説明

建設機械

【課題】タンク取付構造を簡素化し、燃料タンクを最小限の固定個所で簡単に、しかも安定良く固定する。
【解決手段】燃料タンク34が設置されるエンジンルーム33の開口部をボンネット32で開閉し、このボンネット32上に運転席36が設けられるミニショベルにおいて、燃料タンク34の上面に荷重伝達部材48を、荷重受け部49がボンネット32に接触する状態で設け、運転席36の重量、運転席36に着座したオペレータの体重、それにボンネット自重分の荷重をボンネット32から燃料タンク34にこれを上から押圧する力として伝えるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料タンクが収容されたタンク収容空間をボンネットで上から覆い、かつ、このボンネット上に運転席が設けられた建設機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明の好適例である小型の油圧ショベル(ミニショベル)を例にとって背景技術を説明する。
【0003】
ミニショベルは、図6,7に示すようにクローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、アーム4、バケット5及びこれらを駆動する各油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)6〜8から成る作業アタッチメント9が装着されて構成される。
【0004】
上部旋回体2を構成するアッパーフレーム10の後部に、左右のサイドパネル(片側のみ図示)11、ボンネット12等で囲われたエンジンルーム13(請求項1のタンク収容空間)が設けられ、図示しないエンジン等の機器類とともに燃料タンク14がこのエンジンルーム13に収容される。
【0005】
ボンネット12は、エンジンルーム13の上面側と後面側を覆うL字形に形成され、前端部に設けられたボンネット軸(ヒンジ)15を中心に回動して上面及び後面両開口部を開閉する状態で、図示しないサポート部材を介してアッパーフレーム10に取付けられる。
【0006】
図6はボンネット12を閉じた状態、図7は開いた状態をそれぞれ示し、開いた状態で機器類のメンテナンスが行われる。
【0007】
また、ボンネット12上に運転席16と操作レバー(図6には一つだけ示す)17が設けられ、図示のようにオペレータOが運転席16に着座した状態でレバー操作を行う。
【0008】
図中、18はアッパーフレーム後端に設けられたカウンタウェイト兼用の後部フレームである。
【0009】
このミニショベルにおいて、従来、燃料タンク14は、上部と中間部(特許文献1参照)など、上下方向の複数個所でアッパーフレーム10にブラケットを介して締結具によって取付けられている。
【特許文献1】実開平2−148831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、締結具の固定力のみによって燃料タンク14を固定する公知技術では、複数個所で固定する必要があること、各固定部分にブラケットが必要となること等からタンク取付構造が複雑になるとともにタンク取付作業が面倒となっていた。
【0011】
また、公知技術によると、タンクの固定個所が特定されていることから、とくにプラスチック製の燃料タンクの場合、寸法のばらつきや変形によってタンク取付作業が一層面倒となる。さらに、締結具にゆるみが発生し易いという問題もあった。
【0012】
そこで本発明は、タンク取付構造を簡素化し、燃料タンクを最小限の固定個所で簡単に、しかも安定良く固定することができる建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、燃料タンクが収容されたタンク収容空間の少なくとも上面開口部がボンネットで開閉され、このボンネット上に運転席が設けられた建設機械において、上記ボンネットに作用する荷重を燃料タンクに、同タンクを上から押圧する力として伝える荷重伝達部材が設けられたものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、ボンネットが前後方向の一端側を中心に回動してタンク収容空間を開閉し得る状態で取付けられ、このボンネットの開閉中心と反対側に燃料タンク及び荷重伝達部材が設けられたものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、荷重伝達部材は上向きに突出する荷重受け部を備え、この荷重受け部がボンネット下面と接触して荷重を直接受ける状態で燃料タンク上面に取付けられたものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、タンク収容空間に、燃料タンクの下部が挿入されかつこのタンク下部を前後両側から拘束するタンク挿入部が形成されたものである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4の構成において、タンク挿入部の前面側及び後面側の少なくとも一方に、ゴム製のタンクパッドが設けられたものである。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかの構成において、燃料タンクの下面と、同タンクを下から支持するタンク支持面との間にゴム製の防振プレートが設けられたものである。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6の構成において、燃料タンク下面に、ドレンポートを備えたドレンプレートが設けられる一方、防振プレートにこのドレンプレートが嵌まり込むドレンプレート嵌合穴が設けられたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、ボンネットに作用する荷重、すなわち、運転席の重量と、運転席に着座したオペレータの体重、それにボンネット自重の合計の荷重がボンネットから荷重伝達部材を介して燃料タンクにこれを上から押圧する力として伝えられるため、この押圧力によって燃料タンクを固定することができる。
【0021】
従って、締結具による他の固定部分は最小限に少なくてすむため、公知技術と比較してタンク取付構造を大幅に簡素化し、タンク取付作業を格段に容易化することができる。
【0022】
また、上記押圧力は、とくにプラスチック製タンクのように寸法のばらつきや変形があっても確実に作用し、一定のタンク固定力を確保することができるため、安定したタンク固定状態を得ることができる。
【0023】
この場合、請求項2の発明によると、ボンネットに作用する回動モーメントによって荷重をタンク押圧力(固定力)としてとくに効果的に利用できるため、一層安定したタンク固定状態を得ることができる。
【0024】
請求項3の発明によると、荷重伝達部材の荷重受け部をボンネット下面に接触させて直接荷重を受ける構成であるため、ボンネットに作用するすべての荷重を燃料タンクに直接、無駄なく伝達することができる。
【0025】
請求項4,5の発明によると、燃料タンクの下部を、タンク収容空間に形成されたタンク挿入部に挿入するだけで前後方向に拘束できるため、締結具による固定部分がさらに少なくてすむことと相まってタンクの取付作業が一層容易となる。
【0026】
しかも、上からの押圧力とこの拘束力とによってタンクをさらに安定良く保持することができる。
【0027】
とくに請求項5の発明によると、ゴム製のタンクパッドによってタンクをより確実に拘束できるため、タンク固定状態を強化することができる。
【0028】
請求項6,7の発明によると、タンク下面とタンク支持面との間にゴム製の防振プレートを設けたから、上からの押圧力と防振プレートとによってタンクの振動を効果的に抑えることができるとともに、防振プレートの反発力によって燃料タンクをより強固に押さえ込むことができる。
【0029】
さらに請求項7の発明によると、燃料タンク下面に設けられたドレンプレートを利用してタンク下部の動きを抑えることができるため、タンク固定状態をさらに安定化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施形態を図1〜図5によって説明する。
【0031】
実施形態では、背景技術の説明に合せてミニショベルを適用対象として例示している。
【0032】
図1は側面から見たミニショベル全体の概略構成を示す。
【0033】
この実施形態において、
(i)クローラ式の下部走行体21上に上部旋回体22が旋回自在に搭載され、この上部旋回体22に、ブーム23、アーム24、バケット25及びこれらを駆動する各油圧シリンダ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)26〜28から成る作業アタッチメント29が装着されてミニショベルが構成される点、
(ii)上部旋回体22を構成するアッパーフレーム30の後部に、左右のサイドパネル(片側のみ図示)31、ボンネット32等で囲われたエンジンルーム33(請求項1のタンク収容空間)が設けられ、図示しないエンジン等の機器類とともに燃料タンク34がこのエンジンルーム33に収容される点、
(iii)ボンネット32は、エンジンルーム33の上面側と後面側を覆うL字形に形成され、前端部に設けられたボンネット軸(ヒンジ)35を中心に回動して上面及び後面両開口部を開閉する状態で、図示しないサポート部材を介してアッパーフレーム30に取付けられる点
は、図6,7に示す公知のミニショベルと同じである。
【0034】
図1中、37はボンネット12上において運転席36近くに設けられた操作レバー、38はアッパーフレーム後端に設けられた断面ほぼL字形のカウンタウェイト兼用の後部フレーム、39は燃料タンク34の前方に隣接してエンジンルーム33に設けられた作動油タンクである。
【0035】
燃料タンク34はプラスチックにて縦長に形成され、エンジンルーム後部に、図2〜図5に示すタンク取付構造によって設置されている。
【0036】
I)燃料タンク34の前面側においてアッパーフレーム30上にタンク支持プレート40が上下方向に設けられ、このタンク支持プレート40と後部フレーム38との間の空間であるタンク挿入部41に燃料タンク34の下部が挿入されている。
【0037】
タンク挿入部41の前後方向寸法は燃料タンク34の下部の前後方向寸法とほぼ同等(若干大きい寸法)に設定され、燃料タンク下部がこのタンク挿入部41に挿入された状態で前後方向に拘束される。
【0038】
II)タンク挿入部41の前面側(タンク支持プレート40)、及び後面側(後部フレーム38)にそれぞれゴム製のタンクパッド42,43が設けられ、この両タンクパッド42,43がタンク前後面に弾性的に接触する。
【0039】
III)燃料タンク34の下面とタンク支持面(後部フレーム38の水平面)との間にゴム製の防振プレート44が設けられ、この防振プレート44によって燃料タンク34が下から防振状態で支持される。
【0040】
IV)燃料タンク34の下面に、ドレンポート付きの厚板状のドレンプレート45が突設される一方、防振プレート44に、ドレンプレート45とほぼ同じ形状とサイズのドレンプレート嵌合穴44a(図4,5参照)が設けられ、ドレンプレート45がこのドレンプレート嵌合穴44aに嵌まり込む。
【0041】
V)燃料タンク34の上面に取付プレート46、作動油タンク39の後面壁上端部に垂直な受けプレート47がそれぞれ取付けられ、この両プレート46,47が相対向する垂直面でねじ結合されている。これにより、燃料タンク34の上部が固定される。
【0042】
VI)最大の特徴的構成として、取付プレート46に板状の荷重伝達部材48が取付けられている。
【0043】
この荷重伝達部材48には、ゴム製の荷重受け部49が上向きに突出して設けられ、この荷重受け部49がボンネット下面に接触している。
【0044】
詳しくは、ボンネット32は、運転席36が設けられかつエンジンルーム33の上面開口部を開閉する上面部32aと、後面開口部を開閉する後面部32bとから成り、荷重受け部49がこのボンネット32の上面部32aに接触する。
【0045】
なお、荷重受け部49は、ボンネット上面部32aとの接触をより確実にするとともにボンネット上面32aに対する当りを柔らかくする意味でゴム製とするのが望ましいが、金属製としてもよい。
【0046】
この構成によると、運転席36からボンネット32に作用する荷重、すなわち、運転席36の重量と、運転席36に着座したオペレータOの体重、それにボンネット自重の合計の荷重(図3中のW)がボンネット32から荷重伝達部材48を介して燃料タンク34にこれを上から押圧する力として伝えられる。
【0047】
このため、この押圧力によって燃料タンク34をアッパーフレーム30に固定することができる。
【0048】
従って、締結具による他の固定部分は最小限(この実施形態では取付プレート46と受けプレート47による上部ねじ止め部分の1個所のみ)ですむため、公知技術と比較してタンク取付構造を大幅に簡素化し、タンク取付作業を格段に容易化することができる。
【0049】
また、上記押圧力は、とくにこの実施形態で例示したプラスチック製タンクのように寸法のばらつきや変形があっても確実に作用し、一定のタンク固定力を確保することができるため、安定したタンク固定状態を得ることができる。
【0050】
さらにこの実施形態によると、次の利点がある。
【0051】
(イ)ボンネット32が前端側を中心に回動してエンジンルーム33を開閉する構成であるため、ボンネット32に作用する回動モーメントによって荷重Wをタンク押圧力(固定力)としてとくに効果的に利用することができる。このため、一層安定したタンク固定状態を得ることができる。
【0052】
なお、ボンネット32は、エンジンルーム33の上面開口部のみを開閉する板状(実施形態の上面部32aのみから成る形状)であってもよい。
【0053】
(ロ)荷重伝達部材48の荷重受け部49をボンネット下面に接触させて直接荷重を受ける構成であるため、ボンネット32に作用するすべての荷重を燃料タンク34に直接、無駄なく伝達することができる。
【0054】
(ハ)燃料タンク34の下部を、エンジンルーム下部に形成されたタンク挿入部41に挿入するだけで前後方向に拘束できるため、締結具による固定部分がさらに少なくてすむことと相まって燃料タンク34の取付作業が一層容易となる。
【0055】
(ニ)タンク挿入部41での拘束力と、上からの荷重Wとによって燃料タンク34をさらに安定良く保持することができる。
【0056】
(ホ)前後両側のゴム製のタンクパッド42,43によって燃料タンク34をより確実に拘束できるため、タンク固定状態を強化することができる。なお、前後いずれか一方のみにタンクパッドを設けてもよい。
【0057】
(ヘ)燃料タンク下面とタンク支持面(後部フレーム38)との間にゴム製の防振プレート44を設けたから、上からの押圧力とこの防振プレート44とによって燃料タンク34の振動を抑えることができるとともに、防振プレート44の反発力によって燃料タンク34をより強固に押さえ込むことができる。
【0058】
(ト)燃料タンク下面に設けられたドレンプレート45を利用してタンク下部の動きを抑えることができるため、タンク固定状態をさらに安定化させることができる。
【0059】
他の実施形態
(1)上記実施形態では、エンジンが収容されるエンジンルーム33内に燃料タンク34が設置され、エンジンルーム33がボンネット32で開閉されるとともに、このボンネット32上に運転席36が設けられる機械を例にとったが、本発明は、エンジンルームとタンク収容空間、及びこれらを開閉するボンネットを別々に設け、タンク収容空間を開閉するボンネットに運転席が設けられる機械にも上記同様に適用することができる。
【0060】
(2)本発明は、上記実施形態で挙げたボンネット32が回動するものに好適であるが、ボンネットがスライドするものにも適用することができる。
【0061】
(3)本発明は小型の油圧ショベル(ミニショベル)に限らず、タンク収容空間を開閉するボンネット上に運転席が設けられるすべてのショベル、及びショベル以外の建設機械(破砕機等)にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態にかかるミニショベルの概略側面図である。
【図2】同ショベルの一部拡大断面図である。
【図3】図2の上部の拡大図である。
【図4】図2の下部の拡大図である。
【図5】同ショベルのアッパーフレーム及び燃料タンクの斜視図である。
【図6】従来のミニショベルの概略側面図である。
【図7】同ショベルのボンネットを開いた状態の図6相当図である。
【符号の説明】
【0063】
21 下部走行体
22 上部旋回体
30 アッパーフレーム
32 ボンネット
33 エンジンルーム(タンク収容空間)
34 燃料タンク
35 ボンネットの回動中心となるボンネット軸
36 運転席
38 タンク挿入部を形成しかつタンク支持面となる後部フレーム
39 作動油タンク
40 タンク挿入部を形成するタンク支持プレート
41 タンク挿入部
42,43 前後両側のタンクパッド
44 防振プレート
44a ドレンプレート嵌合穴
45 ドレンプレート
46 取付プレート
47 受けプレート
48 荷重伝達部材
49 荷重受け部
O オペレータ
W ボンネットから燃料タンクに作用する荷重

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクが収容されたタンク収容空間の少なくとも上面開口部がボンネットで開閉され、このボンネット上に運転席が設けられた建設機械において、上記ボンネットに作用する荷重を燃料タンクに、同タンクを上から押圧する力として伝える荷重伝達部材が設けられたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
ボンネットが前後方向の一端側を中心に回動してタンク収容空間を開閉し得る状態で取付けられ、このボンネットの開閉中心と反対側に燃料タンク及び荷重伝達部材が設けられたことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
荷重伝達部材は上向きに突出する荷重受け部を備え、この荷重受け部がボンネット下面と接触して荷重を直接受ける状態で燃料タンク上面に取付けられたことを特徴とする請求項1または2記載の建設機械。
【請求項4】
タンク収容空間に、燃料タンクの下部が挿入されかつこのタンク下部を前後両側から拘束するタンク挿入部が形成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項5】
タンク挿入部の前面側及び後面側の少なくとも一方に、ゴム製のタンクパッドが設けられたことを特徴とする請求項4記載の建設機械。
【請求項6】
燃料タンクの下面と、同タンクを下から支持するタンク支持面との間にゴム製の防振プレートが設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項7】
燃料タンク下面に、ドレンポートを備えたドレンプレートが設けられる一方、防振プレートにこのドレンプレートが嵌まり込むドレンプレート嵌合穴が設けられたことを特徴とする請求項6記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−71005(P2010−71005A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241024(P2008−241024)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】