説明

建設機械

【課題】 隔壁と吸気配管との間からエンジン側の暖気や音が漏れるのを防止し、熱交換器の冷却効率、エンジンの運転効率を向上し、作業音量を小さくする。
【解決手段】 エアクリーナ室15や外部に接する隔壁17は、例えばポリウレタン樹脂を用いて柔軟性および弾性をもって形成した上で、この隔壁17の配管挿通孔17Aに挿通する吸気配管19の途中には、半径方向外向きに突出した膨出部20を設ける構成としている。従って、吸気配管19を隔壁17の配管挿通孔17Aに挿通し、膨出部20を配管挿通孔17Aに配置することにより、配管挿通孔17Aに膨出部20を密着することができる。これにより、隔壁17の配管挿通孔17Aと吸気配管19との間を確実にシールすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上部旋回体の旋回フレームにエンジンが搭載された油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、土砂の掘削作業等に用いられる油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの左前側に設けられオペレータが搭乗するキャブと、前記旋回フレームの後側に横置き状態で搭載されたエンジンと、該エンジンに設けられ回転することにより外側から内部のエンジンに向けて冷却風を発生する冷却ファンと、該冷却ファンに対面して設けられたラジエータ、オイルクーラ等の熱交換器とにより大略構成されている。
【0004】
また、エンジンには、その吸気側に接続して吸気配管が設けられ、該吸気配管の先端には、前記エンジンが吸込む空気に含まれるダストを分離して空気を清浄化するエアクリーナが取付けられている。
【0005】
さらに、熱交換器の周囲には、該熱交換器を流通して温度上昇したエンジン側の暖気が該熱交換器の外側に戻らないように、熱交換器の外側位置と内側位置との間を仕切る隔壁を設けている。また、隔壁は、例えば樹脂材料を用いた発泡材からなり、吸気配管が貫通されている(例えば、特許文献1参照)。これにより、吸気配管の先端側を熱交換器の外側位置に配置できるから、該吸気配管の先端側に取付けられたエアクリーナは、冷えた外気を吸込むことができる。
【0006】
【特許文献1】特開2000−211378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した特許文献1では、エアクリーナを熱交換器の外側位置に配置するために、発泡樹脂材料からなる隔壁に吸気配管を貫通させる構成としている。しかし、油圧ショベルは、走行時、作業時に振動するものであり、旋回フレームに対してエンジンを搭載するときには、許容範囲内で位置ずれを生じる。
【0008】
従って、隔壁に吸気配管を貫通させただけでは、振動や位置ずれによって吸気配管と隔壁との間に隙間が形成されてしまう。これにより、エンジン側の暖気が隙間を通って熱交換器の外側に戻ってしまい、熱交換器の冷却効率、エンジンの運転効率が低下するという問題がある。また、隙間を通ってエンジン側の音が漏れてしまい、作業音量が大きくなるという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、隔壁と吸気配管との間からエンジン側の暖気や音が漏れるのを防止することにより、熱交換器の冷却効率、エンジンの運転効率を向上し、作業音量を小さくできるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による建設機械は、支持構造体をなすフレームと、該フレームに搭載され油圧ポンプと冷却ファンを駆動するエンジンと、前記冷却ファンに対面して設けられ冷却風により油圧ポンプを流れる作動油とエンジンを冷却する冷却水を含む流体を冷却する熱交換器と、該熱交換器を流通して温度上昇したエンジン側の暖気が該熱交換器の外側に戻らないように熱交換器を挟んでエンジン側空間とその反対側空間との間を仕切る隔壁と、前記エンジンの吸気側に接続されエンジンに向けて空気が流通する吸気配管とを備えてなる。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記隔壁は、前記吸気配管が挿通する配管挿通孔を有する柔軟な弾性体として形成し、前記吸気配管の途中には、前記隔壁の配管挿通孔との間をシールする膨出部を設け、該膨出部を前記隔壁の配管挿通孔の周囲に密着させる構成としたことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記膨出部は、前記隔壁の配管挿通孔よりも大径に形成し、前記隔壁の配管挿通孔の周囲に押付ける構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記隔壁の近傍で前記吸気配管に沿う位置には、前記吸気配管の膨出部を前記隔壁の配管挿通孔の位置に配置した状態で該吸気配管を前記フレーム側の部材に対して固定する配管固定手段を設ける構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記エンジンの前側には、前記フレームの左,右方向に延びて前記エンジン側空間をエンジン室として画成する仕切板を設け、該仕切板の前側に位置して前記フレーム上にオペレータが搭乗するキャブを設け、前記隔壁は、前記仕切板と前記キャブの後面との間を閉塞する位置に設け、前記吸気配管は、前記仕切板と前記キャブとの間を前記隔壁を貫通して左,右方向に延在させる構成としたことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、隔壁は柔軟な弾性体として形成した上で、吸気配管が挿通する配管挿通孔を設けている。また、吸気配管の途中には、隔壁の配管挿通孔との間をシールする膨出部を設ける構成としている。従って、吸気配管を隔壁の配管挿通孔に挿通したときには、膨出部を隔壁の配管挿通孔の周囲に密着させることができる。
【0016】
この結果、膨出部は、隔壁の配管挿通孔と吸気配管との間を確実にシールすることができる。これにより、エンジン側の暖気や音は、配管挿通孔を通って熱交換器の外側に位置する反対側空間に漏れることはないから、熱交換器による流体の冷却効率、エンジンの運転効率を向上することができる。また、作業時の音量も小さくでき、静粛性を高めることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、膨出部を隔壁の配管挿通孔よりも大径に形成しているから、隔壁の配管挿通孔に吸気配管を挿通したときには、膨出部を配管挿通孔の周囲に押付けることができる。これにより、配管挿通孔の周囲の隔壁を弾性変形させて膨出部を密着することができる。従って、建設機械が走行時、作業時に振動したり、フレームに対するエンジンの搭載位置がずれている場合でも、前記隔壁の配管挿通孔と吸気配管との間を確実にシールすることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、隔壁の近傍で吸気配管に沿う位置には、該吸気配管の膨出部を隔壁の配管挿通孔の位置に配置した状態で、該吸気配管をフレーム側の部材に対して固定する配管固定手段を設けている。これにより、吸気配管の膨出部は、隔壁の配管挿通孔の位置に正確に配置することができ、シール効果を長期に亘って維持することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、隔壁は、エンジンの前側をフレームの左,右方向に延びる仕切板と該仕切板の前側に位置するキャブの後面との間を閉塞する位置に設け、吸気配管は、前記仕切板と前記キャブとの間を隔壁を貫通して左,右方向に延在させる構成としている。これにより、隔壁は、仕切板とキャブの後面との間で暖気やエンジン音を遮断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による建設機械として、クローラ式の下部走行体を備えた油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
まず、図1ないし図7は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械としての油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置4とにより大略構成されている。また、上部旋回体3は、図2、図3に示す如く、後述の旋回フレーム5、キャブ6、エンジン8、冷却ファン11、熱交換器12、隔壁17、吸気配管19等により構成されている。
【0022】
5は上部旋回体3のベースをなす旋回フレームである。この旋回フレーム5は、図3に示す如く、前,後方向に延びる厚肉な底板5Aと、該底板5A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左縦板5B,右縦板5Cと、該各縦板5B,5Cから左,右方向の外向きに延びた複数本の張出しビーム5Dと、左,右方向の外側に位置して各張出しビーム5Dの先端に取付けられ、前,後方向に延びた左サイドフレーム5E,右サイドフレーム5Fとにより大略構成されている。
【0023】
6は旋回フレーム5の左前側に搭載されたキャブ(図1、図2参照)で、該キャブ6は、オペレータが搭乗するものである。また、キャブ6は、前面部6A、後面部6B、左側面部6C、右側面部6D、上面部6Eによってボックス形状をなし、その内部には、オペレータが着座する運転席、各種操作レバー(いずれも図示せず)等が配設されている。ここで、キャブ6の後面部6Bは、図1中に点線で示す如く、後述の配管室16をエアクリーナ室15の前側に形成するために、下側部分が前側に湾曲した凹面部6Fとなっている。
【0024】
7は旋回フレーム5の後端側に設けられたカウンタウエイトで、該カウンタウエイト7は、旋回フレーム5を構成する左,右の縦板5B,5Cの後端部に取付けられている。そして、カウンタウエイト7は、作業装置4に対して上部旋回体3全体の重量バランスをとるものである。また、カウンタウエイト7の前側には、後述のエンジン8、熱交換器12等が配置されている。
【0025】
8は旋回フレーム5の後側に横置き状態で搭載された動力源をなすエンジンである。このエンジン8は、機械室の1つを構成する後述のエンジン室14内に収容されている。また、エンジン8の上部前側には、図3に示すように、エキゾーストマニホールド8Aに接続して過給機(ターボチャージャ)8Bが設けられ、該過給機8Bの排気出口には排気管9が接続されている。一方、過給機8Bの吸気入口には、後述の吸気配管19が接続され、吸気出口は後述する熱交換器12のインタクーラ12Cに接続されている。また、エンジン8の右側には、該エンジン8によって駆動されることにより圧油を吐出する油圧ポンプ10が取付けられている。
【0026】
11はエンジン8の左側に位置して出力軸に設けられた冷却ファンである。この冷却ファン11は、エンジン8を動力源として回転駆動されることにより、外側から内部のエンジン8に向けて冷却風を発生するものである。詳しくは、冷却ファン11は、エンジン8と一緒に回転することにより、外部に面した後述のエアクリーナ室15に外気を流入させ、この外気を冷却風として熱交換器12を介して内部のエンジン室14に向け流通させるものである。
【0027】
12はエンジン8の左側に位置し冷却ファン11に対面して配設された熱交換器である。この熱交換器12は、例えば作動油を冷却するオイルクーラ12Aと、エンジン8の冷却水を冷却するラジエータ12Bと、エンジン8の過給機8Bによって過給した空気を冷却するインタクーラ12Cにより構成されている。また、オイルクーラ12A、ラジエータ12Bおよびインタクーラ12Cは、冷却風の流れ方向に対して並列に配置されている。一方、熱交換器12は、エンジン室14とエアクリーナ室15とを仕切る仕切部材としても機能している。また、熱交換器12には、空調装置の室外機の一部を構成し冷媒の熱を放出するコンデンサ(図示せず)等が設けられている。
【0028】
13はエンジン8の前側に位置して左,右方向に延びて設けられた仕切板を示している。この仕切板13は、、熱交換器12の前部をエンジン8の左端から該熱交換器12を越える位置まで左側に延びた左側仕切壁13Aと、エンジン8の前側に左,右方向に延びて設けられた右側仕切壁13Bとにより大略構成されている。また、右側仕切壁13Bの左側には、図4に示す如く、後述する吸気配管19が通る通し孔13Cが形成されている。
【0029】
また、仕切板13は、熱交換器12の前端部を左,右方向に延びて設けられることにより、熱交換器12の右側にエンジン8、油圧ポンプ10等を収容するエンジン側空間としてのエンジン室14を画成している。一方、熱交換器12を挟んでエンジン室14の反対側には、反対側空間としてのエアクリーナ室15を画成している。これにより、上流側のエアクリーナ室15に流入した外気が熱交換器12を通過して下流側のエンジン室14に向け流通する。
【0030】
また、仕切板13の左側仕切壁13Aは、キャブ6の凹面部6F(後面部6B)との間に配管室16を画成し、該配管室16には、後述の吸気配管19とエアクリーナ24の一部が配置されている。さらに、仕切板13の左側仕切壁13A前面には、後述の隔壁17と配管固定バンド22が取付けられている。
【0031】
ここで、エンジン8の運転中には、エンジン室14内の暖気が仕切板13の通し孔13Cを通って直接的に漏れ出たり、仕切板13を伝って間接的に漏れ出たりする。そして、このエンジン室14から漏れ出た暖気は、配管室16を通ってエアクリーナ24が空気を吸込むエアクリーナ室15に戻る虞があり、エアクリーナ室15に暖気が流れると、熱交換器12による流体の冷却効率、エンジン6の運転効率が低下してしまう。また、暖気と同様の経路からエンジン6の運転音も漏れ出てしまう。そこで、配管室16には、エンジン室14側の暖気等がエアクリーナ室15に戻らないように後述の隔壁17を設けている。
【0032】
17は仕切板13の左側仕切壁13A前面に設けられた隔壁を示している。この隔壁17は、エアクリーナ室15から熱交換器12を通って温度上昇したエンジン室14側の暖気が、配管室16を通ってエアクリーナ室15に戻らないように配管室16を左,右に仕切っている。また、隔壁17は、押圧したときに変形することができる柔軟性と、押圧した部材に対し反発して密着する弾性力とをもった材料、例えばウレタン系樹脂、スチレン系樹脂等の各種の発泡材、あるいはウレタン系樹脂、シリコン系樹脂等の各種のゴム材、好ましくはウレタン系樹脂を用いた発泡材、ゴム材からなり、十分に変形することができる所定の厚さ寸法をもった板状体として形成されている。
【0033】
また、隔壁17は、上側部分がキャブ6の凹面部6Fに対応するように斜めに形成され、下側部分が旋回フレーム5の形状、配管、配線類の取回し等に対応するために、左側に向けてステップ状に屈曲している。この場合、周囲に障害物がない場合には、隔壁17は上,下方向に真直ぐに形成することができる。
【0034】
一方、隔壁17には、上,下方向の途中部位で仕切板13寄り位置に配管挿通孔17Aが形成されている。この配管挿通孔17Aは、後述する吸気配管19の通常部分(膨出部20以外の部分)が挿通するもので、この部分の直径寸法とほぼ同等の内径寸法d(図6参照)をもって円形に開口している。さらに、隔壁17は、左側の端面が吸気配管19の膨出部20が押付けられる押付け面17Bとなり、反対に位置する右側の端面がサポート面17Cとなっている。
【0035】
18は隔壁17のサポート面17Cに対面して取付けられたサポート板である。このサポート板18は、強度を有する鋼板等からなり、隔壁17を膨出部20の押付け面17Bと反対側から保持している。また、サポート板18には、隔壁17の配管挿通孔17Aに対応して開口18Aが設けられている。そして、サポート板18は、吸気配管19の膨出部20を隔壁17の押付け面17Bに押付けた場合に、隔壁17が逃げないように反対側から押えるものである。これにより、隔壁17を確実に変形させて吸気配管19の膨出部20を密着することができる。
【0036】
19はエンジン8の吸気側に接続された吸気配管で、該吸気配管19は、エンジン8に向けて空気を流通するもので、配管室16を左,右方向に延びて設けられている。そして、吸気配管19の基端側は、仕切板13の通し孔13Cを通してエンジン室14内に侵入し、エンジン8を構成する過給機8Bの吸気側に接続されている。一方、吸気配管19の先端側はエアクリーナ室15内で後述のエアクリーナ24に接続されている。
【0037】
また、吸気配管19は、長さ方向の中間部分が仕切板13の左側仕切壁13Aに沿って左,右方向に真直ぐに延びた直線管部19Aとなっている。この直線管部19Aが隔壁17の配管挿通孔17Aとサポート板18の開口18Aに挿通している。なお、吸気配管19は、少なくとも直線管部19Aが金属配管として形成されている。
【0038】
20は吸気配管19の途中部位となる直線管部19Aに設けられた膨出部を示している。この膨出部20は、配管挿通孔17Aの内径寸法dよりも大径な外形寸法Dをもって形成されている(D>d)。即ち、膨出部20の加工手段の1つについて述べると、金属配管の一部を全周に亘って半径方向外側に山形状に突出させることにより一体的な鍔部として形成されている。これにより、膨出部20は、隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲に押付けることにより、この周囲の隔壁17を変形させて密着することができ、隔壁17の配管挿通孔17Aとの間を気密にシールすることができる。
【0039】
21は膨出部20よりもエンジン8側に位置して吸気配管19の直線管部19Aに設けられた固定用凹溝である。この固定用凹溝21は、例えば金属配管の一部を全周に亘って凹陥させることにより一体的な環状凹溝として形成されている。そして、固定用凹溝21は、後述の配管固定バンド22が嵌合するもので、幅方向の中心部が該配管固定バンド22による固定位置となっている。
【0040】
22は吸気配管19の直線管部19Aに対応するように仕切板13の左側仕切壁13Aに設けられた配管固定手段としての配管固定バンドを示している。この配管固定バンド22は、吸気配管19の膨出部20を隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲に押付けた状態で該吸気配管19を固定するものである。具体的には、配管固定バンド22は、吸気配管19の固定用凹溝21に嵌合することにより、該吸気配管19を左,右方向(直線管部19Aの軸方向)に位置決め固定することができる。そして、配管固定バンド22は、Ω状に曲げ加工された板材からなり、その両端部をボルト23を用いて旋回フレーム5側の部材となる仕切板13の左側仕切壁13Aに取付ける構成となっている。
【0041】
ここで、第1の実施の形態では、配管固定バンド22を、吸気配管19の膨出部20が押付けられる隔壁17の押付け面17Bと反対側、即ち、サポート面17C側(右側)に配置している。そこで、配管固定バンド22による固定位置から隔壁17の押付け面17Bまでの距離寸法L1は、吸気配管19の固定用凹溝21の固定位置から膨出部20までの距離寸法L2よりも大きな寸法に設定されている(L1>L2)。
【0042】
24は吸気配管19の先端側(上流側)に取付けられた遠心分離型のエアクリーナである。このエアクリーナ24は、吸気配管19を通じてエンジン8に供給される空気中のダストを遠心分離することにより、この空気を清浄化するものである。ここで、エアクリーナ24は、熱交換器12の外側位置となるエアクリーナ室15に配置され、その空気の吸込口24Aは、冷えた外気が流入するエアクリーナ室15に開口している。
【0043】
25は旋回フレーム5上に設けられた外装カバーを示している。この外装カバー25は、エンジン8、油圧ポンプ10、熱交換器12等の上側を覆うエンジンカバー25Aと、熱交換器12を左側から覆う左側面カバー25Bと、油圧ポンプ10を右側から覆う右側面カバー(図示せず)と、右前カバー25C等により構成されている。ここで、エンジンカバー25Aはエンジン室14とエアクリーナ室15の上側を閉塞し、左側面カバー25Bはエアクリーナ室15の左側を閉塞し、右側面カバーはエンジン室14の右側を閉塞している。
【0044】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、吸気配管19の取付手順について説明する。
【0045】
まず、吸気配管19を形成する直線管部19Aの固定用凹溝21側を、隔壁17の押付け面17B側から配管挿通孔17A、サポート板18の開口18Aに挿入する。そして、吸気配管19の膨出部20を配管挿通孔17Aの周囲の隔壁17に押付け、図5に示すように、隔壁17を変形させつつ膨出部20を所定位置に配置する。この状態で、固定用凹溝21に配管固定バンド22を嵌合し、該配管固定バンド22をボルト23を用いて仕切板13の左側仕切壁13Aに固定する。
【0046】
これにより、吸気配管19は、鍔状の膨出部20を隔壁17を弾性変形させつつ該隔壁17に密着するから、隔壁17と吸気配管19とが相対的に振動を生じたり、組付け時に位置ずれが生じていた場合でも、吸気配管19と隔壁17の配管挿通孔17Aとの間に隙間が形成されることはない。従って、隔壁17の配管挿通孔17Aを通ってエンジン8側の暖気がエアクリーナ室15側に戻ることはなく、エンジン音が外部に漏れることもない。
【0047】
次に、第1の実施の形態による油圧ショベル1の動作について説明すると、オペレータは、上部旋回体3のキャブ6に搭乗し、走行用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、作業用の操作レバー(図示せず)を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0048】
このように、第1の実施の形態によれば、エアクリーナ室15や外部に接する隔壁17は、例えばウレタン系樹脂を用いて柔軟性および弾性をもって形成した上で、この隔壁17の配管挿通孔17Aに挿通する吸気配管19の途中には、膨出部20を設ける構成としている。
【0049】
従って、吸気配管19を隔壁17の配管挿通孔17Aに挿通し、膨出部20を配管挿通孔17Aに配置することにより、配管挿通孔17Aに膨出部20を密着することができる。
【0050】
この結果、隔壁17の配管挿通孔17Aと吸気配管19との間を確実にシールすることができる。これにより、エンジン室14から漏れ出た暖気や音は、配管挿通孔17Aを通ってエアクリーナ室15や外部に漏れることはないから、熱交換器12による流体の冷却効率、エンジン8の運転効率を向上することができる。また、作業時の音量も小さくでき、静粛性を高めることができる。
【0051】
しかも、膨出部20は、隔壁17の配管挿通孔17Aの内径寸法dよりも大きな外径寸法Dをもって大径に形成しているから、膨出部20を配管挿通孔17Aの周囲に押付けることにより、配管挿通孔17Aの周囲の隔壁17を弾性変形させて膨出部20を効果的に密着することができる。これにより、油圧ショベル1が走行時、作業時に振動したり、旋回フレーム5に対するエンジン8の搭載位置がずれている場合でも、隔壁17の配管挿通孔17Aと吸気配管19との間を確実にシールすることができる。
【0052】
また、仕切板13には、吸気配管19の膨出部20を隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲に押付けた状態で、該吸気配管19を固定する配管固定バンド22を設けている。これにより、吸気配管19の膨出部20は、隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲に常時押付けた状態とすることができ、シール効果を長期に亘って維持することができる。
【0053】
一方、エンジン室14の前側を画成する仕切板13を設け、隔壁17は、仕切板13とキャブ6の後面部6B(凹面部6F)との間の配管室16を閉塞するものとした。これにより、隔壁17は、配管室16でエアクリーナ室15に戻る暖気や外部に漏れるエンジン音を遮断することができる。
【0054】
また、配管固定バンド22は、吸気配管19の膨出部20が押付けられる隔壁17の押付け面17Bと反対側に配置しているから、配管固定バンド22による固定位置から隔壁17の押付け面17Bまでの距離寸法L1は、吸気配管19の固定用凹溝21の固定位置から膨出部20までの距離寸法L2よりも大きな寸法に設定している。これにより、配管固定バンド22によって吸気配管19を固定したときには、吸気配管19の膨出部20を隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲(押付け面17B)に押付けた状態とすることができる。
【0055】
さらに、隔壁17には、吸気配管19の膨出部20を押付ける押付け面17Bと反対側のサポート面17Cに対面して強度を有するサポート板18を設け、該サポート板18には、隔壁17の配管挿通孔17Aに対応して開口18Aを設ける構成としている。これにより、膨出部20を隔壁17の押付け面17Bに押付けた場合に、サポート板18は、隔壁17が逃げないように反対側から押えることができるから、隔壁17を確実に変形させて膨出部20を効果的に密着することができ、高いシール性を得ることができる。
【0056】
次に、図8ないし図10は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、配管固定手段を、吸気配管の膨出部が押付けられる隔壁の押付け面側に配置する構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
図8において、31は第2の実施の形態による吸気配管を示している。この吸気配管31は、第1の実施の形態による吸気配管19とほぼ同様に、その直線管部31Aに膨出部32と固定用凹溝33が形成されている。しかし、第2の実施の形態による吸気配管31は、後述の配管固定バンド34が隔壁17の押付け面17B側(左側)に配置されていることに対応し、膨出部32が右側に配置され、固定用凹溝33が左側に配置されている点で、第1の実施の形態による吸気配管19と相違している。
【0058】
34は仕切板13の左側仕切壁13Aに設けられた第2の実施の形態による配管固定手段としての配管固定バンドを示している。この配管固定バンド34は、第1の実施の形態による配管固定バンド22とほぼ同様に、吸気配管31の膨出部32を隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲に押付けた状態で、固定用凹溝33に嵌合することにより、該吸気配管31を左,右方向(直線管部31Aの軸方向)に位置決め固定するものである。
【0059】
しかし、第2の実施の形態による配管固定バンド34は、吸気配管31の膨出部32が押付けられる隔壁17の押付け面17B側に配置されている点で、第1の実施の形態による配管固定バンド22と相違している。この場合、図9、図10に示す如く、配管固定バンド34による固定位置から隔壁17の押付け面17Bまでの距離寸法L3は、吸気配管31の固定用凹溝33の固定位置から膨出部32までの距離寸法L4よりも大きな寸法に設定されている(L3>L4)。
【0060】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
特に、第2の実施の形態では、配管固定バンド34は、吸気配管31の膨出部32が押付けられる隔壁17の押付け面17B側に配置しているから、配管固定バンド34による固定位置から隔壁17の押付け面17Bまでの距離寸法L3は、吸気配管31の固定用凹溝33の固定位置から膨出部32までの距離寸法L4よりも大きな寸法に設定している。これにより、配管固定バンド34によって吸気配管31を固定したときには、吸気配管31の膨出部32を隔壁17の配管挿通孔17Aの周囲(押付け面17B)に押付けて暖気や音を遮断することができる。
【0062】
なお、第1の実施の形態では、吸気配管19は、その直線管部19Aを金属配管として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば吸気配管全体を金属配管または樹脂配管として形成する構成としてもよい。この構成は第2の実施の形態にも同様に適用することができるものである。
【0063】
また、図11に示す第1の変形例のように、吸気配管41の直線管部41Aを樹脂配管として形成した場合、直線管部41Aの周囲に樹脂を盛り付けるように膨出部42を形成してもよい。また、直線管部41Aの周囲に所定の間隔をもって鍔部43Aを形成することにより、該各鍔部43A間に固定用凹溝43を形成してもよい。この第1の変形例では、直線管部41A内から段差を排除できるから、エンジン8に向けて空気を効率よく供給することができる。
【0064】
また、図12に示す第2の変形例のように、吸気配管51の直線管部51Aを金属配管として形成し、直線管部51Aの一部を全周に亘って凹陥させることにより膨出部取付溝52を形成する。そして、この膨出部取付溝52に樹脂材料からなる断面山形状の膨出部53を取付け、所定の間隔をもって固定用凹溝54を形成する構成としてもよい。
【0065】
また、図13に示す第3の変形例のように、吸気配管61を途中で配管部61Aと配管部61Bとの2つに分割し、別個に設けた膨出部62を該各配管部61A,61B間にフランジ接続する構成としてもよい。この第3の変形例では、膨出部62から所定の間隔をもって離間した配管部61Aに固定用凹溝63を形成した場合を例示している。
【0066】
また、第1の実施の形態では、吸気配管19に設けた膨出部20は、隔壁17の配管挿通孔17Aの内径寸法dよりも大径な外形寸法Dをもって形成し、配管挿通孔17Aの周囲に押付ける構成とした場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、膨出部を隔壁の配管挿通孔の内径寸法とほぼ同径な外径寸法をもって形成してもよい。この場合でも、膨出部を配管挿通孔に密着させてシールすることができる。これらの構成は第2の実施の形態、各変形例にも同様に適用することができるものである。
【0067】
一方、第1の実施の形態では、配管固定バンド22は、Ω状に曲げ加工された板材を吸気配管19の固定用凹溝21に嵌合し、両端部をボルト23を用いて仕切板13の左側仕切壁13Aに取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば吸気配管にねじ穴を設け、このねじ穴に直接的にボルトを螺合することにより吸気配管を仕切板に取付ける構成としてもよい。その他にも、吸気配管を仕切板に位置決め状態で固定できる構成であれば上述した構成に限定されるものではない。また、吸気配管を組付けた状態で当該吸気配管が位置決め固定される場合には、配管固定バンド22を廃止することもできる。これらの構成は第2の実施の形態、各変形例にも同様に適用することができるものである。
【0068】
さらに、各実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばタイヤ等からなるホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、油圧クレーン等のエンジンを搭載した他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1の油圧ショベルを拡大して示す平面図である。
【図3】旋回フレーム、エンジン、熱交換器、吸気配管、エアクリーナ等を拡大して示す平面図である。
【図4】隔壁、吸気配管、配管固定バンドを旋回フレーム、熱交換器、仕切板、エアクリーナ等と一緒に示す要部拡大の斜視図である。
【図5】仕切板と隔壁と吸気配管の直線管部と配管固定バンドとを図4中の矢示V−V方向からみた要部拡大断面図である。
【図6】図5中の仕切板と隔壁と配管固定バンドとを示す要部拡大断面図である。
【図7】図5中の吸気配管の直線管部を単体で示す要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態による吸気配管の直線管部、配管固定バンドを仕切板、隔壁と一緒に図5と同様位置からみた要部拡大断面図である。
【図9】図8中の仕切板と隔壁と配管固定バンドを示す要部拡大断面図である。
【図10】図8中の吸気配管の直線管部を単体で示す要部拡大断面図である。
【図11】本発明の第1の変形例による吸気配管の直線管部を単体で示す要部拡大断面図である。
【図12】本発明の第2の変形例による吸気配管の直線管部を単体で示す要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第3の変形例による吸気配管を単体で示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 油圧ショベル(建設機械)
5 旋回フレーム
6 キャブ
6B 後面部
6F 凹面部
8 エンジン
10 油圧ポンプ
11 冷却ファン
12 熱交換器
13 仕切板
14 エンジン室(エンジン側空間)
15 エアクリーナ室(反対側空間)
16 配管室
17 隔壁
17A 配管挿通孔
17B 押付け面
17C サポート面
19,31,41,51,61 吸気配管
19A,31A,41A,51A 直線管部
20,32,42,53,62 膨出部
21,33,43,54,63 固定用凹溝
22,34 配管固定バンド(配管固定手段)
24 エアクリーナ
d 隔壁の配管挿通孔の内径寸法
D 膨出部の外径寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなすフレームと、該フレームに搭載され油圧ポンプと冷却ファンを駆動するエンジンと、前記冷却ファンに対面して設けられ冷却風により油圧ポンプを流れる作動油とエンジンを冷却する冷却水を含む流体を冷却する熱交換器と、該熱交換器を流通して温度上昇したエンジン側の暖気が該熱交換器の外側に戻らないように熱交換器を挟んでエンジン側空間とその反対側空間との間を仕切る隔壁と、前記エンジンの吸気側に接続されエンジンに向けて空気が流通する吸気配管とを備えてなる建設機械において、
前記隔壁は、前記吸気配管が挿通する配管挿通孔を有する柔軟な弾性体として形成し、
前記吸気配管の途中には、前記隔壁の配管挿通孔との間をシールする膨出部を設け、該膨出部を前記隔壁の配管挿通孔の周囲に密着させる構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記膨出部は、前記隔壁の配管挿通孔よりも大径に形成し、前記隔壁の配管挿通孔の周囲に押付ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記隔壁の近傍で前記吸気配管に沿う位置には、前記吸気配管の膨出部を前記隔壁の配管挿通孔の位置に配置した状態で該吸気配管を前記フレーム側の部材に対して固定する配管固定手段を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記エンジンの前側には、前記フレームの左,右方向に延びて前記エンジン側空間をエンジン室として画成する仕切板を設け、
該仕切板の前側に位置して前記フレーム上にオペレータが搭乗するキャブを設け、
前記隔壁は、前記仕切板と前記キャブの後面との間を閉塞する位置に設け、
前記吸気配管は、前記仕切板と前記キャブとの間を前記隔壁を貫通して左,右方向に延在させる構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−74243(P2009−74243A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241298(P2007−241298)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】