説明

建設機械

【課題】 キャブの後側に十分なスペースを確保できない場合でも、建設機械に2人のオペレータが乗込むことができるようにする。
【解決手段】作業装置4を操作するオペレータが乗込むキャブ13の左側面部13Cに、別のオペレータが乗込む追加キャブ17を隣接して設ける構成とする。これにより、キャブ13の後側に設けられた建屋カバー5等が邪魔となってキャブ13を後方に延在させるだけのスペースを確保できない場合でも、キャブ13の近傍位置に追加キャブ17を配置することができる。従って、追加キャブ17内に乗込んだオペレータは、キャブ13内で操作レバー28等によって作業装置4を操作するオペレータの動作を目視しつつ、当該オペレータに対して作業指示や操作指導を円滑に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に関し、特に運転室を画成するキャブを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械は、自走可能な車体と、該車体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。そして、油圧ショベルの車体は、クローラ式の下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体とからなり、この上部旋回体のベースとなる旋回フレーム上には運転室を画成するキャブが設けられている。
【0003】
ここで、上述のキャブは、通常、前面部、後面部、左側面部、右側面部および天面部によって囲まれたボックス形状をなし、キャブの左側面部には、オペレータがキャブ内に乗降するためのドアが開,閉可能に設けられている。また、キャブ内には、オペレータが着席する運転席、下部走行体を走行させるための走行レバー・ペダル、作業装置等を操作するための操作レバー等が配置されている。
【0004】
そして、キャブ内に乗込んだオペレータは、運転席に着席した状態で走行レバー・ペダルを操作することにより、下部走行体の走行動作を制御し、操作レバーを操作することにより、上部旋回体の旋回動作、作業装置の動作を制御するようになっている。
【0005】
ところで、上述した油圧ショベルは、キャブ内に乗込むオペレータが1人に限られているため、例えば実際に油圧ショベルを操作するオペレータが初心者である場合には、このキャブ内のオペレータに対し、ベテランのオペレータ等がキャブの外部から作業指示や操作指導を行う必要があり、これら作業指示や操作指導を円滑に行うことが困難であるという問題がある。
【0006】
これに対し、前,後方向に延びる縦長の2人乗り用のキャブを備え、この2人乗り用のキャブ内に運転席と補助席とを前,後に並んで設ける構成となったホイールクレーンが提案されている。この従来技術によれば、補助席に着席した別のオペレータは、運転席に着席したオペレータの動作を目視しつつ、当該オペレータに対して容易に作業指示や操作指導を行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】実開平1−172589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来技術によるホイールクレーンは、2人乗り用のキャブを前,後方向に延びる縦長状に形成することにより、当該キャブの後部側に補助席を設けるためのスペースを確保する構成となっている。
【0009】
これに対し、例えば油圧ショベルのように、キャブの後側に設けられた建屋カバー内にエンジン、熱交換機等の機器類が密集した状態で収容されている建設機械においては、キャブの後部側を後方へと延在させるだけのスペースがなく、上述した従来技術の如き縦長な2人乗り用のキャブを設けることが難しいという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、キャブの後側に十分なスペースを確保できない場合でも2人のオペレータが乗込むことができる建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため本発明は、前部側に作業装置が設けられた自走可能な車体と、該車体の前側で左,右方向の一方の角隅位置に設けられ作業装置を操作するオペレータが乗込むキャブとを備えてなる建設機械に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明の特徴は、キャブには車体の左,右方向の一方の側面よりも外側に飛出すように追加キャブを隣接して設け、該追加キャブには別のオペレータが乗込むことができる構成としたことにある。
【0013】
請求項2の発明は、車体はキャブを支持するキャブ支持部をもった車体フレームを備え、該車体フレームにはキャブ支持部から左,右方向に張出す追加フレームを取付け、取外し可能に設け、追加キャブは該追加フレーム上に支持する構成としたことにある。
【0014】
請求項3の発明は、キャブと追加キャブとが互いに隣接した面にはキャブと追加キャブとの間でオペレータが出入りする出入り口を設け、追加キャブには出入り口とは異なる部位に追加キャブに乗降するための乗降口を設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、作業装置を操作するオペレータが乗込むキャブに隣接して追加キャブを設ける構成としたので、この追加キャブ内に乗込んだ別のオペレータは、キャブ内に乗込んで実際に作業装置を操作するオペレータの動作を目視しながら、当該オペレータに対して円滑に作業指示や操作指導を行うことができる。
【0016】
この場合、追加キャブは、車体の左,右方向の一方の側面よりも外側に飛出すようにキャブに隣接して設けられているので、例えばキャブの後側に十分なスペースを確保できない場合でも、当該キャブの近傍部位に確実に追加キャブを配置することができる。また、追加キャブ内のスペースを大きく確保することができ、該追加キャブ内の居住性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、車体フレームのキャブ支持部から左,右方向に張出す追加フレームを設け、この追加フレームによって追加キャブを支持する構成としたので、キャブと追加キャブとを車体フレームによって強固に支持することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、キャブと追加キャブとが互いに隣接する面には出入り口を設け、追加キャブのうち出入り口とは異なる部位には乗降口を設ける構成としたので、乗降口から追加キャブ内に乗込んだオペレータは、出入り口を通じてキャブと追加キャブとの間を迅速に出入りすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
図中、1は油圧ショベルで、該油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。そして、上部旋回体3の前部側には作業装置4が俯仰動可能に設けられ、該作業装置4によって土砂の掘削作業等を行う構成となっている。
【0021】
ここで、上部旋回体3は、図1および図2に示すように、後述の旋回フレーム7と、該旋回フレーム7の前部左側に設けられた後述のキャブ13と、該キャブ13の左側方に隣接して設けられた後述の追加キャブ17と、キャブ13の後側に配設されエンジン、油圧ポンプ等の機器類(いずれも図示せず)を収容した建屋カバー5と、旋回フレーム7の後端部に設けられ作業装置4との重量バランスをとるカウンタウェイト6とにより大略構成されている。
【0022】
7は下部走行体2上に旋回可能に設けられた車体フレームとしての旋回フレームで、該旋回フレーム7は、図3に示すように、厚肉な鋼板等を用いて前,後方向に延びる平板状に形成された底板7Aと、該底板7Aの上面側に立設され左,右方向で対面しつつ前,後方向に延びた左,右の縦板7B,7Cと、左縦板7Bから左側方に張出した複数の張出しビーム7Dと、右縦板7Cから右側方に張出した複数の張出しビーム7Eと、各張出しビーム7Dの先端部に固着され前,後方向に延びた左サイドフレーム7Fと、各張出しビーム7Eの先端部に固着され前,後方向に延びた右サイドフレーム7Gとより大略構成され、強固な支持構造体をなしている。
【0023】
ここで、底板7Aの左前部と左サイドフレーム7Fの前端部との間には略L型の前枠部材7Hが溶接等の手段を用いて固着され、旋回フレーム7の左前部側には、前枠部材7H、左サイドフレーム7F、各張出しビーム7D等によって構成されたキャブ支持部7Jが設けられている。そして、キャブ支持部7Jを構成する前枠部材7H、各張出しビーム7Dの上面側には、複数の防振マウント8,8,…が取付けられ、キャブ支持部7J上には、各防振マウント8を介して後述のキャブ13が支持される構成となっている。
【0024】
9,9,…は旋回フレーム7のキャブ支持部7Jを構成する左サイドフレーム7Fに設けられた複数のねじ座で、該各ねじ座9は、図4に示すように略L型の断面形状をもって形成されている。ここで、各ねじ座9は、略D型の断面形状を有する左サイドフレーム7Fの外側面に溶接等の手段を用いて固着され、前,後方向に間隔をもって配置されている。そして、各ねじ座9は、旋回フレーム7の左サイドフレーム7Fに追加フレーム10を締結する後述のボルト11が螺入されるものである。
【0025】
10は旋回フレーム7のキャブ支持部7Jに取付け、取外し可能に設けられた追加フレームで、該追加フレーム10は、図3および図5に示すように全体として長方形の枠状をなし、キャブ支持部7Jから左側方に張出した状態で左サイドフレーム7Fの長さ方向の中間部から前端部に亘って取付けられ、後述の追加キャブ17を支持するものである。
【0026】
ここで、追加フレーム10は、左サイドフレーム7Fに沿って前,後方向に延びる左,右の縦ビーム10A,10Bと、左,右方向に延びて各縦ビーム10A,10Bの両端部間を連結する前,後の横ビーム10C,10Dと、各横ビーム10C,10D間に位置して左,右の縦ビーム10A,10B間を連結する中間ビーム10Eとにより大略構成されている。
【0027】
そして、図4に示すように、追加フレーム10の右縦ビーム10Bには、左サイドフレーム7Fに設けた各ねじ座9に対応するボルト挿通孔10Fが穿設され、該ボルト挿通孔10Fに挿通したボルト11をねじ座9に螺入することにより、旋回フレーム7の左サイドフレーム7Fに、追加フレーム10が取付け、取外し可能に締結される構成となっている。
【0028】
また、追加フレーム10の角隅部に位置する各横ビーム10C,10Dの上面側には、複数の防振マウント12が取付けられ、追加フレーム10は、各防振マウント12を介して追加キャブ17を支持する構成となっている。
【0029】
13は上部旋回体3の前部側で左,右方向の左角隅位置に設けられたキャブで、該キャブ13は、作業装置4の左側方に並んで旋回フレーム7のキャブ支持部7J上に支持され、作業装置4を操作するオペレータが乗込む運転室を画成するものである。そして、キャブ13は、図5ないし図7に示すように、前面部13A、後面部13B、左側面部13C、右側面部13D、天面部13Eおよび底面部13F等によって囲まれたボックス構造をなし、キャブ13の左側面部13Cは上部旋回体3の左側面を規定している。
【0030】
ここで、図7に示すように、キャブ13の前面部13Aと左,右の側面部13C,13Dとが交わる左,右の前側角隅部には、上,下方向に延びる中空なフロントピラー部13G,13Gが形成され、キャブ13の後面部13Bと左,右の側面部13C,13Dとが交わる左,右の後側角隅部には、上,下方向に延びる中空なリヤピラー部13H,13Hが形成されている。また、左,右の側面部13C,13Dの前,後方向の中間部位には、上,下方向に延びる中空なセンタピラー部13J,13Jが形成されている。
【0031】
そして、キャブ13の前面部13A、後面部13B、左,右の側面部13C,13D、天面部13Eには、ガラス板等からなる窓14がそれぞれ取付けられ、キャブ13内に乗込んだオペレータは、各窓14を通じてキャブ13の外部を見通すことができる構成となっている。
【0032】
15は後述の追加キャブ17と隣接するキャブ13の左側面部13Cに設けられたキャブ側出入り口で、該キャブ側出入り口15は、フロントピラー部13Gとセンタピラー部13Jとの間に位置し、上,下方向に延びる略長方形の開口部として形成されている。この場合、キャブ側出入り口15は、一般的な1人乗り用キャブに設けられる乗降口を利用したものである。
【0033】
16,16,…はキャブ13の左側面部13Cに設けられた複数(例えば4個)のねじ座で、これら各ねじ座16は、図5に示すように、キャブ側出入り口15の角隅部近傍に溶接等の手段を用いて固着されている。そして、各ねじ座16は、キャブ13の左側面部13Cに追加キャブ17を締結する後述のボルト23が螺入されるものである。
【0034】
17はキャブ13の左側面部13Cに隣接して設けられた追加キャブで、該追加キャブ17は、図2等に示すように、キャブ13の左側面部13Cによって規定される上部旋回体3の左側面よりも寸法Lだけ外側に飛出している。そして、追加キャブ17は、旋回フレーム7のキャブ支持部7Jに取付けられた追加フレーム10上に支持され、キャブ13に乗込むオペレータとは異なる他のオペレータが乗込むものである。ここで、追加キャブ17は、図5ないし図7に示すように、前面部17A、後面部17B、左側面部17C、右側面部17D、天面部17Eおよび底面部17F等によって囲まれ、キャブ13よりも一回り小型なボックス構造をなしている。
【0035】
そして、図7に示すように、追加キャブ17の前面部17Aと左,右の側面部17C,17Dとが交わる左,右の前側角隅部には、上,下方向に延びる中空なフロントピラー部17G,17Gが形成され、追加キャブ17の後面部17Bと左,右の側面部17C,17Dとが交わる左,右の後側角隅部には、上,下方向に延びる中空なリヤピラー部17H,17Hが形成されている。また、追加キャブ17の前面部17A、後面部17Bおよび後述のドア21には、ガラス板等からなる窓18がそれぞれ取付けられている。
【0036】
19はキャブ13と隣接する追加キャブ17の右側面部17Dに設けられた追加キャブ側出入り口で、該追加キャブ側出入り口19は、フロントピラー部17Gとリヤピラー部17Hとの間に位置し、キャブ13に設けられたキャブ側出入り口15と等しい形状を有する略長方形の開口部として形成されている。そして、キャブ13と追加キャブ17とは、キャブ側出入り口15と追加キャブ側出入り口19とによって互いに連通し、オペレータは、キャブ側出入り口15と追加キャブ側出入り口19とを通じて、キャブ13と追加キャブ17との間を出入りすることができる構成となっている。
【0037】
20は追加キャブ用出入り口19と対向して追加キャブ17の右側面部17Dに設けられた乗降口で、該乗降口20は、フロントピラー部17Gとリヤピラー部17Hとの間に位置し、上,下方向に延びる略長方形の開口部として形成されている。21は追加キャブ17の右側面部17Dに設けられた乗降用のドアで、該ドア21は乗降口20を開,閉するものである。従って、オペレータは、ドア21を開扉することにより、乗降口20を通じて追加キャブ17に乗降する構成となっている。
【0038】
22,22,…は追加キャブ17の右側面部17Dに穿設された複数(例えば4個)のボルト挿通孔で、該各ボルト挿通孔22は、キャブ13の左側面部13Cに設けた各ねじ座16と対応する位置に形成されている。そして、図5に示すように、追加キャブ17の内部から各ボルト挿通孔22にボルト23を挿通し、該ボルト23をキャブ13の各ねじ座16に螺入することにより、キャブ13の左側面部13Cと追加キャブ17の右側面部17Dとが、隙間なく当接する構成となっている。
【0039】
このとき、追加キャブ17の前面部17Aとキャブ13の前面部13Aとは、左,右方向に延びる同一平面を形成し、追加キャブ17の後面部17Bは、キャブ13の左側面部13Cに設けた窓14よりも前方に位置している。これにより、キャブ13の左側面部13Cに設けた窓14を通じて、キャブ13の左斜め後方の視界を確保することができるように考慮されている。
【0040】
24は追加キャブ側出入り口19の周縁部に形成されたシール取付溝、25は該シール取付溝24内に取付けられたシール部材で、図5および図7に示すように、シール部材25は、キャブ13の左側面部13Cと追加キャブ17の右側面部17Dとが当接したときに、キャブ13の左側面部13Cによって押圧されるものである。
【0041】
これにより、キャブ側出入り口15と追加キャブ側出入り口19の周縁部をシール部材25によって液密に封止し、これらキャブ側出入り口15、追加キャブ側出入り口19を通じて雨、洗浄水等がキャブ13、追加キャブ17内に侵入するのを防止できる構成となっている。
【0042】
26はキャブ13内に設けられた運転席で、該運転席26は、作業装置4を操作するオペレータが着席するものである。そして、図7に示すように、運転席26の前側には、下部走行体2の走行を制御する左,右の走行レバー・ペダル27が設けられ、運転席26の左,右両側には、上部旋回体3の旋回動作、作業装置4の動作を制御する左,右の操作レバー28等が設けられている。また、運転席26の後側には、空調ユニット(図示せず)を覆うと共に小物類を収容するためのリアトレイ29が設けられている。
【0043】
30は追加キャブ17内に設けられた補助席で、該補助席30は、キャブ13内の運転席26に着席したオペレータとは別のオペレータが着席するものである。これにより、補助席30に着席した別のオペレータは、運転席26に着席して作業装置4等を操作するオペレータの動作を目視しながら、当該オペレータに対して円滑に作業指示や操作指導を行うことができる構成となっている。
【0044】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、以下、この油圧ショベル1を用いて土砂等の掘削作業を行う場合について述べる。
【0045】
まず、オペレータは、追加キャブ17に設けたドア21を開扉することにより、乗降口20から追加キャブ17内に乗込んだ後、追加キャブ側出入り口19、キャブ側出入り口15を通じてキャブ13内へと移動し、該キャブ13内に設けられた運転席26に着席する。
【0046】
一方、別のオペレータは、ドア21を開扉して乗降口20から追加キャブ17内に乗込み、該追加キャブ17内に設けられた補助席30に着席した後、ドア21を閉扉して乗降口20を閉じる。
【0047】
この状態で、運転席26に着席したオペレータは、左,右の走行レバー・ペダル27を操作することにより油圧ショベル1を走行させ、左,右の操作レバー28を操作することにより上部旋回体3を旋回させつつ作業装置4を俯仰動させ、該作業装置4によって土砂等の掘削作業を行う。
【0048】
このとき、キャブ13の左側方には追加キャブ17が隣接して設けられているので、この追加キャブ17内に乗込んだ別のオペレータは、キャブ13内で実際に操作レバー28等を操作するオペレータの動作を目視しつつ、当該オペレータに対して円滑に作業指示や操作指導を行うことができる。
【0049】
従って、例えばキャブ13内で操作レバー28等を操作するオペレータが、油圧ショベル1の操作に不慣れな初心者であったとしても、当該オペレータは、追加キャブ17内に乗込んだベテランのオペレータから具体的な作業指示や操作指導を受けることができ、油圧ショベル1による土砂等の掘削作業を効率良く行うことができる。
【0050】
この場合、本実施の形態によれば、追加キャブ17は、キャブ13の左側面部13Cによって規定される上部旋回体3の左側面よりも寸法Lだけ外側に飛出して配置されている。これにより、キャブ13の後側に設けられた建屋カバー5等が邪魔となってキャブ13を後方に延在させるだけのスペースを確保できない場合でも、当該キャブ13の近傍部位に確実に追加キャブ17を配置することができる。
【0051】
また、追加キャブ17は、キャブ13のうち作業装置4とは反対側となる左側面部13Cに隣接して設けられているので、追加キャブ17と作業装置4との干渉を確実に防止することができる。このため、追加キャブ17内のスペースを大きく確保することができ、該追加キャブ17内の居住性を高めることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、旋回フレーム7の左サイドフレーム7Fに、該左サイドフレーム7Fから左側方に張出す追加フレーム10を取付け、この追加フレーム10によって追加キャブ17を支持する構成としたので、キャブ13と追加キャブ17とを、旋回フレーム7によって強固に支持することができる。
【0053】
さらに、本実施の形態によれば、互いに隣接するキャブ13の左側面部13Cと追加キャブ17の右側面部17Dとに、それぞれキャブ側出入り口15と追加キャブ側出入り口19とを設け、かつ、追加キャブ17の左側面部17Cには乗降口20を設ける構成としている。これにより、乗降口20から追加キャブ17内に乗込んだオペレータは、キャブ側出入り口15と追加キャブ側出入り口19とを通じて、キャブ13と追加キャブ17との間を迅速に出入りすることができる。
【0054】
しかも、キャブ13のキャブ側出入り口15は、一般的な1人乗り用のキャブに設けられる乗降口を利用したものであるから、例えば油圧ショベルに搭載された既存のキャブから乗降用のドアを取外すことにより、当該キャブを本実施の形態によるキャブ13として有効に利用することができる。
【0055】
なお、上述した実施の形態では、追加キャブ17の前,後方向の長さ寸法を、キャブ13の前,後方向の長さ寸法よりも小さく形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図8に示す変形例のように、キャブ13とほぼ等しい前,後方向の長さ寸法を有する追加キャブ17′を形成してもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、追加キャブ17の前面部17Aと、キャブ13の前面部13Aとが、左,右方向に延びる同一平面を形成する場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図9に示す他の変形例のように、追加キャブ17″の前面部17A″を、キャブ13の前面部13Aから左後方へと傾斜する傾斜面として構成してもよい。この場合には、上部旋回体3の旋回動作時に、追加キャブ17″の左角隅部が周囲の立木等に干渉するのを抑えることができる。
【0057】
また、上述した実施の形態では、追加キャブ17の左側面部17Cに乗降口20を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば追加キャブ17の後面部17Bに乗降口を設ける構成としてもよい。
【0058】
さらに、上述した実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例に挙げて説明している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等のキャブを備えた他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態が適用された油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】油圧ショベルを上方から拡大して示す平面図である。
【図3】図1中の旋回フレームと追加フレームを示す平面図である。
【図4】旋回フレーム、ねじ座、追加フレーム等を図3中の矢示IV−IV方向からみた拡大断面図である。
【図5】旋回フレーム、追加フレーム、キャブ、追加キャブ等を示す分解斜視図である。
【図6】キャブの左側方に追加キャブを取付けた状態を示す斜視図である。
【図7】キャブ内に配置された運転席、操作レバー、追加キャブ内に配置された補助席等を図6中の矢示VII−VII方向からみた拡大断面図である。
【図8】追加キャブの変形例を示す図6と同様な斜視図である。
【図9】追加キャブの他の変形例を示す図6と同様な斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
4 作業装置
7 旋回フレーム(車体フレーム)
7J キャブ支持部
10 追加フレーム
13 キャブ
13C 左側面部
15 キャブ側出入り口(出入り口)
17,17′,17″ 追加キャブ
17C 左側面部
17D 右側面部
19 追加キャブ側出入り口(出入り口)
20 乗降口
26 運転席
30 補助席

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部側に作業装置が設けられた自走可能な車体と、該車体の前側で左,右方向の一方の角隅位置に設けられ前記作業装置を操作するオペレータが乗込むキャブとを備えてなる建設機械において、
前記キャブには前記車体の左,右方向の一方の側面よりも外側に飛出すように追加キャブを隣接して設け、該追加キャブには別のオペレータが乗込むことができる構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記車体は前記キャブを支持するキャブ支持部をもった車体フレームを備え、該車体フレームには前記キャブ支持部から左,右方向に張出す追加フレームを取付け、取外し可能に設け、前記追加キャブは該追加フレーム上に支持する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記キャブと追加キャブとが互いに隣接した面には前記キャブと追加キャブとの間でオペレータが出入りする出入り口を設け、前記追加キャブには前記出入り口とは異なる部位に前記追加キャブに乗降するための乗降口を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−56375(P2006−56375A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239771(P2004−239771)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】