説明

強い局部コーティングによって保護された物品

【課題】異なる表面領域を異なるコーティングで保護された保護物品を提供すること。
【解決手段】保護物品(20)が、表面(52)および基板(50)アルミニウム含有量を有する基板(50)を含む。第1の保護層(54)が、基板(50)の表面(52)の第1の領域(40)を覆い、第1の保護層(54)は、基板(50)アルミニウム含有量よりも少なくとも3原子パーセント多い第1保護層アルミニウム含有量を含む組成を有する。第2の保護層(58)が、第1の領域(40)とは別の、基板(50)の表面(52)の第2の領域(42)を覆い、第2の保護層(58)は、少なくとも約60重量パーセントの白金、ロジウム、またはパラジウム、およびそれらの組合せを含む組成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温酸化環境で使用される物品の表面保護に関し、より詳細には、ガスタービン構成要素の表面保護に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機ガスタービン(ジェット)エンジンでは、空気が、エンジンの前部に引き込まれ、軸取付け圧縮器によって圧縮され、燃料と混合される。この混合物が燃焼され、高温排気ガスが、同じ軸に取り付けられたタービンに通される。燃焼ガスの流れは、タービンブレードおよびベーンのエアフォイル部分に当たることによってタービンを回転させ、これが軸を回転させて、圧縮器およびファンに動力を提供する。より複雑な型のガスタービンエンジンでは、圧縮器と高圧タービンが1つの軸に取り付けられ、ファンと低圧タービンが別の軸に取り付けられる。高温排気ガスがエンジンの後部から流れて、エンジンおよび航空機を前方に進める。
【0003】
燃焼および排気ガスが高温であればあるほど、ジェットエンジンの動作が効率良くなる。したがって、燃焼および排気ガスの温度を高めることへの動機がある。通常、燃焼ガスの最高温度は、高温燃焼ガスが当たるタービンのタービンベーンおよびタービンブレードを製造するために使用される材料によって制限される。現行のエンジンでは、タービンベーンおよびブレードは、ニッケルベースの超合金から作成され、最大で約1038〜1177°C(1900〜2150°F)の温度で動作することができる。
【0004】
タービンブレード、タービンベーン、および他の高温部分構成要素の動作温度制限をそれらの現行レベルよりも高めるために、多くの手法が使用されている。例えば、ベース材料自体の組成および処理が改善されており、また、配向粒構造および単結晶構造を利用するために様々な凝固技法が開発されている。物理的な冷却技法が使用される場合もある。
【0005】
さらに別の手法では、基板の表面にコーティングが塗布されて、基板の酸化を抑制し、それにより、通常可能なよりも高い温度で基板材料を使用することができるようにする。最も広く使用されているコーティングは、アルミニウムリッチ層であり、その表面は、酸化してアルミニウム酸化物薄膜になり、さらなる酸化を抑制する。アルミニウムリッチ層は、環境コーティングとして、またはセラミック断熱コーティングの下のボンドコートとして働くことができる。それほど満足の行く結果を伴わないが、他のタイプのコーティングも使用されている。
【特許文献1】特開平07−268520号
【特許文献2】米国特許第6607611号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板を保護するために保護層は使用され続けるが、被覆された基板の動作温度を高め、かつそれらの耐用年数を延ばすために、さらなる改良が常に求められている。本発明は、この要求を満たし、さらに、関連する利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、異なる表面領域を異なるコーティングで保護された保護物品を提供する。最も厳しい状況にさらされる領域は、普通であればコーティングの早期の不具合をもたらすことがある皺または凹凸に対して耐性がある強化された保護コーティングによって保護され、他の領域は、より低費用のコーティングによって保護される。
【0008】
保護物品は、表面および基板アルミニウム含有量を有する基板と、基板の表面の第1の領域を覆う第1の保護層とを備える。第1の保護層は、基板アルミニウム含有量よりも多い、好ましくは基板アルミニウム含有量よりも少なくとも3原子パーセント多い第1保護層アルミニウム含有量を含む組成を有し、典型的には、拡散アルミニウム化合物またはアルミニウム含有被覆である。第1の領域とは別の、基板の表面の第2の領域を覆う第2の保護層が存在する。第2の保護層は、少なくとも約60重量パーセントの白金、ロジウム、パラジウム、またはそれらの組合せを含む組成を有する。任意選択で、セラミック断熱コーティングが、第1の保護層または第2の保護層の少なくともいくらかを覆う。
【0009】
基板は、好ましくはニッケルベース合金であり、最も好ましくはニッケルベース超合金である。基板は、タービンブレードまたはタービンベーンで見られるものなど、エアフォイルの形態にすることができる。その場合、第2の領域は、エアフォイルの後縁部、前縁部、または先端部であることが好ましい。第1の領域は、エアフォイルの残りの部分にすることができる。
【0010】
基板の表面と第2の保護層との間に拡散障壁層が存在する場合もある。好ましい拡散障壁層は、少なくとも約50重量パーセントのレニウム、イリジウム、ルテニウム、タングステン、およびそれらの組合せからなる群から選択される元素を含む。
【0011】
第2の保護層は、純粋な白金、ロジウム、パラジウム、またはこれらの元素の組合せにすることができる。第2の保護層は、白金、ロジウム、およびパラジウムの1つまたは複数と、イリジウム、ニッケル、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、もしくはルテニウム、またはそれらの組合せなど他の元素との合金にすることもできる。後者の元素は、総計が、最大で第2の保護層の約40重量パーセント以下で存在する。拡散障壁層の存在、厚さ、および性質によっては、第2の保護層を、基板から第2の保護層内に相互拡散された元素を含む合金にすることができる。すなわち、例えば、第2の保護層を、第2の保護層の初期堆積元素と、少なくとも1時間にわたって少なくとも1010°C(1850°F)の温度で熱処理することによって基板から第2の保護層内に相互拡散された元素との合金にすることができる。
【0012】
第1の保護層および第2の保護層は、それらの横方向縁部に沿った生じ得る小さな偶発的な重なりを除いて、互いに重ならない。2つの保護層は、保護物品の表面の、横方向で隔てられた領域を保護するように位置決めされる。第2の保護層の機械的な強度は、典型的な使用温度で、第1の保護層の強度よりもかなり大きい。したがって、第2の保護層は、高アルミニウム保護層熱成長酸化物と基板との熱膨張率の差によって、より弱い保護層の皺(凹凸)が生じ得る領域で使用される。そのような領域には、例えば、タービンブレードおよびベーンのエアフォイルの後縁部、前縁部、および先端部が含まれる。皺は、それが生じると、保護コーティングの不具合を早める。高アルミニウム保護層は、表面のこの皺に耐えるには強さが不十分である。本発明の手法の白金族金属ベースの第2の保護層は、そのような保護層の基本的な要件である酸化および腐食に対する耐性をどちらも有し、また比較的強く、皺に耐えられる。しかし、第2の保護層の材料は、第1の保護層の材料よりもかなり費用が高く、かつ重く、したがって、その改良特性が必要とされる場所でのみ使用されることが好ましい。この理由から、第2の保護層は、普通であれば使用中に最大の損傷を受ける領域にのみ塗布され、他の部分には第1の保護層が使用される。第1の保護層または第2の保護層の上にセラミック断熱コーティングを塗布することもできる。
【0013】
本発明の他の特徴および利点は、例として本発明の原理を示す添付図面と共に、以下の好ましい実施形態のより詳細な説明を読めば明らかになろう。ただし、本発明の範囲は、この好ましい実施形態に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、タービンブレードやタービンベーンなど、ガスタービンエンジンの構成要素物品の1つ、この例ではタービンブレード20を示す。タービンブレード20は、エアフォイル22を含み、そこに高温排気ガスの流れが向けられる(タービンベーンは、当該のエアフォイル部分に関して同様の外観をしている)。好ましくは少なくともエアフォイル22、より好ましくはタービンブレード20全体が、実質的に単結晶である。すなわち、単結晶部分には粒界が実質的に存在せず、全体にわたって結晶方位が同じである。用語「実質的に単結晶」は、他の結晶方位を有するいくつかの偶発的な小さな領域が存在することもあるが、実質上、物品全体が単結晶であることを意味する。実質的に単結晶の物品にさえ、通常は数ヶ所の低角度粒界が存在し、これらは、用語「実質的に単結晶」の範囲内で許されるものである。ただし、本発明の手法は、多結晶または配向結晶の微細構造でも使用可能である。
【0015】
タービンブレード20は、ダブテール24によってタービンディスク(図示せず)に取り付けられ、ダブテール24は、エアフォイル22から下方へ延在し、タービンディスクのスロットに係合する。エアフォイル22がダブテール24に接合される領域から、プラットフォーム26が、長手方向で外側へ延在する。いくつかの物品では、複数の任意選択の冷却チャネルが、エアフォイル22の内部を通って延在し、エアフォイル22の表面にある開口28で終端する。冷却空気の流れが、冷却チャネルを通して誘導されて、エアフォイル22の温度を低下させる。
【0016】
使用中、エアフォイル22は、ジェット燃料と空気との混合物を燃焼させることによって発生する高温燃焼ガスによって接触される。エアフォイルへの高温燃焼ガスの接触は、高温および熱変動、ならびにサイクリングの状況では、エアフォイル22の下層金属基板に損傷をもたらす。この損傷から金属基板を保護するために、金属基板の表面に高アルミニウムコーティングを塗布することができる。しかし、エアフォイル22の全ての部分が、同じように、同じ度合で損傷を受けるわけではない。図2および3に示されるように、エアフォイルのいくつかの特定の局部、とりわけ、後縁部30、前縁部32、および/または先端部34は、高アルミニウムコーティングの皺または凹凸を受けやすいことが観察され、これは、これらの位置での高アルミニウムコーティングの急速な不具合、およびエアフォイルの早期の不具合をもたらす可能性がある。
【0017】
本発明の手法によれば、エアフォイル22(または他の損傷を受けやすい構造)が、2つの領域、すなわち、起こり得る損傷があまり激しくない第1の領域40と、起こり得る損傷がより激しい第2の領域42を有すると考えられる。ここで対象とし、かつ先の段落で述べた例では、第2の領域42には、後縁部30、前縁部32、および/または先端部34が含まれる。第1の領域40には、エアフォイル22の残りの部分が含まれる。
【0018】
保護物品、ここではエアフォイル22は、表面52および基板アルミニウム含有量を有する基板50を備える。物品は、ニッケルベース超合金から作成されることが最も好ましい。本明細書で使用する際、「ニッケルベース」は、その組成に、任意の他の元素よりも多くのニッケルが存在することを意味する。ニッケルベース超合金は、ガンマプライム相またはそれに関係する相の析出によって強化された組成物からなる。ニッケルベース合金は、好ましくは、重量パーセントで、約4〜約20パーセントのコバルトと、約1〜約10パーセントのクロムと、約5〜約7パーセントのアルミニウムと、0〜約2パーセントのモリブデンと、約3〜約8パーセントのタングステンと、約4〜約12パーセントのタンタルと、0〜約2パーセントのチタンと、0〜約8パーセントのレニウムと、0〜約6パーセントのルテニウムと、0〜約1パーセントのニオブと、0〜約0.1パーセントの炭素と、0〜約0.01パーセントのホウ素と、0〜約0.1パーセントのイットリウムと、0〜約1.5パーセントのハフニウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる組成を有する。
【0019】
最も好ましい合金組成物はRene(登録商標)N5であり、これは、重量パーセントで、約7.5パーセントのコバルトと、約7パーセントのクロムと、約6.2パーセントのアルミニウムと、約6.5パーセントのタンタルと、約5パーセントのタングステンと、約1.5パーセントのモリブデンと、約3パーセントのレニウムと、約0.05パーセントの炭素と、約0.004パーセントのホウ素と、約0.15パーセントのハフニウムと、最大で約0.01パーセントのイットリウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する。他の使用可能な超合金としては、例えば以下のものがある。Rene(登録商標)N6(重量パーセントで、約12.5パーセントのコバルトと、約4.2パーセントのクロムと、約1.4パーセントのモリブデンと、約5.75パーセントのタングステンと、約5.4パーセントのレニウムと、約7.2パーセントのタンタルと、約5.75パーセントのアルミニウムと、約0.15パーセントのハフニウムと、約0.05パーセントの炭素と、約0.004パーセントのホウ素と、約0.01パーセントのイットリウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、Rene142(重量パーセントで、約12パーセントのコバルトと、約6.8パーセントのクロムと、約1.5パーセントのモリブデンと、約4.9パーセントのタングステンと、約6.4パーセントのタンタルと、約6.2パーセントのアルミニウムと、約2.8パーセントのレニウムと、約1.5パーセントのハフニウムと、約0.1パーセントの炭素と、約0.015パーセントのホウ素と、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、CMSX−4(重量パーセントで、約9.60パーセントのコバルトと、約6.6パーセントのクロムと、約0.60パーセントのモリブデンと、約6.4パーセントのタングステンと、約3.0パーセントのレニウムと、約6.5パーセントのタンタルと、約5.6パーセントのアルミニウムと、約1.0パーセントのチタンと、約0.10パーセントのハフニウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、CMSX−10(重量パーセントで、約7.00パーセントのコバルトと、約2.65パーセントのクロムと、約0.60パーセントのモリブデンと、約6.40パーセントのタングステンと、約5.50パーセントのレニウムと、約7.5パーセントのタンタルと、約5.80パーセントのアルミニウムと、約0.80パーセントのチタンと、約0.06パーセントのハフニウムと、約0.4パーセントのニオブと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、PWA1480(重量パーセントで、約5.00パーセントのコバルトと、約10.0パーセントのクロムと、約4.00パーセントのタングステンと、約12.0パーセントのタンタルと、約5.00パーセントのアルミニウムと、約1.5パーセントのチタンと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、PWA1484(重量パーセントで、約10.00パーセントのコバルトと、約5.00パーセントのクロムと、約2.00パーセントのモリブデンと、約6.00パーセントのタングステンと、約3.00パーセントのレニウムと、約8.70パーセントのタンタルと、約5.60パーセントのアルミニウムと、約0.10パーセントのハフニウムと、残部のニッケルおよび付随する不純物とからなる公称組成を有する)、およびMX−4(重量パーセントで、約0.4〜約6.5パーセントのルテニウムと、約4.5〜約5.75パーセントのレニウムと、約5.8〜約10.7パーセントのタンタルと、約4.25〜約17.0パーセントのコバルトと、0〜約0.05パーセントのハフニウムと、0〜約0.06パーセントの炭素と、0〜約0.01パーセントのホウ素と、0〜約0.02パーセントのイットリウムと、約0.9〜約2.0パーセントのモリブデンと、約1.25〜約6.0パーセントのクロムと、0〜約1.0パーセントのニオブと、約5.0〜約6.6パーセントのアルミニウムと、0〜約1.0パーセントのチタンと、約3.0〜約7.5パーセントのタングステンとからなり、モリブデンと、クロムと、ニオブとの和が約2.15〜約9.0パーセントであり、アルミニウムと、チタンと、タングステンとの和が約8.0〜約15.1パーセントであり、かつ残部がニッケルおよび付随する不純物である、特開平07−268520号に記載された公称組成を有する)。本発明の使用は、これらの好ましい合金に限定されず、より広い適用可能性がある。
【0020】
図4〜5に示されるように、基板50の表面52の第1の領域40を覆う第1の保護層54が存在する。第1の保護層は、基板アルミニウム含有量と少なくとも同量の第1保護層アルミニウム含有量を有する。第1の保護層54は、好ましくは、基板アルミニウム含有量よりも少なくとも3原子パーセント多い第1保護層アルミニウム含有量を含む組成を有する。例えば、基板アルミニウム含有量が14原子パーセントである場合、第1の保護層54は、少なくとも17原子パーセントのアルミニウムを有することが好ましい。第1の保護層54の上面は、酸化して、保護アルミニウム酸化物薄膜(図示せず)を生成し、これは、基板50の表面52のさらなる酸化を抑制する。
【0021】
第1の保護層54は、初めに、アルミニウムと、基板50から第1の保護層54に拡散された元素とのみを含む拡散アルミニウム化合物にすることができ、あるいは、初めに、白金、クロム、シリコン、ジルコニウム、またはハフニウムなど他の元素を含む修正拡散アルミニウム化合物にすることができる。単純な拡散アルミニウム化合物では、アルミニウムが、表面52上に堆積され、表面52内に拡散されて、基板50の元素と相互拡散される。修正拡散アルミニウム化合物は、白金など別の元素の層を表面52上に堆積し、次いで、その元素の層を覆うようにアルミニウム層(純粋なアルミニウム、または修正元素でドープされたもの)を堆積することによって形成することができる。これらの層は、基板のベース金属と相互拡散される。この場合、アルミニウムを含有する第1の保護層54は、ハフニウム、イットリウム、ジルコニウム、クロム、もしくはシリコン、またはそれらの組合せなど修正元素を含む場合がある。使用することができる拡散アルミニウム化合物コーティングは、米国特許第6607611号に記載されており、その開示を参照として組み込む。
【0022】
あるいは、第1の保護層54を、MCrAlX被覆コーティングにすることもでき、これも’611特許に記載されている。用語「MCrAlX」は、環境コーティングとして、または断熱コーティングシステムでのボンドコートとして使用することができる様々な種類の被覆保護層54に対する専門略語である。この表記様式および他の表記様式において、Mは、ニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの組合せを表す。これらの保護層のいくつかでは、クロムが省かれる場合がある。Xは、ハフニウム、ジルコニウム、イットリウム、タンタル、レニウム、白金、シリコン、チタン、ホウ素、炭素、およびそれらの組合せなどの元素を表す。特定の組成は、当技術分野で知られている。MCrAlX組成のいくつかの例として、NiAlCrZrおよびNiAlZrが挙げられ(その開示を参照として組み込む)、しかし、この例の列挙は限定とはみなされない。
【0023】
図5に示されるように、第1の保護層54を覆い、それに接触する任意選択のセラミック断熱コーティング56が存在する場合もある。セラミック断熱コーティング56は、好ましくは厚さ約75〜約400マイクロメートルであり、最も好ましくは厚さ約125〜250マイクロメートルである。セラミック断熱コーティング56は、典型的には、イットリア安定化ジルコニアであり、これは、約3〜約12重量パーセント、好ましくは約4〜約8重量パーセントのイットリウム酸化物を含有するジルコニウム酸化物である。他の使用可能なセラミック材料を用いることもできる。セラミック断熱コーティング56は、電子ビーム物理蒸着またはプラズマスプレーなど任意の使用可能な技法によって堆積することができる。
【0024】
図6〜7に示されるように、第2の保護層58は、第1の領域40とは別の、第1の領域40から横方向で隔てられた基板50の表面52の第2の領域42を覆い、そこに接触する。第2の保護層58は、少なくとも約60重量パーセントの白金、ロジウム、パラジウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される元素を含む組成を有する。第2の保護層58は、厚さ約10マイクロメートル〜約100マイクロメートルであることが好ましい。第2の保護層58は、さらに、40重量パーセント以下のイリジウム、ニッケル、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、もしくはルテニウム、またはそれらの組合せなど、白金、ロジウム、およびパラジウム以外の元素を含む場合もある。
【0025】
第2の保護層58は、第1の保護層54よりも機械的に強い。したがって、第2の領域42で使用中に通常起こるであろう第2の保護層58の皺または凹凸に対して耐性がある。しかし、第2の保護層58は、第1の保護層54よりも高価であり、重い。したがって、その使用を、第2の領域42など、保護コーティングに対する使用中の損傷の可能性が最大である領域にのみ限定することが好ましい。
【0026】
第2の保護層58は、任意の使用可能な手法によって堆積され、しかし電着によって堆積されることが好ましい。例えば白金ベースの第2の保護層58では、白金含有溶液を電着槽に入れ、溶液から基板50上に白金を堆積することによって堆積が達成されることが好ましい。1つの使用可能な白金含有水溶液は、濃度約4〜20グラム/リットルの白金を有するPt(NHHPOである。電圧/電流源は、仕上げ物品表面の平方フィート当たり約1/2〜10アンペア(平方メートル当たり約5.4〜108アンペア)で操作される。電着は、190〜200°Fの温度で行われる。
【0027】
図7に、第2の領域42での保護システムのさらなる実施形態を示す。この場合には、第2の保護層58を覆い、それに接触する任意選択のセラミック断熱コーティング60が存在する。セラミック断熱コーティング60は、他の点では、第1の保護層54を覆うセラミック断熱コーティング56と特徴および機能の面で同等であり、セラミック断熱コーティング56の先の論述をここに組み込む。
【0028】
また、図7は、基板50の表面52と第2の保護層58との間にある任意選択の拡散障壁層62を示す。拡散障壁層62は、耐熱性の純粋な金属または合金であることが好ましい。拡散障壁層62に適した材料の例として、レニウム、イリジウム、タングステン、およびルテニウム、ならびにそれらの組合せが挙げられる。拡散障壁層62は、厚さ約3〜約25マイクロメートルであることが好ましい。拡散障壁層62は、基板50内に存在し、普通であれば第2の保護層58内に拡散して、層58を希釈する元素に関して、かつ第2の保護層58内に存在し、普通であれば第2の保護層58から出て基板50内に拡散し、やはり第2の保護層58の希釈をもたらす元素に関して、低い拡散速度を有する。したがって、拡散障壁層62は、第2の保護層58から基板50内への元素の拡散、および基板50から第2の保護層58内への元素の拡散を抑制する。
【0029】
本発明の手法は、比較的高価な第2の保護層58を、それが必要とされる第2の領域42にのみ使用する。この領域では、第1の保護層54など別の層は、第2の領域42内で受ける一層厳しい環境で早期に不具合を起こす傾向があるので、十分な保護を提供しない。
【0030】
本発明の特定の実施形態を例示の目的で詳細に説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な修正および強化を施すことができる。なお、特許請求の範囲に記載された符号は、理解容易のためであってなんら発明の技術的範囲を実施例に限縮するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】タービンブレードの斜視図である。
【図2】図1のタービンブレードの正面図である。
【図3】線3−3に沿った図2のタービンブレードの断面図である。
【図4】第1の保護層の第1の実施形態を例示する、線4−4に沿った図3のタービンブレードの拡大概略断面図である。
【図5】第1の保護層の第2の実施形態を例示する、線4−4に沿った図3のタービンブレードの拡大概略断面図である。
【図6】第2の保護層の第1の実施形態を例示する、線6−6に沿った図3のタービンブレードの拡大概略断面図である。
【図7】第2の保護層の第2の実施形態を例示する、線6−6に沿った図3のタービンブレードの拡大概略断面図である。
【符号の説明】
【0032】
20 タービンブレード
22 エアフォイル
24 ダブテール
26 プラットフォーム
28 開口
30 後縁部
32 前縁部
34 先端部
40 第1の領域
42 第2の領域
50 基板
52 表面
54 第1の保護層
56、60 セラミック断熱コーティング
58 第2の保護層
62 拡散障壁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面(52)および基板(50)アルミニウム含有量を有する基板(50)と、
前記基板(50)の前記表面(52)の第1の領域(40)を覆う第1の保護層(54)であって、前記基板(50)アルミニウム含有量よりも少なくとも3原子パーセント多い第1保護層アルミニウム含有量を含む組成を有する第1の保護層(54)と、
前記第1の領域(40)とは別の、前記基板(50)の前記表面(52)の第2の領域(42)を覆う第2の保護層(58)であって、少なくとも約60重量パーセントの白金、ロジウム、パラジウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される元素を含む組成を有する第2の保護層(58)と
を備える保護物品(20)。
【請求項2】
前記第1の保護層(54)が拡散アルミニウム化合物層である請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項3】
前記第1の保護層(54)がアルミニウム含有被覆層である請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項4】
さらに、
前記第1の保護層(54)または前記第2の保護層(58)の少なくとも一部を覆うセラミック断熱コーティング(56、60)
を含む請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項5】
前記基板(50)がニッケルベース合金である請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項6】
さらに、
前記基板(50)の前記表面(52)と前記第2の保護層(58)との間に拡散障壁層(62)を含む請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項7】
さらに、
前記基板(50)の前記表面(52)と前記第2の保護層(58)との間に拡散障壁層(62)を含み、前記拡散障壁層(62)が、少なくとも50重量パーセントのレニウム、イリジウム、ルテニウム、タングステン、およびそれらの組合せからなる群から選択される元素を含む請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項8】
前記基板(50)が、エアフォイル(22)の形態であり、第2の領域(42)が、後縁部(30)、前縁部(32)、または先端部(34)である請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項9】
前記第2の保護層(58)の組成が、さらに、40重量パーセント以下のイリジウム、ニッケル、クロム、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、レニウム、またはルテニウム、およびそれらの組合せからなる群から選択される元素を含む請求項1記載の保護物品(20)。
【請求項10】
前記第2の保護層(58)が、さらに、白金、ロジウム、およびパラジウム以外の合金元素を含む請求項1記載の保護物品(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−57182(P2006−57182A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238062(P2005−238062)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】