説明

弾性ローラの製造方法および弾性ローラ

【課題】従来のような他の問題を生ずることなく、より簡易に、軸と弾性体との間を固定することが可能な弾性ローラの製造方法およびそれにより得られる弾性ローラを提供する。
【解決手段】軸1と、その外周に担持された弾性体2とを備える弾性体ローラの製造方法である。弾性体2に長手方向に貫通する孔3を設け、軸1を貫通孔3に挿入することにより軸1と弾性体2とを一体化させるにあたり、軸1および弾性体2として、軸1の外径φと弾性体2の貫通孔径φとがφ>φを満足する組み合わせを用いるとともに、弾性体2の貫通孔3をエアにて拡径して、拡径された貫通孔3内に軸1を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性ローラの製造方法および弾性ローラ(以下、単に「製造方法」および「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、複写機やプリンタ、ファクシミリ等に使用されるOA機器用の弾性ローラの製造方法および弾性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置や静電記録装置においては、電子写真プロセスの各工程で、転写ローラ、現像ローラ、トナー供給ローラ、クリーニングローラ、給紙ローラ、搬送ローラ等の各種ローラ部材が多様な役割を果たしている。
【0003】
かかるローラ部材には感光体等に対し均一な力で弾性接触することが必要とされるため、これらローラ部材は通常、芯金等の軸の外周にゴム材料や樹脂材料からなる弾性体を担持させて形成され、軸を中心として回転させることで、紙送りや転写、現像などのアクションを行う。
【0004】
上記のような構成のローラ部材を製造するにあたっては、通常、軸の外径に対応する貫通孔を有する円筒状の弾性体を作製して、この貫通孔にエアを導入して弾性体を膨らませた状態で軸を挿入することによりローラ形状とするが、この場合、弾性体と軸との摩擦が低いと、使用時のローラの空転や弾性体のズレが発生して所望のローラ性能を発揮できないという問題があった。そのため、これを防止するために、弾性体と軸との間に接着剤を塗布することが行われている。
【0005】
軸と弾性体とからなる構成のローラに係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、簡便な方法でゴム層を芯金から能率良く的確に分離できるようにすることを目的として、円筒状の芯金の両端部に回転軸を突出させ、その芯金の周面にゴム層を被覆したゴム被覆ローラにおいて、ゴム層の端部を芯金の両端部または一端部から、芯金の軸線方向外側に突出させる技術が開示されており、ゴム層と芯金との間隙に加圧エアーを供給することにより、これらゴム層と芯金とを分離できることについても開示されている。
【特許文献1】特開平8−277833号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、ローラ部材を製造するにあたり、軸−弾性体間に接着剤を塗布すれば、ローラの空転や弾性体のズレに伴う不具合の発生を防止することは可能である。しかしながらこの場合、軸と弾性体という異種材料間の接着に適した適切な接着剤を選択する必要があり、また、接着剤の塗布および乾燥の工程が新たに必要となるなど、製造上煩雑となっていた。したがって、より簡易に、上記不具合を防止しうる技術の確立が求められていた。
【0007】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、従来のような他の問題を生ずることなく、より簡易に、軸と弾性体との間を固定することが可能な弾性ローラの製造方法およびそれにより得られる弾性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、軸と弾性体との嵌合部における両者の寸法を変えて、軸の外径が弾性体の貫通孔径より大きくなるようにするとともに、弾性体の貫通孔に対する軸の挿入をエアーを用いて行うものとすることで、上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の弾性ローラの製造方法は、軸と、該軸の外周に担持された弾性体とを備える弾性体ローラの製造方法において、
前記弾性体に長手方向に貫通する孔を設け、前記軸を該貫通孔に挿入することにより前記軸と弾性体とを一体化させるにあたり、該軸および弾性体として、該軸の外径φと該弾性体の貫通孔径φとがφ>φを満足する組み合わせを用いるとともに、該弾性体の貫通孔をエアにて拡径して、拡径された該貫通孔内に前記軸を挿入することを特徴とするものである。
【0010】
なお、前述したように、特許文献1には、芯金の周面にゴム層を被覆したゴム被覆ローラに係る技術として、ゴム層と芯金との分離にエアを用いることが開示されているが、これらを組み付ける際に関しては、圧入する旨の記載があるのみであって、エアを用いることについては何らの開示もされていない。
【0011】
本発明においては、前記軸の外径φと前記弾性体の貫通孔径φとの径差を、0.5mm以上2mm以下とすることが好ましい。また、前記軸の外径φより大きい孔径φを有するエアノズルを用いて、前記貫通孔の拡径を行うことが好ましく、この場合好適には、前記軸の外径φと前記エアノズルの孔径φとの径差を1mm以上とし、かつ、該エアノズルの孔径φを、前記弾性体の外径φ以下とする。さらに、本発明においては、前記軸を前記弾性体の貫通孔内に挿入する際における、該軸と弾性体との間の長手方向の位置決めを、該軸の送り量により調整することができる。
【0012】
また、本発明の弾性ローラは、上記本発明の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、従来に比し、より簡易に軸と弾性体との間を固定することが可能な弾性ローラの製造方法およびそれにより得られる弾性ローラを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に本発明の弾性ローラの概略斜視図を、図2(a)〜(d)に本発明の弾性ローラの製造方法の一好適実施形態に係る説明図を、それぞれ示す。図示するように、本発明は、軸1と、その外周に担持された弾性体2とを備える弾性ローラ10を製造するにあたり、弾性体2に長手方向に貫通する孔3を設け、軸1をこの貫通孔3に挿入することにより軸1と弾性体2とを一体化させるものである。
【0015】
本発明においては、軸1および弾性体2として、軸1の外径φと弾性体2の貫通孔径φとがφ>φを満足する組み合わせを用いて(図2参照)、弾性体2の貫通孔3をエアにて拡径することにより、拡径された貫通孔3内に軸1を挿入する。すなわち、弾性体2の貫通孔3の径φを軸1の外径φよりも小さく形成しておき(図2(a))、この貫通孔3をエアノズル20からのエアにより拡径して、その状態で軸1を貫通孔3に挿入することで(図2(b),(c))、両者を一体化させて弾性ローラ10を得るものである(図2(d))。
【0016】
本発明の製造方法によれば、簡易な工程で軸1に弾性体2を組み付けできるため、従来に比し組み付け工程の作業効率を高めて、量産性を向上することが可能となる。一方で、弾性体2の貫通孔3の径が軸1の外径よりも小さいことから、組み付け後においては、弾性体2の弾性変形に起因する摩擦力の向上により、軸1−弾性体2間を強固に密着させることができ、従来のように接着剤を用いることなく、ローラの空転や弾性体のズレによる不具合の発生のない弾性ローラが得られるものである。
【0017】
この場合、軸の外径φと弾性体の貫通孔径φとの径差は0.5mm以上2mm以下とすることが好ましく、これにより、弾性体2の正常な加工を確保するとともに良好なローラ性能を担保することが可能となる。この径差が0.5mm未満であると、軸と弾性体との間ですべりが発生するおそれがあり、一方、2mmを超えると、貫通孔がエアで拡径し難くなるため、製品性能と作業効率とのバランスの観点からはこの範囲内が好適である。
【0018】
ここで、軸1を挿入する際のエアの噴射圧は、弾性体2の硬度や貫通孔3の径、軸1の外径等の条件にもよるが、好適には0.1MPa〜0.5MPaとする。エアの噴射圧が小さすぎると、貫通孔3の拡径が不十分で軸1をスムーズに挿入することができず、一方、大きすぎると、エアの圧により軸1の挿入がし難くなってしまう。
【0019】
また、図示するように、弾性体2の貫通孔3の拡径にはエアノズル20を用いるが、このエアノズル20としては、孔径φが軸1の外径φより大きいものを用いることが好ましい。これにより、図2(c)に示すように、エアノズル20からエアを噴射し続けながら、軸1を所望の位置まで挿入することができ、後加工等を要することなく、所望の形状の弾性ローラ10を得ることができる。
【0020】
この場合、軸1の外径φとエアノズル20の孔径φとの径差は、1mm以上、特には3mm以上とすることが好ましく、これにより、軸1の挿入時における軸1とエアノズル20との接触を確実に防止することができる。また、エアノズル20の孔径φは、噴射エアによる貫通孔3の拡径を確実に行う観点からは、弾性体2の外径φ以下とすることが好ましい。なお、エアノズル20の形状としては、先端部が弾性体2と密接するものであればよく、また、弾性体2の貫通孔径φの拡縮に伴ってエアノズル20の孔径φが自在に拡縮するようなアダプター(図示せず)を用いてもよい。
【0021】
なお、軸1を貫通孔3内に挿入するに際して、軸1と弾性体2との間の長手方向の位置決めは、軸1の送り量により容易に調整することができ、軸や装置に別途位置決め手段を設ける必要がないため、この点からも構成を簡素化することができる。
【0022】
図2では、軸1の挿入方向とは反対の側から、弾性体2の貫通孔3にエアノズル20によりエアを導入することで貫通孔3の拡径を行ったが、本発明の製造方法は、図5(a)〜(d)に示すように実施することも可能である。図5では、軸11として内部に空洞12を有する中空状のものを用いて、軸11内部の空洞12を介して弾性体2の貫通孔3にエアを導入している。この場合、貫通孔3の軸11の挿入方向と反対の側を部材30により塞いでエアを軸11側に逆流させることで、図2の場合と同様に貫通孔3を拡径させることができ、この状態で軸11を貫通孔3内部に挿入することで、軸11と弾性体2とを容易に一体化することができる。なお、この実施形態においても、各部の径等の条件は上記と同様とすることができる。また、図示するように、軸11の先端部に、挿入を容易にするためのアダプター13を設けてもよい。
【0023】
本発明の製造方法においては、軸と弾性体との一体化を上記条件を満足するよう実施するものであればよく、それ以外の工程については常法に従い適宜行うことができ、特に制限されるものではない。本発明は特に、アスカーC硬度で25°〜55°のウレタンやゴム等からなる弾性体2を用いたゴムローラやウレタンローラ等に好適に適用可能である。
【0024】
本発明の弾性ローラは、上記本発明の製造方法により得られるものであり、例えば、弾性体部分の長さを200〜400mmとして形成することができる。本発明の弾性ローラは、軸に弾性体が接着剤なしで組み付けられているために製造コストが安価であるとともに、軸と弾性体との間の固定が強固であるために、ローラの空転や弾性体のズレによる不具合の発生がないものである。
【0025】
弾性ローラの軸1としては、例えば、硫黄快削鋼やアルミニウム、ステンレス鋼等に、ニッケル、亜鉛めっき等を施したものを好適に用いることができる。
【0026】
例えば、弾性体2をウレタンにより形成する場合には、弾性体2は、金型を用いて所望の形状に成形した後、貫通孔を形成することにより得ることができ、その原料としては、例えば、下記に挙げるポリイソシアネート成分およびポリオール成分を用いることができる。
【0027】
ポリイソシアネート成分としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネートおよびこれらの誘導体等を用いることができ、中でも、芳香族イソシアネートおよびその誘導体、特には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびこれらの誘導体が好適に用いられる。
【0028】
トリレンジイソシアネートおよびその誘導体としては、例えば、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物等が用いられる。
【0029】
また、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンおよびその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートおよびその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。更に、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体等をブレンドして用いてもよい。
【0030】
これらイソシアネート成分は、イソシアネートをポリオールによりあらかじめプレポリマー化して用いてもよい。その方法としては、ポリオールおよびポリイソシアネートを適当な容器に入れ、十分に撹拌して、30〜90℃、好ましくは40〜70℃にて、6〜240時間、好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。
【0031】
ポリオール成分としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。
【0032】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が好ましくは2〜95重量%、より好ましくは5〜90重量%であり、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましい。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの配列は、ランダムであることが好ましい。
【0033】
なお、かかるポリエーテルポリオールの分子量としては、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、400〜3000の範囲のものがより好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、1500〜6000の範囲のものがより好ましい。更に、2官能のポリオールと3官能のポリオールとを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0034】
また、ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得ることができ、重量平均分子量が400〜4000の範囲、特には、650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。さらに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。
【0035】
さらに、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましい。この場合、これらのブレンド比率が、重量比で95:5〜20:80の範囲、特には90:10〜50:50の範囲となるよう用いることが好適である。
【0036】
また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やこれらの誘導体を併用することもできる。
【0037】
ポリウレタン原料の硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコール(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0038】
ローラに導電性を付与する場合には、ポリウレタン原料中に導電剤を加えることができる。導電材にはイオン導電剤と電子導電剤があり、イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム等のドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンミニウム等のオクタデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム等のアンモニウムの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、アルキル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などの有機イオン導電材;リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などの無機イオン導電剤が挙げられる。また、電子導電剤としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンブラック;SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボンブラック;酸化カーボンブラック等のインク用カーボンブラック、熱分解カーボンブラック、グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅等の金属;カーボンウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化チタンウイスカー、導電性チタン酸カリウムウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカー、導電性酸化チタンウイスカー、導電性酸化亜鉛ウイスカー等の導電性ウイスカーなどが挙げられる。これら導電剤を適宜添加することで、ローラの体積固有抵抗を調整することができる。
【0039】
弾性体2をウレタンフォームにより形成する場合には、ウレタンフォームの密度は0.2〜0.8g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.6g/cmである。ポリウレタン原料をあらかじめ発泡させるための方法としては、従来から用いられているメカニカルフロス法、水発泡法、発泡剤フロス法等の方法を用いることができるが、密度0.2〜0.8g/cm、アスカーC硬度20〜65°の独立気泡構造を有するポリウレタンフォームを得る場合には、不活性ガスを混入しながら機械的攪拌により発泡させるメカニカルフロス法を用いることが好ましい。ここで、メカニカルフロス法において用いる不活性ガスは、ポリウレタン反応において不活性なガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ラドン、クリプトン等の狭義の不活性ガスの他、窒素、二酸化炭素、乾燥空気等のポリウレタン原料と反応しない気体が挙げられる。発泡させたポリウレタン原料を金属モールド等に注型し、硬化させることにより、金属モールドに接した部分に自己スキン層(薄い層状の皮膜)が形成されたポリウレタンフォームを得ることができる。その際、金属モールドの内面をフッ素樹脂等でコーティングする等の方法により、金属モールドに離型性を付与することができる。
【0040】
また、ポリウレタン原料中には、用途に応じて、上記の他、無機炭酸塩等の充填材、シリコーン整泡剤や各種界面活性剤等の整泡剤、フェノールやフェニルアミン等の酸化防止剤、低摩擦化剤、電荷調整剤などを適宜添加することができる。このうちシリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン・ポリオキシアルキレン共重合物等を好適に用いることができ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。また、界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や、各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリウレタン原料100質量部に対して好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0041】
また、弾性体2をゴムにより形成する場合には、弾性体2の成形は、ゴム原料の押出しにより行うことができる。かかるゴム原料は、ゴム材料に加えて、さらに、所望により化学発泡剤、導電剤、加硫剤、加硫促進剤、オイル、可塑剤、亜鉛華、ステアリン酸、炭酸カルウシム、マグネシアなどのゴム用添加剤を添加して形成される。
【0042】
ゴム材料としては、例えば、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、アクリルゴムなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、弾性体2を発泡ゴムとする場合に用いる化学発泡剤としては、特に制限はなく、公知の無機発泡剤および有機発泡剤のうちから適宜選択して用いることができる。ここで、無機発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水素化ホウ酸ナトリウムなどが挙げられ、有機発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、バリウムアゾジカルボキシレート、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、p−トルエンスルホニルヒドラジドなどが挙げられる。これらの化学発泡剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも特に、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)およびアゾジカルボンアミドが、緻密で均一な発泡セルが得られることから好適である。この化学発泡剤の使用量は、ゴム材料100質量部に対し、通常0.5〜20質量部、好ましくは1〜15質量部の範囲である。
【0044】
また、導電剤としては、上記したポリウレタンフォームの場合と同様のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック;ニッケルや銅などの金属粉末;酸化錫,酸化チタン,酸化亜鉛などの金属酸化物粉末やその他導電性金属複酸化物粉末;金属やアンモニウムなどの過塩素酸塩,アルキル硫酸塩,カルボン酸塩,ホウフッ化水素酸塩などのイオン導電剤を挙げることができ、これらのうちから適宜選択して用いることができる。これら導電剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その配合量は、所望の固有抵抗値をもつ発泡体層が得られるように、導電剤の種類に応じて適宜選定することができる。
【0045】
加硫剤としては、ゴム材料の種類に応じて、公知の加硫剤、例えば、硫黄や過酸化物などの中から適宜選択することができる。
【0046】
上記各成分を用いてゴム原料を調製するに際しては、ゴム材料と、導電剤と、化学発泡剤および加硫剤を除く他の添加剤とを、70〜130℃程度の温度で混練した後、50〜90℃程度の比較的低温で所望に応じ化学発泡剤および加硫剤を添加、混練し、早期加硫や早期発泡を抑制することが好ましい。混練は、ロール、ニーダー、ミキサーなどを用いて行うことができる。
【0047】
次いで、このようにして調製されたゴム原料を、押出成形機等を用いてチューブ状に押出成形し、加硫することにより、ゴムからなる弾性体2を得ることができる。加硫は、加硫缶や金型を用いて行うことができる他、マイクロ波加熱および熱風を併用する方法を用いることもできる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
弾性体2の原料として下記表1中に示す配合のゴム原料を用いて、押出成形により成形したものを外径φ:18mm、長さ:230mmに定尺裁断して、弾性体2を作製した。弾性体2としては、カーボンブラック量の調整により、アスカーC硬度30°および45°の2種類のものを作製した(下記表1参照)。得られた弾性体2に、下記表2中に示すように孔径φを変えて長手方向に貫通する孔3を設けた。
【0049】
【表1】

【0050】
軸1として芯金(外径φ:6mm,長さ:250mm,材質:ステンレス)を用い、図2に示す手順にて、貫通孔3内に軸1を挿入することにより軸1と弾性体2とを一体化させて、弾性ローラ10を作製した。具体的には、まず、貫通孔3内に軸1を少し挿入して、反対側から貫通孔3内にエアを導入して貫通孔3を拡径し、貫通孔3が拡径された状態で、内部に軸1を挿入し、所望の位置まで軸1を送ったところでエアの噴射を止めて、軸1と弾性体2とが一体化されてなる弾性ローラ10を得た。使用したエアノズル20の孔径φは10mmであり、エアの噴射圧は0.2MPaとした。
【0051】
<評価方法>
軸1を弾性体2に挿入した際のトルク(cN・m)を測定するとともに、弾性体2表面の研磨を、回転砥石(株式会社テイケン製、型番:GC80(炭化ケイ素),外径φ405mm,幅50mm)を用いて行い、軸1と弾性体2との間でズレが生ずるか否かにつき評価した。ズレの有無については、ズレが生じなかった場合を「○」とし、ズレが生じた場合には、何度回転したかを角度にて示した。
これらの結果を、下記の表2中に併せて示す。また、貫通孔径φとトルクとの関係を、アスカーC硬度30°および45°の場合のそれぞれにつき、図3,4のグラフに示す。
【0052】
【表2】

【0053】
上記表2中に示すように、本発明のエアを用いた製造方法により得られる弾性ローラは、軸と弾性体との間の摩擦力が強いために、接着剤なしでも強固な固定状態が得られており、空転や芯金ズレ等の問題を生じないことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施の形態に係る弾性ローラを示す概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る弾性ローラの製造方法を示す説明図である。
【図3】実施例における、アスカーC硬度30°の弾性体を用いた場合の貫通孔径φとトルクとの関係を示すグラフである。
【図4】実施例における、アスカーC硬度45°の弾性体を用いた場合の貫通孔径φとトルクとの関係を示すグラフである。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る弾性ローラの製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1,11 軸(芯金)
2 弾性体
3 貫通孔
10 弾性ローラ
12 空洞
13,30 アダプタ
20 エアノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸の外周に担持された弾性体とを備える弾性体ローラの製造方法において、
前記弾性体に長手方向に貫通する孔を設け、前記軸を該貫通孔に挿入することにより前記軸と弾性体とを一体化させるにあたり、該軸および弾性体として、該軸の外径φと該弾性体の貫通孔径φとがφ>φを満足する組み合わせを用いるとともに、該弾性体の貫通孔をエアにて拡径して、拡径された該貫通孔内に前記軸を挿入することを特徴とする弾性ローラの製造方法。
【請求項2】
前記軸の外径φと前記弾性体の貫通孔径φとの径差を0.5mm以上2mm以下とする請求項1記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項3】
前記軸の外径φより大きい孔径φを有するエアノズルを用いて、前記貫通孔の拡径を行う請求項1または2記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記軸の外径φと前記エアノズルの孔径φとの径差を1mm以上とし、かつ、該エアノズルの孔径φを、前記弾性体の外径φ以下とする請求項3記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記軸を前記弾性体の貫通孔内に挿入する際における、該軸と弾性体との間の長手方向の位置決めを、該軸の送り量により調整する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか一項記載の弾性ローラの製造方法により製造されたことを特徴とする弾性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−298825(P2008−298825A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141503(P2007−141503)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】