわたる金属イオンを含む廃水を処理することができ、大量の廃水を十分に処理することができる廃水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属イオンを含有する廃水、特に銅イオンを含有する半導体装置製造プロセスからの廃水を処理する装置として、電解析出操作と、イオン交換操作とを組み合わせることにより、廃水中の金属イオンを効率的に除去・回収することができることを見出した。すなわち、本発明の一態様は、電解析出ユニットとイオン交換ユニットとを組み合わせたことを特徴とする、金属イオンを含む被処理水の処理装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の被処理水を処理する装置の実施形態を説明する。以下の図面において、同じ参照番号は同じ構成要素を意味し、重複して説明しない。
【0015】
上記のように、本発明の一態様に係る被処理水の処理装置は、金属イオンを含む被処理水の処理において、電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせたことを特徴とする。
【0016】
金属イオンを含む廃水を電解析出処理にかける操作は、金属イオンを含む水溶液中に、チタン、ニッケル、ステンレスなどの電極を浸漬して通電することにより、陰極(カソード)の表面上に金属が析出するという原理に基づくものである。例えば、銅イオンが含まれている水をこのような電解処理にかけると、陽極(アノード)では次の化学式(1)および/または(2)で示される1以上の反応が起きる。
H2O → 2H++1/2O2↑+2e− ・・・(1)
2OH− → H2O+1/2O2↑+2e− ・・・(2)
これにより、酸素ガスが発生する。陰極では次の化学式(3)および(4)および/または(5)で示される反応が起きる。
Cu2++2e− → Cu↓ ・・・(3)
2H+ + 2e- → H2↑ ・・・(4)
2H2O + 2e- → H2↑ + 2OH- ・・・(5)
これにより、銅が電極表面上に析出すると共に水素ガスが発生する。
【0017】
図2に、電解析出装置の一具体例を示す。図2に示す装置は、電解槽11内に、陽極12および陰極13が配置されている。両電極は、それぞれ直流電源14の陽極および陰極に電気的に接続されている。この電解槽11に廃水(被処理水)15を供給して、両電極に通電することによって、廃水中の金属イオンMn+は、電位勾配によって陰極13に引き寄せられ、陰極13の表面上で電極反応によって金属として析出する。この操作によって金属イオンの濃度が低められた処理水は、処理水出口16から排出される。電解槽11内の廃水15は十分に撹拌することが陰極13表面に均一に析出させる点で好ましい。
【0018】
また、図3に他の形態の電解析出装置の一具体例を示す。図3に示す電解析出装置21は、通水性の材料で形成された陰極22と陽極23とを有していて、これら両電極に挟まれて電解室25が形成されている。両電極は、それぞれ直流電源の陰極および陽極に電気的に接続されている。また、両電極の外側には、それぞれ水供給配管26および水排出配管27が形成されている。このような電解析出装置21に、水供給配管26から金属イオンを含む廃水(被処理水)を供給し、両電極に通電しながら電解室を通過させると、廃水中の金属イオンMn+は、陰極22を通過する際に陰極22の表面上で電極反応によって金属として析出する。この操作によって金属イオンの濃度が低められた廃水は、水排出配管27から排出される。なお、このような電解析出装置においては、廃水の通液方向を逆にして、すなわち、27より廃水を供給して、陽極23、陰極22の順で廃水を通過させた後、処理水を配管26から排出するようにしてもよい。
【0019】
このような電解析出装置において用いられる電極材料としては、通常の電気透析装置や電気分解装置などの電気化学的反応装置に用いられている様々な材質、形状のものを用いることができる。材質としては、活性炭材料、グラファイト炭素繊維などの炭素系材料、並びに、銅、ニッケル、チタン、二酸化鉛、フェライト、ステンレスなどのような各種導電性金属材料、さらにこれら金属材料に貴金属のコーティングを施した材料を挙げることができる。また、特に処理対象の金属を析出させる陰極として金属材料を用いる場合には、対象の金属と同じものを陰極材料として用いることが好ましい。また、形状としては、板状、棒状、多孔質、繊維状、フェルト状、スポンジ状などの形状の材料を用いることができ、比表面積が大きい形状のものほど、電極電流密度が小さくなり、目的とする電極反応を制御しやすくなるので好ましい。
【0020】
また、例えば図3に示す電解析出装置のように電極を通して水を流通させる方式の場合には、電極の材料として十分な通水性を有することが要求される。さらに、図2に示すような電解析出装置においても、電極を通して水を流通させることが好ましい場合がある。このような場合に好ましく用いることのできる通水性の電極材料としては、エキスパンデッドメタル、金属斜交網材料、格子状金属材料、網状金属材料などを挙げることができる。このような通水性の電極材料としては、具体的には、金網、パンチングメタル、エキスパンドメタル(ラスメタル仕様)、発泡金属、繊維状金属などを挙げることができる。陽極に用いる場合には、チタンで作られたこれらの形状のものに白金メッキしたものを用いることが好ましい。また、陰極に用いる場合には、ステンレスで作られたこれらの形状のものを用いることが好ましい。
【0021】
また、電解析出装置21の電解室25内において、陰極に接触させて通水性導電体の層を配置すると、金属の析出場として機能する陰極の実質的な表面積を増大させることができるのでより好ましい。例えば、図4に示す装置は、図3に示す装置の電解室25内において、陰極に接触させて通水性導電体28の層を配置したものである。この目的で用いる通水性導電体としては、陰極の実質的な表面積を増大させる目的で使用するので、表面積が大きいものが好ましく、炭素または金属などの導電性のシート状繊維材料が好ましく用いられる。具体的な例としては、例えば、炭素繊維によって形成される不織布シート材料(例えば、フェルト状活性炭繊維シート)、発泡金属、金属繊維シートなどを挙げることができる。また、炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸して焼成炭化させ、さらにグラファイト化させた多孔質板も導電層28として好適に使用できる。
【0022】
また、金属繊維を不織布上に加工しさらに焼結させた焼結金属繊維も好適に使用できる。発泡金属や金属繊維シートに用いることのできる金属としては特に制約は無いが析出させる金属イオンと同じ金属を用いることが析出させた金属の再利用が容易に可能なことからから好ましい。また、鉛や亜鉛などの、水を電気分解する過電圧が高い金属を発泡金属や金属繊維シートとして用いた場合には、化学式(5)による水の分解が起こりにくくなり、運転可能な電圧の範囲が広がって運転操作が容易となるとともに、不要な化学反応に使われる電流が少なくなり目的とする金属イオンの析出に使用される電流の比率が高くなるので電流効率が高くなるので好ましい。
【0023】
なお、上記に説明した活性炭繊維のフェルト状シート材料は、フェルト状の炭素繊維シートがそのまま提供されるものと、フェルト状シートの両面に、ポリエチレンテレフタレートアクリル酸エステルのフィラメントシート、または、ポリアミド、ポリプロピレンおよび含水珪酸マグネシウムを混練紡糸して形成される長繊維の不織布などや、あるいは紙などの薄いシートを補強材として貼付した形態で提供されるものとがある。このような炭素繊維フェルト状シート材料を、本発明に係る装置において陰極の表面積を増大させるための通水性導電体として用いる場合には、シートを必要に応じて複数枚積層して配置することができる。また、本発明者らの実験によれば、両面に、補強用の長繊維積層不織布や紙などのシートが貼付されたままの形態で、フェルト状シートを必要に応じて複数枚積層して本発明に係る装置内に装填することによって、廃水中の金属の析出をより促進させることができることが分かった。これは、導電性の繊維シートの間に、不織布や紙などの非導電性の薄いシートが介在することにより、この箇所での電位差が大きくなって金属が析出しやすい電位差を得ることができるためである。したがって、本発明においては、導電性の繊維材料を複数枚積層配置して、各層の間の少なくとも一つに非導電性材料のシートを配置することによって導電体層を形成してもよい。また、複数枚積層配置されている導電性繊維材料のそれぞれの層の間にこのような非導電性のシートを配置すると、当該シートが配置された箇所のそれぞれが金属の析出場として機能するので、導電体層の全体に亘って金属を析出させることができるという効果も得られる。また、同様の考え方により、通水性導電体の層とカチオン交換体の層との間に、非導電性材料のシートが配置されていてもよい。この場合にも、非導電性のシートが介在することによって、陰極として作用する通水性導電体と、カチオン交換体との間の電位差が大きくなって、金属が析出しやすくなる場合があると考えられる。
【0024】
また、各種金属によって形成される通水性の発泡金属材料または焼結金属繊維を、上記の目的の通水性導電体として、上記に説明したような導電性繊維材料に代えて、あるいはこれと組み合わせて用いることができる。発泡金属材料も、繊維材料と同様に極めて表面積が大きく、陰極の実質的な表面積を増大させて金属を効率よく電解析出させるための導電性材料として好適である。かかる目的で用いることのできる通水性の発泡金属材料としては、例えば、銅発泡金属などを挙げることができる。
【0025】
例えば、後述するように、本発明に係る電解析出装置を半導体装置製造プロセスにおけるCMP廃水や銅メッキ廃水、電解研磨廃水などの処理に用いて、廃水中の銅を除去・回収する目的で用いる場合、廃水中には銅イオン以外の金属イオンが実質的に存在しない場合がある。このような廃水を処理して銅を回収するプロセスにおいて、陰極として作用させる導電性材料として銅の発泡体を用いれば、廃水中には金属イオンとして実質的に銅しか存在していないので、電解析出によって銅発泡体にさらに銅が析出することになる。したがって、電解析出運転の後に導電性材料である銅発泡体を回収すれば、特に精製工程を必要としないでそのまま銅材料として再利用することが可能である。
【0026】
上記に説明したように、本発明の好ましい態様においては、電極間の電解室内において、通水性導電体の層を陰極に接触させて配置することが好ましい。しかしながら、このような導電体の層を陰極と別に配置することは必ずしも必要ではなく、例えば、上記に説明した炭素繊維材料や通水性発泡金属材料などを陰極それ自体として使用することで、陰極の表面積を増大させることもできるし、あるいはエキスパンデッドメタルまたは金網などで形成された陰極を複数枚積層して配置することで、陰極の表面積を増大させることもできる。また上記の炭素繊維材料,通水性発泡金属材料,エキスパンデッドメタルおよび金網などを任意に組み合わせて陰極の表面積を増大させることもできる。また、同様の材料を陽極材料として用いることで、陽極の表面積を増大させることもできる。
【0027】
また、電極間の電解場に粒状導電体を存在させて、これを陰極として機能させることによって、陰極の実質的な表面積を増大させると共に、処理対象の金属が析出した粒状導電体をバッチ式または連続的に回収することで、金属の回収作業を簡便にすることができる。例えば、図5にこのような形態の電解析出装置を示す。図5に示す電解析出装置21は、図3に示す装置の電解室25に、粒状導電体31を存在させたことを特徴とする。粒状導電体31は、電解室25内にバッチ式に充填する、すなわち所定量の粒状導電体31を充填した状態で電解析出運転を行い、所定量の金属析出が得られた後に粒状導電体31を回収することができ、あるいは粒状導電体31を電解室に連続的に水流などによって供給・回収することもできる。電解室25内の粒状導電体31は、陰極22と接触することによって陰電荷を帯び、これにより廃水中の金属イオンが電極反応によって粒状導電体31の表面に金属として析出する。例えば、図5に示すように、このような粒状導電体31を水流などによって電解室25に連続的に供給・回収すれば、処理対象の金属を連続的に回収することができるし、粒状導電体31の電解室25への供給・回収はバッチ式で行ってもよい。但し、このような装置の場合、陰電荷を帯びた粒状導電体31と陽極とが接触して短絡することを防ぐために、陽極の表面に透水性且つ絶縁性の隔膜32を配置する必要がある。この目的で使用される絶縁性の隔膜32としては、樹脂、セラミック等からなるものを用いることができ、電極と同様に、網状材料、斜交網材料、格子状材料などを用いることができる。また、かかる形態で使用することのできる粒状導電体31としては、陰極と同様の導電体を使用することができ、例えば、粒状の金属、黒鉛、活性炭等を用いることができる。処理対象の金属と同種の金属粒子を用いるとより好ましい。なお、図4に示すような陰極に接触させて通水性導電体を装填した形態の装置においても、通水性導電体と陽極との間に粒状導電体を存在させることができる。
【0028】
次に、金属イオンを含む廃水をイオン交換処理にかける操作は、例えばビーズ形状のイオン交換樹脂を充填したカラムや、織布・不織布などの繊維材料や多孔膜あるいは斜交網等のスペーサー部材などの形態のイオン交換体に対して、金属イオンを含む廃水(被処理水)を通液することによって、廃水中に残留している金属イオンMn+をイオン交換によってイオン交換体に吸着させることによって、廃水中から残留する金属イオンをより高度に除去・回収するというものである。イオン交換処理における廃水の通水方法としては、イオン交換体の層に廃水を通液する方法と、イオン交換体の層の表面に沿って廃水を流す方法とがあるが、何れの方法を採用してもよい。
【0029】
この目的で用いることのできるイオン交換体樹脂ビーズとしては、当該技術において公知のものを用いることができる。例えば、ポリスチレンをジビニルベンゼンで架橋したビーズなどを基材樹脂として用い、これを硫酸やクロロスルホン酸のようなスルホン化剤で処理してスルホン化を行なって基材にスルホン基を導入することにより、本発明で使用することのできる強酸性カチオン交換樹脂ビーズを得ることができる。このような製造方法は当該技術において周知であり、またこのような手法によって製造されたカチオン交換樹脂ビーズとしては、種々の商品名で市販されているものを挙げることができる。また、官能基として、イミノジ酢酸およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有する樹脂ビーズを用いてもよい。
【0030】
また、同様の目的で用いることのできるイオン交換繊維材料としては、高分子繊維基材にイオン交換基をグラフト重合法によって導入したものが好ましく用いられる。高分子繊維よりなるグラフト化基材は、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの一種の単繊維であってもよく、また、軸芯と鞘部とが異なる高分子によって構成される複合繊維であってもよい。用いることのできる複合繊維の例としては、ポリオレフィン系高分子、例えばポリエチレンを鞘成分とし、鞘成分として用いたもの以外の高分子、例えばポリプロピレンを芯成分とした芯鞘構造の複合繊維が挙げられる。かかる複合繊維材料に、イオン交換基を、放射線グラフト重合法を利用して導入したものが、イオン交換能力に優れ、厚みが均一に製造できるので、上記の目的で用いられるイオン交換繊維材料として好ましい。イオン交換繊維材料の形態としては、織布、不織布などを挙げることができる。
【0031】
また、斜交網等のスペーサー部材の形態のイオン交換体としては、ポリオレフィン系高分子製樹脂、例えば、電気透析槽において広く使用されているポリエチレン製の斜交網(ネット)を基材として、これに、放射線グラフト法を用いてイオン交換機能を付与したものが、イオン交換能力に優れ、被処理水の分散性に優れているので、好ましい。
【0032】
なお、放射線グラフト重合法とは、高分子基材に放射線を照射してラジカルを形成させ、これにモノマーを反応させることによってモノマーを基材中に導入するという技法である。
【0033】
放射線グラフト重合法に用いることができる放射線としては、α線、β線、ガンマ線、電子線、紫外線等を挙げることができるが、本発明においてはガンマ線や電子線を好ましく用いる。放射線グラフト重合法には、グラフト基材に予め放射線を照射した後、グラフトモノマーと接触させて反応させる前照射グラフト重合法と、基材とモノマーの共存下に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがあるが、本発明においては、いずれの方法も用いることができる。また、モノマーと基材との接触方法により、モノマー溶液に基材を浸漬させたまま重合を行う液相グラフト重合法、モノマーの蒸気に基材を接触させて重合を行う気相グラフト重合法、基材をモノマー溶液に浸漬した後モノマー溶液から取り出して気相中で反応を行わせる含浸気相グラフト重合法などを挙げることができるが、いずれの方法も本発明において用いることができる。
【0034】
不織布などの繊維基材やスペーサー基材に導入するイオン交換基としては、特に限定されることなく種々のカチオン交換基またはアニオン交換基等を用いることができる。例えば、カチオン交換基としては、スルホン基などの強酸性カチオン交換基、リン酸基などの中酸性カチオン交換基、カルボキシル基などの弱酸性カチオン交換基、アニオン交換基としては、第1級〜第3級アミノ基などの弱塩基性アニオン交換基、第4アンモニウム基などの強塩基性アニオン交換基を用いることができ、あるいは、上記カチオン交換基およびアニオン交換基の両方を併有するイオン交換体を用いることもできる。また、官能基としてイミノジ酢酸およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、各種アミノ酸、例えば、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基、イミノジエタノールから誘導される官能基などを有するイオン交換体を用いてもよい。
【0035】
これらの各種イオン交換基は、これらのイオン交換基を有するモノマーを用いてグラフト重合、好ましくは放射線グラフト重合を行うか、または、これらのイオン交換基に転換可能な基を有する重合性モノマーを用いてグラフト重合を行った後に当該基をイオン交換基に転換することによって、繊維基材またはスぺーサー基材に導入することができる。この目的で用いることのできるイオン交換基を有するモノマーとしては、アクリル酸(AAc)、メタクリル酸、スチレンスルホン酸ナトリウム(SSS)、メタリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(VBTAC)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどを挙げることができる。例えば、スチレンスルホン酸ナトリウムをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強酸性カチオン交換基であるスルホン基を導入することができ、また、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドをモノマーとして用いて放射線グラフト重合を行うことにより、基材に直接、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を導入することができる。また、イオン交換基に転換可能な基を有するモノマーとしては、アクリロニトリル、アクロレイン、ビニルピリジン、スチレン、クロロメチルスチレン、メタクリル酸グリシジル(GMA)などが挙げられる。例えば、メタクリル酸グリシジルを放射線グラフト重合によって基材に導入し、次に亜硫酸ナトリウムなどのスルホン化剤を反応させることによって強酸性カチオン交換基であるスルホン基を基材に導入したり、またはクロロメチルスチレンをグラフト重合した後に、基材をトリメチルアミン水溶液に浸漬して4級アンモニウム化を行うことによって、強塩基性アニオン交換基である第4級アンモニウム基を基材に導入することができる。また、基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、スルフィドを反応させてスルホニウム塩とした後、イミノジ酢酸ナトリウムを反応させることによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。あるいは、まず基材にクロロメチルスチレンをグラフト重合した後、クロロ基をヨウ素で置換し、次にイミノジ酢酸ジエチルエステルを反応させてヨウ素をイミノジ酢酸ジエチルエステル基で置換し、次に水酸化ナトリウムを反応させてエステル基をナトリウム塩に変換することによって、官能基としてイミノジ酢酸ナトリウム基を基材に導入することができる。
【0036】
上述の各種の形態のイオン交換体の中では、不織布または織布などの形態のイオン交換繊維材料が特に好ましい。織布、不織布などの繊維材料は、樹脂ビーズや斜交網などの形態の材料と比較して表面積が極めて大きいのでイオン交換基の導入量が大きく、また、樹脂ビーズのようにビーズ内部のミクロポアまたはマクロポア内にイオン交換基が存在するということはなく、全てのイオン交換基が繊維の表面上に配置されるので、被処理水中の金属イオンが容易にイオン交換基の近傍に拡散され、イオン交換によって吸着される。したがって、イオン交換繊維材料を用いると、金属イオンの除去・回収効率をより向上させることができる。
【0037】
本発明は、金属イオンを含む被処理水を処理して、金属イオンを回収する装置において、上記に説明した電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせて用いることを特徴とする。電解析出操作によって被処理水中の金属イオンを除去・回収する方法は、ある程度高い濃度の金属イオンを含む被処理水の処理には好適に用いることができ、対象の金属イオンを金属として回収することができるという利点を有するが、被処理水中の金属イオン濃度が低くなると、運転電圧が高くなるという問題がある。また、イオン交換操作によって被処理水中の金属イオンを除去・回収する方法は、金属イオン濃度が低い被処理水の処理に好適に使用することができるが、イオン交換体に吸着させて回収するので、この吸着した金属イオンを溶離させて回収する際に大量の酸を必要とすること、被処理水の金属イオン濃度が高かったり、あるいは被処理水の水量が大きかったりすると、金属回収量が大きくなるため、イオン交換体から金属イオンを溶離させて回収する作業の頻度が多くなり高い負担になること、金属イオンとして回収されるので、これから金属を金属単体として回収するためには電解析出等の更なる処理が必要であることなどの問題がある。
【0038】
本発明は、このような長所と短所とを併せ持つ電解析出操作およびイオン交換操作を組み合わせて被処理水の処理に使用することで、両者の短所を補いながら長所を組み合わせて、被処理水の水質および水量の変動に対応した適切な処理を行うことを可能にしたものである。
【0039】
図6は、本発明によって被処理水を処理する装置を示す。図6に示す装置は、互いに直列に接続され、廃水(被処理水)を処理する電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを備えている。例えば、半導体装置製造プロセスのCMPユニットやECPユニットあるいは銅メッキユニットなどの処理ユニット51からの銅イオンなどの銅イオンを含む廃水は、まず廃水タンク52に受容され、次に電解析出ユニット53にかけられ、廃水中に含まれている銅イオンの十分量が電解析出操作により銅金属として回収される。電解析出ユニット53で処理された処理水は、次にイオン交換ユニット54にかけられ、残余の銅イオンがほぼ完全に除去された後に、処理水55として排出することができる。
【0040】
また、廃水タンク52中に銅イオン濃度測定装置56を設置し、廃水中の処理対象の銅イオン濃度が所定の濃度以下であるために、電解析出操作による効率的な処理が望めないことが予測される場合には、切替えバルブ58を切替えることにより、廃水を廃水タンク52から、電解析出ユニット53をバイパスして、直接イオン交換ユニット54に送るようにすることもできる。また、銅イオン濃度の測定値に応じて、濃度が低い場合には電解析出ユニット53を停止するかまたは供給する電流を少なくしてもよい。
【0041】
図7は、本発明の他の実施形態に係る被処理水の処理装置を示す。図7に示すように、電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを直列に接続した形態の装置においては、電解析出ユニット53から排出される処理水の少なくとも一部を戻し配管71によって廃水タンク52に戻して、再び電解析出ユニット53にかけることによって、金属イオンの除去・回収の効率をより高めることができる。
【0042】
図8は、本発明のさらなる他の実施形態に係る被処理水の処理装置を示す。図8に示すように、イオン交換ユニット54から排出される処理水の一部を配管72によって廃水タンク52に戻して、再び電解析出ユニット53およびイオン交換ユニット54にかけるように装置を構成することもできる。
【0043】
なお、図6から図8で説明したような直列接続の装置においては、電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを入れ替えて廃水がまずイオン交換ユニットに導入された後、電解析出ユニットに導入されるようにしてもよい。
【0044】
また、図9は、被処理水の処理において電解析出ユニット53とイオン交換ユニット54とを並列に接続した、本発明のさらなる他の実施態様に係る被処理水の処理装置を示す。例えば、半導体装置製造プロセスのCMPユニットやECPユニットあるいは銅メッキユニットなどの処理ユニット51からの銅イオンなどの金属イオンを含む廃水(被処理水)は、まず廃水タンク52に受容され、次に、バルブ62を通して適宜量が処理タンク61に供給される。処理タンク61に受容された廃水は、バルブ58によって電解析出ユニット53との間を循環され、これによって廃水中の銅イオンの十分量を電解析出操作により銅金属として回収することができる。電解析出操作によって銅イオン濃度が所定の値以下に低下したら、次にバルブ59によって廃水がイオン交換ユニット54との間を循環される。これによって、廃水中の銅イオンをほぼ完全に除去することができる。銅イオンがほぼ完全に除去された処理水55は処理タンク61から排出される。この場合、処理水タンク61内に銅イオン濃度測定装置56を設置して、廃水中の処理対象の銅イオンの濃度を測定し、その濃度値に応じて電解析出ユニット53およびイオン交換ユニット54との間のバルブ58,59の開閉を制御することができる。なお、図9においては、バルブ58、59は各々二つずつ設けられているが、それぞれ1つ以上であればよい。
【0045】
図40A,図40B,図41,および図47はイオン交換操作の一形態である電気透析操作を用いて金属イオンを濃縮した濃縮水に対して電解析出操作を行う装置を示す。図40A,図40B,図41,および図47に示されるように、被処理水15は電気透析操作により、金属イオンが除去され、金属イオン濃度が減少した処理水55が得られる。金属イオンを受入れた濃縮水44は電解析出装置45において電解析出操作に供されて、金属イオンは金属の形態で回収される。金属イオンの濃縮水44は、金属イオン濃度が被処理水15よりも高くなるので電解析出操作を低電圧で行うことができるようになる。電気透析操作においては、濃縮室41に隣接する陰極側の室には被処理液を供給してもよいし、被処理液の代わりに硫酸イオン(SO42−)、硝酸イオン(NO3−)、塩素イオン(Cl−)などを含む酸あるいは塩溶液を供給してもよい。濃縮室41と脱塩室42の間に両室のイオン濃度差を緩和することを目的としたバッファー室43を設けてもよい(図41参照)。脱塩室42にはカチオン交換体を充填する。濃縮室41には、カチオン交換体またはアニオン交換体を充填してもよい。バッファー室43はカチオン交換体を充填し、脱塩室42または濃縮室41との境界にはカチオン交換膜111を設けるものを挙げることができる。バッファー室43には純水を連続的に供給してもよいし、循環させてもよい。循環させる場合はイオン交換樹脂層を循環ライン内に設けることにより、イオン濃度を長期にわたって低く安定化させることができる。
【0046】
また、図40A,図40B,図41,および図47に示される装置において、イオン交換操作は電気的にイオン交換体の再生が可能なものを採用することができる。電気的に連続再生を行えるイオン交換操作が好ましい。イオン交換操作により、被処理水15から金属イオンが除去される。イオン交換体は電気的に再生されるため、イオン交換体の交換は不要である。金属イオンの濃縮水44は電解析出装置45において電解析出操作に供されて、金属イオンは、金属、金属酸化物、金属水酸化物の形態で回収される。電解析出操作の処理水はイオン交換操作に返送し、金属イオン濃縮水44の原水として循環させることができる。金属イオンの濃縮水44は、金属イオン濃度が1000ppm以上と高く、析出操作を低い電圧で行うことができる。イオン交換操作においては、濃縮室41に隣接した陰極側の室にSO42−、NO3−などを含む、酸あるいは塩溶液を存在させることが好ましい。濃縮室41内に濃縮されたSO42−などの陰イオンは、電気透析、拡散透析などの透析操作を濃縮水ライン途上に設けることにより、回収し、再利用することができる。本方法では、被処理水15が直接的に電極反応を受けないため、電極反応による被処理水15中溶存物質の変質、pH変化の影響などを受けにくい利点がある。
【0047】
次に、図47に示される処理フローについて詳述する。被処理水15は電気透析装置において分離処理に供されてCu濃縮水44を得る。次に、Cu濃縮水44を回収処理に供する。回収処理水は、破線で示されるように分離処理に返送してもよい。回収処理としては電解析出装置を用いることができる。分離処理としては公知の電気透析装置を用いることもできる。分離処理または回収処理それぞれは、並列接続または直列接続としてもよい。回収ライン途上に、電気透析または拡散透析操作をさらに設けて陰イオンを回収し、陰極室に供給する構成としてもよい。
【0048】
このように、本発明によれば、幅広い金属イオン濃度の各種の被処理水を、被処理水中の金属イオン濃度に応じて適切な処理を行うことができる。したがって、通常100mg/l以下の銅濃度を有するCMP廃液、100mg/l以下の銅濃度を有するメッキリンス液、2000mg/l〜10%の銅濃度を有する廃メッキ液の処理を、全て本発明の廃水処理装置によって処理して、銅濃度が低められた処理水を得ると共に、廃水中の銅イオンの十分量を、銅金属として回収することができる。
【0049】
また、本発明の他の態様によれば、カチオン交換体を電解析出装置の内部に組み込む。このように電解析出装置の内部にカチオン交換体を組み込むことにより、このカチオン交換体によって、金属イオン(カチオン)の捕捉が行われると共に、電解場にイオン交換体を配置することにより後述する水分子が分解する反応場(水解場)が形成されて、これによって電解析出装置の運転電圧が下がる。また、水分子が分解し始める電圧(理論電解電圧+過電圧)はイオン交換体と接触する電極または透水性通電体の材料の組合せで異なる。過電圧が低い白金や銅は低い電圧で水分解を起こすが、過電圧が高い炭素、鉛、亜鉛などは水分解を起こすのに白金や銅に比べて高い電圧を必要とする。このため、両極間にイオン交換体を装填した電解析出装置においては、通水性の導電体を含む陰極と陽極の材料を適切に選定することにより、陰極側と陽極側の水分解の発生を制御することができる。
【0050】
このように水分解の発生を制御することによって電流効率が大幅に増大する。ここで、電流効率とは、前述の電極反応の式の(3)/((3)+(4)+(5))の電流の比率である。このため、従来、電解析出装置では処理することのできなかった低い金属イオン濃度の被処理水にも電解析出法を適用して、被処理水中の金属イオンを効率的に除去・回収できることができる。
【0051】
すなわち、本発明の他の態様は、対向して配置された陽極および陰極と、これら両電極間に装填されているカチオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置に関する。このように、電解析出装置において、陽極と陰極との間にカチオン交換体を装填し、通電しながら両電極間に被処理水を流通させると、被処理水中の金属イオン(カチオン)は、陰極に析出する他にカチオン交換体のカチオン交換基によってイオン交換されて捕捉される。カチオン交換体に捕捉された金属イオンは、両電極間の電位勾配により、カチオン交換体の表面を陰極側に向かって移動し、陰極の表面上で電極反応により金属として析出する。したがって、両電極の間での金属イオンの移動がカチオン交換体の表面上で起こるので、被処理水中の金属イオン濃度が極めて低い状態となっても、運転電圧の上昇を伴うことなしにイオンの移動がスムーズに行われる。また、両電極間にカチオン交換体を装填することで、陽極とカチオン交換体との接触点が、低電圧で水分子が解離する反応場(水解反応場)として作用し、ここで発生したH+イオンによってカチオン交換体のカチオン交換基が次々と再生されるので、低電圧で電解運転を継続することが可能になる。
【0052】
このように、電気分解および電極反応による析出によって被処理水中の金属イオンを除去・回収する所謂電解析出装置において、陽極と陰極との間にカチオン交換体を配置して、金属イオンの動きを制御するという考え方を採用したものは、本発明者らが知る限りにおいてこれまで存在しなかった。
【0053】
図10は、図3に示すような形態の電解析出装置にカチオン交換体を組み込んだ本発明の一態様に係る電解析出装置の概念を示す。図10に示す電解析出装置101は、通水性の材料で形成された陰極102と陽極103とを有し、さらに両電極の間の電解室内にカチオン交換体の層108が配されている。カチオン交換体の層108は、運転電圧の安定を考慮すれば陰極および陽極の両方に接して配されていることが好ましい。しかしながら、カチオン交換体の層は、陰極または陽極のいずれか一方に接していてもよく、あるいは両方に接していなくてもよい。また、陰極102の外側には給排水管106が、陽極103の外側には給排水管107が配設されており、電極およびカチオン交換体よりなる複合層を通して廃水(被処理水)を流すように構成されている。
【0054】
図10に示す構成の電解析出装置101に対して、管107から廃水を供給し管106から処理水を排水した場合、廃水はまず陽極103を通過し、次にカチオン交換体の層108を通過し、ここで廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)がカチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の上を陰極102に向かって移動し、陰極102の表面上で、電極反応によって金属として析出する。このようにして、廃水中の金属イオンが電解析出によって除去され、処理された水が管106から処理水として排出され、金属が回収される。
【0055】
また、図10に示す構成の装置は、管106から廃水を供給し管107から処理水を排水することもできる。この場合、廃水はまず陰極102を通過し、ここで廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)が、陰極102の表面上で、電極反応によって金属として析出する。陰極102を通過した廃水は、次にカチオン交換体108の層を通過する。ここで、廃水中に残留する金属イオンが、カチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の表面を陰極102に向かって移動し(戻され)、陰極102の表面上で電極反応によって金属として析出する。処理された水は管107から処理水として排出される。
【0056】
図10に示す電解析出装置は、上述の通水形態のいずれをも採ることができるが、本発明者らの実験によれば、陰極側から陽極側へ廃水を流通させる方式、すなわち、陰極で捕捉しきれなかった残留金属イオンを、続くカチオン交換体の層で捕捉して、電位勾配によって陰極側に引き戻して析出させる方式の方が、金属イオンの除去効率がより高く、好ましいことが分かった。
【0057】
上記のような目的で電解析出装置内に装填されるカチオン交換体の層は、層として十分な通水性を有することが求められる。このような通水性のカチオン交換体の層は、例えば、カチオン交換樹脂ビーズを、装置内の所定の位置(すなわち、図10に示す形態の場合には、陽極103と陰極102との間)に充填することによって形成することができる。また、上記に説明したようなカチオン交換繊維材料やカチオン伝導スペーサーを、陰極と陽極との間に装填することもできる。
【0058】
なお、図10に示すような形態の電解析出装置において、電解室内に、イミノジ酢酸基などのキレート基を有する樹脂ビーズ材料、繊維材料、スペーサーなどを充填してもよく、あるいは、これらを上記に説明したカチオン交換体と混合充填してもよい。
【0059】
また、図10に示すような形態の電解析出装置においても、上記に説明したように電極間の電解室内において通水性導電体の層を陰極に接触させて配置し、当該通水性導電体の層と陽極の間にカチオン交換体の層を充填することによって、陰極の実質的な表面積を増大させることが好ましい。かかる形態の電解析出装置の一具体例を図11に示す。図11に示す電解析出装置101は、通水性の材料で形成された陰極102と陽極103とを有し、さらに両電極の間に、陰極102と接触して配置されている通水性導電体の層109と、当該通水性導電体層109と陽極103との間に、両者に接触して配置されているカチオン交換体の層108を有する。カチオン交換体の層108は、運転電圧の安定を考慮すれば通水性導電体の層109および陽極103の両方に接して配されていることが好ましい。しかしながら、前述したように、カチオン交換体の層は、陰極または陽極のいずれか一方に接していてもよく、あるいは両方に接していなくてもよい。また、両電極の外側には、給排水口106および107が配設されており、電極、導電体およびカチオン交換体よりなる複合層を通して廃水(被処理水)を流すように構成されている。
【0060】
図11に示す構成の電解析出装置101に対して、管107から廃水を供給し管106から処理水を排水した場合、廃水はまず陽極103を通過し、次にカチオン交換体の層108を通過し、ここで廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)がカチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の上を陰極102に向かって移動する。通水性導電体109は陰極102と接触して配置されているので、陰極として機能する。したがって、カチオン交換体108上を移動してきた金属イオンは、陰極として機能する通水性導電体の層109の表面上で、電極反応によって金属として析出する。このようにして、廃水中の金属イオンが電解析出によって除去され、処理された水が管106から処理水として排出され、金属が回収される。
【0061】
また、図11に示す構成の電解析出装置101も、管106から廃水を供給し管107から処理水を排水することもできる。この場合、廃水はまず陰極102を通過し、次に通水性導電体層109を通過する。通水性導電体層109は陰極2と接触して配置されているので、陰極として機能する。したがって、廃水が通水性導電体層109を通過する間に、廃水中に含まれる金属イオン(カチオン)が、陰極として機能する通水性導電体109の表面上で、電極反応によって金属として析出する。通水性導電体層109を通過した廃水は、次にカチオン交換体108の層を通過する。ここで、廃水中に残留する金属イオンが、カチオン交換体108のカチオン交換基でイオン交換されて吸着される。カチオン交換体108に吸着された金属イオンは、電位勾配によって陰極102に引かれて、カチオン交換体108の上を陰極102に向かって移動し(戻され)、通水性導電体109の表面上で電極反応によって金属として析出する。処理された水は管107から処理水として排出される。
【0062】
上述したように、図11に示す電解析出装置101においては、廃水を管107から供給し管106から排出しても、管106から供給し管107から排出してもいずれであってもよい。本発明者らの実験によれば、陰極側から陽極側へ廃水を流通させる方式、すなわち、陰極として機能する通水性導電体の層で捕捉しきれなかった残留金属イオンを、続くカチオン交換体の層で捕捉して、電位勾配によって陰極側に引き戻して析出させる方式の方が、金属イオンの除去効率がより高く、好ましいことが分かった。
【0063】
このような目的で用いられる導電体も、それを通して水を通過させるので、通水性を有することが求められる。このような導電体としては、上記において説明したような活性炭繊維シートや通水性発泡金属材料などを用いることができる。
【0064】
また、図10に示すような電解室内にカチオン交換体を装填した形態の電解析出装置においても、粒状導電体を電解室内に存在させることによって金属が析出する陰極の実質的表面積を増大させることができる。かかる形態の電解析出装置の一具体例を図12に示す。図12に示す電解析出装置101は、陰極102と陽極103との間に形成される電解室内に、陽極103に接触させてカチオン交換体の層108を装填し、さらに、カチオン交換体の層108と陰極との間に粒状導電体110を存在させたことを特徴とする。粒状導電体110は、陰極102と接触することによって陰電荷を帯び、これにより廃水中の金属イオンが電極反応によって粒状導電体110の表面に金属として析出する。なお、カチオン交換体の層は、陽極または粒状導電体に接していなくてもよい。粒状導電体110によって捕捉されなかった金属イオンは、カチオン交換体108によって捕捉され、両電極の間の電位勾配によって陰極に向かって引かれ、陰電荷を帯びた粒状導電体110がカチオン交換体108に接触することによって、カチオン交換体108の表面を移動してきた金属イオンが、粒状導電体110の表面上で電極反応によって金属として析出する。図12において、粒状導電体を含む水の通水方向は上方から下方となっているが、下方から上方でもよい。図5に関して説明したように、粒状導電体110は水流などによって連続的に供給・回収することもできるし、あるいは粒状導電体110の供給・回収をバッチ式で行うこともできる。また、図12に示す形態の電解析出装置においては、図5に示す装置とは異なり、陽極上に導電性を有しないカチオン交換体の層108が配置されているので、陰電荷を帯びた粒状導電体110と陽極103とが接触することを防止するための絶縁性の隔膜(図5のダイヤフラム32)は必ずしも配置する必要はない。この目的で使用される粒状導電体110としては、図5に関して上記に説明した各種の材料を用いることができる。また、図11に示すように陰極に接触させて通水性導電体を装填した形態の装置において、通水性導電体の層109とカチオン交換体の層108との間に空間を形成し、ここに粒状導電体を存在させることができる。
【0065】
なお、電解析出装置内にイオン交換体を組み込む場合、運転電圧の低減のみを考える場合には、アニオン交換体を装填してもよい。この場合、アニオン交換体による金属イオンの捕捉は期待できないが、水解が発生することによって運転電圧が低減するという効果は得られる。アニオン交換体を電極内に装填した場合、陽極とアニオン交換体との接触点が、低電圧で水分子が解離する反応場(水解反応場)として作用してOH−イオンが発生し、このOH−イオンによってアニオン交換体のアニオン交換基が次々と再生されることにより、低電圧の電解運転が可能になる。よって、金属イオン濃度が低い廃水の処理には、電解析出装置内にアニオン交換体を装填し、回分式にて電解析出装置処理水を再度電解析出装置に通水し、これを繰り返すことで所望の除去率を達成することが可能な場合がある。したがって、本発明のより広い態様は、対向して配置された陽極および陰極と、これら両電極間に装填されているイオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置に関する。なお、本方法においては、金属イオンがOH−イオンの影響を受けて金属水酸化物または金属酸化物の形態で水中から除去される場合がある。このような効果も利用して処理性能を高めることもできる。
【0066】
さらに、導電体の層とカチオン交換体の層との間にカチオン交換膜を配して、金属イオンの移動を行わしめることができる。かかる態様の電解析出装置の概念を図13に示す。図13に示す電解析出装置121は、陰極102と陽極103との間の電解室において、陰極102に接触して導電体の層109が装填され、陽極103に接触してカチオン交換体の層108が装填されている。そして、導電体の層109とカチオン交換体の層108との間にはカチオン交換膜111が装填されている。このような構成の装置に、例えば図13に示すように、金属イオンを含む廃水122を、まず導電体の層109に通し、次にカチオン交換体の層108に通すと、まず、陰極として機能する導電体109の表面上で廃水中の金属イオンが析出する。導電体によって捕捉されずに廃水中に残留した金属イオンは、次に廃水がカチオン交換体の層108を通過する間にカチオン交換体によって捕捉される。カチオン交換体によって捕捉された金属イオンは、電位勾配によって陰極に引かれ、カチオン交換膜111を通過して導電体の層109に移動し、陰極として機能する導電体の表面上で金属として析出する。カチオン交換体の層108からは、金属イオンが除去された処理水123が得られる。このような装置においては、電極102および103の材料としては、通水性は必ずしも要求されない。なお、図13に示す電解析出装置においても、廃水の流れを図13とは逆に、すなわち、まずカチオン交換体の層108を通し、次に導電体の層109を通すようにしてもよい。また、カチオン交換膜の破損防止のために、カチオン交換膜と導電体の層との間にクッション材としてカチオン交換体を挿入してもよい。さらに、カチオン交換膜と導電体またはカチオン交換体と導電体の間に空間を設けてもよい。金属イオンは導電体の層109に析出する際に細かい針状の結晶として析出し、結晶が成長する過程で折れて金属微粒子を発生することがある。また銅酸化物や銅水酸化物の粒子を発生することがある。このため、導電体の層109を通過した水に対して、導電体層109で発生した金属含有微粒子を除去する目的で、フィルタ設備を設けてカチオン交換体層108に通水してもよい。この場合は、フィルター設備を通した水をイオン交換体の層に供給することでイオン交換操作を安定して行うことができる。
【0067】
また、図38および図39に示す構成としてもよい。図38に示すように、金属イオンを含む被処理水122をカチオン交換体の層108を通して透水性の陽極103から抜き出す際に金属イオンはカチオン交換体によって補足される。カチオン交換体によって捕捉された金属イオンは電位勾配によって陰極102に引かれカチオン交換膜111を通過して導電体の層109に移動し、陰極として機能する導電体の表面上で金属として析出する。カチオン交換体の層108からは、金属イオンが除去された処理水123が得られる。このような装置においては、陰極の材料としては、通水性は必ずしも要求されない。また陰極として機能する導電体は溶液中に浸漬されていればよく、必ずしも溶液が流れている必要はない。また、カチオン交換体への被処理液の供給は1ヶ所からでもよいが、複数箇所から供給するとイオン交換体が有効に利用されるので好ましい。また、図39に示すようにカチオン交換体に供給した水122は直接カチオン交換体の層108から抜き出してもよい。ここでカチオン交換体から抜き出した処理水123の一部をカチオン交換体の入口部に戻してもよい。このような装置においては、陽極および陰極の材料としては、通水性は必ずしも要求されない。
【0068】
次に、電解析出装置内にイオン交換体を装填する場合のイオン交換体と陰極との関係を説明する。電解析出装置内にイオン交換体を装填した場合には、イオン交換体が捕捉した金属イオンを陰極に引き寄せて陰極表面で析出させる。したがって、電圧の低減を図るためにはイオン交換体と陰極とが接触していた方がよい。しかしながら、金属が析出していくにつれて陰極の体積が増大していく。この際、特にイオン交換体として織布、不織布などのイオン交換繊維材料を用いた場合、陰極がイオン交換繊維材料の繊維を取り込みながら体積を増大させていくという現象がみられることがある。このため、陰極を取り出して金属を回収する際に、陰極内に取り込まれた繊維を除去する作業が必要になり作業が煩雑になる場合がある。そこで、場合によっては、陰極とイオン交換体との間に多少の間隙、例えば0.1〜2mm程度の間隙を形成することが好ましい。このような間隙は、例えば、陰極とイオン交換体との間に、透水性の紙、不織布または斜交網形状などのスペーサーを挟んだり、あるいは枠部材を挿入することによって形成することができる。なお、上記ではイオン交換体と陰極との関係を説明したが、陰極として機能する通水性導電体の層を配置する場合には、イオン交換体と通水性導電体の層との間にも同様のことが言えることは言うまでもない。
【0069】
次に、電解析出装置内にイオン交換体を装填する場合のイオン交換体と陽極との関係について説明する。電解析出装置内にイオン交換体を装填すると、イオン交換体に吸着された金属イオンが、電位勾配によってイオン交換体上を陰極に向かって移動する。この際、水解によって発生するH+イオンによってイオン交換基に結合している金属イオンが押し出され、イオン交換基の上を次々に渡って陰極に向かって移動する。しかしながら、H+イオンによる押出しによる金属イオンの移動は電流効率が悪い場合があり、廃水中の金属イオン濃度が高い場合には廃水中をイオンが移動する方が金属イオン移動の電流効率がよくなる場合がある。そこで、例えば、図11に示す電解析出装置101において、陽極103を可動型として、廃水の金属イオン濃度が高い場合には、陽極103とイオン交換体の層108とを離隔することによって、金属イオンの移動の電流効率を向上させることができる。
【0070】
図14は、本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す。図14に示す電解析出装置131は、2枚の陽極103の間に陰極109が離隔して配置されていて、陽極と陰極との間のスペースの一方にイオン交換体の層108が両極に接触して装填されている。これによって、一つのモジュール内において、陽極と陰極との間の電解室にイオン交換体が装填されているタイプの電解析出槽と、陽極と陰極との間の電解室にイオン交換体が装填されていないタイプの電解析出槽とが直列に配置される。
【0071】
このような電解析出装置131に対して、水供給管107から廃水(被処理水)132を供給すると、廃水は、まず、イオン交換体が装填されていない電解室内で第1段の電解析出処理にかけられ、次に、イオン交換体が装填されている電解室内での第2段の電解析出操作にかけられる。したがって、ある程度の高い金属イオン濃度を有する廃水をこのような電解析出装置131で処理すると、第1段の電解析出操作によってまず金属イオンの粗回収が行われ、次に、第2段の電解析出操作によって金属イオンの高度回収(ポリッシング)が行われる。
【0072】
図15は、本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す。図15に示す電解析出装置は、廃水132の入口方向から順に、陽極103、間隔をおいて陰極109、間隔をおいて陰極109、陰極に接触してイオン交換体108、イオン交換体に接触して陽極103の順に配列している。この場合、前段の陽極と陰極が順序が逆でもよい。また、後段の陰極と陽極についても順序が逆でもよい。
【0073】
さらに、図3から図5に示すような電解室内にイオン交換体を配置しないタイプの電解析出装置と、図10から図13に示すような電解室内にイオン交換体を配置するタイプの電解析出装置とを組み合わせて処理装置を構成することもできる。例えば、図16Aに示すように、電解室内にイオン交換体を配置しないタイプの電解析出装置201と電解室内にイオン交換体を配置するタイプの電解析出装置202とを直列に接続し、金属イオンを含む被処理水210を通水することにより、第1段の電解析出装置201によって金属イオンの粗回収を行い、次に第2段の電解析出装置202によって金属イオンの精密回収を行うことによって、ある程度以上の濃度の金属イオンを含む被処理水を処理して、金属イオンが除去された処理水211を得ることができる。また、図16Bに示すように、これらの電解析出装置201、202を並列に接続し、被処理水210をまず水タンク203に受容して、金属イオン濃度測定装置204によって被処理水中の金属イオン濃度を測定し、その測定値に応じて、被処理水の金属イオン濃度に対応した適切な電解析出装置に被処理水を通水して金属イオンの除去・回収を行うことができる。なお、このような処理装置で得られた処理水211は、必要に応じてさらに上記に説明したようなイオン交換操作にかけて、被処理水中の金属イオンを完全に除去することもできる。
【0074】
なお、図10以降を参照して上記で説明した、電解析出装置内にイオン交換体を装填する形態およびその各種バリエーションは、図2に示すような電解槽内に電極を浸漬したタイプの電解析出装置においても適用することができる。
【0075】
次に、図3、図4、図10、および図11のように、通水性の電極の間に電解室を形成するタイプの電解析出装置の通水方法の各種形態を図17を参照して説明する。図17Aから図17Fにおいて、301は電解析出装置、302は電極間の電解室、303は被処理水、304は処理水である。図17Aに示すように、被処理水303を電解析出装置301に供給し、両電極間の電解室302から処理水の少なくとも一部を回収して、水導入ラインに戻すことができる。また、図17Bに示すように、電解析出装置301を通過した処理水304の少なくとも一部を電解室302内に戻すことができる。また、図17Cに示すように、電解析出装置301を通過した処理水304の少なくとも一部を水導入ラインに戻すことができる。また、図17Dに示すように、電解室から処理水の少なくとも一部を回収して、フィルタ305などによって被処理水中の銅、銅酸化物や銅水酸化物などの微細な金属含有粒子を除去した後、再び水導入ラインに戻すことができる。ここで、フィルタの位置に、銅酸化物または銅水酸化物を溶解させる作用がある酸の注入設備を代用として用いてもよい。酸の注入設備はフィルタと併用してもよい。また、図17Eに示すように、被処理水303を、直接両電極間の電解室内に供給することができる。この形態の場合には、陰極として通水性の構造体を使用する必要がない。さらに、図17Fのように処理水を電解室302内から直接取水してもよい。図17Gに示すように被処理水303の一部を電解室302に導入して循環させてもよい。図17Hに示すように循環ラインの途中でフィルタ306を設けてもよい。フィルタ306の代用として酸注入設備を設けてもよくまたは両者を併用してもよい。図17Aから図17Hでは、電解室内にイオン交換体層や導電体層を装填した形態は示されていないが、これらの層を電解室内に装填した場合でも、同様の通水操作が可能である。また、図17は被処理水を陰極−陽極の順で通過させる形態を示しているが、被処理水を陽極−陰極の順で通過させる場合でも図17に示すような各形態の通水方法を採用することができる。
【0076】
次に、図2に示すような、電解槽内に電極を浸漬配置するタイプの電解析出装置の通水方法(撹拌方法)の各種形態を図18Aから図18Dを参照して説明する。18Aから図18Dにおいて、311は電解槽、313は被処理水、314は処理水である。電解槽内の矢印は槽内での被処理水の流れを示す。図18Aに示すように、電解槽内に撹拌用インペラーなどのような機械的撹拌装置318を配置することによって電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。インペラーの位置は極間以外の位置に設けてもよい。また、図18Bに示すように、電解槽内に仕切り板315を配置することによって電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。また、図18Cに示すように、処理水の少なくとも一部を回収して再びポンプで槽内に導入することによって槽内の水流を発生させて電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。また、図18Dに示すように、槽内に散気装置316を配置して、撹拌用ガス317を吹き込むことによって、槽内の水流を発生させて電解槽内の被処理水を撹拌通水することができる。
【0077】
電解析出装置を用いて金属イオンを含む被処理水を電解析出処理すると、電極反応によって電極の表面上でガスが発生する。すなわち、陰極あるいは陰極として作用する導電体の表面からは水素ガスが、陽極の表面からは酸素ガスがそれぞれ発生する。この水素ガスと酸素ガスとが混合されると、所謂爆鳴気となって、引火すると大きな音を発生し、さらに大量のガスが引火すると爆発現象を起こす。したがって、実際の装置においては、この発生するガスを除去する手段を配することが望ましい。このような発生ガスの除去を考慮した電解析出装置による被処理水の処理装置の具体的構成例を図19Aおよび図19Bに示す。図19Aおよび図19Bにおいて、351は電解析出装置、352は電極間の電解室、353は被処理水、354は処理水、355は水タンク、356は処理水タンクである。図19Aに示す電解析出装置においては、陰極に隣接して被処理水が供給される被処理水供給室359が、陽極3に隣接して処理水が排出される処理水排出室360が、それぞれ設けられている。水タンク355から、被処理水供給室に供給された被処理水の一部は、電解析出装置の陰極、電解室352、陽極をそれぞれ通過し、被処理水中の金属イオンが、陰極に析出することによって除去される。金属イオンが除去された処理水は、処理水排出室360に受容され、ポンプによって水排出配管370を通して処理水タンク356に受容される。被処理水供給室359に供給された被処理水の残りは、被処理水循環配管を通って水タンク355に戻される。
【0078】
陰極の表面から発生した水素ガスは、循環される被処理水と共に流れて、ガス抜き口357から排出される。一方、陽極3の表面から発生した酸素ガスは、処理水と共に流れて、ガス抜き口358から排出される。このように、被処理水を循環しながら本発明に係る電解析出装置に供給することにより、両電極から発生するガスを混合させることなく安全に除去しながら被処理水の処理を進行させることができる。また、被処理水の供給量と処理水の排出量とを制御して電解析出装置を通過する水量を調節することにより、様々な金属濃度の被処理水に対応することができる。このように発生するガスを除去しながら電解析出反応を連続して継続させるためには、電極や通水性導電体の層をガスが通過するように構成する必要があり、このため、電極および通水性導電体の層は、通水性を有するのに加えて、通ガス性をも有することが好ましい。また、図19Bに示す電解析出装置では、処理水を、電解室352内の陰極表面に沿って供給する。陰極の表面から発生した水素ガスは、循環される被処理水と共に流れて、ガス抜き口357から排出される。このような構成の場合には、陰極は通水性、通ガス性である必要はない。また、用いる材料や処理水量などにより、両電極の間の電解室352内にガスが溜まってしまう場合がある。この場合には、陰極と陽極との間の電解室内にも、ガス抜き手段を設けることが好ましい。なお、図19Aおよび図19Bには、陰極側から陽極側へ被処理水を通過させる態様の電解析出装置の配置を示しているが、陽極側から陰極側へ被処理水を通過させる態様の配置に関しても、同様に装置を構成することができる。また、図19Aおよび図19Bに示すような構成において、処理水の少なくとも一部を水タンク355に循環するようにしてもよい。さらには、被処理水の少なくとも一部は水タンク355への循環は行わずに、処理水の少なくとも一部のみを水タンク355へ循環するようにしてもよい。
【0079】
発生した水素ガスの処理するために、図44から図46に示す以下の方法を用いることができる。水素ガスと等モル以上の酸素を含有するガスと混合させ,水素ガスと酸素ガスを再結合させて水とする能力を有する触媒充填層46を通過させて触媒反応させ残存する水素ガス濃度を爆発限界濃度である4容積%未満にする方法(図44参照)、大量の空気または不活性ガス等を混合して爆発限界濃度未満となるように水素濃度をさげる方法(図45参照)、燃料電池47に供給する方法(図46参照)などを採用することができる。燃料電池47を用いる場合は得られた電気エネルギーを廃水処理施設48または他施設の運用に用いることができる。
【0080】
次に、上記のような本発明に係る廃水処理装置によって得られた処理水の水質や水量をモニターして異常検知を行う方法について図20Aおよび図20Bを参照して説明する。図20Aおよび図20Bにおいて、401は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃水処理装置、403は被処理水、404は処理水である。まず第一の方法として、図20Aに示すように、本発明に係る廃水処理装置401を通過することによって得られた処理水404の金属イオン濃度を、金属イオン濃度測定装置402によって測定し、処理水の金属イオン濃度が設定値よりも高くなった場合に警報を行うようすることができる。この場合、電解析出装置での電流不足、原水の金属イオン濃度の増大、イオン交換処理でのイオン交換体の劣化などが考えられ、電解析出装置での運転電流の上昇や、イオン交換体の交換などの作業によって対処することができる。このような目的で使用することのできる液中の金属イオン測定装置としては、例えば、イオン電極法、電極ポーラロ法、HPLC電気泳動法、蛍光光度法などに基づく測定装置を挙げることができる。また、図20Bに示すように、本発明に係る廃水処理装置401を通過することによって得られた処理水404の流量を流量計(FI)で測定して、処理水量が設定値を下回った場合に警報を行うようにすることができる。この場合には、電解析出装置において金属の析出量が大きくなりすぎたことによる被処理水の閉塞、イオン交換体の目詰まり、処理水入口の導入圧力の不足などが考えられ、それぞれ、電解析出装置の陰極または導電体の交換、イオン交換体の交換、処理水入口圧力の上昇などの対処を行うことができる。なお、このような対処は、測定装置による測定値に連動した自動的制御によって行うこともできる。
【0081】
本発明に係る廃水の処理装置において、電解析出装置での陰極または陰極として作用させる導電体の交換時期については、図21Aから図21Cに示すような各種の方法によって決定することができる。図21Aから図21Cにおいて、451は電解析出装置、452は被処理水、453は処理水である。まず図21Aに示すように、電解析出装置451への被処理水の水供給ライン460に圧力計(PI)を配置し、被処理水供給圧力をモニタリングすることによって、陰極または導電体の交換時期を決定することができる。この被処理水供給圧力が設定値を超えた場合には、陰極または導電体への金属の析出量が大きくなって装置が閉塞している状態が考えられるので、陰極または導電体を交換する。また、処理水ライン461に別の圧力計(PI2)を配置し、PIとPI2との差圧が設定値を超えた場合に、陰極または導電体を交換するようにしてもよい。また、図21Bに示すように、電解析出装置の電解室において陰極に接触して導電体層454を配置し、この導電体層に直接被処理水を供給して、一部を水タンク455に戻す形態の電解析出装置においては、導電体層への被処理水導入ラインに圧力計(PI)を配置し、導電体層からの処理水の循環ラインに別の圧力計(PI2)を配置することによって、図21Aと同様の制御を行うことができる。また、PIのみを設置して、供給圧力が設定値を超えることによって、交換時期を決定してもよい。さらに、図21Cに示すように、処理水ライン461に流量計(FI)を配置して、処理水の流量が設定値を下回った時点で陰極または導電体を交換するようにしてもよい。
【0082】
本発明に係る電解析出装置は、金メッキ廃液からの金の回収、銅配線を用いた半導体装置製造工程における化学機械研磨(CMP)廃液や電解研磨(ECP)廃液、あるいは銅メッキリンス液や銅メッキ廃液などからの銅の回収、その他メッキ廃液からの金属の回収、使用済核燃料の再処理工程で発生する高レベル廃液中に含まれるパラジウムの回収、ホタテ貝などの食品廃棄物からのカドミウムの回収などの技術に適用することができる。
【0083】
上記に説明した本発明に係る廃水処理システム、特に、両電極間の電解室内にカチオン交換体を装填した形態の電解析出装置によれば、電極間にカチオン交換体を装填したことによって、除去対象となる金属イオンの濃度が低い被処理水に関しても、運転電圧の上昇を招くことなく、安定して効率よく金属を析出させて除去・回収することができる。したがって、例えば、本発明に係る電解析出装置を用いれば、200mg/l以下の金属イオン濃度を有する被処理水を処理して、金属イオン濃度が低下せしめられた処理水を得ると共に、被処理水中に含まれていた金属を金属単体または一部金属水酸化物,金属酸化物を伴った金属単体の形態で回収することができる。例えば、本発明によって、半導体装置製造工程から排出される銅イオンを含む廃水、例えば、CMPプロセス廃水や銅メッキ廃水、電解研磨廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、銅を銅金属の形態で回収することができる。ここで、銅の排出基準値は、日本で3.0mg/l以下、米国の一例では2.7mg/l以下である。本発明においては、1.0mg/l以下、より好ましくは0.5mg/l以下の銅イオン濃度の処理水を得ることがより好ましい。電解析出処理とイオン交換処理とを組み合わせた本発明による廃水処理システムによれば、銅イオンを含む半導体装置製造プロセスの廃水を処理して、銅を金属としてまたは金属水酸化物、金属酸化物として回収しながら、0.5mg/l以下の銅イオン濃度の処理水を連続的に得ることができる。CMPプロセス廃水や銅メッキ廃水中の銅濃度は通常100mg/l以下であるので、これまでは、これらの廃水からの銅の回収処理には、運転電圧の上昇の問題から電解析出法は用いられていなかった。イオン交換樹脂法では銅は金属イオンとしてイオン交換樹脂に吸着されて回収され、また凝集沈殿法では銅は水酸化物または酸化物の形態で沈殿・回収されるので、いずれも、回収された銅を再利用する際には、更なる処理が必要である。さらに、イオン交換樹脂法ではイオン交換樹脂の交換頻度が高くなる。しかしながら、上述の本発明に係る方法によれば、銅が金属単体として回収されるので、その後の処理の必要性なしに金属として容易に再利用することができる。
【0084】
本発明に係る電解析出装置を、半導体装置製造プロセスからの廃水、例えば、CMP廃水、ECP廃水や銅メッキ廃水などの処理に適用することによって、これらの廃液の処理システムを構築することができる。クリーンルーム半導体工場内で使用される廃液処理装置においては、メンテナンスが最小限になるような装置とする必要がある。また、CMPで使用される砥液には、過酸化水素、硝酸鉄、過硫酸ナトリウムなどの酸化剤が加えられることもあり、また銅メッキ工程でウエハ表面に銅膜を形成した後、ウエハの周辺部(エッジ部分)に付着した銅膜あるいはウエハ裏面に付着した銅膜が剥離して、クリーンルームを汚染するおそれがあるので、所謂レベルエッチングによってウエハ周辺あるいはウエハ裏面に付着した銅膜を過酸化水素などの酸化剤で酸化させながらクエン酸、シュウ酸、塩酸または硫酸等の酸で溶かして除去を行う。このように、半導体の銅配線形成に使われるCMPやECPあるいは銅メッキ装置の廃水には、大量の銅イオンに加えて過酸化水素などの酸化剤が含まれていることが多い。このような酸化剤、特に過酸化水素は電解によって容易に分解されるが、過酸化水素の電気分解は銅などの重金属の電解析出よりも優先して進行するので、廃水中に過酸化水素が多く含まれていると、電解析出により大きな電流が必要になる。また、被処理水中に過酸化水素などの酸化剤が含まれていると、イオン交換体の機能を低下させるという問題もある。また、析出した金属、水酸化物、酸化物が再溶解する懸念もある。したがって、この過酸化水素の存在を考慮した廃水処理システムとすることが好ましい。
【0085】
このような点を考慮した半導体装置製造工程からの廃水の処理システムの構成例を図22に示す。図22に示すシステムでは、CMP工程、ECP工程や銅メッキ工程などの各種工程501からの廃水を、酸化剤除去工程502でまず処理して、次に本発明に係る電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせた廃水処理装置503で処理する。これにより、被処理水を、本発明に係る廃水処理装置503に通す前に、酸化剤除去工程502に通すことによって、被処理水中の過酸化水素などの酸化剤を分解することができる。酸化剤除去工程502を通過して過酸化水素などの酸化剤が分解・除去された被処理水は、本発明に係る廃水処理装置503に供給され、電解析出操作とイオン交換操作との組み合わせによって、被処理水中の銅などの金属イオンが除去されて、処理水が処理水タンク504に受容される。この場合、処理水の少なくとも一部を本発明に係る廃水処理装置503に循環してもよい。なお、図22および以下の説明において、「本発明に係る廃水処理装置503」とは、上記において説明してきた電解析出操作とイオン交換操作とが組み合わされた本発明に係る廃水処理装置を意味し、図6から図9などで説明した電解析出装置とイオン交換処理との組み合わせ、あるいは、図10から図15などで説明した電解析出装置内にイオン交換体を組み込んだ装置のいずれも含み、その他の図などで説明した各種の通水方法や制御方法などは全て包含される。
【0086】
上記のような被処理水中に含まれる過酸化水素などの酸化剤を除去する目的で用いることのできる処理工程としては、活性炭による触媒分解、貴金属触媒、例えばチタニア担持白金触媒、アルミナ担持白金触媒などによる触媒分解、二酸化マンガン触媒による触媒分解、電気分解、紫外線処理、オゾン添加、ヒドラジン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどの還元剤による分解処理、H2O2分解酵素(カタラーゼ)などによる酵素分解などの処理を挙げることができる。アルミナ担持白金触媒などの白金触媒を用いる場合には、ハニカム形状の触媒を用いると比表面積が大きくとれ、分解速度が増すのでより好ましい。また、ハニカム形状の触媒は流路方向に連続した開口部を得ることができるので、開口部面積より小さな粒子であればろ過されて触媒内に蓄積することなく触媒を通過することが可能である。このため、例えばCMP廃水などのスラリを含有する排水中に含まれる酸化剤の分解に好適に用いることができる。
【0087】
なお、図22のシステムにおいて、本発明に係る廃水処理503として、図6から図9などで説明した電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置とイオン交換処理との組み合わせによる処理を用いる場合には、図23Aに示すように、各種半導体装置製造プロセス501からの廃水を、まず酸化剤除去工程502で処理し、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置511、イオン交換操作512の順に処理して処理水504を得ることもできるし、図23Bに示すように、廃水を、電解析出装置511でまず処理し、次に酸化剤除去工程502にかけ、次にイオン交換操作512にかけてもよいし、あるいは図23Cに示すように、廃水を、イオン交換操作512にまずかけて、次に、酸化剤除去工程502にかけ、次に電解析出装置511で処理してもよい。図22以降のシステムフロー図においては、同じ参照番号は同じ構成要素を意味する。
【0088】
また、図24Aに示すように、廃水をまず酸化剤除去工程502で処理し、排出水を処理水タンク515に受容して、電解析出装置511に循環させることで廃水中の金属イオンを除去した後に、イオン交換処理512で残余の金属イオンを除去して処理水504を得ることもできる。あるいは、図24Bに示すように、廃水を水タンク515に受容して、電解析出装置511に循環させることで廃水中の金属イオンを除去した後に、酸化剤除去工程502で処理し、次にイオン交換処理512で残余の金属イオンを除去して処理水504を得ることもできる。図23および24に示す各種システムにおいては、電解析出装置として、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置511に代えて、図10から図13などで示すような電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置を用いてもよいし、あるいは図14から16に示すように、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置と、電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置とを組み合わせて用いてもよい。
【0089】
また、図22に示すようなシステムにおいては、電解析出装置として、電極間にイオン交換体を配置しない通常の電解析出装置511のみを用いてシステムを構築することもできる。このような電解析出装置を用いたシステムの構成例を図25に示す。このシステムにおいては、酸化剤除去工程502で処理した被処理水を、電解析出装置511で電解析出処理して、被処理水中の金属イオンを除去・回収することによって処理水504を得る。さらに、このようなシステムにおいては、図26に示すように、金属除去処理として、イオン交換処理を用いることもできる。図26のシステムにおいては、酸化剤除去工程502で処理した被処理水を、イオン交換操作512でイオン交換処理して、被処理水中の金属イオンを除去することによって処理水504を得る。このシステムにおいてイオン交換処理として用いることのできるイオン交換体としては、上記に説明した各種のイオン交換樹脂ビーズ、イオン交換繊維材料、イオン交換スペーサーなどを挙げることができる。これらのイオン交換体は酸またはアルカリにより再生することができる。また再生を電気化学的に行うこともできる。電気化学的に行う場合は再生廃液が発生しないので好適である。また、金属除去処理として、凝集剤を用いた凝集沈殿処理を用いることもできる。図27に示すシステムにおいては、酸化剤除去工程502で処理した被処理水は、凝集沈殿槽531に受容される。凝集沈殿槽531では、凝集剤532が被処理水に添加されて、被処理水中の金属イオンが凝集沈殿することで被処理水中から除去され、上澄み液が処理水504として回収される。凝集沈殿槽531内で沈殿した金属は、沈殿物533として回収され、必要に応じてその後の処理にかけられる。このようなシステムにおいて、被処理水中の金属イオンを凝集沈殿させるために使用される凝集剤532としては、当該技術において、水系媒体から金属イオンを凝集沈殿させるために用いることができることが公知の各種の薬剤を用いることができる。具体的な例としては、例えば、NaOH、Ca(OH)2、KOHなどのアルカリや、高分子凝集剤、無機凝集剤、例えばFeSO4、FeCl3等を挙げることができる。FeSO4などのFe2+を含む無機凝集剤を使う時には、フェントン反応が起きるので、過酸化水素とキレート材が分解され、より好ましい。なお、凝集処理によって生成したスラッジをMF膜などの廃水処理に一般的に用いられている膜によって濾過してもよい。
【0090】
図48は、本発明に係る廃水処理システムをめっき処理装置に導入した場合の構成例を示す図である。めっき処理装置801はめっき工程801aおよび洗浄工程801bを有しており、めっき工程801aでは、めっき液がめっき液タンク802との間に循環されている。洗浄工程801bでは、めっき工程801aを終えたウエハの表面に残留しているめっき液を純水などにより洗い流す。この洗浄工程801bにおいて排出される液を本発明に係る廃水処理システム503に導入する。
【0091】
図49は、本発明に係る廃水処理システムをCMP装置に導入した場合の構成例を示す図である。CMP装置803は研磨ユニット803aと洗浄ユニット803bを有しており、研磨工程803aではウエハの研磨が行われる。研磨工程803aで、スラリ、分散剤、酸、アルカリ、キレート剤などを含む薬液(1つまたは複数)および純水などの液体が使用される。これらの廃液体を廃水処理システム503に導入する。洗浄工程803bでは、ウエハ上に残留するスラリ、研磨粉、薬液を純水などにより洗浄する。これらの洗浄排水も廃水処理システムに導入する。なお、研磨ユニット803aは電解研磨法によるものでもよい。いずれかの廃水に特有の物質が含まれており、廃水処理を阻害する場合は、薬品処理803c、固液分離処理803dなどにより、予め阻害要因を取り除くこともできる(例えば、エッジ欠けにより発生したSSの分離、金属メタル粉の溶解または分離)。なお、ここでいう廃水処理システムは、少なくともイオン交換または電解処理を含むものであればよい。
【0092】
図50は、本発明に係る廃水処理システムを同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置に導入した場合の構成例を示す図である。図50に示す装置804は、エッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を同一チャンバ804a内で行なうものである。エッチング方法としては、電解研磨などの電気化学的な方法を用いることができる。ケミカル・メカニカルポリッシング(CMP)を用いてもよい。各工程の廃水を全て廃水処理システム503に導入してもよいし、また、一部の工程の廃水のみを廃水処理システム503に導入してもよい。
【0093】
図51は、本発明に係る廃水処理システムを同じ工程を担う複数の装置に導入した場合の構成例を示す図である。例えば、CMP装置803などの研磨装置のうち、ある同じ工程を担うものはまとめて本発明に係る廃水処理装置503aに導入する。またCMP装置803のうち、別の同じ工程を担うものは別にまとめて廃水処理装置503bにおいて処理を行う。
【0094】
図52は、本発明に係る廃水処理ユニットを筐体に収容した場合の例を示す斜視図である。図52に示すように、廃水処理ユニット805は、pH調整ユニット805a、内部負圧形成装置、廃水受容タンク、移動用キャスター等を1つ以上備えた筺体806の内部に備えられる。内部負圧形成装置は、圧力計信号により制御されるものであってもよい。筺体806は分割できる構成であってもよい。上記のような構成であれば、クリーンルームあるいはクリーンルーム階下のようなある一定以上のクリーン度を要するスペースにも設置可能となる。
【0095】
図53Aおよび図53Bは、本発明に係る廃水処理システムをCMP装置、ECP装置、またはめっき処理装置に導入した場合の両者の好適な位置関係を示す図である。図53Aは、廃水処理装置503を、クリーンルーム809内の半導体製造装置807の直下にグレーチング808を介して設置する例である。図53Bは、廃水処理装置503を、半導体製造装置807に隣接して設置する例である。これらのように、半導体製造装置807の直近に設置することにより、設備コスト(配管コストなど)を低減するとともに、工場全体の体積(大きさ)をコンパクトにすることができる。工場全体の建設コストを低減することができる。
【0096】
図54Aから図54Cは、本発明に係る廃水処理システムを違う工程を担う装置に導入した場合の構成例を示す図である。例えば、図54Aに示すように、装置810では、電解研磨工程810aから排出される廃水とめっき工程810bから排出される廃水を混合して廃水処理システム503で処理することができる。また、図54Bに示すように、同一作用の異なる工程を担う装置811においても、CMP工程811aから排出される廃水と、CMP工程811bから排出される廃水を混合して廃水処理装置503で処理することができる。
【0097】
また、図54Cに示す装置812のように、CMP工程812aからの廃水と、めっき工程またはECP工程812bからの異なる性状の廃水それぞれを、廃水処理システム503の異なる処理工程に導入してもよい。また、処理水を廃水処理装置503から排出する際は、工程813と工程814からそれぞれ別に処理水を取出してもよい。
【0098】
なお、図22から図27に示すようなシステムにおいては、金属イオン除去工程を2系列にして、イオン交換体、電解析出装置の陰極などの交換部品の交換の際に経路を切替えることにより、連続的な処理を確保することができる。例えば、図28Aのシステムでは、各種半導体装置製造プロセス501からの廃水は、まず廃水タンク550に受容され、次に、酸化剤分解工程502にかけられ、次に、二系統にされた本発明に係る電解析出操作とイオン交換操作とを組み合わせた廃水処理装置503の一方に供給され、金属イオンが除去されて処理水504が得られる。電解析出装置の陰極やイオン交換操作のイオン交換体などの交換部品の交換時期になったら、経路を切替えてもう一方の廃水処理装置503に被処理水を通水し、通水が停止された側の装置503の交換部品の交換を行う。これにより、廃水の連続処理が確保される。図28Bでは電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置511が2系統並列に接続され、図28Cではイオン交換処理装置512が2系統並列に接続され、図28Dでは凝集沈殿装置531が2系統並列に接続されており、同様に廃水の連続処理を行うことができるようになっている。また、同様に、酸化剤除去工程502を2系統並列に接続して、部品交換などの際にも廃水の連続処理が行えるようにすることができる。
【0099】
また、半導体装置製造プロセスにおけるCMP工程からの廃水には、さらに、CMP処理の際に用いたシリカ粒子、アルミナ粒子などを含むスラリ粒子が含まれていることが多い。このスラリ粒子を含む廃水をそのまま酸化剤除去工程に通すと、酸化剤除去装置が目詰まりを起こしたり、あるいは電解析出装置内で蓄積してしまう場合がある。そこで、図22から図28に示す廃水処理システムにおいては、被処理水を酸化剤除去工程に通す前に、被処理水に酸またはアルカリを加えてpH調整することにより、被処理水中でスラリを良好に分散させることによって、酸化剤除去装置の目詰まりや電解析出装置内でのスラリ粒子の蓄積を防止することができる。この目的で使用することのできる酸としては、クエン酸、塩酸、硫酸、硝酸などを挙げることができ、アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アミン系化合物などを挙げることができる。
【0100】
さらに、シリカ粒子、アルミナ粒子などのスラリ粒子を含むCMP工程からの廃水を処理する場合には、廃水のpHを調整してスラリ粒子が凝集しやすい条件にしてスラリ粒子を凝集させた後、この廃水または廃水の上澄み液をセラミックフィルターなどの濾過装置に通してスラリ粒子を除去し、その後、上述したような酸化剤除去処理および金属の除去処理を行うことができる。凝集剤添加を組み合わせてもよい。かかる形態の被処理水の処理システムの構成例を図29Aおよび図29B。従前の図と同じ参照番号は同じ構成要素を示す。
【0101】
図29Aに示す被処理水の処理システムでは、金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子が凝集しやすい条件にされる。凝集剤はpH調整槽551の流入水に添加・混合してもよい。スラリ粒子が凝集しやすい条件とは、廃水中に含まれるスラリ粒子の種類や廃水自体の性状などによって異なる。また、この目的で使用することのできる酸およびアルカリとしては、クエン酸、塩酸、硫酸、硝酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドライド、アンモニアなどを挙げることができる。また、凝集剤としては高分子凝集剤、無機凝集剤、例えばFeSO4、FeCl3等を上げることができる。FeSO4などのFe2+を含む無機凝集剤を使う時には、フェントン反応が起きるので、過酸化水素とキレート材が分解され、より好ましい。廃水は、次に濾過装置552に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552としては、例えば、セラミックフィルターなどを用いることができる。また、図29Aおよび図29Bに示すように、濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部をpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。濾過装置552によってスラリ粒子が取り除かれた廃水は、以後、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解除去された後、本発明に係る電解析出操作とイオン交換処理とを組み合わせた廃水処理装置503で処理されて、廃水中に含まれている銅などの金属が除去・回収され、処理水504が得られる。また、図29Bに示すように、酸化剤除去工程を最前段に配置してもよい。また、図29Cに示すように、沈降分離後の上澄み液に対して膜ろ過を行う構成でもよい。沈降分離処理565としては、沈降分離の他、遠心分離などを用いることができる。
【0102】
酸またはアルカリまたは凝集剤の添加・混合により沈降分離されたスラリの上澄水に対して濾過を行う構成としてもよい。この場合はフィルタにかかる固形物負荷を低減させることができる。フィルタとしては、孔径0.1〜1.0μm程度のものを用いることができる。材質は、セラミック、有機高分子を挙げることができる。膜分離処理における未透過水(膜濃縮水)の一部または全部を循環槽566または沈降分離処理565に返送してもよいし、しなくてもよい。循環槽566の流出水の一部を沈降分離処理565またはpH調整槽551に返送してもよい。
【0103】
沈降分離処理565で生じた汚泥はそのまま系外に排出し、濃縮・脱水処理を行った後に廃棄処分する。別途設置されている総合排水処理施設または汚泥処理施設に供してもよい。
【0104】
汚泥に付着している液体に含まれる金属イオン濃度をさらに低くする場合は、金属イオン濃度が低い水、例えば純水、本発明に係る廃水処理システムの処理水504を用いてリンスすることができる。廃リンス水は沈降分離処理565またはpH調整槽551に導入することができる。リンス手段としては遠心分離処理567を用いることができる(図29D)。
【0105】
リンス水を沈降分離槽(沈降分離処理565)または沈降分離槽からの汚泥排出管に導入することによっても、汚泥に付着する金属イオンの量を削減することができる。このような手段を採用してもよい。
【0106】
排水中の過酸化水素が、沈降分離または濾過を阻害する場合は、これらの処理の前に過酸化水素分解手段を設ける。
【0107】
設置スペース的に循環槽566を設けることが困難な場合は、沈殿分離処理565を行う沈降分離槽が循環槽を兼ねてもよい(図29E)。濾過装置552から沈降分離処理565への返送配管553は設けなくてもよい。さらに、図29Fに示すように、濾過装置552を沈降分離処理565を行う沈降分離槽の中に設けてもよい。廃水処理装置503は、少なくともイオン交換、電解析出または凝集分離処理を備えるものであればよい。
【0108】
なお、図29Aおよび図29Bのシステムにおいて、本発明に係る廃水処理503として、図7から図9などで説明した電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置とイオン交換処理との組み合わせによる処理を用いる場合には、図30Aから図30Fに示すように、種々のフローが考えられる。図30Aから図30Fにおいて、555は、図29Aおよび図29Bに示すpH調整槽551と濾過装置552とを組み合わせたスラリ除去工程、502は酸化剤除去工程、511は電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置、512はイオン交換操作を示す。図30Aに示すシステムでは、金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程からの廃水は、まずスラリ除去工程555にかけられてスラリ粒子が除去され、次に酸化剤除去工程502で酸化剤が分解され、次に電解析出装置511、イオン交換処理512の順に通水されて、廃水中の金属イオンが除去・回収され、処理水504が得られる。図30Bに示すシステムでは、廃水はまず酸化剤除去工程502にかけられて廃水中の酸化剤を分解した後、スラリ除去工程555でスラリ粒子が除去され、次に電解析出装置511、イオン交換処理512の順に通水されて、廃水中の金属イオンが除去・回収され、処理水504が得られる。図30Cに示すシステムでは、廃水は、スラリ除去工程555にかけられてスラリ粒子が除去され、次に電解析出装置511で廃水中の金属イオンを除去・回収した後、酸化剤除去工程502で酸化剤を分解し、次に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。図30Dに示すシステムでは、廃水は、まず、電解析出装置511にかけられて廃水中の金属イオンを除去・回収した後、スラリ除去工程555でスラリ粒子が除去され、次に、酸化剤除去工程502で酸化剤を分解し、最後に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。図30Eに示すシステムでは、廃水は、まず、電解析出装置511にかけられて廃水中の金属イオンを除去・回収した後、酸化剤除去工程502で酸化剤を分解し、次にスラリ除去工程555でスラリ粒子が除去され、最後に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。図30Fに示すシステムでは、廃水は、まず、酸化剤除去工程502にかけられて酸化剤を分解した後、電解析出装置511にかけられて廃水中の金属イオンを除去・回収し、次にスラリ除去工程555でスラリ粒子を除去した後、最後に、イオン交換処理512に通水されて、廃水中の金属イオンが除去され、処理水504が得られる。なお、図30Aから図30Fに示す各種システムにおいては、電解析出装置として、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置511に代えて、図10から図15などで示すような電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置を用いてもよいし、あるいは図16に示すように、電解室内にイオン交換体を装填しないタイプの電解析出装置と、電解室内にイオン交換体を装填したタイプの電解析出装置とを組み合わせて用いてもよい。
【0109】
また、このようなスラリ除去−酸化剤除去という一連の前処理と、電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置による金属除去処理、イオン交換による金属除去処理、あるいは凝集法を用いた金属除去処理とを組み合わせることができる。かかる形態の被処理水の処理システムの構成例を図31から図33に示す。図31から図33において、前述の図面と同じ参照番号は、同じ構成要素を示す。
【0110】
図31に示すシステムでは、銅などの金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子を凝集させた後、濾過装置552に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部を戻し配管553によってpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。次に、廃水は、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解された後、電解析出装置511を通されて、廃水中に含まれている銅などの金属イオンが除去・回収され、処理水504が得られる。
【0111】
図32に示すシステムでは、銅などの金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子を凝集させた後、濾過装置552に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部を戻し配管553によってpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。次に、廃水は、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解された後、イオン交換体が充填されたイオン交換槽512を通されて、イオン交換体によって廃水中に含まれている金属イオンが吸着・除去され、金属イオンが除去された処理水504が得られる。このような被処理水中の銅などの金属イオンを除去する目的で使用することのできるイオン交換体としては、上記に説明したような各種イオン交換樹脂、イオン交換繊維材料、イオン交換スペーサーなどを用いることができる。金属イオンを吸着したイオン交換体は、所定期間使用した後、イオン交換槽から取出して、適当な再生処理にかけることによって金属を回収することができる。電気的に再生することももちろん可能である。
【0112】
また、図33に示すシステムでは、金属イオンと、過酸化水素などの酸化剤と、スラリ粒子とを含む各種工程501からの廃水は、まずpH調整槽551に受容され、ここで酸またはアルカリまたは凝集剤554が添加されて、スラリ粒子を凝集させた後、濾過装置553に通されて、凝集したスラリ粒子が除去される。濾過装置552から得られる膜濃縮水の一部を戻し配管553によってpH調整槽551に戻して再調整を行ってもよい。次に、廃水は、酸化剤除去工程502で過酸化水素などの酸化剤が分解された後、凝集沈殿槽531に受容される。凝集沈殿槽531では、凝集剤532が被処理水に添加されて、被処理水中の金属イオンが凝集沈殿することで被処理水中から除去され、上澄み液が処理水504として回収される。凝集沈殿槽531内で沈殿した金属は、沈殿物533として回収され、必要に応じてその後の処理にかけられる。このようなシステムにおいて、被処理水中の金属イオンを凝集沈殿させるために使用される凝集剤532としては、当該技術において、水系媒体から金属イオンを凝集沈殿させるために用いることができることが公知の各種の薬剤を用いることができる。具体的な例としては、例えば、NaOH、KOH、Ca(OH)2、コリン、テトラメチルアンモニウムハイドライド、アンモニア、高分子凝集剤などを挙げることができる。沈殿物533と上澄み液の分離には沈降分離の他に膜処理,遠心分離法を用いることもできる。また、沈降分離と膜処理,遠心分離法を組み合わせてもよい。
【0113】
なお、図29,図31,図32,および図33に示すシステムにおいては、先に酸化剤分解工程502に通水して、その処理水を濾過工程(濾過装置552)に通水する方法としてもよい。また、図29Aから図29Fに示すシステムの廃水処理装置503として、図31から図33に示すような廃水処理方法、すなわち、イオン交換、電解析出、凝集沈殿のいずれかを用いてもよい。
【0114】
なお、図29,図31,図32,および図33に示すシステムにおいては、図34に示すように、酸化剤分解工程502と、電解析出、イオン交換、凝集のいずれかによる金属イオン除去工程とのそれぞれの少なくとも一方を、並列に二つ以上接続して、交換部品の交換などの際にも連続運転を確保することができる。図34で、556は、図29に示す本発明に係る電解析出操作とイオン交換処理とを組み合わせた廃水処理装置503、図31に示す電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置511、図32に示すイオン交換槽512、あるいは図33に示す凝集槽531のいずれかによる金属除去工程である。なお、図31から図34において、スラリ除去工程と酸化剤除去工程の順序を逆にしてもよい。
【0115】
さらに、酸化剤除去工程502と金属除去工程とを組み合わせた本発明に係る廃水処理システム、あるいはこの前段としてさらにスラリ除去工程555を組み合わせた廃水処理システムにおいては、被処理水を各工程における最適pHとするために、各工程の少なくとも一つ以上の前段にpH調整工程を設けてもよい。このようなシステムの例を図35Aおよび図35Bに示す。図35Aおよび図35Bにおいて、555は、図29Aおよび図29Bなどに示すpH調整槽551と濾過装置552とを組み合わせたスラリ除去工程、502は酸化剤除去工程、561は、本発明に係る電解析出操作とイオン交換処理とを組み合わせた廃水除去装置503(図29Aおよび図29B等を参照)、電解室内にイオン交換体を装填しない電解析出装置511(図23A,図23B,図23C等を参照)、イオン交換操作による金属除去装置512(図26等を参照)、あるいは凝集沈殿による金属イオン除去装置(図27等参照)のいずれかの金属除去工程を意味する。図35Aに示すシステムにおいては、廃水は、まずpH調整槽562において、次段の酸化剤除去工程502における最適pHに調整された後、酸化剤除去工程502で酸化剤の除去が行われ、次に、他のpH調整槽563において、次段の金属除去工程561における最適pHに調整された後、金属除去工程561によって廃水中の金属イオンが除去・回収されて、処理水504が得られる。また、図35Bに示すシステムにおいては、廃水は、まずpH調整槽564において、次段のスラリ除去工程555における最適pHに調整された後、他のpH調整槽562において、次段の酸化剤除去工程502における最適pHに調整された後、酸化剤除去工程502で酸化剤の除去が行われ、さらに他のpH調整槽563において、次段の金属除去工程561における最適pHに調整された後、金属除去工程561によって廃水中の金属イオンが除去・回収されて、処理水504が得られる。なお、これらのpH調整槽は、いずれか一つ以上を省略することができる。CMP装置803からの廃水を処理する場合は、金属またはシリカの粗大粒子を除去することを目的として、濾過装置552aにおいて孔径0.1〜0.5μm程度の膜で予め排水を処理してから、イオン交換、電解析出などの処理工程815へ導入することもできる(図42および図43)。
【0116】
図42に示される実施形態において、そのような膜を有する濾過装置552aを設け、図43に示される実施形態において、2つの濾過装置552a,552bを設けて粗濾過および細濾過する。
【0117】
本発明に係る廃液の処理システムを実際の半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法の例を図36Aおよび図36Bに示す。図36Aおよび図36Bにおいて、601は半導体装置製造工場、602は銅メッキ装置、603はCMP、ECPなどのポリッシング装置、604は上記に説明した本発明の各種態様に係る廃液の処理装置または廃液処理システムを意味する。例えば、図36Aに示すように、半導体装置製造工場601内の銅メッキ装置602や、CMP、ECPなどのポリッシング装置603などからの廃液を集めて、これを本発明の各種態様に係る廃液の処理装置または廃液処理システム604で処理して、銅などの金属イオンが除去された処理水502を得ることができる。また、図36Bに示すように、銅メッキ装置602からの廃水や、CMP、ECPなどのポリッシング装置603などの廃水をそれぞれ別々に集めて、これを別々に本発明の各種態様に係る廃液の処理装置または廃液処理システム604で処理して、銅などの金属イオンが除去された処理水504を得ることができる。したがって、各工場での廃液を発生する装置の実状に合わせてユースポイントに本発明の廃液処理装置を配置することにより廃液処理をすることができる。なお、CMPとECPとが共存する場合には、これらの廃液を別々に処理しても、混合して処理してもよい。本発明による処理水504を下水道放流または別途設置した総合排水処理施設に供する場合、pHなどの水質項目が適さない場合においてはこれらの調整を行ってから供することは勿論である。
【0118】
上述した電解析出操作において、銅などの金属が析出する陰極が設けられた槽に導入される水に対して、N2ガスなどの酸素濃度が空気より低い気体を導入して、溶存している酸素ガスをパージする。水中の溶存酸素濃度を低くすることにより、酸素が陰極で反応して電流を消費したり、陰極表面に析出した銅金属の水中への再溶解を抑制することができるので、電流効率を高く取ることができる。脱酸素工程は、電解析出工程の前段であれば、本文で説明する処理フローのいずれの位置に導入してもよい。電解析出工程内では、陰極の近傍を通過した後に陽極の近傍を通過させることが望ましい。
【0119】
図55Aから図55Eは、脱酸素工程が導入された種々の処理フローを示す。図55Aおよび図55Bに示される処理プロセスにおいては、被処理水が脱酸素工程に供され、その後に電解析出工程を経て処理水が得られる。図55Cおよび図55Dに示される処理プロセスにおいては、被処理水が、窒素ガスの導入と電解析出工程が同時に行われる脱酸素工程に供され、処理水が得られる。図55Eに示される処理プロセスにおいては、処理水を元に戻す工程が図55Bに示される工程に追加されている。特に、電解析出工程を経た処理水の一部が脱酸素工程に戻されることによって水中の溶存酸素濃度をさらに下げることができる。
【0120】
上記に詳細に説明したように、本発明によれば、金属イオンを含む被処理水を処理して金属を金属単体の形態で除去・回収することができる。本発明を例えば、半導体製造プロセスのCMP工程やECP工程、あるいは銅メッキ工程などの各種工程からの廃水に適用すれば、これら各種工程からの廃水を、その場で、すなわちユースポイントで処理して、排出基準を満足する処理水を得ると共に、銅を銅金属として回収することができる。
【0121】
本発明の各種実施態様としては、以下の形態を挙げることができる。
(1)電解析出ユニットとイオン交換ユニットとを組み合わせたことを特徴とする金属イオンを含む被処理水の処理装置。
【0122】
(2)少なくとも金属イオンを含む被処理水の処理装置であって、
被処理水を導入して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出ユニットと、
電解析出ユニットからの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換ユニットとを有する上記(1)に記載の装置。
【0123】
(3)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0124】
(4)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程と、
電解析出工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0125】
(5)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0126】
(6)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0127】
(7)少なくとも金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、凝集剤を加えて金属を凝集沈殿させる凝集沈殿工程とを有するシステム。
【0128】
(8)被処理水を酸化剤除去工程に導入する前に、被処理水に酸またはアルカリを添加する工程を含む上記(3)から(7)のいずれかに記載のシステム。
【0129】
(9)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0130】
(10)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して電解析出によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程と、
電解析出工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0131】
(11)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【0132】
(12)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容してイオン交換による金属イオンの除去・回収を行うイオン交換工程とを有するシステム。
【0133】
(13)少なくとも金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、
酸化剤除去工程からの排出水を受容して、凝集剤を加えて金属を凝集沈殿させる凝集沈殿工程とを有するシステム。
【0134】
(14)被処理水が、半導体装置製造工程からの廃水である上記(1)または(2)に記載の装置。
【0135】
(15)被処理水が、半導体装置製造工程からの廃水である上記(3)から(13)のいずれかに記載のシステム。
【0136】
(16)被処理水が、半導体装置製造工程におけるCMP工程または銅メッキ工程からの廃水、電解研磨廃水である上記(1)または(2)に記載の装置。
【0137】
(17)被処理水が、半導体装置製造工程におけるCMP工程または銅メッキ工程からの廃水、電解研磨廃水である上記(3)〜(13)のいずれかに記載のシステム。
【0138】
(18)対向して配置された陽極および陰極と、
これら両電極間に装填されているイオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置。
【0139】
(19)対向して配置された通水性の材料によって形成される陽極および陰極によって画定される電解室を具備し、
これら両電極間に少なくともイオン交換体の層が装填されており、
両電極とイオン交換体との複合層を通して被処理水を給排水する給排水手段をさらに具備することを特徴とする上記(18)に記載の電解析出装置。
【0140】
(20)陰極に接して通水性導電体の層が配置され、
当該通水性導電体層と陽極の間に、両者に接してイオン交換体の層が配置されている上記(18)または(19)に記載の電解析出装置。
【0141】
(21)通水性導電体が通水性の炭素繊維材料である上記(20)に記載の電解析出装置。
【0142】
(22)通水性の炭素繊維材料が活性炭繊維シートである上記(21)に記載の電解析出装置。
【0143】
(23)通水性導電体が通水性の金属発泡体材料または金属繊維材料である上記(20)に記載の電解析出装置。
【0144】
(24)通水性の金属発泡体材料が、銅発泡体である上記(23)に記載の電解析出装置。
【0145】
(25)イオン交換体がイオン交換繊維材料である上記(18)から(24)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0146】
(26)イオン交換繊維材料が、イオン交換基が放射線グラフト重合法によって有機高分子不織布基材に導入されたものである上記(25)に記載の電解析出装置。
【0147】
(27)イオン交換基が、スルホン基、リン酸基またはカルボキシル基から選択されるカチオン交換基である上記(26)に記載の電解析出装置。
【0148】
(28)イオン交換体がカチオン交換基である上記(18)から(27)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0149】
(29)イオン交換基がイミノジ酢酸基およびそのナトリウム塩から誘導される官能基、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、バリンおよびプロリン並びにそのナトリウム塩から誘導される官能基から選択される上記(26)に記載の電解析出装置。
【0150】
(30)陽極および陰極が、エキスパンデッドメタル、金属斜交網材料、格子状金属材料、網状金属材料によって形成されている上記(18)から(29)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0151】
(31)陽極および陰極が、通水性および通ガス性の材料で形成されている上記(18)から(30)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0152】
(32)通水性導電体または通水性金属発泡体材料が、通水性および通ガス性の材料で形成されている上記(20)から(31)のいずれかに記載の電解析出装置。
【0153】
(33)200mg/l以下の金属イオン濃度を有する被処理水を処理して、
金属イオン濃度が低められた処理水を得ると共に、
被処理水中に含まれていた金属を金属単体の形態で回収することを特徴とする、金属イオンを含有する被処理水を処理する方法。
【0154】
(34)半導体装置製造工程からの銅イオンを含む廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、
銅を銅金属として回収することを特徴とする、半導体装置製造プロセスにおけるCMP処理廃水または銅メッキ廃水の処理方法。
【0155】
(35)処理対象の廃水が、半導体装置製造工程におけるCMP工程または銅メッキ工程からの廃水、電解研磨廃水である上記(34)に記載の方法。
【0156】
(36)処理対象の廃水が、100mg/l以下の銅イオン濃度を有する上記(34)または(35)に記載の方法。
【0157】
(37)0.5mg/l以下の銅イオン濃度を有する処理水を連続的に得る上記(33)〜(36)のいずれかに記載の方法。
【0158】
(38)スラリ除去工程と酸化剤除去工程の順番が逆に配置されている上記(9)から(13)のいずれかに記載の方法。
【0159】
実施例
以下の実施例により、本発明をより具体的に説明する。以下の実施例の記載は、本発明の一具体例を説明するもので、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0160】
カチオン交換不織布の製造
表1に、本実施例において使用したカチオン交換不織布の製造に使用した基材不織布の仕様を示す。この不織布は、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンから構成される複合繊維を、熱融着によって不織布としたものである。
【0161】
【表1】
【0162】
表1に示す仕様の不織布に、ガンマ線を窒素雰囲気下で照射した後、メタクリル酸グルシジル(GMA)溶液に浸漬して反応させ、グラフト率175%を得た。次に、このグラフト不織布を、亜硫酸ナトリウム/イソプロピルアルコール/水の混合液中に浸漬して反応させることによって、スルホン化を行った。得られたカチオン交換不織布のイオン交換容量を測定したところ、中性塩分解容量が2.82meq/gの強酸性カチオン交換不織布が得られたことが分かった。
【0163】
図37に示す電解析出装置を構成した。陰極702としてエキスパンドメタル(ラスメタル仕様)を用いた。具体的には、このエキスパンドメタルは、ステンレスからなり、短目7mm、長目14mm、厚さ3mmである。陽極703として特注品のエキスパンドメタル(ラスメタル仕様)を用いた。具体的には、このエキスパンドメタルは、チタンに白金コーティングしたもので、短目6mm、長目14mm、厚さ3mmである。上記で製造したカチオン交換不織布705を陽極703に接して10枚積層して配置して、カチオン交換不織布層705の層厚さを10mmとした。また、厚さ2mmの活性炭不織布シートを陰極702に接して5枚積層配置して、活性炭不織布層704の層厚さを10mmとした。装置の廃水流通面の断面積は77cm2であった。
【0164】
純水に硫酸銅を溶解させることによって銅イオン濃度100mg/lの水溶液を形成し、これを原水とした。原水をタンク722に収容し、電極間に電流を通電しながら、ポンプによって電解析出装置の廃水供給室712に送り、供給水500に対して、処理水100の割合でポンプによって処理水727を回収した(したがって循環水724の量は400となる)。運転中、適宜ガス抜き口から発生ガスを放出した。運転電流および電圧と、処理水の銅イオン濃度とを表2の実験IおよびIIに示す。本発明に係る電解析出装置によれば、低電圧・低電流で、極めて効率よく廃水中の銅イオンを除去することができることが分かった。また、運転後の装置を分解して活性炭不織布シートの状態を観察したところ、表面に銅金属の析出が認められた。
【0165】
また、用いた活性炭不織布シートは、両面に補強用の非導電性不織布のシートが貼付されているものであり、上記の実験IおよびIIではこのシートをはがした後に積層した。
【0166】
実験IIIとして、この補強用非導電性不織布シートを貼付したままで5枚積層して活性炭不織布層704の層厚さを10mmとした装置を用いて同様の実験を行った。他の条件は実験IおよびIIと同じである。その結果も実験IおよびIIとともに表2に示す。実験IIIにおける処理水は実験IおよびIIとほぼ同等の水質であった。運転後の装置を分解して活性炭不織布シートの状態を観察したところ、活性炭不織布シートの層の全体に亘って均一に銅が析出していたことが認められた。
【0167】
【表2】
【実施例2】
【0168】
この例では、実施例1の装置において、陰極と陽極を反対に配置した。すなわち、被処理水が、陽極703、カチオン交換不織布の層705、活性炭不織布シートの層704、陰極702の順に流通するように装置を構成した。活性炭不織布シートの層は全層厚が5mmとなるように3枚積層配置し、カチオン交換不織布の層は全層厚が2mmとなるように2枚積層配置した。また、原水中の銅イオン濃度を実施例1より小さく調整して実験を行った。他の条件は実施例1と同じである。この結果を表3の実験IVおよびVに示す。
【0169】
【表3】
【0170】
被処理水を、陰極、活性炭不織布シート、カチオン交換不織布、陽極の純に通した実施例1と比較した場合には劣る水質であったが、被処理水中の銅イオンをある程度除去できたことが確認された。
【実施例3】
【0171】
イミノジ酢酸不織布の製造(基材は同じ)
表1に、本実施例において使用したイミノジ酢酸不織布の製造に使用した基材不織布の仕様を示す。この不織布は、芯がポリプロピレン、鞘がポリエチレンから構成される複合繊維を、熱融着によって不織布としたものである。
表1に示す仕様の不織布に、ガンマ線を窒素雰囲気下で照射した後、クロロメチルスチレン(CMS)溶液に浸漬して反応させ、グラフト率115%を得た。次に、このグラフト不織布をヨウ化ナトリウムおよびアセトンの混合液中に浸漬して反応させた。反応後の不織布基材を純水およびアセトンで洗浄後、イミノジ酢酸ジエチル/ジメチルホルムアミド溶液中に浸漬し反応させた。反応後の不織布をメタノールで洗浄した。さらに、この不織布を水酸化ナトリウムおよびエタノールの混合溶液中に浸漬し反応させることによってイミノジ酢酸不織布を得た。
【実施例4】
【0172】
実施例1の装置において、通水性導電体として厚さ7mmの銅発泡金属(60ppi)を用いて実施例1と同様の実験を行った(実験VI)。また、通水性導電体として厚さ7mmの銅発泡金属(60ppi)および炭素繊維不織布を用いて実施例1と同様の実験を行った(実験VII)。また、実験6と同様の構成として発泡金属とイオン交換体の間に1.2mmの間を設けて実施例1と同様の実験を行った(実験VIII)。
【0173】
実験VIIでは発泡金属とイオン交換体の間に炭素繊維不織布を導入する構成とした。結果を表4に示す。また、実験VIおよびVIIIでは銅の水酸化物および酸化物が通水性導電体の表面に認められた。この現象は、原水のpHが2以下の条件では抑制できることを確認した。実験VIIでは原水のpHによらず、酸化物および水酸化物の析出は認められなかった。炭素繊維を利用する場合ではこれらの析出を抑制できることが認められた。
【0174】
これらの実験の結果より、通水性導電体として発泡金属を用いた場合においても、本発明の効果に変わりがないことを確認した。
【表4】
【実施例5】
【0175】
実施例4中の実験VIIと同様の実験装置において、イオン交換体としてイミノジ酢酸基を有するイオン交換不織布を用いた(実験IX)。また、実験IXと同様の装置において銅めっき洗浄工程から排出されるリンス排水を原水として実験を行った(実験X)。結果を表5に示す。
【0176】
この結果より、イオン交換体としてイミノジ酢酸基を有するものを用いた場合においても本発明の効果に変わりはないことを確認した。また、銅めっきリンス排水を対象とした場合においても効果があることを確認した。
【0177】
【表5】
【実施例6】
【0178】
図40Aに示す構成の実験装置を用いて実験を行った。分離処理においては、脱塩室42のイオン交換体にはイミノジ酢酸基を有するイオン交換不織布を用いた。濃縮室41のイオン交換体にはスルホン基を有するイオン交換不織布を用いた。電極材は実施例1と同様とした。陰極室には硫酸または硝酸を濃度約1%となるように供給した。
【0179】
回収においては、板状の電極を用いた。陽極103の材質はチタン/白金コーティング、陰極102は銅とした。槽内は攪拌機により300rpm(m−1)で撹拌した。
【0180】
実験XIは、原水として銅めっきリンス排水を用いて行った。実験XIIは原水として銅を研磨するCMP排水を用いて行った。CMP排水のスラリ濃度はTS(Total Solid:Residue, Total, EPA Method 160.3)として2000ppmであった。
【0181】
電流密度は分離処理および回収処理ともに3A/dm2とした。
【0182】
この結果、実験XIでは、原水のCu濃度が120ppmであるのに対して処理水Cu濃度は0.1ppm未満であり、本実施例の構成においても効果は変わりがないことを確認した。濃縮室中に濃縮された銅イオン濃度は1000ppm以上となった。濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。
【0183】
実験XIIにおいても、原水のCu濃度が110ppmに対して処理水Cu濃度は0.1ppm未満であり、濃縮水中の銅イオンは回収処理工程の陰極において銅金属として回収された。CMP排水を対象とした場合においても効果が得られることを確認した。
【実施例7】
【0184】
実施例6と同様の装置において、脱塩室42のイオン交換体にスルホン基を有するイオン交換不織布を用いた。実施例6と同様の原水(CMP廃水、めっきリンス廃水)を用いた。電流密度は分離処理および回収処理共に3A/dm2とした。この結果、実施例5と同様の処理水質(Cu濃度<0.1ppm)を得るとともに、廃水中の銅イオンを銅金属として回収することができた。
【実施例8】
【0185】
図29Dに示す処理フローにしたがって実験を行った。実施例5と同様のCMP排水を用いた。硫酸によりpH2〜3に調整し、スラリ成分を主体とする沈殿物を得た。上澄み液に対してセラミックフィルタ(分画分子量50000相当)を用いた濾過を行った。その後、図40A、実施例7に示す構成の装置でCu2+イオン除去を行い、Cu濃度0.1ppm未満の処理水を得た。また、濃縮室中に回収したCu2+イオンを陰極に析出させ、銅金属として回収した。沈殿物は遠心分離器に供し、遠心分離処理を一度行い、スラリ表面の母液の大部分を除去した。この後、リンス水としてpH2〜3に調整した純水を遠心分離処理に供し、再度、遠心分離を行った。遠心分離処理で分離された母液および廃リンス水は沈降分離処理に供給した。
【0186】
上述したように、本発明によれば、重金属イオンを含む被処理水を処理して、重金属濃度が低められた処理水を得ると共に、重金属を金属単体として回収することができる。本発明は、例えば、半導体製造プロセス(例えば、CMP工程や銅メッキ工程)から排出される廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、廃水中の銅を銅金属として回収することができるので、排出基準および資源保護の両方の観点から、極めて有用性の高いものである。
【0187】
本発明の好ましい形態について詳細に説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本発明は、様々な種類の被処理水から金属イオンを除去・回収する装置に使用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】図1Aから図1Eは半導体チップの銅配線形成方法を示す概念図である。
【図2】図2は本発明の一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図3】図3は本発明の他の実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図4】図4は本発明のさらなる他の実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図5】図5は本発明のさらなる他の実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図6】図6は本発明の一実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図7】図7は本発明の他の実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図8】図8は本発明のさらなる他の実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図9】図9は本発明のさらなる他の実施形態に係る被処理水を処理する装置を示す概念図である。
【図10】図10は本発明の他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図11】図11は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図12】図12は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図13】図13は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図14】図14は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図15】図15は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置を示す概念図である。
【図16】図16Aおよび図16Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理装置を示す概念図である。
【図17】図17Aから図17Hは本発明の一態様における一実施形態に係る電解析出装置の通水方法を示す概念図である。
【図18】図18Aから図18Dは本発明の他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の通水方法を示す概念図である。
【図19】図19Aおよび図19Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の通水方法を示す概念図である。
【図20】図20Aおよび図20Bは本発明の一態様における一実施形態に係る電解析出装置の異常検知方法を示す概念図である。
【図21】図21Aから図21Cは本発明の一態様における一実施形態に係る電解析出装置の運転制御方法を示す概念図である。
【図22】図22は本発明の一態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図23】図23Aから図23Cは本発明の他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図24】図24Aおよび図24Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図25】図25は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図26】図26は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図27】図27は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図28】図28Aから図28Dは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図29A】図29Aは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29B】図29Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29C】図29Cは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29D】図29Dは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29E】図29Eは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図29F】図29Fは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図30】図30Aから図30Fは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図31】図31は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図32】図32は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図33】図33は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図34】図34は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図35】図35Aおよび図35Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図36】図36Aおよび図36Bは本発明に一実施形態に係る廃液の処理システムを半導体装置製造工場において使用する場合の設置方法を示す概念図である。
【図37】図37は、実施例で用いた電解析出装置の構成図である。
【図38】図38は本発明の他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図39】図39は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図40A】図40Aは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図40B】図40Bは本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図41】図41は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る電解析出装置の構成図である。
【図42】図42は本発明の他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムを示す概念図である。
【図43】図43は本発明のさらなる他の態様における一実施形態に係る廃水処理システムの構成例を示す概念図である。
【図44】図44は、本発明に係る電解析出装置において発生した水素ガスの処理方法を示す概念図である。
【図45】図45は、本発明に係る電解析出装置において発生した水素ガスの他の処理方法を示す概念図である。
【図46】図46は、本発明に係る電解析出装置において発生した水素ガスのさらに他の処理方法を示す概念図である。
【図47】図47は、被処理水の処理流れを示す図である。
【図48】図48は、めっき処理装置と本発明に係る廃水処理システムとの間の関係を示す図である。
【図49】図49は、CMP装置と本発明に係る廃水処理システムとの間の関係を示す図である。
【図50】図50は、同一チャンバ内でエッチングおよび洗浄工程、またはめっき、エッチングおよび洗浄工程を行なう装置から排出された廃水を廃水処理システムに導入した場合を示す図である。
【図51】図51は、同じ工程を担う複数の装置から排出された廃水を廃水処理システムに導入した場合を示す図である。
【図52】図52は、筐体に収容した廃水処理ユニットを示す斜視図である。
【図53】図53Aおよび図53Bは、CMP装置またはめっき処理装置と本発明に係る廃水処理システムとの間の好適な位置関係を示す図である。
【図54】図54Aから図54Cは、異なる工程を行う装置から排出された廃水を集中的に処理する場合を示す図である。
【図55】図55Aから図55Eは、脱酸素工程を導入した場合の種々の処理フローを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去装置と、
酸化剤除去装置からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出装置とを有する廃水の処理システム。
【請求項2】
金属イオンと酸化剤とを含む被処理水を、まず該酸化剤の分解・除去を行い、
該酸化剤の分解・除去を行った後の被処理水を、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置に導入して金属イオンの除去・回収を行うことを特徴とする被処理水の処理方法。
【請求項3】
金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、酸化剤除去工程からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【請求項4】
対向して配置された陽極および陰極と、
これら両電極間に装填されているイオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置。
【請求項5】
対向して配置された通水性の材料によって形成される陽極および陰極によって画定される電解室を具備し、
これら両電極間に少なくともイオン交換体の層が装填されており、
両電極とイオン交換体との複合層を通して被処理水を給排水する給排水手段をさらに具備することを特徴とする請求項4に記載の電解析出装置。
【請求項6】
陰極に接して通水性導電体の層が配置され、
当該通水性導電体層と陽極の間に、両者に接してイオン交換体の層が配置されている請求項4または5に記載の電解析出装置。
【請求項7】
通水性導電体が通水性の炭素繊維材料である請求項6に記載の電解析出装置。
【請求項8】
通水性導電体が金属発泡体または金属繊維からなる通水性の金属材料である請求項6に記載の電解析出装置。
【請求項9】
通水性導電体が通水性の炭素繊維材料と通水性の金属材料の組み合せで構成される請求項6に記載の電解析出装置。
【請求項10】
イオン交換体がイオン交換繊維材料である請求項4から9のいずれかに記載の電解析出装置。
【請求項11】
イオン交換繊維材料が、イオン交換基が放射線グラフト重合法によって有機高分子不織布基材に導入されたものである請求項10に記載の電解析出装置。
【請求項12】
イオン交換体がカチオン交換体またはキレート体のいずれかである請求項4から11のいずれかに記載の電解析出装置。
【請求項13】
200mg/l以下の金属イオン濃度を有する被処理水を処理して、金属イオン濃度が低められた処理水を得ると共に、
被処理水中に含まれていた金属を金属単体の形態で回収することを特徴とする、金属イオンを含有する被処理水を処理する方法。
【請求項14】
半導体装置製造工程からの銅イオンを含む廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、
銅を銅金属として回収することを特徴とする、半導体装置製造工程からの廃水の処理方法。
【請求項1】
金属イオンと酸化剤とを含む被処理水の処理システムであって、
被処理水を導入して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去装置と、
酸化剤除去装置からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出装置とを有する廃水の処理システム。
【請求項2】
金属イオンと酸化剤とを含む被処理水を、まず該酸化剤の分解・除去を行い、
該酸化剤の分解・除去を行った後の被処理水を、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置に導入して金属イオンの除去・回収を行うことを特徴とする被処理水の処理方法。
【請求項3】
金属イオンと酸化剤と無機物粒子スラリとを含む被処理水を処理するシステムであって、
被処理水にpH調整剤を加えて被処理水中のスラリ粒子の少なくとも一部を凝集させた後、被処理水を濾過装置に通して凝集させたスラリ粒子を除去するスラリ粒子除去工程と、
スラリ粒子除去工程からの排出水を受容して酸化剤の分解・除去を行う酸化剤除去工程と、酸化剤除去工程からの排出水を受容して、電極間にイオン交換体が配置された電解析出装置によって金属イオンの除去・回収を行う電解析出工程とを有するシステム。
【請求項4】
対向して配置された陽極および陰極と、
これら両電極間に装填されているイオン交換体とを具備することを特徴とする電解析出装置。
【請求項5】
対向して配置された通水性の材料によって形成される陽極および陰極によって画定される電解室を具備し、
これら両電極間に少なくともイオン交換体の層が装填されており、
両電極とイオン交換体との複合層を通して被処理水を給排水する給排水手段をさらに具備することを特徴とする請求項4に記載の電解析出装置。
【請求項6】
陰極に接して通水性導電体の層が配置され、
当該通水性導電体層と陽極の間に、両者に接してイオン交換体の層が配置されている請求項4または5に記載の電解析出装置。
【請求項7】
通水性導電体が通水性の炭素繊維材料である請求項6に記載の電解析出装置。
【請求項8】
通水性導電体が金属発泡体または金属繊維からなる通水性の金属材料である請求項6に記載の電解析出装置。
【請求項9】
通水性導電体が通水性の炭素繊維材料と通水性の金属材料の組み合せで構成される請求項6に記載の電解析出装置。
【請求項10】
イオン交換体がイオン交換繊維材料である請求項4から9のいずれかに記載の電解析出装置。
【請求項11】
イオン交換繊維材料が、イオン交換基が放射線グラフト重合法によって有機高分子不織布基材に導入されたものである請求項10に記載の電解析出装置。
【請求項12】
イオン交換体がカチオン交換体またはキレート体のいずれかである請求項4から11のいずれかに記載の電解析出装置。
【請求項13】
200mg/l以下の金属イオン濃度を有する被処理水を処理して、金属イオン濃度が低められた処理水を得ると共に、
被処理水中に含まれていた金属を金属単体の形態で回収することを特徴とする、金属イオンを含有する被処理水を処理する方法。
【請求項14】
半導体装置製造工程からの銅イオンを含む廃水を処理して、排出基準値以下の銅濃度の処理水を得ると共に、
銅を銅金属として回収することを特徴とする、半導体装置製造工程からの廃水の処理方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29C】
【図29D】
【図29E】
【図29F】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図3】
【図4】
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【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図29C】
【図29D】
【図29E】
【図29F】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40A】
【図40B】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【公表番号】特表2006−510481(P2006−510481A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562009(P2004−562009)
【出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【国際出願番号】PCT/JP2003/002903
【国際公開番号】WO2004/056712
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年3月12日(2003.3.12)
【国際出願番号】PCT/JP2003/002903
【国際公開番号】WO2004/056712
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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