説明

弁部材の線形の運動のための装置

本発明は、運動方向に対して垂直に回転可能に支承されたスピンドル(2)から成っており、該スピンドル(2)は第1のスピンドル部分(2a)と、第2のスピンドル部分(2b)とから成っている。第1のスピンドル部分(2a)と第2のスピンドル部分(2b)とはそれぞれ互いに逆方向で形成された雄ねじ山を有している。第1のスピンドル部分(2a)には相補的な雌ねじ山を備えた第1のナット(4a)が設けられている。第2のスピンドル部分(2b)に相補的な雌ねじ山を備えた第2のナット(4b)が設けられている。第1のナット(4a)は、第1の結合ウェブ(5a)の一方の端部の回動可能な支承のための第1の軸受(4a′)をスピンドル(2)の回転軸線に対して垂直に有している。第2のナット(4b)は、第2の結合ウェブ(5b)の一方の端部の回動可能な支承のための第2の軸受(4b′)をスピンドル(2)の回転軸線に対して垂直に有している。第1の結合ウェブ(5a)の他方の端部と第2の結合ウェブ(5b)の他方の端部とは、スピンドル(2)の回転軸線に対して垂直に第3の軸受(6′)に回動可能に一緒に支承されている。第3の軸受(6′)は弁部材(1)のためのストッパ(6)に配置されており、弁部材(1)の運動方向と、第3の軸受(6′)の中心と、スピンドル(2)の中心部(2′)とは、側方から見て常に1つの線L上にあり、第1のナット(4a)と第2のナット(4b)のためのストッパ(7)は、スピンドル(2)に対して平行で、弁部材(1)とは反対の側のスピンドル(2)の側に配置されており、第1のナット(4a)と第2のナット(4b)との衝突面は弁部材(1)の運動方向に対して垂直に延在している。更に、本発明の対象は自動車におけるハイドロリックオイルを使った皿形弁における前記装置の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁部材の線形の運動のための装置に関する。更に本発明は前記装置の使用にも関する。DE10327271A1には、付加制御弁装置のための弁部材が記載されている。弁部材において、流入弁とは反対の側で凸状に頂点を持って形成されている帽子状のプレートがシャフトに配置されている。この種の弁部材は、シャフトの長手方向軸線の方向で、弁の運転状態に基づき線形に運動する。このことは、通常、スピンドル駆動装置を介して行われる。弁部材のスピンドルとシャフトとは、同じ長手方向軸線を有している。運転段階中に弁部材に比較的強い力が作用すると、スピンドルにおける負荷は著しく増大する。このことはスピンドルの損傷に繋がることがある。更に次いで比較的大きな力が、スピンドルに設けられているナットに作用し、その結果、ナットがスピンドルの損傷をもたらすことがある。
【0002】
本発明の根底にある課題は、弁部材に線形の運動をさせる装置を改良して、弁部材に急激に比較的高い力が作用した場合であっても損傷することなく正常な機能を保つ装置を提供することである。
【0003】
本発明の根底にある課題は、弁部材の線形の運動のための装置により解決される。装置は、運動方向に対して垂直に回転可能に支承されているスピンドルから成る。スピンドルは、第1のスピンドル部分と、第2のスピンドル部分とから成っている。第1のスピンドル部分と第2のスピンドル部分とは、互いに逆方向に形成されている雄ねじ山を有している。第1のスピンドル部分には、相補的な雌ねじ山を備えた第1のナットが設けられていて、第2のスピンドル部分には、相補的な雌ねじ山を備えた第2のナットが設けられている。第1のナットは、第1の結合ウェブの一方の端部を回動可能に支承するための第1の軸受をスピンドルの回転軸線に対して垂直に有しており、第2のナットは、第2の結合ウェブの一方の端部を回動可能に支承するための第2の軸受をスピンドルの回転軸線に対して垂直に有している。第1の結合ウェブの他方の端部と、第2の結合ウェブの他方の端部とは、スピンドルの回転軸線に対して垂直に第3の軸受に回動可能に一緒に支承されている。第3の軸受は弁部材のためのストッパに配置されている。弁部材の運動方向と、第3の軸受の中心と、スピンドルの中心部とは側方から見て常に1つの線L状に位置し、第1のナットと第2のナットとのためのストッパは、スピンドルに対して平行で、弁部材とは反対のスピンドルの側で配置されている。第1のナット及び第2のナットの衝突面は、弁部材の運動方向に対して垂直に延在している。弁部材は弁において使用されるか、又は一般的に遮断機構において使用される。第1の軸受と第2の軸受とは各々、例えば第1のナットと第2のナットの側方に配置されている。第1の結合ウェブと第2の結合ウェブとは、例えば平鋼である。第3の軸受における第1の結合ウェブの他方の端部及び第2の結合ウェブの他方の端部の配置は、例えば同様に弁部材のためのストッパの側方で行われる。第1のナット及び第2のナットのためのストッパは、1つの部材から構成されているか、又は複数の部材から構成されていてもよい。通常の運転において、一方では第1のナットと第1のナットのためのストッパとの間に間隔が、他方では第2のナットと第2のナットのためのストッパとの間に間隔が存在する。間隔はそれぞれギャップにより形成される。スピンドルの中心部は、第1のスピンドル部分を第2のスピンドル部分に結合する。
【0004】
本発明に係る装置は、好ましくは、弁部材のためのストッパは、弁部材とは反対の側でバネエレメントに当接しており、バネエレメントのバネ力は、弁部材の線形の運動の方向で弁の閉鎖又は開放のためにストッパに作用する。
【0005】
好ましくは、スピンドルは、スピンドルの端部の領域でそれぞれ第1のスピンドル軸受と第2のスピンドル軸受において回転可能に支承されている。
【0006】
好ましくは、スピンドルの中心部は、第1のスピンドル部分と第2のスピンドル部分よりも大きな外径を有している。
【0007】
驚くべきことに、弁部材の線形の運動のための装置は、弁部材に急に比較的大きな力が作用する場合でも損壊を被ることはない。弁部材に力が急に作用する場合には、すなわちスピンドルは僅かにしか撓曲せず、第1のナットと第2のナットとは、第1のナット及び第2のナットのためのストッパに直接当接しているということがもたらされる。従って弁部材を介して次いで装置にもたらされる比較的高い衝突力は、第1のナット及び第2のナットのためのストッパにおいて直接緩衝され、その結果、スピンドル又は第1のナット又は第2のナットにおける損壊を避けることができる。スピンドルの適切な撓曲を保証するために、スピンドルはその寸法に関してエンジニアにより設計される。使用分野によっては、運転中に弁部材に作用することがある最大の衝突力を前提とする。
【0008】
本発明の有利な構成によれば、弁部材のためのストッパは、弁部材とは反対のストッパの側でバネエレメントに当接するようになっている。バネエレメントのバネ力は弁部材の線形の運動の方向で、弁の閉鎖又は開放のためにストッパに作用する。例えばバネエレメントとして圧縮バネが使用される。有利には、バネエレメントの作用により軸受及びナットにおける各遊びは有利に補整される。このことは付加的に、弁部材への急な力作用は装置内部における損傷に繋がらないということに貢献する。
【0009】
本発明の別の有利な構成によれば、スピンドルはスピンドルの端部の領域において各々、第1のスピンドル軸受と、第2のスピンドル軸受とに回転可能に支承されている。第1のスピンドル軸受と第2のスピンドル軸受とは、弁が開放されている場合、第1のナットと第2のナットのためのストッパとして同時に働くように構造的に構成されていてよい。これによりスピンドルは有利に固定され、装置の安定性は高められる。
【0010】
本発明の更に別の有利な構成によれば、スピンドルの中心部は、第1のスピンドル部分及び第2のスピンドル部分よりも大きな外径を有している。こうしてスピンドルの中心部は第1のナット及び第2のナットのためのストッパとして、弁の閉鎖状態において働くことができ有利である。このことは付加的には装置の安定性を改良する。
【0011】
最後に、本発明の対象は、自動車においてハイドロリックオイルを用いた皿形弁における装置の使用である。こうして内燃機関の振動は回転数に基づいて有利には減衰できる。従って弁部材は、通常、比較的大きな衝突力が弁部材に作用することに繋がる、例えば窪みの自動車の走行時にも、考慮しなくとも線形の運動をさせることができる。このような事例における装置の損傷も有利に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】弁の開放状態における、弁部材に線形の運動をさせる装置の側面図である。
【図2】弁の閉鎖状態における、弁部材に線形の運動をさせる装置の側面図である。
【0013】
以下に、本発明を図面(図1及び図2)に基づき詳細に且つ例示的に説明する。
【0014】
図1には、弁部材1の線形の運動のための装置が側面図で示されている。弁部材1は単に概略的に示されている。装置は運動方向に対して垂直に回転可能に支承されたスピンドル2から成っている。スピンドル2は、第1のスピンドル部分2aと第2のスピンドル部分2bとから成っている。第1のスピンドル部分2aと第2のスピンドル部分2bとは、それぞれ互いに逆方向に形成されている雄ねじ山を有している。第1のスピンドル部分2aには相補的な雌ねじ山を備えた第1のナット4aが設けられていて、第2のスピンドル部分2bには相補的な雌ねじ山を備えた第2のナット4bが設けられている。第1のナット4aは、第1の結合ウェブ5aの一方の端部の回動可能な支承のための第1の軸受4a′をスピンドル2の回転軸線に対して垂直に有している。第2のナット4bは、第2の結合ウェブ5bの一方の端部の回動可能な支承のための第2の軸受4b′をスピンドル2の回転軸線に対して垂直に有している。第1の結合ウェブ5aの他方の端部と第2の結合ウェブ5bの他方の端部とは一緒に、スピンドル2の回転軸線に対して垂直に第3の軸受6′に回動可能に支承されている。第3の軸受6′は弁部材1のためのストッパ6に配置されている。等価矢印により示されている弁部材の運動方向と、第3の軸受6′の中心と、スピンドル2の中心部2′とは側面図において常に線L上にある。スピンドル2の中心部2′は第1のスピンドル部分2aを第2のスピンドル部分2bに結合する。スピンドル2に対して平行に、弁部材1とは反対のスピンドル2の側に、第1のナット4a及び第2のナット4bのためのストッパ7が配置されている。第1のナット4aと第2のナット4bとの衝突面は弁部材1の運動方向に対して垂直に延在している。弁部材1のためのストッパ6は、弁部材1とは反対のストッパ6の側でバネエレメント8に当接している。バネエレメント8は圧縮バネ系として形成されている。バネエレメント8のバネ力は、弁部材の線形の運動の方向で弁の閉鎖のためにストッパ6に作用し、装置の個々の部分の間の遊びの各防止により、運転中の装置内部でのチャタリングを防ぐ。スピンドル2は、その端部の領域においてそれぞれ第1のスピンドル軸受3aと第2のスピンドル軸受3bとに回転可能に支承されている。スピンドル2の中心部2′は第1のスピンドル部分2a及び第2のスピンドル部分2bよりの大きな直径を有している。従って中心部2は第1のナット4a及び第2のナット4bのためのストッパとして働く。図1に記載されている弁1の開放された状態から出発して、スピンドル2は電気モータ9と、後置されている伝動装置10とを介して適切に回転運動させられる。第1のスピンドル部分2aもしくは第2のスピンドル部分2bに互いに逆方向に形成された雄ねじ山に基づき、第1のナット4aと第2のナット4bとは、スピンドル2において中心部2′の方向に運動する。このことは弁部材1がスピンドル2から線形に離れる方向で運動することに繋がる。このプロセスは弁が所望の状態に達するまで続く。
【0015】
図2には、弁の閉鎖された状態における弁部材1の線形の運動のための装置が側面図で示されている。図2に記載された実施の形態では、第1のナット4aと第2のナット4bとは、弁が閉鎖された状態(図示せず)において、スピンドル2の中心部2′に当接しない。弁が今や閉鎖された状態にあっては、弁部材1に急に比較的大きな力が作用する場合、このことはスピンドル2に向かう方向での弁部材1の戻り運動に繋がる。発生する衝突力が十分に大きい場合、このことはスピンドル2の必然的な僅かな撓曲に繋がる。自動車のハイドロリックオイルを用いた皿形弁(Tellerventilen)における装置の使用時には、例えば0,2mmの撓曲が形成されていた。スピンドル2のこの種の僅かな撓曲により、第1のナット4aと第2のナット4bとは、第1のナット4a及び第2のナット4bのためのストッパ7に押圧されるということになる。このことは破線の矢印で記載した。第1のナット4aと第2のナット4bとが、第1のナット4a及び第2のナット4bのためのストッパ7に接触する(図示せず)やいなや、第1のナット4a及び第2のナット4bのためのストッパ7に衝突力がもたらされ、例えば衝突力がスピンドルによって緩衝されるはずであるような場合であれば、弁部材1に線形の運動をさせる装置の個別の部分がもはや損壊することはない。スピンドルは弁部材を線形に運動させるために使用され、スピンドルの長手方向軸線は、弁部材のシャフトの長手方向軸線に一致する(図示せず)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁部材(1)の線形の運動のための装置において、該装置は運動方向に対して垂直に回転可能に支承されたスピンドル(2)から成っており、該スピンドル(2)は第1のスピンドル部分(2a)と、第2のスピンドル部分(2b)とから成っており、第1のスピンドル部分(2a)と第2のスピンドル部分(2b)とはそれぞれ互いに逆方向で形成された雄ねじ山を有しており、第1のスピンドル部分(2a)には、相補的な雌ねじ山を備えた第1のナット(4a)が設けられており、第2のスピンドル部分(2b)には、相補的な雌ねじ山を備えた第2のナット(4b)が設けられており、第1のナット(4a)は、第1の結合ウェブ(5a)の一方の端部の回動可能な支承のための第1の軸受(4a′)をスピンドル(2)の回転軸線に対して垂直に有しており、第2のナット(4b)は、第2の結合ウェブ(5b)の一方の端部の回動可能な支承のための第2の軸受(4b′)をスピンドル(2)の回転軸線に対して垂直に有しており、第1の結合ウェブ(5a)の他方の端部と第2の結合ウェブ(5b)の他方の端部とは一緒に、スピンドル(2)の回転軸線に対して垂直に第3の軸受(6′)に回動可能に支承されており、第3の軸受(6′)は弁部材(1)のためのストッパ(6)に配置されており、弁部材(1)の運動方向と、第3の軸受(6′)の中心と、スピンドル(2)の中心部(2′)とは、側方から見て常に1つの線L上にあり、第1のナット(4a)及び第2のナット(4b)のためのストッパ(7)は、スピンドル(2)に対して平行で、弁部材(1)とは反対の側のスピンドル(2)の側に配置されており、第1のナット(4a)と第2のナット(4b)との衝突面は弁部材(1)の運動方向に対して垂直に延在していることを特徴とする、弁部材の線形の運動のための装置。
【請求項2】
弁部材(1)のためのストッパ(6)は、弁部材(1)とは反対の側でバネエレメント(8)に当接しており、該バネエレメント(8)のバネ力は、弁部材(1)の線形の運動の方向で弁の閉鎖又は開放のためにストッパ(6)に作用する、請求項1記載の装置。
【請求項3】
スピンドル(2)は、該スピンドル(2)の端部の領域でそれぞれ第1のスピンドル軸受(3a)及び第2のスピンドル軸受(3b)に回転可能に支承されている、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
スピンドル(2)の中心部(2′)は、第1のスピンドル部分(2a)及び第2のスピンドル部分(2b)よりも大きな外径を有している、請求項1から3までのいずれか一項記載の装置。
【請求項5】
自動車においてハイドロリックオイルを用いた皿形弁において、弁部材(1)に線形の運動をさせるための装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−515865(P2010−515865A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545161(P2009−545161)
【出願日】平成20年1月4日(2008.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050060
【国際公開番号】WO2008/084012
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508097870)コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (205)
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D−30165 Hannover, Germany
【Fターム(参考)】