説明

建設機械の運転室の防熱構造

【課題】 低廉でかつ簡易な工程で組み立てることができ、またシート側への断熱効果を低減させることもなく、さらにはそれら以外に種々の有用な効果が認められる建設機械の運転室の防熱構造を提供しようとする。
【解決手段】 シートサポート2にファイアウォール機能を持たせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建設機械における運転室の防熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械においては、エンジンなどの発熱体の熱が他の機器や部材に伝わるのを防止するのためにファイアウォールが適宜配置される。運転室とエンジンとの間にも配置されており(特許文献としては、例えば特開平10−96248号)、具体的には、図2に示すような構造となっている。図示のように、ファイアウォール5はエンジン6とシートサポート7との間に配置され、エンジン6からの熱がシート1側に伝達されるのを防止している。
【0003】
建設機械内部は種々の機器が配置されるので、機器間のスペースには余裕がなく、このためファイアウォール5はエンジン6とシートサポート7間をぬうように斜めに配置され、しかも、エンジン関連部品の出っ張りに沿った形状に折曲されながら、エンジン6をカバーするように配置されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−96248号(0003段、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のファイアウォールは曲折された板材が用いられるため、内壁面が凸凹状になり、しかも斜めに配置されているので、エンジンとの間のスペースがラビリンス状になって、そこを通る冷却風がよどみやすく、車両のクーリング性能を低下させていた。
【0006】
また、エンジンとの間のスペースも狭くなりがちで、ファイアウォールへの熱放射による熱流量が大きく、その点でもシート側への防熱効果を低減させていた。
【0007】
また、ファイアウォールのエンジン対向面が凸凹状となっていて、そこに貼着する断熱材もその形状に合わせるために、細切れ状の様々なサイズのものを多数用意して貼付する必要があり、組み立て作業の手間とコストが余計にかかっていた。
【0008】
さらに、細切れ状の断熱材を貼り付けていたので、断熱材片の間に隙間が生じやすく、その分防熱効果が低減していた。
【0009】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、低廉でかつ簡易な工程で組み立てることができ、またシート側への防熱効果を低減させることもなく、さらにはそれら以外に種々の有用な効果が認められる建設機械の運転室の防熱構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、この発明に係る建設機械の運転室の防熱構造は、シートサポートにファイアウォールの機能を持たせたことを特徴とする。
【0011】
本発明では、シートサポートにファイアウォール機能を持たせているので、従来、それらの間に形成されていたスペース分だけクリアランスに余裕ができることになる。それにより、エンジンとシートサポートのファイアウォール部間のスペースにも余裕が生じるので、ファイアウォール部の形状を無理にエンジン形状に沿わせる必要がない。つまり、フラット面に形成することができる。
【0012】
また、シートサポートのファイアウォール部表面がフラットな場合、エンジン対向面に貼着する断熱材も細切れ状のものを張り合わせる必要がない。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、この発明に係る建設機械の運転室の防熱構造によれば、シートサポートのファイアウォール部表面をフラットにすることができ、そのため、エンジンとの間の風路がすっきりし、冷却風はよどむことなく流れて、クーリング性能が向上する。また、エンジンとの間のスペースに余裕ができるため、その余裕分、ファイアウォール部への熱放射による熱流量が減少する。これらにより、ファイアウォール部の防熱効果が低減することなく、エンジンからの熱が効率よく遮断されることになる。
【0014】
また、シートサポートのファイアウォール部表面がフラットな場合、断熱材は大きな矩形状のサイズのものを貼着するだけでよいので、コストが低廉化し、かつ組み立て工程も容易になる。もちろん、断熱材間の隙間が少なくなり、その隙間による防熱効果の低減も有効に防げるものとなっている。
【0015】
これらの効果に加え、次のような効果も認められる。すなわち、エンジンとの間のスペースに余裕が生じるので、シートサポートを多少後ろにずらすことも可能となり、その形態においては、シートの足下のスペースが広くなって、オペレータの操作の便宜が向上する。
【0016】
さらに、シートサポートにファイアウォール機能を持たせたので、それらが単体で配置される場合と比較して剛性が向上することになる。加えて、部品点数削減にも寄与するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の具体的実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、以下の形態例は本発明を具現化した一例に過ぎず、本発明がそれに限定されるものではないことは当然である。
【0018】
図1は建設機械としての油圧ショベルの機体内(運転室後方側)の説明図である。図中、1は運転シート、2はシートサポート、3はシートサポートのファイアウォール部、4はエンジンである。
【0019】
図示のように、本形態例のシートサポート2は、運転室シート1の後方側を覆う座部20と該座部20を支持する支持部21とからなり、該支持部21はシート1の略前半分を支持する直方状支持体であって、この支持により、シート1の略後半分が空スペースとなる。また、支持部21は直方状支持体を縦に配置しており、エンジンに対向する縦壁(エンジン側外面壁)は垂直状となる。
【0020】
シートサポートのファイアウォール部3は、このようなシートサポート2のうち、座部20及び支持部21のエンジン側外面となる(図中の斜線部分)。図示のように、シートサポートのファイアウォール部3はフラットであるので、その表面に貼着する断熱材は大きな矩形状のものを貼着している。また、支持部21のエンジン側外面前は空スペースとなっていることから、図示のように、シートサポートのファイアウォール部3で囲まれた部分は空スペースとなる。
【0021】
このように本形態例では、運転シート1の下方側であって、シートサポートのファイアウォール部3で囲まれた部分が空スペースとなるので、そこにエンジン4の一部が入り込むようにシート1の位置を従来より後方にずらしている。このため、運転シート1が後方にずれたことにより、シート1の前方にスペースができ、オペレータの操縦スペースに余裕(足下空間で150mm拡大)が生じる形態となっている。なお、運転シート1をエンジン4側にずらしたことにより、その距離分、シートサポートのファイアウォール部3とエンジン4との距離が接近することになるが、そもそも本形態例では、シートサポート2がファイアウォール機能を持つため、従来のようにシートサポートとファイアウォールとが別個の場合と比べて、前記空スペースはかなり余裕が生じることになる。このため、シートサポート2を多少エンジン4側にずらしても、従来の構造と比べて両部材3,4間には十分距離があり、むしろ熱放射による伝熱量は従来より減少することになって、防熱効果は向上するものとなっている。なお、本形態例のエンジン4は従来のものよりその筐体が一回り大きいものを想定しているが、それを用いたとしても、シートサポートのファイアウォール部3とエンジン4とのクリアランスは従来より距離があるものとなる。
【0022】
また、シートサポートのファイアウォール部3とエンジン4との間に余裕のスペースが生じるので、風路空間が拡大し、さらにシートサポートのファイアウォール部3表面がエンジン4形状に沿わせる形状となっていない(フラット形状で足りる)ことから、それらの間の風路空間はすっきりしたクリアランスとなって、冷却風がよどみなく流れてクーリング性能も向上する。
【0023】
そして、本形態例では、シートサポート2にファイアウォール機能を持たせたことによって、シートサポート2の剛性が強化され、強度的にも向上する。さらに、部品点数が削減でき、さらにシートサポートのファイアウォール部3に貼着する断熱材は大きな矩形状のものを貼るだけで足りるので、組み立てコストが低廉で済み、また組み立て工程も簡易化することになる。しかも、断熱材間の隙間が生じる余地がなく、その点でも従来の構造と比べて防熱効果が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
この発明は、種々の建設機械に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本形態例に係る防熱構造を示し、運転シート後方の機体内部の説明図である。
【図2】従来の防熱構造を示し、運転シート後方の機体内部の説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 運転シート
2 シートサポート
3 シートサポートのファイアウォール部
4 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートサポートにファイアウォール機能を持たせたことを特徴とする建設機械の運転室の防熱構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−321401(P2006−321401A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147529(P2005−147529)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】