説明

建設機械のポンプ制御装置

【課題】エンジン過負荷によるエンジンストールを防止する。
【解決手段】エンジンに連動回転するカムシャフト17に枢支され、カムシャフト17とともに回転することによって生じる遠心力により外方に拡開可能なガバナウェイト31と、中間部を揺動支点として揺動自在に支持されたガバナレバー36と、ガバナレバー36の一端部とアクセルレバー18との間に取り付けられ、ガバナレバー18の一端部を引っ張るガバナスプリング38と、カムシャフト17の回転軸方向に延びてガバナレバー36とガバナウェイト31との間に取り付けられ、ガバナウェイト31の拡開動作に連動してガバナレバー36の一端部をガバナウェイト31とは反対側に向かって押動するコントロールロッド34と、ガバナレバー36の他端部と斜板21との間に接続されて、ガバナレバー36の揺動に応じて油圧ポンプ20の斜板21を制御する傾転調整スライダ40とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に搭載されているエンジンにより駆動されるポンプの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーショベル車等の建設機械は、一般的に原動機としてディーゼルエンジンを備え、このエンジンにより油圧ポンプを回転駆動し、油圧ポンプから吐出される作動油(圧油)により油圧アクチュエータを駆動して所要の作業を行う。建設機械において、エンジン回転数は油圧ポンプの負荷に応じて常に変動しており、作業をする際に大きな力や速度を出力するために油圧ポンプの吐出流量を最大にした場合には、エンジンに大きな負荷がかかってエンジン回転数が低下して、さらに油圧ポンプの入力トルクがエンジンの出力トルクよりも大きくなるとエンジンストールが発生するおそれがある。このため、エンジン過負荷等によるエンジンストールを防止する観点から、油圧ポンプの入力トルクが予め設定した最大値(最大吸収トルク)を超えないよう油圧ポンプの斜板の傾転角(押し退け容積)を調整し、入力トルクの制限を行う制御が行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開昭57−65822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような建設機械においてエンジンの出力低下は、エンジンを取り巻く環境で大きく変わってくる。例えば、気圧が低い高地において作業する場合、エンジンの吸入空気量が平地に比べて減少するため、燃料濃度が濃くなって不完全燃焼となることによりエンジンの燃焼効率が悪くなった結果、エンジンの出力トルクが低下する。このため、油圧ポンプの入力トルクがエンジンの出力トルクよりも大きくなって、エンジンストールが発生するという問題があった。
【0004】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、比較的簡単な構成でエンジン回転数の変動により油圧ポンプの吐出流量を制御して、エンジン過負荷によるエンジンストールを防止することができる建設機械のポンプ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る建設機械のポンプ制御装置は、車体と、車体に搭載されアクセルレバーの操作量に応じて目標回転数が設定されるエンジンと、圧油の吐出流量を調整する容量可変部を有しエンジンにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動する複数の油圧アクチュエータとを有する建設機械のポンプ制御装置において、エンジンに連動回転するシャフト部材(例えば、実施形態におけるカムシャフト17)に枢支され、シャフト部材とともに回転することによって生じる遠心力によりシャフト部材の回転軸に対して外方に拡開可能なガバナウェイトと、中間部を揺動支点として揺動自在に支持されたガバナレバーと、ガバナレバーの一端部とアクセルレバーとの間に取り付けられ、ガバナレバーの一端部をガバナウェイト側に引っ張るバネ部材(例えば、実施形態におけるガバナスプリング38)と、シャフト部材の回転軸方向に延びてガバナレバーとガバナウェイトとの間に取り付けられ、ガバナウェイトの拡開動作に連動してガバナレバーの一端部をガバナウェイトとは反対側に向かって押動するロッド部材(例えば、実施形態におけるコントロールロッド34)と、ガバナレバーの他端部と容量可変部との間に接続されて、ガバナレバーの揺動に応じて油圧ポンプの容量可変部を制御するポンプ制御部(例えば、実施形態における傾転調整スライダ40)とを備え、エンジンが目標回転数近傍で回転しているときには、ガバナウェイトに生じる遠心力の作用によりガバナウェイトがロッド部材を介してガバナレバーを一方側に揺動させる押圧力と、アクセルレバーの操作量およびガバナレバーの揺動量に応じて伸長したバネ部材の付勢力とがつり合って、ガバナレバーがポンプ制御部を介して、油圧ポンプの圧油の吐出を所定の吐出流量に維持するように容量可変部を制御し、エンジンの実回転数が目標回転数近傍よりも低下したときには、ガバナウェイトの遠心力が低下してバネ部材の付勢力により他方側に揺動したガバナレバーがポンプ制御部を介して、油圧ポンプの圧油の吐出を所定の吐出流量よりも減少させるように容量可変部を制御するように構成される。
【0006】
このように構成された建設機械のポンプ制御装置において、油圧ポンプの容量可変部が、油圧ポンプの内部に配設された斜板の傾転角を変化させることにより押し退け容積を変化させて圧油の吐出流量が可変となるように構成され、ポンプ制御部が、ガバナレバーの他端部と斜板との間に接続されて、ガバナレバーの揺動に応じて斜板の傾転角を変化させるように構成されることが好ましい。
【0007】
また、油圧ポンプの所定の吐出流量とは、油圧ポンプの最大吐出流量であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る建設機械のポンプ制御装置によれば、比較的簡単な構成により、エンジンが軽負荷のときには油圧ポンプが所定の吐出流量の圧油を油圧アクチュエータに供給するような制御が行われ、エンジン負荷が高くなって目標回転数に対してエンジンの実回転数が低下するときには、油圧ポンプの吐出流量を抑制してエンジン出力不足によるエンジンストールを防止しつつ、再び、エンジンの実回転数を目標回転数まで増加させて油圧ポンプの圧油の吐出を所定の吐出流量まで復帰させる制御を行うことができる。したがって、例えば、気圧の低い高地での作業等でエンジン自体の出力が低下するような場合でも、エンジンの実回転数の変動によって油圧ポンプの圧油の吐出流量が制御されるため、エンジン過負荷によるエンジンストールを回避しながら油圧ポンプにより十分な吐出流量の圧油を油圧アクチュエータに供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るポンプ制御装置を備えた建設機械の例としてクローラ型パワーショベル車(以降、「パワーショベル車」と称する)を示す。
【0010】
パワーショベル車1は、図1に示すように、左右一対のクローラ走行機構を有した走行装置3と、走行装置3の上に旋回機構5により水平旋回可能に設けられた車両本体2と、車両本体2の前部に水平旋回(水平揺動)可能に取り付けられたパワーショベル機構4とから構成される。
【0011】
走行装置3は、それぞれ駆動スプロケット3a、従動スプロケット3b、および、これらのスプロケット3a,3bに掛け回された履帯3cから構成されるクローラ機構を走行フレーム3dの左右に設けて構成される。そして、この走行フレーム3dの中央上部に旋回機構5が設けられている。この旋回機構5により水平旋回可能に支持される車両本体2は、車体フレーム6の上に、運転キャビン7、エンジン(ディーゼルエンジン)11等が搭載されたエンジンルーム10等を配設して構成され、車体フレーム6の前端に前方に突出して本体枢結部8が形成されている。
【0012】
パワーショベル機構4は、本体枢結部8に垂直軸Nを中心として水平旋回若しくは揺動自在に枢結されたスイング側枢結部12と、このスイング側枢結部12に垂直面内で上下に揺動可能に枢結されたブーム13と、ブーム13の先端に同一垂直面内で上下に揺動可能に枢結されたアーム14と、アーム14の先端に同一垂直面内で上下に揺動可能に枢結されたバケット15とから構成される。さらに、ブーム13を上下に揺動させるブームシリンダ13aがスイング側枢結部12とブーム13とを繋いで配設され、アーム14を上下に揺動させるアームシリンダ14aがブーム13とアーム14とを繋いで配設され、バケット15を上下に揺動させるバケットシリンダ15aおよびリンク15bが図示のようにアーム14とバケット15とを繋いで配設される。
【0013】
エンジンルーム10内には、図2に示すように、エンジン11、燃料噴射装置(燃料噴射ポンプ)16、油圧ポンプ20、制御バルブ類(図示しない)等が配設され、運転キャビン7内に搭乗した作業者が運転キャビン7内に設けられている操作装置を操作すると、この操作に応じて制御バルブ類の作動制御がなされ、油圧ポンプ20から吐出される作動油(圧油)をブームシリンダ13a、アームシリンダ14a、および、バケットシリンダ15a等に供給する制御が行われる。これにより作業者の操作に応じて、車両本体2に対してブーム13やアーム14などを揺動等させる作動を制御して、掘削作業を行うことができる。
【0014】
また、油圧ポンプ20から供給される圧油は、駆動スプロケット3aを回転駆動する走行油圧モータ(図示しない)、旋回機構5を旋回駆動する旋回油圧モータ(図示しない)にも供給され、作業者の操作に応じて、走行装置の駆動制御、および、旋回機構5による車両本体2の水平旋回制御も行うことができる。なお、油圧ポンプ20から圧油が供給されて駆動する前述のブームシリンダ13a、アームシリンダ14a、バケットシリンダ15a、走行油圧モータ(不図示)および旋回油圧モータ(不図示)を、以降の説明では総称して「油圧アクチュエータ」と称する。
【0015】
また、エンジンルーム10内であってエンジン11には、図2に示すように、このエンジン11に燃料を噴射する燃料噴射装置(燃料噴射ポンプ)16が取り付けられており、燃料噴射装置16の各吐出口とエンジン11の各シリンダ(図示しない)とは、管路(図示しない)により接続されている。この燃料噴射装置16には、カムシャフト17(図3を参照)が設けられており、このカムシャフト17はエンジン11のクランクシャフト(図示しない)によって回転駆動されるようになっている。
【0016】
また、エンジンルーム10内には、エンジン11によって駆動される油圧ポンプ20が備えられている。油圧ポンプ20は、入力軸(ポンプ軸)がエンジン11の出力軸に連結されており、エンジン11の駆動力が伝達されて駆動されるように構成されている。また、油圧ポンプ20は、作動油が貯留されているリザーバタンク(図示しない)から作動油を吸引してこの作動油を圧送し、この圧送された作動油(圧油)が方向切換弁(図示しない)等を介して、ブームシリンダ13a等の油圧アクチュエータへ供給されて、この油圧アクチュエータが駆動される。油圧アクチュエータに供給された圧油は、方向切換弁(図示しない)等を介して、リザーバタンクへ戻された後、再び油圧ポンプ20により圧送され循環される。
【0017】
この油圧ポンプ20は、斜板式の可変容量形油圧ポンプからなり、斜板21の傾転角を変化させることにより押し退け容積を可変にする押し退け容積可変機構部22を備えている。そして、詳細は後述するポンプ制御装置30により斜板21の傾転角(押し退け容積)を変化される制御が行われることにより、油圧ポンプ20からの圧油の吐出流量が増減されることになる。それでは、本発明に係るポンプ制御装置の構成について2つの実施例を説明する。
【実施例1】
【0018】
まず、本発明に係るポンプ制御装置の第1の実施例について、図3を用いて説明する。第1実施例に係るポンプ制御装置(ガバナ装置)30は、ガバナウェイト31、コントロールロッド34、ガバナレバー36、ガバナスプリング38および傾転調整スライダ40を有して構成される。
【0019】
ガバナウェイト31は、エンジン11により回転駆動されるカムシャフト17の一端部17aに接続され回転可能に支持されている。ガバナウェイト31は、図3において矢印で示すように、このガバナウェイト31の回転時に生じる遠心力により開閉可能に構成されている。また、ガバナウェイト31にアーム32を介して連結されたローラ33は、コントロールロッド34の一端部(右端部)に当接されている。
【0020】
コントロールロッド34は、カムシャフト17の長手中心軸方向に沿って左右に延びるロッド状の部材であり、ガバナウェイト31の開閉に伴って生じる遠心力によりローラ33から押動されることでガバナウェイト31とガバナレバー36との間で左右方向に移動可能になっている。すなわち、エンジン11(カムシャフト17)の回転数が増加してこのガバナウェイト31が外方に開くと、ガバナウェイト31のローラ33がコントロールロッド34をカムシャフト17から遠ざかる方向(左方向)に押し出すことにより、コントロールロッド34全体が左方向に移動することになる。
【0021】
ガバナレバー36は、中間部がコントロールロッド34の他端部(左端部)に枢支されており、コントロールロッド34の左右方向の移動に伴って支点ピン37を中心にして回動自在になっている。また、ガバナレバー36はガバナスプリング38を介してエンジン11の目標回転数を設定するアクセルレバー18に連結されており、ガバナレバー36の上方部がアクセルレバー18の開度に応じて伸縮するガバナスプリング38の付勢力によりガバナウェイト31側に常時付勢される。このガバナスプリング38は、エンジン11が目標回転数近傍で回転するときに、当該回転によってガバナウェイト31に生じる遠心力によりコントロールロッド34を介してガバナレバー36が押動される力(ガバナ力)と、コントロールロッド34から押動されることによりガバナレバー36が反時計回り方向に回動する変位量に伴って伸長したガバナスプリング38からガバナレバー36が受ける付勢力とがつり合うように設定されている。すなわち、エンジン11がアクセルレバー18で設定した目標回転数近傍で回転しているときには、ガバナレバー36に作用するガバナ力と付勢力とがつり合って、このガバナレバー36は静止状態を保持するようになっている。
【0022】
傾転調整スライダ40は、一端部(右端部)がガバナレバー36の下端部に枢支されており、他端部(左端部)が油圧ポンプ20の斜板21に支持されている。そして、傾転調整スライダ40は、ガバナレバー36の回動に伴って左右にスライド自在に構成されている。このため、傾転調整スライダ40の左右へのスライドに応じて油圧ポンプ20の斜板21の傾転角が変化されて、油圧ポンプ20における圧油の吐出量を調整することができる。そして、油圧ポンプ20は、斜板21の傾転角に応じた吐出量の圧油を油圧アクチュエータに供給する。
【0023】
次に、ポンプ制御装置(ガバナ装置)30の作動について説明する。本実施形態のパワーショベル車1を用いて、例えば、気圧の低い高地などで作業を行う場合には、エンジンの吸入空気量が平地に比べて減少して不完全燃焼となり易く、エンジンの燃焼効率が悪くなることにより、エンジン11の出力トルクが低下する傾向にある。このため、油圧ポンプ20の入力トルクがエンジン11の出力トルクよりも大きくなって、エンジンストールが発生し易い状況下での作業となる。
【0024】
このような作業環境下において、まず、エンジン11始動前は、ガバナウェイト31には遠心力は作用しておらず閉じた状態となっている。このため、ガバナレバー36はコントロールロッド34から押圧されることなく、上方部がガバナスプリング38により右側に付勢されて実線で示す位置(略上下方向に延びた位置)に位置している。油圧ポンプ20は、斜板の傾転角が最小位置にあり、(エンジン11始動時に)吐出流量が最小になるようになっている。なお、エンジン11の回転数を制御するアクセルレバー18はガバナスプリング38により常時低速側位置(図3の(A)位置)に付勢されている。
【0025】
次いで、アクセルレバー18を目標回転数となる所定の位置(図3の(B)位置)に傾倒してエンジン始動すると、カムシャフト17の回転増加に伴ってガバナウェイト31が遠心力により外方へ開き始めて、コントロールロッド34の右端部を左方向に押動していく。そして、ガバナウェイト31がコントロールロッド34を介してガバナレバー36を押圧する力(ガバナ力)が、ガバナスプリング38の付勢力に打ち勝って、ガバナレバー36の下方部が反時計回り方向に回動して、ガバナレバー36が図3において点線で示す位置に位置する。このとき、ガバナレバー36に作用するガバナ力とガバナスプリング38の付勢力とが互いにつり合い、ガバナレバー36が静止状態を保つようになっている。
【0026】
そして、ガバナレバー36が回動されたことに伴い、傾転調整スライダ40が右方向にスライドして、油圧ポンプ20の斜板21の傾転角が大きくなって最大傾転角(最大押し退け容積)まで移動する。これにより、油圧ポンプ20の吐出流量が最大となって、この最大吐出流量の圧油がブームシリンダ13a等の油圧アクチュエータに供給される。このように、エンジン11が目標回転数近傍で回転している(エンジン軽負荷の)ときには、コントロールロッド34を介してガバナウェイト31がガバナレバー36を押動する力(ガバナ力)につり合うようにガバナスプリング38がガバナレバー36を付勢するため、ガバナレバー36が(図3に示す点線位置で)静止状態を維持して、油圧ポンプ20の斜板21の位置を常に最大傾転角で保つようにすることができる。なお、油圧ポンプ20の吐出流量の増加量は、ガバナレバー36の回動による変位量にほぼ比例するようになっている。
【0027】
そして、油圧ポンプの吐出流量(吐出圧力)の上昇などによりエンジン11の負荷が高くなり、アクセルレバー18により設定した目標回転数よりもエンジン11の実回転数が低下すると、ガバナウェイト31に生じる遠心力が次第に小さくなってガバナウェイト31が閉じていく。このため、ガバナレバー36に作用するガバナスプリング38の付勢力がガバナウェイト31によるガバナ力に打ち勝ち、コントロールロッド34をカムシャフト17側(右方向)に移動させるようにガバナレバー36が時計回り方向に回動する。これにより傾転調整スライダ40も左方向にスライドしていき、油圧ポンプ20の斜板21の傾転角(押し退け容積)が小さくなって圧油の吐出流量が減少される。したがって、エンジン11の負荷が低減してエンジン11の実回転数がアクセルレバー18で設定した目標回転数近傍まで復帰(増加)する。
【0028】
次いで、エンジン11(カムシャフト17)の回転数が復帰すると、ガバナウェイト31に生じる遠心力が増加してガバナウェイト31が外方に開くことにより、ローラ33がコントロールロッド34を介してガバナレバー36の中間部をガバナスプリング38の付勢力に抗して左方向に押動する。これにより、ガバナレバー36がガバナスプリング38の付勢力に抗して反時計回り方向に回動される。このガバナレバー36の回動により、傾転調整スライダ40が右方向にスライドして、再度、油圧ポンプ20の斜板21を最大傾転角まで移動させることで、油圧ポンプ20の吐出を最大吐出流量に増大させる。これにより、油圧ポンプ20は、最大吐出流量の圧油をブームシリンダ13a等の油圧アクチュエータに供給することができる。
【0029】
このように、エンジン負荷が小さいときには油圧ポンプ20の吐出流量を最大にして圧油を供給することができるとともに、エンジン負荷が大きくなると油圧ポンプ20の吐出流量を抑制してエンジン11の負荷を低減させることにより、エンジン11の実回転数を目標回転数まで復帰させて、再び、油圧ポンプ20が最大吐出流量の圧油を供給することができる。すなわち、このような作動がなされることにより、エンジン出力が低下するような高地等で作業を行う場合であっても、エンジン11の過負荷によるエンジンストールを防止しつつ、油圧ポンプ20は適時、油圧アクチュエータ作動のための十分な量(最大流量)の圧油を吐出して油圧アクチュエータに供給することができる。
【実施例2】
【0030】
次に、本発明に係るポンプ制御装置の第2実施例について、図4を用いて説明する。なお、第1実施例と同一の部材は同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。第2実施例に係るポンプ制御装置(ガバナ装置)30′は、ガバナウェイト31、コントロールロッド34、ガバナレバー36、ガバナスプリング38、サーボ弁(メカニカルサーボ弁)50およびサーボピストン60を有して構成される。
【0031】
油圧ポンプ20から吐出される作動油(圧油)は、油圧アクチュエータに供給されるとともに、この油圧ポンプ20の斜板21の傾転角を制御するサーボピストン60と、サーボピストン60の作動圧を制御するサーボ弁50とに供給されるようになっている。油圧ポンプ20に接続されている油路70は、図4に示すように分岐して、油路71を介してサーボ弁50の入力ポートに接続されるとともに、油路72を介してサーボピストン60の小径室61に接続される。
【0032】
サーボ弁50には、(油路を介して)油圧ポンプ20、油タンク80およびサーボピストン60が接続されている。また、このサーボ弁50は、操作ロッド52の一端部(右端部)がガバナレバー36の下端部に支持されている。このため、サーボ弁50のスプール51は、ガバナレバー36の回動に伴って(操作ロッド52を介して)、軸方向に摺動変位する。そして、スプール51が図4の右方向に移動すると、油路73が油路71,70を介して油圧ポンプ20に連通する。また、スプール51が図4の左方向に移動すると、油路73が油路74を介して油タンク80に連通する。
【0033】
サーボピストン60の小径室61は、油路72,70を介して油圧ポンプ20に連通している。このため、小径室61には、油路70,72を通って油圧ポンプ20の吐出圧力が常時作用している。一方、サーボピストン60の大径室62は油路73に接続されており、前述したように、ガバナレバー36の回動に伴ってサーボ弁50による圧油の方向の切り換えなどが行われることにより、スプール51および油路71,70を介して油圧ポンプ20に繋がる状態と、スプール51および油路74を介して油タンク80に繋がる状態とに切り換えられる。そして、小径室61と大径室62とに作用する油圧力に応じてサーボピストン60が移動することにより、油圧ポンプ20の斜板21の傾転角を変化させて、圧油の吐出流量を制御することができる。
【0034】
次に、ポンプ制御措置(ガバナ装置)30′の作動について説明する。アクセルレバー18を目標回転数となる所定の位置(図4の(B)の位置)に傾倒してエンジン始動すると、カムシャフト17の回転増加に伴ってガバナウェイト31が遠心力により外方へ開き始めて、コントロールロッド34の右端部を左方向に押動していく。そして、ガバナウェイト31がコントロールロッド34を介してガバナレバー36を押圧する力(ガバナ力)が、ガバナスプリング38の付勢力に打ち勝って、ガバナレバー36の下方部が反時計回り方向に回動して、ガバナレバー36が図3において点線で示す位置に位置する。このとき、ガバナレバー36に作用するガバナ力とガバナスプリング38の付勢力とが互いにつり合い、ガバナレバー36が静止状態を保つようになっている。
【0035】
そして、ガバナレバー36が回動されたことに伴い、サーボ弁50の操作ロッド52が右方向に移動するとともに、スプール51も右方向に移動する。スプール51が右方向に移動すると、油路73と油路71とが連通することにより、サーボピストン60の大径室62が、油路73、スプール51および油路71,70を経由して油圧ポンプ20に繋がって、油圧ポンプ20の吐出圧力がサーボピストン60の大径室62に作用する。一方、サーボピストン60の小径室61にも、油路72,70を経由して油圧ポンプ20の吐出圧力が作用しているが、小径室61と大径室62との面積差によってサーボピストン60は右方向に移動するようになっている。
【0036】
ここで、サーボピストン60が右方向に移動すると、このサーボピストン60とともにサーボ弁50のスリーブ53が連結部54を介して右方向に移動する。このサーボピストン60の移動は、スリーブ53とスプール51の開口の切り欠きが閉じるまで行われ、それが完全に閉じるとサーボピストン60は停止するようになっている。
【0037】
そして、サーボピストン60が右方向へ移動することにより、油圧ポンプ20の斜板21の傾転角が大きくなって最大傾転角(最大押し退け容積)まで移動する。これにより、油圧ポンプ20の吐出流量が最大となって、この最大吐出流量の圧油がブームシリンダ13a等の油圧アクチュエータに供給される。
【0038】
油圧ポンプ20の吐出流量(吐出圧力)の上昇などによりエンジン11の負荷が高くなり、アクセルレバー18により設定した目標回転数よりもエンジン11の実回転数が低下すると、ガバナウェイト31に生じる遠心力が次第に小さくなってガバナウェイト31が閉じていく。このため、ガバナレバー36に作用するガバナスプリング38の付勢力がガバナウェイト31によるガバナ力に打ち勝ち、コントロールロッド34をカムシャフト17側(右方向)に移動させるようにガバナレバー36が時計回り方向に回動する。
【0039】
そして、ガバナレバー36が回動されたことに伴い、サーボ弁50の操作ロッド52が左方向に移動するとともに、スプール51も左方向に移動する。スプール51が左方向に移動すると、油路73が油路74と連通することにより、サーボピストン60の大径室62が、油路73、スプール51および油路74を経由して油タンク80に繋がる。一方、サーボピストン60の小径室61には、油路72,70を経由して油圧ポンプ20の吐出圧力が常時作用しているため、サーボピストン60は左方向に移動し、大径室62の作動油は油タンク80に戻されるようになっている。
【0040】
ここで、サーボピストン60が左方向に移動すると、このサーボピストン60とともにサーボ弁50のスリーブ53が連結部54を介して左方向に移動する。サーボピストン60の移動は、スリーブ53とスプール51の開口の切り欠きが閉じるまで行われ、それが完全に閉じるとサーボピストン60は停止するようになっている。
【0041】
そして、サーボピストン60が左方向に移動することにより、油圧ポンプ20の斜板の傾転角(押し退け容積)が小さくなって圧油の吐出流量が減少される。したがって、エンジン11の負荷が低減してエンジン11の実回転数がアクセルレバー18により設定した目標回転数まで復帰(増加)する。
【0042】
次いで、エンジン11(カムシャフト17)の回転数が復帰すると、ガバナウェイト31に生じる遠心力が増加してガバナウェイト31が外方に開くことにより、ローラ33がコントロールロッド34を介してガバナレバー36の中間部をガバナスプリング38の付勢力に抗して左方向に押動する。これにより、ガバナレバー36がガバナスプリング38の付勢力に抗して反時計回り方向に回動される。このガバナレバー36が回動されたことに伴い、サーボ弁50の操作ロッド52が右方向に移動するとともに、スプール51も右方向に移動する。これにより、油路73と油路71とが連通することになり、サーボピストン60の大径室62が、油路73、スプール51および油路71,70を経由して油圧ポンプ20に繋がって、油圧ポンプ20の吐出圧力がサーボピストン60の大径室62に作用する。一方、サーボピストン60の小径室61にも、油路72,70を経由して油圧ポンプ20の吐出圧力が作用しているが、小径室61と大径室62との面積差によってサーボピストン60は右方向に移動する。
【0043】
そして、サーボピストン60が右方向へ移動することにより、再度、油圧ポンプ20の斜板21を最大傾転角まで移動させることで、油圧ポンプ20の吐出を最大吐出量に増大させる。これにより、油圧ポンプ20は、最大吐出流量の圧油をブームシリンダ13a等の油圧アクチュエータに供給することができる。
【0044】
このように第2実施例のポンプ制御装置30′においても、エンジン負荷が小さいときには油圧ポンプ20の吐出流量を最大にして圧油を供給することができるとともに、エンジン負荷が大きくなると油圧ポンプ20の吐出流量を抑制してエンジン11の負荷を低減させることにより、エンジン11の実回転数を目標回転数まで復帰させて、再び、油圧ポンプ20が最大吐出流量の圧油を供給することができる。すなわち、このような作動がなされることにより、エンジン出力が低下するような高地等で作業を行う場合であっても、エンジン11の過負荷によるエンジンストールを防止しつつ、油圧ポンプ20は適時、油圧アクチュエータ作動のための十分な量(最大流量)の圧油を吐出して油圧アクチュエータに供給することができる。
【0045】
また、第2実施例のポンプ制御装置30′では、サーボピストン60の油圧力により油圧ポンプ20の斜板21を移動させて傾転角を制御することができるため、ガバナレバー36を回動させるガバナ力も比較的小さくてよいため、ガバナウェイト31を軽量化して装置全体の小型コンパクト化に有効である。
【0046】
なお、上述した第2実施例においては、ガバナレバー36の回動に応じて油圧ポンプ20の斜板21の傾転角を制御するポンプ制御部として、サーボ弁50及びサーボピストン60などを用いて構成した例を挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、図5に示すように、比例減圧弁80、パイロットポンプ81、および傾転調整シリンダ82などを用いて構成してもよい。このような構成では、比例減圧弁80がパイロットポンプ81から供給される圧油をプッシュロッド83を介してガバナレバー36の回動による変位量に応じて減圧調整する。そして、比例減圧弁80によって調整されたパイロット圧の圧油を傾転調整シリンダ82に導くことで、この圧油に基づいて傾転調整シリンダ82のピストンを移動させて、油圧ポンプ20の斜板21の傾転角を制御することができるようになっている。これによれば、一般に流通している油圧ポンプを簡単に利用して構成することができるため、製造コストの低減を図ることができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のポンプ制御装置(ガバナ装置)30,30′によれば、比較的簡単な構成により、エンジン軽負荷のときには油圧ポンプ20が最大吐出流量の圧油を油圧アクチュエータに供給するような制御が行われ、エンジン負荷が高くなるときには、油圧ポンプ20の吐出流量を抑制してエンジン出力不足によるエンジンストールを防止しつつ、再び、油圧ポンプ20の吐出流量を増加する(最大にする)制御を行うことができる。したがって、例えば、気圧の低い高地での作業等でエンジン自体の出力が低下するような場合でも、エンジン回転数の変動によって油圧ポンプ20の傾転角(押し退け容積)が制御され、エンジン過負荷によるエンジンストールを回避しながら油圧ポンプ20により十分な吐出流量の圧油を油圧アクチュエータに供給することができる。
【0048】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、建設機械の一例としてクローラ型のパワーショベル車を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、ショベルローダ、油圧クレーン等の他の建設機械であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態に係るポンプ制御装置を備えたクローラ型パワーショベル車を示す側面図である。
【図2】上記パワーショベル車の後方部を示す左側面図である。
【図3】第1実施例に係るポンプ制御装置の構成を示す要部説明図である。
【図4】第2実施例に係るポンプ制御装置の構成を示す要部説明図である。
【図5】異なる実施形態のポンプ制御装置の構成を示す要部説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 クローラ型パワーショベル車(建設機械)
2 車両本体(車体)
11 ディーゼルエンジン(エンジン)
17 カムシャフト(シャフト部材)
18 アクセルレバー
20 油圧ポンプ
21 斜板(容量可変部)
30,30′ ポンプ制御装置
31 ガバナウェイト
34 コントロールロッド(ロッド部材)
36 ガバナレバー
38 ガバナスプリング(バネ部材)
40 傾転調整スライダ(ポンプ制御部)
50 サーボ弁(ポンプ制御部)
60 サーボピストン(ポンプ制御部)
80 比例減圧弁(ポンプ制御部)
81 パイロットポンプ(ポンプ制御部)
82 傾転調整シリンダ(ポンプ制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、前記車体に搭載されアクセルレバーの操作量に応じて目標回転数が設定されるエンジンと、圧油の吐出流量を調整する容量可変部を有し前記エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動する複数の油圧アクチュエータとを有する建設機械のポンプ制御装置において、
前記エンジンに連動回転するシャフト部材に枢支され、前記シャフト部材とともに回転することによって生じる遠心力によりシャフト部材の回転軸に対して外方に拡開可能なガバナウェイトと、
中間部を揺動支点として揺動自在に支持されたガバナレバーと、
前記ガバナレバーの一端部と前記アクセルレバーとの間に取り付けられ、前記ガバナレバーの一端部を前記ガバナウェイト側に引っ張るバネ部材と、
前記シャフト部材の回転軸方向に延びて前記ガバナレバーと前記ガバナウェイトとの間に取り付けられ、前記ガバナウェイトの拡開動作に連動して前記ガバナレバーの一端部を前記ガバナウェイトとは反対側に向かって押動するロッド部材と、
前記ガバナレバーの他端部と前記容量可変部との間に接続されて、前記ガバナレバーの揺動に応じて前記油圧ポンプの容量可変部を制御するポンプ制御部とを備え、
前記エンジンが目標回転数近傍で回転しているときには、前記ガバナウェイトに生じる遠心力の作用により前記ガバナウェイトが前記ロッド部材を介して前記ガバナレバーを一方側に揺動させる押圧力と、前記アクセルレバーの操作量および前記ガバナレバーの揺動量に応じて伸長した前記バネ部材の付勢力とがつり合って、前記ガバナレバーが前記ポンプ制御部を介して、前記油圧ポンプの圧油の吐出を所定の吐出流量に維持するように前記容量可変部を制御し、
前記エンジンの実回転数が目標回転数近傍よりも低下したときには、前記ガバナウェイトの遠心力が低下して前記バネ部材の付勢力により他方側に揺動した前記ガバナレバーが前記ポンプ制御部を介して、前記油圧ポンプの圧油の吐出を前記所定の吐出流量よりも減少させるように前記容量可変部を制御することを特徴とする建設機械のポンプ制御装置。
【請求項2】
前記油圧ポンプの前記容量可変部が、前記油圧ポンプの内部に配設された斜板の傾転角を変化させることにより押し退け容積を変化させて圧油の吐出流量が可変となるように構成され、
前記ポンプ制御部が、前記ガバナレバーの他端部と前記斜板との間に接続されて、前記ガバナレバーの揺動に応じて前記斜板の傾転角を変化させるように構成されることを特徴とする請求項1に記載の建設機械のポンプ制御装置。
【請求項3】
前記油圧ポンプの前記所定の吐出流量とは、前記油圧ポンプの最大吐出流量であることを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械のポンプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−7579(P2010−7579A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168590(P2008−168590)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(000150154)株式会社竹内製作所 (50)
【Fターム(参考)】