説明

建設機械のキャブ構造

【課題】背面窓を通しての視認性を確保できるとともに、運転席シートに着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる建設機械のキャブ構造の提供。
【解決手段】運転席シート5の後方部分に配置される背面窓6が、可視光線透過率が40%以上、70%未満のガラス構造体から成っている。このガラス構造体は、例えば可視光線透過率が40%以上、70%未満となる濃度に着色した単板の強化ガラスから成っている。運転席シート5の前側位置には、表示面が背面窓6に対向するように配置されるモニタ7を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席シートの後方部分に背面窓を有する建設機械のキャブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えば油圧ショベルに備えられるキャブ構造は一般に、キャブ内にオペレータが着座する運転席シートが配置され、この運転席シートの前方部分に前面窓を有し、運転席シートの両側方部分に側面窓をそれぞれ有し、運転席シートの後方部分に背面窓を有している。各窓のうちの前面窓、及び側面窓のそれぞれは、良好な視界及び視認性を確保するために、保安基準規定によって可視光線透過率が70%以上となるように設定されている。背面窓に対しては、可視光線透過率70%以上とする保安基準規定は適用されないが通常、部品材料の共通化や製作コストの低減のために、前面窓及び側面窓と同様に可視光線透過率70%以上のものが設けられている。
【0003】
図3は従来の建設機械のキャブ構造における問題点を説明するためのキャブの要部側面図である。
【0004】
この図3に示すように、建設機械のキャブ10は、オペレータが着座する図示しない運転席シートの後方部分に背面窓11が備えられているが、当該建設機械によって実施される作業中に矢印13,14に示すように、太陽光が背面窓11を透過して図示しない運転席シートに着座しているオペレータの頭部及び首に当りやすい。このためにオペレータは熱感による不快感を感じやすい。
【0005】
なお、大部分の建設機械は図3に示すように、キャブ10内にモニタ12を備えている。このモニタ12は、図示しない運転席シートの前側位置に設けられ、表示面が背面窓11に対向するように配置されることが多い。このように配置されるモニタ12を備えた建設機械にあっては、上述のように背面窓11から入射した太陽光がキャブ10の前方のモニタ12の表示面で反射しやすく、モニタ12に対するオペレータの視認性を害しやすい。
【0006】
ところで従来、背面窓に紫外線避けのUVカットガラスを設けたり、日射透過率が少なくとも30%以下の断熱性ガラスを設けたり、可視光線透過率が70%以上の着色ガラスを設けることが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−252044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に開示される従来技術のように、背面窓にUVカットガラスを設けた場合、紫外線の遮断には有効であるが、オペレータの熱感を和らげることに対しては効果が薄い。また、背面窓に可視光線透過率が少なくとも30%以下の断熱性ガラスを設けた場合、キャビンの後方に対する視認性が悪化する。特に夜間における作業時では、キャビンの後方に物体が存在するかどうかの確認が困難となってしまう。なお、背面窓に可視光線透過率が70%以上の着色ガラスを設けた場合については、上述の図3における説明のとおりであり、運転席シートに着座したオペレータに熱感による不快感を生じさせやすい。
【0009】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、背面窓を通しての視認性を確保できるとともに、運転席シートに着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる建設機械のキャブ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係る建設機械のキャブ構造は、運転席シートの後方部分に背面窓を有する建設機械のキャブ構造において、上記背面窓は、可視光線透過率が40%以上、70%未満のガラス構造体から成ることを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明にあっては、ガラス構造体の可視光線透過率は70%未満であり、一般に可視光線透過率が70%未満のものは、赤外線波長域の光線も吸収する特性を有することが知られている。したがって、本発明は、ガラス構造体によって可視光と熱線の両方を抑制することができる。これによって運転席シートに着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる。また、本発明にあっては、ガラス構造体の可視光線透過率が40%以上であることから、昼間はもとより夜間における作業時でも、背面窓を通して当該建設機械の後方に存在する車両のライトとか、後方に人等が存在することを確認でき、背面窓を通しての視認性を確保できる。すなわち、本発明は、背面窓を通しての視認性を確保できるとともに、運転席シートに着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる。さらに本発明は、背面窓のガラス構造体が太陽光の入射光を減少させるので、キャブ前方にモニタを配置した場合には、モニタの表示面での太陽光の反射を抑制することができる。
【0012】
また、本発明に係る建設機械のキャブ構造は、上記発明において、上記ガラス構造体は、可視光線透過率が40%以上、70%未満となる濃度に着色した単板の強化ガラスから成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、ガラス構造体が一部材からなるので、ガラス構造体の製作が容易であり、製作コストを安くすることができる。
【0013】
また、本発明に係る建設機械のキャブ構造は、上記発明において、上記ガラス構造体は、単板の透明強化ガラスと、この透明強化ガラスに重ねて配置され、可視光線透過率が40%以上、70%未満となるように形成した合成樹脂板とから成ることを特徴としている。
【0014】
また、本発明に係る建設機械のキャブ構造は、上記発明において、上記ガラス構造体は、2枚の生ガラスと、これらの2枚の生ガラスの間にこれらの生ガラスを接着するように配置され、可視光線透過率が40%以上、70%未満となるように形成したフィルムとから成ることを特徴としている。
【0015】
また、本発明に係る建設機械のキャブ構造は、上記発明において、上記運転席シートの前側位置に設けられ、表示面が上記背面窓に対向するように配置されるモニタを備えたことを特徴としている。このように構成した本発明は、背面窓を透過した太陽光のモニタの表示面における反射を抑えることができ、運転席シートに着座したオペレータのモニタに対する視認性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、運転席シートの後方部分に配置される背面窓が、可視光線透過率が40%以上、70%未満のガラス構造体から成ることから、背面窓を通しての視認性を確保でき、当該建設機械で実施される作業の安全性を確保できるとともに、運転席シートに着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる。したがって、従来生じがちであったオペレータの不快感を除くことができ、オペレータによる快適な操作の実現に貢献する。さらに本発明は、背面窓のガラス構造体が太陽光の入射光を減少させるので、キャブ前方にモニタを配置した場合には、モニタの表示面での太陽光の反射を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るキャブ構造の一実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルに備えられるキャブの要部側面図である。
【図3】従来の建設機械のキャブ構造における問題点を説明するためのキャブの要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建設機械のキャブ構造の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るキャブ構造の一実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図、図2は、図1に示す油圧ショベルに備えられるキャブの要部側面図である。
【0020】
本発明に係るキャブ構造が備えられる建設機械は、例えば油圧ショベルであり、この油圧ショベルは、図1に示すように走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に配置され、土砂の掘削作業等を実施するフロント作業機3とを備えている。旋回体2の前側位置には、本実施形態の対象とするキャブ4を備えている。このキャブ4内には、オペレータが着座する運転席シート5が配置してあり、図2にも示すように、運転席シート5の後方部分には背面窓6を設けてある。また、運転席シート5の前側位置に設けられ、表示面が背面窓6に対応するように配置されるモニタ7を備えている。このモニタ7の表示面には、この油圧ショベルの稼動情報を含む各種情報が表示される。
【0021】
本実施形態は、背面窓6が、可視光線透過率が40%以上、70%未満のガラス構造体から成っている。このガラス構造体は、例えば可視光線透過率が40%以上、70%未満となる濃度に着色した単板の強化ガラスから成っている。
【0022】
このように構成した本実施形態にあっては、背面窓6を構成するガラス構造体の可視光線透過率は70%未満であり、一般に可視光線透過率が70%未満のものは、赤外線波長域の光線も吸収する特性を有することが知られている。したがって、本実施形態は、ガラス構造体によって可視光と熱線の両方を抑制することができる。これによって、運転席シート5に着座したオペレータに対する太陽光による熱線を和らげることができる。また、本実施形態にあっては、背面窓6を構成するガラス構造体の可視光線透過率は40%以上であり、太陽光が出ている昼間における作業時にあって背面窓6の後方に対する視認性を確保できるとともに、夜間における作業時でも背面窓6を通して当該油圧ショベルの後方に存在する車両のライトとか、後方に存在する人等を確認でき、背面窓6を通しての視認性を確保できる。すなわち、本実施形態は、背面窓6を通して視認性を確保できるとともに、運転席シート5に着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる。したがって、このような熱感に伴うオペレータの不快感を除くことができ、オペレータによる快適な操作の実現に貢献する。
【0023】
また、背面窓6を構成するガラス構造体が一部材から成るので、ガラス構造体の製作が容易であり、製作コストを安くすることができ、実用性に優れている。
【0024】
さらに、本実施形態によれば、背面窓6から入射した太陽光を減少させ、キャブ4の前方のモニタ7の表示面における反射を抑えることができる。これにより、運転席シート5に着座したオペレータのモニタ7に対する視認性も向上させることができ、作業性の向上に貢献する。
【0025】
なお、上記実施形態では、背面窓6を構成するガラス構造体が、可視光線透過率が40%以上、70%未満となる濃度に着色した単板の強化ガラスから成っているが、本発明は、このように構成することには限られない。ガラス構造体を例えば単板の透明強化ガラスと、この透明強化ガラスに重ねて配置され、可視光線透過率が40%以上、70%未満となるように形成した合成樹脂板とから成る構成にしてもよい。また例えば、2枚の生ガラスと、この2枚の生ガラスの間にこれらの生ガラスを接着するように配置され、可視光線透過率が40%以上、70%未満となるように形成したフィルムとから成る構成にしてもよい。
【0026】
このように背面窓6であるガラス構造体を構成したものであっても、可視光線透過率を40%以上、70%未満とすることができるので、上述した実施形態と同様に、背面窓6を通しての視認性を確保できるとともに、運転席シート5に着座したオペレータに対する太陽光による熱感を和らげることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 走行体
2 旋回体
3 フロント作業機
4 キャブ
5 運転席シート
6 背面窓
7 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席シートの後方部分に背面窓を有する建設機械のキャブ構造において、
上記背面窓は、可視光線透過率が40%以上、70%未満のガラス構造体から成ることを特徴とする建設機械のキャブ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のキャブ構造において、
上記ガラス構造体は、可視光線透過率が40%以上、70%未満となる濃度に着色した単板の強化ガラスから成ることを特徴とする建設機械のキャブ構造。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械のキャブ構造において、
上記ガラス構造体は、単板の透明強化ガラスと、この透明強化ガラスに重ねて配置され、可視光線透過率が40%以上、70%未満となるように形成した合成樹脂板とから成ることを特徴とする建設機械のキャブ構造。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械のキャブ構造において、
上記ガラス構造体は、2枚の生ガラスと、これらの2枚の生ガラスの間にこれらの生ガラスを接着するように配置され、可視光線透過率が40%以上、70%未満となるように形成したフィルムとから成ることを特徴とする建設機械のキャブ構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ構造において、
上記運転席シートの前側位置に設けられ、表示面が上記背面窓に対向するように配置されるモニタを備えたことを特徴とする建設機械のキャブ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−105030(P2011−105030A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258995(P2009−258995)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】