説明

建設機械

【課題】外部からの異物の侵入を防止すると共に蓄電手段を好適に空冷する。
【解決手段】ハウス部の開口部60A及び開口部60Bに金網72,71がそれぞれ設けられることによって、ハウス部の開口部60A,60Bからキャパシタボックス80内への異物の侵入を防止することができる。また、開口部60Aと吸気ダクト40との間を接続する接続部にインシュレーション76が設けられると共に、開口部60Bと排気ダクト39との間を接続する接続部にインシュレーション75が設けられることにより、ハウス部内に収容されるエンジン等の他の装置で発生する熱が、接続部を通してキャパシタボックス80内のキャパシタ19に伝わることを防止しキャパシタ19の温度上昇を抑制しつつ、ファン43によりケーシング内に形成された冷却風流路によってキャパシタ19を好適に空冷することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンの駆動により発電する発電機を備え、この発電機により発電された電力を用いることによりエンジンの駆動を補助する所謂ハイブリッドシステムを備えるハイブリッド型建設機械が開発されている。このような建設機械では、エンジンの駆動によって発電された電力を蓄電する蓄電手段が設けられる。この蓄電手段としては、具体的には例えば大容量のキャパシタを用いたキャパシタモジュール等が用いられるが、駆動や減速を頻繁に繰り返す建設機械では、キャパシタに対する負荷が非常に大きく、キャパシタの発熱量の増大による劣化が速いため、キャパシタを冷却することで劣化を抑制する種々の技術が検討されており、例えば、特許文献1では、キャパシタを取り付けて固定する板に冷却水を流す冷却流路を設けることによってキャパシタを冷却する構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−187047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャパシタ等の蓄電手段を冷却する方法としては特許文献1記載の水冷による方法のほか、空冷による方法を用いることができる。建設機械において蓄電手段を空冷する方法の一例としては、建設機械のボディに開口を設け、ボディ内のファン等の冷却手段によって外気を吸気することによってボディ内に冷却風流路を形成し、この冷却風流路に蓄電手段を配置する方法が一般的に用いられる。
【0005】
しかしながら、建設機械は運転時以外も屋外に放置しておく場合が多いため、ボディに開口を設けることによって虫や鳥等の生物及び土埃等の異物がボディ内に侵入しやすく、ボディ内にこれらの異物が侵入すると、蓄電手段や冷却手段が損傷するおそれがある。特に、建設機械を屋外に長時間放置している間に、例えば鳥がボディ内に巣を作ったりすると、これらの除去が困難となる。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、外部からの異物の侵入を防止すると共に蓄電手段を好適に空冷することができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る建設機械は、エンジンと、エンジンの駆動により発電を行う発電手段と、発電手段により発電された電力を蓄電する蓄電手段と、蓄電手段からの電力により駆動する電動駆動手段とを備えた建設機械において、通気口を有し、蓄電手段を収容したケーシングと、一端が外部に連通すると共に他端が通気口に連通する開口部を有し、ケーシングを収容したボディと、ケーシング内に設けられ、ボディの開口部及びケーシングの通気口を通して、外気を冷却風としてケーシング内に流すための冷却風通路を形成する冷却手段と、を備え、ボディの開口部には、冷却風が通風可能な網状部材が設けられ、ボディの開口部とケーシングの通気口とを接続する接続部には、当該接続部を気密に断熱する断熱部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記の建設機械によれば、ボディの開口部に網状部材が設けられることによって、ボディの開口部からケーシング内部への異物の侵入を防止することができる。さらに、ボディの開口部とケーシングの通気口とを接続する接続部に、当該接続部を気密に断熱する断熱部材が設けられていることによって、ボディ内に収容されるエンジン等の他の装置で発生する熱が、ボディの開口部とケーシングの通気口との間の接続部を通してケーシング内の蓄電手段に伝わることを防止し蓄電手段の温度上昇を抑制しつつ、冷却手段によりケーシング内に形成された冷却風流路によって蓄電手段を好適に空冷することができる。
【0009】
ここで、開口部と通気口とにはそれぞれルーバーが設けられ、開口部のルーバーと通気口のルーバーとは冷却風の流れ方向に沿って互いに反対方向に傾斜している態様であることが好ましい。
【0010】
上記のように開口部のルーバーと通気口のルーバーとが冷却風の流れ方向に沿って互いに反対方向に傾斜していることで、降雨による雨水や洗車による高圧洗浄水が開口部及び通気口を介して浸入することを防止できる。
【0011】
また、開口部のルーバー及び通気口のルーバーの少なくとも一方は、冷却風の流れ方向に沿って角度の調整が可能である態様としてもよい。
【0012】
上記のように、開口部のルーバー及び通気口のルーバーの少なくとも一方の角度の調整を可能とすることで、例えば、天候の変化や周囲の環境の変化に応じてルーバーの角度を最適とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外部からの異物の侵入を防止すると共に蓄電手段を好適に空冷することができる建設機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図2中の蓄電手段の内部構成を示す回路図である。
【図4】図1中の旋回体のハウス部を示す斜視図である。
【図5】ハウス部内に蓄電手段のキャパシタボックスを設置した状態を示す断面図である。
【図6】ハウス部の右前部のドアを開け図5中のルーバーが露出した状態を車両の前方右側から見た斜視図である。
【図7】さらに他の実施形態に係る建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による建設機械の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る建設機械の外観を示す斜視図である。この実施形態の建設機械は、所謂ハイブリッド型建設機械であり、その一例としてのリフティングマグネット車両を示すものである。
【0017】
図1に示すように、リフティングマグネット車両1は、無限軌道を含む走行機構2と、走行機構2の上部に旋回機構3を介して回動自在に搭載された旋回体4とを備えている。旋回体4には、ブーム5と、ブーム5の先端にリンク接続されたアーム6と、アーム6の先端にリンク接続されたリフティングマグネット7とが取り付けられている。このリフティングマグネット7は、鋼材などの吊荷Gを磁力により吸着して捕獲するための設備である。ブーム5、アーム6及びリフティングマグネット7は、各々ブームシリンダ8、アームシリンダ9及びバケットシリンダ10によって油圧駆動される。
【0018】
また、旋回体4には、リフティングマグネット7の位置や励磁動作及び釈放動作を操作する操作者を収容するための運転室4aや、油圧を発生するための動力源であるエンジン11(図2参照)といった動力源等を収容したハウス部(ボディ)4bが設けられている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンで構成される。
【0019】
図2は、図1に示す建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図であり、構成は所謂パラレル方式と称されるものである。なお、図2では、機械的に動力を伝達する系統を二重線で、油圧系統を太い実線で、操縦系統を破線で、電気系統を細い実線でそれぞれ示している。また、図3は、図2中の蓄電手段120の内部構成を示す図である。
【0020】
図2に示すように、リフティングマグネット車両1は電動発電機(発電手段)12及び変速機13を備えており、エンジン11及び電動発電機12の回転軸は、共に変速機13の入力軸に接続されることにより互いに連結されている。エンジン11の負荷が大きいときには、電動発電機12がこのエンジン11を作業要素として駆動することによりエンジン11の駆動力を補助(アシスト)し、電動発電機12の駆動力が変速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。一方、エンジン11の負荷が小さいときには、エンジン11の駆動力が変速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電を行う。
【0021】
電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータによって構成される。電動発電機12の駆動と発電との切り替えは、リフティングマグネット車両1における電気系統の駆動制御を行うコントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0022】
変速機13の出力軸にはメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されており、メインポンプ14には高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。コントロールバルブ17は、リフティングマグネット車両1における油圧系の制御を行う装置である。このコントロールバルブ17には、図1に示した走行機構2を駆動するための左右の油圧モータ2a,2bの他、ブームシリンダ8、アームシリンダ9及びバケットシリンダ10が高圧油圧ラインを介して接続されており、コントロールバルブ17は、これらに供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御する。
【0023】
電動発電機12の電気的な端子には、インバータ回路18Aの出力端が接続されている。インバータ回路18Aの入力端には、蓄電手段120が接続されている。蓄電手段120は、図3に示すように、直流母線であるDCバス110、昇降圧コンバータ100及びキャパシタ19を備えている。すなわち、インバータ回路18Aの入力端は、DCバス110を介して昇降圧コンバータ100の入力端に接続されている。昇降圧コンバータ100の出力端には、キャパシタ19が接続されている。キャパシタ19は、ここでは、多数のセルを有する構成とされている。なお、キャパシタに代えてバッテリを用いることもできる。
【0024】
図2に戻って、インバータ回路18Aは、コントローラ30からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。すなわち、インバータ回路18Aが電動発電機12を電動(アシスト)運転させる際には、必要な電力をキャパシタ19と昇降圧コンバータ100からDCバス110を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12を発電運転させる際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス110及び昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に充電する。なお、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧値、キャパシタ電圧値及びキャパシタ電流値に基づき、コントローラ30によって行われる。これにより、DCバス110を、予め定められた一定電圧値に蓄電された状態に維持することができる。
【0025】
また、蓄電手段120のDCバス110には、インバータ回路20Bを介して図1に示したリフティングマグネット7が接続されている。リフティングマグネット7は、金属物を磁気的に吸着させるための磁力を発生する電磁石を含んでおり、インバータ回路20Bを介してDCバス110から電力が供給される。インバータ回路20Bは、コントローラ30からの指令に基づき、電磁石をオンにする際には、リフティングマグネット7へ要求された電力をDCバス110より供給する。また、電磁石をオフにする場合には、回生された電力をDCバス110に供給する。
【0026】
さらに、蓄電手段120には、インバータ回路20Aが接続されている。インバータ回路20Aの一端には作業用電動機としての旋回用電動機(交流電動機;電動駆動手段)21が接続されており、インバータ回路20Aの他端は蓄電手段120のDCバス110に接続されている。旋回用電動機21は、旋回体4を旋回させる図1に示した旋回機構3の動力源である。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23及び旋回減速機24が接続される。
【0027】
旋回用電動機21が力行運転を行う際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が旋回減速機24にて増幅され、旋回体4が加減速制御され回転運動を行う。また、旋回体4の慣性回転により、旋回減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させる。旋回用電動機21は、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ回路20Aによって交流駆動される。旋回用電動機21としては、例えば、磁石埋込型のIPMモータが好適である。
【0028】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出する。レゾルバ22が回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構3の回転角度及び回転方向が導出される。メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、コントローラ30からの指令によって、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構3に機械的に伝達する減速機である。
【0029】
なお、DCバス110には、インバータ回路18A,20A,20Bを介して、電動発電機12、旋回用電動機21及びリフティングマグネット7が接続されているため、電動発電機12で発電された電力がリフティングマグネット7又は旋回用電動機21に直接的に供給される場合もあり、リフティングマグネット7で回生された電力が電動発電機12又は旋回用電動機21に供給される場合もあり、さらに、旋回用電動機21で回生された電力が電動発電機12又はリフティングマグネット7に供給される場合もある。
【0030】
パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続されている。操作装置26は、旋回用電動機21、走行機構2、ブーム5、アーム6及びリフティングマグネット7を操作するための操作装置であり、操作者によって操作される。操作装置26には、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17が接続され、また、油圧ライン28を介して圧力センサ29が接続される。操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されると共に、圧力センサ29によって検出される。
【0031】
圧力センサ29は、操作装置26に対して旋回機構3を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。
【0032】
コントローラ30は、本実施形態における制御回路を構成する。コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置によって構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUが実行することにより実現される。また、コントローラ30の電源は、キャパシタ19とは別のバッテリ(例えば24V車載バッテリ)である。コントローラ30は、圧力センサ29から入力される信号のうち、旋回機構3を旋回させるための操作量を表す信号を速度指令に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。また、コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(アシスト運転及び発電運転の切り替え)、リフティングマグネット7の駆動制御(励磁と消磁の切り替え)、並びに、昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0033】
ここで、本実施形態における昇降圧コンバータ100について詳細に説明する。図3に示すように、昇降圧コンバータ100は、昇降圧型のスイッチング制御方式を備えており、リアクトル101、トランジスタ100B,100Cを有する。トランジスタ100Bは昇圧用のスイッチング素子であり、トランジスタ100Cは降圧用のスイッチング素子である。トランジスタ100B,100Cは、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)によって構成され、互いに直列に接続されている。
【0034】
具体的には、トランジスタ100Bのコレクタとトランジスタ100Cのエミッタとが相互に接続され、トランジスタ100Bのエミッタはキャパシタ19の負側端子およびDCバス110の負側配線に接続され、トランジスタ100CのコレクタはDCバス110の正側配線に接続されている。そして、リアクトル101は、その一端がトランジスタ100Bのコレクタ及びトランジスタ100Cのエミッタに接続されると共に、他端がキャパシタ19の正側端子に接続されている。トランジスタ100B,100Cのゲートには、コントローラ30からPWM電圧が印加される。
【0035】
なお、トランジスタ100Bのコレクタとエミッタとの間には、整流素子であるダイオード100bが逆方向に並列接続されている。同様に、トランジスタ100Cのコレクタとエミッタとの間には、ダイオード100cが逆方向に並列接続されている。トランジスタ100Cのコレクタとトランジスタ100Bのエミッタとの間(すなわち、DCバス110の正側配線と負側配線との間)には、DCバス110において平滑用のコンデンサ110aが接続される。コンデンサ110aは、昇降圧コンバータ100からの出力電圧、電動発電機12からの発電電圧や旋回用電動機21からの回生電圧を平滑化する。
【0036】
このような構成を備える昇降圧コンバータ100において、直流電力をキャパシタ19からDCバス110へ供給する際には、コントローラ30からの指令によってトランジスタ100BのゲートにPWM電圧が印加される。そして、トランジスタ100Bのオン/オフに伴ってリアクトル101に発生する誘導起電力がダイオード100cを介して伝達され、この電力がコンデンサ110aにより平滑化される。また、直流電力をDCバス110からキャパシタ19へ供給する際には、コントローラ30からの指令によってトランジスタ100CのゲートにPWM電圧が印加されると共に、トランジスタ100Cから出力される電流がリアクトル101により平滑化される。
【0037】
続いて、旋回体4について説明する。図4は、旋回体4のハウス部(ボディ)4bを示す斜視図である。以下、ハウス部4bの構成の説明においては、特に断らない限り、前後左右はリフティングマグネット車両1を基準としている。図4に示すように、ハウス部4bは、平面視において略コの字状を成すように構成され、コの字を構成する開放部が前方を向くように配置されている。ここで、ハウス部4bにおいて、車両における右前部分(図4の図示左手前部分)を右前部Rf、右後ろ部分(図4の図示左奥部分)を右後部Rr、左前部分(図4の図示右手前部分)を左前部Lf、左後ろ部分(図4の図示右奥部分)を左後部Lr、及び右前部Rfと左前部Lfとの間の部分を中央部Cと呼ぶ。
【0038】
このようなハウス部4bの左前部Lfに対応して、図1に示す運転室4aが設けられ、中央部Cには、ブーム5の基端が上下動可能に取り付けられる。そして、ハウス部4bを有する旋回体4は、中央部Cの下部に設けられた旋回用電動機21(図2参照)により上下方向の軸心回りに回転し、すなわち、旋回方向Dに沿って左右に旋回する。右前部Rfには、メンテナンス作業用のステップ31及び手摺り32が設けられている。
【0039】
右前部Rf内には、図2に示した蓄電手段120、インバータ回路18A,20A,20B、及びコントローラ30が設置されている。右前部Rfの左右面下部には各々窓部が形成されており、右面の窓部34(図5参照)と左面の窓部33との間には、蓄電手段120のキャパシタ19が設置されている。すなわち、左右面の窓部34,33は、キャパシタ19を冷却するための空気を左右方向に通すための通風口として形成されている。キャパシタ19を含む右前部Rfの構成についての詳細は後述する。
【0040】
図4の左後部Lr内には、エンジン用ラジエタ、オイルクーラ、インタークーラ、燃料クーラ、ハイブリッドシステム用ラジエタ(ハイブリッド用ラジエタ)、運転室4aのエアコンディショナ用熱交換器(エアコン用コンデンサ)、(いずれも図示せず)といった冷却器が設置されている。
【0041】
さらに、左後部Lrから右後部Rrにかけて、すなわち天板を構成するエンジンフードHの下方には、図2に示したエンジン11、変速機13、電動発電機12、及びメインポンプ14等が設置されている。エンジン11にはファン(図示せず)が接続されており、エンジンの回転に伴いファンが回転することにより、左前部Lfの左側面に設けられた通気口46から左後部Lr内に向けて空気が流れ、左後部Lr内に設置された上記の各冷却器が冷却される。また、右後部Rr内には、上記の電動発電機12及びメインポンプ14を収容するポンプ室(図示せず)が形成されている。
【0042】
中央部Cには、ブーム5を上下動可能に挟むようにして支持する枠体である所謂Aフレーム47、及びブームシリンダ8の基端が取り付けられる枠体であるブームシリンダフレーム48が設けられている。Aフレーム47の後方近傍には、旋回用電動機21(図2参照)が配置されている。
【0043】
次に、図5及び図6を参照しながら、キャパシタ19を含む右前部Rfの構成について説明する。図5は、右前部Rfの下部に設置されたキャパシタ19等を前方から見た断面図である。図5には、ハウス部4bの底部を形成する骨格部材である底部フレームBaと、底部フレームBaの周縁(図5では左側)において立設された外周フレームBbと、から構成されるベースフレームBが示されている。また、図6は、ハウス部4bの右前部のドア61を開け図5中のルーバー36が露出した状態を車両の前方右側から見た斜視図である。
【0044】
図5及び図6に示すように、右前部Rfの右面には、片開き式のドア61が取り付けられ、このドア61に外部に連通する窓部34が設けられると共に、この窓部34の周縁部からハウス部4bの内側方向に水平に延びる窓枠62が設けられ、この窓枠62により囲まれた領域であって窓部34よりも内側にルーバー36が設けられ、また、右前部Rfの左面には、ハウス部4bの外壁に外部に連通する窓部33が設けられると共に、この窓部33の周縁部の側面63からハウス部4bの内側方向に水平に延びる窓枠64が設けられ、この窓枠64により囲まれた領域であって窓部33よりも内側にルーバー35が設けられている。
【0045】
そして、ルーバー35,36の間には、キャパシタ19を含むキャパシタボックス80が、台座155及び防振ゴム156を介して底部フレームBa上に設置されている。キャパシタ19は、上段及び下段に各々多数のセル41を並設し纏めたもので、上段のセル41の集合体により上段モジュール45が、下段のセル41の集合体により下段モジュール45が各々構成され、これらのモジュール45,45を、左右方向に通気可能に外枠で囲い補強したものがキャパシタボックス80である。
【0046】
キャパシタボックス80の右側(図5では左側)には、吸気ダクト(通気口)40が接続されると共に、吸気ダクト40内の上流側の端部にはルーバー38が設けられている。また、キャパシタボックス80の左側(図5では右側)端部には、上下段のセル41,41のそれぞれに対応して、冷却風を図示左から右へと流すためのファン(冷却手段)43,43が設けられ、さらに、左側(図5では右側)には、排気ダクト(通気口)39が接続されると共に、排気ダクト39内の下流側の端部にはルーバー37が設けられている。そして、窓枠62が、吸気ダクト40に接続される開口部60Aを形成し、窓枠64が、排気ダクト39に接続される開口部60Bを形成する。また、キャパシタボックス80、吸気ダクト40及び排気ダクト39により、ケーシングが構成されている。
【0047】
そして、吸気ダクト40内には、上段モジュール45と下段モジュール45との間の上流側端部と、ルーバー38の下流側端部とを連結し、吸気ダクト40内を上下に仕切る仕切壁44が設けられている。この仕切壁44は、上下に並設されたルーバー38に対して正対せずに下方にずれて配置された下段のモジュール45に対しても、上段のモジュール45と同量の冷却風を分配するためのものであり、上側の入口(ルーバー38の出口)での流量より下側の入口での流量が大きくなるように、水平では無く冷却風の流れ方向に対して下方に傾斜する構成とされている。
【0048】
吸気側のルーバー36は、図示左から右へと流れる冷却風の流れ方向に対して下方に傾斜し、これより下流の吸気ダクト40内のルーバー38は、ルーバー36とは反対に上方に傾斜している。さらに、排気ダクト39内のルーバー37は、冷却風の流れ方向に対して下方に傾斜し、これより下流の排気側のルーバー35は、ルーバー37とは反対に上方に傾斜している。このようなルーバーの構成により、キャパシタボックス80内に対する防水が図られている。
【0049】
また、上記のように、キャパシタボックス80は底部フレームBa上に設置されているため、その設置位置は、右面の窓部34及び左面の窓部33に対して低くなっている。このため、吸気ダクト40及び排気ダクト39は、上下非対称な形状をなしている。すなわち、吸気ダクト40及び排気ダクト39は、両側のルーバー38,37からキャパシタボックス80に向かうにつれて、下方に広がる形状とされている。
【0050】
そして、吸気側のルーバー36と吸気ダクト40内のルーバー38との間であって開口部60Aには金網(網状部材)72が設けられると共に、排気ダクト39内のルーバー37と排気側のルーバー35との間であって開口部60Bには金網71が設けられる。この金網72,71は、それぞれ開口部60A,60Bのハウス部4b側に取り付けられ、その網目の大きさは、冷却風が通風可能であり、且つ、虫や鳥等の生物及び土埃等が外部からキャパシタボックス80内に入ることを防止する大きさとされる。具体的には、吸気側の金網72は、下側の窓枠62に設けられたレール65に沿って窓枠62の内面にガイドされ固定部材66,67により窓枠62に対して固定されることで、ドア61に設けられた窓部34の窓枠62を塞ぐように取り付けられる一方で、窓枠62のレール65に沿って図5における紙面垂直方向にスライド可能とされて窓枠62に対して着脱可能であり、排気側の金網71は、ハウス部4bの側面63に設けられた窓部33の窓枠64を塞ぐように取り付けられる。
【0051】
また、開閉可能とされ、上流側の開口部60Aを形成する窓部34の窓枠62と、キャパシタボックス80に対する吸気ダクト40とを接続する接続部には、この接続部を気密に断熱するインシュレーション(断熱部材)76が取り付けられ、下流側の開口部60Bを形成する窓部33の窓枠64と、キャパシタボックス80に対する排気ダクト39とを接続する接続部には、この接続部を気密に断熱するインシュレーション(断熱部材)75が取り付けられる。このインシュレーション75,76は、例えばゴム製のスポンジ様の材料からなりキャパシタボックス80側に取り付けられる。
【0052】
なお、ここでは、キャパシタボックス80、吸気ダクト40、排気ダクト39、窓部34、窓部33等は右前部Rfに設置されることとしたが、左前部Lfにおいて運転室4aの下方に設置されていてもよい。
【0053】
上記の構成を有するリフティングマグネット車両1によれば、ファン43が回転することによってハウス部4bの窓部34、窓枠62を通しハウス部4b内に吸気された外気は、冷却風として、吸気ダクト40内を流れてキャパシタボックス80内に導入され、キャパシタボックス80内の各セル41に接触することで各セル41を冷却した後、下流側の排気ダクト39、窓枠62、窓部33を経てハウス部4bの外部に排出される。
【0054】
そして、本実施形態に係るリフティングマグネット車両1では、ハウス部4bの開口部60A及び開口部60Bに金網71,72がそれぞれ設けられることによって、ハウス部4bの開口部60A,60Bからキャパシタボックス80内への異物の侵入を防止することができる。そして、ハウス部4bの開口部60Aと吸気ダクト40との間を接続する接続部にインシュレーション76が設けられると共に、ハウス部4bの開口部60Bと排気ダクト39との間を接続する接続部にインシュレーション75が設けられることにより、ハウス部4b内に収容されるエンジン等の他の装置で発生する熱が、接続部を通してキャパシタボックス80内のキャパシタ19に伝わることを防止しキャパシタ19の温度上昇を抑制しつつ、ファン43によりケーシング内に形成された冷却風流路によってキャパシタ19を好適に空冷することができる。
【0055】
また、開口部60Aのルーバー36と吸気ダクト40のルーバー38とが冷却風の流れ方向(図5の左右方向)に沿って互いに反対方向に傾斜し、且つ、開口部60Bのルーバー35と排気ダクト39のルーバー37とが冷却風の流れ方向(図5の左右方向)に沿って互いに反対方向に傾斜していることで、降雨による雨水や洗車による高圧洗浄水が開口部60A,60B及び吸気ダクト40、排気ダクト39を介して浸入することを防止できる。
【0056】
図7は、さらに他の実施形態に係る建設機械の電気系統や油圧系統等の内部構成を示すブロック図である。
【0057】
図7に示す構成は、所謂シリーズ方式と称されるもので、図2に示すパラレル方式の構成において、変速機13とメインポンプ14とを連結する構成に代えて、ポンプ用電動機140及びインバータ18Dを別途設け、エンジン11の全ての動力を一旦電気エネルギに変換して、各種の駆動要素を駆動するものである。
【0058】
具体的には、インバータ18Dは、蓄電手段120のDCバス110(図3参照)と電気的に接続されると共に、コントローラ30により制御される。また、インバータ18Dの出力端は、ポンプ用電動機140に接続されており、ポンプ用電動機140は、インバータ18Dにより駆動制御される。また、ポンプ用電動機140においてメインポンプ14により発電された電力は、回生エネルギとしてインバータ18Dを経て蓄電手段120に供給される。
【0059】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好適であるとして、リフティングマグネットタイプのハイブリッド型建設機械に対する適用を述べているが、ショベルやホイルローダ、クレーン等の他の建設機械に対しても適用可能である。
【0060】
また、上記実施形態では、金網71,72は虫や鳥等の生物や土埃がキャパシタボックス80内に侵入することを防止することができる網目の大きさである場合について述べているが、例えば、外部の生物や土埃とは異なる異物がキャパシタボックス80に侵入することが問題となる場合には、金網71,72に代えて防塵ネット等の網状部材を開口部に取り付ける構成とすることもできる。
【0061】
また、上記実施形態では、吸気側のルーバー36,38及び排気側のルーバー35,37はそれぞれ傾斜角が固定されている場合について説明しているが、通気側のルーバー36,38の少なくとも一方及び排気側のルーバー35,37の少なくとも一方の角度の調整を可能としてもよく、この場合、例えば、天候の変化や周囲の環境の変化に応じてこれらのルーバーの角度を最適とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…リフティングマグネット車両、4…旋回体、4b…ハウス部、11…エンジン、12…電動発電機(発電手段)、13…変速機、14…メインポンプ(ポンプ)、21…旋回用電動機(電動駆動手段)、35,36,37,38…ルーバー、38…排気ダクト、40…吸気ダクト(通気口)、43…ファン(冷却手段)、60A,60B…開口部、71,72…金網(網状部材)、75,76…インシュレーション(断熱部材)、80…キャパシタボックス、120…蓄電手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの駆動により発電を行う発電手段と、前記発電手段により発電された電力を蓄電する蓄電手段と、前記蓄電手段からの電力により駆動する電動駆動手段とを備えた建設機械において、
通気口を有し、前記蓄電手段を収容したケーシングと、
一端が外部に連通すると共に他端が前記通気口に連通する開口部を有し、前記ケーシングを収容したボディと、
前記ケーシング内に設けられ、前記ボディの前記開口部及び前記ケーシングの前記通気口を通して、外気を冷却風として前記ケーシング内に流すための冷却風通路を形成する冷却手段と、
を備え、
前記ボディの前記開口部には、前記冷却風が通風可能な網状部材が設けられ、
前記ボディの前記開口部と前記ケーシングの前記通気口とを接続する接続部には、当該接続部を気密に断熱する断熱部材が設けられている
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記開口部と前記通気口とにはそれぞれルーバーが設けられ、
前記開口部のルーバーと前記通気口のルーバーとは前記冷却風の流れ方向に沿って互いに反対方向に傾斜している
ことを特徴とする請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
前記開口部のルーバー及び前記通気口のルーバーの少なくとも一方は、前記冷却風の流れ方向に沿って角度の調整が可能である
ことを特徴とする請求項2記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−20637(P2011−20637A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169250(P2009−169250)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】