説明

弁装置および手動開閉弁装置

【課題】弁体と弁座の素材が異種金属でも成り立ち、しかも、心ずれを考慮する必要がない弁装置およびそれを用いた手動開閉弁装置を提供する。
【解決手段】弁座40(140、240)に形成された開閉流路34(134、234)を弁体53(153、253)にて樹脂製シート62(162、262)を介して開閉する弁装置にして、弁体および弁座の何れか一方に凹部61(161、261)を形成し、凹部に、弁体および弁座の他方に平面接触可能な樹脂製シートを装着し、樹脂製シートは凹部から突出する厚みを有し、弁体の閉弁操作によって樹脂製シートを圧縮して弁体の先端部を弁座に当接するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧ガスを貯蔵するガスタンク等に用いて好適な弁装置およびそれを用いた手動開閉弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタンクの開口部を閉塞する栓体には、ガスタンク内部とその外部とを連通する複数の流路、および各流路内の高圧ガスの流通を遮断する手動開閉弁等、複数の弁装置が設けられている。この種の弁装置として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された弁装置(マニュアル弁)は、有底筒状をなすハウジング(35)と、ハウジング内にその軸線方向に沿って摺動可能に収容された弁体(36)と、弁体を操作するための操作螺子(37)とを備えており、ハウジングの底部には、逆止弁(9)の貫通孔(32)に連通される貫通孔(38)が形成され、貫通孔の周縁に弁体36が着離されるテーパ状の弁座(40)が形成されている。一方、弁体(36)の先端部(36a)にはテーパ面が形成され、このテーパ面が弁座(40)に着離して貫通孔(38)を閉止し、充填路内における水素ガスの流通を遮断するようになっている。
【0004】
ところで、近年、燃料電池車等に搭載される水素用ガスタンクにおいては、貯蔵容量の増加を図るため一層の高圧化が進められており、その高圧化に応じたより高い信頼性が求められている。このために、上記したハウジング(35)および弁体(36)も、SUS(ステンレス鋼)のような金属で製作されている。
【特許文献1】特開2006−144841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に記載のものにおいては、ハウジングに形成された弁座に弁体をテーパ面接触させて貫通孔を閉止するように構成されているため、高い精度で気密を確保するうえで、弁体と弁座との高い同軸度が必要であり、高精度な加工を要する問題がある。
【0006】
このために、例えば、弁座側のハウジングの材質を、柔らかなアルミ等の金属にて製作することも考えられるが、このような異種金属で構成した場合には、閉弁時の線接触、変形によってシール部の異常変形を引き起こす恐れがあり、また、変形によって発生したバリが分離し、異物となってシステム内を流通し、弁装置の機能を損なう恐れがある。
【0007】
本発明は、上記した従来の問題点を解消するためになされたもので、弁体と弁座の素材が異種金属でも成り立ち、しかも、心ずれを考慮する必要がない弁装置およびそれを用いた手動開閉弁装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る弁装置の発明の特徴は、弁座に形成された流路を弁体にて樹脂製シートを介して開閉する弁装置にして、前記弁体および前記弁座の何れか一方に凹部を形成し、該凹部に、前記弁体および前記弁座の他方に平面接触可能な前記樹脂製シートを装着し、該樹脂製シートは前記凹部から突出する厚みを有し、前記弁体の閉弁操作によって前記樹脂製シートを圧縮して前記弁体の先端部を前記弁座に当接するように構成したことである。
【0009】
請求項2に係る弁装置の発明の特徴は、請求項1において、略円筒状の凹陥部の底面を前記弁座とした金属製の弁座部材を備え、前記弁体は、前記弁座部材と同種あるいは異種の金属からなり、前記弁体の先端面に形成された凹部に樹脂製シートが装着され、前記樹脂製シートは、前記弁体の先端面から突出する厚みを有し、かつ前記弁座材の前記弁座に平面接触するようになっており、前記弁体の閉弁操作によって前記樹脂製シートが弁座に押付けられると、前記樹脂製シートが圧縮されて前記弁体の先端面が弁座に当接するように構成したことである。
【0010】
請求項3に係る手動開閉弁装置の発明の特徴は、請求項1または請求項2に記載の弁装置を用いた手動開閉弁装置。
【0011】
請求項4に係る手動開閉弁装置の発明の特徴は、請求項3において、前記手動開閉弁装置は、栓体ハウジングの収容孔に螺着された第1プラグと、該第1プラグに摺動可能に嵌装され前記流路を開閉する弁体と、該弁体を前記流路を開放する方向に付勢する付勢部材と、前記栓体ハウジングの収容孔に螺着された第2プラグと、該第2プラグに位置調整可能に螺着され前記弁体を前記付勢部材の付勢力に抗して移動させる操作ねじ軸とを備えていることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る弁装置の発明によれば、弁体および弁座の何れか一方に凹部を形成し、凹部に弁体および弁座の他方に平面接触可能な樹脂製シートを装着し、樹脂製シートは凹部から突出する厚みを有し、弁体の閉弁操作によって樹脂製シートを圧縮して弁体を弁座に当接するように構成したので、弁体と弁座との高い同軸度が不要となり、高精度な加工を要しないので、弁座側に用いる金属材料の自由度を増すことができる。しかも、閉弁時には弁体の先端部が弁座に当接されるので、樹脂製シートの過剰な潰しを防止でき、樹脂製シートによるシール機能を長期に亘って安定して保持することができる。
【0013】
請求項2に係る弁装置の発明によれば、略円筒状の凹陥部の底面を弁座とした金属製の弁座部材を備え、弁体は、弁座部材と同種あるいは異種の金属からなり、弁体の先端面に形成された凹部に樹脂製シートが装着されているので、請求項1で述べたと同様に、弁体の閉弁時には、弁体に装着された樹脂製シートが弁座に押付けられて圧縮され、弁体の先端面が弁座に当接される。従って、弁体と弁座との高い同軸度が不要となるとともに、樹脂製シートの過剰な潰しを防止することができる。
【0014】
請求項3に係る手動開閉弁装置の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の弁装置を用いたので、弁座側に用いる金属材料の自由度が増すことにより、手動開閉弁装置のハウジングにアルミを採用することが可能となり、手動開閉弁装置の軽量化が可能となる。
【0015】
請求項4に係る手動開閉弁装置の発明によれば、栓体ハウジングの収容孔に螺着された第1プラグと、第1プラグに摺動可能に嵌装され流路を開閉する弁体と、弁体を流路を開放する方向に付勢する付勢部材と、栓体ハウジングの収容孔に螺着された第2プラグと、第2プラグに位置調整可能に螺着され弁体を付勢部材の付勢力に抗して移動させる操作ねじ軸とを備えているので、操作ねじ軸の手動操作によって樹脂製シートを圧縮させて弁体を弁座に当接させることができ、弁体と弁座との高い同軸度が不要にできるとともに、樹脂製シートの過剰な潰しを防止できる手動開閉弁装置を具現化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下本発明を水素用ガスタンクに適用した実施の形態について図面に基づいて説明する。本実施の形態のガスタンク1は、図1に示すように、水素ガスを貯蔵するタンク本体2と、その開口部2aを閉塞する栓体3とを備えており、栓体3には、タンク本体2の内部とその外部を連通する複数の流路およびこれら各流路内の水素ガスの流通を制御する複数の弁装置が設けられている。
【0017】
具体的には、栓体3に、ガスタンク1内に水素ガスを充填するための充填路5、ガスタンク1内の水素ガスを外部に供給するための供給路6、ならびにガスタンク1内の水素ガスを外部に放出するための開放路7を形成している。
【0018】
充填路5には、ガスタンク1内に貯蔵された水素ガスの逆流を防止する逆止弁装置8と、水素ガスの流通を遮断すべく外部から手動により操作可能な手動開閉弁装置9が配置されており、供給路6には、電磁開閉弁装置10、手動開閉弁装置11および減圧弁装置12が配置されており、開放路7には、手動開閉弁装置13が配置されている。
【0019】
以下、充填路5に配置された手動開閉弁装置9の第1の実施の形態を、図2および図3に基づいて具体的に説明する。
【0020】
図2において、栓体3を構成する栓体ハウジング16には、外部に開口する収容孔17が形成され、収容孔17には、充填路5を構成する第1流路18および第2流路19が接続されている。収容孔17は、収容孔17の奥より順番に形成された小径孔17a、中間径孔17bおよび大径孔17cによって構成されており、小径孔17aから中間径孔17bに亘って、逆止弁装置8が配設され、中間径孔17bから大径孔17cに亘って、手動開閉弁装置9が配設されている。そして、小径孔17aにガスタンク1の内部(タンク本体2)に連通する第1流路18が開口され、中間径孔17bにタンク外部に連通する第2流路19が開口されている。
【0021】
逆止弁装置8は、収容孔17の中間径孔17bに嵌合する第1ハウジング21と、この第1ハウジング21の一端にねじ込みによって一体的に締結される第2ハウジング22と、第1ハウジング21内に収容された逆止弁体23によって主に構成されている。第1ハウジング21は、小径孔17aに嵌合する小径筒部21aを有しており、小径筒部21aの外周と小径孔17aとの間は、Oリングとバックアップリングからなるシール手段25によってシールされている。
【0022】
第1ハウジング21内には、逆止弁体23を収容する弁孔26が設けられ、弁孔26の一端は、小径筒部21aの中心部に形成された流通路39を介して第1流路18に接続されている。弁孔26の他端には、第1ハウジング21と第2ハウジング22との間に挟持されるようにして樹脂製シート27が配設されている。樹脂製シート27は、例えば、ポリイミド樹脂からなり、樹脂製シート27の中心部に貫通孔28が形成されている。貫通孔28の弁孔26側の一端には、弁座29が形成されている。弁孔26内には、弁座29に接離可能なテーパ状のポペットを有する逆止弁体23が摺動可能に嵌装され、逆止弁体23はスプリング30によって弁座29に当接する方向に付勢されている。
【0023】
逆止弁体23には、第1流路18および流通路39を介して、高圧の水素ガスがスプリング30の付勢方向と同方向に作用されるようになっており、これにより、通常は弁座29を閉塞している。逆止弁体23内には半径方向通路および軸方向通路が形成され、逆止弁体23が弁座29より離間された状態においては、弁座29を形成した貫通孔28は、逆止弁体23に形成された半径方向通路および軸方向通路、ならびに小径筒部17aに形成された流通路39を介して、第1流路18に連通されるようになっている。
【0024】
第2ハウジング22は、筒状をなし、軸方向中央部に隔壁22aを有している。隔壁22aの一端側には、第1ハウジング21の一端外周に形成されたねじ部21bをねじ込んで締結するためのねじ穴22bが形成され、他端には、後述する手動開閉弁装置9の開閉弁体53の先端部に遊嵌する円筒状の凹陥部33が形成されている。凹陥部33の底面、すなわち、隔壁22aの一側面は、後述する樹脂製シート62が平面接触する弁座40(図3参照)とされ、この弁座40に開口する開閉流路34を介して、逆止弁体23側の弁座29が連通されている。かかる凹陥部33の底面に弁座40を形成した第1ハウジング21により、請求項における弁座部材を構成している。
【0025】
第2ハウジング22に形成された凹陥部33の外周側には、第2流路19に開口するフィルタ35が装着され、フィルタ35は第2ハウジング22に形成された半径方向孔36を介して凹陥部33に連通されている。これにより、第2流路19より水素ガスを、フィルタ35、凹陥部33、開閉流路34および逆止弁体23等を介してガスタンク1内に供給できるようになっている。
【0026】
なお、第1ハウジング21の外周には、六角頭部37が形成され、また、第2ハウジング22の外周には、二面幅部38が形成され、二面幅部38を利用して第2ハウジング22を回り止めした状態で、第1ハウジング21の六角頭部37を回転させることにより、第2ハウジング22のねじ穴22bに第1ハウジング21のねじ部21bをねじ込んで、第1および第2ハウジング21、22を一体的に締結できるようになっている。これにより、逆止弁装置8を予めアッシ状態にして栓体ハウジング16の収容孔17に収容組付けすることができるようになっている。
【0027】
上記した逆止弁装置8は、1つの逆止弁体23によって、高圧の水素ガスの漏れを防止できるように構成されている。そのために、逆止弁体23が接離する弁座29を形成した樹脂製シート27は、第1および第2ハウジング21、22の締結によって、第1ハウジング21の端面と第2ハウジング22の隔壁22aとの間で押し潰され、樹脂製シート27の一端と第1ハウジング21の端面との面圧が高められるようになっている。
【0028】
手動開閉弁装置9は、図2に示すように、収容孔17の大径孔17cに形成されたねじ部に螺着される第1プラグ51および第2プラグ52と、第1プラグ51に摺動可能に嵌装された開閉弁体53と、第2プラグ52に位置調整可能に螺着され、開閉弁体53を進退作動する操作ねじ軸54等によって構成されている。
【0029】
第1プラグ51は、中間径孔17bに嵌合する嵌合部51aを備え、この嵌合部51aの一端(先端)は上記した第2ハウジング22の端部に当接し、第1プラグ51の締め込みによって、第2ハウジング22に締結された第1ハウジング21を収容孔17の中間径孔17bの底面に当接固定するようになっている。第1プラグ51の嵌合部51aの外周と中間径孔17bとの間は、Oリングとバックアップリングからなるシール手段55によってシールされている。また、第1プラグ51の嵌合部51aの中心部には、開閉弁体53が摺動可能に嵌装され、嵌合部51aの内周と開閉弁体53の外周との間は、Oリングとバックアップリングからなるシール手段56によってシールされている。
【0030】
開閉弁体53は、ステンレス鋼(SUS)のような金属から製作されている。開閉弁体53の先端部は第2ハウジング22の凹陥部33内に隙間を有して突入されている。また、開閉弁体53の先端面の中心部には、図3にも示すように、凹部61が形成され、その周りに環状の突起53aが形成される。開閉弁体53の凹部61には、逆止弁装置8の第2ハウジング22の隔壁22aに形成された弁座40に当接して、開閉流路34を開閉するリング状の樹脂製シート62が圧入されている。樹脂製シート62は、例えば、ポリイミド樹脂からなり、弁座40(隔壁22a)に平面接触して開閉流路34を開閉するようになっている。樹脂製シート62の厚みは、自由状態において、凹部61の深さよりも大きくしてあり、開閉流路34を開放している状態においては、開閉弁体53の環状突起53aの先端よりも突出されている。
【0031】
なお、圧力が作用した状態で、開閉弁体53が閉弁される手動開閉弁装置9においては、開弁時に、樹脂製シート62が弁座40に接触したまま凹部61より離脱する方向に開閉弁体53に対して相対移動される恐れがある。このために、開閉弁体53の環状突起53aの円周上一か所に切欠き53b(図3参照)を設け、開弁時に、樹脂製シート62が隔壁33側の弁座40に接触したまま凹部61より離脱する方向に開閉弁体53に対して相対移動された場合には、切欠き53bを介して弁座40と樹脂製シート62の接触面を第2流路19側に開放させ、樹脂製シート62を弁座40より離間させるようにしている。
【0032】
第2プラグ52は、大径孔17cのねじ部に、第1プラグ51の外方位置に螺着されている。第2プラグ52には、六角穴63を形成した操作ねじ軸54が位置調整可能に螺合され、かつロックナット64により任意の位置でロックできるようになっている。
【0033】
第1プラグ51と開閉弁体53との間には、スプリング65が設けられ、このスプリング65の付勢力によって、通常開閉弁体53は操作ねじ軸54に当接する位置に後退され、開閉流路34を開放している。六角穴63を回して操作ねじ軸54を前進させることにより、開閉弁体53をスプリング65の付勢力に抗して移動させることができ、開閉弁体53の先端部に設けた樹脂製シート62を第2ハウジング22の隔壁22aに面接触させて押し潰し、開閉流路34を閉止する。この際、樹脂製シート62が所定量圧縮されると、開閉弁体53の環状突起53aが隔壁22aの端面に当接するため、樹脂製シート62の過剰な潰しを防止できる。なお、操作ねじ軸54上には、操作ねじ軸54の後退位置を規制する規制板67が設けられている。
【0034】
上記した実施の形態における手動開閉弁装置9によれば、操作ねじ軸54を回転することによって、開閉弁体53をスプリング65の付勢力に抗して逆止弁体23に向かって移動させることにより、開閉弁体53の先端に装着された樹脂製シート62が、第2ハウジング22の弁座40(隔壁22a)に押付けられて圧縮され、図4に示すように、弁座40に平面接触される。これによって、弁座40に開口する開閉流路34が閉止され、充填路5内における水素ガスの流通が遮断されるようになる。
【0035】
この際、樹脂製シート62が所定量圧縮されると、開閉弁体53の環状突起53aが弁座40に当接するため、樹脂製シート62の過剰な潰しを防止できる。しかも、樹脂製シート62を弁座40に平面接触させてシールするようになっているので、従来のようなテーパ面によるシールに比較して、高精度な加工が不要となるとともに、弁座に用いることができる金属材料に自由度を増すことができるようになる。
【0036】
操作ねじ軸54を上記と反対方向に回転することにより、開閉弁体53をスプリング65の付勢力によって逆止弁体23より離れる方向に移動させることができ、開閉弁体53の先端に装着された樹脂製シート62が、第2ハウジング22の弁座40より離間され、開閉流路34が開放される。
【0037】
この状態で、第2流路19より水素ガスを導入すると、水素ガスは、フィルタ35を通って凹陥部33内に流入され、開閉流路34を介して逆止弁体23に作用し、逆止弁体23をスプリング30の付勢力に抗して押動する。これにより、弁座29が開放され、水素ガスは第1流路18に流入して、タンク本体2内に充填される。
【0038】
次に、本発明の第2の実施の形態を図5に基づいて説明する。第2の実施の形態の第1の実施の形態と異なる点は、本発明を、弁座140に開口する開閉流路134を開閉して圧抜きする圧抜き弁装置70に適用したものである。従って、以下においては、第1の実施の形態と異なる点を主に説明し、同一構成部分については同一部品に同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【0039】
第2の実施の形態においては、栓体ハウジング16に形成した収容孔117の底面に形成された弁座140に、弁体153によって開閉される開閉流路134が形成されている。収容孔117に螺着された第1プラグ51に摺動可能に嵌装された弁体153の先端面には、第1の実施の形態と同様に、凹部161が形成され、凹部161の底面に凹部161よりも小径の圧入穴71が形成されている。凹部161には、断面T字形の樹脂製シート162の大径部が凹部161の内周に隙間を有して遊嵌され、樹脂製シート162の小径部は圧入穴71に圧入されている。なお、栓体ハウジング16は、請求項における弁座部材を構成している。
【0040】
樹脂製シート162は、例えば、ポリイミド樹脂からなり、弁座140に平面接触して開閉流路134を開閉するようになっている。樹脂製シート162の大径部の厚みは、自由状態において、凹部161の深さよりも大きくしてあり、開閉流路134を開放している状態においては、弁体153の環状の突起153aの先端よりも突出されている。弁体153は、第2プラグ52に位置調整可能に螺合された操作ねじ軸54の回転操作によって、樹脂製シート162を圧縮しながら、環状突起153aが弁座(収容孔117の底面)140に当接するまで移動される。
【0041】
第2の実施の形態における圧抜き弁装置70は、第1の実施の形態で述べたように、圧力が作用した状態で、弁体153を開弁するものではないが、別の目的で、弁体153の環状突起153aの円周上一か所に切欠き153bが形成されている。
【0042】
すなわち、例えば、樹脂製シート162と弁座140との間に異物が噛み込み、樹脂製シート162によって開閉流路134が完全に閉止されていなくても、環状突起153aが弁座140に当接されることにより、恰も樹脂製シート162によって開閉流路134が閉止される如き状態となる。このような不具合を検出するため、環状突起153aの円周上一か所に切欠き153bを形成することにより、仮に、樹脂製シート162と弁座140との間に異物が噛み込んで、樹脂製シート162によって開閉流路134が完全に閉止されていない場合には、たとえ環状突起153aが弁座140に当接されても、切欠き153bによって開閉流路134を閉止されないようにしている。このようにして、上記した不具合を製品出荷前の検査工程において検出できるようにし、製品の信頼性を高めるようにしている。
【0043】
上記した第2の実施の形態によれば、操作ねじ軸54を回転して、弁体153をスプリング65の付勢力に抗して移動させることにより、弁体153の先端に装着された樹脂製シート162が、弁座140に押付けられて圧縮され、弁座140に平面接触される。これによって、弁座140に開口された開閉流路134が閉止され、開閉流路134と圧抜き孔73との連通が遮断断される。なお、樹脂製シート162が弁体153の移動方向に圧縮されることにより、樹脂製シート162は半径方向に流動して凹部161の内周との間の隙間内に吸収される。
【0044】
この際、樹脂製シート162が所定量圧縮されると、弁体153の環状突起153aが弁座140に当接するため、樹脂製シート162の過剰な潰しを防止できる。しかも、樹脂製シート162を弁座140に平面接触させてシールするようになっているので、従来のようなテーパ面接触によるシールに比較して、高精度な加工が不要となるとともに、弁座140として用いることができる金属材料に自由度を増すことができる。従って、弁座140を形成した栓体ハウジング16を軽量化のためにアルミにて構成することができる。しかも、弁体153および栓体ハウジング16を、SUSとアルミの異種金属で構成しても、従来のようにシール部の変形によってバリが発生することもないので、弁装置の機能を損ねることがない。
【0045】
また、弁体153の環状突起153aに切欠き153bを形成することにより、環状突起153aが弁座140に当接しても、樹脂製シート162と弁座140との間の異物の噛み込みを、検査工程において容易に検出できるようになるので、製品の信頼性を高めることが可能となる。
【0046】
図6は本発明の第3の実施の形態を示すもので、第2の実施の形態と異なる点は、樹脂製シート262を弁体253の先端部が当接する弁座240側に装着したものである。
【0047】
第3の実施の形態においては、弁体253の先端面が当接する弁座240に凹部261が形成され、この凹部261に開閉流路234が開口されている。凹部261にはリング状の樹脂製シート262が圧入され、樹脂製シート262の厚みは、自由状態において、凹部261の深さよりも大きくしてある。樹脂製シート262に平面接触する弁体253は、樹脂製シート262を圧縮しながら弁座240に当接するまで移動され、開閉流路234を閉止してガスの流通を遮断する。かかる第3の実施の形態においても、上記した実施の形態と同様の効果が期待できる。
【0048】
上記した実施の形態においては、開閉流路34(134、234)を開閉する弁装置を、手動開閉弁装置9および圧抜き弁装置70に適用した例について述べたが、本発明はそのような弁装置にのみ限定されるものではなく、弁座40(140、240)に開口された開閉流路34(134、234)を弁体53(153、253)によって樹脂製シート62(162、262)を介して開閉する広範な弁装置に適用できるものである。
【0049】
また、上記した実施の形態においては、弁体53(153、253)をSUSにて製作し、この弁体が当接する栓体ハウジング16を軽量化のためにアルミにて製作した例について述べたが、同軸度の精度が不要となったことにより、両者をSUSにて構成しても、精密加工を要する部位を減少することができるようになり、弁座側に用いる金属材料に自由度を増すことができる利点がある。
【0050】
斯様に、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の形態を採り得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態を示すガスタンクの回路図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す手動開閉弁装置の断面図である。
【図3】手動開閉弁装置の一部を拡大した拡大断面図である。
【図4】図3の作動状態図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す圧抜き弁装置の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1…ガスタンク、2…タンク本体、3…栓体、5…充填路、8…逆止弁装置、9…手動開閉弁装置、16…栓体ハウジング、17、117…収容孔、33a…凹陥部、34、134、234…開閉流路、40、140、240…弁座、51…第1プラグ、52…第2プラグ、53、153、253…弁体、54…操作ねじ軸、61、161、261…凹部、62、162、262…樹脂製シート、70…圧抜き弁装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座に形成された流路を弁体にて樹脂製シートを介して開閉する弁装置にして、
前記弁体および前記弁座の何れか一方に凹部を形成し、該凹部に、前記弁体および前記弁座の他方に平面接触可能な前記樹脂製シートを装着し、該樹脂製シートは前記凹部から突出する厚みを有し、
前記弁体の閉弁操作によって前記樹脂製シートを圧縮して前記弁体の先端部を前記弁座に当接するように構成したことを特徴とする弁装置。
【請求項2】
請求項1において、略円筒状の凹陥部の底面を前記弁座とした金属製の弁座部材を備え、前記弁体は、前記弁座部材と同種あるいは異種の金属からなり、前記弁体の先端面に形成された凹部に樹脂製シートが装着され、前記樹脂製シートは、前記弁体の先端面から突出する厚みを有し、かつ前記弁座材の前記弁座に平面接触するようになっており、前記弁体の閉弁操作によって前記樹脂製シートが弁座に押付けられると、前記樹脂製シートが圧縮されて前記弁体の先端面が弁座に当接するように構成したことを特徴とする弁装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の弁装置を用いた手動開閉弁装置。
【請求項4】
請求項3において、前記手動開閉弁装置は、栓体ハウジングの収容孔に螺着された第1プラグと、該第1プラグに摺動可能に嵌装され前記流路を開閉する弁体と、該弁体を前記流路を開放する方向に付勢する付勢部材と、前記栓体ハウジングの収容孔に螺着された第2プラグと、該第2プラグに位置調整可能に螺着され前記弁体を前記付勢部材の付勢力に抗して移動させる操作ねじ軸とを備えていることを特徴とする手動開閉弁装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−79623(P2009−79623A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247615(P2007−247615)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】