説明

弾性表面波分波器

フリップチップボンディング方式で第1,第2の弾性表面波フィルタチップがパッケージ材に搭載されており、さらに第1,第2の弾性表面波フィルタチップ間のアイソレーションを改善することができ、良好な減衰特性を有する弾性表面波分波器を提供する。中心周波数が低い第1の弾性表面波フィルタチップと、相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップ4とが、パッケージ材8のチップ搭載面に接合されており、パッケージ材8のチップ搭載面に形成された信号配線パターン24に接合される第2の弾性表面波フィルタチップ4のバンプよりも、グラウンド配線パターン25側に近接したパターン部分を有するように上記信号配線パターン24が構成されている、弾性表面波分波器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば無線通信装置のアンテナ部分に接続される分波器として用いられる弾性表面波分波器に関し、より詳細には、中心周波数が異なる第1,第2の弾性表面波フィルタチップが該弾性表面波フィルタチップに設けられたバンプによりパッケージ材に設けられた配線パターンに接合されている構造を備えた弾性表面波分波器に関する。
【背景技術】
近年、携帯用電話機などの小型の無線通信装置において、より一層の小型化を図るために、弾性表面波フィルタを用いた分波器が種々開発されている。
この種の弾性表面波フィルタ分波器では、パッケージ内に、中心周波数が異なる第1,第2の弾性表面波フィルタが実装されているが、第1,第2の弾性表面波フィルタ間のアイソレーションがより完全であることが強く求められている。
上記アイソレーションを改善する構造の一例が下記の特開平5−167389号公報に開示されている。すなわち、図19に示すように、特開平5−167389号公報に記載の弾性表面波分波器201では、パッケージ材202内に、第1,第2の弾性表面波フィルタチップ203,204が実装されている。そして、第1の弾性表面波フィルタチップ203における信号入出力端子A1,A2とパッケージ材202の信号入出力端子C1,C2とを結ぶ信号線と、第2の弾性表面波フィルタチップ204側における信号入出力端子B1,B2とパッケージ材202の信号入出力端子D1,D2とを結ぶ信号線とが、互いに略直角をなして交わる2つの直線(X,Y)に位置するように信号入出力端子A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D2が配置されている。ここでは、各信号入出力端子をこのように配置することにより、複数の信号線間における誘導結合が抑制され、アイソレーションが改善されている。
他方、下記の特開平8−18393号公報には、図20に示す分波器パッケージが開示されている。ここでは、多層構造の分波器パッケージ211内に、第1,第2の弾性表面波フィルタチップ212,213が収納されている。そして、分波器パッケージ211内には、位相整合器を構成するためにストリップ線路214,215が埋設されている。ストリップ線路214,215の特性インピーダンス値を分波器パッケージに接続される外部回路の特性インピーダンス値よりも大きくすることにより、また、一方の弾性表面波フィルタチップに対して、パッケージに少なくとも2個以上の接地用端子を設けることにより、減衰量の改善が図られている。
下記の特開2003−51731号公報に記載の弾性表面波分波器では、第1,第2の弾性表面波フィルタが構成された弾性表面波チップが、パッケージ内に収納されている。ここでは、第1,第2の弾性表面波フィルタが、ボンディングワイヤによりパッケージに構成された端子電極に電気的に接続されている。この弾性表面波分波器では、第1の弾性表面波フィルタにおいて、信号端子に接続されるボンディングワイヤと、接地端子と接続されるボンディングワイヤとが交差されており、それによってアイソレーション及び減衰量の改善が図られている。
特開平5−167389号公報に記載の構成では、第1,第2の弾性表面波フィルタチップの信号線同士を上記のように配置することにより、互いの誘導結合が抑えられているが、この構成では、相互誘導をある程度抑えることはできるものの、十分ではなかった。そのため、弾性表面波分波器201では、第1,第2の弾性表面波フィルタチップ間のアイソレーションはなお十分ではなかった。
また、第1,第2の弾性表面波フィルタチップの実装ずれが生じた場合、減衰量及びアイソレーション特性の劣化が大きくなるという問題もあった。
他方、特開平8−18393号公報に記載の構成では、インダクタ成分が小さいフリップチップボンディング方式のパッケージ構造に適用した場合には、インダクタ成分が小さいため、減衰量を十分に改善することはできなかった。
また、特開2003−51731号公報に記載の弾性表面波分波器は、ボンディングワイヤを交差させることにより、相互誘導による電流の打ち消しが果たされている。しかしながら、ボンディングワイヤを用いた構造であるため、弾性表面波分波器の小型化を図るのが困難であった。
【発明の開示】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、バンプを用いてフリップチップボンディング方式で弾性表面波フィルタチップがパッケージ材に搭載されており、従って小型化を進めることができ、さらに第1,第2の弾性表面波フィルタチップ間のアイソレーションをより一層改善でき、良好な減衰特性を有し、また、弾性表面波フィルタチップの実装ずれによる特性の変化が小さい弾性表面波分波器を提供することにある。
本願の第1の発明は、中心周波数が相対的に低い第1の弾性表面波フィルタチップと、中心周波数が相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップとが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップに設けられた複数のバンプを利用して、パッケージ材のチップ搭載面に形成された配線パターンに接合されている弾性表面波分波器であって、複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第1の弾性表面波フィルタチップと、複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第2の弾性表面波フィルタチップと、前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが、前記複数のバンプを用いて接合されるパッケージ材とを備え、前記パッケージ材のチップ搭載面には、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、前記第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、かつ前記信号配線パターン及びグラウンド配線パターンにそれぞれ接続されており、前記パッケージ材の少なくとも一部を貫通している信号ビアホール電極及びグラウンドビアホール電極が設けられており、前記信号配線パターンに接合される前記第2の弾性表面波フィルタチップのバンプよりも、前記グラウンド配線パターン側に近接したパターン部分を有するように前記信号配線パターンが構成されていることを特徴とする。
第1の発明のある特定の局面では、前記信号配線パターンが前記グラウンド配線パターン側に近接するように曲げられでおり、それによって前記信号配線パターンに前記グラウンド電極パターン側に近接したパターン部分が構成されている。
第1の発明のさらに他の特定の局面では、前記信号配線パターンが、前記グラウンド配線パターンに近接されている部分において、前記グラウンド配線パターンの端縁と平行に延びる第1の配線パターン部分と、第1の配線パターン部分の両端から、前記グラウンド配線パターンから遠ざかる方向に折り曲げられた第2,第3の配線パターン部分とを有する。
第1の発明のさらに他の特定の局面では、第1の配線パターン部分と、第2,第3の配線パターン部分とが略直角をなすように構成されており、従って上記信号配線パターンは略コの字状の形状を有する。
第1の発明のさらに別の特定の局面では、前記第2または第3の配線パターン部分において、前記信号配線パターンがバンプにより前記第2の弾性表面波フィルタチップの出力端と電気的に接続されている。
本願の第2の発明は、中心周波数が相対的に低い第1の弾性表面波フィルタチップと、中心周波数が相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップとが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップに設けられた複数のバンプを利用して、パッケージ材のチップ搭載面の配線パターンに接合されている弾性表面波分波器であって、複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第1の弾性表面波フィルタチップと、複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第2の弾性表面波フィルタチップと、前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが、前記複数のバンプを用いて接合されるパッケージ材とを備え、前記パッケージ材のチップ搭載面には、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、前記第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、かつ前記信号配線パターン及びグラウンド配線パターンにそれぞれ接続されており、前記パッケージ材の少なくとも一部を貫通している信号ビアホール電極及びグラウンドビアホール電極が設けられており、前記信号ビアホール電極と、前記グラウンドビアホール電極との間の距離が、前記パッケージ材に構成されており、かつ異なる電位に接続されるビアホール電極間の距離のうち最小であることを特徴とする、弾性表面波分波器である。
本願の第3の発明は、中心周波数が相対的に低い第1の弾性表面波フィルタチップと、中心周波数が相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップとが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップに設けられた複数のバンプを利用して、パッケージ材のチップ搭載面の配線パターンに接合されている弾性表面波分波器であって、複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第1の弾性表面波フィルタチップと、複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第2の弾性表面波フィルタチップと、前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが、前記複数のバンプを用いて接合されるパッケージ材とを備え、前記パッケージ材のチップ搭載面には、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、前記第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、前記信号配線パターンと前記グラウンド配線パターンとが設けられている領域において、前記第1の弾性表面波フィルタチップを流れる電気信号により生じた磁束が流れた際に、該磁束を打ち消す構造が設けられていることを特徴とする。
第3の発明のある特定の局面では、前記磁束を打ち消す構造において、前記第2の弾性表面波フィルタチップをパッケージ材の配線パターンに接合している複数のバンプのうち、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される第1のバンプと、最も出力端に近いSAW共振子のグラウンド電位に接続される第2のバンプとを結ぶ仮想線の両側に分散されて、前記グラウンド配線パターンに接続されておりかつ前記パッケージ材の少なくとも一部を貫通している第1,第2のビアホール電極が配置されている。
第3の発明のさらに他の特定の局面では、前記磁束を打ち消す構造において、前記第2の弾性表面波フィルタチップに設けられている複数のバンプのうち、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される第1のバンプと、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド側電位に接続される複数の第2のバンプの中心とを結ぶ線の両側に分散されて、前記グラウンド配線パターンに接続され、かつ前記パッケージ材の少なくとも一部の層を貫通している第1,第2のビアホール電極が配置されている。
第3の発明のさらに別の特定の局面では、前記第1のビアホール電極と前記第2のバンプとを結ぶ線と、前記第2のバンプと前記第2のビアホール電極とを結ぶ線のなす角度が90°以上の角度をなしている。
第3の発明のさらに他の特定の局面では、前記第1のビアホール電極と、複数の前記第2のバンプの中心とを結ぶ線と、複数の前記第2のバンプの中心と第2のビアホール電極とを結ぶ線とのなす角度が90°以上である。
第3の発明のさらに別の特定の局面によれば、前記第1,第2のビアホール電極を含む複数のビアホール電極が前記パッケージ材に設けられており、該複数のビアホール電極の少なくとも1つのビアホール電極が前記第2の弾性表面波フィルタチップが搭載される領域の下方に配置されており、残りのビアホール電極が第2の弾性表面波フィルタチップが搭載される領域の外側の領域に配置されている。
第1〜第3の発明に係る弾性表面波装置では、上記第1,第2の弾性表面波フィルタチップは、それぞれ個別のチップとして構成されてもよいが、本発明においては、第1,第2の弾性表面波フィルタチップは統合されて1つのチップで構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
図1は、(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波分波器を説明するための模式的分解斜視図及び正面断面図である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波分波器の回路構成を示す図である。
図3は、本発明の第1の実施形態に用いられる受信側弾性表面波フィルタチップの下面に形成されている電極構造を示す模式的底面図である。
図4は、第1の実施形態で用いられるパッケージ材の上面の複数の配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図5は、比較のために用意した従来の弾性表面波分波器において、パッケージ材の上面に形成されている配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図6は、第1の実施形態及び比較のために用意された比較例の弾性表面波分波器における、各受信側弾性表面波フィルタの周波数特性を示す図である。
図7は、第2の実施形態及び比較例の弾性表面波分波器におけるアイソレーション特性を示す図である。
図8は、第2の実施形態の弾性表面波分波器のパッケージ材の上面に設けられた複数の配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る弾性表面波分波器において用いられるパッケージ材の上面の配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図10は、第3の実施形態に係る弾性表面波分波器における受信側弾性表面波フィルタの周波数特性を示す図である。
図11は、第3の実施形態に係る弾性表面波分波器における受信側弾性表面波フィルタのアイソレーション特性を示す図である。
図12は、比較例の弾性表面波分波器における受信側弾性表面波フィルタの周波数特性を示す図である。
図13は、比較例の弾性表面波分波器における受信側弾性表面波フィルタのアイソレーション特性を示す図である。
図14は、本発明の第4の実施形態に係る弾性表面波分波器を説明するための図であり、用いられているパッケージ材の上面の配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図15は、第1の実施形態の変形例に係る弾性表面波分波器で用いられるパッケージ材の上面の配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図16は、図15に示したパッケージ材の上面に搭載される受信側弾性表面波フィルタチップの底面図である。
図17は、第3の実施形態に係る弾性表面波分波器の変形例の弾性表面波分波器において用いられるパッケージ材の上面の配線パターンを説明するための模式的平面図である。
図18は、図17に示した配線パターンにおいて、グラウンド強化のために、受信側グラウンド配線パターンに接続されている複数のビアホール電極の位置関係を説明するための模式的平面図である。
図19は、従来の弾性表面波分波器を説明するための模式的平面断面図である。
図20は、従来の弾性表面波分波器のさらに他の例を説明するための模式的正面断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態に係る弾性表面波分波器を説明するための模式的分解斜視図及び正面断面図である。また、図2は、本実施形態の弾性表面波分波器の回路構成を示す図である。
図2に示すように、弾性表面波分波器1は、アンテナANTに接続されるアンテナ接続端子2を有する。アンテナ接続端子2に接続されるように、第1の弾性表面波フィルタチップとしての送信側弾性表面波フィルタチップ3と、第2の弾性表面波フィルタチップとしての受信側弾性表面波フィルタチップ4とが接続されている。なお、アンテナ接続端子2と、受信側弾性表面波フィルタチップ4との間には、位相整合素子5が接続されている。
各弾性表面波フィルタチップ3,4は、図示のように、複数のSAW共振子を梯子型回路を構成するように接続した構造を有する。より具体的には、弾性表面波フィルタチップ3,4は、それぞれ、直列腕共振子としてのSAW共振子S1〜S6,S7〜S10、及び並列腕共振子としてのSAW共振子P1〜P2,P3〜P5を有する。
図2において、弾性表面波フィルタチップ3,4のANT端子2とは反対側の信号端子が、それぞれ、送信側信号端子6及び受信側信号端子7である。
なお、本明細書においては、受信側弾性表面波フィルタチップ4の複数のSAW共振子のうち、受信側信号端子7に最も近く、かつ一端がグラウンド電位に接続されるSAW共振子P5のグラウンド電位に接続されるパッケージ材の電極構造が問題となる。すなわち、本発明において、第2のSAWフィルタチップの最も出力側に近いSAW共振子のグラウンド電位とは、図2のSAW共振子P5のグラウンド電位を示すものとする。
図1(b)に示すように、弾性表面波分波器1では、パッケージ材8の上方に凹部8aが形成されている。本発明では、パッケージ材のチップ搭載面8bに送信側弾性表面波フィルタチップ3及び受信側弾性表面波フィルタチップ4が搭載されるが、ここでパッケージ材8のチップ搭載面8bとは、凹部8aの底面である。なお、本発明においては、凹部8aを有しない平板状のパッケージ材を用いてもよい。
弾性表面波分波器1では、パッケージ材8の上記凹部8aを閉成するように蓋材9が取り付けられている。
弾性表面波分波器1では、送信側弾性表面波フィルタチップ3及び受信側弾性表面波フィルタチップ4は、略図的に示す複数のバンプ10,11を用いて、パッケージ材8のチップ搭載面8bに設けられた後述の各種配線パターンに電気的に接続され、かつ弾性表面波フィルタチップ3,4がパッケージ材8のチップ搭載面8bに接合されている。
なお、図2における位相整合素子5は、図1(b)に示すストリップ線路12,13により構成されている。ストリップ線路12,13はパッケージ材8に埋設されており、ビアホール電極14,15により受信側弾性表面波フィルタチップ4に電気的に接続されている。
ところで、この種の弾性表面波分波器1では、送信側弾性表面波フィルタチップ3と受信側弾性表面波フィルタチップ4とが近接配置されている。従って、送信側弾性表面波フィルタチップ3を流れる電流により生じた磁束が受信側弾性表面波フィルタチップ4側を通過する。より具体的には、受信側弾性表面波フィルタチップ4の主面及びパッケージ材8のチップ搭載面8bと直交する方向に通過する。従って、このような磁束により受信側弾性表面波フィルタチップ4の周波数特性が劣化し、かつ弾性表面波フィルタチップ3,4間のアイソレーションが劣化するという問題があった。
本実施形態の弾性表面波分波器1では、このような磁束による特性の劣化を防止するために、パッケージ材8のチップ搭載面8bに形成されている配線パターンの形状が改良されている。これを図1(a)、図3及び図4を併せて参照することにより説明する。
図1(a)は、上記受信側弾性表面波フィルタチップ4をパッケージ材8のチップ搭載面8bに実装する部分を模式的に示す分解斜視図である。また、弾性表面波フィルタチップ4の下面には、図3に示す各種電極が設けられている。すなわち、弾性表面波チップ4の下面4a上には、図2に示したSAW共振子S7〜S10,P3〜P5が構成されている。各SAW共振子S7〜S10,P3〜P5は、本実施形態では、1ポート型SAW共振子により構成されており、IDT(インターデジタル電極)の表面波伝搬方向両側にそれぞれ反射器が設けられた構造を有する。また、弾性表面波フィルタチップ4の下面4aには、電極パッド16a〜16gが形成されている。電極パッド16a〜16gには、図3では図示していないが、それぞれ金属バンプが設けられている。この金属バンプは、例えば図1(b)に略図的に示す金属バンプ10に相当し、弾性表面波フィルタチップ4の下面4aから下方に突出される。
他方、パッケージ材8のチップ搭載面8b上には、上記金属バンプに接合される部分に、複数の配線パターンが形成されている。すなわち、図1(a)及び図4に示すように、アンテナ側信号配線パターン22、アンテナ側グラウンド配線パターン21、段間グラウンド配線パターン23、受信側信号配線パターン24及び受信側グラウンド配線パターン25が形成されている。
本実施形態の特徴は、受信側信号配線パターン24及び受信側グラウンド配線パターン25の構造にある。
受信側信号配線パターン24は、図2に示した受信側信号端子7、すなわち図3に示した電極パッド16d上の金属バンプに接合される部分である。他方、受信側グラウンド配線パターン25は、図2のSAW共振子P5のグラウンド電位、すなわち図3の電極パッド16e〜16gに設けられた各バンプに接合される部分である。
なお、図4に一点鎖線Bで示す部分には、図1(b)に示した送信側弾性表面波フィルタチップ3に接続される各種配線パターンが形成される。
弾性表面波分波器1では、パッケージ材8に、複数のビアホール電極V1〜V9が形成されている。ビアホール電極V1〜V9は、それぞれ、上端が配線パターン21〜25のいずれかに接続されている。ビアホール電極V1〜V9は、本実施形態では、パッケージ材8の少なくとも一部を貫通するように、すなわちチップ搭載面8bに直交する方向に延ばされている。アンテナ信号配線パターン22に接続するV4は、前述したストリップ線路12,13に電気的に接続されている。その他のビアホール電極は、パッケージ材8の下面に至るように形成されている。そして、パッケージ材8の下面に形成された外部接続電極に電気的に接続されている。
ところで、受信側グラウンド配線パターン25には、複数のビアホール電極V7〜V9が電気的に接続されている。従って、弾性表面波分波器1は、グラウンドの強化がビアホール電極V7〜V9で図られるという利点も有する。
上述したように、弾性表面波分波器1では、送信側弾性表面波チップ3と、受信側弾性表面波フィルタチップ4とが近接配置されている。従って、動作時に、送信側弾性表面波フィルタチップ3及びパッケージ材8上の送信側弾性表面波フィルタチップ3と電気的に接続されている電極部分を流れる電気信号により、磁束が発生する。この磁束が、受信側弾性表面波フィルタチップ4並びにパッケージ材8のチップ搭載面8bにおける上記配線パターン21〜25が設けられている部分を、チップ搭載面8bと直交する方向に通過する。
弾性表面波分波器1では、磁束が、特に受信側信号配線パターン24及び受信側グラウンド配線パターン25が設けられている部分を通過することによりアイソレーションが悪化する。そこで、本実施形態では、受信側信号配線パターン24が、図1(a)及び図4に示すように、略コの字状の形状を有するように折り曲げられ、それによって受信側信号配線パターン24が受信側グラウンド配線パターン25に近接する配線パターン部分を有するように構成されている。そのため、受信側信号配線パターン24と受信側グラウンド配線パターン25との間の部分においてチップ搭載面8bに垂直な方向に通過する磁束の影響を抑制することが可能とされている。
これを、従来例に相当する図5の配線パターンの平面形状と比較して説明することとする。図5は、比較のために用意したパッケージ材220の模式的平面図である。ここでは、パッケージ材8のチップ搭載面8bと同様にパッケージ材220のチップ搭載面に、アンテナ側信号配線パターン222、アンテナ側グラウンド配線パターン221、段間グラウンド配線パターン223、受信側信号配線パターン224及び受信側グラウンド配線パターン225が形成されている。もっとも、受信側信号配線パターン224は、配線パターン222,223と同様に、隣接する配線パターンから隔てられて配置されており、図5から明らかなように、受信側信号配線パターン224は略直線状の形状を有する。
これに対して、本実施形態の弾性表面波分波器1では、受信側信号配線パターン24が略コの字状の形状を有するように折り曲げられ、受信側グラウンド配線パターン25に近接されている。
より具体的には、図4に示すように、本実施形態では、受信側信号配線パターン24は、受信側グラウンド配線パターン25と対向している部分において、受信側グラウンド配線パターン25の端縁と平行に延びる直線状の第1の配線パターン部分24aと、第1の配線パターン部分24aの両側から、第1の配線パターン部分24aと略直交する方向にかつ受信側グラウンド配線パターン25と遠ざかる方向に折り曲げられた第2,第3の配線パターン部分24b,24cとを有する。なお、第2,第3の配線パターン部分24b,24cは、第1の配線パターン部分24aと直交する必要は必ずしもなく、90°以外の角度をなすように折り曲げられて構成されていてもよい。
パッケージ材8を用いた本実施形態の弾性表面波分波器1及び図5に示したパッケージ材220を用いたことを除いては、同様に構成された比較例の弾性表面波分波器の受信側の弾性表面波フィルタチップの周波数特性を図6に示す。図6の実線が第1の実施形態における結果を、破線が上記比較例の結果を示す。
また、図7は、上記実施形態及び比較例の弾性表面波分波器におけるアイソレーション特性を示す図であり、実線が実施形態の結果を、破線が比較例の結果を示す。なお、弾性表面波分波器のTx通過帯域は、824〜849MHzであり、Rx通過帯域は、869〜894MHzである。
図6及び図7から明らかなように、比較例の弾性表面波分波器に比べて、本実施形態の弾性表面波分波器では、アイソレーション特性が受信側弾性表面波フィルタの通過帯域外で良好とされており、従って受信側弾性表面波フィルタチップにおける周波数特性において帯域外減衰量が十分な大きさとされていることがわかる。これは、上記のように、受信側信号配線パターン24が、受信側グラウンド配線パターン25側に近接され、両者の間の部分を通過する前述した磁束の影響を抑制し得ることによると考えられる。
図8は、本発明の第2の実施形態に係る弾性表面波分波器のパッケージ材の上面の配線パターンの構造を示す模式的平面図であり、第1の実施形態について示した図4に相当する図である。なお、その他の構造については、第2の実施形態の弾性表面波分波器は、第1の弾性表面波分波器と同様であるため、第1の実施形態の説明を援用することとする。
第2の実施形態の弾性表面波分波器では、パッケージ材8のチップ搭載面8b上に、第1の実施形態の場合と同様に、アンテナ側信号配線パターン22、アンテナ側グラウンド配線パターン21、段間グラウンド配線パターン23、受信側グラウンド配線パターン25が配置されている。もっとも、第1の実施形態では、コの字状の受信側信号配線パターン24が形成されていたのに対し、第2の実施形態では、受信側信号配線パターン31は、コの字状の形状を有せず、直線状の形状を有する。
また、受信側信号配線パターン31に接続されているビアホール電極V6と、受信側グラウンド配線パターン25に接続されているビアホール電極V7〜V9のうちビアホール電極V6にもっとも近接しているビアホール電極V7との間の距離Rは、受信側弾性表面波フィルタチップ4に電気的に接続されるビアホール電極V1〜V9において、異なる電位に接続されるビアホール電極間の距離のうち最小とされている。なお、他の異なる電位に接続される隣接する一対のビアホール電極間のうち、少なくとも一対のビアホール電極間の距離が、ビアホール電極V6とビアホール電極V7との間の距離と同等であってもよい。
本実施形態では、ビアホール電極V6とビアホール電極V7との距離が上記のように短くされているため、前述した磁束が受信側信号配線パターン31と、受信側グラウンド配線パターン25との間の部分を通過することが抑制される。これは、ビアホール電極V6及びV7が、パッケージ材8のチップ搭載面8bから少なくともパッケージ材8の一部を貫通するように、本実施形態ではパッケージ材8の下面8cに至るように形成されている。そのため、ビアホール電極V6,V7の距離を小さくすることにより、両者の間における上記磁束の影響を抑制し得ることによる。
このように、送信側弾性表面波フィルタチップ3及び送信側弾性表面波フィルタチップ3に接続されているパッケージ材8の電極を通る信号により生じた磁束の影響は、ビアホール電極V6とビアホール電極V7との間の距離Rを小さくすることによっても達成され得る。
ビアホール電極V6が、上記のようにビアホール電極V7に近づけられているため、言い換えれば、受信側信号配線パターン31は、ビアホール電極V6が設けられている部分において、受信側グラウンド配線パターン25に近接されている。すなわち、第2の実施形態の弾性表面波分波器においても、受信側信号配線パターン31は、受信側グラウンド配線パターン25に近接されている配線パターン部分をも有するものとなる。
なお、第2の実施形態では、ビアホール電極V6を、ビアホール電極V7と近づければよいため、信号配線パターン31の形状を複雑な形状とする必要はない。しかしながら、実際には、小型化を図った場合、ビアホール電極V6とビアホール電極V7のように、一対のビアホール電極を近接させて形成することは困難である。従って、弾性表面波分波器の小型化を図った場合には、第1の実施形態のように、受信側信号配線パターンの一部を受信側グラウンド配線パターン25に近づけ、ビアホール電極V6とビアホール電極V7との距離を第2の実施形態に比べて広げた構造とすることにより、ビアホール電極V6,V7の形成が容易となる。よって、ビアホール電極の形成精度を考慮すれば、第2の実施形態に比べて、第1の実施形態の構造の方が製造容易であるため有利である。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る弾性表面波分波器を説明するための図であり、図9は第3の実施形態で用いられるパッケージ材のチップ搭載面の配線パターン構造を示す模式的平面図であり、第1の実施形態において示した図4に相当する図である。
第3の実施形態においても、その他の構造については、第1の実施形態と同様であるため、その他の構造の説明については、第1の実施形態の説明を援用することにより省略する。
第3の実施形態の弾性表面波分波器では、パッケージ材8の上面において、アンテナ側信号配線パターン41、アンテナ側グラウンド配線パターン42、段間グラウンド配線パターン43、受信側信号配線パターン44及び受信側グラウンド配線パターン45が形成されている。また、ビアホール電極V1〜V10がパッケージ材8の少なくとも一部を貫通するように形成されている。
第3の実施形態においても、受信側信号配線パターン44は、第1の実施形態の受信側信号配線パターン24と同様に構成されている。すなわち、受信側信号配線パターン44は、受信側グラウンド配線パターン45に近接した配線パターン部分を有するようにコの字状に折り曲げられた形状を有する。従って、第1の実施形態と同様に、受信側信号配線パターン44の形状により、前述した送信側弾性表面波フィルタチップ3側からの磁束による影響を抑制することができる。
本実施形態では、ビアホール電極V10と、ビアホール電極V7とが図示のように配置されているため、上記磁束を打ち消すことができ、それによって減衰量及びアイソレーションをより一層改善することが可能とされている。ビアホール電極V7,V10の配置構造を次に説明する。
図9において、仮想点C,Dを結ぶ仮想線Eの両側に、ビアホール電極V7,V10が形成されている。ビアホール電極V10は、ビアホール電極V7〜V9と同様に、受信側グラウンド配線パターン45に接続されている。そして、仮想点Dは、図1に示した弾性表面波フィルタチップ4の受信側信号端子7に接続されたバンプが接合される部分を示し、仮想点Cは、図1に示した弾性表面波フィルタチップ4のSAW共振子P5のグラウンド電位に接続される電極パッド16f上のバンプに接合される部分である。すなわち、第2の弾性表面波フィルタチップとしての受信側弾性表面波フィルタチップ4の出力端に接続され、かつ信号配線パターンに最も近いバンプの接合点Dと、出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるバンプが接合される点Cとを結ぶ仮想線Eの両側に、グラウンド電位に接続されるビアホール電極V7,V10が配置されている。
他方、弾性表面波分波器1の使用時に、送信側から漏れた磁束がパッケージ8の上面と直交する方向に通過した場合、図9の破線F,Gで示す誘導電流が磁束の周りを回転するように方向に発生する。ところが、本実施形態では、上記ビアホール電極V7,V10が仮想線Eの両側に配置され、言い換えればグラウンド電位に流れる電流が線H,Iに分岐して流れるため、上述した誘導電流F,Gを相殺する。従って、上記磁束の影響を抑制することができ、帯域外減衰量及びアイソレーションをより一層改善することができる。これを、図10〜図13を参照して説明する。図10及び図11は、第3の実施形態に係る弾性表面波分波器における受信側の周波数特性及びアイソレーション特性を示す図であり、図12及び図13は、上述した比較例の弾性表面波分波器における受信側の周波数特性及びアイソレーション特性を示す図である。
なお、図10〜図13は、送信側弾性表面波フィルタチップを固定した状態で、受信側弾性表面波フィルタチップの実装位置をチップ実装面内で上下左右に約50μmずらした場合の特性のうち、もっとも減衰量の良い特性ともっともアイソレーションの良い特性をそれぞれ実線で示し、もっとも減衰量の悪い特性ともっともアイソレーションの悪い特性をそれぞれ破線で示している。ここで、図10及び図11では、受信側弾性表面波フィルタの実装ずれが発生しても、ほとんど特性のずれが発生しないため、実線と破線とが判別し難いほど重なっている。これに対して、図12及び図13では、受信側弾性表面波フィルタの実装ずれが発生すると減衰量及びアイソレーション特性のずれが大きくなり、実線と破線との差が大きくなっている。
図10,図11と、図12及び図13との比較から明らかなように、比較例では、受信側弾性表面波フィルタにおける送信側通過帯域における減衰量のばらつきが4.0dBであり、送信側帯域におけるアイソレーションのばらつきが5.1dBであったのに対し、第3の実施形態によれば、受信側弾性表面波フィルタの送信側弾性表面波フィルタの通過域における減衰量は1.2dB、送信側帯域におけるアイソレーションが0.8dBに大幅に改善され得ることがわかる。
図10及び図11と、図12及び図13は比較すれば明らかなように、第3の実施形態によれば、受信側の通過帯域の外側におけるアイソレーションがより一層良好であり、かつ周波数特性における通過帯域よりも低周波側における減衰量を十分な大きさとし得ることがわかる。
なお、第3の実施形態では、上記仮想点Cは、弾性表面波フィルタチップ4のSAW共振子P5のグラウンド電位に接続される電極パッド16f上の1つのバンプに接合される部分であったが、弾性表面波フィルタチップ4のSAW共振子P5のグラウンド電位に接続される電極パッド上に複数のバンプが形成されていてもよく、その場合には、複数のバンプの中心が上記仮想点Cとなる。すなわち、SAW共振子P5のグラウンド電位に接続され、かつ信号配線パターンに近接しているバンプは複数であってもよく、その場合には、複数のバンプの中心を仮想点Dとして、ビアホール電極V7,V10を配置すればよい。
図14は、本発明の第4の実施形態に係る弾性表面波分波器を説明するための模式的平面図である。図14は、パッケージ材8のチップ搭載面8b上の電極構造を示す模式的平面図である。
なお、第4の実施形態の弾性表面波分波器は、前述した第2の弾性表面波分波器の変形例に相当する。すなわち、図8に示したように、第2の実施形態では、受信側信号配線パターン31は略直線状の形状を有し、その外側端においてビアホール電極V6に接続されていた。第2の実施形態では、略直線状の信号配線パターン31が形成されていたが、図14に示すように、受信側信号配線パターン32として、L字状の信号配線パターンを形成してもよい。この場合においても、受信側信号配線パターン32の外側端においてビアホール電極V6に接続されており、ビアホール電極V6と、受信側グラウンド配線パターン25に接続されたビアホール電極V7とが第2の実施形態と同様に異なる電位に接続される一対のビアホール電極間のうち最小距離とされている。従って、本実施形態においても、第2の実施形態と同様に、受信側弾性表面波フィルタにおける減衰量の拡大及びアイソレーションの改善を図ることができる。
図15及び図16は、本発明の第1の実施形態のさらに他の変形例を説明するための図である。図15は、本変形例で用いられるパターン材の上面の配線パターンの形状を示す図であり、図16は、本変形例で用いられる弾性表面波フィルタチップ4の下面の電極形状を示す模式的底面図である。
第1の実施形態では、グラウンド配線パターン25は1つの電極により形成されていたが、図15に示すように、受信側グラウンド配線パターン25が、グラウンド配線パターン25aとグラウンド配線パターン25bに分割されていてもよい。すなわち、第1の実施形態及び第2,第3の実施形態においても、受信側グラウンド配線パターンは、複数の配線パターンに分割されていてもよい。
図17は、上述した第3の実施形態の弾性表面波分波器の変形例に係る弾性表面波分波器を説明するための図であり、図17は、第3の実施形態について示した図9に相当する図である。
本変形例では、受信側配線パターン44がコの字状の形状を有していないことを除いては、第3の実施形態の弾性表面波分波器と同様に構成されている。すなわち、第3の実施形態の弾性表面波分波器では、受信側配線パターン44Aが、第1の実施形態と同様に、略コの字状の形状を有するように受信側グラウンド配線パターン45に近接されていた。
これに対して、本変形例の弾性表面波分波器では、受信側配線パターン44Aは、コの字状の形状を有しない。しかしながら、本変形例においても、第3の実施形態の弾性表面波分波器と同様に、ビアホール電極V10と、ビアホール電極V7とが図示のように配置されているため、送信側の弾性表面波フィルタチップ3側からの磁束による影響を打ち消すことができ、それによって減衰量及びアイソレーションを改善することができる。
すなわち、第3の実施形態において、受信側信号配線パターンの形状を図17に示したように変形した場合であっても、ビアホール電極V7,V10を図示のように配置することにより、第3の実施形態よりも劣るものの、減衰量及びアイソレーションを改善することは可能である。
また、図18に同様に模式的に示すように、図17に示した変形例においては、受信側グラウンド配線パターンのバンプが接合される面上において、仮想点Dと受信側グラウンド配線パターンに接続されるビアホール電極V7とを結ぶ線と、前記仮想点Dと他のグラウンド配線パターンに接続されるビアホール電極V10とを結ぶ線とのなす角が好ましくは90°以上とされる。それによって受信側グラウンド配線パターンにおけるグラウンドが強化される。
また、図18に示す破線Jは、パッケージ材8のチップ搭載面8b上に弾性表面波フィルタチップ4が搭載される領域を示す。図18から明らかなように、受信側弾性表面波フィルタチップ4が搭載される領域内と、該領域外に、ビアホール電極V1〜V10が分散されて配置されている。言い換えれば、ビアホール電極V10が、弾性表面波フィルタチップ4が実装される領域内に配置されており、グラウンド電位に接続される他のビアホール電極V7〜V9が該領域外に配置されている。このように、弾性表面波フィルタチップ4が実装される領域に少なくとも1つのビアホール電極V10を配置し、残りのビアホール電極V1〜V9を弾性表面波フィルタチップ4が実装される領域の外側の領域に配置することにより、上述してきた実施例及び変形例では、第1,第2の弾性表面波フィルタチップ3,4は別々のチップで構成されていたが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップ3,4が統合されて単一のチップとして構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
第1の発明に係る弾性表面波分波器では、パッケージ材のチップ搭載面に形成された信号配線パターンに接続される第2の弾性表面波フィルタチップのバンプよりもグラウンド配線パターン側に近接したパターン部分を有するように信号配線パターンが構成されているため、第1の弾性表面波フィルタチップを流れる信号による磁束が、第2の弾性表面波フィルタチップに接続される上記信号配線パターンとグラウンド配線パターンとが設けられている部分を通過するのを抑制することが可能となる。よって、第2の弾性表面波フィルタの通過帯域外におけるアイソレーション特性を改善することができ、従って第2の弾性表面波フィルタにおける帯域外減衰量を十分な大きさとすることができる。
上記信号配線パターンが、グラウンド配線パターン側に近接するように曲げられており、それによってグラウンド電極パターン側に近接した上記パターン部分が構成されている場合には、信号配線パターンの平面形状を上記のように構成するだけで、本発明に従って、第2の弾性表面波フィルタ側におけるアイソレーションを改善することができる。
信号配線パターンがグラウンド配線パターンに近接されている部分において、グラウンド配線パターンの端縁と平行に延びる第1の配線パターン部分と、第1の配線パターン部分の両側から、グラウンド配線パターンから遠ざかる方向に折り曲げられた第2,第3の配線パターン部分とを有する場合には、このような略コの字状の形状に信号配線パターンを形成するだけで、本発明に従って第2の弾性表面波フィルタ側における通過帯域外のアイソレーションを改善することができる。
上記第2,第3の配線パターン部分において、信号配線パターンがバンプにより第2の弾性表面波フィルタチップの出力端と電気的に接続されている場合には、第1の配線パターン部分をグラウンド配線パターンに近接させて、アイソレーションの改善を図った場合であっても、バンプによる信号配線パターンの接合部分をグラウンド配線パターンから遠ざけることができる。従って、第2の弾性表面波フィルタのパッケージ材へのバンプによる接合を容易に行うことができる。また、上記第2または第3の配線パターン部分において、第2または第3の配線パターン部分に接続されるビアホール電極がパッケージ材に形成されている場合には、該ビアホール電極と、グラウンド側配線パターンに接続されているビアホール電極との距離を隔てることができる。従って、小型化を図った場合でも、双方のビアホール電極の距離を十分な大きさとし得るため、双方のビアホール電極を容易に形成できる。
第2の発明に係る弾性表面波分波器では、パッケージ材のチップ搭載面に、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが形成されており、信号配線パターン及びグラウンド配線パターンに、パッケージ材の少なくとも一部を貫通している信号ビアホール電極及びグラウンドビアホール電極がそれぞれ接続されており、信号ビアホール電極と、グラウンドビアホール電極との間の距離が、パッケージ材に構成されておりかつ異なる電位に接続されるビアホール電極間の距離のうち最小であるため、第1の発明と同様に、第1の弾性表面波フィルタチップを流れる電流による磁束が上記信号配線パターンとグラウンド配線パターンとが設けられている領域を通過することによる影響を抑制することができる。従って、第2の弾性表面波フィルタチップの通過帯域外におけるアイソレーションを改善することができ、第2の弾性表面波フィルタの周波数特性を大幅に改善することが可能となる。
第3の発明に係る弾性表面波分波器では、パッケージ材のチップ搭載面に、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、該信号配線パターンとグラウンド配線パターンとが設けられている領域において、第1の弾性表面波フィルタチップを流れる電気信号により生じた磁束が流れた際に、該磁束を打ち消す構造が設けられているため、第1の発明と同様に、第2の弾性表面波フィルタチップの帯域外におけるアイソレーションを改善することができるとともに、第2の弾性表面波フィルタチップの周波数特性を改善することができる。
第3の発明において、磁束を打ち消す構造が、第2の弾性表面波フィルタチップをパッケージ材に接合している複数のバンプのうち、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される第1のバンプと、最も出力端に近いSAW共振子のグラウンド電位に接続される第2のバンプとを結ぶ仮想線の両側に、上記グラウンド配線パターンに接続されておりかつパッケージ材の少なくとも一部を貫通している第1,第2のビアホール電極が配置されている構造である場合には、上記第1,第2のビアホール電極の形成位置を工夫するだけで、上記磁束を打ち消す構造を容易に構成することができる。
上記磁束を打ち消す構造が、第2の弾性表面波フィルタチップに設けられている複数のバンプのうち、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される第1のバンプと、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続される複数の第2のバンプの中心とを結ぶ線の両側に、グラウンド配線パターンに接続されかつパッケージ材の少なくとも一部の層を貫通している第1,第2のビアホール電極が配置されている構造である場合においても、同様に、第1,第2のビアホール電極の位置を工夫するだけで、上記磁束を打ち消す構造を容易にパッケージ材に構成することができる。
第1のビアホール電極と、第2のバンプとを結ぶ線と、第2のバンプと第2のビアホール電極とを結ぶ線とのなす角度が90°以上である場合には、それによって第2の弾性表面波フィルタチップがパッケージ材に搭載されている部分において、グラウンドを強化することができる。
第1のビアホール電極と、複数の前記第2のバンプの中心とを結ぶ線と、複数の前記第2のバンプの中心と第2のビアホール電極とを結ぶ線とのなす角度が90°以上である場合においても、同様にグラウンド配線パターンが設けられている部分におけるグラウンドを強化することができる。
第1,第2のビアホール電極を含む複数のビアホール電極がパッケージ材に設けられており、複数のビアホール電極の少なくとも1つのビアホール電極が第2の弾性表面波フィルタチップが実装される領域の下方に配置されており、残りのビアホール電極が第2の弾性表面波フィルタチップが実装される面の外側の領域に配置することにより、グラウンドを強化することができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心周波数が相対的に低い第1の弾性表面波フィルタチップと、中心周波数が相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップとが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップに設けられた複数のバンプを利用して、パッケージ材のチップ搭載面に形成された配線パターンに接合されている弾性表面波分波器であって、
複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第1の弾性表面波フィルタチップと、
複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第2の弾性表面波フィルタチップと、
前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが、前記複数のバンプを用いて接合されるパッケージ材とを備え、
前記パッケージ材のチップ搭載面には、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、前記第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、かつ前記信号配線パターン及びグラウンド配線パターンにそれぞれ接続されており、前記パッケージ材の少なくとも一部を貫通している信号ビアホール電極及びグラウンドビアホール電極が設けられており、
前記信号配線パターンに接合される前記第2の弾性表面波フィルタチップのバンプよりも、前記グラウンド配線パターン側に近接したパターン部分を有するように前記信号配線パターンが構成されていることを特徴とする、弾性表面波分波器。
【請求項2】
前記信号配線パターンが前記グラウンド配線パターン側に近接するように曲げられており、それによって前記信号配線パターンに前記グラウンド電極パターン側に近接したパターン部分が構成されている、請求項1に記載の弾性表面波分波器。
【請求項3】
前記信号配線パターンが、前記グラウンド配線パターンに近接されている部分において、前記グラウンド配線パターンの端縁と平行に延びる第1の配線パターン部分と、第1の配線パターン部分の両端から、前記グラウンド配線パターンから遠ざかる方向に折り曲げられた第2,第3の配線パターン部分とを有する、請求項2に記載の弾性表面波分波器。
【請求項4】
前記第2または第3の配線パターン部分において、前記信号配線パターンがバンプにより前記第2の弾性表面波フィルタチップの出力端と電気的に接続されている、請求項3に記載の弾性表面波分波器。
【請求項5】
中心周波数が相対的に低い第1の弾性表面波フィルタチップと、中心周波数が相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップとが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップに設けられた複数のバンプを利用して、パッケージ材のチップ搭載面の配線パターンに接合されている弾性表面波分波器であって、
複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第1の弾性表面波フィルタチップと、
複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第2の弾性表面波フィルタチップと、
前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが、前記複数のバンプを用いて接合されるパッケージ材とを備え、
前記パッケージ材のチップ搭載面には、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、前記第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、かつ前記信号配線パターン及びグラウンド配線パターンにそれぞれ接続されており、前記パッケージ材の少なくとも一部を貫通している信号ビアホール電極及びグラウンドビアホール電極が設けられており、
前記信号ビアホール電極と、前記グラウンドビアホール電極との間の距離が、前記パッケージ材に構成されており、かつ異なる電位に接続されるビアホール電極間の距離のうち最小であることを特徴とする、弾性表面波分波器。
【請求項6】
中心周波数が相対的に低い第1の弾性表面波フィルタチップと、中心周波数が相対的に高い第2の弾性表面波フィルタチップとが、第1,第2の弾性表面波フィルタチップに設けられた複数のバンプを利用して、パッケージ材のチップ搭載面の配線パターンに接合されている弾性表面波分波器であって、
複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第1の弾性表面波フィルタチップと、
複数のSAW共振子が構成されており、かつ下面に複数のバンプを有する第2の弾性表面波フィルタチップと、
前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが、前記複数のバンプを用いて接合されるパッケージ材とを備え、
前記パッケージ材のチップ搭載面には、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される信号配線パターンと、前記第2の弾性表面波フィルタチップにおける出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド電位に接続されるグラウンド配線パターンとが少なくとも形成されており、
前記信号配線パターンと前記グラウンド配線パターンとが設けられている領域において、前記第1の弾性表面波フィルタチップを流れる電気信号により生じた磁束が流れた際に、該磁束を打ち消す構造が設けられていることを特徴とする、弾性表面波分波器。
【請求項7】
前記磁束を打ち消す構造が、前記第2の弾性表面波フィルタチップをパッケージ材の配線パターンに接合している複数のバンプのうち、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される第1のバンプと、最も出力端に近いSAW共振子のグラウンド電位に接続される第2のバンプとを結ぶ仮想線の両側に分散されて、前記グラウンド配線パターンに接続されておりかつ前記パッケージ材の少なくとも一部を貫通している第1,第2のビアホール電極が配置されている構造である、請求項6に記載の弾性表面波分波器。
【請求項8】
前記第1のビアホール電極と前記第2のバンプとを結ぶ線と、前記第2のバンプと前記第2のビアホール電極とを結ぶ線のなす角度が90°以上である、請求項7に記載の弾性表面波分波器。
【請求項9】
前記磁束を打ち消す構造が、前記第2の弾性表面波フィルタチップに設けられている複数のバンプのうち、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に接続される第1のバンプと、第2の弾性表面波フィルタチップの出力端に最も近いSAW共振子のグラウンド側電位に接続される複数の第2のバンプの中心とを結ぶ線の両側に分散されて、前記グラウンド配線パターンに接続され、かつ前記パッケージ材の少なくとも一部の層を貫通している第1,第2のビアホール電極が配置されている構造である、請求項6に記載の弾性表面波分波器。
【請求項10】
前記第1のビアホール電極と、複数の前記第2のバンプの中心とを結ぶ線と、複数の前記第2のバンプの中心と第2のビアホール電極とを結ぶ線とのなす角度が90°以上である、請求項9に記載の弾性表面波分波器。
【請求項11】
前記第1,第2のビアホール電極を含む複数のビアホール電極が前記パッケージ材に設けられており、該複数のビアホール電極の少なくとも1つのビアホール電極が前記第2の弾性表面波フィルタチップが実装される面の下方に配置されており、残りのビアホール電極が第2の弾性表面波フィルタチップが実装される領域の外側の領域に配置されている、請求項1〜9のいずれかに記載の弾性表面波分波器。
【請求項12】
前記第1,第2の弾性表面波フィルタチップが統合されて1つのチップで構成されている、請求項1〜11のいずれかに記載の弾性表面波装置。

【国際公開番号】WO2004/102799
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506155(P2005−506155)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005546
【国際出願日】平成16年4月19日(2004.4.19)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】