説明

弁開度調整装置

【課題】
本発明の目的は、装置を大型化することなく弁開度を精度良く調整できる弁開度調整装置を提供することにある。
【解決手段】
開度板12は複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔12が穿設され、同心円列毎に同心円列数に基づいて係止孔12aの角度がずれている。バタフライ弁9の弁軸7を回動させる操作レバー1の操作によりロック部材6のロッドを1個の係止孔12に挿着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントなどの配管におけるバタフライ弁の開度を調整する弁開度調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントなどの配管の流量調節にはバタフライ弁が用いられている。バタフライ弁の弁開度は弁軸に連結固定された操作レバー(ハンドル)によって弁軸を回動して行うようにしている。操作レバーの操作は手動で行っている。弁開度が所定開度になると操作レバーをロックして所定開度を保持している。
【0003】
弁開度を精度良く操作レバーをロックするには、構造が複雑となるのを免れない。このため、ある程度の開度誤差を許容して操作レバーをロックするために、弁が配置されているハウジングに扇状の歯車板を固定しておき、操作レバーに連動した係止部を歯車板の谷部に係合させるようにしている。このことは、例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平9−217858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術は操作レバーに連動した係止部を歯車板の谷部に係合させて操作レバーをロックしている。弁開度を高精度(細かく)で調整するには、歯車板の隣接する歯谷部の間を短くすればよいが、歯が折れ易く製作性も悪くなる。そのため、歯車板は径を大きなものにしなければならず、装置が大型化するという問題点を有する。
【0006】
本発明の目的は、装置を大型化することなく弁開度を精度良く調整できる弁開度調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の特徴とするところは、複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔が穿設され、同心円列毎に同心円列数に基づいて係止孔の角度がずれている開度板を設け、バタフライ弁の弁軸を回動させる操作レバーの操作によりロック部材のロッドを1個の係止孔に挿着するようにしたことにある。
【0008】
具体的に、開度板の係止孔は同心円列毎に規定角度を同心円列数で除した角度だけずれて穿設されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明は複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔が穿設され、同心円列毎に同心円列数に基づいて係止孔の角度がずれている開度板を設け、ロック部材のロッドを複数列の同心円上に穿設されているいずれか1個の係止孔に挿着して操作レバーをロックしているので、装置を大型化することなく弁開度を精度良く調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
円筒形状のハウジングは内周側にバタフライ弁が配設されている。弁軸は一端をバタフライ弁に固定され、他端がハウジングに形成された弁軸筒の外端から突出している。弁軸は弁軸筒の筒内に設けられた軸受によりシールして回動自在に軸支されている。弁軸を回動させる操作レバーは、一端を弁軸の他端に固定された固定レバーに可動レバーを回転可能に連結されている。開度円板は複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔が穿設されている。係止孔は同心円列毎に規定角度を前記同心円列数で除した角度だけずれて穿設されている。開度円板は弁軸筒の外端に取設される。ロック部材は同心円列数のロッドを有している。ロック部材のロッドは可動レバーの回転操作により複数列の同心円上に穿設されているいずれか1個の係止孔に挿着して操作レバーをロックする。
【実施例】
【0011】
図1に本発明の一実施例を示す。図1は一部断面した側面図である。
【0012】
図1において、円筒形状のハウジング10は内周側にバタフライ弁9が配設されている。ハウジング10の内周径は150mm〜400mm程度である。ハウジング10には弁軸筒15が形成されている。弁軸7は一端をバタフライ弁9に固定され、他端がハウジング10に形成された弁軸筒15の外端から突出している。弁軸7の一端側は二股状に形成され、両脚でバタフライ弁9を把持しボルト16により固定される。弁軸7は弁軸筒15の筒内に設けられた軸受11によりシールして回動自在に軸支されている。
【0013】
弁軸7を回動させる操作レバー1は、一端を弁軸7の他端にナット8により固定された固定レバー2と、固定レバー2に支持ピン5で連結された可動レバー3を有する。固定レバー2と可動レバー3の間には戻しばね4が配設されており、固定レバー2と可動レバー3を把持したり、開放することにより矢印Bのように所定角度開閉できる。つまり、可動レバー3は固定レバー2に回転可能に連結されている。
【0014】
操作レバー1は、固定レバー2、可動レバー3、戻しばね4および支持ピン5により構成される。ロック部材6は可動レバー3に取設され、可動レバー3の矢印B方向への回転によって図示の上下方向に移動する。ロック部材6の詳細は後述する。
【0015】
開度円板12は弁軸筒15の外端に取設される。開度円板12は複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔12aが穿設されている。係止孔12aは同心円列毎に同心円列数に基づいて係止孔12aの角度がずれている。ずれ角度は同心円列毎に規定角度を同心円列数で除した角度である。
【0016】
図2にロック部材6の一例構成図を示す。図2はロック部材6の断面図である。
【0017】
ロック部材6は第1ロッド13aと第2ロッド13bを備えている。第1ロッド13aと第2ロッド13bは同一仕様で、図示下側の小径先端部は開度円板12の係合孔12a(12b)に挿着し易く、かつ開度円板12の表面上を円滑に摺動できるよう球面状に形成されている。
【0018】
両ロッド13a、13bはボディ6aに形成した凹部6bに、ばね14と共に収納されている。閉止板15はロッド13a(13b)が凹部6bから脱落しないように設けたもので、ボディ6aの下端面に固定されている。
【0019】
ロック部材6は、図2に図示の状態では、第1ロッド13aはその小径部が開度円板12に設けた係合孔12aに嵌着し、第2ロッド13bはその先端球面部が開度円板12の上面に接触している。このとき、ばね14は、第1ロッド13aでは開放方向、第2ロッド13bでは圧縮方向となっている。
【0020】
図3に開度円板12の一例構成図を示す。図3は図1のA−Aから見た平面図である。
【0021】
開度円板12は2列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔12a、12bが穿設されている。複数個の係合孔12a、12bは、それぞれ弁軸7の中心(開度円板12の中心)を芯とする同心円弧(同心円)Da、Db上に穿設されている。図3では約90度の扇角度範囲θcにおいて、規定角度θa、θbの等間隔で穿設されている。
【0022】
図3では規定角度θa、θbをそれぞれ10°とし、同心円Da、Dbの係合孔12a、12bは5°だけずらして穿設されている。したがって、第1ロッド13aと第2ロッド13bは、5°毎に係合孔12a、12bに嵌着できることになり、この位置において操作レバー1をロックすることが可能となる。すなわち、2列の同心円上に係合孔12a、12bを穿設することにより、弁開度を精度良く調整することができる。
【0023】
このように開度円板12は複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔12a、12bが穿設され、係止孔12a、12bは同心円列毎に規定角度を同心円列数で除した角度だけずれて穿設されている。ロック部材6は同心円列数のロッド13a、13bを有し、ロック部材6のロッド13a、13bは可動レバー3の回転操作により複数列の同心円上に穿設されているいずれか1個の係止孔12a、12bに挿着して操作レバー1をロックする。
【0024】
弁開度調整の操作を説明する。
【0025】
操作レバー1の固定レバー2と可動レバー3を手で把持し、戻しばね4に抗してロック部材6を持ち上げた状態にして操作レバー1を開度円板12の円周方向に回動させる。操作レバー1の回動によりバタフライ弁9も回動して流量調整がなされる。この際、操作レバー1の回動により第1ロッド13aと第2ロッド13bは、係合孔12a、12bに対する嵌着と離脱が5°毎に繰り返される状態になる。
【0026】
任意位置で固定レバー2と可動レバー3の把持を解除すると、戻しばね4の作用で可動レバー3が押し下げられ、同時にロック部材6も押し下げられる。このため、ロッド13aもしくはロッド13bは係合孔12aもしくは係合孔12bのいずれか1個に嵌合して係止される。すなわち、ロック部材6のロッド13は可動レバー3の回転操作により複数列の同心円上に穿設されているいずれか1個の係止孔12に挿着して操作レバー1をロックする。
【0027】
このようにして弁開度調整を行うのであるが、複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔が穿設され、同心円列毎に同心円列数に基づいて係止孔の角度がずれている開度板を設け、ロック部材のロッドを複数列の同心円上に穿設されているいずれか1個の係止孔に挿着して操作レバーをロックしているので、装置を大型化することなく弁開度を精度良く調整することができる。
【0028】
なお、上述の実施例は同心円列を2列としているが、この列数は限定するものではなく任意に設定でき、例えば3列にして10度を3等分した角度でずらすことによりさらに細かい角度ピッチ、約3.3度毎にロックすることができるのは勿論のことである。
【0029】
また、開度板は円板でなく他の形状でもよいことは明らかなことである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例を示す構成図である。
【図2】本発明のロック部材の一例構成図である。
【図3】本発明の開度円板の一例構成図である。
【符号の説明】
【0031】
1…操作レバー、2…固定レバー、3…可動レバー、4…戻しばね、5…支持ピン、6…ロック部材、6a…ボディ、6b…凹部、7…弁軸、8…ナット、9…バタフライ弁、
10…ハウジング、11…軸受、12…開度円板、12…係合孔、13…ロッド、14…ばね、15…弁軸筒。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バタフライ弁が配設されている円筒形状のハウジングと、一端を前記バタフライ弁に固定され、他端が前記ハウジングに形成された弁軸筒の外端から突出して回動自在に軸支されている弁軸と、一端を前記弁軸の他端に固定された固定レバーに可動レバーを回転可能に連結され、前記弁軸を回動させる操作レバーと、複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔が穿設され、同心円列毎に同心円列数に基づいて前記係止孔の角度がずれている開度板と、前記可動レバーの操作により1個の前記係止孔に挿着されるロッドを有するロック部材とを具備することを特徴とする弁開度調整装置。
【請求項2】
内周側にバタフライ弁が配設されている円筒形状のハウジングと、一端を前記バタフライ弁に固定され、他端が前記ハウジングに形成された弁軸筒の外端から突出している弁軸と、前記弁軸筒の筒内に設けられ、前記弁軸をシールして回動自在に軸支する軸受と、一端を前記弁軸の他端に固定された固定レバーに可動レバーを回転可能に連結され、前記弁軸を回動させる操作レバーと、前記弁軸筒の外端に取設され、複数列の同心円上に規定角度の等間隔で複数個の係止孔が穿設されている開度円板と、前記可動レバーの回転操作により1個の前記係止孔に挿着される同心円列数のロッドを有するロック部材とを具備し、前記開度円板は、前記係止孔が同心円列毎に同心円列数に基づいた角度だけずれて穿設されていることを特徴とする弁開度調整装置。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項において、前記開度板あるいは開度円板は、前記係止孔が同心円列毎に前記規定角度を前記同心円列数で除した角度だけずれて穿設されていることを特徴とする弁開度調整装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−266394(P2006−266394A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85217(P2005−85217)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】