説明

弾性表面波デバイスの製造方法

【課題】周波数の経時的変化を抑制できるSAWデバイスの製造方法の提供。
【解決手段】圧電基板11にすだれ状電極12を形成するSAW素子片形成工程S1と、(1)すだれ状電極12の電極指12a,12bの質量を変化させる工程、(2)すだれ状電極12に質量体を付加する工程、(3)電極指12a,12b間に露出している圧電基板11をエッチングする工程の少なくとも1つの工程を行い、SAW素子片10の周波数を調整する第1周波数調整工程S2と、第1周波数調整工程S2後、SAW素子片10を200℃以上500℃以下の雰囲気中で5分以上加熱するアニール工程S3と、上記各工程を終了後、SAW素子片10に設けられたボンディングパッド14a,14bと、パッケージベース32に設けられたボンディングパッド33a,33bとを、Auワイヤー50にて接続するボンディング工程S6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW:Surface Acoustic Wave)デバイス(以下、SAWデバイスともいう)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、SAWデバイスの製造方法に関して、特に周波数調整方法に関しては、下記のような方法が知られている。
例えば、特許文献1には、IDT(Inter Digital Transducer)及び圧電基板(圧電体)に、イオンを物理的に衝突させてIDT及び圧電基板の厚みを、それぞれの密度に応じて減少させる方法、その先行技術として、圧電基板に形成されたIDTを選択的にウエットエッチングする方法、圧電基板を選択的にウエットエッチングする方法、RIE(Reactive Ion Etching)によって、フッ化炭素ガスなどを用いてIDT及び圧電基板をドライエッチングする方法、などが開示されている。
また、非特許文献1には、SAWデバイスの構成要素の1つである弾性表面波素子片(以下、SAW素子片、弾性表面波基板、SAW基板ともいう)の周囲の雰囲気ガスの種類や圧力が、SAWデバイスの周波数に影響を与えることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−315928号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.S.Schoenwald他:「Surfase chemistry related to SAW resonator aging」,IEEE Ultrasonics symposium proceeding,(1980),pp.193−199(特に図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ウエットエッチングによる周波数調整方法においては、エッチング液の残渣によって、IDTまたは圧電基板の腐食などの化学変化が経時的に進行する虞があることから、SAWデバイスの周波数に経時的変化が生じるという問題がある。
また、上記RIEによる周波数調整方法においても、フッ化炭素ガスなどの腐食性のガスの残渣によって、上記と同様に、IDTまたは圧電基板の腐食などの化学変化が経時的に進行する虞があることから、SAWデバイスの周波数に経時的変化が生じるという問題がある。
【0006】
これらに対して、上記IDT及び圧電基板にイオンを物理的に衝突させてIDT及び圧電基板の厚みを減少させる周波数調整方法においては、上記のような、エッチング液の残渣や腐食性のガスの残渣が発生しないことから、上記課題をある程度低減し得る(但し、イオンを物理的に衝突させた際に発生する微小な破片が、IDT及び圧電基板に付着する虞があり、SAWデバイスの周波数の経時的変化に及ぼす影響が皆無とはいえない)。
しかしながら、上記の方法は、IDTと圧電基板との密度の差を大きくしないと、換言すれば、IDTの材質と圧電基板の材質との組み合わせをかなり限定しないと、周波数調整量が十分に得られないことから、所望の周波数に合わせ込むことが困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法は、圧電基板上にIDTを形成する弾性表面波基板形成工程と、(1)前記IDTを構成する電極指の質量を変化させる工程、(2)前記IDTに質量体を付加する工程、(3)前記IDTの前記電極指間にて露出している前記圧電基板をエッチングする工程の前記(1)〜(3)の少なくとも1つの工程を行い、前記弾性表面波基板の周波数を調整する第1周波数調整工程と、前記第1周波数調整工程後、前記弾性表面波基板を200℃以上500℃以下の雰囲気中で5分以上加熱するアニール工程と、前記弾性表面波基板形成工程と前記第1周波数調整工程と前記アニール工程とを終了後、前記弾性表面波基板上に設けられたAlまたはAl合金を含んでなるボンディングパッドと、前記弾性表面波基板が固定されるベース基板に設けられたボンディングパッドとを、Auを含んでなるボンディングワイヤーにて電気的に接続するボンディング工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、第1周波数調整工程で、実績のある(1)〜(3)の少なくとも1つの工程を行うことから、確実な周波数調整ができる。
そして、SAWデバイスの製造方法は、第1周波数調整工程後、SAW基板を200℃以上500℃以下の雰囲気中で5分以上加熱するアニール工程を有していることから、第1周波数調整工程に用いた、例えば、エッチング液またはエッチングガスの残渣が、SAW基板上から蒸発する。
また、SAWデバイスの製造方法は、第1周波数調整工程でIDTに付加された質量体の膜質変化や物性変化を、上記アニール工程によって一気に進行させてしまうことで、IDTに付加された質量体の膜質や物性を安定した状態にし、膜質や物性の経時的変化を抑制することができる。
これらのことから、SAWデバイスの製造方法は、SAWデバイスの周波数の経時的変化を抑制することができる。換言すれば、SAWデバイスの製造方法は、SAWデバイスの周波数特性を向上させることができる。
【0010】
また、SAWデバイスの製造方法は、上記アニール工程後に、ボンディング工程を行うことから、アニール工程に起因する高温下での暴露によるボンディングワイヤーとSAW基板上に設けられたボンディングパッドとの接合部の劣化を回避できる。
【0011】
[適用例2]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法において、前記ベース基板に前記弾性表面波基板を固定する弾性表面波基板固定工程を、さらに有し、前記弾性表面波基板固定工程を、前記アニール工程より後に行うことが好ましい。
【0012】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、SAW基板固定工程を、アニール工程より後に行うことから、SAW基板固定工程をアニール工程より前に行う場合と比較して、アニール工程に起因する高温下での暴露による、例えば、SAW基板を固定する接着剤などの劣化、SAW基板固定部の熱応力の発生などを回避できる。
【0013】
[適用例3]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法において、前記ベース基板に前記弾性表面波基板を固定する弾性表面波基板固定工程を、さらに有し、前記弾性表面波基板固定工程を、前記第1周波数調整工程より前に行うことが好ましい。
【0014】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、SAW基板固定工程を、第1周波数調整工程より前に行うことから、SAW基板がベース基板に固定された状態で第1周波数調整工程が行われる。
この結果、SAWデバイスの製造方法は、SAW基板がベース基板に固定される際に生じる周波数のばらつきを、第1周波数調整工程で吸収できることから、第1周波数調整工程をSAW基板固定工程より前に行う場合より、以降の周波数調整量を少なくすることができる。
【0015】
[適用例4]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法において、前記ベース基板にキャップを接合してパッケージを構成し、前記弾性表面波基板を前記パッケージの内部空間に収容する第1封止工程と、前記ベース基板または前記キャップに形成された貫通孔から前記内部空間に不活性ガスを供給して前記弾性表面波基板の周波数を変化させる、または前記内部空間に供給した前記不活性ガスの圧力及び種類の少なくともいずれかを変化させて前記弾性表面波基板の周波数を変化させる第2周波数調整工程と、前記貫通孔を封止材で塞ぐ第2封止工程と、をさらに有し、前記第1封止工程と、前記第2周波数調整工程と、前記第2封止工程とを、前記ボンディング工程より後に行うことが好ましい。
【0016】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、SAW基板をパッケージの内部空間に収容する第1封止工程と、ベース基板またはキャップに形成された貫通孔から内部空間に不活性ガスを供給する、または供給した不活性ガスの圧力及び種類の少なくともいずれかを変化させてSAW基板の周波数を変化させる第2周波数調整工程と、貫通孔を封止材で塞ぐ第2封止工程と、を有している。
そして、SAWデバイスの製造方法は、これらの工程を、ボンディング工程より後に行うことから、ボンディング工程後のSAWデバイスの周波数の微調整を、従来のようなエッチング液またはエッチングガスの残渣が発生することなく行うことができる。
この結果、SAWデバイスの製造方法は、SAWデバイスの周波数の経時的変化を、さらに抑制することができる。
【0017】
[適用例5]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法において、前記第2周波数調整工程では、前記第1封止工程終了後に、大気中または所定の雰囲気中において弾性表面波の周波数を測定し、測定した前記周波数と予め設定した所望周波数とを比較し、測定した前記周波数が前記所望周波数よりも低い場合には、前記内部空間の圧力を上昇させ、測定した前記周波数が前記所望周波数よりも高い場合には、前記内部空間の圧力を下降させて、前記弾性表面波基板の周波数を変化させることが好ましい。
【0018】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、測定した周波数が所望周波数よりも低い場合には、内部空間の圧力を上昇させ、高い場合には、内部空間の圧力を下降させて、SAW基板の周波数を変化させることから、ボンディング工程後のSAWデバイスの周波数の微調整を、従来のようなエッチング液またはエッチングガスの残渣が発生することなく行うことができる。
この結果、SAWデバイスの製造方法は、SAWデバイスの周波数の経時的変化を、さらに抑制することができる。
【0019】
[適用例6]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法において、前記弾性表面波デバイスが、前記弾性表面波基板と前記弾性表面波基板を駆動する回路素子とを備えた弾性表面波発振器であることが好ましい。
【0020】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、SAWデバイスが、SAW基板とSAW基板を駆動する回路素子とを備えたSAW発振器であることから、周波数の経時的変化が抑制されたSAW発振器を提供することができる。
【0021】
[適用例7]上記適用例にかかる弾性表面波デバイスの製造方法において、前記回路素子を前記ベース基板に固定する回路素子固定工程を、さらに備え、前記弾性表面波基板固定工程後に前記アニール工程が行われるときに、前記回路素子固定工程を、前記アニール工程より後に行うことが好ましい。
【0022】
これによれば、SAWデバイスの製造方法は、SAW基板固定工程後にアニール工程が行われるときに、回路素子固定工程を、アニール工程より後に行うことから、アニール工程に起因する高温下での暴露による回路素子の劣化を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】SAWデバイスの一例としてのSAW発振器の概略構成を示す模式図。
【図2】SAW発振器の製造方法の主要な工程を示したフローチャート。
【図3】図2の各工程の内容を説明する模式断面図。
【図4】図2の各工程の内容を説明する模式断面図。
【図5】雰囲気ガスの圧力と周波数変化量との関係を示す図。
【図6】アニール工程の有無によるSAW素子片の周波数のエージング特性を比較したグラフ。
【図7】第2の実施形態のSAW発振器の製造方法の主要な工程を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、SAWデバイスの製造方法の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、SAWデバイスの一例としてのSAW発振器の概略構成を示す模式図である。図1(a)はキャップ側から俯瞰した平面図、図1(b)は、図1(a)のA−A線での断面図であり、図1(c)は、図1(a)のB−B線での断面図であり、図1(d)は、図1(a)のC−C線での断面図である。
なお、平面図では、理解を容易にするためにキャップを省略してある。また、図1を含む以降の図においては、便宜的に構成要素の一部を省略、または簡略化してある。
【0025】
図1に示すように、第1の実施形態のSAW発振器1は、弾性表面波基板としてのSAW素子片10、SAW素子片10を駆動する回路素子としてのIC(Integrated Circuit)チップ20、パッケージ30などから構成されている。
SAW発振器1は、パッケージ30の内部空間31に、SAW素子片10、ICチップ20などが収容されている。
【0026】
SAW素子片10は、圧電基板11、IDTとしてのすだれ状電極12、反射器13a,13bなどから構成されている。
圧電基板11は、所定の厚みに研磨された圧電単結晶材料である水晶から、切削などにより略矩形の板状に形成されている。圧電基板11の一方の主面14上には、一対のすだれ状電極12が形成されている。一対のすだれ状電極12は、電極指12a,12bを交互に噛み合わせて配置されている。すだれ状電極12の両端には、SAW(弾性表面波)を反射する反射器13a,13bが形成されている。
また、圧電基板11の一方の主面14上には、すだれ状電極12と反射器13aとを外部の端子と接続するためのボンディングパッド14a,14bが形成されている。すだれ状電極12、反射器13a,13b及びボンディングパッド14a,14bは、AlまたはAl合金などの導電性に優れた材料により形成されている。
【0027】
パッケージ30は、ベース基板としてのパッケージベース32、接合材35、キャップ36などから構成されている。
パッケージベース32は、平面形状が略矩形で平板状の底基板32aと、底基板32aに搭載されるSAW素子片10及びICチップ20を囲み、底基板32aに積層される変形枠状の枠基板32bと、枠基板32bに積層され、SAW素子片10及びICチップ20と、キャップ36との隙間を確保する枠状の枠基板32cとを備えている。
底基板32a、枠基板32b、枠基板32cには、セラミックグリーンシートを成形して焼成した酸化アルミニウム質焼結体などが用いられている。
なお、パッケージベース32は、例えば、底基板32a一枚の平板状に形成されていてもよい。
【0028】
パッケージベース32の枠基板32b上には、ボンディングパッド33a〜33fが形成されている。ボンディングパッド33aは、配線によりボンディングパッド33cと接続され、ボンディングパッド33bは、配線によりボンディングパッド33dと接続されている。ボンディングパッド33e,33fは、それぞれ図示しない外部実装端子と接続されている。
【0029】
パッケージベース32には、底基板32a及び枠基板32bを貫通する貫通孔34が形成されている。
貫通孔34は、底基板32aの孔径と枠基板32bの孔径とが異なり、底基板32aの孔径の方が大きい、段付きの貫通孔となっている。なお、枠基板32cは、貫通孔34を塞がないように形成されている。
【0030】
SAW素子片10は、パッケージベース32の底基板32aに、接着剤40で固定されている。なお、接着剤40には、シリコーン系接着剤、ブタジエンゴム接着剤などの弾性を有する接着剤を用いるのが、固定部の熱応力の緩和などの観点から好ましい。
SAW素子片10のボンディングパッド14a,14bは、Auを含んでなるワイヤー(以下、Auワイヤーという)50のボンディングにより、それぞれパッケージベース32のボンディングパッド33a,33bと電気的に接続されている。
【0031】
ICチップ20は、シリコン基板などからなり、SAW素子片10を駆動(励振)する発振回路などが形成されている。ICチップ20は、パッケージベース32の底基板32aに、エポキシ系などの接着剤60で固定されている。
ICチップ20のボンディングパッド21〜24は、AlまたはAl合金などの導電性に優れた材料により形成されている。ICチップ20のボンディングパッド21,22は、Auワイヤー50のボンディングにより、それぞれパッケージベース32のボンディングパッド33c,33dと電気的に接続されている。
これにより、SAW素子片10とICチップ20とは、電気的に接続されている。
【0032】
一方、ICチップ20のボンディングパッド23,24は、Auワイヤー50のボンディングにより、それぞれパッケージベース32のボンディングパッド33e,33fと電気的に接続されている。
これにより、ICチップ20は、図示しない外部実装端子を介して外部の機器と電気的に接続可能となっている。
【0033】
パッケージ30は、SAW素子片10、ICチップ20がパッケージベース32に実装された状態で、コバールなどの金属で形成されたキャップ36が、コバールなどの金属を用いた接合材35を介して、シーム溶接などによりパッケージベース32に接合される。
そして、パッケージ30の内部空間31には、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが充填され、Au/Ge合金などの封止材70により貫通孔34が塞がれる。
これにより、SAW発振器1は、パッケージ30の内部空間31が気密に封止されている。
【0034】
ここで、SAW発振器1の動作について概略を説明する。
SAW発振器1は、外部から図示しない外部実装端子を介してICチップ20に接地電位及び電源電圧が印加されると、ICチップ20の発振回路からSAW素子片10のすだれ状電極12に電気信号が印加される。
これにより、SAW発振器1は、SAW素子片10の圧電効果によって、すだれ状電極12が配置された領域にSAW(弾性表面波)が励起される。この励起されたSAWの共振周波数に応じた発振信号が、ICチップ20から外部に出力される。なお、SAW素子片10では、反射器13aと反射器13bとの間がSAWの励振領域となっている。
【0035】
ここで、SAW発振器1の製造方法について説明する。
図2は、SAW発振器の製造方法の主要な工程を示したフローチャートである。図3、図4は、図2の各工程の内容を説明する模式断面図である。
【0036】
図2に示すように、SAW発振器1の製造方法は、弾性表面波基板形成工程としてのSAW素子片形成工程S1と、第1周波数調整工程S2と、アニール工程S3と、弾性表面波基板固定工程としてのSAW素子片固定工程S4と、回路素子固定工程S5と、ボンディング工程S6と、第1封止工程S7と、第2周波数調整工程S8と、第2封止工程S9とを有している。
【0037】
以下、各工程について、順を追って説明する。
[SAW素子片形成工程S1]
図3(a)に示すように、SAW素子片形成工程S1では、所定の厚みに研磨された圧電単結晶材料である水晶などの圧電基板11の一方の主面14上に、AlまたはAl合金などを用いて、一対のすだれ状電極12、反射器13a,13bなどをフォトリソグラフィ技術及びエッチングにより形成する。
なお、この工程では、一枚の水晶ウエハーにSAW素子片10を複数個取りしてもよいし、個片状態の水晶を用いて個別に形成してもよい。
【0038】
[第1周波数調整工程S2]
図3(b)に示すように、第1周波数調整工程S2では、SAW素子片10を、水晶ウエハーに複数個取りされた状態または個片状態で、以下の3つの工程の少なくとも1つの工程を行い、SAW素子片10の周波数を所望の周波数に調整する。
(1)例えば、フッ酸またはフッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液などのエッチング液を用いたウエットエッチングで、選択的にすだれ状電極12を構成する電極指12a,12bをエッチングし、電極指12a,12bの膜厚T1を変化させたり、電極指12a,12bの幅Wを変化させたりするなどにより、電極指12a,12bの質量を変化させる工程。
(2)例えば、金属粒子、SiO2膜、Al23膜などにより、すだれ状電極12(電極指12a,12b)に質量体を付加する工程。
(3)例えば、すだれ状電極12の電極指12a,12b間スペース部11aに露出する圧電基板11を、CF4ガス(フッ化炭素ガス)などを用いたRIEによってドライエッチングするなどにより、電極指12a,12b間にて露出している圧電基板11をエッチングする工程。
【0039】
この際、図3(b)に示すように、SAW素子片形成工程S1で形成されたSAW素子片10のボンディングパッド14a,14bに、図示しない発振回路に接続された測定プローブ80を接触させて周波数を測定しながら、所望の周波数になるように調整してもよい。
【0040】
[アニール工程S3]
図3(c)に示すように、アニール工程S3では、第1周波数調整工程S2後、SAW素子片10を、水晶ウエハーに複数個取りされた状態または個片状態で、例えば、加熱炉90などを用いて、200℃以上500℃以下の雰囲気中で5分以上加熱する。
これにより、アニール工程S3では、第1周波数調整工程S2で、(1)の工程に用いたフッ酸またはフッ酸とフッ化アンモニウムとの混合液などのエッチング液の残渣、または(3)の工程に用いたCF4ガスなどのエッチングガスの残渣を、SAW素子片10上から蒸発させる。
また、アニール工程S3では、第1周波数調整工程S2で、(2)の工程によりすだれ状電極12に付加された金属粒子、SiO2膜、Al23膜などの質量体の膜質変化や物性変化を、この加熱により一気に進行させ、質量体の膜質や物性を安定した状態にする。
これらにより、SAW発振器1の製造方法は、SAW素子片10の周波数の経時的変化を抑制することができる(詳細後述)。
【0041】
なお、アニール工程S3における加熱時間は、5分以上であれば上記残渣の蒸発、質量体の膜質や物性の安定化が確認されていることから、むやみに時間をかけず効率的に作業を行うために、5分以上6時間以下にすることが好ましい。
【0042】
[SAW素子片固定工程S4]
図3(d)に示すように、SAW素子片固定工程S4では、アニール工程S3後、SAW素子片10を、個片状態にして、パッケージベース32の底基板32aの所定の位置に、接着剤40で固定する。
【0043】
[回路素子固定工程S5]
図3(e)に示すように、回路素子固定工程S5では、SAW素子片固定工程S4後、ICチップ20などの回路素子を、パッケージベース32の底基板32aの所定の位置に、接着剤60で固定する。
なお、回路素子固定工程S5は、SAW素子片固定工程S4より前に行ってもよいし、準備工程として、最初に行っておいてもよい。
なお、図3(e)は、図1(a)におけるC−C線での断面に相当する。
【0044】
[ボンディング工程S6]
図4(a)及び図1(a)に示すように、ボンディング工程S6では、上記各工程(SAW素子片形成工程S1、第1周波数調整工程S2、アニール工程S3、SAW素子片固定工程S4、回路素子固定工程S5)終了後、SAW素子片10のボンディングパッド14a,14bと、パッケージベース32のボンディングパッド33a,33bとを、Auワイヤー50のボンディングによりそれぞれ電気的に接続し、ICチップ20のボンディングパッド21,22と、パッケージベース32のボンディングパッド33c,33dとを、Auワイヤー50のボンディングによりそれぞれ電気的に接続し、ICチップ20のボンディングパッド23,24と、パッケージベース32のボンディングパッド33e,33fとを、Auワイヤー50のボンディングによりそれぞれ電気的に接続する。
なお、ボンディングには、Auワイヤー50に代えて、Alワイヤーを用いてもよく、異方性導電膜など他の導電性部材を用いてもよい。
【0045】
[第1封止工程S7]
図4(b)に示すように、第1封止工程S7では、ボンディング工程S6後、パッケージベース32に接合材35を介してシーム溶接などによりキャップ36を接合してパッケージ30を構成し、SAW素子片10、ICチップ20をパッケージ30の内部空間31に収容する。
【0046】
[第2周波数調整工程S8]
図4(c)に示すように、第2周波数調整工程S8では、第1周波数調整工程S2後に行われた各工程により、僅かにずれが生じたSAW素子片10の周波数を、所望の周波数(所望周波数)に調整する。
具体的には、第1封止工程S7終了後、パッケージベース32に形成された貫通孔34から内部空間31に不活性ガスを供給して、SAW素子片10の周波数を変化させる。
または、内部空間31に供給した不活性ガスの圧力及び種類のいずれかを変化させて、SAW素子片10の周波数を変化させる。
ところで、図5は、雰囲気ガスの圧力と周波数変化量との関係を示す図である。上記の不活性ガスを用いた方法は、図5に示すように、雰囲気ガス(不活性ガス)の圧力の上昇(下降)に伴って、周波数が高い方へ(低い方へ)と変化する現象に基づいている。
【0047】
図4(c)に戻って、第2周波数調整工程S8を詳述すると、SAW素子片10が内部空間31に収容されたパッケージ30を反転させた状態で、図示しないチャンバー内に載置し、貫通孔34を介して内部空間31内の気体を矢印Dで示すように排気すると共に、不活性ガスを矢印Eで示すように供給する。
その後、第1封止工程S7終了後に大気中または不活性ガス中で測定したSAW素子片10の周波数(測定周波数)と、予め設定した所望周波数とを比較して、そのずれ量に基づいて、下記のように不活性ガスの供給圧を調整し、SAW素子片10の周波数を所望周波数に合わせこむ。
【0048】
測定周波数が所望周波数よりも低い場合には、内部空間31に供給する不活性ガスの供給圧を高くすることにより、内部空間31の圧力を上昇させてSAW素子片10の周波数を高い方へ変化させる。
測定周波数が所望周波数よりも高い場合には、内部空間31に供給する不活性ガスの供給圧を低くすることにより、内部空間31の圧力を下降させてSAW素子片10の周波数を低い方へ変化させる。
【0049】
なお、図5に示すように、不活性ガスにおいては、アルゴンやヘリウムなどの単原子ガスより、窒素などの2原子ガスの方が、圧力の変化に伴う周波数の変化量が大きい。
このことから、第2周波数調整工程S8では、周波数調整量に応じて不活性ガスの種類を選択する。
なお、不活性ガスは、物性が安定しており、SAW素子片10に対する化学変化などの影響が少ないことから、第2周波数調整工程S8に用いるガスとして好ましい。
【0050】
なお、第2周波数調整工程S8では、上記の方法に代えて、第1封止工程S7の前に、第1周波数調整工程S2と同様の方法で、SAW素子片10の周波数を、所望周波数に調整してもよい。
この場合、SAW素子片10の周波数の調整量が僅かであることから、第1周波数調整工程S2の(1)〜(3)のいずれの工程を行っても、これらの工程によるSAW素子片10の周波数の径時的変化(以下、エージングともいう)に及ぼす影響は、無視できる範囲である。
なお、第1封止工程S7終了後の測定周波数が所望周波数になっていれば、第2周波数調整工程S8を行う必要はなく、第2封止工程S9に移行する。
【0051】
[第2封止工程S9]
図4(d)に示すように、第2封止工程S9では、第2周波数調整工程S8後、2点鎖線で示す球状の封止材70を貫通孔34に載置し、図示しないレーザービームの照射などにより加熱溶融させて貫通孔34に充填し、貫通孔34を封止材70で塞ぐ。
これにより、SAW発振器1は、内部空間31が気密に封止され、第2周波数調整工程S8において調整された内部空間31の圧力が保持される。
以上の各工程などを経ることにより、図1に示したSAW発振器1が得られる。
【0052】
ここで、第1の実施形態の製造方法により製造されたSAW発振器1の周波数の径時的変化について説明する。
図6は、アニール工程の有無によるSAW素子片の周波数のエージング特性を比較したグラフである。なお、図6の縦軸は周波数変動量を表し、横軸は経過時間を表す。
図6(a)は、(A)第1周波数調整工程後、アニール工程を行わず、第2周波数調整工程を行った複数のサンプルのデータを示す。
図6(b)は、(B)第1周波数調整工程後、アニール工程を行い、第2周波数調整工程を行わなかった複数のサンプルのデータを示す。
図6(c)は、(C)第1周波数調整工程後、アニール工程を行い、第2周波数調整工程を行った複数のサンプルのデータを示す。
【0053】
なお、これらのサンプルは、第1周波数調整工程S2及び第2周波数調整工程S8では、第1周波数調整工程S2における(2)の、金属粒子、SiO2膜、Al23膜などにより、すだれ状電極12(電極指12a,12b)に質量体を付加する工程を行い、アニール工程S3では、300℃で2時間の加熱を行っている。
また、いずれのサンプルも、125℃の温度環境下に放置された状態で、所定の経過時間ごとに周波数が測定されている。
【0054】
図6の説明に入る前に、各サンプルの初期の周波数調整精度について説明する。
(A)は、アニール工程S3を行わず、第2周波数調整工程S8を行うことから、アニール工程S3に起因する、例えば、熱応力の発生などの影響を受けず、初期の周波数調整精度を(B)、(C)より高くすることができる。
(B)は、アニール工程S3を行い、第2周波数調整工程S8を行わないことから、アニール工程S3によって生じた僅かな周波数変化が補正されず、初期の周波数調整精度を(A)、(C)より高くすることができない。
(C)は、アニール工程S3を行い、第2周波数調整工程S8を行うことから、アニール工程S3によって生じた僅かな周波数変化が補正され、初期の周波数調整精度を(B)より高くすることができる。
まとめると、各サンプルの初期の周波数調整精度は、高い順に(A)、(C)、(B)となる。
【0055】
さて、図6に示すように、周波数のエージング特性において、(A)は、(B)、(C)と比較して、数時間経過時点から周波数変動量が大きくなり始めており、100時間以降で大きな差が生じている。
これにより、周波数のエージング特性において、(A)は、(B)、(C)より明らかに劣る。
一方、(B)、(C)は、100時間以降においても、周波数変動量の急激な変化は見られないことから、周波数のエージング特性において(A)より格段に優れていることが分かる。
【0056】
これは、(B)、(C)が、第1周波数調整工程S2で、すだれ状電極12に付加された金属粒子、SiO2膜、Al23膜などの質量体の膜質変化や物性変化を、アニール工程S3により一気に進行させ、質量体の膜質や物性を安定した状態にしたことによって、質量体の膜質や物性の経時的変化が抑制された結果、SAW素子片10の周波数の経時的変化(エージング)が抑制されたためと考えられる。
【0057】
また、(C)が(B)より若干悪い結果となっているのは、(C)が第2周波数調整工程S8で上記(2)の工程を行ったことにより、すだれ状電極12に僅かに付加された金属粒子、SiO2膜、Al23膜などの質量体の、膜質や物性の経時的変化の影響を受けたことに起因すると推測される。
このことから、(C)が第2周波数調整工程S8において、不活性ガスを用いた方法でSAW素子片10の周波数を調整すれば、(C)の周波数のエージング特性は、より(B)に近いレベルまで向上するものと推測される。
なお、(C)の周波数のエージング特性は、実用上問題のない優れたレベルである。
【0058】
まとめると、各サンプルの周波数のエージング特性は、良好な順に(B)、(C)、(A)となる。この結果から、SAW発振器1の製造方法は、アニール工程S3による周波数のエージング特性の向上が裏付けられた。
【0059】
上述したように、第1の実施形態のSAW発振器1の製造方法は、第1周波数調整工程S2で、実績のある(1)〜(3)の少なくとも1つの工程を行うことから、確実な周波数調整ができる。
そして、SAW発振器1の製造方法は、第1周波数調整工程S2後、SAW素子片10を200℃以上500℃以下の雰囲気中で5分以上加熱するアニール工程S3を有していることから、第1周波数調整工程S2に用いたエッチング液またはエッチングガスの残渣が、SAW素子片10から蒸発する。
また、SAW発振器1の製造方法は、上記アニール工程S3によって、第1周波数調整工程S2ですだれ状電極12に付加された質量体の膜質変化や物性変化を一気に進行させてしまうことで、質量体の膜質や物性を安定した状態にし、膜質や物性の経時的変化を抑制することができる。
【0060】
これらのことから、SAW発振器1の製造方法は、SAW発振器1の周波数の経時的変化を抑制することができる。換言すれば、SAW発振器1の製造方法は、SAW発振器1の周波数のエージング特性を向上させることができる。
【0061】
また、SAW発振器1の製造方法は、上記アニール工程S3後に、ボンディング工程S6を行うことから、アニール工程S3に起因する高温下での暴露によるAuワイヤー50とSAW素子片10上に設けられたボンディングパッド14a,14bとの接合部の劣化(例えば、松下電工技報May.2001 P38〜P39で紹介されているような劣化)を回避できる。
【0062】
また、SAW発振器1の製造方法は、SAW素子片固定工程S4を、アニール工程S3の後に行うことから、SAW素子片固定工程S4をアニール工程S3の前に行う場合と比較して、アニール工程S3に起因する高温下での暴露によるSAW素子片10を固定する接着剤40などの劣化、SAW素子片10固定部の熱応力の発生などを回避できる。
【0063】
また、SAW発振器1の製造方法は、SAW素子片10をパッケージ30の内部空間31に収容する第1封止工程S7と、パッケージベース32に形成された貫通孔34から内部空間31に不活性ガスを供給する、または供給した不活性ガスの圧力及び種類の少なくともいずれかを変化させてSAW素子片10の周波数を変化させる第2周波数調整工程S8と、貫通孔34を封止材70で塞ぐ第2封止工程S9と、を有している。
そして、SAW発振器1の製造方法は、これらの工程を、ボンディング工程S6より後に行うことから、ボンディング工程S6後のSAW素子片10の周波数の微調整を、従来のような、エッチング液またはエッチングガスの残渣が発生することの影響、あるいは、すだれ状電極12に付加された金属粒子、SiO2膜、Al23膜などの質量体の膜質や物性の経時的変化の影響、を受けることなく行うことができる。
この結果、SAW発振器1の製造方法は、SAW発振器1の周波数の経時的変化を、さらに抑制することができる。
【0064】
また、SAW発振器1の製造方法は、測定周波数が所望周波数よりも低い場合には、内部空間31の圧力を上昇させ、高い場合には、内部空間31の圧力を下降させて、SAW素子片10の周波数を変化させることから、ボンディング工程S6後のSAW素子片10の周波数の微調整を、従来のような、エッチング液またはエッチングガスの残渣が発生することの影響、あるいは、すだれ状電極12に付加された金属粒子、SiO2膜、Al23膜などの質量体の膜質や物性の経時的変化の影響、を受けることなく行うことができる。
この結果、SAW発振器1の製造方法は、SAW発振器1の周波数の経時的変化を、さらに抑制することができる。
【0065】
また、上述したように、SAW発振器1の製造方法は、周波数の経時的変化が抑制された、換言すれば、周波数のエージング特性が向上したSAW発振器1を提供することができる。
【0066】
なお、SAW発振器1の製造方法は、SAW素子片形成工程S1と、その後の第1周波数調整工程S2と、その後のアニール工程S3とを少なくとも有していることで、SAW発振器1の周波数の経時的変化を抑制する効果を奏する。
【0067】
(第2の実施形態)
ここで、SAW発振器1の製造方法の第2の実施形態について説明する。
図7は、第2の実施形態のSAW発振器の製造方法の主要な工程を示したフローチャートである。なお、第1の実施形態との共通部分については、同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0068】
第2の実施形態のSAW発振器1の製造方法(以下、SAW発振器1の第2の製造方法という)は、第1の実施形態のSAW発振器1の製造方法(以下、SAW発振器1の第1の製造方法という)と比較して、各工程の順番が一部異なる。
具体的には、図7に示すように、SAW発振器1の第2の製造方法では、SAW素子片形成工程S1後、第1周波数調整工程S2より前に、SAW素子片固定工程S4を行う。
つまり、SAW発振器1の第2の製造方法では、第1周波数調整工程S2、アニール工程S3を、SAW素子片10がパッケージベース32に固定された状態(図3(d)の状態に相当)で行い、その後、回路素子固定工程S5以降の各工程を、SAW発振器1の第1の製造方法と同様に行う。
【0069】
これによれば、SAW発振器1の第2の製造方法は、SAW素子片固定工程S4を、第1周波数調整工程S2より前に行うことから、SAW素子片10がパッケージベース32に固定された状態で第1周波数調整工程S2が行われる。
このことから、SAW発振器1の第2の製造方法は、SAW素子片10がパッケージベース32に固定される際に生じる周波数のばらつきを、第1周波数調整工程S2で吸収することができる。
【0070】
これにより、SAW発振器1の第2の製造方法は、第2周波数調整工程S8における周波数調整量を、SAW発振器1の第1の製造方法より少なくすることができる。
この結果、SAW発振器1の第2の製造方法は、第2周波数調整工程S8の生産性が向上する。
加えて、SAW発振器1の第2の製造方法は、SAW発振器1の第1の製造方法より周波数調整量が少ないことから、第2周波数調整工程S8を上述した(1)〜(3)の方法で行った場合でも、SAW発振器1の第1の製造方法と比較して、上述した周波数の経時的変化への影響を低減できる。
【0071】
また、SAW発振器1の第2の製造方法は、SAW素子片固定工程S4後にアニール工程S3を行い、その後、回路素子固定工程S5以降の各工程を、SAW発振器1の第1の製造方法と同様に行うことから、アニール工程S3に起因する高温下での暴露によるICチップ20などの回路素子の劣化を回避できる。
【0072】
なお、上記各実施形態において、SAW発振器1のパッケージ30の貫通孔34は、パッケージベース32に代えて、キャップ36に形成されていてもよい。
これによれば、SAW発振器1の各製造方法は、第2周波数調整工程S8及び第2封止工程S9において、パッケージ30の反転が不要となることから、作業性が向上する。
【0073】
また、上記各実施形態の回路素子固定工程S5及びボンディング工程S6においては、ICチップ20のボンディングパッド21〜24上にAuなどのバンプを形成し、パッケージベース32の底基板32aの、ICチップ20を反転したときのボンディングパッド21〜24と対向する位置にボンディングパッドを形成し、このボンディングパッドとICチップ20のボンディングパッド21〜24とを、上記バンプを介してフリップチップ実装してもよい。
これによれば、SAW発振器1の各製造方法は、Auワイヤー50の本数を削減できる。
【0074】
なお、上記各実施形態では、SAWデバイスとしてSAW発振器1を例に取り説明したが、これに限定するものではなく、例えば、SAW発振器にアクティブデバイスを付加したSAWモジュール、SAWフィルター、SAW共振子などのSAWデバイスにも適用できる。
【0075】
また、上記各実施形態では、圧電基板11に水晶を用いたが、これに限定するものではなく、例えば、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウムなどの圧電材料を用いた圧電基板としてもよい。
【符号の説明】
【0076】
S1…弾性表面波基板形成工程としてのSAW素子片形成工程、S2…第1周波数調整工程、S3…アニール工程、S4…弾性表面波基板固定工程としてのSAW素子片固定工程、S5…回路素子固定工程、S6…ボンディング工程、S7…第1封止工程、S8…第2周波数調整工程、S9…第2封止工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板上にIDTを形成する弾性表面波基板形成工程と、
(1)前記IDTを構成する電極指の質量を変化させる工程、(2)前記IDTに質量体を付加する工程、(3)前記IDTの前記電極指間にて露出している前記圧電基板をエッチングする工程の前記(1)〜(3)の少なくとも1つの工程を行い、前記弾性表面波基板の周波数を調整する第1周波数調整工程と、
前記第1周波数調整工程後、前記弾性表面波基板を200℃以上500℃以下の雰囲気中で5分以上加熱するアニール工程と、
前記弾性表面波基板形成工程と前記第1周波数調整工程と前記アニール工程とを終了後、前記弾性表面波基板上に設けられたAlまたはAl合金を含んでなるボンディングパッドと、前記弾性表面波基板が固定されるベース基板に設けられたボンディングパッドとを、Auを含んでなるボンディングワイヤーにて電気的に接続するボンディング工程と、を有することを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、前記ベース基板に前記弾性表面波基板を固定する弾性表面波基板固定工程を、さらに有し、
前記弾性表面波基板固定工程を、前記アニール工程より後に行うことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、前記ベース基板に前記弾性表面波基板を固定する弾性表面波基板固定工程を、さらに有し、
前記弾性表面波基板固定工程を、前記第1周波数調整工程より前に行うことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、前記ベース基板にキャップを接合してパッケージを構成し、前記弾性表面波基板を前記パッケージの内部空間に収容する第1封止工程と、
前記ベース基板または前記キャップに形成された貫通孔から前記内部空間に不活性ガスを供給して前記弾性表面波基板の周波数を変化させる、または前記内部空間に供給した前記不活性ガスの圧力及び種類の少なくともいずれかを変化させて前記弾性表面波基板の周波数を変化させる第2周波数調整工程と、
前記貫通孔を封止材で塞ぐ第2封止工程と、をさらに有し、
前記第1封止工程と、前記第2周波数調整工程と、前記第2封止工程とを、前記ボンディング工程より後に行うことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、前記第2周波数調整工程では、前記第1封止工程終了後に、大気中または所定の雰囲気中において弾性表面波の周波数を測定し、測定した前記周波数と予め設定した所望周波数とを比較し、
測定した前記周波数が前記所望周波数よりも低い場合には、前記内部空間の圧力を上昇させ、
測定した前記周波数が前記所望周波数よりも高い場合には、前記内部空間の圧力を下降させて、前記弾性表面波基板の周波数を変化させることを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、前記弾性表面波デバイスが、前記弾性表面波基板と前記弾性表面波基板を駆動する回路素子とを備えた弾性表面波発振器であることを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の弾性表面波デバイスの製造方法において、前記回路素子を前記ベース基板に固定する回路素子固定工程を、さらに備え、
前記弾性表面波基板固定工程後に前記アニール工程が行われるときに、
前記回路素子固定工程を、前記アニール工程より後に行うことを特徴とする弾性表面波デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−29878(P2011−29878A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172847(P2009−172847)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】