説明

延伸ブロー成形用プリフォーム

【課題】胴部が口部よりも細い形状の延伸ブロー成形用プリフォームを用いた延伸ブロー時に胴部が延伸ロッドに接触して成形不良が発生することを防止できるようにすること。
【解決手段】延伸ブロー成形用プリフォーム1は、胴部2が口部3より細い形状をしており、胴部2と底部4の境界部分には円環状段差部5が形成されている。延伸ブロー成形において、延伸ロッド21による延伸時に、細い胴部2が細長く引き伸ばされる際に、円環状段差部5によって胴部2の半径方向の変化が抑制される。この結果、胴部2が延伸ロッド21に接触して成形不良が発生するという弊害を回避できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PETボトルなどの樹脂容器を延伸ブロー成形によって製造するために用いる延伸ブロー成形用プリフォームに関し、さらに詳しくは、口部に比べて一回り細い胴部を備えた延伸ブロー成形用プリフォームの改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
PETボトルなどの熱可塑性樹脂からなる容器は、射出成形品である試験管形状をしたプリフォーム(パリソン)を、加熱してブロー成形型内において二軸延伸ブロー成形することにより製造される。ここで、近年、樹脂容器の薄肉化、軽量化が強く要求されるようになっている。また、樹脂容器の形状についても各種の形状のものが要求されるようになっている。これらの要求に答えるために、プリフォームの胴部を口部に比べて細くしたものが使用されるようになってきている。この形状のプリフォームは特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2007−296720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
口部に比べて胴部が細いプリフォームを用いて樹脂容器を二軸延伸ブロー成形する場合には、延伸ロッドによる延伸時に胴部が引き伸ばされて細くなり、延伸ロッドの外周面に胴部の内周面が接触することがある。すなわち、図4に示すように、二軸延伸ブロー成形に適した温度に加熱したプリフォーム100はブロー成形型110に装着された後に、プリフォーム100の口部101からプリフォーム内に挿入された延伸ロッド121によって中心軸線Lの方向に引き伸ばされる。延伸ロッド121の先端121aがプリフォーム100の半球状の底部104を中心軸線Lの方向に押し出すことにより、胴部102が同一方向に引き伸ばされる。胴部102は中心軸線Lの方向に引き伸ばされると、全体として細くなり、特に、その中心軸線Lの方向における中程の部分が内側に湾曲して延伸ロッド121の外周面に接触することがある。胴部102は細く形成され、その延伸倍率を大きくすることにより、樹脂容器の胴部および底部の薄肉、軽量化が達成される。胴部が細くなる程、また、胴部の延伸倍率が大きくなる程、延伸時にプリフォーム100の胴部102の内周面が延伸ロッド121の外周面に接触しやすくなる。
【0004】
延伸ロッドにプリフォームの胴部内周面が接触することを防止するための方法として、延伸ロッド121による延伸と共にプリフォーム100の内部に吹き込まれる一次ブローエアーの吹き込み開始時点を早めることが考えられる。しかし、一次ブローエアーを早めに吹き込むと、プリフォーム胴部における底部側の部分の延伸が促進され、プリフォーム胴部の口部側の部分の延伸が不十分になってしまう。この結果、得られた樹脂容器においては、容器胴部の下側部分が肉薄となり、容器胴部の上側部分が肉厚になり、全体として均一な肉厚の樹脂容器を得ることが困難である。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、延伸時に延伸ロッドに接触することを防止でき、しかも、均一な肉厚分布の樹脂容器を得ることができる延伸ブロー成形用プリフォームを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は、筒状の胴部と、前記胴部の一端に形成されている筒状の口部と、前記胴部の他端を封鎖している底部とを有し、前記胴部は前記口部よりも細く形成されている樹脂容器の延伸ブロー成形に用いる延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、前記胴部および前記底部の境界部分には胴部縮小抑制部が形成されており、前記胴部縮小抑制部によって、延伸ブロー成形における延伸ロッドによる延伸時に、前記胴部が延伸に伴って細くなり前記延伸ロッドの外周面に接触することが防止されることを特徴としている。
【0007】
本発明では、前記胴部縮小抑制部は、前記胴部および前記底部よりも肉厚を厚くした環状肉厚部であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明では、前記胴部における前記底部との境界部分の胴部側太さに比べて、前記底部における前記胴部との境界部分の底部側太さを細くしてあり、前記胴部縮小抑制部は、これらの太さの異なる境界部分を繋ぐ環状段差部であることを特徴としている。
【0009】
このように、胴部と底部の境界部分に、隣接する胴部の部位に比べて面外剛性の高い胴部縮小抑制部を形成しておくと、この胴部縮小抑制部は延伸時において細くなりにくい。したがって、胴部は、この部分が支えとなって、延伸により細くなる方向の変化量が抑制され、延伸方向に肉が移動して肉厚の均一化を図ることができる。
【0010】
次に、本発明では、前記胴部縮小抑制部は、延伸ブロー成形後に得られる樹脂容器における容器胴部および容器底部の間を繋ぐ容器ヒール部に対応する部分であることを特徴としている。
【0011】
胴部縮小抑制部は、胴部、底部などに比べて変形量が少ないので、この胴部縮小抑制部を延伸倍率の高い樹脂容器のヒール部に対応する部位となるようにしておけば、延伸倍率が高いために薄い肉厚になりやすいヒール部を適切な肉厚となるように成形することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、胴部が口部よりも細い延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、胴部と底部の境界部分に胴部縮小抑制部を形成してある。延伸ブロー成形において延伸ロッドを挿入してプリフォームを延伸する際に、延伸に伴って胴部断面が半径方向に縮小する変化量が、胴部縮小抑制部によって抑制される。この結果、延伸時に細長く引き伸ばされて半径方向に縮小した胴部内周面が延伸ロッドに接触してしまうことを防止でき、接触に起因する成形不良を回避できる。したがって、本発明によれば、遠心倍率が高い、薄肉で軽量な樹脂容器を均一な肉厚となるように製造するために用いるのに適したプリフォームが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した延伸ブロー成形用プリフォームの実施の形態を説明する。
【0014】
図1(A)は本実施の形態に係る延伸ブロー成形用プリフォームを示す側面図であり、図1(B)はその縦断面図である。これらの図に示すように、延伸ブロー成形用プリフォーム1は、円筒状の胴部2と、この胴部2の上端に連続している円筒状の口部3と、胴部2の下端を封鎖しているほぼ半球状の底部4とを備えている。口部3の外周面には雄ねじ3aが形成されており、雄ねじ3aの胴部2の側の部位には大径のサポートリング3bが形成されている。胴部2は口部3に比べて小径であり、胴部2における口部3に繋がっている部分は大径の口部3から小径の胴部2に向けて径が漸減しているテーパ部2aとなっている。テーパ部2a以外の胴部2の部位は同一径であり、肉厚も同一である。
【0015】
底部4は胴部2よりも小径の半球形状をしており、これらの境界部分には胴部2から底部4に向けて径が小さくなっている円環状段差部5が形成されている。円環状段差部5の肉厚t(5)は胴部2の肉厚t(2)とほぼ同一であり、底部4の肉厚t(4)も胴部2の肉厚t(2)とほぼ同一である。また、円環状段差部5は、胴部2の肉厚t(2)とほぼ同一の段差のものである。なお、この構成の延伸ブロー成形用プリフォーム1は、PETなどの熱可塑性樹脂からなる射出成形品である。
【0016】
ここで、延伸ブロー成形用プリフォーム1を二軸延伸ブロー成形することにより、図1(B)において想像線で示す外形輪郭の樹脂容器10が得られる。延伸ブロー成形用プリフォーム1の口部3は延伸されずにそのまま樹脂容器10の口部になる。延伸ブロー成形用プリフォーム1の胴部2は二軸延伸ブロー成形されて樹脂容器10の頚部11、胴部12になり、延伸ブロー成形用プリフォーム1の底部4は樹脂容器10の底部14になる。また、延伸ブロー成形用プリフォーム1の円環状段差部5は二軸延伸ブロー成形されて樹脂容器10における胴部12と底部14の角部分、すなわち、ヒール部15になる。
【0017】
図2は延伸ブロー成形用プリフォーム1を用いて樹脂容器10を二軸延伸ブローする工程を示す説明図である。まず、延伸ブロー成形用プリフォーム1を二軸延伸ブロー成形に適した温度状態となるように加熱する。そのような温度状態に加熱された延伸ブロー成形用プリフォーム1をブロー成形型20に装着し、当該ブロー成形型20の型締めを行なう。図2(A)は型締め後の状態を示している。
【0018】
この後は、図2(B)に示すように、延伸ロッド21を延伸ブロー成形用プリフォーム1の口部3の開口3cから挿入し、中心軸線Lに沿って下方に押し込む。延伸ロッド21の外径は、延伸ブロー成形用プリフォーム1の底部4の内周面4aの最大内径よりも小さく、延伸ロッド21の先端面21aは内周面4aに対応した曲率の凸曲面となっている。この延伸ロッド21の先端面21aが延伸ブロー成形用プリフォーム1の底部4の内周面4aに当たった後は、延伸ロッド21の押し込みに応じて、延伸ブロー成形用プリフォーム1の胴部2が中心軸線Lの方向に沿って引き伸ばされる。胴部2は引き伸ばされると、その肉厚t(2)が徐々に薄くなると共に、その太さが徐々に細くなっていく。そして、図2(B)に示すように、中心軸線Lの方向の中央部分が括れた状態2Aで延伸される。
【0019】
ここで、延伸ブロー成形用プリフォーム1には円環状段差部5が形成されている。この円環状段差部5は胴部2に比べて面外剛性が高い。したがって、この円環状段差部5は、延伸ロッド21による延伸時に小径になりにくい。この結果、胴部2は、図2(B)に示すように、円環状段差部5に支えられて径が縮小する方向の変形量が小さくなる。よって、円環状段差部5は胴部縮小抑制部として機能し、この円環状段差部5の段差量などを適切に形成しておくことにより、図4(B)に示すように、延伸ロッド21の外周面に胴部2の内周面2bが接触してしまうことを防止できる。
【0020】
延伸ロッド21によって所定量だけ延伸ブロー成形用プリフォーム1を中心軸線Lの方向に延伸させた後は、低圧の一次ブローエアーが口部3の開口3cから吹き込まれる。しかる後に、高圧のブローエアーが吹き込まれて、中心軸線Lの方向に延伸された延伸ブロー成形用プリフォーム1が二軸方向に延伸ブローされて、ブロー成形型20の成形面20aに押し付けられる。これにより、樹脂容器10が得られる。
【0021】
ブローエアーによる延伸成形時においては、円環状段差部5は、円筒状の胴部2、半球状の底部4に比べて延伸されにくいので、その肉厚t(5)の減少量が少なく、胴部2、底部4よりも厚い状態が延伸ブロー成形の終盤近くまで維持される。延伸ブロー成形の終了時点では円環状段差部5は大きな延伸倍率で延伸されて樹脂容器10のヒール部15になる。したがって、ヒール部15を十分な肉厚にすることができ、胴部12から底部14にかけて均一な肉厚の樹脂容器10が得られる。
【0022】
このように、口部よりも細い胴部を備えた延伸ブロー成形用プリフォーム1は、胴部2および底部4の境界部分に円環状段差部5が形成されている。この円環状段差部5によって、延伸ロッドによる延伸時に、小径の胴部2が更に細くなって延伸ロッド21に接触して成形不良が発生するという弊害を回避できる。また、本例の円環状段差部5は樹脂容器10のヒール部15になる部分に形成されているので、ヒール部15を十分な肉厚のものとして成形することができる。さらに、延伸ロッド21に胴部2が接触しないので、延伸ブロー成形時における一次ブローエアーの吹き込み時点を早める必要がない。よって、ブローエアーの吹き込み時点を、他の成形条件に応じた適切な時点に設定することができる。
【0023】
図3(A)、(B)は延伸ブロー成形用プリフォーム1の別の例を示す縦断面図である。これらの図に示す延伸ブロー成形用プリフォーム1Aでは、胴部2と底部4の境界部分に、これらの部位よりも肉厚の厚い胴部縮小抑制部5A、5Bが形成されている。胴部縮小抑制部5Aでは、その外周面部分51は、胴部2から底部4にかけて滑らかに移行する曲面によって規定されているが、その内周面部分52は内方に円弧状に突出した円環状突面によって規定されており、胴部2および底部4よりも肉厚が厚くなっている。これに対して、胴部縮小抑制部5Bでは、その内周面部分53は、胴部2から底部4にかけて滑らかに移行する曲面によって規定されているが、その外周面部分54は外方に突出した円環状突面によって規定されており、胴部2および底部4よりも肉厚が厚くなっている。このような胴部縮小抑制部5A、5Bを備えた延伸ブロー成形用プリフォーム1A、1Bを用いることによって、延伸ロッドに胴部2が接触してしまうという弊害を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本発明を適用した延伸ブロー成形用プリフォームの側面図であり、(B)はその縦断面図である。
【図2】(A)および(B)は、図1の延伸ブロー成形用プリフォームの延伸ブロー成形工程を示す説明図である。
【図3】(A)および(B)は胴部縮小抑制部の別の例を示す説明図である。
【図4】(A)は従来の口部に比べて胴部が細い延伸ブロー成形用プリフォームを示す縦断面図であり、(B)はその問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1、1A、1B 延伸ブロー成形用プリフォーム
2 胴部
2a テーパ部
2b 胴部の内周面
2A 胴部の延伸状態
3 口部
3a 雄ねじ
3b サポートリング
3c 開口
4 底部
4a 底部の内周面
5 円環状段差部(胴部縮小抑制部)
5A、5B 胴部縮小抑制部
51、54 外周面
52、53 内周面
10 樹脂容器
11 頚部
12 胴部
14 底部
15 ヒール部
20 ブロー成形型
20a 成形面
21 延伸ロッド
21a 先端面
L 中心軸線
t(2) 胴部の肉厚
t(4) 底部の肉厚
t(5) 円環状段差部の肉厚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部と、前記胴部の一端に形成されている筒状の口部と、前記胴部の他端を封鎖している底部とを有し、前記胴部は前記口部よりも細く形成されている樹脂容器の延伸ブロー成形に用いる延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、
前記胴部および前記底部の境界部分には胴部縮小抑制部が形成されており、
前記胴部縮小抑制部によって、延伸ブロー成形における延伸ロッドによる延伸時に、前記胴部が延伸に伴って細くなり前記延伸ロッドの外周面に接触することが防止されることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項2】
請求項1に記載の延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、
前記胴部縮小抑制部は、隣接している前記胴部の部分に比べて、面外剛性を高めた部分であることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項3】
請求項1に記載の延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、
前記胴部縮小抑制部は、前記胴部および前記底部よりも肉厚を厚くした環状肉厚部であることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項4】
請求項1に記載の延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、
前記胴部における前記底部との境界部分の胴部側太さに比べて、前記底部における前記胴部との境界部分の底部側太さを細くしてあり、
前記胴部縮小抑制部は、これらの太さの異なる境界部分を繋ぐ環状段差部であることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォーム。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項に記載の延伸ブロー成形用プリフォームにおいて、
前記胴部縮小抑制部は、延伸ブロー成形後に得られる樹脂容器における容器胴部および容器底部の間を繋ぐ容器ヒール部に対応する部分であることを特徴とする延伸ブロー成形用プリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−669(P2010−669A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−160802(P2008−160802)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【Fターム(参考)】